超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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一難去って、また一難。
そんな回です。


第145話 鎮魂歌

 時間は僅かに遡る。

 

 黒雲の渦巻く下に、かつてゲイムギョウ界で権勢を誇ったタリの空中神殿が浮遊している。

 その下の、神殿が埋まっていた地区の近く。

 

『国民のみなさん、非常事態が宣言されました! 近くの教会職員、警備兵、オートボット、人造トランスフォーマーの指示に従って、速やかに避難してくだい! 繰り返します、非常事態が宣言されました! 国民のみなさんは近くの……』

 

 ネプギアは女神化して飛びながら、拡声器で避難勧告をしていた。

 下では、バンブルビーや教会職員、トラックスたちが住民を避難させている。

 空中神殿の出現以降、あらゆる通信が出来なくなっているので、こうしてアナログな方法で避難勧告するしかないのだ。

 

『繰り返します! 非常事態が宣言されました! 国民の皆さんは……』

「ネプギア、一通り見てきたが、取り残されている者はいないぞ!」

「瓦礫の下敷きになっている人もいません!」

 

 喉も割れよと声を上げているネプギアの横に、霊体のヴイ・セターンとハイ・セターンが飛行してきた。

 彼女たちは、その霊体であることを活かし、屋内や瓦礫の下に人がいないか見て回っているのだ。

 

「分かりました。私たちも、国民の避難が終わりしだい退避しましょう……ッ!」

 

 二人の報告に頷いたネプギアだったが、突然大気が鳴動するのを感じ、上空を見上げる。

 空に変わらず浮かんでいる空中神殿の底部の瓦礫や土砂が振り払われていく。

 

「ッ! みなさん! 退避、退避してください! 逃げて!!」

「ス…ティ…ン…ガー…! 『みんなを守るぞ!!』」

「了解!!」

 

 降ってくる土砂や瓦礫から、バンブルビーやスティンガーら人造トランスフォーマーたちが人々を庇う。

 

「ハイ! 私に合わせろ! 上に向けて障壁を張るぞ!」

「はい、姉さま! ネプギアさんも!」

「は、はい!」

 

 三人は両手を頭上に掲げ、力を合わせて障壁を張る。

 障壁は、女神三人分の力を籠めているだけあって、下にいる人々やトランスフォーマーを守るには十分な大きさと強度だった。

 少しの間そうして障壁を張っていた女神たちだが、やがて上から降ってくる物が無くなると、様子をうかがう。

 神殿の底部には、逆さまにした台座を六本の昆虫の節足のようなパーツが囲んでいる、異様な装置が現れていた。

 

「あれは、いったい……ッ!」

 

 不意に装置の下部に虹色の光が輝く。

 すると、ネプギアの全身から力が……シェアエナジーが吸い取られていく。

 

「そんな……!」

「ギ…ア…!」

 

 飛行を維持することさえ出来ず、ヨロヨロと降りて行くネプギアをバンブルビーが受け止める。

 

「『どうした?』」

「分からない……急にシェアが……」

「おそらく、あの機械のせいだろうが……」

 

 バンブルビーに抱えられたネプギアに、心配げに声をかけながらもヴイとハイは空を見上げる。

 

「いったい、何が起きているんでしょう?」

 

 ネプギアの疑問に答えられる者はいない。

 神殿下部に出現した装置……シェアハーヴェスターは、虹色の光を増していく……。

 

 

 

 

 同じころ、空中神殿に接近する飛行物体があった。

 

 ディセプティコンの空中戦艦、エディン戦争を轟沈することなく生き残ったキングフォシルである。

 その艦橋では、スタースクリームが空中神殿を唖然と眺めていた。

 

「ドレッズの連絡で来てみりゃあ……何だぁ、ありゃあ……」

 

 混乱に乗じメガトロンたちを救出するのが目的だったが、異様な光景に肝を抜かれる。

 

「あの飛行物体からは、ディセプティコンの識別信号が出ている。ただし、とても古い物だ」

「古いってどれくらいだ?」

「おおよそ一万年前」

「そいつはまた……」

 

 操艦しつつ報告してくるサウンドウェーブに、スタースクリームは顔をしかめる。

 一万年と言えば、悠久の時を生きるトランスフォーマーにとっても神話の時代だ。

 何でそんな物が現れたのか、見当もつかない。

 そこで隣に立つ科学参謀に意見を求めた。

 

「ショックウェーブ、お前はどう思う?」

「ふむ。現状、私に分かるのは、あの構築物下部の装置が、シェアアブソーバーと同質の機能を持っているということだけだ。もっとも、出力は桁違いのようだが」

「……とにかく、現状様子見か」

 

 危険は冒せないと、スタースクリームはすぐに結論を出す。

 しかし次に抑揚のない声で放たれたサウンドウェーブの言葉は無視できなかった。

 

「あの建造物から、メガトロン様の反応が検知された」

「ッ! 本当か?」

「嘘は吐かない」

 

 確かに、この場面で、特にメガトロンのことで、この情報参謀が出鱈目を言うなど有り得ない。

 少し思考してから、スタースクリームは答えを出した。

 

「……よし、俺が見てくる。お前らはここで待機してろ」

「不確定要素が大きい。他の者も連れていっては?」

「いや、何が起こるか分からねえからこそ俺一人でいく。……俺は逃げ足が速いからな」

 

 ショックウェーブの提案を冗談めかして断ったスタースクリームは艦橋を後にしようとするが、その時異変が起きた。

 

 突如として空が割れたのだ。

 

「何だ!?」

「時空間に歪みが生じている」

「スペースブリッジやミス・レイのポータルに似た現象か」

 

 驚愕する航空参謀に対し、情報、科学の両参謀は冷静に状況を把握しようとしていた。

 

 ……が、すぐに異常事態に気が付いて参謀全員が硬直した。

 

 空間の割れ目の向こうは、こちらの常識が一切通用しないだろう異常な空間が広がっていた。

 しかし、ディセプティコンの幹部たちが揃って固まったのは、それが理由ではない。

 

 割れ目の向こう側からやってくる『存在』を感じ取ったからだ。

 

 体中に震えが走る。

 その震えは、身内の深い所……遺伝子(CNA)からくる震えだ。

 

「何が起こってやがるんだ……」

 

 スタースクリームの疑問に、答える者はいなかった。

 

  *  *  *

 

 そして時間は現在に戻る。

 

「見ているか、兄弟たちよ! 永い時を経て、堕ちし者(ザ・フォールン)がこの世界に舞い戻ったぞ!!」

 

 空中神殿上層の中央部……ついに降臨したザ・フォールン。

 その禍々しい存在感に、その場にいる全ての者が圧倒されていた。

 

「ザ・フォールンって、この作品の序盤でオプっちが言ってた、最初のディセプティコン!?」

「そうだ……伝説上の人物だと思っていたが……」

 

 シェアハーヴェスターによってシェアエナジーを奪われ、ついに変身を維持できなくなってしまってもメタいことを言うネプテューヌを支えるオプティマスが茫然と呟く。

 誰もが硬直するなか、最初に動いたのはやはりと言うかダイノボットだった。

 

「大敵、黒き神! ダイノボット、今こそ、因縁に決着を着ける時!!」

 

 先程吹き飛ばされたグリムロックが立ち上がり、暴君竜の姿に変形するや地響きを立ててザ・フォールンに向かっていく。

 他のダイノボットたちも、咆哮を上げて昔年の宿敵に殺到する。

 

「セターンの獣どもが。性懲りも無くこの俺に向かってくるか!」

 

 しかしザ・フォールンが手を翳すと、何とダイノボットたちの動きが止まる。

 いや、不可視の力によって押し止められているのだ。

 

「ぐ、ぐううおおおおッ……!!」

 

 唸り声をあげ、不可視の力から逃れようともがくダイノボットたちだが、ザ・フォールンの超能力は容赦なく恐竜たちを押さえつける。

 メガトロンとセンチネルは、必要無いと判断したのかザ・フォールンに任せて動こうとしない。

 

「ッ! ノワール、そこにいろ!」

「アイアンハイド!」

 

 抱えていたノワールを地面に置き、アイアンハイドが両腕のキャノン砲を撃つが、ザ・フォールンが手を八本も ある細長く鋭く尖った指を動かすだけで、砲弾は空中に静止してしまう。

 次いで、オプティマスとジャズが剣を手に走り出し、ミラージュが姿を消して不意を打とうとするが、ザ・フォールンは手に持った杖を軽く振るう。

 

「ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ッッ!!」

 

 すると、レイの悲鳴を上げ、次いで祭壇の前に十字架型の機械がせり上がってくると、急にオートボットたちにまるで巨大な大岩が圧し掛かったかのような圧力が加わり、地面に膝を突いてしまう。

 ダイノボットたちまでもが、

 

「愚かなオートボットどもよ、貴様らが俺に勝てると思うのか!!」

「ッ! この感じは憶えがある……! これは、アンチスパークフィールド!!」

 

 何とか立ち上がろうともがくオプティマスだが、体から力が抜けてゆく感じに既視感を感じた。

 かつてマジェコンヌが女神を倒すためにディセプティコンと組んで用意したアンチクリスタル。それを利用したオートボットの力を奪う結界が、アンチスパークフィールドだ。

 その力が、今またオートボットたちに襲い掛かっていた。

 

「しかし、アンチクリスタルは破壊したはずだ!!」

「アンチクリスタル? ……ああ、あの石のことか。あれは元々、俺が女神を滅ぼすために作り出した試作品の一つだ。まあ、偉大なるオールスパークの力であるシェアエナジーをアンチエナジーなどという塵に変換してしまう失敗作だったがな。今、貴様たちを捕らえている結界は、そのノウハウを基に造り上げた物だ。ディセプティコンのみがこの結界の中で動くことが出来る」

 

 説明しながら、ザ・フォールンは腕を掲げる。

 すると、祭壇の上に映像が投射された。

 何処から撮影しているのか、遠目から空中神殿の全体が映されている。

 

「さて、ここからが本番だ。……レクイエムブラスター、起動!」

「あ゛あ゛あ゛あ゛!! あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛!!」

 

 ザ・フォールンの声に合わせて、またしてもレイが悲痛な叫びを上げる。

 どうやらこの神殿の機能は、何をするにしてもレイに苦痛を与える仕組みになっているらしい。

 あまりの悪趣味に女神たちが顔を歪めていると、空中神殿が揺れ出した。

 映像の空中神殿も振動し、神殿側面の一部から土砂が剥がれ落ちる。

 そして、何らかの装置が土砂の下からせり出し、その先端から開いていく。

 装置の全貌は、いくつのもの薄く細長いパーツが中央の砲口と思しい場所を囲っていて、ある種の花を思わせた。

 

「エナジー充填、出力3%」

 

 肉眼でもはっきりと分かるほどの凄まじいエネルギーが中央部の砲口に、集まっていく。

 

「な、何をする気だ!!」

「お前たちは、そこで這い蹲って見ているがいい。……レクイエムブラスター、発射!!」

 

 オプティマスの声に嘲笑で持って応え、ザ・フォールンが掲げた腕を振り下ろすと、同時に花のような砲……レクイエムブラスターから、信じられないほどのエネルギーの奔流が太い光線として吐き出される。

 光線は、プラネテューヌの市街を飛び込し、その郊外の森……オートボット基地のある当たりへと向かっていた。

 

 誰かが、何かを言う間もなく、光線は地面に着弾。

 一瞬だけ間を置いてから、とてつもない大爆発を起こした。

 爆発は基地を周辺の森ごと飲み込み、跡形もなく吹き飛ばす。

 

「…………」

 

 オプティマスは茫然と、映し出された映像を見上げていた。

 爆発の後にはキノコの如き雲が上がっている。爆発に巻き込まれた者が生き残れるとは、到底思えない。

 

「な、なんてことを……!」

「基地にはみんなが……ラチェットも、ホイルジャックも、レッカーズも、他にも……!!」

「イカレてやがる……!」

 

 この暴虐に、とっくに変身が解けていたベールとノワール、ブランが絞り出したのは、そんな言葉だけだった。

 自国を襲った惨状に、ネプテューヌは完全に言葉を失っていた。

 対して、ザ・フォールンは見る者を凍りつかせるような笑みを浮かべた。

 

「見たか、これがレクイエムブラスターだ。……技師の一人はPONGレーザー砲とかいう名を付けようとしたので処刑したが……しかし、レクイエムブラスターの威力はこんなものではない。100%の出力で撃てば、この惑星その物を粉砕できるのだ」

「この世界を……粉砕だと?」

 

 ザ・フォールンの言葉に、オプティマス始め一同はゾッとする。

 この場面で出鱈目を言うとは思えない。

 剣を杖代わりに立ち上がったノワールが吼える。

 

「そ、そんなことをして何になるってのよ!」

「貴様らに思い知らせるのだ。我らからオールスパークを奪った貴様らに、恐怖と絶望を与えてくれる」

 

 当然とばかりに言い切るザ・フォールンに、ネプテューヌが声を上げる。

 

「……話しを聞いた限りだと、オールスパークがこの世界に来たのは偶然でしょ! そんなことで……」

「そんなこと、だと? ……貴様らが偉大なオールスパークの恩恵を受けているということ自体が、我らに対する耐え難い侮辱! 計り知れない罪なのだ!!」

 

 急に声を荒げるザ・フォールン。

 ギラギラと輝くオプティックには激しい怒りと……狂気があった。

 それに呼応するように、顔の周りの羽状パーツが蠢く。

 

「く、狂っていますわ……ぐうッ!」

 

 ベールが怒りと侮蔑を込めて呟けば、急にその体が締め付けられる。

 ザ・フォールンが超能力で彼女の体を握り潰そうとしているのだ。

 

「ベール!!」

「が、あああ……!」

「狂っているだと? いいや、これは運命だ。この世界が滅ぶことも……貴様がここで潰れて床の染みになることもな」

「ベール!! 止めろ、この下種野郎!!」

 

 ジャズが激怒して叫ぶも、ザ・フォールンが止めるはずもない。

 苦しむベールを見て、愉悦に顔を歪める。

 センチネルは顔をしかめていた。

 

「ぎ、ぐううああ……!」

「ベール! ベェェェル!! クソがぁあああ!!」

「叫べ叫べ、叫んだところで何も変わらぬ」

 

 普段の軽薄な態度を金繰り捨てて絶叫するも動けないジャズを、ザ・フォールンは愉快そうに嘲笑う。

 

「ぐ、ううおおおおおおッッ!!」

 

 しかし、ジャズはリミッターを解除して全身に力を込め、立ち上がる。

 体に大きな過負荷がかかり、全身から煙が上がって関節から火花が散る。

 

「ジャズ、止めろ!! 体が壊れてしまうぞ!!」

「彼女を、傷つけることは、許さない!!」

 

 オプティマスの制止も聞かず、ジャズは一歩一歩、ザ・フォールンに近づいていく。

 

「……ああ、愛か。オートボットというのは、どいつもこいつも愛を捧げるべき存在を間違える。よいか? 愛というのは、有限なのだ。だから、適切な存在に捧げなければ無駄に消費することになる」

「生憎と……俺は、彼女を愛してるんでね……!」

「ジャズ……!」

 

 こんな状況ではあるが、愛の告白に、ベールは微かな笑みを浮かべる。

 最初は余裕の笑みを浮かべていたザ・フォールンも、ジャズが腕に万力を籠めてクレッセント・キャノンを構えると、僅かに驚いた様子を見せる。

 

「なんだと……!」

「ラチェットたちの仇も込みだ……! くたばれ、クソッタレ……!!」

 

 ジャズは怒りのままにクレッセント・キャノンの引き金を引いた。

 盾形の武器から光弾が飛び出し、原初のディセプティコンの肩に命中する。

 ダメージは無いものの、僅かに集中が切れたことでベールの体が地面に落ちる。

 

「ガハッ! ケホッ、ケホッ!」

 

 咳き込むベールだが、大きなダメージは受けていないようだ。

 ジャズは安堵の表情を浮かべるが、次の瞬間、大きな力によって持ち上げられる。

 ザ・フォールンがいつの間にかジャズの後ろに立ち、細身の体からは想像も付かない力でジャズの体を掴んで吊り上げたのだ。

 

「ああ、愛の力が起こした奇跡も、ほんの少し貴様らの寿命を延ばしただけだったな。……だが、貴様には感心したぞ。褒美として、最初に殺してやろう……」

 

 囁くように言ったフォールンは、反対の手でジャズの足も握る。

 そのまま両腕に力を籠めてジャズの体を引き千切ろうとする。

 

「ぐ、おおおお…・・・・!!」

「ジャァズ……!」

 

 ジャズの腰のあたりがミシミシと嫌な音を立てる。

 ベールは何とか立ち上がって、槍を投げようとするが、体に力が入らず取り落としてしまう。

 これ以上仲間を失ってなるものかと、オプティマスや他のオートボットたち、女神にダイノボットもジャズを助けようともがくが、動くことが出来ない。

 

「嘆くことはない、オールスパークの下へと逝くがいい……むッ!」

 

 そのままジャズを真っ二つにしようとするザ・フォールンだが、その瞬間横合いから突っ込んできた黒い影に突き飛ばされて、ジャズを落としつつその場から転移する。

 祭壇の上に現れたザ・フォールンは背中のスラスターを噴射して空中に浮遊する突然の乱入者を見上げ、顔の周りの羽状パーツを震わしながら怒声を上げる。

 

「貴様か……裏切り者が!」

「裏切り者か……貴様には言われたくないな!」

 

 黒い体に逆関節の足、顔の周りの髭状パーツと赤いオプティック、そして背中の翼とスラスター。

 元はディセプティコンだった老兵、ジェットファイアだ。

 

「ジェットファイア! 無事だったのか!!」

「儂だけじゃないぞ! 基地にいた奴らは前もって退避させた。全員無事だ!!」

「そうか、良かった……」

 

 ホッと息を吐くオプティマス。

 ジェットファイアはニヤリと笑ったあと、目つきを鋭くしてザ・フォールンを睨む。

 

「この神殿が浮かんだ時点で、こうくるだろうと思ったからな!!」

「ふん! なるほどな、貴様も元々はディセプティコン。この結界の中でも動けるか……しかし、貴様一人で何が出来る?」

「さて、生憎と一人じゃないんでな!」

 

 ニッとジェットファイアが笑うと、破壊音と共に結界の発生源である十字架型機械に光弾が命中した。

 すると機械が停止し、結界が消失する。

 

「どんな機械でも、停止してしまえば意味が無いだろう?」

 

 装置を停止させたのはは、柔和そうな顔の薄緑のオートボット……ラチェットだった。

 右手に装着したEMPブラスターで装置を強制停止させたのだ。

 

「ラチェット、来てくれたのか!」

「やれやれ、ジェットファイアに無理を言って付いてきて正解だったようだね。……で、オプティマス。私は何をすればいい?」

「ジャズが負傷した。女神たちも戦闘できる状態ではない。彼らを守ってくれ!」

「了解。君も無理はしないでくれよ。……さあ、みんな少し下がろうか」

 

 オプティマスの指示を受け、ラチェットは片手でジャズを引きずり、反対の手で女神を拾い上げると後ろに下がる。

 

「ラチェット、俺はまだ戦える!」

「では名医の診断を発表しよう……発声回路を切られたくなかったら、黙ってろ」

 

 文句を言うジャズをドスの効いた声で黙らせ、ついでに女神たちの文句を言われる前に封じて、マイペースにオートボットたちの後方に移動した。

 

「グルルルゥ! よくもやってくれた! 我、グリムロック、容赦しない!」

「容赦しないのはいつもだけどな!」

「復活!」

「俺、スラッグ! やられたら倍返し!!」

 

 ダイノボットたちも立ち上がってくる。

 竜の騎士たちを見て、ジェットファイアは懐かしげな笑みを浮かべた。

 

「改めて、久し振りだな……戦友(とも)よ」

「ッ! ……ああ、久し振り、戦友(とも)よ」

 

 かつての戦友が記憶を取り戻したことを察したグリムロックはニッと笑む。

 それから、因縁の敵に視線を向けた。

 

「何がザ・フォールンだ! 引き摺り下ろして細切れにしてやるから、覚悟しな!!」

「…………殺!」

 

 アイアンハイドも砲を構え、ミラージュも刃を光らせる。

 オプティマスも、剣をザ・フォールンに向ける。

 結界が消えたとはいえ、シェアハーヴェスターもレクイエムブラスターも健在だ。

 この状況を解決するには、ザ・フォールンを打倒するしかない。

 

「貴様に、この世界を破壊などさせない! 絶対に!!」

「ハッ! 貴様も女神どもに骨抜きにされたか……仮にもプライムともあろう者が!」

 

 しかし、ザ・フォールンの余裕は崩れない。

 堕ちたプライムは少し後ろにいる裏切りのプライムに視線を送った。

 

「センチネル! スペースブリッジを起動しろ!」

「……御意」

 

 感情を感じさせない声で答えたセンチネルは何処からか、円柱状の機械を取り出した。

 

 プラネテューヌの教会から奪い返した、スペースブリッジの中心柱だ。

 

 オプティマスはすぐにザ・フォールンの思惑に気が付いた。

 センチネルがディセプティコンに組した以上、スペースブリッジで繋げる先はおそらく……。

 

「駄目だ! センチネル、止めろ!!」

「……許しは請わぬよ」

 

 誰が駆け寄るよりも早く、センチネルは中心柱を起動した。

 周囲の石柱が内部から光を放つ。内部に仕込まれたスペースブリッジが動き出したのだ。

 石柱と中心柱から上空に向け光が立ち昇り、交差すると巨大な光の柱となって、天を、次元を貫いた……。

 

  *  *  *

 

 トランスフォーマーたちの故郷、惑星サイバトロンは、その南方に位置するディセプティコンたちの都、ケイオン。

 破壊大帝の城であるコルキュラーの前のメガトロナス広場に、大勢のディセプティコンが集結していた。

 その上空にはキングフォシルと同型の戦艦が数隻と、さらに多くの降下艇と戦闘艇が待機していた。

 ディセプティコンたちは皆、凶悪な兵器で武装し、戦いに赴く時を今か今かと待っている。

 その先頭に立つのは、髑髏のような顔と鎧武者のような姿が特徴的なディセプティコン、ブラジオンである。

 ブラジオンは、冷静な面持ちだったが、身内からは興奮が滲み出ていた。

 

 と、上空から光の柱……スペースブリッジが降り注ぎ、いずこかと……ゲイムギョウ界とここ、ケイオンを結ぶ。

 

「ディセプティコン!! 今こそ時は来た!! いざ、進めぇ!!」

 

 刀を振るうブラジオンが号令をかけるや、ディセプティコンたちは雄叫びを上げ、我先にと光の柱に飛び込んでいった……。

 




今回の解説。

レクイエムブラスター
名前の元ネタはアメコミ版メガトロナスの必殺武器である同名の銃。
作中でも言ってる通り、原作アニメでの名前はPONGレーザー砲。アタ○最初の(そして史上初の)アーケードゲームであるPONG(ポン)から取られているようです。

真っ二つにされかかるジャズ。
オオウ……ジャズゥ……ならず!
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