デモンズエデン ~死にゲーを生身で、現代社会を美少女エルフで戦うハメになってしまった~   作:ぎむねま

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ドリームフレーム事件共同作戦基地

つい先日、我らが波木野市に日米共同のドリームフレーム事件共同作戦司令基地が完成した。機密保持に優れた建物がゴリゴリ利用可能になった。

もちろん数日で建ったワケじゃない。

 

最近潰れた製薬会社の土地建物がゴッソリ残っていた事が大きいそうな。

 

しかし、だ。

そもそも、なぜ『市内に』巨大な司令部を作る必要があったのか? って話。

 

実は、俺の体、いやアリスの体は波木野市の外に出る事が出来ない。

 

都内の大病院で身体検査をしようとしたら、ある一定の場所で毎回毎回、デモンズエデンの世界に戻ってしまう。

 

初めは、ドリームフレームから遠くなると『侵入』が解除されるのだろうと思っていた。しかし、肝心のドリームフレームも市外に持ち出せない事が判明する。持ち出そうとすると熱暴走時のビープ音が鳴りまくって、長距離の移動は故障の危険があると判断されたのだ。

 

他には、俺が着ていた異世界産の下着とかも持ち出せなかった。

 

異世界由来のどんな病原菌があるか解らないので金属の箱で厳重に密閉したのが仇となり、空っぽの中身に気が付いたのはアメリカに渡ってから。ごく最近と言うのだから笑えない。

 

初めは謎だったこれら事象。今なら仮説が立つ。

 

波木野市がデモンズエデンの領域なのだ。

元々、波木野市をうっすらとモデルにしたらしいデモンズエデンのフィールドマップ。ダンジョンだけでなく、波木野市全体が異界化したデモンズエデンの影響を受けている可能性が高い。

 

そうだとすれば、恐ろしい。

思い出すのは公園に降り立った巨大なドラゴンの幻。アレが実体を持ったらどうなるか?

 

三十万人以上が住むベッドタウン。我らが波木野が危険に晒されている。

 

だからこそ、自衛隊なり米軍なりが駐留する場所が必要になったと言うワケだ。もちろん俺やドリームフレームの分析も、この基地で行う事が出来るようになる。

 

俺は今、その広大な敷地を散歩している。

 

超法規的措置として厳つい装甲車やヘリなんかが普通に停まっているから驚く。

その他に、俺の体とかを調べる大型の分析装置などもガンガン搬入されている様子も窺える。

 

……自分の体を隅々まで調べて、好き放題にいじくり回す大型のゴツイ機械が運ばれていくのを見せつけられていると考えると、薄い本の不安があるな。

 

嘘でーす! ちゃんと調べてください。

アレルギーとか、十字架に触ると死ぬとか、そう言うのあったらシャレにならんもん。

 

ソレにしても、とんでもない規模の話になってきた。

 

波木野市の年間予算みたいな金額がポンポン動いているらしい。挨拶に来た市長なんて、札束でアヘ顔ダブルピースをかましていた。

 

これはビックテックであるドリームスカイ社の強烈な資金があってこそ。

もちろん、慈善事業でも、事故の責任を取るためでもない。

 

……ピンチをチャンスに。このオカルト悪魔騒ぎで、未知の物質やエネルギーでも発見すれば、事故のマイナスイメージなどお釣りが来るほどの利益が出る。なんなら異界での資源開発を目指し、米軍も前のめりになっているとか。

 

それもこれも、異世界の映像のインパクトが凄かったのだろう。あれからフィールドのマップの映像も録画出来る様になったのだ。

実際に生身で異界を目にしている俺だって気持ちは解る。あの未知の世界を見たら、夢を見るのも無理がない。

 

 

もし異世界に行けたら、どうする? みたいな。

今日び中年のおっさんでも見ない夢にみんなが浮かされている。悪魔版のゴールドラッシュかね。結局、つるはしを売るヤツが一番儲かったってなりそうだが。

 

そんな騒々しい基地の中にあって、それでも俺は目立っている。自衛隊も米軍の兵隊さんも、みんな俺を見ると足が止まる。

 

まぁ、目立つよな。俺が諸悪の根源みたいな所もあるし。

 

……いや、そんな敵愾心に満ちた目じゃない。なんなら憧れ? 興味、関心、単純に目を奪われている様子が多い。ねっとりとした性欲も時折感じる。

 

おいおい、俺はなんだかんだ常に監視されてるからな。変な事考えんなよ?

 

と、目当ての建物にやってきた。

ちょいと離れにある、この基地にしては小さい建屋。

非接触型のカードキーを翳し、ズンズンと立ち入る。目指すのはココの地下。

 

巨大なエレベーターに乗り込むと、遠藤さんも乗ってきた。

……そりゃね、ずっと監視してますよ。密室にはしれっと入ってくる。

最近ずっと一緒だから、話す事も無くなってきた。だが、二人きりで黙っているのも気まずいので口を開く。

 

「すいませんね、俺のわがままで」

「良いですよ。我々も気になる部分です」

 

そうなんよな。この体の特性は誰だって気に掛かる。それがダークスフィアの動機でもあるのだし。

 

チーン、と扉が開くとソコは広大な地下空間。

まるでデパートの駐車場。ってそこまで広くはないけどな。でもイメージは近い。冷たくぶ厚いコンクリートの床や壁。

 

で、そこの片隅に、強烈な照明が焚かれていて、ドンと置いてあるのがドラムセットやキーボード、アンプにマイクまである。なんか良く解らん機材まで。

 

そうだ。俺がギターの練習をしたいから場所とギターを用意してくれとリクエストしたら、こんな事になってしまった。

 

いつものホテルで初心者用のギターとアンプで練習出来れば、軟禁生活も楽しくなるかと思ったら、思いの外大事になってしまった。

 

「え? どうなってんの? バンドでもやるの?」

「気にしないでください。新品ではありませんから」

 

え? そうなの? 遠藤さんが言うには自衛隊の軽音部みたいな所から借りてきたらしい。

 

「そりゃ申し訳ないよ」

 

返してきて、どうぞ。

 

「良いんですよ、むしろ予算が出るかもって喜んでましたから。希望があれば教えに来てくれるらしいですよ」

 

そういうもんか。大人の世界ね。

 

いや、待てよ?

要らない物が一杯あるけど、肝心のが無いぞ?

 

「あの、遠藤さん? ギターは?」

 

そう、ギターが無いのだ。こんだけあって要望した物が無いってどうなの? そう聞けば、遠藤さんは気まずそうにチラリと目線を外す。

 

「ソレに関してはアチラに……」

「レディに、彼からのプレゼントとして送らせて下さい」

「コンニチワ!」

「うわっ!」

 

ぬるっと現れたな。

通訳さんと、ソレに……この偉そうなおっさんは? 思い出せ! 思い出せ! そうだ、ドリームスカイ社のお偉いさんだ。

 

「グレッグ、デス、コレを受け取っテクダサイ」

 

日本語でそう言って、渡してきたのはギターケースだった。

持ってみると、当たり前だが中身も入っている重さだ。

 

……世界的大企業の幹部が渡してきたギター。開けるの怖いなコレ。こっちは素人だぞ? ヴィンテージのレアなヤツとか渡されても扱いに困る。初心者に優しいのを頼むよ。

 

そんな俺の表情で察したのか、グレッグさんはにこやか。

 

「大丈夫、初心者の女の子でも使えるのを選んで貰いました、と言っています」

 

通訳さん、そう言う問題じゃないんですよ。

俺は恐る恐るグレッグさんに聞く。

 

「……ちなみに、お値段を聞いても? How much?」

「一万ドルデス」

 

トンでもねぇな。100万超の初心者向けギターなんか無ぇんだよ! いや、ある? あるのか? 通訳さんが言うには、いやグレッグさんが言ってるんだけど。金持ち向けにそう言うのもあるんだと。

 

なるほど、成功者が暇を持て余してギターを始めるなんてのは珍しく無いんだと。ちなみにグレッグさんは全く楽器は知らないとか。まぁどう見ても暇じゃないからな。

 

とりあえず、弾いてみてくれと言うのでケースを開けると、ビビットな赤のいかにもエレキギターってデザインだ。それでいて、ちょっとレトロな雰囲気もある。

 

カッコイイじゃん。

気に入った。

 

ギターストラップに肩を通し、さぁと構えた所で思い出した。チューニングしてねぇや。と、チューナーもあるらしい。え? この機械がネジを回して調整してくれるの? 未来かよ。

 

「グレッグさんがお店の人に聞いたところ、ギター自体に自動調整機能がある物も売っていますが、初心者はそういった機能に頼らない方が良いとお店で言われたそうです」

「……そ、そうなんですねぇ」

 

我ながら、引き攣った愛想笑いにもなるだろう。

 

チューニングを教わった時から思っていたのだ。

「こんなの自動でやってくれよ」って。

まぁ誰でも思うし、思うなら作るよね? で、ココで疑問になるのがなんで初心者向け高級ギターにその便利機能がないんだよって話。

 

これ、絶対にぼったくられてるだろ。

 

ヴィンテージモデルとか、○○カスタムとか。100万を超えるギターには却ってそんな便利機能は付いていないに違いない。

 

「お金持ちの子女にプレゼントする。相手は素人。私も素人。金に糸目はつけない」

 

そんなリクエストをすれば、もうどれだけ高いモデルを売りつけてやろうかって考えるに違いない。今回だけのオマケですよって、お高いチューナーでも付ければ喜ばれる。

 

だがな、便利なチューナーをオマケに付けてる時点で、自分で出来る様になった方が良いって言い訳が破綻しているだろ!

 

これ、確実にやっちまってるよ。

 

「…………」

 

まぁ、良いか。カッコイイし。自分の財布じゃ無いし。俺はすっかりこのギターが気に入ってしまった。

俺はドリームフレームの被害者。相手はソレを作った人。コレぐらい貰っても罰は当たらない。完全にセーフ。

 

俺はウキウキ。

通訳さんもウキウキだ。

 

「気に入ったかと、グレッグさんが」

「はい! もちろんです!」

 

元気良く返事。

良く考えれば、一万ドルでも大手企業のお偉いさんからしたら小銭みたいなモンか? 大体にしてドリームフレームが二万ドルもするからな。子供のオモチャみたいな感覚なのだろう。余裕余裕。貰っとくに限るわ。

 

そう割り切って、ご機嫌にFコードを演奏していると(むしろコードを鳴らすしか出来ない)みんなの目線が恥ずかしい。三人にニコニコと見られている。なんなら監視カメラでも見られてそうだ。

 

いや、これで終わりッス。ウォーミングアップじゃなくて、ガチでココで終わりッス。

まだ曲とか知らないんですよ。って言える空気じゃないねどうも。

 

俺が所在なげに愛想笑いをして誤魔化してると。なんと言う事でしょう。グレッグさんがお辞儀をしている。なんと見事なジャパニーズお辞儀。最敬礼45度。

 

いやー、俺のFコードそんなに良かった?

ンな訳あるか。

 

神妙な声で、グレッグさんが語る。

 

「アリスに、オネガイあります」

「お……オネガイって、なんです?」

 

返事も掠れる。これ不気味すぎるだろ。

一万ドルのギター。急に重たくなってきた。

 

「ムスメを、アンジェラを助けてクダサイ!」

 

なるほどね。

なるほどー???

 

俺はチラリとギターを見る。

 

あの、クーリングオフとか効きます?

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