超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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ヒャッハー、更新だぜー!

実写無印組の中でも不遇の男、ブロウルさんの話。


第73話 ブロウルの災難 part1

 どこか暗い場所。

 

 様々な機器が設置され、何人もの白衣の人間が動き回っている研究施設と思しいが、かなり広い。

 

 奥では、何か大きな人型の機械が組み上げられていた。

 

 それを真正面から見上げるのは、軍服を着た仮面の男だ。

 謎の組織ハイドラの首魁、ハイドラヘッドである。

 その右にはオートボットにもディセプティコンにも与さないトランスフォーマーの賞金稼ぎロックダウンの立体映像が立っていた。

 

「では、初めてくれ」

 

 ハイドラヘッドに指示され、白衣の男たちが機器を操作すると、人型の機械から駆動音が聞こえてきた。

 

 だが、駆動音だけで機体に動く様子はない。

 

「…………また失敗か」

 

 ヤレヤレとハイドラヘッドは肩をすくめる。

 

「も、申し訳ございません! し、しかし完全変形する上に自立可能なロボットとなると……くそ! 教会の奴らはどうやってあんなロボットを作ったんだ!?」

 

 頭を抱える科学者たちに、ロックダウンが心底呆れた調子で声を漏らした。

 

『まだトランスフォーマーが生き物だと認めていないのか。……こいつら、俺のことは何だと思ってるんだ?』

「無線操縦機だと思ってる」

『そりゃまた。もはや、現実逃避の域だな』

「ああ……だから、うだつが上がらなくて安く雇えたんだそうだ。その結果は見ての通りだが」

 

 仮面越しでも分かるほど深く息を吐いてから、ハイドラヘッドはロックダウンに向き合う。

 

「そんなワケで、そろそろ『現物』が欲しい。金を払っているんだから、成果を見せてくれ」

『……いいだろう。調度いいことに、一匹ハグレたようだ』

「どちらだ?」

『ディセプティコン。デカくてとろい、捕まえやすい奴だ』

 

  *  *  *

 

 ルウィー某所の裏通り。

 しんしんと雪の降る中をギュラギュラとキャタピラを回して一台の戦車が走っていた。

 俗に言う第三世代の主力戦車だが、副砲やらミサイルポッドやらがゴテゴテと取り付けられている。

 戦車は停車すると周囲を索敵するように砲塔を回す。

 

「ここまでくりゃあ、追ってねえだろ」

 

 不意に戦車から声がした。

 それは太い男の声だった。

 

「全く、俺は貧乏クジばっかりだぜ……」

 

 そう、ディセプティコン兵の一体、ブロウルである!

 

 女神とオートボットに対して、毎度の如く戦いを繰り広げたディセプティコンではあったが、またまた撤退することとなった。

 殿を務めたブロウルだったが人間どもの相手をしている内に何と空中戦艦に乗りそこね、取り残されてしまった。

 人間が攻撃ヘリ投入してきたので回収している暇はないから自分で逃げろと言う通信に軽く絶望したものの、すぐさま煙幕を張ってすっかり顔馴染になってしまった人間の兵士どもを撒き、ここまで逃走してきたのだ。

 

 周囲に敵兵の気配がないのを確認してから、いったんロボットモードに戻り仲間に通信を飛ばす。

 

「こちらブロウル。ディセプティコン、応答せよ。繰り返す、こちらブロウル。ディセプティコン、聞こえてたら応答してくれ」

『こちらメガトロン。ブロウル、報告せよ』

 

 すぐに返事が来た。

 さっそくブロウルは指示を仰ぐ。

 

「こちらはルウィーの……どこかです。追手は撒いたようですんで、すぐに救援を……」

『送っている余裕があると思うか?』

「ないでしょうね。では自力で帰投します」

『うむ。敵に拿捕されるなよ。通信終わり』

 

 メガトロンの態度にもブロウルは、特に不満に思うでもなかった。

 軍人たる者、ある意味において死ぬ覚悟はしている。

 一つ排気してから移動しようとした時、気配を感じてビークルモードに戻ろうとした瞬間、どこからか飛んで来た弾丸が、ブロウルの背中に命中した。

 

「ぐおおお!?」

 

 悲鳴を上げて倒れそうになるブロウルだが、足を踏ん張って立て直し、弾の飛来した方向を探る。

 雪で悪くなっている視界の向こうに、ポンチョで体を覆った痩身のトランスフォーマーが立っていた。

 ブロウルはそれを敵と判断し、両肩のミサイルを発射する。

 着弾寸前に大きく跳んでミサイルをかわしたそのトランスフォーマーに向かって右腕の世連バルカンを撃とうとするブロウル。

 

 その時、ブロウルに電流走る!

 

 いや比喩ではなく、どこからか先にアンカーがついたワイヤーが飛んできてブロウルの体に絡まるや、電流が流れてきたのである。

 それでも倒れることなくアンカーを思い切り引っ張って、それを発射した相手ごと振り回す。

 だがさらに二本、三本とアンカーが四肢に絡まり電流も強くなる。

 六本めが首に巻き付き、ついに両膝を突いたブロウルの前に、ポンチョのトランスフォーマー……ロックダウンがゆっくりと歩いてきた。

 アンカーを撃ったのは、ロックダウン配下の傭兵たちだ。

 

「……貴様、ロックダウンか」

「まだ喋れたか。飽きれるほどタフな奴だな」

 

 ロックダウンは無感情に言うと、ブロウルの顔面に蹴りを入れる。

 

「グッ!」

「あまり手こずらせるな。……来たか」

 

 降り続ける雪の向こうからバタバタと騒音を立ててヘリが飛んできて地面に着陸した。

 ヘリの扉が開き、顔の無い仮面の男、ハイドラヘッドが降りて来た。

 いつの間にか現れた完全武装の兵士たちがブロウルの周りを取り囲む。

 仮面の男に向かって、ロックダウンが低く言う。

 

「約束通り、五体満足のトランスフォーマーだ」

「お見事だ。中々の獲物じゃあないか」

「簡単な仕事だった。今度は逃がすなよ」

「無論だ。とりあえず基地に連れて帰ろう」

 

 ハイドラヘッドがパチリと指を鳴らすと、輸送ヘリが数機飛来し、ケーブルを垂らし、ハイドラ兵たちがそのケーブルをブロウルの体に繋ごうとする。

 すると、ブロウルは低く笑った。

 

「グッ……ククク」

「? 何がおかしい」

「馬鹿め! 俺が大人しく捕まるとでも思ったか?」

 

 言うや、ブロウルの体が内部から爆発した。

 戦車ディセプティコンの巨躯は、粉々に爆音と煙を残して吹き飛んだ。

 周囲の兵士たちは爆風に煽られ倒れる。

 

「な!? 自爆しただと!?」

「軍団に準じたか。俺には理解できんね」

 

 煙を手で払い、さしものハイドラヘッドも驚愕する。

 一方でロックダウンは興味なさげだった。

 

「クッ……せっかく生きたトランスフォーマーを手に入れたと思ったのに」

「まあ、残骸からでもデータは取れるだろう。報酬は格安でいいぞ」

 

 残念そうなハイドラヘッドを捨て置き、踵を返したロックダウンは、黒いスーパーカーに変形して走り去った。

 

「……仕方ない。できるだけ残骸を回収しろ。手早くな」

 

 ハイドラヘッドは思考を切り替え、部下に指示を出すのだった。

 

  *  *  *

 

 その騒ぎから2~3kmほど離れた場所。

 使われなくなった機械が無造作に積まれて山になっているジャンク置き場に、空から何かが落ちてきた。

 

 それは人間の頭ほどの大きさの、金属でできた正立方体だ。

 

 立方体はジャンクの山の上に落ち、そのまま斜面を麓まで転がり落ちた。

 

 そのまま夜は開けて朝ごろ、作業服の人間たちがやってきた。

 彼らは、この場所でジャンクを片付ける仕事をしている人間たちだ。

 

 その内の一人、若い男がふとジャンク山の麓に立方体を見つけた。

 立方体を拾い上げた男は、それを手の中で回してみたり軽く振ってみたりする。

 

「へえ~、見慣れない機械だけど、コイツは使えそうだ」

 

 男は、その立方体を持って帰ることにしたのだった。

 

  *  *  *

 

 家に帰った男は、ガレージを利用した工房に入った。

 

 そこには作業台が置かれ、その上に金属製の手足のような物が転がっていた。

 

 男は立方体を中心に手足やパーツを組み上げていく。

 

「よしよし、やっぱりちょうどいい大きさだ。……今、お前さんを完成させてやるからな」

 

 優しく呟いて、男は組み上げた人型の金属フレームに『ガワ』をかぶせる。

 

「お父さーん! ただいまー!」

 

 と、小さな少女が工房に駆け込んでくるや、男の足に抱きつく。

 くすんだ金髪が目立つ、年齢は一桁と思しい、あどけない少女だ。

 

「ああ、おかえりテスラ。学校はどうだった? 友達はできたかい?」

「……ううん」

「そうか……。そうだ、じゃあコイツをあげよう」

 

 男は愛娘テスラにたった今出来上がった『それ』を差し出す。

 

「なーに、これ?」

「お父さん手作りの友達第一号だ」

「くれるの? わーい!」

 

 表情を輝かせ、さっそく『それ』に抱きつくテスラ。

 すると、『それ』は両手を広げて見せた。

 

「お父さん! この子、動いたよ!」

「ああ、そいつは少しなら動けるんだ」

「すごーい!」

 

 歓声を上げるテスラに、父はホッと息を吐く。

 中々友達ができない娘のために、仕事場から持ち帰ったジャンクで何とか作ってあげた簡単なロボットのような物。

 喜んでくれたようで、何よりだ。

 

  *  *  *

 

 その夜、テスラはさっそく『それ』を自室に持ち込んでいた。

 

「……ねえ、あなたのお名前は、何て言うのかな? ……あなたとお話しできたらいいのに」

 

 おしゃまな少女は、無機物に話しかけても無駄なことぐらいは知っていた。

 それでも、父がせっかく作ってくれた友達だ。

 

「おやすみなさい。明日はいっしょに遊ぼうね」

 

 テスラは明かりを落として、『それ』を抱きかかえたままベッドに潜りこむ。

 ほどなくして、テスラはクークーと寝息を立てはじめた。

 

 それからしばらくして……。

 

 急に『それ』がモゾモゾと動き出した。

 首を横に向けてテスラの寝顔を不思議そうに眺めてから、手足に力を入れて立ち上がる。

 

「……再起動成功っと。『緊急脱出システム』が上手く作動してくれたみてえだな。ショックウェーブの怪しい実験でも、受けといてよかったぜ」

 

 コキコキと首や肩を回しながら、『それ』はぼやく。

 その声は、聞く者が聞けばディセプティコンの兵士ブロウルの物だと分かっただろう。

 自爆したかに見えたブロウルだったが、ショックウェーブの改造手術によって搭載された緊急脱出システムにより、一瞬にしてパーソナルコンポーネントを形成し遠くに射出したのだ。

 体のほうも粉々になったように見せかけて、実際には各部のジョイントを外しただけだ。

 本来なら、脱出した先で大人しく救助を待っていることしかできないはずだったが、人間が仮の体を与えてくれるとは、望外の幸運だ。

 

「さて、基地に帰らないとな。……くっくっく、人間どもめ、俺を直したことを後悔させてやるぜ!」

 

 ブロウルは自分の新しい体をチェックする。

 そこで自分の腕を見て気が付いた。

 

 手足は短めで、手の先に付いた三本の爪はキルト製。

 体全体が丸っこくフワフワとした三頭身。

 顔の造形は円らな瞳と頭にチョコンと乗っかった丸い耳がキュートだ。

 つまりこれは……。

 

「ク マ じゃ ね え か !?」

 

 そう、クマのぬいぐるみ、そのものである。

 テスラのために父親が作ったのは、布と綿の塊の中に金属製の可動フレームを埋め込んだ、クマ型ロボットだったのである。

 ビーズのようなクリクリの目はちゃんとカメラアイであるし、関節部はほとんど人間と同じように動かせるあたり、無駄に凝っている。

 

「こ、こんな……、フワフワのモコモコだと!? 俺は固くてデッカイのが取り柄なんだぞ!?」

 

 己のあまりにもディセプティコンらしくない姿にしばし愕然としていたブロウルだったが、何とか思考を切り替える。

 とにかく、動けるだけマシだ。

 基地に帰投しなくては。

 

 その時、眠っていたテスラが目を擦りながら上体を起こした。

 

 どうやら、騒ぎ過ぎたらしい。

 

 一瞬、ブロウルは硬直した。

 そして、その硬直が致命的な結果を招いた。

 

「あ……うわ~!」

 

 声を上げるテスラ。

 だが悲鳴ではなく、歓声だ。

 

「すご~い! 動けるのね、あなた!」

 

 駆け寄るや、ブロウルが逃げる間もなく抱きしめる。

 バタバタともがくブロウルだが、ぬいぐるみの身では碌な抵抗もできない。

 

「すごい、すご~い! お父さんはやっぱり天才だわ!」

「ああと、どうも……」

「喋れるんだね! ……思ってたよりシブい声ね」

 

 自分を純粋に父の発明品だと思っているテスラに、ブロウルはクマの顔で曖昧に笑む。

 こういう時に、どういう方法で乗り切ればいいのか、生粋の軍人であるブロウルには分からない。

 

 ――すると、お人形さんたちは魔法の力で動き出したのです。でもそれは一晩限りの奇跡でした。夜が明けると、元のお人形さんに戻ってしまったのでした。

 

 ふと、あの(レイ)が雛たちに読み聞かせている本の内容が思い出された。

 

「ああとだな。実は俺が動けるのは魔法の力のおかげで、親父さんの発明のおかげってワケじゃないんだ」

「そうなの?」

「ああ……、それに長くは動けない。魔法の力は長続きしないんだ」

「そんな……」

 

 悲しそうな顔をするテスラに、ブロウルは少しだけ申し訳ない気持ちになる。

 元々、彼はドンパチするのは好きだが、他者を騙すのは得意ではない。

 それでも、何とか言葉を出す。

 

「ごめんな。……その間、仲良くしよう。それと、俺が動けることは他の人間には内緒だ。魔法で動くクマなんて、驚くだろ?」

「うん……」

 

 ギュウっとブロウルの体を抱きしめるテスラ。

 ブロウルはそれを、不器用に抱きしめ返すのだった。

 

  *  *  *

 

 翌日。

 今日は学校がお休みであるテスラはぬいぐるみブロウルを抱き上げて散歩に出ていた。

 雪の積もったルウィーの町並みは、古めかしくも美しい。

 ブロウルは大した感慨を得なかったが、テスラは見慣れた町でも友達といっしょに歩くのが嬉しいらしく終始笑顔だった。

 

 空き地の前を通りがかった時、テスラは同年代の子供が集まっているのを見つけた。

 

「…………」

「いかないのか?」

「だって、こわいし……」

 

 子供たちを羨ましそうに見つめていたテスラだったが、ブロウルに小声で問われて、目を伏せた。

 さて、とブロウルは考える。

 この少女に友達ができようができまいが、知ったことではない。

 

 それでも、体を与えてくれた義理という物がある。

 

「そんなこと言わずに、声をかけてみりゃいいだろ?」

「で、でも……」

「まったく……仕方ない、おーい! そこのガキどもー! この子も仲間に入れてやってくれー!」

 

 突然大声を上げたブロウルに、テスラはビクリと硬直し、子供たちは何事かと振り返った。

 

「ええと、あの、その……」

「なによ、アンタ? わたしたちと遊びたいの?」

 

 怯えるテスラに向かって、子供たちの輪の中からズンズンと進み出る少女がいた。

 それはピンク色の防寒服と着て、服と同色の帽子を被り、茶髪を長く伸ばした勝気そうな少女だ。

 テスラより少し年上だろうか?

 その後ろからは、勝気そうな少女とよく似ているが服と帽子が水色で髪が短く、大人しそうな少女が付いてきていた。

 二人とも同性のテスラでさえ、ビックリしてしまうくらいに可愛い女の子だ。

 

「あ、あの……」

「変なの。さっきの声は誰よ」

「あ、あれは……おじさんで、あっち行っちゃった」

 

 モジモジするテスラに、勝気そうな子と大人しそうな子は顔を見合わせる。

 恥ずかしさのあまりテスラが逃げ出そうかと思った時、大きな声がした。

 

「じゃあ、いっしょにあそぼう!」

 

 声の主は、子供の輪の中から現れたテスラより小さな女の子だ。

 金色の髪と青い瞳の、これまた可愛らしい子だが、どちらかと言うと元気さの方が印象に残る。

 金髪の子の言葉に、そっくりな二人も頷く。

 大人しそうな子がニッコリと笑った。

 

「そうだね。いっしょに遊ぼう」

「いいの?」

「遊びたいんでしょ? さ、来なさい!」

「……うん!」

 

 強気そうな子に招かれて、テスラは子供たちの輪に小走りで向かって行く。

 途中、強気そうな子が聞いてきた。

 

「そうだ! アンタ、名前は何て言うの?」

「テスラ! あなたたちは?」

「わたしはラム。こっちは双子のロムちゃんと、お友達のピーシェよ!」

「よろしく」

「よろしくね!」

「うん! ラムちゃんにロムちゃん、ピーシェちゃん、よろしく!」

 

 さっきまで恥ずかしがっていたのはどこへやら。何てことなく、テスラは子供たちの中に入っていった。

 未だ子供であるテスラは、目の前の女の子たちが自国の女神候補生であることを知らない。

 

 ――やっべぇ、どじった……。

 

 一方のブロウルは、まさか女神候補生が市井の子らに混ざって遊んでいるとは思っていなかったので、大変困っているのだった。

 

  *  *  *

 

 どこか暗い場所。

 

 広い空間の奥に、人型の機械が組み上げられていた。

 

 それは、自爆したはずのブロウルに他ならない。

 

 ここはハイドラのアジト。

 ハイドラの科学者たちが爆発四散したブロウルの残骸を組み上げたのだ。

 しかし、科学者たちは困惑したような空気に包まれていた。

 科学者のリーダーの横に、ハイドラヘッドが腕を組んで立っていた。

 

「つまり、綺麗過ぎると?」

「は、はい。自爆したにしては、各パーツのダメージが少なすぎます。体がバラバラになるほどの爆発を起こして、これほど完璧に治るワケがないんです。それと、電子頭脳や変形機能を司るはずのパーツがゴッソリなくなっているというのも……」

 

 科学者からの報告に、ハイドラヘッドは天を仰ぐ。

 

「…………ロックダウン。これはどういうことだ?」

 

 問いに答えるように、ハイドラヘッドの脇に立体映像のロックダウンは現れた。

 

『パーソナルコンポーネントがないんだろうな』

「何だそれは?」

『トランスフォーマーは、ブレインサーキット、変形機能を司るトランスフォームコグ、そして魂たるスパーク……核とも言えるパーツをまとめて立方体状のパーツに圧縮できる。それがパーソナルコンポーネントだ』

 

 ロックダウンの言葉に、ハイドラヘッドは思考を巡らす。

 

「……自爆はフリで、そのパーソナルコンポーネントとやらは何らかの手段で離脱していた。そう考えるのが自然か」

 

 頭痛をこらえるように仮面の上から、額を抑えるハイドラヘッド。

 外側だけでは、手に入れられる情報はたかが知れている。

 

 ロックダウンが今まで黙っていたことには、文句をつけない。

 あくまでもビジネス上の関係だから、お互いに問われた以上の情報を与える義理はないのだ。

 

 それにしても、上手く行かない物だ。

 人造トランスフォーマー量産計画は、量産以前に試作機も完成しやしない。

 

 もう少し、有能な人材はいないものか……。

 

「……そうだ。この辺りには『彼』がいたな」

 

 ハイドラの雇用主(クライアント)である大企業にかつて属していた、有能なロボット工学者でありながら家族との時間を大切にするために、退職してルウィーに移住し、一介のジャンク処理屋に甘んじている男。

 埋もれさせておくには惜しい能力を持った彼を、何とかしてこちらに引き込めないものか。

 

「彼には確か、娘がいたな。名前は……テスラ、だったかな? ……古典的な手だが、やってみるか」

 

  *  *  *

 

「それでね! ラムちゃんが屋根の上まで逃げてったんだけど、ピーシェちゃんが追っかけて行ったんだよ!」

「そうか、それはすごいな」

 

 テスラは夕食の場で父親に今日のことを話していた。

 友達ができたこと。

 その友達と、『エクストリーム鬼ごっこ』なる遊びをしたこと。

 脅威の追跡力を見せるピーシェから逃げ切れたのは自分だけだったこと。

 明日もいっしょに遊ぶ約束をしたこと……。

 

 楽しそうに話す愛娘に、父は顔をほころばせる。

 

 亡き妻の故郷であるルウィーに越して来てしばらく経つが、娘に友達ができないことだけが心配だったのだ。

 

 さすがに友達が女神候補生らしいことには驚いたが。

 

「これも全部、この子のおかげだよ! お父さん、ありがとう!」

「ははは、どういたしまして」

 

 ――やれやれ、こっちは女神どもにばれないかとヒヤヒヤしてたってのに、呑気なもんだぜ。

 

 和やかな会話を続ける親子を余所に、テスラの横の椅子の上に置かれたブロウルは内心で愚痴る。

 頃合いを見て逃げなければならないが、それも難しそうだ。

 

「この子、だ~い好き!」

 

 テスラは満面の笑みでブロウルを抱きしめる。

 

 ――あ~あ、どうしたもんかなあ……。

 

 心底嬉しそうなテスラだったが、ブロウルは内心で深く深く溜め息を吐くのだった。




Q:何でクマなん?

A:G1の59話ブルーティカスの攻撃(ブロウルのパーソナルコンポーネントが学生の手作りロボットに入れられる話)ネタ+蒼き鋼のアルペジオのキリクマ。
 何でこうなった?

以下、ブロウル(実写)不遇伝説。

実写第一作
オートボット四人+人間相手に孤軍奮闘。
映画スタッフと玩具会社の連絡間違いから、名前が『デバステーター』に。

ゴースト・オブ・イエスタデイ
第一作の前日譚に当たる小説。
第一作組が両軍ともに総登場の中、登場なし。

日本未発売のゲーム
まさかのディセプティコン側が主役のゲーム。
まさかの登場なし……。

ダークサイドムーン
モブ。

トランスフォーマー・ヒューマンアライアンス
実写TFをモチーフにしたシューティング
何とボスキャラとして登場!
……名前がブロウ『ラー』でした。別個体なんだろうか?

この小説でも、微妙に出番が……。

頑張れブロウル!
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