デモンズエデン ~死にゲーを生身で、現代社会を美少女エルフで戦うハメになってしまった~   作:ぎむねま

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ショッピングモールダンジョン

ショッピングモールを営業停止には出来なかった。

 

かなり人が集まる場所ってのはあるが、何よりヘタに大事にしてしまうとマスコミが群がってくるに違いないのだ。

 

大体にして、今回は扉に入って出てくるだけ。

大騒ぎする必要は全くないのであった。

 

「お姉ちゃんお耳長ーい!」

「きんぱつーきんぱつー」

「テレビで見たよー! 悪魔と戦ってるんでしょ」

「すごーい!」

 

子供に囲まれてしまった。

今、ショッピングモールの屋上では『ウルスラマンVS次元怪獣メルトラン』のショーが行われているのだった。

 

コレ、大丈夫なのかよ。流石にこんなに子供が居るのは不安になる。

あっ、写真撮らないで! 撮られて恥ずかしいとかじゃなくてマスコミが来るのが困るのよ。

我が子と俺のツーショットをニコニコ顔で撮っていた親御さんには、遠藤さんから『お話』させて貰う。すぐにアップするのは止めてねって。

 

で、目当ての扉は……と探し歩くと、事前情報通り、屋上の端に見つかった。

 

会場のど真ん中ではなくて助かった。壁の中に埋まってるとかそう言う可能性もあるからほっと一安心。

 

それにしても、子供がこんなに多いってのは想定外だな。イベントをもっと調べてくれば良かった。

 

今回、俺は使えないバトルスーツではなく学園の制服を着ている。目立たない様にって配慮だが、完全にアテが外れた。目立ちまくっている。

 

「その制服やめません? 派手過ぎますよ」

 

苦言を呈してくる遠藤さんは無視。

確かに、元々ウチの高校って女子の制服は派手可愛いんだよ。そこに改造してミニスカートにしてニーハイなんか履いてるから悪目立ちしている。

 

まぁ、遠藤さんのリクルートスーツもどうかと思うよ、俺は。

 

スタッフに偽装? そうですか。

 

今回、戦闘は全く想定していない。

敵が居ないダンジョン。万が一にもモンスターが溢れ出すって危険もない。

 

だけど丸腰ってのはどうかと思い、ギターケースに刀を入れている。ギターの活用がこんなのって悲しいね。

ギターケースを担いだ、金髪エルフの制服女子ってそりゃ目立つわ。

 

さっさと終わらせるに限る。

 

「あー、テステス」

「こちらHQ、確認した――」「おい、写真はやめてくれ」

「…………」

 

俺の映像を撮ってる自衛隊の人、怪獣映画のスタッフかと思われてるじゃん。

自衛隊の格好のまま、すっかり馴染んでるの笑うだろ。

 

学校指定制服の俺が一番目立ってるの解せぬ。

まぁいいや、とっとと回収してこよう。

 

「あー、アリス、突入します」

 

俺は扉を押し開けた。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「ふぅ」

 

来たぜヌルリと。

 

周囲は青白く無機質で、目の前には神殿のような建物がデンと建っている。

ゴツゴツした岩肌にゴブリンだらけだったラーメン屋ダンジョンとはまるで趣が異なった。

 

それもそのはず、このダンジョンは精霊界と呼ばれる世界に繋がっている……らしい。

もちろん、ゲーム内のフレーバー。異界の異界って訳わからんよ。異界がゲシュタルト崩壊している。

 

さて、この様子も司令部で確認してるのかね?

ちょっと後ろを向いて手を振ってみちゃったりして。

 

……反応無いから微妙だな。

 

コホンと咳払いして、神殿の内部を目指す。

と、言ってもさして広くない神殿だ。すぐに目当ての場所に辿り着く。

 

ど真ん中にある祭壇に腕が生えていて、悪趣味なオブジェと化している。

その指に問題の指輪がハマっているワケよ。

 

「ふぅ」

 

ちょっと気合いを入れる。

この指輪をはめるとムービーが始まって、霊獣が現れるのだから緊張するのも仕方ない。

しかも、キャラクターの相性で霊獣が決まるってランダム性まであるのだから。

 

実際は、種族やステータスで傾向は大体決まるらしいんだけど、今の俺のステータスとか解らんからな。

それ以前に、まともに霊獣が出てくるかも解らない。肉入りって可能性まである。

 

最悪、戦闘もあるか?

そう言えば、まだ着替えていない。制服とギタースタイルのままだ。

すぐ着替える予定が、思いの外緊張していたようだ。

 

しかし……制服は全く違和感がないな。

武器でも防具でも、電子機器でも無ければ、ほぼ遜色なくソレっぽい見た目のモノが持ち込めるようだ。覚えておこう。

 

とりあえず、発光お着替えカマしておくか。

 

ピカピカ光って、いつものサムライ少女スタイルに帰還。

――さて、指輪を取るか。

 

俺は、不気味なオブジェからサッと指輪を引き抜く。

 

で、ムービー……なんだが、実はこの不確定要素満載のムービー。吹っ飛ばす方法が存在するのだ。

今回ソレを試す。

 

RTA向けのテクニックらしいのだが、指輪を取ってムービーが始まるまで、しばらく間がある。その間に、ダッシュで神殿の奥に駆け込んで脱出オーブに触れれば良い、らしい。

 

走りながら指輪を……あ、左手の薬指にはめちゃった。

マキシミリアンに結婚指輪を見せられたから思わずね。

 

で、脱出オーブに触る。すると?

一瞬で、視界がホワイトアウト。転移の兆候だ。

 

「おおっ」

 

戻って来た。

ここはショッピングモールの屋上だ。

 

姿も元の制服姿。

耳のインカムも、有る!

 

「あー、こちらアリス。帰還しました」

「HQ、こちらでも確認した。よくやった」

 

と、労って貰うのだが、成果は解りにくいよな。

肝心の指輪はこの世界に持ち込め……てる?

 

俺の左手薬指には、しっかり指輪がハマっている。

え? なんで?

 

と、そこに自衛隊の遠藤さんが。

 

「お疲れさま、アリス」

「いや、ちょっと待って」

 

なんか、おかしい。

指輪も取れない。

 

これ、まさか?

 

「グルルッ」

 

獣の、唸り声。

 

「え?」

 

巨大な黒豹が俺の太ももに鼻先を寄せている。

なんだこれ? こんな大型獣を子供が居るトコに連れ込むんじゃねーよ。

 

……違う。

コレ、霊獣だ。

黒豹なんて日本に居る訳ない。そもそもがデカ過ぎる。

 

霊獣出現ムービーをスキップしたつもりが、スキップ出来ていなかった。

 

「ちょ、オイ!」

 

こいつ、俺のスカートに鼻先を入れてくるんじゃない! エロ豹め!

俺は必死に黒豹の首を抑える。

 

すると、遠藤さんは怪訝な顔をする。

 

「何してるんですか?」

 

見えていない! 扉やドラゴンと同じ。俺にしか見えないのだ。

遠藤さんは怪訝そうに、俺の肩に手を掛ける。

するとどうだ。

 

「きゃっ! なにこの子」

 

見えた? 遠藤さんにも黒豹が。

俺に触ったからだろうか?

 

いや、違う。

観客席でステージの開演を待つ子供達がしきりにコチラを指差して居た。

 

「ねぇ、おっきい猫さん居るよ!」

「豹だよークロヒョウ。おっきーい」

 

子供には見えている?

そして……

 

「猫さん? どこに?」

「お姉さんたち、なにをしてるんだろうね」

「アトラクションの準備かな」

 

親には見えていないのだ。

 

これは、なんだ?

いや、それよりも、コレは霊獣登場ムービーの一種なのか?

 

スキップ失敗? だとすると。マズい。

 

ムービーは、霊獣登場で終わらないのだ。

 

やってきた霊獣を追いかけて、悪魔と融合した巨大な霊獣が現れる。

慌ててプレイヤーはオーブで脱出するものの、主人公が乗れる霊獣だけでなく次のボスも同時にこちら側に呼び寄せてしまう。

 

ムービーはそうやって終わるのだ。

 

つまり、ゲーム的にはパワーアップと同時に、次のボスをチラ見せするイベントだったりする。

 

それが、この場合……どうなる?

 

「ッ! 遠藤さんッ!」

 

俺は遠藤さんを抱きかかえ、飛ぶ。

その直後、俺達が居た場所を巨大なアギトが通過した。

 

現れたのは巨大な鮫!

それも、怪獣並みにデカいヤツ。

 

コイツがボス。魔霊獣メガロドン。

 

そのまんまの名前だよクソ。

 

「いま、一瞬、鮫が?」

 

遠藤さんにもちょっとだけ見えたらしい。

アレは幻覚? だが、試しに囓られてみる気はしない。

 

「ウワァァャァァ!」

「ママ! 怪獣! 怪獣だよぉ!」

 

子供には、見えている! ヒーローショーは大騒ぎだ。

だけど、誰も気にしない。

 

怪獣の着ぐるみでも見たのだろうと気にも留めない。

ソレに反応したのはたったの一匹。

 

「Fuckin' brats」

 

確かに言った。

メガロドンは言った。

喋ったのだ。

 

デモンズエデンの動画は散々見た。だけど、このボスは喋らない。

 

こいつ『肉入り』だ!

子供を襲おうとしている!

 

「マズい!」

 

俺はギターケースを開け、刀を抜く。

メガロドンめ、よりによって子供に!

 

俺は全力で、走る。しかし、追いつけない。

 

「ガルルッ!」

 

黒豹? 乗せてくれるのか? ってか、お前乗れるの?

考える暇も無い、俺は巨大な黒豹の背に飛び乗っていた。

 

「うわっ!」

 

とんでもないスピード。なんとか首に抱きついて耐える。

なんだこれ、凄い。

ゲームでも霊獣は広大なフィールドを駆け回る存在だ。

波木野市と同じサイズのマップをストレス無く踏破出来るのだから、バイクなんかよりよっぽど早い。

 

ソレが現実化したら、こうもなるか。

あっと言う間にメガロドンを追い越し、目の前に躍り出る。同時に、俺は黒豹の背から飛び掛かった。

 

「オラッ! クソッ」

 

額を刺す。しかし、止まらない。

 

「Gyaao!」

 

すると、怪物らしい悲鳴をあげて、メガロドンは進路を変えた。子供達がいる観客席からど真ん中へと。まだ幕が開かないステージ目掛けて。

 

「うわっったた!」

 

俺は慌ててメガロドンの額から刀を抜き、脱出。

これ、どう見えてるんだ? 俺が宙に浮いてひとり剣を振り回してる感じ?

 

あまりの緊急事態に思考が麻痺し、どうでも良いことを気にしてしまった。

 

「クソッ!」

 

そんな間にも、メガロドンはステージに突っ込んで行く。

 

だが、俺は内心、そんなに心配していなかった。

コレは俺にしか見えない幻覚だ。ムービーの続きに過ぎない。公園で見たドラゴンだってそうだ。アイツらはコッチのモノを傷つけられない。そうだろ?

 

「なっ?」

 

しかし、俺の願いとは裏腹に、メガロドンはステージ幕を吹き飛ばした。

実体が、ある?

 

イミテーションシルクの垂れ幕は、メガロドンの顔面に貼り付いてしまった。

空を飛ぶ巨大な鮫のシルエット。ショッピングモールの屋上を悠々と泳いでいる。

 

「なんだアレは?」

「キャーッッ!」

 

もう、こうなればもう誰の目にも見える。

 

俺は堪らず、一番目立つ所へ、幕が無くなった隔てるモノのないステージのど真ん中に降り立った。

 

「来いっ!」

「Gyaaaaa!!」

 

俺が、俺が責任を取らないと!

 

突っ込んで来い! ぶっ殺してやる!

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