デモンズエデン ~死にゲーを生身で、現代社会を美少女エルフで戦うハメになってしまった~ 作:ぎむねま
悪魔を召喚するのに必要なのは、麻薬。
これはドリームフレームの電子ドラッグで代替できる。
繋がる人間はネットワークで無尽蔵。
では、魔法陣はどうか?
それがデモンズエデンだった。
「悪魔召喚における魔法陣とは、悪魔と交渉を行うための領域。デモンズエデンの世界こそが、先ほど言った現金を乗せるトレーのようなモノ。現実と異界との狭間に作られた世界だと考えられている」
ケビン准将は淡々とそう語る。
デモンズエデンを元にした異界に二千の魂が囚われて、助けなければいけないと。
そして、異界に干渉出来るのは現状アリスだけなのだと。
初めて明かされたルール。
本物のデスゲーム。
まるで映画や小説の世界の話。
だが、楽しい話では終わらない。現実の危険も迫っていた。
「作られた異界がトレーだとすると、この波木野市全体が買い物カゴのようなモノ。取り出したアリスの体も、契約が成っていない以上。このカゴの外に持ち出すのは許されない。まだ契約が成立していないからだ」
そう語ると同時、モニターに流れたのは車で輸送されるアリスが車中からかき消える様子であった。
「波木野市全体が、異界の影響を受けている。異界から干渉を受ける可能性がある」
次に映されたのは、波木野市の各地に存在するダンジョンへのゲート。
「これらは基本的に、カシワギの持つドリームフレームにしか映らないし触ることすら出来ない。だが、それらが無害とは言い切れない」
モニターにはショッピングモール屋上で、幕を被ったメガロドンが浮き上がる様子が映される。
「現在は、薄衣を一枚動かす程度の力だ。だが、これからもそうだとは限らない」
ケビン准将の合図で現れたのは波木野市の市長である。
「えー、ご紹介にあずかりました、私は波木野市の市長である~」
「挨拶は良い、結論だけたのむ」
「はぁ……」
ケビン准将に急かされた市長が発表したのは、波木野市全体を災害警戒レベル2に設定するという発表だった。
「皆様は、もしもの時の避難経路などを確認しておいて下さい。後ほど市のHPで発表があります」
「この警戒レベルは3、4と上がる可能性もある。だが、万が一の時の為に我々米軍も自衛隊も駐留している。過度な心配は不要だ」
ケビン准将が補足する。
ここにきて、記者達は取り残されていた。
あまりの事態に付いていけなくなったのだ。
その間にも記者会見は続く。
次に現れたのはドリームスカイ社の開発本部長、グレッグ・ナイセル。
「断じて、我々のドリームフレームは悪魔を召喚する事を目的に開発しておりません」
まずは、この事件に直接の関わりがないことを強調する。
「その上で、皆さんにこのような形でご迷惑をお掛けしている事を心よりお詫びします」
そう言って、頭を下げる。
英語はもちろん、片言の日本語でも同様にだ。
「そして、私は親として、娘の安全を願ってしまった」
「それは我々も了承した作戦だ。グレッグ氏が責任を感じる問題ではない」
予定外の事を話し始めたグレッグに、ケビン准将が横槍を入れる。
コホンと咳払いを一つ。
「とにかく、我々はカシワギヨウ、コードネームアリスをサポートし、異界から人質となった人間を解放する作戦を行っている。つい先日、最初の人質を解放した」
置いてきぼりだった記者達が、再びザワリと活性化した。
既に開放された人質が、居る。
二千人の人間は助ける事が出来るのだ。
「まずは彼女を紹介しよう、グレッグ氏の娘、アンジェラ・ナイセルさんだ」
そうして現れたのは、美しい少女だった。
長い金髪に青い瞳。スタイルが良く、均整の取れたプロポーションをしている。
だが、なにより目を惹くのは日本の学生服を着ている事だった。
波木野市の市民なら見慣れた制服であるが、元々派手なのもあって西洋人のアンジェラが着ると別モノの様に見えるのだ。
何人もの記者が見とれてしまったのも無理からぬ話。
それだけ魅力的な少女であった。
「アンジェラ・ナイセル、デス。よろしくお願いシマス」
片言の日本語で挨拶、以後は英語で事件のあらましを語っていく。
「私は、父から貰ったドリームフレームを持て余していました」
プリインストールされていたデモンズエデンは難しくて途中でやめてしまったし、ジャンキーばかりのVR空間に繰り出すのは怖かった。
「ですが、好きなバンドが、ダークスフィアがVRでライブをやると言うので見に行ったのです」
ソコで、事件に巻き込まれた。
ライブの中盤で異様に興奮している自分を自覚した。電子ドラッグを転送されたのだと気が付いた時には手遅れであった。
意識を失い、気が付いたら知らないログハウスの中に居た。
「私は、デモンズエデンのキャラクター、ティアになっていたのです」
「そ、それはどう言う意味ですか?」
堪らず、記者が割って入る。
「そのままの意味です、異界化したデモンズエデンに囚われた魂は、デモンズエデンのキャラクターに入り込んでいます」
再びザワめく会場。
「私はそこで、命を狙われた。私が死んで、プレイヤーが攻略を諦めたら、ゲームみたいな夢が醒めると思ったのでしょう。追い回された末に閉じ込められた。そこを助けてくれたのが柏木くんなのです」
柏木・アリスが近衛騎士を倒し、ティアはアリスと共に聖堂に避難した。
そこで現実への帰還を果たしたのだ。
救出の条件は、アリスと共に聖堂を訪れ、波木野市内に肉体が存在すること。
つまり、被害者から名前を聞き出して肉体を移送した上で、聖堂まで同行する必要がある。更に言うと、キャラクターによっては聖堂まで移動出来ない事も多い。
あまりにも難しい条件だった。
「しかも、そこまでしても悪魔との契約は破棄されていません。私もアリスと同様に波木野市の外に出ることが出来ないのです、意識を失ってティアの体に戻ってしまいます」
結局はゲームのクリアが必要で、アリスの協力が必須なのだとアンジェラは訴える。
アリスが悪魔だと忌避される事を避けたい一心だった。
悪魔、もしくは未成年に頼った解決など、もっての他だと叩かれては困るのだ。
「現状解っている事をまとめました」
ここで再びケビン准将に戻り、状況をまとめる。
運ばれて来たのは巨大なフリップ。日米両バージョンが用意されていた。
状況
・デモンズエデンの世界に二千人の魂が囚われている。
・二千人の魂はデモンズエデンのキャラクターの中に入っている。
・協力を仰ぎ、救出する。
・正気を失っているケースや、プレイヤーを倒せば夢が覚めると誤認しているケースが多く、時として排除しなければならない事がある。
救出方法
・アリス・柏木の手引きで魂が入ったキャラクターを聖堂に連れて来ることで、この世界に戻す事が可能。
・最終的に、ゲームをクリアして異界がなくなれば契約は破棄され、二千人の魂が開放されると見込むが、正確な所はわからない。
・その他、こちらから異界に干渉する方法を模索中。
攻略について
・現在、攻略出来るのは、プレイヤーであるアリス・柏木のみ。
・どのキャラクターに誰の魂が入り込んでいるか全くの不明。
・異界では、アリスは柏木の元の体と使い分ける事が可能。
・通常なら異界に存在するダンジョンの入り口が、波木野市に出現している。
・そのため、ダンジョンはアリスだけで攻略しなくてはならない。
・ゲームであるデモンズエデンの攻略をそのまま使う事は出来ない。
・デモンズエデンの様子は動画として録画可能。
……正直なところ、記者達はケビン准将が言うことの半分も理解出来なかった。
そんな中でも、目を惹いたのは最後。
デモンズエデンの映像だった。
百聞は一見にしかず。先ほど、ファンタジーな光景を見ただけにココに関して理解が早かった。
「あの、この映像と言うのは公開して頂けるのですか?」
「報道に必要な分は公開するが、映っているのはアリスであり、柏木洋だ。映像の商業利用権は基本的に柏木に帰属する」
「それは……」
テレビ局としては、無料で扱える優良コンテンツと食いついたのだが、アテが外れてしまったと肩を落とす。
そんな様子にケビン准将は釘を刺す。
「人の命がかかっているのだ。報道の影響で、アリスの救出作戦に影響を与えた場合、賠償では済まない問題になるだろう。日米両軍を敵に回す。その辺りを良く考えずに映像を扱えば後悔する事になるだろう」
コレには榊を始め、テレビクルーも棒を飲み込んだような顔になった。
つまり、アリスの許可がなにより重要と言う事になる。
いや、そんな事を抜きにしても何よりも話を聞きたい相手であった。
結局は、彼女? こそが最重要人物なのだ。
どんな軍隊も、兵器も、悪魔の世界には無力だと言うなら彼女に頼るしかないのが現状。
「とにかく、彼女、いや彼と言うべきか? 悪魔の体に入ってしまった少年はあくまでも被害者であり、もっとも重要な協力者でもある。心無い質問やヤジは控えて頂く」
ハッキリとケビン准将は言い切った。
もちろん、翻訳する小林1佐も日本の記者に念押しする。
「では、彼の口からも事件を語って貰う。柏木ヨウ。この事件の中心人物。そしてコードネームはアリス」
宣言と同時、舞台横の通用口からエルフの少女が現れた。