デモンズエデン ~死にゲーを生身で、現代社会を美少女エルフで戦うハメになってしまった~ 作:ぎむねま
――テレレレレレー
俺が食堂でカツ丼を頬張っていると、夜のニュースが始まった。
トップニュース。オープニングからデカデカと映った映像はアリス。
俺だ。
ってか、昼のニュースからずっと俺ばかり。一色だ。
「こんばんは、水曜日午後七時、ニュースセブンナインです」
「まずはこのニュースから。ドリームフレーム事件、波木野市の共同作戦基地、本日九時から記者会見が行われました」
「そこで発表された驚きの事実とは?」
と、そこからは記者会見の発表内容を交え、異界の映像などがバンバン流れる。
もちろん、使用を許可した宣材だ。報道に必要な分は米軍や自衛隊側でも用意してくれていた。
ゴブリンの首を叩っ切るようなグロい部分は丁寧に取り除かれている。
俺のチャンネルで引用可能な部分として登録したのには、多少は刺激的な映像もあるからネットニュースではコッチを引用してるのもソコソコあった。
と、ニュースで色々言ってはいるが、もちろん知ったような事ばかり。
核心を突くような考察もない。っていうかテレビ局はまだこの事態を飲み込めていないと見える。
アナウンサーのコメントも踏み込みが足りない。
一方で、俺のチャンネルはどうか?
もちろん、恐ろしい勢いで視聴回数が伸びている。
コンテンツも結構揃っている。異界の生の映像こそ、まだラーメン屋ダンジョンのモノだけなのだが、それだけでもう3千万回再生に到達しそうだ。
他にも、アリスのカッコイイシーンを繋ぎ合わせたPVみたいのまである。
なんか、このために日本刀構えたポーズの撮影までしたからな。
制服で立て膝ついて日本刀を構える、太ももと短いスカートが強調される斜めからの絶妙なアングル。
本当にアニメのキービジュアルみたいじゃねーか。誰の趣味だよコレ。
いや、何となく解るわ。アイツだ、えーと誰だっけ? 太もも大好きなヤツ。
次は、俺のファッションコレクションだった。
サムライ姿、制服姿、タンクトップにジーンズ。高性能バトルスーツを着た姿まで良く持ってきたモンだ。
それをフリー素材の音楽でお洒落に編集している。
いや、アイドルのPVかっての。趣旨が違うだろ。
まぁ、ファッションリーダー的な? そういう層へのアピールを狙ったアレか?
しかし、ココまではお遊び。
一番重要なのは俺の自己紹介映像だ。
これは俺の印象を決定づける大切な動画になる。
あいつらオタ共と時間をとって撮影したのだ。
いくつかの質問に答えながら、害は無いですよってイメージアップに徹底した形。
原稿に忙しくて、実は一度も完成品を確認してない。
アイツら上手くやってくれたかな?
俺はタブレットで動画を再生する。
Q1 先ずお名前からお願いします。
「えっと、アリスです。コードネームですけど、よろしくお願いします」
ソファーに座った俺がはにかんで答える。
Q2 スリーサイズをお教えください
「しらねーよ。ぶっ殺すぞ」
Q3 戦おうと思ったキッカケはなんですか?
「なんて言うか、破れかぶれです。思い切って暴れてみようかなって」
Q4 怖いと思ったことは?
「やっぱり、最初はドキドキしたけど、一度吹っ切っちゃうと快感だったりして♪」
「…………ンじゃこりゃー!」
俺、キレる。
誰がAVのインタビューみたいにしろって言ったんだよ!
遮光板まで構えて本格的だな、とか思った自分を殺したい。
スリーサイズは和ませるギャグかなってスルーした。
編集されたモン見てみれば、なんか質問と答えが違う事もあって完全にセクハラじゃねーか。
たとえば、コレ。
Q9 これから撮影だけど大丈夫?
「えっと……ちょっと恥ずかしいかな」
タブレットには、モジモジとニーハイソックスの裾を直す俺が。
コレ確か「可愛いって言われて照れたりする?」 って質問で、俺もノリノリと言うか、ちょっと照れながらサービスのつもりで裾をペチペチ直しつつ「恥ずかしい……なーんてな、シコってんじゃねーよガハハ」みたいな感じで面白く仕上げたつもりが、後半部分がカットされておる。なんということじゃ……
「完全にガチ」
これは、AVマイスターの犯行ですよ。ふざけんな。
あのオタ三人め、ゴミみたいな動画をぶつけて来やがる。
しかも、最後には「このあと滅茶苦茶刺激的な動画を撮りました♪」とテロップが出て、狂ったように笑いながらグールを斬りまくる俺の映像が挿入される。
「初めてだから血が出ちゃった❤」
とテロップと共に血みどろでケタケタと笑う俺の笑顔でシメ。
悪ノリすんな!
完全に悪魔じゃねーか! いい加減にしろ!
酷すぎるだろ、何だコレ。
いや、待て。落ち着け。
やはり、あのオタク三人はまるで戦力にならなかった。
そんなの解っていた事だろ?
俺にはメディ研部長がついている。(ついているとは言ってない)
俺じゃなくてマキシミリアンについてる気もするが、アリス>マキシミリアン>部長。の序列だから問題無い。アイツの奴隷は俺の奴隷。
と、言うワケで部長が編集したらしい動画を確認。
すると、どうだ?
映像は教室。
ドリームフレームを被った男がうつらうつら居眠りをしている。
「おい、柏木!」
「ふぁ? ふぁい!」
「おはよう柏木。で、定数aとbの値は?」
「あ、あの……」
……なんだ、この小芝居。
そして、見覚えが、ある。
「と、言うワケで、病気で失明した俺はドリームフレームのお陰で目が見えるようになったのだ」
ぼくの名前は柏木ヨウ。失明したばかり、ドリームフレームの助けで学校に通う普通の高校生だ。
それがあんな事件に巻き込まれる事になるなんて。
ナレーションと共に、どこか知らない部屋の中。学生の男がドリームフレームを脱いだ。
「ふぅ……」
「部長じゃねーか!」
どこから借りたのか(きっとマキシミリアン)ドリームフレームを被っていたのはメディ研部長だった。
ふぅ……じゃねーんだよ。
誰か再現VTRを撮影してくれって言ったんだよ。
二日しかなかったよな? なんで気合いが入った再現Vが出来上がってるんだよ。加減しろ馬鹿。
さっきのグールを惨殺する映像もそうだけど、なんで今更チュートリアルダンジョンの映像が欲しいから撮ってきてくれって言うのかと思ったらコレのためかよ。
柏木ヨウの体は異界にある。
だから、部長が代役。まぁ良いとする。
そんで、部長が演じる俺が、ドリームフレームでゲームを始める。
……ややこしいな。
なるほど、ゲームの映像はそのまま使えるから問題無い。マキシミリアンがドリームフレームでゲームを初めから遊んで、録画すれば良いだけなのだ。
アリスの姿は頑張ってキャラクリした跡がある。
で、その後の公園や天開山はキッチリ野外ロケをしている。
更には、異界化したデモンズエデンの素材は俺が撮ってきた背景にAIで作った悪魔の画像を合成している。
人間はむしろAIで作るのが難しかったらしい、マキシミリアンが演じる下手くそな爺さんがなんか浮いている。
極めつけは、侵入してきたアレックスだ。
なぜか仮面を付けたおっさん(たぶんマキシミリアン)で代用しているのがシュールで笑うわ。
他が頑張ってるだけで異様な違和感がある。
しかし、凄いな。
当たり前だけど、録画を始めたのはラーメン屋ダンジョンでゴブリンを倒してるトコからだ。
つまり、映像に残って無い部分を俺の話からまるっと再現Vにしている。
主演、監督、メディ研部長。
コイツ、なにしてんの
なぜベストを尽くしたのか?
お陰で、俺が記者会見であらましを語った熱弁動画がイマイチになってるじゃん。
滅茶苦茶に頑張って原稿書いて、喋りも練習したのに。
いや、頑張りは認めるよ?
でも、後々映画化とかも考えてたから、いっそ商売の邪魔まであるのだが???
って、呆然としたら再現Vのエンディングだ。
……ちなみに再現Vはたっぷり一時間あった。
一時間視聴に耐える映像って、普通に凄いぞ? それを48時間で撮ってるって人間技じゃないからな? さすがに俺でもおかしいって解るよ? コイツぶっ壊れてるだろ。
で、最後には鐘楼で抱き合って、キスをするアリスと部長。
ふざっけるな!
自分で自分にキスするかよ!
しかも、……ここだけ露骨に合成じゃねーか!
コレがやりたくて徹夜で編集してるじゃねーか!
オタ三人じゃねぇ、あの部長がここまでヤバいヤツだとは。
マキシミリアンも止めろよ! 何やってんねん!!