超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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どうも、気候の変動やら仕事上のストレスやらで少し体調崩してました。



第55話 地下鉱山

 オプティマスは土を掘り返しながら思考する。

 自分はなぜ土を掘っているのだろう?

 考えようとすると、キキキキ……という音がブレインサーキットを満たして何も考えられなくなる。

 

「おまえはシャベルだ、ツルハシだ、採掘道具なのだ」

 

 どこからかそんな声が聞こえてくる。

 ならば別にいいかとオプティマスは土を掘り続ける。

 こうしていると実に楽だ。

 苦悩、責任、過去、全て忘れられる。

 

 しかし、それでも消えない物がある。

 

 それは、紫の髪の少女の顔だった。

 

 マインドワイプはこの日、とても満足していた。

 なぜなら奴隷が増えたからだ。

 彼はブラジオンから、この地下鉱山を任されているディセプティコンで、死にゆくサイバトロンの地下深くから残り少ないエネルゴンを掘り出す任を帯びていた。

 他の奴らは左遷であると言うが、マインドワイプ自身はむしろこの仕事を気に入っていた。

 太陽光の当たらない地の底も彼の肌に合ったし、時には採掘したエネルゴンを僅かに自分の物にできる。

 だがそんなことよりも、マインドワイプの好きなことは、自分の発する催眠音波に操られたオートボットどもを死ぬまで働かせることなのだ。

 往時には精強を誇った戦士たちが、家畜のように酷使され使い捨てられていくのを見るのが好きなのだ。

 

「コウモリアマモリオリタタンデワイプ。……キキキキ、さあさあ働け奴隷たち。俺のためにエネルゴンを掘り出すのだ」

 

 地下鉱山でも最も広い区画の天井にぶら下がったマインドワイプは、不気味な呪文を唱えた。

 この呪文自体に催眠効果はないのだが、まあ気分である。

 それよりも新しく増えた奴隷のほうが重要だ。

 アイアンハイド、ジャズ、ミラージュ、そしてオプティマス・プライム。

 いずれも知らぬ者のいない英傑ばかりである。

 どういうわけか地下鉱山の近くをうろついていた彼らを、催眠音波で操るのは簡単だった。

 彼らをブラジオンに差し出せば、恩賞は計り知れない。

 

 しかし、差し出さない。

 

「おまえらはここで、誰にも顧みられることなく死んでいくのだ。キキキ……」

 

 地上では英雄、偉人と称えられる者たちが、ここでは自分の奴隷として酷使されのたれ死んでいく。

 それがマインドワイプの昏い悦びだった。

 

「キキキ! さあ掘れ、死ぬまで掘れ、死んでも掘れ! 消耗品として壊れていけ! キキキ……」

 

 耳障りな甲高い声を上げるマインドワイプ。

 ドームの底では、何体ものトランスフォーマーが地面を掘り返していた……。

 

 

  *  *  *

 

「どうやら、ここでタダならぬことが起こったようじゃの」

 

 地面を撫でながらアルファトライオンは呟いた。

 最初に休むと決めた場所から少し離れた場所。

 そこは一見すると他の場所と何も変わらない廃墟の一角に見える。

 しかし老いてなお鋭さを失わぬアルファトライオンのセンサーは、ここで争いがあったことを察していた。

 

「オプティマスとジャズは、ここで複数人に囲まれたようだ。足跡を見れば分かる」

 

 そこまで言って、老歴史学者は訝しげに髭を撫でる。

 

「しかし解せん。どうやら、二人は碌な抵抗もできないまま捕らえられたよじゃ。果たしてあの二人ほどの者に抵抗させない相手とはいったい……?」

 

「あの、それよりもみんなの行先が分かったんなら、そこへ行こうよ」

 

 と、横でアルファトライオンの言葉を聞いていたネプテューヌが声を出した。

 元々彼女は深く考えるより先にまず行動するタイプなのだ。

 彼女の言葉に、老歴史学者は難しい顔をする。

 

「さてな。あの二人が囚われるほどの相手だ。慎重にいくに越したことはない……む!」

 

 何かの気配を感じたらしく、急に厳しい顔で振り向くアルファトライオン。

 その視線の先には、こちらに近づいてくるいくつかの影があった。

 

「敵!?」

 

「いや、違うの」

 

 刀を取り出したネプテューヌを、アルファトライオンがやんわりと制する。

 果たして現れたのは、ハウンド、ドリフト、クロスヘアーズの三人だった。その足元にはノワール、ブラン、ベールもいる。

 

「おおー! みんな無事だったんだねー!」

 

「なんとかね」

 

 ネプテューヌが嬉しそうな声を出すと、ノワールが溜め息を吐きつつ答えた。

 

「それで、何があった?」

 

「ああ、それが……」

 

 アルファトライオンの質問に、ハウンドは語り始めた。

 

  *  *  *

 

 あんたらと別れた俺たちは、オプティマスに合流しようとしてたんだ。

 途中で女神たち(こいつら)もいっしょになってな。

 だが、俺たちが見たのは敵に囲まれているオプティマスとジャズだった。

 すぐに助けに行こうとしたが、二人を囲んでる奴らを見てビックリだ。どいつもこいつも見覚えのある顔じゃねえか!

 

 そうだよ、オートボットの戦士たちだ!

 

 今まで戦場で行方不明になった奴らが二人を襲ってやがったのさ。

 驚いて一瞬動きを止めた俺たちに、オプティマスから通信が入った。

 

「ここは様子を見て、女神たちと合流してくれ」

 

 ってな。

 まあ、そう言うわけだ。

 

  *  *  *

 

「ミラージュとアイアンハイドも連絡がつかないわ。おそらくすでに……」

 

 ハウンドの言葉をブランが継ぎ、顔を伏せる。

 それを受けて、ネプテューヌも表情を引き締めた。

 

「それじゃあ、早くみんなを助けないと!」

 

「まあ待て。恐らくはオートボットの戦士たちは何らかの能力で操られているのだろう。どうかなドリフト?」

 

 アルファトライオンは逸るネプテューヌをさえぎり、ドリフトにたずねた。

 

「……そうですな。確か敵を操る催眠音波を使いこなすディセプティコンがいたはずです。名をマインドワイプという、陰湿で邪悪な奴です」

 

 淀みない答えにアルファトライオンは心なし満足そうに頷いた。

 

「ふむ催眠音波か。ならば対処のしようはあるな」

 

「耳を塞ぐとか?」

 

 ネプテューヌの意見に、アルファトライオンはゆっくりと首を横に振る。

 

「それもいいがな。他の音で催眠音波を打ち消すほうがよかろう。この廃墟に残された器具を使えば可能なはずだ。まずは手分けしてこれから言う機器を取ってきてくれ」

 

 その言葉に一同は頷いた。

 

「じゃあ俺はこの黒い嬢ちゃんといっしょにいくから、ドリフトは緑の嬢ちゃんと、クロスヘアーズは白い嬢ちゃんといっしょにいってくれ」

 

 テキパキと指示を出すハウンドだが、残る二人はあからさまに不満げな顔をする。

 

「我らだけで十分では?」

 

「そうだぜ、足手まといはいらねえ」

 

 ドリフトとクロスヘアーズの言葉に、女神たちは厳しい顔になる。

 だが女神化できない現状では、たしかに足手まといにしかならないので何も言えない。

 アルファトライオンはギロリと二人を睨んだ。

 

「たわけ。今は一刻を争うのじゃ。手は多いに越したことはない」

 

 厳しい声に、青と緑のオートボットはウッとなる。

 

「そう言うこった。グチャグチャ言ってねえで仕事にかかれや。1メガサイクル後にここに集合だ」

 

 ハウンドも腰に下げた銃に危険に手を伸ばしながら脅すと、二人はようやくその気になったようだ。

 肩をすくめたクロスヘアーズは、ブランを見下ろしながら言い放った。

 

「足は引っ張るなよ」

 

「……善処するわ」

 

 そっけなく答えるブランに、クロスヘアーズはフンと排気音を出すと歩いていった。

 

「我らも行くぞ」

 

「わかりましたわ」

 

 ドリフトもたおやかに返事をするベールを伴っていった。

 

「じゃあ、俺らも行こうや」

 

「よろしく頼むわ」

 

 ハウンドとノワールは特に問題なさそうだ。

 

「さて、儂らも行くとするか」

 

 三人のオートボットと三人の女神が散っていったのを確認したアルファトライオンは、自身もネプテューヌにそう言った。

 

「あの、アルファトライオン? あなたって戦えるの?」

 

 心配げにたずねるネプテューヌ。

 アルファトライオンは背こそ高いが、細身で戦闘力が高いようには見えない。

 その問いに歴史学者はニヤリと笑って見せた。

 

「フフフ、世の中の連中はオプティマスに戦い方を教えたのは先代プライムだと思っとるようだがの。あの子に最初に戦いの手ほどきをしたのは……、この儂なのだ」

 

  *  *  *

 

「……それでアイアンハイドの奴は、たった一人で敵軍を引きつけたのさ。俺らはアイツのことを諦めたよ。……ところがだ、アイツときたら少ししたらひょっこり現れたんだ。それ以来、あいつは死なない男と呼ばれるようになったんだよ」

 

 ハウンドは廃墟の中を家探ししながら、ノワールにアイアンハイドの昔話しをしていた。

 ノワール自身が聞きたいとねだったのだ。

 

「なるほどね。昔から無茶ばっかりしてるんだから……」

 

 どこか呆れ気味ながらも笑顔のノワール。

 そんなノワールを見て、ハウンドはハテと首を傾げる。

 

「しかしお嬢ちゃんは、落ち着いてるな。アイアンハイドが行方不明なんだから、もう少し心配してもよさそうなもんだが」

 

「心配はしてるわ。ただ、アイアンハイドの無事を信じてるだけ」

 

 勝気に返すノワール。

 ハウンドはどこか納得いかなげに太い首を捻った。

 

「何だろうな。おまえさんと話してるとクロミアと話してるみたいな気分になるぜ」

 

「あら、それはありがとう」

 

 褒められたわけではないだろうが、礼を言うノワール。

 彼女としては父のように慕っているアイアンハイドの恋人と似ていると言われて、悪い気はしないらしい。

 

  *  *  *

 

「……でだ。あの野郎ときたら何て言ったと思う? 何もだ! 『ありがとう』も『どういたしまして』もありゃしねえ! それが肩を並べて戦った相手への態度か!?」

 

「……はあ」

 

「あの野郎、腕は立つが協調性ってもんがありゃしねえ! オートボットってのは信頼が大事なんだよ! 信頼が!」

 

「……なるほど」

 

 こちらも家探しをしながら話すクロスヘアーズとブラン。

 と言うよりも、クロスヘアーズが一方的にミラージュへの愚痴を言っているのを、ブランが適当に相槌を打ちながら聞いている状態だ。

 

「だってえのにミラージュの野郎! 『俺は一人のが性に合ってる』とかスカしたこと言いやがって、オイルを一杯やりにも来やしねえ! あれでオプティマスの直属だってんだから、ったく……」

 

「……ねえ、あなた」

 

「あん!? なんだ!」

 

 際限なくミラージュに対する愚痴を言い続けるクロスヘアーズにブランは声をかけた。

 

「……ひょっとしてだけど、ミラージュと仲良くなりたいの?」

 

「な!? んなわけねえだろ!!」

 

「でもさっきから聞いていると、彼のことをよく見ているわ」

 

 必死になって否定するクロスヘアーズに、ブランがツッコミを入れる。

 

「俺はあの野郎がだっい嫌いなんだ!! いつもいつもスカした顔しやがって!」

 

「……ああ、それはちょっと分かるわ。いつも無愛想だし」

 

「そうだぜ! 付き合い悪いし! その癖、女にはモテるし!」

 

「……そうね。思い出したらムカついてきたわ……」

 

 クロスヘアーズに当てられたのか、ブランもヒートアップしていく。

 

「だいたいからしてあの野郎! 思わせぶりな態度取りやがって! わたしのことどう思ってるのか、ハッキリしやがれ!!」

 

「お、おい」

 

 脈略なく突然キレだしたブランに、クロスヘアーズは面食らう。

 

「いつもいつもいっつも! こっちがヤキモキしてるのなんか気にも留めやしねえ! 知ってるか? あいつ教会の女性職員からモテてやがんだよ! 一時期なんか、ミラージュに声かけてどれだけカマってもらえるかってのが職員の中でのステータスに……」

 

「お、おう、大変なんだな」

 

 もはや支離滅裂なブランの愚痴に、今度はクロスヘアーズが付き合うことになった。

 どうも逃げられなさそうな気配がする。

 

「ミラージュの馬鹿ぁああああ!!」

 

「本人に言えよ……」

 

  *  *  *

 

 一方、ドリフトとベールは会話なく機材を探していた。

 

「そう言えば思ったのですけれど」

 

 機材の山から使えそうな物を引っ張り出していたベールは、ふと反対側で用途不明の機材と格闘しているドリフトにたずねた。

 

「なぜ、あなたはジャズのことを嫌うんですの?」

 

 その問いに、ドリフトはそっけなく返した。

 

「貴女に言う必要はない」

 

「あらら……。そうですわね、当ててみましょうか」

 

 つれないドリフトにもベールはめげない。

 頬に人差し指を当て、自分なりの答えを言う。

 

「そうですわね。例えば……嫉妬、とかでしょうか?」

 

「…………なぜ、そう思う」

 

 ドリフトは手を止め、ベールのほうに振り返った。

 ベールは悪戯っぽく微笑む。

 

「そうですわね。女の勘、とでも思っておいてくださいまし」

 

 その答えに嘆息しつつ、ドリフトは口を開いた。

 気を紛らわしたかったのかもしれない。

 

「そう言う感情が無いと言えば、嘘になる。……オプティマス殿の隣にいるのが何故自分ではないのだろうと思う時もある」

 

 ドリフトの言葉を、ベールは黙って聞く。

 

「あまり褒められたことではないのは自覚しているがな」

 

「いいんじゃありませんの? 嫉妬しても」

 

 突然かけられた言葉にドリフトはベールを見る。

 ベールは穏やかな笑みを浮かべたまま言葉を続ける。

 

「わたくしもよく嫉妬しますの。何で他のみんなには妹がいて、わたくしにはいないんだろうって」

 

 そこでベールはドリフトの顔を覗き込んだ。

 

「誰しも嫉妬くらいしますわ。もう少し肩の力を抜いては?」

 

「…………そうだな」

 

 フッと、ドリフトの顔に僅かながら笑みが浮かぶ。

 あるいはベールの優しい雰囲気が、ドリフトの頑なな心を溶かしたのかもしれない。

 

  *  *  *

 

 1メガサイクル(約一時間)後、女神とオートボットたちが元の場所に戻ってきた。

 かくして、マインドワイプの催眠音波を打ち消すための装置が、アルファトライオンによって作られたのだった。

 装置は赤い巨大なラジカセのような形をしている。

 分かる人に分かるように言うと、ゴキゲンな音楽かイカレサウンドを流しそうな感じだ。

 

「さて、後はしかるべきタイミングでこの装置を起動すれば、オートボットたちは自由を取り戻すわけじゃ」

 

「おおー! いよいよカチコミだね! お使いイベントが続いたから、楽しみだよ!」

 

 アルファトライオンの宣言に、ネプテューヌがよく分からないことを言い出す。

 それを見て、ドリフトは隣のベールに声をかけた。

 

「あの娘はいつも、ああなのか?」

 

「ええ、まあ、ああいう娘ですけれど、良い所もありますのよ。具体的にどんな所が、と言われると困りますけれど」

 

 苦笑するベールと首を捻るドリフト。

 やはりネプテューヌがオプティマスと仲がいいのが解せないらしい。

 

「では、一同出陣じゃ!」

 

「おおー!!」

 

 時代がかった調子で音頭を取るアルファトライオンと、それに乗っかるネプテューヌ。

 色々とある二人だが、気は合うのかもしれない。

 

  *  *  *

 

 出陣と言ってもすぐさまディセプティコンの下へ乗り込むわけではなく、まずはオプティマスたちがいるであろう場所を探し、そこへ向かって歩いていく。

 やはりここでもアルファトライオンのセンサーが足跡やら何やらを見つけてそれに沿って進んでいく。

 

「何か、アルファトライオンって万能だねー! 普通おじいちゃんキャラってゲーム的にはあんまり目立たないのに」

 

「そうなのかの? 儂的には魔法使いのおじいちゃんと言えば、チートキャラの代表のようなイメージがあるんじゃが」

 

「まあネプテューヌシリーズは萌えゲーだからねー。あんまり男性キャラは目立たないから」

 

「そういうもんかの」

 

 何やらメタなことを話しながら先頭を歩くネプテューヌとアルファトライオン。

 それを何とも言えない顔で追う一同。

 一行はさらに下へ下へと進んでいく。

 

「ふ~む。このまま進むと廃棄された鉱山に行きつくな」

 

「鉱山?」

 

「左様。かつてあまりにも過酷な労働を鉱夫に課したとして、閉鎖された鉱山じゃ」

 

 アルファトライオンは、ネプテューヌに歩きながら簡潔に説明した。

 

「そしてそこは『あやつ』の……ムッ!」

 

 何かを言いかけたアルファトライオンだったが、急に厳しい顔になった。

 

「どうしたの?」

 

「この先に何者かの気配を感じる。皆、気をつけよ」

 

 問うネプテューヌに短く返し、一同に注意を促す老歴史学者。その手に持った杖の先端が攻撃的に発光する。

 

「へへへ、やっと敵さんとご対面か!」

 

「腕がなるぜ!!」

 

 クロスヘアーズとハウンドは銃を抜き、好戦的に笑む。

 

「今宵の愛刀はエネルゴンに飢えておる」

 

 ドリフトも背中から二刀を抜いてオプティックを危険に細める。

 

「こういう好戦的なところはみんな変わらないのね……」

 

「まあ、頼もしいからいいのですけれど」

 

 ブランとベールはやや呆れた調子ながらも武器を召喚した。

 

「まあ、そろそろ暴れたいのは確かね」

 

 剣を担ぎ、不敵に微笑むノワール。

 アイアンハイドの影響か、彼女もだいぶ好戦的になった気がする。

 当然ネプテューヌも刀を構える。

 慎重に進む一同は、やがて巨大なドーム状の空間に出た。

 そこでは何人ものトランスフォーマーたちが地面を掘り返していた。

 彼らの中央にいるのは……。

 

「オプっち?」

 

 ネプテューヌがその名を呼んだ。

 赤と青のファイヤーパターンの描かれた頑強そうな姿は間違いない。

 オートボットの総司令官オプティマス・プライムだ。

 だがしかし。

 表情は虚ろで二つのオプティックは再開した仲間たちには向けられず、虚空を見つめている。

 その後ろには、アイアンハイド、ジャズ、ミラージュ、その他オートボットの戦士たちが並んでいる。

 全員一様に虚ろな表情だ。

 

「みんな、どうしたの?」

 

 戸惑いがちに声を出すネプテューヌ。

 さすがの彼女もこの異常には気付いたようだ。

 

「どうやら操られているようだの」

 

 冷静にアルファトライオンは言った。

 そして、小脇に抱えたラジカセ型装置を作動させる。

 

「目覚めよ! オプティマス!」

 

 スイッチを押すと、音楽が流れ出した。

 若者向けらしいロックだ。

 この場と時にそぐわぬ音楽だが、その実態は催眠音波を相殺する特殊音波が混ざっている。

 音楽を聞いて、頭を押さえて苦しみだすオプティマスたち。

 

「これで……」

 

 だが、どこからか不気味な声が聞こえてきた。

 

「コウモリアマモリオリタタンデワイプ、コウモリアマモリオリタタンデワイプ」

 

「こ、この呪文は、マインドワイプ!」

 

 ドリフトの叫びに、一同は上を見上げる。

 ドームの天井には、コウモリを思わせる黒いディセプティコンが逆さ吊りになっていた。

 

「いかん! 催眠音波が強くなっておる!」

 

 アルファトライオンが緊迫した声を上げる。

 

「キキキ……、よく来たな、錆塗れのポンコツにコートのスカし野郎、それに老いぼれとムシケラが四匹……、キキキ、おやおや、久し振りじゃないか……裏切り者のデッドロック」

 

「ッ! 黙れ!」

 

 嘲るようなマインドワイプの言葉に、突然激昂したドリフトは刀を抜く。

 

「降りてこい! この卑怯者め!」

 

「キキキ……、この洞窟の構造が俺の催眠音波をより強くしてくれる。そんな物では相殺などできんぞ。貴様らも奴隷にしてやってもいいが……、それではつまらん。大事な大事な仲間たちに八つ裂きにされるがいい」

 

 陰湿に笑いながら、マインドワイプはさらに呪文を唱える。

 

「コウモリアマモリオリタタンデワイプ。さあ奴隷たちよ、オートボットどもを殺してしまえ!」

 

 するとオプティマスたちは地面を掘るのをやめてアルファトライオンたちのほうを向いた。

 

「うううう……」

 

 呻きながらジリジリと迫りくるオプティマスたち。

 

「ハウンド、クロスヘアーズ! マインドワイプを撃て! 催眠音波の出どころは奴だ!」

 

「言われずとも!」

 

 ドリフトの叫びにクロスヘアーズが天井のマインドワイプを撃とうとするが、ミラージュがその手を掴んだ。

 

「ッチ! よりにもよっておまえかよ!」

 

「…………」

 

 無言でクロスヘアーズに掴みかかるミラージュ。

 普段は乱暴なことを言っているクロスヘアーズだが、さすがに仲間を撃つ気はない。

 膠着状態に入ろうとしていた二者の間に割り込む者がいた。

 

「おりゃあああ!!」

 

 ミラージュのパートナーである女神ブランがクロスヘアーズの体を飛び越してきたかと思うと、手に持ったハンマーでミラージュの頭を思い切り殴りつけた。

 

「……!」

 

 銅鑼を叩いたかのような轟音が鳴り響き、ミラージュがよろめく。

 驚いたのがクロスヘアーズだ。

 

「お、おい! 何やってんだ!」

 

「目を覚ますにゃ、ちょうどいいだろ! わたしらの攻撃でくたばるほどヤワじゃないしな!!」

 

 クロスヘアーズを見上げニッと笑ったブランは、ハンマーを振りかざして再度ミラージュに向かっていく。

 それを受けて、ノワールも武器を構えた。

 

「そうね。ここは一つ、思い切りやらせてもらいましょう」

 

 そう言うや、アイアンハイドの懐に飛び込んでいく。

 

「レッスン1! デカい相手には懐に飛び込め!」

 

 さらにその身体を器用によじ登り、剣の柄で思い切り顔を叩く。

 

「レッスン2! どんな相手でも顔は弱点!」

 

 そしてアイアンハイドの手がその細い体を掴むより早く、体から飛び降りて綺麗に着地する。

 

「レッスン3! 深追いは禁物、ヒットアンドウェイで行くべし! ……どれもあなたの教えよ、アイアンハイド」

 

 ベールはベールで、飛びかかってくるジャズをヒラリとかわしながら、カウンターの要領で槍の石突きを彼の腹に叩き込む。

 

「ふふふ。そんな乱暴な手では、わたくしを捕まえられませんわよ」

 

 その言葉に反応したのかどうか、ジャズはスピードを上げてベールに向かう。

 だがこれもヒラリとかわされた。

 

「さあさあ、鬼さんこちら、手の鳴るほうへ♪」

 

 どこか楽しそうにジャズの手からヒョイヒョイと逃れるベールは、どこか優雅さすら感じられた。

 それぞれのパートナーに飛びかかっていく女神たちを、女神と組んでいない三人のオートボットは唖然として見ていた。

 

「こりゃ、すげえじゃじゃ馬だ……」

 

「おっかねえ、マジおっかねえ……」

 

「……可憐だ」

 

「「えッ!?」」

 

 何か有り得ないことを聞いた気がして、ハウンドとクロスヘアーズがドリフトのほうを見ると、青い侍はそっぽを向いた。

 だがじっくり話しをしている間もなく、周囲のオートボットたちがホラー映画のゾンビよろしく三人に群がってきた。

 そしてオプティマス・プライムは育ての父たるアルファトライオンに掴みかかっていた。

 

「息子よ、情けの無い! このような催眠音波など、払いのけて見せよ!」

 

 老歴史学者の声にも、オプティマスはなんら反応を示さない。

 

「キキキ……、無駄無駄無駄ァ。そいつには特に念入りに催眠をかけてあるんだ。キキキ、さあ、子が親を引き裂く態を見せてくれ。その後で催眠を解き、残酷な現実を前に絶望するオプティマスの顔を見てやる。キキキ」

 

 限りなく悪趣味なことをのたまうマインドワイプ。

 だがそれを許さぬ女がここにいる。

 

「そんなことはさせないよ!」

 

 無論のことネプテューヌだ。

 

「オプっち! 正気に戻ってよ! オプっちは悪堕ちするようなキャラじゃないでしょ!」

 

 他の女神たちのように攻撃することはせず、必死に呼びかける。

 すると、オプティマスに変化が起きた。

 虚ろだったオプティックに微かな光が灯り、戸惑うように揺れたかと思うと、アルファトライオンから手を放す。

 

「ね、ネプ……テューヌ……」

 

「そうだよ、ネプテューヌだよ! 元に戻ってオプっち!」

 

「ううう……」

 

 頭を抱えて苦しむオプティマス。

 それを見て驚いたのが天井から文字通り高みの見物を決め込んでいたマインドワイプだ。

 

「馬鹿な! 俺の催眠が破られるなど!」

 

 催眠が解けかかっているのを察し、マインドワイプは天井から離れ地面に向けて落下し、軽やかに身を捻ってネプテューヌの眼前に着地する。

 

「このムシケラが! 俺の楽しみの邪魔をするんじゃない!」

 

「きゃッ!」

 

 怒声とともに一瞬にしてネプテューヌの身体を掴み上げるマインドワイプ。

 それを見た瞬間、オプティマスは動きを完全に止める。

 

「ネプテューヌ!」

 

 アルファトライオンが彼女を助けようとするが、周りに現れたオートボットたちに阻まれる。

 マインドワイプは嗜虐的な笑みを浮かべながらネプテューヌを握る手の力を少しずつ強めていく。

 

「キキキ、このまま握り潰してやろう。有機生命体はどんな音を立てて壊れるのかな?」

 

「少なくとも、あなたに喜ばれるような音なんか立てないよ!」

 

 気丈にマインドワイプを睨みつけるネプテューヌ。

 だが相手が気丈なほど、絶望した時の顔と声が極上の物になると知っているマインドワイプは笑みを大きくする。

 

「キキキ、その強気がいつまでもつかな? おまえが恐怖に泣き叫び、命乞いをし、絶望の内に死んでいく態が見たくなったぞ……」

 

 真綿で首を絞めるように、少しずつ少しずつ、手にを握りしめていく。

 

「そんなことにはならないよ! わたし主人公だからね! それに……オプっちがいるんだから!」

 

 その声を聞いた瞬間、動きを止めていたオプティマスがピクリと反応した。

 

「オプっちは、あなたの催眠になんか負けないんだから!」

 

「キキキ……! 今のアイツに何ができる? オプティマスは俺の奴隷よ。キキキ!」

 

 耳障りな声で嗤いながら、ネプテューヌを握り潰そうとするマインドワイプ。

 体を締め付けられ、さしものネプテューヌも苦しげにうめく。

 

「いかん! 誰かネプテューヌを助けるのじゃ!」

 

 アルファトライオンが声を上げるが、操られたオートボットたちに阻まれ助けに行くことができない。

 

「キキキ、さあ恐れろ! 泣き叫べ! 俺を愉しませろ!!」

 

 大きく狂笑を浮かべながら、ついにその手に最後の力を入れようとするマインドワイプ。

 だがその瞬間、彼の肩を何者かの手が掴んだ。

 

「な……」

 

「彼女に手を触れるな、ディセプティコン」

 

 それは催眠音波の影響下に置かれて動きを止めていたはずのオプティマス・プライムだ。

 オプティックには強固な意思が戻り、表情は使命感と怒りによって引き締まっていた。

 

「な、なぜ……!?」

 

「ネプテューヌから、その薄汚い手を放せと言っている!」

 

 動転するマインドワイプの疑問に対する答えは、肩を掴んでいるのとは反対の腕から繰り出される鉄拳だった。

 

「ぐおお!!」

 

 顔面に拳を叩き込まれて吹き飛ぶマインドワイプは、たまらずネプテューヌを手から落とした。

 

「きゃあ!」

 

 だが、すかさず駆け寄ってその体を受け止めるオプティマス。

 

「大丈夫か!? ネプテューヌ!!」

 

「ゲホッ……。オプっち、元に戻ったんだね!」

 

 心配そうに顔を覗きこんでくるオプティマスを見て、ネプテューヌは安堵の笑みを浮かべる。

 

「すまない! 私としたことが!」

 

「えへへ、謝らなくていいよ! オプっちなら大丈夫だって分かってたもん!」

 

 表情を曇らせるオプティマスに、ネプテューヌは笑いかける。

 それを見たオプティマスは僅かに相好を崩し、すぐに厳しい顔に戻って立ち上がろうともがくマインドワイプを睨む。

 

「貴様、我々を操っただけでなくネプテューヌを傷つけて、屑鉄になる覚悟はあるのだろうな!!」

 

 凄まじい怒気を立ち昇らせ、オプティマスは背中からテメノスソードを抜く。

 殴られた拍子に催眠音波が途切れてしまい、オートボットたちの催眠が解けていく。

 

「ここはいったい……?」

 

「俺たちは何をしていたんだ?」

 

 そしてアイアンハイド、ジャズ、ミラージュも正気を取り戻した。

 

「おれはしょうきにもどった!」

 

「やめろ、それは戻ってないフラグだ」

 

「あ、頭が……」

 

 完全に立場が逆転したことを理解したマインドワイプは、情けない声を出す。

 

「ひ、ヒイィ……」

 

「最後の時だ。報いを受けろ、ディセプティコン」

 

 オプティマスは容赦なく、マインドワイプに斬りかかろうとする。

 だがその瞬間、マインドワイプは強烈な音波を発した。

 

「ぐお!?」

 

 その音に一瞬オプティマスが怯んだ瞬間、マインドワイプはギゴガゴと音を立てて戦闘機に変形すると天井に向けて飛んで行った。

 さらにマインドワイプが何か操作したのか、天井の一部が爆発してそこに通路が現れた。

 通路に飛び込んだマインドワイプはそのまま姿を消したのだった。

 

「逃がしたか。だが当面の危機は去った」

 

 厳かに言うオプティマスだが、その後頭部をアルファトライオンが杖でポカリと叩く。

 

「あ、アルファトライオン、何を……?」

 

「何、父の声には無反応だったくせに、可愛い女の子の声で正気に戻った親不孝者に天誅をな」

 

「ち、父上……」

 

 困った顔になるオプティマスに、アルファトライオンは悪戯っぽく微笑む。

 

「冗談じゃよ。さあ、もう一仕事じゃオプティマス。ここに囚われていたオートボットたちを解放せねば」

 

「はい!」

 

 力強く頷いたオプティマスは、催眠の解けたオートボットたちに向けて宣言する。

 

「オートボットの諸君! 君たちは自由だ! だが、今は私たちに力を貸してほしい! この鉱山に囚われているオートボットたちを解放するのだ!」

 

 催眠の解けたオートボットたちは混乱しつつも、オプティマスの指示に従う。

 

「なあアイアンハイド、このお嬢ちゃん、本当におまえとクロミアの娘じゃないのか? 血の気の多さといい度胸といい、そうとしか思えないんだが……」

 

「生憎、俺にもクロミアにも遺伝情報のコピーはできねえよ」

 

 ノワールが心配げに見上げる横で、ハウンドが割と真顔でアイアンハイドにたずねていた。

 

「何だ……? 頭が、割れるように痛い……」

 

「なあおいミラージュよう、おまえもうちょっと、あの白いのに構ってやれよ。でないと命にかかわるぜ。いや、マジで」

 

「……?」

 

 頭を押さえるミラージュに、クロスヘアーズが本気で心配そうに声をかけていた。

 その足元ではブランが心なしスッキリとした笑みを浮かべていた。

 一方、ドリフトは一同の輪から少し離れて立っている。

 そこにベールが近づいていく。

 

「何用か?」

 

「少し気になることがありまして。……あなたはひょっとして、昔はディセプティコンだったのですか?」

 

 マインドワイプがそれを臭わすことを言っていた。

 ベールの問いに、ドリフトは一つ排気すると答えた。

 

「隠し立てしてどうなるものでもないな……。そうだ、私はかつてディセプティコンだった。デッドロックとは、その頃の名だ」

 

「やっぱり……」

 

「軽蔑したか?」

 

 自重気味に笑うドリフトに、ベールはたおやかに、しかしハッキリと首を横に振った。

 

「いいえ。私の知るドリフトは短気だけど立派なオートボットのようですわ」

 

「敵わんな。……しかしありがとう、可憐なかた。そう言って貰えると、やはり嬉しい」

 

 オートボットらしく振る舞うことは、元ディセプティコンであるドリフトにとっては大切なことなのだ。そしてドリフトはベールに聞こえないように小さく呟いた。

 

「何故ジャズが貴女に拘るのか、少しだけ分かった気がする」

 

 二人を目ざとく見つけたジャズは二人に向かって歩いてきた。

 

「やれやれ、ベールに情けないトコ見せちゃったな」

 

「ふむ、相変わらずの体たらくだな。どうだろう可憐なかた。このような男は捨てて、私と組まぬか?」

 

「ハッハッハ! 随分と冗談が上手くなったじゃないか!」

 

 ベールに親しげに問うドリフトを見て、ジャズは有り得ないと笑い飛ばす。

 だが、ベールは悪戯っぽく笑いつつ少し考える素振りを見せる。

 

「う~ん、そうですわね。浮気性なかたよりはいいかもしれませんわね」

 

「な!? べ、ベール!?」

 

 慌てた声を上げるジャズを見て、ベールとドリフトは柔らかく笑い合うのだった。

 

  *  *  *

 

 解放されたオートボットたちは一端オプティマス一行に付いて来ることになった。

 クリスタルシティまで同行し、その後はアルファトライオンたちと共にアイアコンに戻るのだ。

 とんだ遠回りになったが、結果的に同胞を救うことができた。

 

 結構な大所帯になった一行は、地下の廃墟を進んでいた。

 先頭は変わらずオプティマスとアルファトライオンだ。

 ネプテューヌは何やら話している二人から離れ、一人で歩いていた。

 するとそこにドリフトがやってきて、彼女の隣を歩く。

 

「ネプテューヌ殿」

 

「あ、ドリフトじゃん! どうしたのさ?」

 

 アイアコンでは色々と手痛いことを言われたネプテューヌだったが、ドリフトに対して特に苦手意識を持っている様子はない。

 ドリフトはネプテューヌの正面に立つと、頭を下げた。

 

「今まで数々の非礼を働いたが、どうか許してほしい」

 

「え!? な、何どうしたの、いきなり!?」

 

 突然謝罪を始めたドリフトに、ネプテューヌは戸惑う。

 対するドリフトは言葉を発した。

 

「マインドワイプに捕まったお主が見せたオプティマスへの信頼は見事だった。どうやらお主はオプティマスの隣には及ばずとも、斜め後ろくらいには立てる御仁らしい」

 

「あ、あ~そう……」

 

 微妙な評価にネプテューヌの表情も微妙なものになる。

 しかしこれがドリフトとしては最大限の賛辞であることも、何となく分かった。

 その上で、ネプテューヌは宣言する。

 

「じゃあ次は、オプっちの隣に立つにふさわしいって認めさせてあげるんだからね!」

 

「楽しみにしておこう」

 

 勝気なことを言うネプテューヌに、ドリフトは侮辱するようなことはなく、薄く微笑むのだった。

 

「各々がた! やっと着いたぞ!」

 

 と、アルファトライオンの朗々たる声が響いた。

 

「儂の記憶が確かなら、ここを登ればクリスタルシティを一望できる丘に出るはずだ!」

 

 そう言って老歴史学者は巨大な螺旋階段を示す。オートボットたちは歓声を上げて螺旋階段を上っていく。

 女神たちは階段がトランスフォーマーサイズなので、それぞれのパートナーに抱えられていた。

 そして……。

 

『地上だー!!』

 

 誰ともなく声を合わせてそう言った。

 久し振りに出た地上は相変わらず、どこまでも荒れ果て、空は分厚い雲に覆われていたが、それでも女神とオートボットたちにとっては嬉しさのほうが遥かに勝った。

 

「皆見るのじゃ! あれこそがクリスタルシティじゃ!」

 

 アルファトライオンが杖で指し示した先には廃墟と化した都市が広がっていた。

 

「あれがクリスタルシティ……。あれ?」

 

 ネプテューヌは都市を眺めていたが、オプティマスの姿が見えないことに気が付いた。

 

「オプっちー?」

 

 総司令の姿を探して、オートボットたちの足元をすり抜けていくネプテューヌ。

 そして丘の天辺に、彼の姿を見つけた。

 

「オプっちー! 探した……」

 

 オプティマスに声をかけようとするネプテューヌだったが、彼の前に有る物に気付いて言葉を失った。

 

 墓だ。

 

 墓碑銘も何もない、金属板を地面に突き立てた簡素な墓。

 

 無数に並ぶ、そんな墓の一つの前に、オプティマスは立っていた。

 

「……あれはエリータ・ワンの墓じゃ」

 

 いつのまにか、ネプテューヌの後ろにアルファトライオンが立っていた。

 

「あれが……」

 

「そう、エリータはクリスタルシティの防衛隊長じゃった。じゃが彼女は名誉の戦死を遂げた……。オプティマスの目の前で」

 

「そんな……」

 

 ネプテューヌは言葉を出そうとして出せなかった。

 

「君が彼を信頼していることは、分かった。しかし君はまだ、オプティマスのことを知らな過ぎる。彼のことをどう思っているか答えを出すのは、それを知ってからのほうがいいかもしれんな」

 

 諭すように、それでいて突き放すように言うと、アルファトライオンは踵を返して去っていった。

 

 ネプテューヌが再びオプティマスのほうを見ると、彼はエリータ・ワンの墓の前で、今だ立ち尽くしていた。

 

 その背中は泣いているように、ネプテューヌには見えた。

 




今週のQTF。まさかコンボ…もといクッキングパパが来てくれるとは!
そうか、司令官は少し情けないくらいのほうがいいのか……。
うちのオプティマスはどうだろう?

今回の小ネタ。

地下鉱山
実は初代のころから、サイバトロンは掘りまくると土が出てくるのは公式だったりする。

マインドワイプ
元はデストロン側のヘッドマスターの一員。
コウモリアマモリオリタタンデワイプの呪文でもって催眠術をかけることができる。
リベンジ期にリメイクされ、えらいカッコいい姿と強力な催眠音波を手に入れた。
陰湿な性格で部下の姿が見えないことからも分かる通り、人望は皆無。

ラジカセ型の機械
ええ、通信員です。
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