目が覚めたら、錆びた鎧だった。〜記憶も声もないけど、とりあえず人助けを頑張ります〜   作:とれりか

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6話 ヨロイさん「おはようゴーレム」

 俺が他人と会話をするためには、ひとまずゴーレムを介する必要があるようだ。

 直で俺の心の声を発生させる便利装置は流石にないんだなぁ。

 

 ミアさんは俺に「心を覗かれても大丈夫か」と聞いてくれた。

 俺としても彼女や他の人とコミュニケーションが取れないのは非常に困ってるので、その程度のことなら特に問題はない。

 だが彼女の気遣いはとても嬉しかった。

 

 ネネル長老と話し合った後、ミアさんは連れてきたゴーレムの外殻を加工し始めた。

 かなり大変な作業なようで四苦八苦している。

 俺も手伝おうとしたが、ゴーレムが暴れ出したことの考えて監視に集中してほしいと言われた。

 確かにミアさんが安全に作業できる環境の方が大事だ、ゴーレム以外にも気を配っておこう。

 

 下半身を切り離したところで、彼女が思案顔になった。

 どうやらコアの場所を知りたいらしい。

 うーん、確かにそれは確かに重要だよな。

 コアから切り離すのはともかく、コアに繋げるのは大変らしいから。

 

 何気なく目を凝らして見ると、なんとなく薄ぼんやりとゴーレムの胸部中央が光って消えたような気がした。

 ミアさんの肩を叩いてその場所を伝えると、彼女はそこを中心に人形の形をくり抜き出した。

 

 数時間は経っただろうか、彼女の作業もいよいよ大詰めとなった。

 彼女は荷物の中から鈴のようなものを取り出した。

 ミアさんが言うには、それはゴーレムを喋らせることの出来るパーツとのことだ。

 何となくコアと似たような光を纏ってるように見える。

 

「多少強引にでも、着けられればいいんだけど……っと!」

 

 ぐいっとゴーレムに押し込むと、意外なことにそれは反発を受けることなく体を構成する土塊に埋没した。

 なんとなく、繋がったなと俺は感じた。

 

 ふぅ、と一段落ついたミアさんに、俺はタオルを差し出した。

 彼女はエメラルドの瞳を細めた。

 

「ありがとう、ヨロイさん。これであの子は喋れるようになったと思うわ、多分。あとはあなたとあの子を繋いでもらうだけだけど、しばらく休憩にしましょう」

 

 うん、そのほうがいいだろう。

 見るからに消耗している彼女を無理に働かせたくない。

 ネネル長老の家でちょっと休ませてもらおう。

 

「粗茶ですが」

「ありがとうございます。いただきます」

 

 長老の奥方が、お茶を煎じてくれた。

 ……あれ、そういや俺って飲み食いできんのか?

 そこに疑問持つと、いよいよ俺が人間か怪しいんだが?

 まあいいや、とりあえずGO!

 

 いけたわ、美味い。

 みんなが兜の上から行くのか……って顔してるけどしょうがないんだ、脱げないんだよこれ。

 

「それでネネル様、ゴーレムとヨロイさんを繋ぐ術についてですが、特別な材料などは必要ないのでしょうか」

「確かに希少ではありますが、この森に住む者ならば幾分かの手間をかければ手に入れられるものですよ。既に村の者に取りに行かせております」

「ありがとうございます。ヨロイさんへの儀式の方も含めてお代の方は支払いますので」

 

 深く頭を下げてお礼を言うミアさんに対して、長老はそんなものは不要だと応えた。

 

「ミアさん、これは商売ではありませんよ。いわば年寄りのお節介、老婆心というやつですかな。若者には遠慮せず受け取ってもらうのが一番嬉しいのですよ」

 

 そう朗らかに笑う長老に、彼女はそれでもと渋るがついには根負けして彼らの親切を受け取ることにした。

 

「……分かりました、素直に受け取っておくことにします。けれど、このご恩は忘れません」

 

 俺も彼らへの恩は決して忘れないと誓おう。

 長老は目尻を下げて一つ頷き、これから行う儀式について説明を始めた。

 

「この儀式の肝は心とコアを繋ぐことにあります。儂が行う作業そのものはさほど時間はかかりませんが、その繋がりが完全なものになるには多少の時間がかかります」

「終わったあと直ぐには話せないということですか?」

 

 ミアさんの質問に、長老は首を振った。

 

「いえ、単純な意思疎通は可能でしょう。ただ複雑な会話は難しい。王国(アステリア)語と帝国(オーロス)語同士で会話するようなものですかな」

 

 なるほど、違う言語を喋ってる相手と話すのはそりゃ難しいな。

 ただ長老の言い様だと、アステリアとオーロスってのは近い言語なのかな?

 まあ、はいといいえが言えるようになるだけでも助かるってもんだ。

 流石にジェスチャーで伝えるのは苦しいし。

 

 その後、とりあえず材料が揃うまで何日か待っててくれと言われたので、お言葉に甘えて村に逗留させてもらうことになった。

 ミアさんはついでとばかりに商売してた。

 

 俺も農作業の手伝いなどをして数日過ごした頃、明け方目覚めると俺の顔を覗き込む何かがいた。

 

「おう、おはよーさん!」

 

 ……ん?こいつって。

 

「あんたがアムを直してくれた人か?あんがとなぁ」

 

 ゴーレムだわ、ミアさんが直した。

 え、すげえフランクかつ流暢に喋ってる。

 あとなんか訛ってね?

 俺が直したわけではないので首を振り、少し離れた場所で眠っているミアさんを指差す。

 

「なんと、兄さんじゃなかったんやな、失敬失敬。そやったらあの姉さんが起きたら礼言わんとな。……そういえば兄さんは喋らんのかいな?」

 

 めっちゃ喋るわコイツ。

 こくりと頷いて肯定したところで、ミアさんが「うぅん」と呻きながら目を覚ました。

 

「なによ騒がしいわね……だれぇ?」

「おっ!目ぇ覚ましたな!姉ちゃんが直してくれたアムやで!よろしゅうな!」

「……え?は?ゴーレム?あの??」

 

 とてとてと小走りで駆け回る小さなゴーレムに、ミアさんが目を白黒とさせて困惑している。

 まあそうなるよね、まさかあんな性格とか思わないし。

 まだ事態を飲み込めていないミアさんに、ゴーレムが「せやで!」と自分の胸を叩いた。

 

「な、るほど……?かなり想定外だったけど、無事に動けるようになったのなら良かったわ」

「おお!姉ちゃんたちのお陰やで!」

 

 こいつめっちゃ愛嬌あるわ。

 全高が腰の高さほどまでになったのはかなり大きいと思う。

 ミアさんも戸惑いつつも満更ではなさそうだ。

 

「ねぇ、さっきアムって言ってたけど、それってあなたの名前なの?」

「せやで!」

 

 腰に手を当てて胸を張るアム。

 

「アムはいつからその名前だったの?」

「んー…あんま覚えてないねん。アムらゴーレムはな、コアに記憶や記録が貯まるんやけど、外の体が壊れたりすると曖昧になるんや」

「やだ……それって私のせいよね、ごめんなさい」

 

 ミアさんが顔を青くして謝るが、アムは「気にせんといてや!」と腕をぶんぶんと振った。

 

「こうなる前のことはよぉ覚えとらんけど、苦しかったのは覚えとる。それを直してくれたんやから、恨むなんて筋違いなことはせんで!」

 

 できた奴だと感心しているところで、アムが「ところで」と切り出した。

 

「アムの仕事ってなんなんや?」

 

 そうだ、確かに説明してあげないと。アムが了承してくれるといいんだが。

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