超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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第75話 女神殺しの魔剣 part1

 ゲハバーン。

 

 それは女神殺しの剣、魂を喰らう刃。

 

 それは黒き神によって鍛えられ、虚空の彼方よりもたらされた。

 

 信仰を持つ者よ、ゲハバーンを追うなかれ。

 友愛を持つ者よ、ゲハバーンを取るなかれ。

 希望を持つ者よ、ゲハバーンを振るうなかれ

 

 ゲハバーンを手にしたならば、汝に降りかかるは、一かけらの救いもなき結末と憶えおけ。

 

 【魔窟外典 救世の悲愴】より一部抜粋。

 

  *  *  *

 

 プラネテューヌの某山中。

 ここには湖があり、その中央の島には古城が建っていた。

 古城の地下は深く広く、一つのダンジョンと言ってよかった。

 

 地下通路を何人もの兵士たちが銃を構えて進む。

 途中、モンスターが現れることもあったが、もれなく銃弾の的となり、粒子に還った。

 兵士たちの後ろを顔のない仮面の男と、魔女のような風体の女性が悠々と歩いていた。

 やがて一団は、地下の最奥の宝物庫に辿り着いた。

 重く大きな扉を兵士たちがこじ開けると、中は空箱とガラクタだらけだった。積もった埃と、あちこちに張った蜘蛛の巣が、長い年月、人の手が入っていないことを示していた。

 

「探せ」

 

 仮面の男……ハイドラヘッドが短く指示すると、兵士たちは部屋の中を物色し始める。

 やがて兵士の一人が壁にかかったボロボロの絵画の後ろに隠されていた隠しスペースから、何か長い箱を引っ張り出した。

 箱を床に置くと、鍵を壊して蓋を開ける。

 

 中には、大振りな剣が入っていた。

 二等辺三角形の肉厚幅広の刃を持った、だが錆に塗れた剣だ。

 それを両手で持ち上げ、ハイドラヘッドは呟く。

 

「これがそうなのか……」

「ああ、これこそ伝説に語られる女神殺しの魔剣、『ゲハバーン』だ。そのルーツを探れば、古の大国タリにまで行きつくと言う。今こそ錆びているが、手入れをすれば、すぐに輝きと鋭さを取り戻すだろう」

 

 魔女のような女性……マジェコンヌは、ニヤリと笑う。

 ハイドラヘッドは、大きく頷いた。

 

「しかし、貴女がゲハバーンの在り処についてご存知だったとは。いやはや、世の中分からない物だ」

「……なに、昔取った杵柄と言う奴だ。私はもう長いこと、女神を倒す手段を模索していたからな。当然、かの女神殺しにも行きつくさ……」

「ではなぜ、ゲハバーンを探さなかった?」

「……ふん、まあ色々だ。……それより、これは条件を満たさなければただのボロ剣。どうするつもりだ?」

 

 マジェコンヌの問いに、ハイドラヘッドはくぐもった笑いを漏らす。

 

「くっくっく……、まあ見ていたまえ。貴女のくれた(カード)とこれを上手く使えば、万事上手くいく」

「……ついでに一つ。言い伝えによれば、その剣には太古の女神の怨念が剣に宿っていると言う。嘘か真か、呪いによって国が滅びたこともあるそうだ」

「それこそ、望む所だ。呪われた剣なんて、イカスじゃあないか」

 

 ゲハバーンを手にしたハイドラヘッドと兵士たちは部屋を出て行く。

 だがマジェコンヌは独り、部屋の中に残っていた。

 

「……怨念の力を知らない坊やが、よくぞ吼える」

 

 ボソリと漏らしたマジェコンヌの顔には、皮肉っぽい嘲笑が浮かんでいた。

 

  *  *  *

 

 プラネテューヌのオートボット基地は、ホイルジャックのラボ。

 

 そこでは、作業服姿のネプギアが、工具を手に作業していた。

 作業台の上には赤い人型機械が横たわっている。

 

「…………よし」

 

 最後のパーツを取り付け終え、ネプギアは工具を置いて端末を操作する。

 画面に表示される文字列や数式は、余人には理解不可能な物だ。

 しばらく端末と睨めっこしていたネプギアだったが、やがて深く息を吐いた。

 

「駄目だ……。どうしても修復しきれない……」

「ネプギア君、根を詰めちゃいかんよ」

 

 頭を抱えそうになるネプギアを、ラボの持ち主であるホイルジャックが優しく諭す。

 

「前向きに考えよう。これまでの調べで、スティンガー君の人格と記憶は、コアである疑似シェアクリスタルに保存されていることが分かった。つまり、スティンガー君が直る目算は、十分にあると言うことだよ」

 

 だがネプギアの表情は晴れない。

 かつてネプギアがホイルジャックたちの手を借りて創り出した人造トランスフォーマー、スティンガー。

 様々な事象を経て大破したスティンガーを、ネプギアは折を見て修復してきたが、最近は行き詰まり気味だった。

 

「今日はもう帰って、ゆっくり休みなさい。疲れていると思考が鈍るよ」

「……はい。皆さん、ありがとうございました」

 

 力なく頷き、ネプギアは工具と端末を置いてラボを後にする。

 ホイルジャックはそれを見送ってから、フウと排気して横たわるスティンガーを見やる。

 

「ネプギア君も頑張っているんだ。もう少し待っていておくれ」

 

 その声には、孫と子を想う祖父のような、そんな優しさがあった。

 

   *  *  *

 

「ネプギア様!」

 

 教会に帰りついたネプギアに声をかける者がいた。

 それは、ここに務める女性職員の一人だった。

 

「ええと、何か?」

「はい! 実は、ネプギア様に元気を出してもらおうと思って贈り物を用意したんです!」

 

 女性職員は張り切って答えると、脇に抱えていた箱を差し出す。

 信用できる相手であることもあって、ネプギアは笑顔で受け取った。

 

「ありがとうございます! 開けても、いいですか?」

「はい、どうぞ!」

 

 さっそく箱のラッピングを解き、箱を開ける。

 すると、箱の中に入っていたのは、大振りな剣だった。

 全体的なシルエットは鋭い二等辺三角形であり、幅広肉厚ながらも透明感のある青く輝く刀身と金で飾られた柄が美しい。

 

「とある筋から手に入れました。『シェアブレイド』という剣です」

「シェアブレイド……、何んて綺麗。見ていると吸い込まれてしましそう……。それに何だか、気分が良くなってきたような……」

 

 ジッと剣を見つめるネプギア。

 この剣を持っていると、何だか自信が湧いてくる気がする。

 

「ありがとうございます! この剣、さっそく使わせてもらいますね!」

「いえいえ、……その剣、大切にしてくださいね」

 

  *  *  *

 

 ネプギアと別れた女性職員は、人気のない場所に入った。

 その姿が歪み、別の人間へと変わる。

 

 トンガリ帽子と黒衣、尖った耳と薄紫の肌を持った女性、マジェコンヌへと。

 

「そうとも、大切にしてくれよ。……女神候補生よ。精々踊って見せろ」

 

 マジェコンヌは、ニィッと口元を歪めると、悠然と歩き去っていった。

 

  *  *  *

 

 数日後。

 ルウィーの山中にある、すでに閉鎖されて久しい炭鉱の麓に広がるゴーストタウンに、ネプテューヌとネプギア、アイエフとコンパ、そしてそれぞれのパートナーであるオートボットが立っていた。

 ルウィー組は他に用事があるので残念ながら不参加だ。

 

 先頭に立つオプティマスが、今回の目的を説明する。

 

「この鉱山は閉鎖されて久しいが、たまに観光客がやってくる。しかし先日、観光客が最奥で氷漬けのモンスターを発見したそうだ。我々の目的は、そのモンスターの調査と、危険なようなら退治だ」

「まあ王道だね。最近はディセプティコンとの戦いばっかりだし、たまにはこういうのもいいっしょ!」

「モンスター退治とかの仕事は普通にあるんだけどね……。ネプ子がやらないだけで」

 

 張り切るネプテューヌに、アイエフがツッコミを入れる。

 

「でも、何だか懐かしいですね。わたしと、あいちゃんと、ねぷねぷと、ぎあちゃんと。少し昔は、この四人でお仕事したりしていたものですぅ」

「ええ。思えば、プラネテューヌの面々だけで行動するのって、久し振りですね」

 

 いつものやり取りに苦笑混じりながら笑い合うコンパとネプギア。

 正確には、この四人だけでなくオートボットたちもいるのだが、彼女たちにとって彼らは、もう身内である。

 それを聞いて、オプティマスはフムと頷いた。

 

「では、今回は少し掛け声を変えてみよう。……プラネテューヌ、出動(ロールアウト)!」

 

  *  *  *

 

 一同は坑道を進む。

 女神二人と人間二人はともかく、オートボットたちは比較的小柄なバンブルビーとアーシーを除く二人は、少し窮屈そうだ。

 

「でてこないね~、モンスター」

「もうすぐ、そのモンスターが出たという空間だ。気を引き締めていこう」

 

 歩きながら退屈そうにぼやくネプテューヌを、隣を歩くオプティマスが諭す。

 

 やがて一同は、広大な空間に行き当たった。

 その奥には、巨大な氷塊が鎮座していた。

 氷塊の中には、何か大きな影が見える。

 

「……これは、モンスターなんかじゃない! これはトランスフォーマーだ!」

 

 氷塊とその中の影をスキャンしたラチェットが、驚いた様子で報告する。

 オプティマスも驚いた様子だが、冷静に考察する。

 

「ダイノボットの他にもゲイムギョウ界にトランスフォーマーがいたか……。この地層から見るに、おそらく数千年は凍り付いているようだな」

「問題は、このアイスマンが私たちの敵か味方かってことだけど……」

 

 アーシーの言葉にオプティマスが頷いた所で、突如地面が揺れ出した。

 空洞の壁が崩れ、そこから二連ドリルが特徴的なエイリアンドリルタンクが現れた。

 その後ろからは、灰銀の巨体もノッソリと現れ、オプティマスやネプテューヌの姿を見とめるやニヤリと笑った。

 

「おやおや、こんな所で会うとは奇遇だな、プラァァイム」

「メガトロン! 何をしに現れた」

「決まっている。そこの氷漬けを回収しに来たのよ」

 

 すぐさま、一同は武器を構える。

 メガトロンの後ろからはスタースクリームとドレッズ、それにリンダとワレチューも現れた。

 

「言いたいことは分かるな」

「大人しく氷漬けのトランスフォーマーを置いて去れ、とでも言いたいのだろうが、答えは決まっている。……お断りだ!」

「惜しいな。置いていくのはそいつだけではなく、貴様たちの命もだ! ディセプティコン軍団、攻撃(アタック)!」

「みんな! 迎え撃つぞ!」

 

 両陣営は、近接武器を展開して衝突する。

 この場所で銃火器を使うと、坑道が崩れる可能性があるからだ。

 メガトロンはデスロックピンサーを展開してオプティマスに斬りかかり、オプティマスはテメノスソードでそれを防ぐ。

 恐ろしい怪力で剣を振るうメガトロンだが、オプティマスのテメノスソードはそれでも傷一つ付かない。

 

「相変わらず頑丈な剣だな、オプティマス。だが、所詮貴様は剣の性能頼み! 腕は俺のほうが上だ!」

「負け犬の遠吠えは見苦しいぞ、メガトロン!」

 

 メガトロンの腹に蹴りを入れて距離を取ったオプティマスは、横薙ぎに剣を振るう。

 だがメガトロンは後ろに跳んでそれをかわすと、袈裟懸けに斬り返す。

 銃剣の切っ先が僅かにオプティマスの表面装甲にかするも、決定的なダメージには至らない。

 

「オプっち! 今助けるわ!」

「させるか!」

 

 女神化したネプテューヌは恋人を援護すべく飛び上がろうとするが、そこへ何者かが杖を振りかざし、鋭い攻撃を繰り出してきた。

 あの、ディセプティコンのエンブレムを模した仮面の女だ。

 

「あなたは……」

「また会ったわね。女神様」

 

 油断なく太刀を構えるネプテューヌに、仮面の女は杖に黒いオーラを纏わせながら低く笑う。

 

「オプティマスのオマケの小僧が! 俺様に勝てると思ってるのか!」

「『言ってろよ!』『万年二番手!』『メガトロン』『の付属品』『だろお前!』」

「テメエェェェェッ!!」

 

 スタースクリームは右手を丸鋸に変形させて飛びかかってくるが、バンブルビーはヒラリとかわして、拳を航空参謀の顔面に叩き込む。

 だがスタースクリームは効いている様子もなく、逆に殴り返される。

 

「お医者様に女の子ちゃんの相手とは、ついてないYO!」

「本気で言ってるのかね、それは?」

「貴様らを相手に手を抜くワケがない」

「相変わらず、躾けのなってないワンちゃんね! おしおきよ!」

「ガウガウ!」

 

 ラチェットは、左右から挟撃してくるクランクケースとクロウバーを軽々といなし、アーシーは飛びかかってくるハチェットを軽やかにかわす。

 

「それで、アンタたちの相手は私たちってワケね」

「へへへ、今日こそテメエらに一泡吹かせてやるぜ!」

 

 上段から振るわれるアイエフのカタールを鉄パイプで受け止めるリンダ。

 

「ネズミさん……やっぱり、いい人にはなってくれないですか?」

「コンパちゃん……これも乗りかかった船っちゅ……それに、あんな連中でも、長いこといっしょにいると情も移るっちゅ。今更、裏切れないっちゅよ」

 

 コンパの前に立つワレチューは大きく息を吐く。

 もはや、引き返せないほどに自分はディセプティコンに関わり過ぎた。

 

「お姉ちゃん! みなさん! 今助けに……」

 

 姉や仲間に加勢しようとするネプギアだったが、その前にドリルタンクが立ちはだかった。

 

「お前の相手は、私だ」

「あなたは……」

「私はトゥーヘッド。科学参謀ショックウェーブが配下、科学兵トゥーヘッドだ」

 

 ドリルタンクは粒子状に分解すると、双頭の人型へと自身を再構成する。

 それを見て、ネプギアは驚きに目を見開いた。

 

「人造トランスフォーマー……スティンガーの技術を流用したんだ!」

「その通り。我がマスター、ショックウェーブの知性と閃きが、私を生み出したのだ」

「…………」

 

 胸を張るトゥーヘッドに、ネプギアの目つきが鋭くなっていく。

 我が子と思うスティンガーの身体を調べて得たのだろう技術の結晶を見て、ネプギアの中から黒い感情が込み上げてくる。

 

 その手に持ったシェアブレイドが、ネプギアの思いに答えるように輝きを増していった。

 

「はあああ!」

 

 ネプギアの斬撃を両腕のブレードを交差させて受け止めたトゥーヘッドは、そのままネプギアを押し返していく。

 

「いかな女神の膂力とて、トランスフォーマーには敵うまい! このまま斬り捨ててくれる!」

 

 ネプギアは胸の内に黒い物が沸きあがってくるのを感じていた。

 

 トゥーヘッドに技術を流用……いや盗まれたスティンガー。

 

 バンブルビーと兄弟のように競争していたスティンガー。

 

 ネプギアを母と慕っていたスティンガー。

 

 ……ショックウェーブに、無残に破壊されたスティンガー。

 

 スティンガーは未だ眠り続けているのに、ショックウェーブが作ったトゥーヘッドは、こうして平気な顔で動き回っている。

 

 ネプギアの中の黒い感情はどんどんと強くなっていく。

 それにつれてシェアブレイドは輝きを増し、刀身の色が清浄な青から、禍々しい暗い紫へと変わっていく。

 

「はああああああ!!」

「な、何だと!?」

 

 裂帛の気合いと共にトゥーヘッドの両腕のブレードを砕き、その体に斬りかかる。

 

「ぐ、おおおおッ!?」

 

 大きく胴体を斬られたトゥーヘッドは、エネルゴンを流しながら倒れる。

 ネプギアは、その胴体の上に乗ると、剣を逆手に持って傷口に突き刺す。

 

「グ!?」

「はあ、はあ……」

 

 ――コロセ。

 

 声が、聞こえる。

 ネプギア自身の声のようでも、スティンガーの声のようでもあった。

 

「…………」

「があああ!?」

 

 ――……ヲ、コロセ。

 

 トゥーヘッドの傷口をグリグリと抉るネプギア。

 声は段々と大きくなってくる。

 同時に、ネプギアの精神奥深くまで浸透してくるかのようだ。

 

「ククク、そろそろ頃合いか。オプティマス、ここからが見物だぞ」

「何!? それはどういうことだ!」

 

 メガトロンはオプティマスと鍔迫り合いをしながらニヤリと笑う。

 一方のネプテューヌは一端、仮面の女と距離を取って妹の傍に降り立つ。

 

「ネプギア! そっちは大丈夫?」

 

 ――……コロセ。

 

「……ネプギア? どうかしたの?」

 

 ――……ヲ、コロセ。

 

「ねえ、本当に大丈夫?」

 

 ――女神ヲ、コロセ!

 

「女神を、殺す……」

「え?」

 

 瞬間、ネプギアの顔から一切の表情が消え、当然とばかりにネプテューヌに向かって斬りつけた。

 

 完全な不意打ちだった。

 

 誰が、最愛の妹が何の前触れもなく剣を向けてくるなどと考えられるだろうか?

 

 間一髪よけることができたものの、剣先はネプテューヌのプロセッサの肩の部分を切り裂き僅かに肌に傷をつけていた。

 

「ネ、ネプギア!? 何をするの?」

「女神を殺す……女神を殺す……」

 

 戸惑うネプテューヌに向かってネプギアは、ゆっくりと歩いていく。

 その目から光が消えていた。

 

「ネプギア!? アンタ、何やってるのよ!」

「ぎあちゃん、どうしちゃったですか!?」

「ギ…ア…!?」

「ちょっと、洒落にならないわよ!」

 

 アイエフとコンパ、バンブルビーとアーシーが血相を変えるが、それぞれの敵に阻まれてネプギアに近づくことができない。

 

「ネプテューヌ! ネプギア!」

「おっと、今回は主役に花を譲ってやれ」

 

 オプティマスがネプテューヌを助けようとするが、当然メガトロンが立ちふさがる。

 

「女神を殺す……女神を殺す……」

 シェアブレイドからは紫のオーラが立ち昇り、ネプギアの美しくも虚ろな表情の顔を不気味に照らす。

 

「ネプギア! お願い、目を覚まして!!」

 

 ネプテューヌは必至に呼びかける。

 すると、ネプギアの瞳が揺れだした。

 

「女神を……お、お姉ちゃん……私、なにを……」

 

 ――女神ヲ、コロセ。

 

「い、いや……」

 

 ――女神ヲ、コロセ。コロスノダ。

 

「そんなこと、できない!」

 

 ――コロセェエエエ!!

 

「いやああああああ!!」

 

 ネプギアは絶叫を上げて、洞窟の天井に向かって飛び立つ。

 そのまま剣を天井に向けて振るうと、莫大なエネルギーがドリルのように渦を巻き、岩盤を凄まじいスピードで掘削していく。

 

 ネプテューヌが止める間もなく、ネプギアは土と石の向こうへ消えた。

 

「ネプギア! ……っう!?」

 

 すぐさま追おうとするネプテューヌだが、突然、肩の傷に激痛が走った。

 痛みが全身に広がる代わりに、全ての力が抜けていく。まるで、生命を吸い取られてしまったかのように。

 

「メガトロォォン……! これは貴様の企みだな!!」

「いいや違う。事実はもう少し複雑だ」

 

 怒りを漲らせて吼えるオプティマスだが、メガトロンは冷笑し、仮面の女とリンダに目配せをした。

 二人は、頷くと懐から手榴弾のような物を取り出し、空中に向かって放る。

 

「……では、今日はこれで失礼させてもらおう。予定が詰まっているのでな」

 

 言うや、メガトロンは腕に大怪力を込めてオプティマスを弾き飛ばす。

 同時に手榴弾が爆発し、煙が空洞内に充満した。

 

「クッ……! 待て、メガトロン!!」

「ククク、俺に構っている暇はあるまい。大切な恋人に駆け寄って抱擁してやらなくていいのか?」

「ッ!」

 

 煙が晴れると、そこにはディセプティコンの姿はなかった。……ネプギアに痛めつけられたトゥーヘッドを除いて。

 

 残されたのは、混乱するアイエフとコンパ。

 

 冷静に辺りをうかがうラチェット。

 

 取り残されたトゥーヘッドにエナジーアローを突きつけているアーシー。

 

 茫然と天井を見上げるバンブルビー。

 

 変わらず氷漬けの謎のトランスフォーマー。

 

 そして……。

 

「ネプテューヌ!!」

 

 倒れ伏して、ピクリとも動かないネプテューヌだった。

 

  *  *  *

 

 ゲイムギョウ界のどこか。

 ネプギアは、ワケも分からず空を飛び回っていた。

 

 何であんなことをしてしまったか、分からない。

 

 剣からの声を聞いていると、他のことが考えられなくなる。

 

 もはや、ネプギアの頭の中は真っ白になっていた。

 

 やがて、飛び疲れて何処ともつかない場所に降り立った。

 そこにはトラックと十数人の人間が集まっていた。

 

 その中でも一際目立つのが、顔のない仮面の男と、魔女のような女性だ。ハイドラヘッドとマジェコンヌである。

 

 地面に降りたネプギアを、数人の男が取り囲む。

 

 虚ろな表情のまま、抵抗もせずに引きずられていくネプギアを見て、マジェコンヌは鼻を鳴らす。

 

「ふん! どうやら、上手くいったようだな」

「これも貴女のおかげですよ。貴女の作った例の粒子は、思っていた以上に使える」

 

 ハイドラヘッドは、仮面の下からくぐもった笑いを漏らす。

 かつて、マジェコンヌは生物の精神に働きかけ、願望を増幅する粒子を開発した。

 今回はそれを改良し、生き物に強力な暗示をかける方法を編み出したのだ。

 

「女神殺しの武器は、女神の手にあってこそ真価を発揮する……そして今、その両方が手の内にある。……素晴らしい」

 

 笑いが止まらないといった風情のハイドラヘッドだが、マジェコンヌは冷めた表情だ。

 

「それで? これからどうするのだ?」

「もちろん、もう一手打たせてもらう。……その一手で、人造トランスフォーマー計画はさらに大きく前進するだろう」

「そう上手くいくかな?」

「無論、上手くいく。……そのための駒も用意した」

 

 ハイドラヘッドの傍に、どこからか走って来た大型のトラックが停車した。

 赤と青のファイヤーパターンが特徴的なトラックだ。

 

「これで我々は対等だ。オプティマス・プライム。これでやっと君と戦争ができる。」

 

 心から楽しそうにハイドラヘッドは笑う。

 しかし、マジェコンヌは冷たい表情を変えない。

 

「そうそう、言い忘れていた。……あの粒子でかけられる暗示は、精々ここに来させる程度、女神……それも実の姉を攻撃するなんて暗示はかけられないはずだ」

「……なに?」

 

 ハイドラヘッドは怪訝そうな雰囲気になり、マジェコンヌはここで初めて口角を吊り上げた。

 

「当たり前だろう? あの粒子は所詮、願望を強める程度の効果しかない。それをいくら弄り回したところで、最愛の姉を傷つけさせるなどできるワケがない」

「……どういうことだ?」

「さあな。案外、本当にゲハバーンの呪いじゃないのか?」

 

 その言葉を聞いて、ハイドラヘッドはせせら笑った。

 

「有り得ない。怨念などに力があるワケなどないだろう? まあ、これからゆっくり、真相を究明するさ」

 

 余裕綽々といった態度で、ハイドラヘッドは歩いていく。

 その後ろを歩きながらマジェコンヌは、聞こえないように口の中で呟いた。

 

「……やはり、坊やだな」

 

  *  *  *

 

 夕焼けの洋上をディセプティコンの空中戦艦が、秘密基地に向かって航行していた。

 メガトロンは戦艦の舳先に仁王立ちして、海を眺めていた。

 その後ろに控える、仮面の女……レイは、控えめに声を発した。

 

「……だいたい、予定の通りにいきましたね」

 

 チラリと振り返ったメガトロンの顔には、自信に満ちた、それでいて残酷な笑みが浮かんでいた。

 

 出撃したのに得た物はなく、トゥーヘッドが捕らえられたにも関わらずである。

 

「ああ。今のところ、状況は俺の思う通りに進んでおる。……トゥーヘッドは囚われたことも含めてな」

「……それは分かっていますが、トゥーヘッドさんを犠牲にするようなやり方は……」

 

 やや厳しい声色になったレイに、メガトロンは面白そうに笑う。

 

「仕方ないな。ショックウェーブ、もう一度説明してやれ」

『はい、我が君。ミス・レイ、これはトゥーヘッドも納得ずくの作戦だ。彼も偉大なるメガトロン様に仕える身、この程度のことは覚悟している』

 

 メガトロンが呼びかけると、いずこからかメガトロンとレイの通信装置に接続した科学参謀が無感情な声で答えた。

 

『加えて、トゥーヘッドには改良した緊急脱出システムを搭載済みだ。……それでもと言う時は私が救出に行く』

「と、いうワケだ。さてと……サウンドウェーブ、報告せよ」

 

 話は打ち切りとばかりに、メガトロンはいずこかに潜む情報参謀に通信を飛ばす。

 

『ハイ、メガトロン様。今ノトコロ、『蛇』ノ動キハ、想定通リ。『仕込ミ』ハ、約60%マデ達成。『上』ノ買収ハ、程ナク完了スル』

「結構。お前たちは、そのまま計画を遂行せよ」

 

 通信を切ったメガトロンは右腕のデスロックピンサーを展開して、夕日にかざす。

 デスロックピンサーは、あちこちが刃こぼれして刀身にヒビが入っていた。

 

「……消耗が早いですね。この前、交換したばかりなのに」

 

 実直な感想を漏らしたレイに、メガトロンは少し難しい顔になる。

 

「そうだな。やはり、この武器ではオプティマスの剣に劣るのは否めん。……そろそろ、新しい武器が欲しいな」

 

 現状は、ほぼメガトロンの思惑の内だ。

 彼を悩ませることと言えば、手持ちの武器のことくらいだった。

 

 




そんなワケで、ネプテューヌファンのトラウマ、ゲハバーン登場。

今回の解説

ゲハバーン
ネプテューヌmk2より。
女神を殺せば殺すほど強くなっていく、何を考えて作ったのか分からない剣。
みんなのトラウマ。

シェアブレイド
ネプテューヌre birth2より。
色々あって壊れたゲハバーンを修理……っていうか原型をとどめぬほど魔改造した剣。
ここでは、ゲハバーンを普通の剣に偽装した剣として登場。

氷漬けのトランスフォーマー
詳細は、いずれ。
シチュエーションのモチーフはFF6。
……センチネルじゃありませんよ。

赤と青のファイヤーパターンのトラック
詳細は、次回以降で。

次は、なるべく早く更新できるように努力します。
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