デモンズエデン ~死にゲーを生身で、現代社会を美少女エルフで戦うハメになってしまった~   作:ぎむねま

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ラーメン屋ダンジョン1

俺は金属の扉を潜った。

 

出た先は洞窟の中。ゴツゴツとした岩肌にジメついた空気。ラーメン屋駐車場の面影はまるでない。

 

振り返っても閉まった扉があるだけだ。俺に続いて誰か入ってくる気配も無い。

自衛官の遠藤さんが俺の背中に手を当てて一緒に入る手筈だったが途中で感触が消えている。

 

やはり、ダンジョンには俺しか入れないのだ。

まずはふぅ、と深呼吸。

余裕ぶっていたが、やはり緊張する。

所詮は最初のダンジョン。ビビることないと自分に言い聞かせる。

 

「あー、テステス」

 

次は、長いエルフ耳にハマったインカムに呼びかける。

 

「やっぱ通じない、よなー」

 

正直、そんな事だろうと思っていた。

天開山の駐車場で扉を潜った時も、ドリームフレームは持ち込めなかった。

 

インカムをほじくり出してみると、陶器のような謎の素材に変わっていた。

 

ナイフ、銃、刀を確認。

どれも、ダメ。ヘニャヘニャのナマクラだ。

まともな装備は何一つ持ち込めない。そう言う事だろう。

 

「って言うか、動きづらいな」

 

多機能バトルスーツもゴワゴワしていて、きっと見た目だけソレっぽい別モノに置き換わってしまった。動きを阻害するだけなので脱いでしまいたいが、数秒は我慢する。

 

「30、29、28……」

 

深呼吸して、30秒のカウントダウン。

 

コレは、突入前に何度も確認した手順だ。

 

突入し、連絡が取れなかったら30秒カウントしてから行動を開始する。

コレにどんな意味があるのかと言うと、この時間で俺のドリームフレームでデモンズエデンを起動するのだ。

俺のドリームフレームでゲームを起動すると、俺は現実化したデモンズエデンの中に戻ってしまう。ソレを逆手にとって、緊急脱出に使おうと言うのだ。

 

果たして?

 

「3、2、1……ゼロ」

 

なんもナシ、どうせそうだと思ったよ。

大きなため息をひとつ。俺は一人で戦う覚悟を決めるのであった。

 

しかし、この時、俺は知らなかった。

デモンズエデンを起動した司令部はとんでもない騒ぎになっているなどと。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「こちらHQ、アリス、応答せよ。繰り返す、アリス応答せよ」

「ダメです、繋がりません!」

「映像出せ」

「かき消えた様に見えましたが……」

「HQ、コチラ遠藤。目標を見失いました」

 

突入と同時に消えたアリスこと柏木ヨウの姿に、司令部はパニックになっていた。

自衛隊側はもちろん、米軍側でも事情は同じ。メインモニタには衛星画像を大写しにしているが、上空からも消えたようにしか見えない。

 

「ドリームフレームは?」

「現在、起動中のようです」

「……そうか」

 

肯きながらも、特殊作戦群長を務める小林1等陸佐は忸怩たる思いだった。今回の事件の鍵となるドリームフレームとかいう機械は米軍の手にある。

日本国民、それも高校生を死地に追いやるような作戦ながら、自衛隊が指揮を執る事すらも叶わなかったからだ。

 

主導するのはあくまで米軍。

共同作戦本部というタテマエから同じ部屋で指揮を執って居るモノの、米軍とは薄いベールで隔てられているようだった。

 

小林1佐をいっそう苛立たせるのは、米軍側の緊張感がまるで希薄に思える所だった。オカルト騒ぎなど専門ではないと言った様子で、面白半分な空気を感じてしまう。

ソレに輪をかけて、ドリームスカイ社の技術者と言われる男達はお気楽だ。不真面目では無いのだが、好奇心まみれの表情が癪に障る。目を輝かせて作業をするのは良いことだが人命を軽んじるなと言ってやりたい。

 

一方で、ドリームスカイ社の幹部。グレッグ・ナイセルの緊張感は自衛官以上と言って良いかもしれない。自社製品がテロの道具に使われたとあってはナーバスにもなるだろう。

ビッグテックと呼ばれる世界でも五指に入る会社の存亡が掛かっているのだ。無理も無い。

苛立たしげに爪を噛むグレッグに同情しつつ、小林1佐は米軍に問い合わせる。

 

「ドリームフレームはどうなりましたか?」

 

指揮を執るケビン准将に訊ねると「今やってる」と英語でそっけない返事。

間にはそれぞれの通訳が入っているが、小林1佐にそんなモノは不要だ。ケビン准将だって日本語が堪能。とんだ茶番だ。

 

「確認中だそうです」

「……そうか」

 

一拍遅れの通訳の解りきった言葉に形だけの返答。

米軍主導ならいっそ英語だけで良いだろうと思うが、そうも行かない。このやり取りは録音されて内閣での判断が必要になるそうだった。

くだらない政治。小林1佐は苛ついていた。

 

その時、米軍側に動きがあった。

技術者達がドリームフレームを覗き込んで騒いでいる。何かあったのは明白だった。

 

ケビン准将が何事かと詰め寄るが、肝心の技術者は見た方が速いと勿体ぶった。大仰にドリームフレームのケーブルを掲げ、メインフレームに接続していく。

 

「メインモニターに映像、出るそうです」

「見たら解る!」

 

それが仕事と解っているのに、通訳に当たってしまった。反省しつつも小林1佐は固唾を飲んでメインモニターを見上げる。そこに映ったのは、デモンズエデンのゲーム画面。

 

いや、違う。

 

「コレは? アリス?」

 

洞窟の中でアリスが佇む様子がメインモニタに大写しになったのだ。

コレはゲームの映像か? そう思えるのは丁度ゲームの視点の様に背後から少し高い視点で周囲を映しているからだ。

 

聞けば、デモンズエデンのサードパーソンモードと言うのにそっくりと言う。

かき消えたアリスがデモンズエデンの映像に映った。つまりこれは……緊急転移成功なのか?

 

いや、違う。映像の中のアリスは声に出して30カウントしているのだ。

エリート軍人ばかりの司令部がザワめいて収まらない。これは、つまり……

通訳が語る。

 

「どうやら、ダンジョンの中の様子が映っている……ようです」

「ああ、そうだな」

 

これもまた見たら解る事ではあった。

しかし、解りたくなかった。

 

緊急脱出は失敗。死地に降り立った高校生……いや、エルフの少女をココに居る全員で見守る事しか出来ないからだ。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

一方、ダンジョン。

まさか司令部に見られてるとは夢にも思わない俺は、お着替えの方法を模索していた。

開発者の矢吹さんに聞いた、デモンズエデンの着替え方をこっちで実践しようとしていたのだ。

 

俺は装備一覧を意識して『切り替える』

すると……

 

「おおっ!」

 

体が強烈な発光。光で何も見えないが服が脱がされた感触がある。そこにサラシやら袴羽織、ロングブーツが次々と着せられていく感触も。

白鞘の打ち刀が腰に揃って、完全装備。

 

「ふむ……」

 

出来ちゃったな。装備の一括入れ替え。

魔法少女の変身シーンのようだ。

 

たっぷり5秒の変身時間は、相手に合わせてメタ装備に次々切り替えるのを防止するためらしい。そんなゲームのデメリットまでこっちで再現しないでもと思う。

 

「じゃ、行きますか」

 

俺はゴブリン蔓延るダンジョンに突入する。

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