超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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どこに入れたらいいのか分からない、そんな話の寄せ集めになります。


第80話 またも短編詰め合わせ

① 5pb.の憂鬱

 

 アイドル。

 

 それは咲き誇るメディアの花。

 しかし、その浮き沈みは激しく、忘れられるのも早い。

 

 世の流行り廃りに対抗できる者は、ほんの一握り。

 

 そんな厳しい世界なのだ……。

 

  *  *  *

 

 リーンボックスのどこかにある、サウンドウェーブのセーフハウス。

 

 ゲイムギョウ界の情報を集めるにあたって、サウンドウェーブは各地に臨時基地とは違う、諜報部隊のためのセーフハウスを作った。

 

 ここもその一つであり、基地を離れたサウンドウェーブは、次なる作戦の『仕込み』のためにいったんここに潜んでいるのだった。

 

 照明の一切ないなか、部屋中にサウンドウェーブの機械触手が伸び、いくつものパソコンに植物の根のように絡みついている。

 

 オートボットの技術で強化されているとはいえ、未だ人間の構築したコンピューターネットワークは脆弱だ。

 教会や主要基地ならいざ知らず、そこらの基地や民間の企業の防御などサウンドウェーブにとっては無いも同じ。

 サウンドウェーブにとって、ネットは巨大な食卓だ。サイトや個々のコンピューターは並べられた皿で、その内部の情報は盛り付けらた料理。

 後は好きに平らげるのみ。

 

 スタンドアローンにして対策している場合もあるが、そういう時は配下たちを向わせればいい。

 

 だが、あらゆる情報を収集していたサウンドウェーブは、由々しき事態に直面していた。

 

 それは……。

 

  *  *  *

 

「打ち切り?」

「そうだ」

 

 5pb.は、社長に呼び出されて、自分の帯番組の終了を知らされていた。

 

「どうしてですか!? 人気だって落ちていないし、視聴率やCDの売り上げだって……」

「ああ。だが番組のスポンサーは、新鋭のアイドルであるMOB48を期用する意向だそうだ」

 

 納得いかない5pb.に、社長は苦しげに説明する。

 いかな大手芸能事務所と言えど、スポンサーに強く逆らうことはできない。

 

「すまん、5pb.君。私としても手を尽くしたのだが……」

 

 頭を下げる社長に、5pb.はガックリと項垂れるのだった。

 

  *  *  *

 

 打ち切られた番組は、5pb.が初めて持った自分の帯番組であり、彼女にとって大切な番組だった。

 栄枯盛衰は世の常と言えど、やはり悲しかった。

 

 コートとサングラスで変装して家路につく5pb.が町を見れば、あちこちに最近話題のアイドルグループ、MOB48のポスターが貼られている。

 

「はあ……」

 

 思わず溜め息も出てくる。

 

 やがて、自宅のマンションへと帰り着いた5pb.は、建物の中に入ろうとするが、脇の暗がりに気配を感じた。

 

「……? そこにいるのは、誰?」

 

 暗がりに向かって問い掛けると返事があった。それも猫の鳴き声のような返事が。

 

「え? 今のって……」

 

 明かりに下に出て来たのは案の定、大きな猫だった。

 ただし、金属の肉体を持ち、トゲトゲとしていて、赤い単眼が印象的な豹ほどもある猫である。

 

 ディセプティコンの一員、特殊破壊兵ラヴィッジだ!

 

「君はラヴィッジ? どうしてここに? ひょっとして、ボクのことが心配で来てくれたの?」

 

 グルグルと喉を鳴らしながら、ラヴィッジは5pb.にすり寄る。

 

「ありがとう。やっぱり君は優しいね」

 

 フッと相好を崩して5pb.はラヴィッジの頭を撫でてやる。

 

 ディセプティコンがゲイムギョウ界を荒らしまわる悪者であるのは分かっているが、それでも彼の優しさが嬉しかった。

 

「ラヴィッジ! お前、やっぱりここにいたか!!」

 

 と、どこからか甲高い声が聞こえた。

 5pb.が見上げると、大きな鳥が舞い降りてくるところだった。

 やはり機械仕掛けの体を持った、蛇のように長い首とギョロッとした目が特徴的な鳥……レーザービークだ。

 

「持ち場を離れるなって言われただろうが!」

「ごめんなさい。ボクのことを心配して来てくれんたんだ」

 

 レーザービークに怒鳴られて、シュンとしたのはラヴィッジではなく5pb.の方だった。

 バツが悪そうな顔になるレーザービーク。

 

「いや、別に5pb.に怒ってるワケじゃあ……俺はあくまで、ディセプティコンの一員としてだなあ……」

「レーザービーク、ソコラヘンニシテオケ」

 

 ビルの陰から、レーザービークとラヴィッジの主人であるサウンドウェーブがノッソリと姿を現した。

 

「サウンドウェーブさん!」

「5pb.。久シ振リダ」

 

 驚くも嫌悪はない5pb.にサウンドウェーブは、僅かに微笑むのだった。

 

  *  *  *

 

 大都市の明かりの照らす中、5pb.とサウンドウェーブ一行は、人の目に触れないとある波止場で海を眺めていた。

 

「……それでラヴィッジが持ち場を離れたんで、探してたんだが、もしやと思って来てみたらドンピシャリだ! まったく困った奴だぜ!」

 

 コンテナの上に腰かけた5pb.の横で捲し立てるレーザービークだが、当のラヴィッジは丸くなって5pb.に撫でられている。

 

 サウンドウェーブは、何も言わず佇んでいた。

 

「まあ、ラヴィッジが心配するのも分かるけどな。……最近、あんた調子が悪いみたいだから」

「うん、まあね」

 

 5pb.は、少しだけ悲しそうに微笑む。

 それから5pb.は少しの間、サウンドウェーブたちに近況を話した。

 

 最近、MOB48というアイドルグループがデビューしたこと。

 

 そのMOB48は短期間の間に国民的人気を獲得したこと。

 

 そしていつしかMOB48の人気に押されて、5pb.の仕事が減っていったこと……。

 

「なるほどなあ。そいつは悔しいよなあ……」

 

 レーザービークは痛ましげに5pb.声をかける。

 

 新入りにデカい顔をされるのは、いい気分はしないだろう。

 

 5pb.は静かに頷いた。

 

「うん。悔しいよ。ボクの歌は、もう誰かの心を感動させる力はないのかな」

 

 しかし、それは俗な嫉妬からではなかった。

 

 あくまでも、自分の力不足を情けなく思っているのだ。

 

 レーザービークは呆気に取られる。

 

「いやなんつうか、5pb.は本当に歌バカなんだなあ」

「それ褒めてる?」

「わりと」

 

 そっけないレーザービークに、5pb.は苦笑した。

 

「5pb.」

 

 と、これまで黙っていたサウンドウェーブが静かに声を出した。

 5pb.が驚いて見上げると、サウンドウェーブはバイザーの下で微かに笑顔を見せた。

 

「自信ヲ持テ。君ノ歌ハ素晴ラシイ。少ナクトモ、我々ハ、君ノファンダ」

「おう、俺ら応援してるぜ!」

 

 主人の言葉をレーザービークが継ぎ、ラヴィッジも同意を示すべく唸る。

 

「……ありがとう」

 

 サウンドウェーブたちの思いやりが嬉しくて、5pb.は笑みを浮かべるのだった。

 

  *  *  *

 

 その後、一時期はリーンボックスを席巻したMOB48も、他のアイドルと同様ブームは去っていった。

 

 だが5pb.は国内外に根強いファンが多く、人気を盛り返したそうな。

 

 サウンドウェーブと仲間たちは、今日もゲイムギョウ界のどこかで5pb.の歌に聞き惚れるのだった。

 

 

~~~~~~

 

 

②闇に蠢く者

 

 ゲイムギョウ界のどこか。

 と言っても物理的に存在する場所ではなく、電子的な仮想空間だ。

 

 円卓といくつかの椅子の用意された会議室のようなここに、幾人かの男たちが集まっていた。

 

 いずれもが、名のある企業の責任者ばかりだった。

 

 その中には、リーンボックスに本拠を置きディセプティコンと通じている、あの企業の社長の姿もある。

 

「今回、我らの忠実な駒、ハイドラヘッドの活躍で、人造トランスフォーマーの量産が可能になった」

「女神を弱らせる真光炉を失敗し、ゲハバーンも奪われ……いい所なしだったハイドラも、ようやく役に立ってくれたワケだ」

 

 嘲笑混じりに話し合う男たち。

 かつて女神が争っていた時代に、全面戦争が起こるのも間近と考えたいくつかの企業が裏で結託。

 情報操作によってワザと戦争を激化、長期化させて安定した利益を得ることを目論んだ。

 

 そのために、大枚を叩いて多くの兵器を造り、傭兵を教育し、マスコミの利権を獲得した。

 

 しかし、そうまでしたのに戦争は起こらなかった。

 ネプテューヌが、女神たちが、戦争を拒否したからだ。

 各国の開戦ムードもアッと言う間に下火になり、企業連だけが大損した結果に終わった。

 

 しかし、強大な外敵であるディセプティコンが現れたことで、対策のための兵器を売ることで利益を上げることに成功していた。

 

「だが、戦争はいつか終わる。ディセプティコンもいつかは敗北するだろう。……それでは困るのだ。いつまでも、いつまでも、いつまでも! 戦争が続いてくれないと」

 

 戦争が続けば、多くの人間が傷つく。町が焼かれ、兵士が死んでいく。無辜の民も巻き込まれるだろう。

 

 だが、彼らには関係ない。

 

 兵士だろうが一般人だろうが、他人がどれだけ死のうが知ったことか。

 

 町が焼かれ家が壊れても、土建屋がもうかって、ちょうどいい。

 

 彼らは自ら戦うような愚かなことはしない。自分が傷つき、血を流し、倒れるようなことはしない。

 戦いは馬鹿にやらせおいて、美味しい所だけ貰ってしまえばいい。

 賢者たる自分たちは、戦う者たちを利用するだけだ。利用するために戦う者たちを作るだけだ。

 

 兵士たちが国や、家族や、無関係な人々を護るために戦う中、彼らは冷房の効いた部屋で嗤いながらワインを飲む。

 

 それが彼らの望む世界。

 彼らだけが得をしてヌクヌクと笑み、他の全てがその踏み台となって苦悶にのたうつ世界。

 

「それを拒絶する女神など、消えてしまえば、殺してしまえばいい」

「その上で、我々にとって都合のいい、いつまでも戦争を続ける女神を作るのだ」

「ついでに、あの体を堪能させてもらうとするか。ナニもついていないオートボットどもでは、満足できなかろう」

 

 下卑た笑みを浮かべる男たち。

 

 彼らに信仰心などない。他者への思いやりもない。お互いへの仲間意識すらもない。

 彼らにとって他者とは利用し、踏み潰し、搾取する物なのだから。それが当然だと思っているのだから。

 

「そもそも、あんな理想家の小娘どもが支配者を気取るのが異常なのだ」

「そうとも。我々のように現実的で合理的な人間でないと」

 

 彼らにとって現実的で合理的とは『自分の都合のために他人を無限に犠牲にできる』ということだ。

 オートボットとディセプティコンもまた、彼らにとっては利用する存在でしかない。

 

 彼らは自分だけが強者で、賢者で、勝者だと信じて疑わない。

 

 ………その足元は、すでに崩れ始めていることに気付かずに。

 

  *  *  *

 

 リーンボックス内のとある工場。

 

 ここで、秘密裡に人造トランスフォーマーの量産が行われていた。

 

 いくつものパーツがオートメーションによって作られ、組み上げられていく。

 

 そうして出来上がるのが、廉価版スティンガーといった様相の量産型、『トラックス』である。

 

 完成したトラックスたちは、列を組んで並べられ、いつかくる出撃の時を待つ。

 

 その工場の奥に、研究所を兼ねたスペースがあった。

 

 研究員たちが忙しなく動き回るそこの一角には、厳重に拘束された状態である存在が鎮座していた。

 

 深紫の体に、それぞれ単眼を備えた二つの頭。

 ディセプティコンの人造トランスフォーマー、トゥーヘッドだ。

 

 研究員たちのあらゆる操作、調査に全く反応せず、静止し続けている。

 

 やがて、研究員たちは仕事を切り上げ帰路に着き、トゥーヘッドから離れていった。

 

 工場が無人になっても、それでもトゥーヘッドは動かない。

 

 ……否。

 

 トゥーヘッドの二つの単眼がギラリと光ったかと思うと装甲の隙間から、何匹もの小さな虫が這い出してきた。

 その虫は機械の体と、赤い目を持っていた。

 

 機械虫たちは一斉に飛び立つと、周囲のコンピューターに潜り込んでいく。

 

 それだけではなく、研究スペースを飛び出し、整列するトラックスや、作りかけのトラックスの装甲の隙間へと入り込んでいった。

 

 機械虫は、工場のシステムや人造トランスフォーマーのプログラムをそうと分からないように書き換えていく。

 

 次の日、研究員がやってきたころには、全ての人造トランスフォーマーとこの工場のシステムは残らず機械虫……インセクティコンによって汚染された後だった。

 

 そしてそのことに気が付く者は、誰もいなかった……。

 

 

~~~~~

 

③ 過去の記憶か、未来の予感か

 

 炎が、全てを包んでいた。

 

 何もかもが崩れ、壊れ、滅んでいく。

 

 燃え盛る炎に囲まれて、一人の女性が茫然と崩壊しゆく世界を眺めていた。

 

 突然、黒いローブで顔を隠した一人の男が炎の中から躍り出たと思うと、禍々しい紫に輝く剣を女性の腹に突き刺した。

 

 剣は容易く女性の肉と骨を貫いて背中に飛び出す。

 

 女性は自身の腹に突き刺さった剣……女神殺しの魔剣ゲハバーンを何が起こったのか分からないという風に見下ろし、それから男に手を伸ばす。

 

 指先がフードにかかり、男の顔が露わになった。

 

 そこで初めて、女性……レイは悲しそうな表情になる。

 

「ど、う…して…?」

 

 一文字発音するたびに、口からは血が吐き出された。

 男は答えず、レイの腹からゲハバーンを引き抜く。

 

 レイの体から、急速に力と……命が失われ、地面に倒れた。

 男は、しばらく倒れ伏したレイをジッと見下ろしていたが、やがて踵を返して炎の中に消えていった。

 

 薄れゆく意識の中で、レイは男の背を見つめながら、呟いた。

 

「どう……して……メガト…ロ……ン……さ……ま………」

 

 それきり、レイの意識は闇に閉ざされた。

 

  *  *  *

 

 ハッと、レイは目を覚ますと、目に映ったのは見知った天井だった。

 茫然とレイは呟く。

 

「……変な夢」

 

 メガトロンが、自分をゲハバーンで刺す夢だなんて。

 

 時計を見れば、起床する時間だった。

 いつまでも夢に囚われている場合ではない。

 

 ベッドから起きあがったレイは、鏡を見るまで自分が涙を流していることに気付かなかった。

 




① 5pb.の憂鬱
本当はこの後もう一波乱ある予定だったけど、書いてたら蛇足かな? と思ってこんなに短くなった次第。

本当に5pb.が大好きな音波一家。

② 闇に蠢く者
色々フラグを建てる回。

もはや、まな板の上の鯉と気付かないのは本人らばかり。

③ 過去の記憶か、未来の予感か
次回からの中編の前振り。

第四章、日常編、ハイドラ、長かった回り道と、そして彼女の終わりの始まり。

次中編 Rei Kiseijou is Dead(キセイジョウ・レイの死)

では。
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