デモンズエデン ~死にゲーを生身で、現代社会を美少女エルフで戦うハメになってしまった~   作:ぎむねま

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アンジェラ救出作戦3

俺はグレッグさんに敬礼する。

 

「では、行ってきます」

「こちらこそ、娘を頼む」

 

グレッグさんは深いお辞儀を返す。

その顔は期待と不安に満ちていた。

 

それもそのハズ。

今日の作戦で、いよいよグレッグさんの娘、アンジェラさんを救出する手筈になっている。

 

次に話し掛けて来たのはイリーガルソフトの矢吹さんとナード王のマキシミリアン。

 

「応援しているよ。キミがあの世界をどう攻略するか見てみたい」

「派手にカマしていけ」

 

二人にはアイデアも出して貰った。

格好悪い所は見せられないだろう。

 

後は、遠藤さん。

 

「なによりも、自分の命を優先してください」

 

いつもクールなお姉さんだ。

 

「絶対に死ぬな」

 

小林1佐はそれだけ。

 

ちなみに、いつも通り、親は呼んでいない。

冷静で居られるハズが無いからだ。

 

 

ここはドリームフレーム事件共同作戦基地。

元々は製薬会社の研究開発オフィスとして使われていた巨大なフロアを利用して、アンジェラ救出作戦本部が作られていた。

 

なんかもう、全然知らない人が大勢いる。アメリカや日本のお偉いサンが詰めかけて、物々しい警護体勢まで引かれている。アサルトライフルを吊した兵士が普通に歩いているから驚くね。

 

大層な応援団だ。

って言ってもまぁ、ココで何か出来るってワケでは無いのだけどな。

 

向こうに行けるのは俺だけ。

装備も何一つ持ち込めない。

 

司令部はドリームフレームを通じてコッチの姿をモニター出来るものの、肝心の指示がコチラまで届かない。

 

つまり、俺の戦いを観戦するだけだ。

暇なお偉いサンにとって、格好の娯楽になってやしないか?

 

これ何とかならんのかな?

俺は見世物じゃねーぞ。

 

まぁ、今更か。

色々言っても仕方無い。録画だけはしっかりして貰おう。万一、俺が死んだら親に映像を見て貰い、映像の権利も譲ってあげてくれと重々頼んである。

 

万が一、エルフの女の子、アリスまでもが死んでグールとなった場合。俺はコッチに戻って来れなくなるからだ。

 

俺が死ぬ映像を見せられるのはシンドイだろうが。それでも乗り越えて貰わないとならんのよ。

 

なんたってオカルトだ。一度、違う姿で復活してしまったモンだから、変に希望を持って引き摺られても困る。

 

その辺りの権利関係の書類は何度も確認する。

 

他にもやることは山積み。

危険に向かうコト。心変わりが無いかなど。

様々な書類にサインして、対面でも何度も確認される。

 

さて、そんなこんなで作戦開始の14時だ。

いよいよ空気が張り詰めてきた。

 

ケビン准将が英語で何やら音頭をとって、自衛隊側の責任者である小林1佐が作戦開始の号令を上げると、オペレーターのカウントダウンが始まった。

 

「10、9、8……」

 

それっぽく勿体ぶっては居るモノの、ただ俺のドリームフレームでデモンズエデンを起動するだけだ。

 

「3、2、1、0……デモンズエデン起動します」

 

響くオペレーターの声。

 

「じゃあ、行ってきまーす」

 

元気に宣言。

俺の意識はホワイトアウトして消えていく。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「ふぅ」

 

俺は、アリスの姿で聖堂に飛んでいた。

 

まずは深呼吸。

 

……静かだ。

アッチは騒がしく、張り詰めて居るくせに。肝心のデモンズエデンはなんとのんびりしているコトか。

 

見渡す聖堂の中、ナビナビは本を読んでいた。

……俺の姿で。

 

「あ、おかえりー」

「ただいま、って言うべきか?」

 

どんだけ寛いでるんだよ。

ナビナビは、俺がアリスの姿で現実世界に行ってる間も、死人繰りで俺の体を使えるようだ。

 

MPはどうなってんだ? 謎だ。

 

で、読んでいるのは俺が以前持ち込んだ本である。

 

持ち込んだ本。

 

……コレが驚きだ。

 

制服がいい例だが、コッチに来たとき着ていたモノは結構精密に再現してくれる。

 

一方で機械や武器は持ち込めない。

 

このルールを利用して、何か便利な現代文明の利器を持ち込めないか、色々画策した事があった。

 

司令部の人達もノリノリだった。

米軍的にも、こっちの世界に干渉したいとなれば一番の関心事でもあったのだ。

 

まず、ドコまで持ち込めるかを調べた。

 

基本的に、身に付けた衣服限定のみ持ち込めるようだ。

ゲーム的に裸だとマズいと言う事か?

 

両手に荷物を抱えても、背中にリュックを背負っても無視される。

さらに、重量制限もあるようだ。

ポケットに入るモノならともかく、着ぶくれした中に色々仕込んでも持ち込めない。

 

次に試したのは化学物質。

 

火薬……はダメ。タダの灰になっていた。

 

次に可燃性物質。ある程度は燃えるが期待したほどじゃない。火起こしに使えるかどうかって程度。

 

次に、毒。コレもダメ。色だけ似た別の物質になっていた。

 

重金属、放射性物質。プラスティック、砥石……などなど

 

もう、本当に色々実験させられたのだが、結局のところ何を持ち込んでも見た目だけはソレっぽい別モノになってしまう。大して役に立たない。

 

だが、逆に言えば、見た目だけはソレっぽいモノが持ち込めるのだ。

 

それで注目したのが本だった。

本ならば持ち込んだ本の見た目だけ再現されれば、本としての機能は果たす。

 

果たして、本だけはちゃんと読める代物だった。

 

まぁ、それが何の役に立つの? とは思ったけどさ。

暇を持て余すナビナビしか喜んでない。

 

だが、今回ばかりは明確な使い道がある。

アンジェラの家族写真と、グレッグさんからの手紙を持ち込んだ。

 

コレで信用して貰い、協力を仰がなくては。

俺は写真を聖堂の机に置き、ナビナビに見せる。

 

「へぇ、コレがティアちゃんの中の人?」

「中の人って……」

 

ずいぶん俗っぽい言い回しを覚えたモノだ。

……この悪魔、色々学習してマズい事になってないか?

 

「どったの?」

「いや……」

 

初めからこんなモンだった気もする。

 

ナビゲーションシステムだからな。ゲーム中のあらゆる情報を持っている。その上、雑談も熟せるように複数言語の知識と常識も持っているならなおさら。

 

気にしても仕方ないな。

 

「まずは、体を返してくれ」

「おっけー」

 

俺はナビナビ、もとい柏木ヨウの額に触る。

すると……

 

「ふぅ、やっぱコッチのが安心するな」

 

俺は自分の体に戻った。

まず視線が高い。体も大きく、力も強い。

一方で、体を明け渡したナビナビはフラフラと漂う。

 

「ボクも光球のが楽ではあるんだけど、本が読みにくくてねー」

 

勝手な事を言いやがる。

 

無視して、俺は倒れてしまったアリスの肉体を急ごしらえの寝台に寝かせた。

 

こうしてみると、やっぱり可愛いな。

思わず見入っちまう。

 

「なに自分の体に見とれてるのさ」

「悪いかよ」

 

ナビナビに突っ込まれた。

でも、可愛いんだもん。

 

コレで、霊獣みたいにMPを使って召喚出来るハズだ。

アリスが死ぬと帰れなくなるのだから、俺の体でなんとかなるなら使いたく無い手ではある。

 

とにかく、準備は整った。

 

「行くぞ」

「おっけー」

 

俺達は聖堂を出て、デモンズエデンの世界に飛び出した。

見下ろす景色には冒険と狂気が詰まっている。

 

「霊獣!」

 

まず呼んだのは霊獣ピラーク。

凶鳥ドードーの雛なのだが、ダチョウのような大きさだ。

 

「ピィ」

 

背中に乗れば元気良く挨拶してくれる。

ひとたび駆け出せば歩くのとは比べものにならない速度で景色が後ろに流れていく。

 

「ははっ!」

 

爽快だ。

俺はこの世界をどこか楽しんでしまっている。

 

ほのかに青臭い草原、ピラークが蹴り上げる度に土臭さが混じった。

背を叩けばピラークがスピードを上げ、爽やかな風に軽く羽織ったマントがたなびく。

 

なんとまぁ、楽しい遠乗りだ。

 

そんな勢いでかっ飛ばして居ると、目的地まではすぐだった。

 

「ここ、か……」

 

ここは、辺りを一望出来る小高い丘の上。

緊張を飛ばすには、まだピラークに乗り足りない思いだった

 

元々そんなに遠い場所じゃない。朽ちた協会は聖堂から見える程度の場所にある。

 

気が付けば、風は湿り気を帯びており、少しだけ重さを増している。

 

 教会は湖畔にある。

 ゲームで見たまんまだ。

 

そして、教会前に陣取るボスもまた、聖堂を出た直後にゲームで目にしていた。

 

「近衛騎士、か……」

 

 遠近感がおかしくなる。

 

 それぐらい、デカい。

 

身長170cm後半の俺は決して小さくはないだろう。

ピラークに乗ればなおさら目線は高くなる。

 

 だが、近衛騎士は格が違う。

 

まず、乗る馬がデカい。ピラークよりずっと。

と、なれば、跨がる騎士も当然デカい。身長は2メートルを優に超えているだろう。とんでもない巨漢だ。

 

更に言えば、馬も騎士も金ピカの鎧を着けていて、重量感と威圧感が半端ない。

 

世紀末覇王かよ。

 

まだ遠い位置。戦闘態勢でもなく、ただのんびりと馬を歩かせているだけなのに、威圧感だけでビビッちまう。

 

同じ人間とは思えない。

いや、悪魔に魂を売って凶悪な肉体を手に入れたと、そんな設定があるのを思い出した。

 

ゲームなら巨大な敵に立ち向かうワクワクが味わえるのかも知れないが、現実であれば恐れしか無い。

 

「まぁ、やるしかないよな」

 

深呼吸をひとつ。大きく息を吸い込んだ。

 

やるか!

 

俺は腰のロングソードを抜く。

フィールド上、少し遠出した山中に無名の兵士の墓がある。その墓標代わりに刺さっていたのがこのロングソードだった。

 

しかし、なにもコイツで戦いを挑もうってんじゃない。

これはそこまで強い武器では無い。

 

コイツの使い方は……

 

「おーい! コッチだ! コッチ!」

 

俺はロングソードとダガーを打ち鳴らす。

カンカンとデカい音がするんだコレが。

 

すると、どうだ?

 

「ウ゛ウ゛ウ゛ウォォォーーーン!」

 

腹に響く唸り声。

馬か騎士か、どちらのモノとも判然としない。不気味な声。

 

先ほどまで聞こえていた、虫の鳴き声、鳥のさえずり、草木の揺れる音。それらがゴッソリ抜け落ちて、張り詰めるような静寂に満ちていた。

 

音が殺された草原。

巨馬が踏みしめる蹄の音だけが不気味なリズムでコチラに迫る。

 

死刑を待つ囚人みたいな心境で、俺は近衛騎士が来るのを待った。

 

「You...テメェがプレイヤーか? 俺達をこんな世界に閉じ込めやがった犯人ってコトで良いんだよなぁ?」

 

喋った……

やはり『肉入り』だ!

 

俺は大声で宣言する。

 

「違う! 聞け! プレイヤーが死んでも、グールになって復活するだけだ。デモンズエデンをやってりゃ知ってるだろうが!」

「お前をぶっ殺しまくって、ゲームを止めさせりゃ終わるだろうが」

「……終われるモンなら終わってるに決まってるだろ! プレイヤーだろうが、この世界は止められない! 俺がクリアするしか無いんだ!」

「フン、だったら一度殺させろよ」

「なに?」

「とりあえずテメェをぶっ殺してから考えてもバチは当たらねぇって言ってンだよ!」

 

そう言って、長大なランスを構えてくる。

完全に殺る気だ。

 

「あいにく、自殺する趣味は無くてな」

 

……これ以上は話し合いになりそうにない。

アンジェラを攫った時点で解っていたが、コイツはプレイヤーが敵だと思い込んでいる。

 

戦いが始まった。

 

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