超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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短いのに時間かかった……。

そして最近、ネプテューヌたちの出番がない……。


第38話 医療員と斥候

 トランスフォーマーたちがゲイムギョウ界に現れて、すでに数か月。

 オートボット、ディセプティコン、両軍ともにゲイムギョウ界での地盤を固め、あちこちに散った仲間をほぼ集め終わったのだが……。

 

  *  *  *

 

「仲間の捜索を打ち切る?」

 

「ああ、残念だが」

 

 ラチェットの言葉に、オプティマスは厳かに答えた。

 

「しかしオプティマス、まだジョルトが見つかってないぞ」

 

 ジョルトとは未だ行方不明のオートボットで、ラチェットの助手として働いていた医療員だ。

 

「だがあれから数か月、これだけ探していないとなると、もう希望はない」

 

 非難するようなラチェットの言葉に、オプティマスは厳然と言い放つ。

 スペースブリッジの転送は酷く不安定だった。ここではなく別の次元に跳ばされた可能性もあるし、最悪の場合、超空間に取り残されてしまったのかもしれない。

 まだ不満げなラチェットに、オプティマスは首を横に振る。

 

「これ以上はネプテューヌたちにも迷惑をかけられない」

 

 仲間の捜索は、女神たちと教会の力を借りて行っているが、彼女たちにも他に仕事がある。

 ラチェットにも分かっている。オプティマスだって辛いのだ。

 彼は、仲間のことを何より大切にしているのだから。

 

「……分かった。君の決定なら従うよ」

 

「……すまん、ラチェット」

 

 せめて笑って見せるラチェットに、オプティマスはすまなそうに頭を下げるのだった。

 

  *  *  *

 

 一方、こちらはディセプティコンの秘密基地。

 その幼生の育成室。

 

「そう言えば」

 

 眠ってしまったガルヴァの頭を撫でながら、レイはふと思い出した。

 

「だいぶ前に、お仲間さんの捜索やめちゃいましたけど、良かったんですか?」

 

 アイツクルマウンテンで科学参謀を回収して以来、ディセプティコンたちが仲間を探している様子はない。

 

「ん~? いいんじゃないの。合流できなかったサイドウェイズは運がなかったのさ。……やっぱり金属バランスが片寄ってるな。誰だよ銅線を食わせてんのは」

 

 機械でガルヴァの体をスキャンしながら、フレンジーが呑気に答えた。

 

「そんなんでいいんですか?」

 

「いいのいいの。……エネルゴンもやりすぎ、デブるっての」

 

 少し戸惑うレイにも、フレンジーは呑気さを崩さない。

 いない仲間より、目の前の仕事らしい。

 レイのほうも、いい加減ディセプティコンのやりかたに慣れてきたこともあって、それ以上は追及しない。

 

「それなら、それでいいです。……今度から、ご飯のエネルゴン濃度を下げて、アルミを混ぜましょう」

 

  *  *  *

 

 かくして、捜索を打ち切られ、オートボットの医療員ジョルト、ディセプティコンの斥候サイドウェイズは行方不明(MIA)として扱われることになった……。

 

  *  *  *

 

 ここで話は数か月前に戻る。

 ルウィーのとある山中にて。

 

「ここどこだよ……」

 

 青い体のオートボットが木々の合間を彷徨っていた。

 

「確か、スペースブリッジの暴走に巻き込まれて、それで……」

 

 気が付いたら、ここにいた。

 

「クソッ! 迷子はサイドスワイプのキャラだろうが……!」

 

 誰にともなく毒づきながら、あてもなく歩き続ける。

 転送の余波か、体のダメージが大きい。

 通信装置は特に酷く、他のオートボットと連絡を取ることも叶わない。

 応急手当はしたが、手持ちの機材ではこれが限界だ。

 ステイシスまではいかないが、強制スリープモードは免れそうにない。

 

「せめて、この世界の機械をスキャンしなけりゃ……」

 

 目立たないビークルモードになれば、少なくとも敵の目はごまかせるはずだ。

 

「文明がありゃいいんだが……」

 

 機械なんか望めない、まったく未開の地だったらどうしよう。そもそも、知的生命体がいるのだろうか?

 歩きながら思考していると、突然目の前が開けた。

 森が途切れ、辺りにはのどかな田園風景が広がっている。

 だが、このオートボット……ジョルトにとって重要なのはそこではない。

 

「あれは、機械か?」

 

 道路の脇に一台の電気自動車が打ち捨てられていた。

 かなりガタが来ているようだが、背に腹は代えられない。

 電気自動車をスキャンし、残された力を振り絞って変形する。

 それを最後に、ジョルトの意識はスリープモードへと落ちていった。

 

  *  *  *

 

 しばらくして、田舎道を一台のレッカー車が走ってきた。

 運転席に中年の男が乗っている。

 

「ふふんふ~ん♪ 今日の仕事は~、廃車回収~♪」

 

 鼻歌を歌いながら上機嫌で運転する男。

 やがて捨てられた電気自動車の横でレッカー車を停めると、車から降りて慣れた手つきでフックを電気自動車に引っ掻けようとしたが……。

 

「あれ? 二台?」

 

 そこで回収しようとしていた電気自動車が、なぜか二台に増えていることに気が付いた。

 少し考えた男だったが、すぐに両方持って帰ることにした。

 持ってくのに時間はかかるが、一台が二台に増えたのだから幸運だ、と笑顔になる。

 

 第三者がいれば、楽観的にもほどのある思考にツッコミを入れるところだろう。

 

  *  *  *

 

 この田舎の村、名をアニマルクロッシングは、外界とほとんど隔絶された状態の場所だ。

 木々は生い茂り、河は澄み渡り、田畑には実りが満ちている。

 だが、住んでいる者たちが皆、ここに不満はないかと言うと、そうではない。

 若者は都会に憧れるものだ。

 例えば、父の経営する骨董品買い取りセンターの商品である黒いスポーツカーを何とも言えない顔で見る、この少年コーリー・ヴィレッジャーのように。

 それも仕方のないこと。何せこの村はテレビもない、ネットもない、電車も走ってないという本当のド田舎なのだから。

 

  *  *  *

 

 学校から帰ってきたコーリーは木造ガレージの中で父が青い電気自動車をいじっているのを見て、またかと溜め息を吐く。

 父、クリス・ヴィレッジャーの収集癖はどうにかならないものか……。

 

「ただいま、パパ。またガラクタを拾ってきて……」

 

「おお、コーリー、お帰り! これはガラクタなんかじゃないぞ!」

 

 呆れた声のコーリーに、当のクリスは嬉しそうに答えた。

 

「見ろ! このエンジンはゲイムギョウ界の最新式のさらに三世代は先を行ってる! つまり……」

 

 そこでエンジンに電極を繋げるクリス。

 すると、電気自動車から声が聞こえてきた。

 

「オートボット、応答せよ……」

 

 それを聞いて、クリスは子供のように目を輝かせる。

 

「この車は……、トランスフォーマーだ!」

 

「トランスフォーマーって、あの都会のほうで女神様といっしょに戦ってるっていうロボット?」

 

 目を丸くするコーリー。このアニマルクロッシングに伝わっているトランスフォーマーの情報はそれくらいである。

 

「そうだ! そして今修理が終わった!」

 

 クリスは宣言とともに、電流を電気自動車のエンジンに流す。

 すると、自動車はギゴガゴと音を立てて変形し始めた。

 少し下がってコーリーをかばうような位置に移動するクリス。

 変形を終えた電気自動車……ジョルトは咳き込むような音を出して膝を突く。

 

「こ、ここは……?」

 

「ここは、僕の店さ。君を修理したんだ」

 

「俺を修理? あんたが?」

 

 ジョルトは意外に思った。有機生命体が金属生命体を治療とは。周りの機材を見ても、そんな高度な技術を有しているとは思えない。

 しかし、こうして動けるようになったことが、何よりの証左だろう。

 

「……そうか、ありがとう」

 

「何の何の! 困った時はお互い様さ!」

 

 巨大な金属生命体に対しても、快活に笑うクリス。

 つられてジョルトも少し微笑む。

 父親の影に隠れていたコーリーも興味深げに青いオートボットを見上げていた。

 

「うっわあ。本当にロボットだ……」

 

「ロボットって言うのはちょっと違うな。俺たちはトランスフォーマー。金属生命体だ」

 

 親子の様子を見て緊張を解いたジョルトは気さくに自分のことを説明する。

 

「そして俺はジョルト、オートボットの戦士さ! ……ムッ!」

 

 胸を張るジョルトだが、突然真面目な顔になり、木造ガレージの外に歩いていく。

 

「どうしたの、ジョルト?」

 

 それを追いかけるコーリーがたずねると、ジョルトは好戦的な笑みを浮かべた。

 

「なあに、ちょっとディセプティコンの臭いがしたのさ」

 

「ディセプティコンって?」

 

 息子の後に続くクリスの言葉に、ジョルトは黒いスポーツカーの前に立つと答えた。

 

「ディセプティコンってのは宇宙のダニみたいな奴らだよ。だから早めに駆除しないとな。……こんな風に!」

 

 するとジョルトは両腕から鞭を伸ばし、目にも止まらない速さで黒いスポーツカーを打ち据えた。

 

「ああ! 何てことを! うちの商品なのに!」

 

 叫ぶクリスをよそに、黒いスポーツカーもまたギゴガゴと音を立てて変形していく。

 黒と赤のボディに、肩から背中にかけて生えた翅のようなパーツ、そして赤いオプティック。

 その姿を見て、ジョルトが声を上げる。

 

「サイドウェイズか! ダメージのせいでステルス性能が落ちていたようだな!」

 

 スポーツカーの変形したディセプティコン、サイドウェイズは何とか立ち上がって逃げようとする。

 だが、ジョルトは腕を振るってサイドウェイズの体に鞭を巻きつけた。

 もんどりうって倒れ込むサイドウェイズは、ジョルトに向かって声を出した。

 

「ま、待て! 俺に戦う意思はない!」

 

「嘘を言うな!」

 

 ジョルトは鞭に電気を流して、サイドウェイズを攻める。

 

「ぐおおお! ほ、本当だ! 信じてくれ……」

 

「黙れ! ディセプティコンの言うことなんざ、信用できるか!」

 

 悲痛な声を上げるサイドウェイズを、さらに容赦なく責め立てるジョルト。

 だが、思わぬ所からストップが入った。

 

「待った待った! 戦いたくないって言ってるんだからいいじゃないか!」

 

「そうだよ! かわいそうだよ!」

 

 それは唖然となりゆきを見ていたクリスとコーリーだ。

 だが、ジョルトは聞き入れようとしない。

 

「ディセプティコンってのは平気で嘘を吐くんだ! こいつだって今はダメージがあるから塩らしいことを言ってるが、治ったらどんな悪事を働くか……」

 

「悪事なんかしない! 本当だ!」

 

「ここで悪事をしなくても、他のディセプティコンと合流したらする気だろうが!」

 

「そ、それは……」

 

 言いよどむサイドウェイズ。

 それを見てジョルトは再度鞭に電流を流そうとする。

 

「だから待ちなって!」

 

 少し強い声で、クリスが止めた。

 

「ここで暴力はナシだ!」

 

「いやしかし……」

 

「ここは僕の店だ! 僕に従ってもらう!」

 

 色々と滅茶苦茶だが、治してもらった手前強くは出れない。

 しかたなく、拘束を解いた。

 

「すまない……」

 

「おまえがここのヒトたちを傷つけるようなら、容赦しないからな!」

 

 ホッとしているサイドウェイズに、睨みを利かせるジョルト。

 敵対勢力に属しているのだから当然だ。

 

「さて、二人のこれからだけど……」

 

 クリスは一呼吸置いてから言葉を続けた。

 

「この村は、慢性的に人手が足りない。二人には村のいろんな仕事を手伝ってほしい」

 

 その言葉に、ジョルトは顔をしかめる。

 通信装置が壊れていて仲間と連絡が取れないとはいえ、自分は戦士だ。そんな何でも屋みたいなことはできない。

 

「分かった」

 

 一方、サイドウェイズはアッサリと頷いた。

 ジョルトは訝しげな顔になる。いったい、何を考えているのか?

 

「……それなら、俺も働く」

 

 憮然とジョルトも言った。

 こうなったからには、サイドウェイズが仕事中に悪さをしないように見張っている必要がある。

 

「よしよし! じゃあ、まずは……」

 

 喜色満面のクリス。

 

「大きなロボットが、二体もいて仕事って……」

 

 納得いかなげに首を捻るコーリー。

 

「まあ、慣れてないからお手柔らかに頼むよ」

 

 特にプライドを感じさせず人間たちに頭を下げるサイドウェイズ。

 

 ――何をたくらんでいるのか知らないが、必ず化けの皮を剥いでやる!

 

 そして、そんなサイドウェイズを一切信用していないジョルト。

 

 とにもかくにも、こうして人間とオートボットとディセプティコンの奇妙な共同生活が始まったのであった……。

 

  *  *  *

 

 それから、いくらかたって。

 

 田舎道を、コーリーが走っていた。

 その先には突風で壊れた納屋の修理をしているサイドウェイズがいた。

 

「おーい! サイドウェイズー!」

 

「よう、コーリー!」

 

 駆け寄りながらコーリーが手を振ると、サイドウェイズは修理を中断して答えた。

 

「学校はもう終わったのか?」

 

「うん! サイドウェイズはまだ仕事?」

 

「ああ、これからトムさんとこの店の屋根を掃除することになってる」

 

 仲良さげに話すディセプティコンと少年。

 意外にも、サイドウェイズは真面目に仕事をこなしてアニマルクロッシングに馴染んでいた。

 村人たちも、働き者のこのディセプティコンを仲間として受け入れていた。

 都会からの情報があまりこないが故でもあった。

 

「ジョルトは?」

 

 コーリーが聞くと、サイドウェイズは視線で納屋の横を示す。

 そこではジョルトが寝そべっていた。

 

「ジョルト、また仕事サボってたの?」

 

 コーリーが呆れた声を出すと、ジョルトはゆっくりと首をそちらに向けた。

 

「俺は戦士だ。雑用係じゃない」

 

 ふてくされたような態度のジョルトに、コーリーは溜め息を吐く。

 

「いつもそう言って、サイドウェイズに仕事押し付けてばっかり!」

 

 集落に馴染み過ぎているサイドウェイズに対し、ジョルトは何かにつけて仕事をサボる。

 これもオートボット戦士としての矜持と、トラブルと闘いを愛する本人の性格ゆえではあるが、村人たちの間では働かないほうのロボットとして、微妙に白い目で見られている。

 

「俺の仕事はディセプティコンと戦うことなの! 雑貨屋の荷物を運んだりだの、壊れた納屋を直したりだの、広場の掃除をしたりだのってのは、別の奴がやりゃいいの!」

 

「……あのな、ジョルト。俺たちは住む所を用意してもらった上に、エネルギーまで分けてもらってるんだから、働いて返すのは当然だろ」

 

 仕事もせず文句をブー垂れるオートボットに、納屋の修理を続けていたディセプティコンが諭す。

 

「なんだか、サイドウェイズの方が正義の味方みたい」

 

「な!?」

 

 益体のないコーリーの言葉に、ジョルトが絶句しサイドウェイズは苦笑する。

 コーリーとしては、ジョルトのことだって好きだ。

 色々と教えてくれるし、なんだかんだで優しい。

 子供たちの間ではジョルトだって人気者なのだ。

 

「ここで暮らしてくんだから、仕事はしないとな」

 

 苦笑混じりのサイドウェイズに、ジョルトはムッとして返す。

 

「いつまでもじゃない。いずれはオートボットに合流する。そのときゃ、おまえも最後だがな」

 

「…………」

 

 ジョルトの言葉に、サイドウェイズは黙りこくる。

 見張りという名目で共同生活を始めてしばらく経つが、今だにジョルトはサイドウェイズのことを信用していなかった。

 

「ねえ、なんでジョルトはサイドウェイズに辛く当たるのさ?」

 

「そいつがディセプティコンだからだよ」

 

 コーリーの問いに、ジョルトは当然とばかりに答えた。サイドウェイズも仕方がないと言わんばかりの顔だ。

 

「そんなのおかしいよ。サイドウェイズは、いい奴じゃない」

 

 不満げなコーリーに、ジョルトは厳しい顔を向ける。

 

「そういう問題じゃないんだ。オートボットとディセプティコンってのは、戦う宿命にあるんだよ」

 

「……まあな」

 

 サイドウェイズも肯定する。

 

「でも俺は、できることならこの村で暮らしていきたい。……戦いばかりの日々に戻るのは、気が進まない」

 

 しかし、ディセプティコンの斥候はそう吐露した。

 

「…………」

 

 ジョルトは何も言わない。ただ、疑わしげな視線をディセプティコンに送るだけだ。

 そんな二人を見て、コーリーはヤレヤレと肩をすくめる。

 

 どうやら、二人の間の溝は予想以上に深いらしい。

 

  *  *  *

 

 さらに、いくらか経って。

 

 文句ばかりだったジョルトも、いい加減仕事をするようになり、サイドウェイズは相変わらず真面目で、両者は互いに距離を置きつつも村に馴染んでいた。

 そんなある日のこと……。

 

 どうにも天気が怪しい。嵐の気配がする。そう、村の老人たちが話し合っていた。

 彼らの感覚は下手な天気予報よりよっぽど的中率が高い。村人たちは当然、嵐に備えはじめた。

 少しすると天気予報でも、酷い嵐の到来を告げ始めた。

 やがて嵐が到来すると、それは予想を上回る酷いものだった。

 

  *  *  *

 

 大雨が降り風が吹き荒れるなか、木造の古いが頑丈な校舎に、村人たちが集まって来ていた。ここはいざという時の避難場所なのだ。

 そこへビークルモードのジョルトとサイドウェイズが、離れた場所に住む村人を乗せて走ってきた。

 村人を降ろしながら、ジョルトが避難誘導をしていたクリスにたずねる。

 

「これで全員か?」

 

「ああ、取りあえずは……」

 

「てえへんだー!」

 

 クリスの言葉をさえぎり、何となくモグラっぽい工事員、リセッターが大声を出しながら走ってきた。

 

「どうしたんだい、リセッターさん」

 

「どうしたもこうしたもねえよ! 土砂崩れが起きたんだよ!」

 

 クリスの問いに、リセッターは泡を吹きながら答えた。

 

「しかもだ! 落ち着いて聞けよヴィレッジャーさん! コーリーが下敷きになっちまったんだよ!」

 

「何だって!」

 

 その言葉にクリスは目を見開く。

 

「カッピイさんとこが人手が足りないってんで、手伝いに行ってたらしい! その帰りに……」

 

 リセッターの話を最後まで聞かずにクリスは走り出した。

 

「待ちな! 今行くのは危険だ!」

 

 それをジョルトが止める。

 当然、クリスは青いオートボットに不満げな視線を送る。

 

「止めないでくれ! コーリーを助けに行かないと!」

 

「それなら俺が行くぜ! 危険な場所なら任せな!」

 

 胸を張ってジョルトが宣言すると、サイドウェイズもそれに続く。

 

「俺も行く」

 

「……ディセプティコンの手は借りねえ」

 

「そんなこと言ってる場合か!」

 

 この後に及んで、サイドウェイズの協力を拒むジョルトをクリスが一喝した。

 それを受けて、ジョルトはサイドウェイズを睨みつける。

 

「……足は引っ張るなよ」

 

「もちろんだ」

 

 それだけ言うと、二体のトランスフォーマーは並んで走り出した。

 

  *  *  *

 

 二体が現場に着くと、そこは悲惨な有様だった。

 道路脇の崖が崩れ、道が完全に土砂に埋もれている。

 ジョルトはただちに各種センサーを最大感度で働かせ、コーリーの居場所を探る。

 

「…………いた!」

 

 土砂の下にコーリーの生体反応を確認、上手いこと隙間に入り込んでいて潰されずにすんだらしい。

 後はこの土砂をどけるだけだ。

 二体はそれぞれ土砂を掘り始める。

 しかし、量があまりにも多い。

 バラバラに掘っていては、先にコーリーの体力が尽きてしまう。

 

「このままじゃダメだ。協力して掘ろう!」

 

「……誰がディセプティコンなんかと」

 

 サイドウェイズの提案を、ジョルトは突っぱねる。

 

「そんな場合じゃないだろ! コーリーが死にかけてるんだぞ!」

 

 頑迷なジョルトに、サイドウェイズは詰め寄った。

 

「……分かってるよ。分かってんだよ! 俺が間違ってるってことぐらい!」

 

 血を吐くような声で、ジョルトは叫んだ。

 その剣幕に、サイドウェイズは一歩引く。

 

「でも俺たちは今までずっと戦争してんだぞ! 今更協力なんかできるわけないだろう!」

 

 もう長いこと、本当に長いこと、オートボットとディセプティコンは戦っている。

 ジョルトの戦友も多くが戦いの中で死んでいった。

 今更、どうしろと言うのだ?

 

「…………」

 

 サイドウェイズは黙ってそれを聞いていた。

 

「おまえもおまえだ! ディセプティコンの癖に、村の連中と仲良くなりやがって! 何でそんななんだよ! そんなだから、そんなだから……」

 

 地面に膝を突き、ジョルトは首を垂れる。

 

「嫌いになれねえだろうが……」

 

 泣きそうな声で、ジョルトはこぼす。

 オートボットの戦士はディセプティコンと戦うのが宿命、ずっとそう思ってきたのに。

 それを聞いて、サイドウェイズも静かに言葉を発した。

 

「……最初は芝居だったんだ。ああいう態度を取れば、油断を誘いやすいだろうって、そう思った」

 

 ジョルトは頭を上げた。

 サイドウェイズは泣きそうな顔で言葉を続ける。

 

「……でも、いつのまにか、本当にこの村の人たちが好きになってた。……おかしいよな、俺はディセプティコンなのに」

 

 ジョルトは何も言うことができなかった。

 戦闘と破壊をばらまくはずのディセプティコンの一員であるサイドウェイズにとって、それは許されないことなのだ。

 

「…………何やってるんだろうな」

 

 ふと、ジョルトが漏らした。

 

「こんな時に自分語りして……。そんな場合じゃないのにな。さあ、コーリーを助け出すぞ! 手伝え!」

 

 そう言うとジョルトは土砂に向かい合う。

 サイドウェイズは泣き笑い、ジョルトの隣で土砂をかき分け始めた。

 

  *  *  *

 

「…………」

 

 雨風の吹き荒れる中、学校の出入り口の前でクリスは落ち着か投げに立ち尽くしていた。

 

「落ち着けって、ヴィレッジャーさん」

 

 リセッターが声をかけるが、クリスはやはり落ち着かない。

 

「……やっぱり、僕も行ってくる!」

 

「いや、待てって! 今行っても邪魔になるだけだ!」

 

「だからって、ここでこうしていられない! コーリーは僕の息子なんだ! ……!」

 

 駆け出そうとするクリスは、その時気が付いた。

 校門からこちらに向かって来る二つの影に。

 

「あれは……、ジョルト! サイドウェイズ!」

 

 それは肩を並べて歩く二体のトランスフォーマーだった。

 

「コーリー……!」

 

 青いオートボットが腕に抱えている小さな影を見つけて、クリスは堪らず走り出した。

 二体の足元まで駆けて行くと、何よりも大事な息子の安否を確かめる。

 

「コーリー! 大丈夫か、コーリー!」

 

「大した怪我はないが、酸欠と精神的ショックで気絶してる。すぐに医者に見せたほうがいい」

 

「ああ、分かった!」

 

 医療員たるジョルトの言葉に、クリスではなく後ろに付いてきたリセッターが答え、踵を返して校舎のほうへ駆けて行く。

 

「コーリー……、無事で良かった……」

 

 クリスは安堵のあまり地面に崩れながら、涙を流す。

 二体のトランスフォーマーも柔らかい笑顔を浮かべるのだった。

 

  *  *  *

 

 コーリーに大事はなく、他に大した怪我人も出なかった。

 しかし、ここで思わぬ問題が浮上した。

 

 土砂崩れでアニマルクロッシングが孤立したため、ルウィー首都から救急隊が送られて来たのだ。

 

 そこでジョルトは思わぬ再会をすることになった。

 

  *  *  *

 

「いや~、まさかここでジョルトと会えるとはな~」

 

「ホントホント! まさに運命のいたずらだぜ!」

 

 相変わらず呑気ながら、どこか逞しくなったスキッズとマッドフラップに、ジョルトは苦笑する。

 とりあえず喧嘩しつつもちゃんと仕事を手伝っているあたりに成長を感じる。

 災害救助に協力するために救助隊にくっ付いて来た彼らと再会したジョルトは、だいたいの現状を双子から聞かされることになった。

 色々と驚くべきことだらけだが、自分はまあいい。無事オートボットと合流できそうだ。

 問題は……。

 

「それで、あいつはどうするんだい?」

 

 スキッズが、ヴィレッジャー親子を始めとした村人が村の畑や建物を直しているのを眺めているサイドウェイズを見やる。

 

「……少し待っていてくれ」

 

 ジョルトがそう言うと、双子は頷く。

 そんな双子を置いて、ジョルトはサイドウェイズのほうへ歩いていった。

 そしてサイドウェイズの隣に立つと、少しためらいながらも声をかけた。

 

「……これからどうするんだ? ディセプティコンに合流するのか?」

 

 その問いに、サイドウェイズは首を横に振る。

 

「言っただろう。もう、戦いには戻りたくないって。……旅に出ようと思う」

 

「ここにいりゃいいだろう。上手くやってるんだし」

 

 だが、サイドウェイズは再び首を横に振った。

 

「メガトロンは裏切りを許さない。ここにいたら、みんなを巻き込むかもしれないからな」

 

「……なあ、良かったらオートボットに来ないか?」

 

「残念だが、ディセプティコンは俺にとってやっぱり仲間だ。オートボットに鞍替えする気にはならない。それに、風の吹くまま気の向くままってのも面白そうだ」

 

 それならば、もはや何も言うまい。

 

「そうか、……まあ、達者でな」

 

 ジョルトはそう言うと、憮然とした、しかし照れたような顔で右手を差し出す。

 一瞬、サイドウェイズは虚を突かれたような顔になるも、すぐに笑顔になってその手を握り返すのだった。

 




二週間ぶりのトランスフォーマーアドベンチャーは、グリムロック回。
そんな軽い罪だったのかグリムロック。
ストロングアームはこれからの成長に期待。
あのダニ型は、是が非でも手元に置いとけよスチールジョー。

あと、今回のゲストについて、ちょっと説明。

アニマルクロッシング
ど○ぶつの森の英語名。住人もそのパロディ。実は、作者はやったことがない。

クリス・ヴィレッジャー、コーリー・ヴィレッジャー
言うまでもなく、モデルはトランスフォーマーアドベンチャーのあの親子。
名前は初代アニメのウィトウィッキー親子の声優さんから。
苗字は村人の意。

リセッターさん
ええ、もうそのまんま。

他に多分、タヌキっぽい商人とか、カメっぽい村長とか、カッパっぽい船頭さんとかがいる。

次回は、閑話的な話。……作者がこう言う時は、つまりディセプティコンとレイちゃんの話です。

そしてその次は、いよいよ、騎士たちの物語。
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