超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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ネプテューヌの新作、四女神オンラインですか。

新衣装のネプテューヌが、清楚な感じでド直球にカワイイです。
あと、ベールさん露出高過ぎぃ!

※オプティマスの武装をちょっと変更


第84話 多頭蛇の巣

 ブルーウッド大樹界の奥の奥。

 天高くそびえるフージ火山の麓。

 

 その地下には、有り得ないほど巨大な溶岩洞が広がっていた。

 いかなる自然の悪戯が創り出したのか、そこは天井は都会の高層ビルが丸々入ってまだ余るほど高く、町が一つスッポリと入ってしまいそうなほどの面積がある。

 

 いや事実、今やこの洞窟には町が建設されていた。

 兵舎や兵器庫が立ち並び、地面は舗装されて道路やヘリポートにされ、たくさんの戦闘機と戦闘ヘリ、戦車が出撃の時を待っている。

 

 一角にあるドッグには、蛇の頭を模した艦首を持つ空中戦艦が停泊していた。

 

 そう、ここは武装組織ハイドラの本拠地なのだ!

 

 洞窟内のあちこちには、かのタリショックで地下に沈んだ古代の建物が顔を見せているが、基地の一部として利用されるか、あるいは無遠慮に破壊されるかだった。

 

 突然現れたロックダウンと兵士たちによって捕らえられた発掘隊の一同は目隠しをされて秘密の入り口を通り、基地の中を連行されていた。

 ロックダウンはネプテューヌと、それにくっ付いているピーシェ、そしてレイを見張るような位置を歩いている。

 ピーシェは片手でネプテューヌの手を握り、反対の腕でモンスタートラック型のラジコンを抱えていた。

 

「貴重な遺跡になんてことを……君たちに先人に対する敬意はないのか?」

 

 兵士に銃を突きつけられて歩かされながらも、トレイン教授は静かに怒る。

 

「んなもんねえな! くたばった連中なんざ知ったことか! 死人が抱かせてくれるってんなら話は別だけどな!!」

 

 一人の兵士が嘲笑すると、全体の半数くらいの兵士たちが同調して笑い声をあげ、トレイン教授は珍しく顔に浮かぶ嫌悪感を隠そうともしない。

 だが、残りの兵士は不自然なまでに無反応で、いっそ機械的ですらある。

 よくよく見れば、嗤わなかった兵士たちは全員ゴーグルと覆面で顔を隠している。

 

「ちょっと! 幼女もいるのよ!! そんな下品な話はやめなさい!!」

 

 そしてぶれないのがアブネスである。

 銃持ちの兵士に囲まれながらも、強気な態度を崩そうとしない。

 

「ああ~? このアマ、立場が分かってるのか?」

 

 先ほど教授を嗤った兵士は、アブネスに向かって恐ろしい顔を作る。

 だが、アブネスは目じりを吊り上げる。

 

「何よ! あなたたちみたいな公共良俗に反する輩なんか、ワタシの目の黒い内は好きにさせないからね! 今に規制して……」

 

 パアン、と乾いた音が響いた。

 

 アブネスが足元を見ると、地面に小さな穴が開き、そこから煙が上がっていた。

 

 兵士が銃を撃ったのだ。

 

「な、な、な!?」

「ったく、ウゼエ餓鬼だぜ! 用があるのは女神だけだし、一人くらい殺しても問題ねえだろ」

 

 言って兵士は、何てことないように硬直しているアブネスの額に銃口を向ける。

 そして誰かが止める間もなく引き金を引こうとした瞬間。

 

「ぴぃたっくーる!!」

 

 目にも止まらぬ速さで突っ込んできたピーシェが、兵士に腹に強烈なタックルをぶちかます。

 

「ふぐおおお!?」

 

 十分に体重が乗り、角度と狙いも完璧なタックルをモロに食らい、兵士は悶絶しながら倒れる。

 ピーシェはすぐさま目を白黒させているアブネスの前に仁王立ちする。

 

「よわいものいじめしちゃ、めッ!!」

「ぐ、ぐおお、このガキ……い、イタ、痛い。凄く痛い! マジで洒落にならないくらい痛い! 防弾ベストの上から食らってこれってどーゆうこと!?」

 

 兵士は痛みのあまり動くことができないようだ。

 驚くべきは、戦闘職の成人男性を沈めるピーシェの格闘センスだ。

 

「ぴーこ! 何やってんの!」

「ピーシェちゃん!」

 

 ネプテューヌとレイがすぐさま、ピーシェに走り寄った。

 

 周りの顔出し兵士たちは、不様を晒した仲間を嘲笑う。

 

「何やってんだよ、餓鬼相手に情けねえ! 早く立てよ!」

「いや、待ってコレ真剣に痛い。ヤバいくらい痛い。つまり超痛い。角度的にモツにきてるわ……」

「え、あ、ちょっと大丈夫?」

 

 蹲ったままプルプルと震える兵士を、さすがに他の兵士が助け起こす。

 

「こ、このガキよくもやってくれたな……あ、ここから先は任せるわ。俺、医務室逝ってくる……」

「あ、うん。お大事に。……このガキよくもやってくれたな! 躾けてやる!!」

「何さ! 元はと言えばあなたたちが悪いんじゃない!」

 

 全く恰好がつかないが、怒りを露わにして銃を構える兵士たちに、ネプテューヌはかなり呆れ気味にツッコむ。

 

「やかましい! こうなったらお前も……」

「やめなさい! 子供によってたかって、恥ずかしくないの!」

「この年増ぁ……!」

 

 強い口調のレイに対し、兵士は拳を振り上げる。

 

「ッ!」

 

 身構えるレイだが、兵士の手を、別の顔を隠した兵士の一人が掴んだ。

 

「なにしやがやる!」

「いや、何故か止めなければいけない気がして……」

「口答えすんじゃねえ!!」

 

 いきなり顔出し兵が顔隠し兵を殴った。

 ギョッとするネプテューヌたちだが、顔出し兵士は殴るのをやめず、他の兵士たちも止めようとしない。

 

「何してんのさ! そこまでしなくてもいいじゃない!」

 

 あまりの理不尽に怒るネプテューヌ。

 レイは殴られて倒れた兵士を助け起こす。

 

「大丈夫ですか!?」

「あ、ああ……ありがとう」

「痣になっているといけません、覆面を取りますよ」

 

 反論する間を与えず、レイは兵士の覆面を脱がす。

 

 覆面の下の顔は、あどけなさを残していて、まだ少年と言っていいくらいだった。やはりあちこちに痣ができている。

 レイはハンカチを取り出して血を拭く。

 

「これぐらいしかできませんが……」

「……あ、いえ、ありがとうございます」

 

 若い兵士は、何をされているのか分からない様子で黙って拭かれている。

 

「あなたたち、仲間に対して何すんのさ!!」

「仲間ぁ? 因子兵なんざ仲間じゃあねえよ。ただの兵器さ」

 

 殴った方の兵士……こちらは髭面で見るからに荒々しい……は侮蔑に満ちた笑みを浮かべる。

 その言い回しにネプテューヌは引っかかるものを感じた。

 

「? それってどういう……」

「答える義理はねえ。テメエは戻れ、T‐0151」

「は、はい」

 

 T‐0151と呼ばれた若い兵士は立ち上がってレイやネプテューヌに頭を下げると、どこかへ去って行った。

 

「やめんか、騒々しい」

 

 その時、寺院の中から出て来た人物が、兵士たちを諌めた。

 顔のない仮面を被った軍服の男。ハイドラの首魁、ハイドラヘッドだ。

 

 左右にはマジェコンヌとマルヴァを引きつれている。

 

「むー! 現れたね! オプっちのストーカー!!」

「……開口一番、言うことがそれかね?」

「えー、だってオプっちのカッコして大喜びしてたじゃん!」

「…………」

 

 もっとシリアスな展開を期待していたらしいハイドラヘッドは、ストーカー呼ばわりされて、いささか憮然とした様子だ。

 

「はあ……、まあいい。気を取り直して、発掘隊の皆々様、ようこそ我が都、『レルネー』へ。歓迎しよう」

 

 慇懃にお辞儀をしたハイドラヘッドは、発掘隊を見回し、レイで視線を止めた。

 

「おや、あなたは? 発掘隊にあなたのような人物がいるという情報はなかったが」

「……ただの料理人ですよ。前の人が急病なので、代わりに入ったんです」

 

 レイの答えに、ハイドラヘッドはふむと頷く。

 

「見るからに人畜無害そうで怪しい所がなさそうだが……どう思う?」

「問題ないのでは?」

「……いいや、問題はある」

 

 後ろの二人にたずねると、マジェコンヌが顔に歪んだ笑みを浮かべた。

 

「こいつは、脱女神を標榜する運動家だ。まあ、ビラ配りが精々の小物だがな」

「ほう? ではひょっとして、ディセプティコンと繋がっていたのかね?」

 

 その言葉に、マジェコンヌは顔一杯に嘲笑を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか! こんな奴を、メガトロンが相手にするワケないだろう?」

「それもそうか。では、まとめて牢屋に放り込んでおけ。女神は例の場所へ」

 

 ハイドラヘッドに指示され、兵士たちは捕虜を連れていこうとする。

 

「ぴぃも! ぴぃもねぷてぬいっしょいく!」

 

 未だに状況をよく分かってないピーシェが、元気に手を挙げた。

 レイはハイドラヘッドからピーシェを守る位置に移動する。

 

「この子はまだ小さいので、誰かが面倒を見なきゃいけません。私も行ってもいいでしょう? それとも、そこの女神様に小さな子の面倒が見れるとでも?」

 

 もちろん、普段はネプテューヌがピーシェの面倒を見ているワケだが、そこは嘘も方便である。

 

「……ま、いいだろう。では、その子もいっしょに連れて……」

「待ちなさい! 幼女が行くとあっちゃあ、幼年幼女の味方アブネスちゃんが黙ってないわ!!」

 

 硬直から回復するや平常運転を再開するアブネスに、ハイドラヘッドは若干呆れているような空気を滲ませる。

 

「君ら自分の立場を分かってるのかね? ……駄目だ」

 

  *  *  *

 

 四人が連れてこられたのは、基地の中でも警備が厳重なドーム状の建物だった。

 やがて一同はドームのちょうど中央に位置すると思われる部屋に通された。

 円形の部屋はかなり広く、清潔に保たれていた。

 

 だが何もよりも目を引くのは……。

 

「子供?」

 

 ネプテューヌは思わず目を丸くする。

 部屋の中には、何人もの子供たちが机に向かっていた。

 子供たちは、皆ピーシェより少し上くらいの歳の少女で、全員が簡素な白い貫頭衣を着ている。

 どうやら勉強をしているらしい。

 

「何で、こんなトコに子供が……」

「ねぷてぬ……このこたち、へん」

 

 ピーシェが不安げにネプテューヌの服の裾を引っ張る。

 

 確かに、少女たちはお互い話もせず、人形めいて無表情だ。

 

 答えは背後からもたらされた。

 

「鋭いな。こいつらは教育と投薬で感情を抑制されているのだ」

 

 一同が振り向けば、マジェコンヌが立っていた。

 彼女は兵士たちにもう行っていいと指示を出すと、ネプテューヌたちに説明してやる。

 

「他にも運動、会話、食事、睡眠……全て徹底管理されている」

「何さそれ! 何でそんなことするのさ!?」

 

 顔を険しくするネプテューヌに、マジェコンヌは皮肉っぽい笑みを向けた。

 

「女神に、するためさ」

「……………え?」

「ここの遺跡から採取できる古代の女神の因子を、少しずつ注入して体に馴染ませることで、最終的に女神にするんだと。その上で感情を排した操り人形にする………トンデモ理論もいいとこだが、ここの連中はそれをしようとしているのさ。……それで女神になれるなら、苦労はしないのにな」

 

 最後の方は小さな呟きだった。

 レイは顔をしかめる。

 

「でも、こんなにたくさんの子供をいったいどこから?」

「主に孤児だ。施設から引き取ると見せかけて、ここに連れてくる。もっと強引に事故に、拉致してくる場合もあるようだ」

「そんな、酷い……」

 

 言葉を失う一同に、マジェコンヌはトンガリ帽子のつばを摘まんで顔を隠す。

 だが、僅かに見える口元は嫌悪で歪んでいた。

 

「とにかく、しばらくの間、お前らにはここで過ごしてもらう。ここの区画の中なら自由に動いていい。……そこを出たら安全は保障しないがな」

 

 淡々と告げるマジェコンヌ。

 

「さてとだ。……マジック、こっちに来てくれ」

「はい」

 

 マジェコンヌに呼ばれて一心不乱に机に向かう少女たちの一人が立ち上がった。

 赤い髪をツインテールにして、何故か右目に眼帯をしているが、中々に可愛らしい少女だ。

 

「こいつの名はマジック。頭のいい娘だから、分からないことがあったら、こいつに聞け」

「マジックです。よろしくお願いします」

 

 マジェコンヌは、トコトコと寄ってきた少女の頭を撫でてやる。

 

「よろしくねー! いやしかし、こんな小さな少女を手籠めにして印象回復を狙うなんて、汚い! さすがマザコング汚い!!」

「誰がマザコングか!! 別にそういうのを狙ってるワケではない! なんでだか知らんがこいつが懐いてくるのだ!!」

「またまたー! 『不良がいいことするといい奴に見える』効果を狙ってんでしょー?」

「違うわボケェ! 貴様という奴は空気読まんかい!」

「だが断る!!」

 

 さっそくいつもの調子でからかい出したネプテューヌにムキになって反論するマジェコンヌ。

 一方、ピーシェはマジックに向かって、抱えていたラジコン……ホイーリーを差し出す。

 

「ぴぃはぴーしぇだよ! よろしく! このこはういりー!」

「ホィーリーな。良くある間違えだぜ」

「ピーシェにホィーリー、よろしく」

 

 何か琴線に触れる物があったのか、マジックは無表情のままだがピーシェの頭を撫でる。

 

「よーし、こうなったらここの子たち、みんなと仲良くなっとくよー!」

「できるものならやってみろ。私が数週間かかっても数人しかまともに会話できなかった餓鬼どもだ! 簡単にいくと思うなよ!」

「それはマザコングが怖いからじゃないかなー? ほら、顔もきつめだし、無駄にムチムチだし」

「じゃかわしい! そう言う貴様こそ無駄に声がデカくて……」

「はあ……」

 

 ほっとくといつまでも漫才してそうなネプテューヌとマジェコンヌに、レイは小さく溜め息を吐く。

 なんだかんだでネプテューヌのテンションに付いていけるマジェコンヌを見るに、この二人、根は似ているのではあるまいか。

 

「それでマジェコンヌさん? あの……ハイドラヘッドとやらは、何をたくらんでいるんですか?」

「それは、そいつの方が良く知っているんじゃないか?」

 

 レイの質問に、マジェコンヌはネプテューヌを顎で指す。

 ネプテューヌは彼女らしくもない神妙な顔を作った。

 

「……オプっちをおびき寄せる気なんだね」

「そうだ。奴はオプティマスに執着している。それこそ、ストーカー呼ばわりも否定できんほどにな。そもそも、あの考古学者に金を出してここに呼び寄せたのも奴だ。……貴様しかこないとは、思ってなかったようだがな」

 

 それを聞いて、レイは何とも言えない気分になる。

 トレイン教授は真面目に発掘調査をしようとしていたのに、それを利用するとは。

 

「しかし、貴様を手に入れた今、奴は喜び勇んでオプティマスを呼び寄せるだろう。……よかったな。頼りになる騎士様で」

「……………」

 

 皮肉っぽいマジェコンヌの声に、ネプテューヌは顔をしかめる。

 

 レイやマジェコンヌには知る由もないが、今のネプテューヌの中には、またしても最愛の人に面倒をかける申し訳なさと無力感が渦巻いていた。

 

 一方でレイはメガトロンたちが助けに来てくれるだろうかと考えて……まあ、こないだろうと結論づける。

 

 この基地に喧嘩を売ってまで、自分を助けに来るメリットがない。

 

 それは仕方のないことだ。

 

「……ま、それはともかく……みんなー! ネプテューヌお姉さんとあそぼー!」

 

 ネプテューヌは思考を切り替え、少女たちに向かって元気に声を出す。

 少女たちは僅かに反応するが、すぐに机の上の本に向き直る。

 

「あれれー?」

「だから言っただろう。こいつらは色々と調整されていて、感情が薄いんだ」

「むー、……そうだ! ピーシェ、レイさん、手伝って!」

 

 言うやネプテューヌは、部屋の隅に置かれていた、テストに使うのだろう紙を手に取る。

 

「う~ん、できればカラフルな方がいいんだけど……ま、いっか! これをこうして……」

 

 いったい、ネプテューヌは何をしようと言うのか?

 

  *  *  *

 

 いつのころから、自分たちはここにいた。

 娯楽もなく、長いこと太陽を直接見ていない

 もう、父の顔も母の声も思い出せない。

 

 かつては年下の子供たちの面倒を積極的に見る四人の『お姉さんたち』がいた。

 が、『成績優秀』な彼女たちはある日、研究員に連れていかれて戻ってこなかった。

 

 徹底して管理された生活は、寄る辺を失った幼い心を殺していくには十分だった。

 

 施設の大人たちは、口答えすれば、命令に背けば、少しでも気に食わなければ、容赦なく手を挙げた。

 

 最近現れた、ま、ま……マザコング?なる人物は、少なくとも子供にも公平に接し、何人かが心を開いたが、大多数は以前のままだ。

 

 これからもそうだろう。

 

 幼くして諦観にどっぷりと浸った思考は、もうできるだけ大人を怒らせない方向に固定されている。

 

 今日は何かうるさい連中が来たが、無視して勉強を続ける。

 

 と、その目の前を何かが横切った。

 

 ふと見れば、それは紙飛行機だった。

 

 何だこんなもの……と思い、顔の前に飛んできたそれを跳ね除けるが、次々と飛んでくる。

 

「むッ!」

 

 いい加減うっとおしくなって振り向くと、ねのうるさいの(ネプテューヌ)がニパッと笑っていた。

 

「やっと表情でたね! さ、いっしょに遊ぼ!」

 

  *  *  *

 

 ネプテューヌは半ば強引に、子供たちを遊びに巻きこんだ。

 

 最初は嫌々だった子供らも、いつの間にか夢中で折り紙を折りだす。

 

「やっぱり、子供の相手が手慣れてますね」

「と、言うより同レベルなだけな気もするがな」

 

 レイとマジェコンヌはアッと言う間に子供たちと馴染んでいるネプテューヌに舌を巻く。

 

 同時に、ここらへんがネプテューヌのワケの分からない人望の一端なのかとも思う。

 

 能天気でアーパーな癖に、スルリと人の輪の中に入ってくる。

 

「まったく、プラネテューヌの女神と言う奴はどいつもこいつも……」

 

 複雑な思いのこもった息を吐くマジェコンヌに、レイは気になっていることを聞いてみることにした。

 ネプテューヌは子供たちと遊んでいて、こっちを気にしていない。

 

「マジェコンヌさん、こんな時になんですが、一つ教えてください。あなたはどうして女神を憎むんです?」

「唐突だな。……私がゲイムギョウ界を支配するためでは不満か?」

「ええ、不満です。……これは私の勘ですが、あなたが女神を倒そうとしているのは、他に理由があるんじゃないかと思いまして」

 

 レイの問いに、マジェコンヌは嘲笑で返した。

 

「それを知ってどうする? そもそも私が話すとでも?」

「……理由があるのは否定しないんですね」

 

 ムッとマジェコンヌは言葉に詰まる。

 

「…………だとしても、人に話すようなことじゃない。私はもう行くぞ」

 

 話を打ち切ったマジェコンヌは、踵を返して部屋を出ていこうとする。

 

 だが……。

 

「まじぇっち!」

 

 瞬間、マジェコンヌは驚いたように振り返る。

 だが誰もいない。

 視点を下げると、ピーシェが自分で作ったらしいクシャクシャの折鶴を差し出していた。

 

「まじぇっちも、いっしょにあそぼ!」

 

 無邪気な笑みを浮かべるピーシェに、マジェコンヌは無表情を崩さない。

 

 だが、怒ることもしない。

 

 ただ、表情を隠すように帽子のつばを下げ、足早に退室していった。

 

「おりょ?」

「……………」

 

 ピーシェはキョトンとし、レイはやはりマジェコンヌにも女神嫌いの確たる理由があるのだと、確信するのだった。

 

  *  *  *

 

『あなたがマジェコンヌ? 長いからマジェっちでいいよね~!』

 

『マジェっちー! いっしょに遊ぼう! ……え、仕事? 後でいいじゃ~ん!』

 

『マジェっちー! イ■ト■■ルったらねー!』

 

「……フッ、あんなことぐらいで動揺するとは、私もまだまだ未熟だな」

 

 長い長い通路を一人歩きながらマジェコンヌは自嘲気味な笑みを浮かべる。

 

 ――お前が今の私を見たらどう思うのだろうな? 怒るか? 悲しむか? あるいは両方かもな。

 だけど私は、お前を生贄にしたこの世界も、お前にあんな生き方を強いた女神というシステムも、どうしても気に食わないんだ。

 だから私は、女神を倒し、世界というゲイムを塗り替えて、お前の復讐を果たしたい。

 

 …………いいや、これは言い訳だな。結局私は、生まれ持った支配欲、権力欲に振り回されていて、お前をダシにしているだけなんだろう。

 

 それでも私は、こんなことでしかお前への友情を示す方法を知らないんだ。

 

「愚かな私を許してくれ……うずめ」

 

  *  *  *

 

 ハイドラの基地レルネーの一角にある、軍用ジープが多数停車した駐車場。

 歩哨は一通り見回った後、異常無しと見て次の場所に向かう。

 

 人の気配が消えると、一台のジープの車体の下から何かが這い出してきた。

 

 頭だけの状態のフレンジーだ。

 

 レイとはぐれた彼はハイドラ兵に隠れ、ジープの車体の下に張り付いてここまでやってきたのだ。

 

「さてと、ここのどっかにレイちゃんがいるのは確かだけど……さすがに俺だけじゃ助けるのはキツイな。ここは素直にメガトロン様に連絡しよう」

 

 独りごちてから、フレンジーは彼方にいる主君に通信を飛ばす。

 

「メガトロン様、メガトロン様! 応答願います!」

『……フレンジーか。定時連絡の時間ではないが、何用だ?』

 

 ややあって、メガトロンは通信に出た。

 

「メガトロン様! レイちゃんが、例のハイドラとか言うのに捕まっちまったんです! あ、今のは洒落じゃありませんよ!」

『………………』

「とにかくですね! 俺だけじゃ助けるのは無理そうなんで、誰か応援を……」

『駄目だ』

「よこしてくれないかと……え?」

 

 フレンジーは我が聴覚センサーを疑う。メガトロンにとってレイは、欠かすことのできない駒なのでは?

 メガトロンは噛んで含めるように言った。

 

『駄目だ。と言った。今はサウンドウェーブの『仕込み』が最終段階なのだ。今、目立つ行動はとれない』

「そ、そんな……!? じゃあレイちゃんを見捨てろと!?」

『落ち着け。すぐには救援を出せないだけだ。『仕込み』が終わり次第、そちらに向かう』

 

 それを聞いて、フレンジーはホッと排気する。

 

「じゃあ、それまでは俺がレイちゃんを守ります!」

『頼んだぞ。……それにしても、ちょうど良かったかもな』

「へ?」

 

 意味が分からず素っ頓狂な声を出したフレンジーは、メガトロンが通信越しに嗤う気配を感じた。

 

『なに、兵どものストレス発散のために、レクリエーション大会を開こうと思っているのだ。……破壊に満ちた、な』

 

  *  *  *

 

 場所は離れて、プラネテューヌのオートボット基地。

 

 オプティマスは仕事を終えて、ネプテューヌへの連絡を取ろうとしていた。

 少し離れていただけなのに、もう寂しがっている自分に、軽い驚きを感じる。

 先ほども……。

 

『いかん。ネプテューヌ分が不足してきた』

『ネプテューヌ分?』

『そうだ、ネプテューヌ分だ。ネプテューヌ分が足りなくなると、疲労や集中力、思考力の低下など症状が現れる』

『ネプテューヌ分は……、ネプテューヌに含まれているのか?』

『はっはっは、当たり前だろう!』

『司令官が、司令官がもうダメだ!』

『なんて言うかオプティマス。君はネプテューヌが絡むと色々残念になるねえ。前々から兆候はあったけど、恋人になってからは特に。とりあえずリペアルームに行こう』

 

※以上、仕事中のオプティマスとバンブルビーとラチェットの会話。

 

 冗談のつもりだったのに、本気で心配された……。

 やっぱりいつもは言わないことを言うもんじゃない。

 

 馬鹿な回想から戻ってきたオプティマスは恋人の声を聞いてネプテューヌ分を摂取すべく、通信を開く。

 

「ネプテューヌ、私だ。そちらは問題……」

『サプラ~イズ♪』

 

 通信の向こうから聞こえてきたのは、ネプテューヌの声ではなかった。そもそも男性の声だ。

 オプティマスの表情が一瞬にして引き締まる。

 

「貴様、ハイドラヘッド!」

『憶えてくれていて嬉しいよ』

「ネプテューヌをどうした!」

『彼女と発掘隊は、我々が預かった。返してほしければ、私との決闘を受けてもらおう』

「決闘だと?」

 

 質問に答えず、ハイドラヘッドは一方的に要件を言う。

 

『指定するポイントへ来るんだ。もちろん、断るのは許さない。あと、このことを誰かに知らせるのもナシだ。もし、従わなければ……分かるね?』

 

 ハイドラヘッドが座標を言う間、オプティマスは黙ってうつむいていたが、やがて顔を上げた。

 その顔からは、表情の一切が欠落していた。

 

「いいだろう……受けて立ってやる」

『ハハハ! そうこなくては! では楽しみにしているよ!!』

 

 一方的に通信を切るハイドラヘッド。

 オプティマスは黙って立ち上がると、早急に武器庫に向かった。

 重々しい扉を総司令官権限パスコードで開け、中に入ると、武器庫の中の無数の武器を次々と装備していく。

 

 まずは愛用のテメノスソードとバトルシールドを背負い、レーザーライフルを背中側の腰にマウント。

 

 次に、手榴弾数発と大型拳銃二丁、小型拳銃一丁、数種類のナイフ、各種弾薬を体の各所に格納。

 

 強化型イオンブラスターを腰の脇に下げ、さらに大型のビームバズーカを背負って、右肩に四連ロケットランチャーを装着。

 

 身の丈ほどもある両刃のエナジーアックスを、手持ちサイズまで変形させて装甲の隙間に収納する。

 

 最後に大経口のガトリングガンを手に持ち、これで準備は整った。

 

 さあ、出撃だ!!

 




ネプテューヌ「うたのおねえさん状態!」
マジェコンヌ「私って、ホント馬鹿」
ハイドラヘッド「待ち遠しいなあ、おめかししなくちゃ!」
オプティマス「面白い奴だな、殺すのは最後にしてやる」
メガトロン「おう、皆といっしょに遊びに行く(意味深)から、待ってな!」

だいたいこんな感じ。

今回の小ネタ

レルネー
名前の由来は、ギリシャ神話でヒュドラが住んでる沼地より。
イメージは思いっきりガンダムのジャブロー。
当初は地表にある予定だったけど、衛星とか普通にあるゲイムギョウ界でそれはどうよ? ということで地下基地に。
都市規模なのは……ほら、ぶっ壊すと爽快じゃあないですか。

人造女神候補
私の中で、『子供を傷つける奴』は問答無用に明確な『悪』でして。
四人の『お姉ちゃん』たちは、今作での出番なし。
マジックは、多分成長するEカップぐらいあるナイスバディのお姉さんに……。

マジェコンヌの独白
この伏線が回収される日は、多分きません。

ネプテューヌ分
あずまんが大王ネタ。今の子に分かるかな?

では、ご意見、ご感想、お待ちしております。
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