超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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ダイノボット編、第二話です。


第41話 ダイノボットの集結

 昇る朝日が、南海の孤島のジャングルを照らす。

 ネプテューヌたちがキャンプを築いたのとは山を挟んで島の反対側。

 そこは様々な植物が生い茂り、鳥や虫や獣が生命を謳歌する、まさに楽園だ。

 だが、その楽園に不釣り合いな物があった。

 ジャングルの木々を切り倒して建造された巨大な建造物である。

 島に点在する古代の遺跡とは違う、明らかに近代的な物だ。

 あちこちから生えたパイプから毒々しい色の廃液を地面や川に垂れ流し、天に向かって伸びる煙突からは排煙をまき散らす。

 美しい大自然の中にあって、あまりにも攻撃的な雰囲気に満ちている。

 さらに建物は増設中であり、クレーン車が物資を吊り上げ、ホイールローダーとブルドーザーが土を退け、ミキサー車がコンクリートを流し込む。

 建物の横では地面が大きく掘り返され、その穴の底では巨大なパワーショベルが地面を掘り返し、それを脇に控えたダンプカーとダンプトラックに積み込んでいた。

 作業を続ける重機群は、まごうことなくコンストラクティコンだ。

 そう、この建造物こそが、ディセプティコンの臨時基地なのである。

 

  *  *  *

 

「ダイノボットだと?」

 

 その基地の司令室では、ドレッズとリンダが昨晩のことをメガトロンに報告していた。

 

「は、はい……。おっそろしい強さで、連れてったトランスオーガニックは全滅、アタイたちだけが命からがら逃げてきたわけでして……」

 

 跪いて奏上するリンダだが、不機嫌に表情を歪めていくメガトロンに体を震わせる。

 

「と、とにかく我々だけでは戦力が足らないと判断し、撤退したわけです。次こそはオートボット共々倒してご覧に入れます」

 

 すかさずクランクケースがフォローを入れるが、破壊大帝の表情は変わらない。

 

「どう思う?」

 

 メガトロンは頭を上げないドレッズとリンダを睥睨したまま、後ろに並ぶ二つの影にそう言った。

 

「興味深いですね。トランスオーガニックの再生能力を上回るとは、絶大な破壊力を持つことは間違いありません」

 

 影の一つ、紫の巨体に赤い単眼のショックウェーブが、穏やかに発言する。

 自身の作品を倒されたにも関わらず、悔しさをまったく感じていないようだ。

 

「……メガトロン様、俺はどうも気乗りしません。こんな得体の知れない島、さっさと引き上げましょうよ。エネルギーの採掘なんざ他でもできるじゃないですか」

 

 一方、もう一つの逆三角形のフォルムの影、もちろんスタースクリームは、消極的な意見を述べる。

 それを聞いたメガトロンはオプティックをさらに鋭くする。

 

「黙れ、この臆病者めが! この島にはこれが大量に眠っておるのだ! この、エネルゴンクリスタルがな!」

 

 ピシャリと反論を封じ、机に上に置かれた容器から紫色の結晶を摘み上げた。結晶は花のように艶やかで、脈打つように光りを発している。

 

「不安定だが莫大なエネルギーを秘めた結晶だ。この島に埋蔵されている全てを手に入れればゲイムギョウ界どころか、宇宙の全てを支配できる」

 

 そして、部下たちを見回して宣言する。

 

「それを阻む者は、それが誰だろうと打ち倒すのみだ! そのダイノボットとやらもな!!」

 

 もちろん破壊大帝の言葉に異を唱える者はこの場にはいない。

 

「ちょいとお待ちを、メガトロン様。俺からもご意見を」

 

 いや、どうやら命知らずがいたようだ。

 メガトロンが声のしたほうへ剣呑な視線を向けると、そこには小さなトランスフォーマーがいた。

 猫背で眼の大きさが左右非対称のズングリした小型トランスフォーマーで、背丈は人間の膝より低い。

 頭に無数のコードを接続していて、それがまるで髪の毛のように見える。

 

「ブレインズ、御前であるぞ。口を慎め」

 

「いやいや、これは必要なことですぜ」

 

 ショックウェーブが穏やかに制するが、その小型トランスフォーマー、ブレインズは黙らない。

 

「知っての通り、この基地ではショックウェーブの研究成果であるトランスオーガニックを量産してるわけですけどね。その製造にはエネルゴンクリスタルが必要不可欠なわけですわ」

 

「ブレインズ」

 

 声を低くするショックウェーブに、メガトロンは手振りで止めなくていいと示す。

 

「トランスオーガニックってのは、単純にモンスターをサイボーグにしたもんじゃありやせん。有機生物と機械を細胞レベルで融合させたまったく新しい生き物なわけです。もちろん普通ならお互いに拒否反応を起こして生き物として機能しないはずなんですがね」

 

 ブレインズの話に、リンダは意味不明な念仏でも聞いているかのような顔になり、ドレッズの面々も着いていけてないらしいく首を傾げている。

 意外にもスタースクリームはフムフムと頷いていた。

 

「で、それを可能にするのがこのエネルゴンクリスタル! こいつの持つ独自のエネルギーは有機と無機を結びつける力がある。問題はそのエネルギーにゃ未知の部分が多く、しかも波長が酷く不安定なこってす」

 

「つまり、不確定要素が多くて、何が起こるか分からないと」

 

 長いブレインズの話を要約するスタースクリーム。

 小型トランスフォーマーはそれに頷く。

 

「でもってその影響をモロに受けるトランスオーガニックも、不安定なもんなわけで。事実、トランスオーガニックは計算してたより、10%も増殖率が高いんでさあ。それにコントロールするための高周波もだんだん効かなくなってきてやす」

 

「問題ない、想定の範囲内だ」

 

 懸念を述べるブレインズに、ショックウェーブがその意見を封殺する。

 

「そもそも、それを制御するのがおまえの役目だろう」

 

「そりゃそうですけどね。限界ってもんがあります」

 

 言い合うショックウェーブとブレインズ。

 どうやらトランスオーガニックについての危機感は、両者の間で隔たりがあるらしい。

 

「トランスオーガニックについては、おまえたちに任せる。それよりクリスタルだ。最も埋蔵量の多い場所はどこだ?」

 

 メガトロンは話はさせたものの、あまり興味はないらしく本来の目的を聞く。

 

「はいはい、それでしたら……」

 

 頭のコード越しにブレインズはモニターを操作し、島の地図を出す。

 

「ここですね。この島の中央部、山のほうでさ」

 

  *  *  *

 

 ――オ…ティマ…、オプ……ス。

 

 オプティマスは夢を見ていた。

 ある日、この島の太古の民が地面を掘り返したら美しい石が出て来た。

 紫色の半透明で、脈打つように光る美しくも不思議な石だ。

 その石がもっと出てこないかとさらに地面を掘ると、今度は大きな骨が出て来た。全部掘り出してみると、それは全部で四匹分あった。

 見たこともない動物の骨を民は竜の骨だと考え、御神体として祭り、豊穣と息災を祈った。

 やがて、海の向こうから別の国の兵士たちがやってきた。

 島の民は兵士たちを快く歓迎したが、兵士たちはそれに火と武器で応えた。

 人々は抵抗したが、兵士たちは情け容赦なく家々焼き人々を傷つけた。あの美しい石を欲するがゆえだ。

 ならばくれてやるから去れと人々が石を差し出すと、兵士たちはもっともっとあるはずだ。全部よこせ。土地も実りも俺たちの物だ。おまえらは死ねとさらに攻撃してきた。

 万策尽きた人々は、王家の姉妹姫を中心に竜の骨にあの美しい石を捧げ、祈った。

 どうか、お守りくださいと……。

 

 そして、祈りは通じた。

 

 四つの竜の骨は石を取り込んで巨大な戦士の姿になった。

 戦士の力の前には兵士たちはとても敵わない。

 吐き出される炎の前に、剣も槍も融け落ち。

 大地を揺るがす突進に、鎧も盾も紙のよう。

 巻き起こる風の前に矢は無力で。

 水中から現れた影によって、船が沈められ。

 恐怖と悔恨に満ちた命乞いは聞き入れられず。

 兵士たちは多くの仲間を失いながら逃げ帰ることしかできなかった。

 

 人々はこれで戦いは終わった、平和が戻ったと歓声を上げ、竜の戦士たちに感謝したが、戦士たちはさらなる戦いを望んだ。そのために生まれたのだと。

 

 行き場を失った力を持て余し、暴れ続ける竜の戦士たちに人々はほとほと困り果ててしまった。

 しかし、王家の姉妹姫が自分たちが何とかしてみせると言い出した。

 止める周囲を振り払い。姉妹姫は暴れる戦士たちの前に臆さず立つと、こう言った。

 

 私たちと勝負しよう、と。

 

「オプティマス! オプティマス!!」

 

 意識が再起動し、オプティマスは夢から現実に引き戻された。

 ゆっくりとオプティックを開くと、そこには青いオートボット、ジョルトがいた。

 

「よかった! 俺の技術じゃ治しきれるか心配で……」

 

 ホッと安堵の息を吐くジョルト。医療員がそれでいいのかというツッコミはこの際なしだ。

 首を巡らして周囲を見ると、女神とオートボットたちが集まっていた。

 アイアンハイド、ミラージュ、バンブルビーはジャズに支えられている。

 ノワールにブラン、ベール。そしてプルルートとピーシェ。ついでにホィーリーもいる。皆心配そうな顔でオプティマスを見ていた。

 だが、紫の姉妹の姿はない。

 急速に記憶映像がフラッシュバックする。

 ジャングル、古代遺跡、トランスオーガニック、そしてダイノボット。

 

「……ネプテューヌ!」

 

 ガバッと上体を起こしたオプティマスはパートナーの姿を探す。

 

「ビーから聞いたわ。どうやら、とんでもないのが現れたらしいわね」

 

 少し攻めるような調子で、腕を組んだノワールが声を出した。

 

「面目ない……。ジャズ、状況は?」

 

「ああ、オプティマスたちがネプテューヌを探しに行ってから、しばらしてもみんな帰ってこないもんだから、俺たちも探しに行こうかと考えてたんだが、そしたら機械仕掛けのゾンビみたいなのが団体さんで襲ってきてな」

 

「トランスオーガニックだ……。ショックウェーブが創り出したらしい……」

 

 副官の報告に、オプティマスは顔をより厳しくする。

 高い生命力と圧倒的な質量を備えた難敵。

 昨晩の戦いでも、もう少しでやられるところだった。

 ジャズは報告を続ける。

 

「それで戦ったが多勢に無勢、キャンプを放棄してジャングルに逃げ込むのが精一杯でさ。何とか奴らを撒いて、ジャングルを探索してたら倒れてる二人を見つけた……、と言うわけ。ちなみにこっちは何とか全員無事だぜ」

 

「そうか……、皆無事で良かった。しかし、こうしてはいられんな。ネプテューヌたちを助けに向かわねば」

 

 立ち上がろうとするオプティマスだが、少しふらついてしまい、ジョルトがすぐさまそれを支える。

 

「無理しないほうがいい!」

 

「いや大丈夫だ……。さて、ネプテューヌ救出のためにはまず……」

 

「オプティマス、本当に無理はやめといたほうが……」

 

「大丈夫だと言ってるだろうが!!」

 

 不機嫌そうに声を張り上げるオプティマスに、ジョルトがビクリと体を震わせ、他の女神やオートボットも目を丸くする。

 

「おいおい、どうしたんだよ、オプティマス? らしくもない」

 

 あえて軽い調子で問うジャズだが、しかしそれでも動揺を隠しきれていない。

 

「『あ、あの』『司令官』『本当にダイジョブですか?』」

 

「なんか~、今日のオプっち、感じ悪い~」

 

 バンブルビーが心配げに、プルルートが不満げにそれぞれ声を出す。

 それを聞いて、オプティマスはハッとなって仲間たちを見回した。

 誰もが訝しげな顔をしている。代表してアイアンハイドが聞いてきた。

 

「オプティマス、どうしちまったんだ? おまえ、どっかおかしいぞ」

 

「……ああ、そうだな。すまない……」

 

 本当にらしくない。

 なぜだか、胸の内で激情が渦巻いている。

 その理由はまったく分からなかった。

 

 …………否。

 

 本当は分かっている。

 

『あいつ、弱い。弱い奴に、姫様、守る資格、ない』

 

 昨晩、グリムロックが言った言葉だ。

 自分にはネプテューヌを守ることはできないと、あの騎士はそう言ったのだ。

 それが、オプティマス自身にさえ予想外なほど心に突き刺さり、怒りを引き起こしている。

 

 ――いかんな、オートボットの総司令官たるもの、常に冷静であらねば……。

 

 大きく排気して、意識を整え、ブレインサーキットをクールダウンさせる。

 それでもスパークから沸きあがる激情は消えないが、ずいぶんマシになった。

 

「……すまない。しかし、急いだほうがいいのは確かだ。グリムロックは残る仲間を復活させる気だ。そうなればネプテューヌたちを助け出すのが困難になる」

 

「そんなにヤバい相手なのか? その、ダイノボットっていうのは」

 

 ミラージュが控えめにたずねると、オプティマスは緊迫した顔で頷いた。

 

「彼らは伝説の戦士だ。たった一人でも一つの軍隊に匹敵する破壊力を持っている。それが、全部で四人だ」

 

「確かにマズイわね……」

 

 固い表情のブラン。オプティマスとバンブルビーを一蹴するほどの存在が全部で四人。確かに危険だ。

 

「しかし、なぜそのグリムロックは二人をさらったのでしょう?」

 

 当然の疑問を浮かべるベールに答えたのも、やはりオプティマスだ。

 

「グリムロックはネプテューヌたちを自分が忠誠を誓った姫君だと思い込んでいるのだ」

 

「つまり……、勘違い!?」

 

 あんまりな答えに驚くベールに、オプティマスは厳しい顔で頷く。

 

「ゆえに真実に気付いた時、グリムロックがどうでるか分からない。……急ごう。この島にはディセプティコンもいる」

 

「しかし……、どこへ?」

 

 アイアンハイドがたずねると、オプティマスは鋭くオプティックを細める。

 

「残りの騎士を復活させることができる場所……、山の上にあるセターン王国の王宮だ」

 

  *  *  *

 

 島の中央部に存在する山を、巨大な金属の人型が登っていた。

 それはセターン王国の騎士だと名乗るトランスフォーマー、グリムロックだ。

 霧に包まれた山道を勝手知ったる様子で歩くグリムロック。その手には、相変わらずネプテューヌとネプギアが握られていた。

 

「ねえ、ちょっと! だからわたしたちはハイちゃんたちじゃないんだってば!!」

 

「降ろしてください! お願い、降ろして!!」

 

 なんとか勘違いを正し、解放してもらおうと訴える姉妹だが、グリムロックは聞き入れない。

 

「ハイ姫様、また適当なこと言って、仕事から逃げる気。ちっとも変わらない」

 

 そう言いつつも、どこか楽しげな雰囲気さえ滲ませるグリムロック。

 どうやら彼の本来の主であるハイ・セターンも、ネプテューヌと似た気質の持ち主らしい。

 

「違うんだってえ……」

 

 力なく否定するネプテューヌ。ネプギアの表情も沈んでいる。

 オプティマスは、バンブルビーは、他のみんなは無事だろうか。

 と、グリムロックが声を出した。

 

「見えてきた」

 

「「え?」」

 

 その声に顔を上げると、そこには石造りの巨大な建物が鎮座していた。

 苔とシダに覆われ、異国情緒あふれる彫刻があちこちに刻まれている。

 

「何ここ? コッパ城? それともガノソ城?」

 

「違う……。ここ、セターン王国の王宮。姫様たちと、我らの、家」

 

 ネプテューヌの質問に、懐かしそうに答えるグリムロック。

 彼は巨大な城門を潜り、王宮の中を進んでいく。

 やがてグリムロックは、四隅に戦士の像が彫刻され、祭壇のある部屋で止まった。

 戦士の像の一つは明らかにグリムロックを模した物だ。そして祭壇の上にはネプギアが昨晩見た向かい合う女性像と、あの筐体が置かれている。

 

「仲間たち、島のあちこちで眠ってる。でも、ここからなら、全員呼べる」

 

 聞かずとも説明してくれるグリムロック。

 つまり、この筐体で他のダイノボットを甦らせろと、そういうことか。

 グリムロックは祭壇の上に姉妹を優しく降ろし、期待に満ちた視線を送る。

 

「どうしよう、お姉ちゃん……」

 

「うーん、さすがにこの怪獣モドキが増えるのはちょっと困るかなー……」

 

 ネプテューヌとネプギアは顔を寄せ合ってヒソヒソと話す。

 

「どうした? 早くする」

 

 せっつくように、グリムロックが声を上げる。

 

「あ、あのさ、グリムロック! わたしたち実は昨日から何も食べてなくてさ! 良ければ何か食べてからでもいいかなあ? なんて……」

 

 せめて時間を稼ぐべく、食事を提案するネプテューヌ。

 お腹が減っているのは本当である。昨晩は色々あって夕飯を食べられなかった。

 

「分かった、腹が減っては戦はできない。我、グリムロック、食べる物探してくる」

 

 グリムロックは素直に頷くと、足音を響かせて部屋を出て行った。

 ホッと一息つくネプテューヌとネプギア。

 

「今の内にみんなと合流しよう!」

 

 そう言うやネプテューヌは女神化する。

 ネプギアもそれに倣う。

 

「うん!」

 

 二人は、王宮の壁の崩れた箇所から飛び出していった。

 

  *  *  *

 

 王宮の前庭に当たる場所。

 ここはグリムロックが入ってきた正門の他に、島の東西に通じる二つの門がある。

 その東門付近で、オプティマスたちは息を潜めていた。

 ジョルトはピーシェとついでにホィーリーを守るため、少し離れた所に待機している。

 

「では、これよりネプテューヌたちの救出作戦を開始する。まずは内部の構造が知りたい。バンブルビー、ミラージュ、偵察を頼む」

 

「『合点!』」

 

 二つ返事で了解するバンブルビーだが、ミラージュは王宮跡の本殿のほうを見上げた。

 

「どうやら……、その必要はないようだぞ」

 

「何?」

 

 つられてオプティマスも見上げると、まさに紫の女神姉妹がこちらに向かって飛んでくるところだった。

 

「ネプテューヌ!」

 

「オプっち! みんな!」

 

 降りて来たネプテューヌとネプギアは、女神化を解いて地面に着地すると、仲間たちに駆け寄ろうとする。

 

 だが、その時!

 

 どこからかエネルギー弾が飛来し、ネプテューヌとオプティマスの間に着弾、爆発を起こす。

 

「きゃあ!」

 

「お姉ちゃん!」

 

 爆風に煽られて倒れるネプテューヌだが、ネプギアに支えられて立ち上がる。

 

「ネプテューヌ! ……この攻撃は!」

 

 ネプテューヌを心配しつつも、イオンブラスターを背中から抜き、油断なくエネルギー弾の飛来した方向を睨む。

 

「フハハハ! これはこれは、こんな所で出会うとは奇遇だなプラァァイム!」

 

 果たしてそこには、灰銀の巨体に傷の走った悪鬼羅刹の如き顔、ディプティコン破壊大帝メガトロンが右腕のフュージョンカノンから煙を上げて立っていた。

 

「メガトロン……!」

 

 憎々しげにオプティックを鋭く細めるオプティマス。

 メガトロンはそれを見てニヤリと笑った。

 

「それにパープルハートと情報員の小僧もいっしょか。貴様らにはこの顔の傷と右腕の借りをたっぷり返してやる。……ディセプティコン軍団、攻撃(アタック)!!」

 

 号令とともに、霧の中から次々とディセプティコンが姿を現す。

 コンストラクティコンとドレッズ、そしてスタースクリームとショックウェーブだ。

 さらには無数のトランスオーガニックもいる。

 

「ッ! オートボット戦士、迎え撃て!!」

 

 オプティマスは素早く仲間たちに指示を飛ばすと、メガトロンに向かって突撃していく。

 オートボットの戦士たちもそれに続き、女神たちも援護すべく女神化する。

 

 そして。

 

「えへへ~、やっと会えたね~、ショッ君~」

 

 いつのまにか戦場のど真ん中にいるプルルートは、紫の巨体を前にニヘラと笑う。その笑みは、獲物を見つけた肉食獣の如し。

 その体が光に包まれ女神化する。

 恐怖の女神、アイリスハートへと。

 

「今日こそ、あなたを這いつくばらせてぇ、私の靴を舐めさせてあげるわぁ♡」

 

 嗜虐心に溢れた薄ら笑いを浮かべ、手に持った蛇腹剣を妖艶に舐める。

 その普段とギャップのある姿に、女神とオートボットは面食らう。

 

「あ、あれがプルルートなの?」

 

「聞いてた以上の変貌ぶりだな……」

 

 ただならぬ気配にノワールとブランが冷や汗を流す。

 そんな周囲を気にせず、プルルートは己の獲物に斬りかかる。

 

「サンダーブレード!!」

 

 雷を纏った斬撃を、左腕のブレードで受け止めるショックウェーブ。

 

「君か。相変わらず論理性のない」

 

「ウフフフ、論理を気にしてちゃぁ、絶頂できないのよぉ?」

 

 ペロリと舌なめずりをし、プルルートは次なる攻撃に移る。

 それを砲撃するショックウェーブ。

 一方、エナジーブレードを展開したオプティマスと、デスロックピンサーを展開したメガトロンは鍔迫り合いを演じていた。

 

「フハハハ! この腕はな、オプティマス。貴様らを捻り潰すためにショックウェーブに作らせた特別製よ! ここが貴様の墓場だ!!」

 

「クッ……! そうはいかんぞメガトロン!」

 

 凄まじいパワーでオプティマスを押し切ろうとするメガトロン。

 オプティマスはその腹を蹴っていったん距離を置くと、イオンブラスターでメガトロンを銃撃する。

 だがメガトロンは堪えた様子はない。

 

「相変わらずの豆鉄砲よな、オプティマス! 本当の攻撃というものを思い出させてやる!」

 

 高笑いとともに右腕をフュージョンカノンに変え、乱射する。

 素早くよけるオプティマスだが、降り注ぐエネルギー弾は前庭の地面や装飾を破壊していく。

 そこへメガトロンの背後からネプテューヌが飛んできて、背中に斬撃を浴びせる。

 

「クリティカルエッジ!!」

 

「ぐお!?」

 

 斬撃を受けてよろめくメガトロンだが、すぐさま体勢を立て直し振り向きざまネプテューヌに向かってフュージョンカノンを撃つ。

 

「こうるさい、羽虫めが! 叩き落としてくれる!」

 

「させん!」

 

 オプティマスがビークルモードになってメガトロンに突撃する。

 さすがに耐え切れず、倒れるメガトロン。その体にすぐさまロボットモードに戻ったオプティマスが馬乗りになる。

 

「これで終わりだ! メガトロン!」

 

「終わりにしてよいのは俺だけよ!」

 

 エナジーブレードを構えたオプティマスを渾身の力で投げ飛ばすメガトロン。

 両者は即座に立ち上がり、睨み合う。

 オプティマスの横に、ネプテューヌが降り立つ。

 

「ネプテューヌ、決めるぞ! 援護してくれ!」

 

「分かったわ!」

 

 並び立つ二人のスパークとシェアエナジーが共鳴し、絶大な力を生み出す。

 

「ふざけるな! 今度こそ貴様らを葬り去ってくれる!!」

 

 メガトロンもまた自身の力の源パワーコアとダークマターを震わせる。

 そして、どちらともなく相手に向け駆け出す。

 

 だが。

 

「ぐおおおおおお!!」

 

「!?」

 

「何だ!?」

 

 突如響く天地を揺るがすが如き咆哮に、オプティマスとメガトロン、そして戦場にいた全ての者がそちらを向く。

 咆哮の発生源は前庭の正門、そこに立つ存在だ。

 金属に覆われた、オプティマスの二倍はある巨大な人型。

 

「何だ、アレは……!?」

 

「来たか……、グリムロック!」

 

 それを見て呟くメガトロンとオプティマス。

 グリムロックはもう一度咆哮する。

 

「王宮を荒らす不届き者! グリムロック、容赦しない!!」

 

 そしてギゴガゴと音を立てて二足歩行の竜へと姿を変え、地響きを立てて両軍のど真ん中に突っ込んでくる。

 その威容と質量に、オートボットもディセプティコンも女神たちも後退する。

 

「戦わんか、この臆病者どもめが!!」

 

 しかしメガトロンは臆することなくグリムロックに向けてフュージョンカノンを発射する。

 見事命中し、大きな爆発を起こすも、グリムロックは大したダメージを受けていない。

 

「何だと!?」

 

 爆炎を突っ切り大口を開けて迫るグリムロック。

 メガトロンは咄嗟に横に跳んで牙だらけの大顎をかわすも、すかさずグリムロックが振った尻尾に打ち据えられる。

 

「ぬおおおお!?」

 

 破壊大帝の体は何十mも飛んで王宮の石像に激突して止まった。

 

「メガトロン様!」

 

 そこに珍しく声を震わせてショックウェーブが駆けよる。

 

「メガトロン様! ご無事ですか!?」

 

「ぬううう……。何と言うパワーだ……」

 

 頭を振って呻くメガトロン。

 一方、女神たちは戦慄していた。あの破壊大帝をこうもあっさり降すとは、とてつもない強さだ。

 

「ぐおおおおお!!」

 

「調子に乗るでないベ! オラのパワアなら……ぎゃあああ!」

 

 大きさが同じくらいのスカベンジャーは対抗意識を燃やしてグリムロックに掴みかかるが、逆に腕を噛みつかれ振り回された。

 他のディセプティコンたちが四方から銃撃を浴びせるも物ともせず、グリムロックは口から猛炎を吐き、あたりを薙ぎ払う。

 その炎の勢いを前に、女神もトランスフォーマーも近づくことができない。

 まるで暴君の如き暴れっぷり。さしずめ暴君竜とでも言おうか。

 

 だが、メガトロンの闘志は衰えない。

 

「かくなるうえは……、コンストラクティコン、合体せよ! デバステーターで叩き潰せ!!」

 

 その命令に、コンストラクティコンたちが集結する。

 

「カーッペッ! 仕方がねえ、行くぞ野郎ども! コンストラクティコン部隊、トランフォーム、フェーズ1!」

 

 コンストラクティコンたちはリーダーであるミックスマスターの指示の下、いったんビークルモードに戻る。

 

「アゲイン、トランスフォーム、フェーズ2!!」

 

 そして7体が変形し、組み合わさり、積み重なって誕生するのがグリムロックの巨体さえ遥かに超える巨大な合体兵士、デバステーターである!

 

「グルルルゥゥ…、我、グリムロック! 大きい敵にも、恐れ為さない!」

 

 自分以上の大きさの敵にも、グリムロックは怯まず向かっていく。

 天災にも例えられる巨大トランスフォーマー同士の戦いだ。

 

 まずはデバステーターが先手だ。

 全身の火器をばらまき、グリムロックを牽制する。しかしグリムロックは気にせずデバステーターに突撃し、その腕に噛みつく。

 痛みに咆哮を上げるデバステーターは噛まれていないほうの腕でグリムロックを引きはがそうとするが、グリムロックはビクともしない。

 グリムロックはさらに顎の力を強めて、この巨大な怪物の機械でできた肉を食い千切ろうとするが、いかに暴君竜とて頑丈なデバステーターの肉体にこれ以上のダメージを与えることはできない。

 デバステーターはグリムロックごと腕を振り回し出した。

 見た目にはネズミあたりに噛まれた子供のようだが、何せ噛まれてるほうも噛んでるほうも大きさが半端ではない。

 腕を振るうだけで、周りの遺跡の一部が吹き飛び、両陣営の上にバラバラと降り注ぐのだ。

 それから逃れるべく両陣営は戦い合う二体の怪物ロボットから距離を置く。

 やがて5回目に建物に叩き付けられて、グリムロックはようやくデバステーターの腕を放した。

 騎士の姿に戻って頭を振るグリムロックに、デバステーターの巨体がのしかかる。

 咄嗟に両腕でそれを受け止めるグリムロックだが、いかにダイノボットとて単純なパワーと重量の差をいかんともしがたく、地面に踏ん張ったまま動くことができなくなる。

 

「ぐぐぐ……!」

 

 グリムロックの大怪力を持ってしても跳ね返すことができず地面に両足がめり込んでいく。

 

「今の内だ! あの木偶の坊とオートボットどもをスクラップにしてしまえ!」

 

 さらに、メガトロンをはじめとしたディセプティコンたちが攻撃を再開する。

 

 危うし、グリムロック!

 

 数の差の前に、オートボットたちも女神たちもジリジリと押されている。

 状況を逆転する『何か』が必要だ。

 

 そう、昨晩のように!

 

「……しかたがない」

 

 ネプテューヌは息を吐き、王宮を目指して飛んで行った。

 

「お姉ちゃん? ……まさか!?」

 

 姉の意図に気付き、ネプギアも後を追う。

 思っている通りだとしたら、余りにも危険だ!

 

  *  *  *

 

 王宮の奥、あの祭壇の部屋。

 祭壇の上に降りたネプテューヌは、女神化を解き懐からハイ・セターンにもらったカードを取り出した。

 

「お姉ちゃーん!!」

 

 そこにネプギアも飛んできた。

 

「ネプギア?」

 

「お姉ちゃん、まって! グリムロックさんの仲間を起こす気なんでしょ、危ないよ!」

 

 必死に姉を止めるネプギア。

 姉は残りの騎士たちを復活させる気なのだ。

 グリムロック一体だけでも嵐のように危険なのに、他までやってきたら……。

 しかし、ネプテューヌは静かに言う。

 

「うん、分かってる。でも、こうしないとみんなやられちゃう」

 

「でも……」

 

「それにさ、グリムロックも乱暴だけど、悪い奴じゃないと思うんだよね。昨日は助けてもらったし、その恩は返さないと」

 

 そしていつもの調子で笑顔を見せる。

 

「ま、いざとなったら、逃げちゃえばいいんだし! 悩むより行動だよ!」

 

 そんな姉に、ネプギアも薄く微笑む。

 確かに、危険だとしても仲間たちを助けるために打てる手はそれしかない。

 

「だったら、これも使って」

 

 ネプギアは覚悟を決め、自分がハイ・セターンからもらったもう一枚のカードを差し出す。

 無言で、しかし決意を込めた表情でそれを受け取り、ネプテューヌは筐体と向き合う。

 そして、三枚のカードを続けて筐体に通す。

 少しの間、何も起きなかった。

 しかし、やがて地面が振動を始めた。

 

  *  *  *

 

 王宮のある山の西側に広がる湖、その湖底に戦士像が眠っていた。その巨体が振動を始め、湖の水が泡立ち始めた。

 

 島の北にある岩山の頂上に置かれた戦士像。その目に当たる部分が光り輝いた。

 

 南の谷の岩壁に、内側から破られたように大穴が開いていた。

 

  *  *  *

 

 王宮の前庭の戦いは、なおも続いていた。

 

「もう、ネプテューヌのやつ! どこに行ったのよ!」

 

「文句を言っても、しょうがありませんわ!」

 

 ノワールとベールが何体目かも分からないトランスオーガニックを斬り捨て突き刺しながら言い合う。

 

「フハハハ! そのままくたばるがいい! ハーッハッハッハ!!」

 

「我々は決して屈しない!」

 

 宿敵たちを前に勝利を確信し高笑いしながらフュージョンカノンを撃つメガトロンと、岩陰に隠れながらそれに撃ちかえすオプティマス。

 

 壮絶な戦いを繰り広げる両陣営。

 

 そして、デバステーターのパワーと重量に動くことができないグリムロックだったが、デバステーターもまたグリムロックの予想以上の怪力に押し潰しきれず、両者は膠着状態に陥っていた。

 と、どこからか地響きが聞こえてきた。

 それは最初は小さかったが、だんだんと大きくなっていく。

 始めの異変に気付いたのはグリムロックだった。

 

「……! 来てくれたか……!」

 

 続いて上空の敵を撃ち落としていたバンブルビーが、太陽を背に大きな影が飛んでいることを察知した。

 

「『……鳥?』」

 

 一見するとそれは鳥に見えた。だが違う、鳥のように翼のある竜、翼竜だ。

 巨大な翼と長い二本の尾を備えているが、それ以上に目立つのは頭が二つあることだ。

 双頭の翼竜は、見上げるバンブルビーを一瞥すると急降下してくる。

 途中にいた鳥形や昆虫型のトランスオーガニックを蹴散らしながら、デバステーター向けて一直線に。

 

「ヒョオオオオ!!」

 

 甲高い鳴き声を上げて降りて来た翼竜は、デバステーターの顔面を脚の爪で攻撃する。

 たまらず力をゆるめてしまったデバステーターをグリムロックが凄まじい力で跳ね飛ばす。

 

「風の騎士ストレイフ! 姫君のお呼びにより参上!」

 

「おお! ストレイフ!」

 

 少年的な響きを持つ声を出す翼竜、ストレイフの姿にグリムロックが嬉しそうな声を上げる。

 

「よう、グリムロック、久し振り! どれぐらいぶりだっけ? ええと……」

 

「ストレイフ、話、後! 王国を荒らす者、倒す、先!」

 

「リョーカイ!」

 

 グリムロックの横で羽ばたいて滞空し、懐かしげな様子のストレイフだが、グリムロックが一喝すると再び飛び上がると急降下してトランスオーガニックを掴み上げ、遥か上空まで運ぶとおもむろに放して落とす。

 グリムロックは再び暴君竜の姿になり、デバステーターに向かって吼える。

 デバステーターもまた大きく咆哮し、暴君竜に襲い掛かろうとする。

 だが、どこからか聞こえる地響きはいよいよ大きくなり、さらに怒声まで聞こえてきた。

 

「ウオオオオオオ!!」

 

 土煙を立て、トランスオーガニックを文字通り蹴散らしながら何かが突進してくる。

 それは四足で走る重戦車のような竜だ。

 首の周りをフリルのような物が覆っており、頭からは三本の角が生えている。

 その角で獣型トランスオーガニックを串刺しにし、巨体で踏み潰している。

 グリムロックがその名を呼ぶ。

 

「スラッグ!!」

 

「俺、スラッグ! 喧嘩大好き! 俺も混ぜる!!」

 

 とても元気な声でそう叫ぶと、デバステーターの前足に突進する。

 驚くべきことに、その体当たりはデバステーターの大木のような前足を弾き飛ばし、巨大な合体兵士を転倒させる。

 何とか起き上がろうとするデバステーターだが、何かがその背後で大きくジャンプした。

 それは背中に長い棘を三列、生やした竜だ。グリムロックの変形した暴君竜よりも細身で尾が長く、赤みがかっている。

 

「粉砕!!」

 

 そして、そのまま背中からデバステーターの背に落ちてきた。

 重量と勢いが乗っかり、絶大な衝撃となってデバステーターを襲う。

 たまらず、デバステーターは叫びを上げて倒れ込む。

 その背から降りてきた棘竜は、グリムロックの隣に並ぶ。

 棘竜にグリムロックは声をかける。

 

「スコーン」

 

「再会」

 

 棘竜、スコーンは短く応じた。

 反対側に角竜スラッグが並び、その背に翼竜ストレイフが降り立つ。

 四匹の竜が並び立つ姿は、壮大さすら感じさせる。

 

「大地の騎士スラッグ、風の騎士ストレイフ、水の騎士スコーン……、そして、我、炎の騎士グリムロック。セターン王国の四騎士、ダイノボット、ここにそろった!」

 

 喜ばしげにグリムロックは宣言した。

 ストレイフが声を出す。

 

「おいおい、グリムロック! こいつらを追い出すほうが先だろ! 積もる話は後々!」

 

「おお、そうだった! ダイノボット! 王国を荒らす『敵』全部、滅ぼす!」

 

「「「おおー!!」」」

 

 雄叫びを上げるダイノボットたち。

 

「……いかん!」

 

 オプティマスは気付いた。ダイノボットたちの言う『敵』はディセプティコンだけではない、自分たちも含まれているのだと。

 

「撃滅!!」

 

 案の定、棘竜がトランスオーガニックを蹴散らしながら、こちらに向かって迫ってくる。

 

「オプティマス、撤退しよう! これでは勝てない!」

 

 ジャズが、獣型トランスオーガニックをテレスコーピングソードで斬り伏せながら意見を言う。

 皮肉にも理性なく竜騎士たちに襲い掛かるトランスオーガニックたちが、オプティマスが判断に迷う時間を稼いでくれた。

 

「……やむをえない。ここはいったん退却だ!」

 

 ネプテューヌたちと残る仲間たちの安全を天秤にかけ、仲間たちを取る。

 司令官として正しい判断のはずだが、いつも以上にスパークがギシギシと軋む。

 それでも、その痛みを顔に出さず、オプティマスは仲間たちともに退いていった。

 

「なんという化け物だ!」

 

 メガトロンはデバステーターに炎を浴びせるグリムロックとスラッグを見て叫びに近い声を上げる。

 

「メガトロン様! 逃げましょう! こんなの勝てっこないですって!!」

 

 ストレイフに追いかけ回されながら、金切り声を出すスタースクリーム。

 

「論理的に考えて、私も賛成です」

 

 穏やかな中に若干興奮を滲ませながらも、ショックウェーブが冷静に進言する。

 僅かな時間だけ黙考していたメガトロンだが、スラッグの再度の突進を受けデバステーターが合体解除するのを見て考えを決める。

 

「ディセプティコン、退却! 退却だぁああ!!」

 

 その声を受け、ドレッズが、コンストラクティコンが、トランスオーガニックたちでさえただちに退却していく。

 スタースクリームは一番先に逃げ出した。

 

「くそう……! この屈辱、忘れんぞ……!」

 

 破壊大帝を名乗る自分が、破壊力で負けるなどと。

 だが、同時に冷静な部分がこうも囁く。

 あの力を上手く利用すれば、オートボットと女神を一掃できるのではないかと。

 竜の一体はオートボットを攻撃しようとしていた。つまり少なくとも、オートボットとダイノボットは味方同士ではない。

 

「……試してみる価値はあるか」

 

 次になる策を練りながら、メガトロンはエイリアンジェットに変形してその場を後にする。

 

「あの力、論理を超えているのか……?」

 

 最後に残ったショックウェーブは、穏やかに平静に、しかしかすかに声を震わせていた。

 

「興味深い。ぜひとも研究したいものだ」

 

 しかし、今は撤退が先だ。

 ショックウェーブはギゴガゴと音を立てて四輪のエイリアンタンクに変形すると、霧の中へ消えて行った。

 

 全ての敵が去ったのを感じ、ようやくダイノボットたちは戦闘態勢を解いて騎士の姿に戻る。

 ストレイフは翼竜の姿から、仲間内では小柄な、それでもオプティマスと同じくらいはある、マントを背負った騎士へ。

 スコーンは棘竜の姿から、長い尻尾がそのまま右腕になった巨躯の騎士へ。

 スラッグは角竜の姿から、肩に突起の生えた重武装の騎士へ。

 そしてグリムロックは、暴君竜の姿から、両肩に竜の意趣を持つ騎士の長へと。

 グリムロック以外の三人の頭部は騎士兜を思わせる形状をしている。

 

「俺、まだ戦い足りない。グリムロック、追っかけてっていいか?」

 

「だめだ、スラッグ。我ら、姫様たち、護るのが使命」

 

 鼻から火を噴きながら戦意を燻らせるスラッグをグリムロックが制する。

 その言葉に、スラッグは不満げながらも従う。

 

「グリムロック、姫様、何処?」

 

 スコーンが問うと、グリムロックは宮殿のほうを向く。

 宮殿の出入り口からは、ネプテューヌとネプギアが顔を出していた。

 どさくさに紛れて逃れようとしていたのだが、あまりの戦闘の激しさに、それも叶わなかったのだ。

 

「おお~、姫様たち久し振り! どれぐらいぶりかな、ええと……」

 

「姫様、再会、歓喜」

 

「俺、スラッグ! 姫様たち、また会えて、とっても嬉しい!」

 

 口々に再会を喜ぶダイノボットたち。

 その姿に半ば恐れながらも、ネプテューヌが口を開く。

 

「ええと、盛り上がってるところ悪いんだけどさ。わたしたち、お姫様じゃないんだよねー……」

 

 一瞬、場が凍った。

 これはしくじったか?

 しかし、次の瞬間。

 

「……ぶっ! アッハッハッハ! 姫様は相変わらず面白いこと言い出すなあ!」

 

「爆笑!!」

 

「俺、スラッグ! とっても面白い!」

 

 大笑いしだすダイノボットたち。

 どうやらネプテューヌの言葉は冗談と取られたらしい。

 ネプギアも必死に訴える。

 

「本当なんです! 信じてください!」

 

「ハッハッハッハ!! さあ、姫様たち、これから宴! 王国の復活祝い!!」

 

 楽しそうに笑うグリムロックは、逃げようとするネプテューヌとネプギアを摘み上げ、王宮の中へと入っていき、他のダイノボットたちも肩や背中を叩き合いながらそれに続く。

 

 ……と、その姿を岩陰から覗き見る者がいた。

 金の髪に青い目、黄色と黒の子供服。

 

 ピーシェである。

 

 その肩にはホィーリーも張り付いている。

 彼女は護衛役のジョルトが少し目を離した隙に、抜け出してここまでやって来たのだ。

 戦闘に巻き込まれなかったのは幸運としか言いようがない。

 ピーシェはジッとダイノボットたちの消えていった王宮の入り口を見つめていたが、やがて意を決したように走り出し、入り口へと飛び込んでいった……。

 




トランスフォーマーアドベンチャーはジャズ登場回。
ジャズはスマートでカッコいいですね。
でもちょっとアドリブが過ぎたかも……。
いや、好きなんですけどね、ビーストウォーズ。

それはともかく、小ネタ解説。

トランスオーガニック
もともとはトランスフォーマー2010に出てきた、クインテッサ星人が作り上げた生物と機械の融合体。
クインテッサ星人にも制御できず、セイバートロン星の地下に封印されていた。
ドリラーさんの元ネタになった奴の他、イボン…ゴリラに似たものなど複数が登場。

エネルゴンクリスタル
ビーストウォーズに登場した、強力なエネルギー物質。
これを巡って、ビーストウォーズのサイバトロンとデストロンが激突した。
何でこんなもんが、この島に大量に埋まっているかというと……。

さて次回は、ついにオプティマスとグリムロックが殴り合い宇宙(ソラ)する予定です。
では。
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