デモンズエデン ~死にゲーを生身で、現代社会を美少女エルフで戦うハメになってしまった~   作:ぎむねま

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サーミット山 凶鳥ドードーの巣

「はぁ、クソゲー」

 

現実化したデモンズエデンはクソゲーだ。

間違いない。

 

だって、暗い。

夜が、暗いのだ。

 

暗いのが、夜なのだ。

夜だけが、暗いのだ。

 

「当たり前だと思うけど?」

「黙ってろナビナビ」

 

今回、ピカピカ光るナビナビはウエストポーチに仕舞ってある。

このウエストポーチもマップ上で拾ったモノだ。中に入っているアイテムを手早く手元に呼び寄せられる。投げモノや薬を入れておくと便利。今回はナビナビを格納してある。

 

では、改めて。愚痴らせてくれ。

このゲームは昼夜の概念が存在する。

 

ゲームを起動して30分もすれば昼夜が入れ替わる……らしい。

 

だが、現実化したデモンズエデンはそうじゃない。

時間の流れは現実と完全にリンクしている。

 

つまり、夜に冒険しようと思ったら夜にログインするしかない。

 

スニーキングミッションって言ったら夜しか無いだろう?

なにせ俺には気配察知がある。暗さは問題にならない。

その上相手は鳥のバケモノと来た。

 

夜に攻略する。

ソレを思いついた時点で、成功は約束されたようなもん。

 

なので、俺は夜の九時過ぎにデモンズエデンの世界に入るハメになっていた。

 

「別に良いじゃん」

「普段ならなぁ」

 

ゲームを遊ぶには九時過ぎってのはゴールデンタイムだ。

だが、俺の場合は学校から帰ってきて、放課後の大冒険って感じになる。

 

『放課後の大冒険』

響きだけなら楽しそうだよな。

 

だが、マジで死ぬかもって冒険は、学校帰りじゃ気疲れしてしまう。

鈴木と馬鹿話して、陰キャなオタクどもの前でニーハイの裾を直したりした後で、男の姿で命懸けのガチ鬼ごっこはシンドイぜ?

 

「それは、邪悪な遊びしてるのが悪くない?」

「黙ってろナビナビ」

 

男にはやらねばならぬ時があるのだ。

 

あのクソオタク共め、なにが「んー、VRギアを被った変な男が居るとは思っていましたが」「まさか二クール目からTSしてエルフになるとは」「露骨なテコ入れですなぁ」じゃねーんだよ。

ぶっ殺すぞ。お前らの情緒を再起不能にしてやるからな。

 

「いや、もう無視してれば良いよね?」

「黙ってろナビナビ」

 

オタクに優しいエルフのフリをして接近し、すっかり勘違いして告白でもした所を晒しあげて小馬鹿にしてやるからな! アイツらはソレだけの事を言った。

 

「いや、真面目にやってね」

「シッ、マジで黙って」

 

敵が、来てる。

サーミット山は小さい山だ。なのに標高は高い。

つまりそれだけ急勾配って事。とても真っ直ぐは登れない。

 

グルグルと周りながら少しずつ頂上を目指すしかない。

現実化したこの世界なら、それこそハーケンを打ち込んでロッククライミングで岩肌を登る事も出来るだろうが、俺にはそんな技能がない。

 

あったとしてもクソデカの鳥やコウモリが攻撃してくる中、無防備な背中を晒したくない。

 

そうだ、サーミット山は敵が出る。

最序盤のマップだからゴブリン並みの雑魚ばかりだが、細い道で飛んだり跳ねたりしてる途中に攻撃されたなら滑落して死にかねない。

 

ちょうど、こんな風に。

 

「ハッ!」

 

俺は、壁を蹴って、三角飛びの要領で上空のコウモリを切り裂いた。

こういう雑魚を事前に退治しなくてはならんのだ。

 

しかも、サーミット山の山道はまるっきりアクションゲーム。ところどころ崩れていて、そんな場所は決まって崖にミゾが掘ってある。

指でしがみついて腕の力だけで先を目指して下さいって塩梅だ。

 

ゲームでは良く見る定番アスレチック。

 

だが、そんな場所でも敵が居る。こう言う場面に敵が居るのはズルいだろ。

ゲームでは敵が出ないよう調整されていた。少なくとも、参考に見てきた動画では出なかった。

 

それが、容赦なくコウモリが飛んでくるんだからナーバスにもなるだろう。

 

「よっと」

 

岩肌に指を引っ掛けて崩れた山道を進む。そんなに長い距離じゃないのは幸いか。

 

「頑張るねぇー」

「チッ」

 

ポーチのナビナビは呑気なモンだ。

無言で舌打ちを返す。

 

「いや、実際凄いと思うよ」

「ポルタリングできっちり練習してきたからな」

「ボルダリングだよね、それ?」

「…………」

 

仕方ないだろ、普段使わないんだよそんな言葉。

むしろ、ナビナビさんはゲームに使わない単語でも良く知ってるな。

 

コイツ、外部にアクセスしたりしてないよな? 大丈夫かな?

俺、コイツの中身、記憶をなくした正体不明の協力者って説明しちゃったんだけど。

 

まぁ、良いか。知った事じゃない。

 

と、次はジャンプアクションを求められるステージだ。

途切れ途切れの山道、張り出した岩や枝を伸ばす大木を足場に、越えて行かにゃならんのだ。

 

「え? ホントにココを越えるの? マジで?」

「マジもマジだ」

 

ナビナビも引くぐらいの難所。俺でもコイツは緊張するぜ。

 

行くぜ!

 

壁を蹴る。不安定な岩の上に乗って、崩れる前にジャンプ。枝に捕まって、そのままの勢いで壁を蹴って、割り込んで来たコウモリを斬りながら着地。不安定な足場が端から崩れていくのをダッシュで駆け抜ける。

 

「ハァ、ハァ、はぁーしんど」

「いや、スゴッ! 凄くない?」

 

ナビナビが褒めてくれる。流石に気持ちが良い。

 

「死ぬかと思ったぜ、ちゃんとな」

 

特に、途中に割り込んだコウモリがヤバかった。咄嗟のアドリブで切り抜けた。

 

まさに間一髪。観戦している司令部だって心が安まらないだろう。

この様子もみんなで見てるのかな? 手を振ってみたりして。

 

「何やってんの?」

「まぁまぁ」

 

別にナビナビに説明する必要ないしな。

 

!!??

――ッ! ヤベェ!

 

俺はウエストポーチにナビナビを押し込むとダッシュで駆け抜ける。目指すは岩肌の間隙。

人が一人入れる程度の隙間を見つけ、するりと潜り込む。

 

「どうしたの?」

「黙ってくれ!」

 

困惑するナビナビに小声で訴える。すると……

 

「ドー! ドー!」

 

腹に響くような低い鳴き声。

オイオイ、夜だぞ? 鳥目はどうした?

 

俺の気配察知は巨大な物体が俺目掛けて飛んでくるのを察知していた。

この山のボス。凶鳥ドードーだ。

 

「ドー、ドー……」

 

山道で俺を探している。

ゲーム通りであった。この山道では時折ドードーが飛んで来てプレイヤーを探しに来る。その度にこうした岩陰に隠れてドードーをやり過ごす必要があるのだ。

 

徹底的に息を潜める。

覗き見たりはしない。俺には気配察知がある。ゆっくりと感覚を伸ばし外の様子を探る。

 

……なにっ? 出口が無い! 落ちてきた岩で塞がれてしまった?

現実化した世界なら、そんな事すらあり得るのか?

 

じわりと汗が滲む。出口の様子を見ようと身を乗り出す。

 

その直前……だ。

 

岩肌が動いた。いや、『開いた』。

ギョロギョロと蠢いている。

 

これは……岩じゃない!

ドードーだ。ドードーが覗き込んで巨大な目を見開き俺を探している!

 

気付くのが一瞬遅れたら、目が合っちまう所だった。

だらだらと汗が落ちる。

 

クソがッ! 鳥は夜なら見えないだろうとタカを括っていた。俺の気配察知なら簡単だと。

なんなら、ドードーが『肉入り』なら、とっくにどっか好きな所に飛んで行って、見回りなんてしてこないと思っていた。

 

人間ならこんな何も無い山を守って、律儀に見回りなんてする必要が無いからだ。

 

切り替えろ、切り替えろ。

 

人が入って居ないのは悪い事じゃない。

ルーチン通りの行動、幾らでもやりようがある。

 

ドードーが飛び立つのをジッと待っていると、たっぷり五分後。ようやく諦めたようだ。

この辺りもゲームのままだ。

 

悪くない。ホッと一息。

 

「ドーー」

 

身を翻し、飛び立つ前のひと鳴きまで予習した通りであった。

ならばコチラも出る準備をするか。ポーチを開けてナビナビに話し掛けようとした、その時だ。

 

ドードーがポツリとこぼした。

 

「mist……見間違いか」

 

ゾワリと背筋に悪寒が走る。

低い声。ドードーの声でありながら、鳴き声とはまるで違う呟き。

 

翻訳されたすこし固い日本語。

コイツ、『肉入り』だ。

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