デモンズエデン ~死にゲーを生身で、現代社会を美少女エルフで戦うハメになってしまった~   作:ぎむねま

52 / 64
社会現象

「今日も休みか」

 

記者会見は水曜。翌日木曜も休んで、今日こそ登校しようと思ったら学校側から待ったが掛かった。向こうから来るなと言われるとはね。

 

どうも、学校にもマスコミが殺到しているらしいのだ。

 

三日目となればニュースも収まるかと思ったら、甘かった。まだニュースサイトのサムネイルは俺の顔が半数以上を占めている。

俺の顔じゃないサムネを見ると、メディ研の部長、マキシミリアン、そして親父だったりするから結局、ぜんぶが俺絡みのニュースなのだ。

 

親父、顔出しするのか。

 

山師の怪しいおっさんだ。裏方に引っ込むと言っていたが、出ざるを得なくなったのだろう。母さんにマスコミが殺到するのは避けたいモノな。

 

テレビの電源を入れると、丁度親父がワイドショーでインタビューを受ける所だった。

 

「私は息子の為にどんな手だって使うつもりでいます」

 

神妙に語る親父は、スリーピースの派手なスーツでキメていた。お洒落でカッコイイ。この人当たりの良さが山師たる所以だろう。

 

しかし、怪しさを隠そうともしていない。こんな派手なスーツを着る男が真っ当な仕事をしているハズが無いのだ。コレは意外だ。

 

「私はいわゆる山師みたいなヤクザな仕事をしていましてね、家庭を顧みず鉱山を探して海外を飛び回っていました。息子には嫌われているんです。その息子が初めて私を頼ってくれた。どうしても力になりたいのです」

 

泣きそうな顔で絞り出す声。

名演だ。事実なだけに、コロリと信じそうになる。

 

全部あけすけに言うつもりだ。隠し切れないと踏んだか。

 

これだけマスコミが動いていれば、誰か興信所でも使って親父の職業だってすぐに丸裸になる。痛くない腹どころか、叩く前から埃まみれの親父の事だ。いっそ初めから怪しい存在だと隠さない方が良いとの判断だ。

 

人権団体を焚きつけて、学校に通えるように画策した事なんかもぶっちゃけている。

 

「FBIには暴行されたと聞いています、米軍や自衛隊だって息子の味方とは限らない。ならば私も手段を選ばない」

 

瞳の奥には義憤が見える。静かに怒りを蓄えていた。

まぁ、演技だが。

 

なれど息子の俺でも、本当に演技なのか疑いたくなる。幾らかは本心だろうと信じたくなる。効果はあるかも知れない。

 

しかし、アナウンサーの榊さんは冷静に返していく。流石はプロだ。

 

「ですが、涯さん。あなたは息子さんの動画を私物化して利益を得ているとの指摘がありますが?」

「とんだ誤解、と言いたい所ですが……その通りかも知れませんね」

「ど、どう言う事です?」

「ヨウの一番の望みは万が一を考えて、母親へ十分なお金を残す事でした。家を空けてばかりの私の代わりに母親一人で育ったのですから当然かも知れません。そして、妻にお金を残したいのは私も同じです。だから私物化と言われても、その通りかと」

「なるほど、そう言う事でしたか。いえ、ちょっと待って下さい。お金を残したいと言うのは?」

「そのままです。私の命も危ないと感じています。事件に巻き込まれただけの息子を悪魔と糾弾する者が居る。私は戦わなくてはなりません」

「まさか! 息子さんは、アリスと呼ばれる姿は大きな反響を呼んでます。こんな中でテロを起こすなんてあり得ますか?」

「あります。悪魔が何をしてきたかを考えれば」

「…………」

 

まさかと榊サンにして言葉に詰まる。

 

悪魔の事件は核兵器まで飛び出した。

あり得ないと誰も言い切れない。

それも、前代未聞。二千人規模の悪魔召喚だ。

 

「それでは、次に公開された動画の内容についてです」

 

榊サンも次の話題に切り替える。下手を打てば特定宗教団体への批判になりかねないからだ。

 

「動画に関して、悪ノリが過ぎるのではないかと。点滴が間に合わず既に命を落とした被害者もいる中で不謹慎にも程があると言われていますが?」

「動画の編集に関しては、ヨウの友達が協力してくれています。何としてでもヨウを助けるのだと毎日徹夜で頑張ってくれています。それもこれも、ヨウの願いを叶える為です」

「願いとは、お母様にお金を残す事でしょうか?」

「もちろんそうですが、それだけではありません。何より悪魔だと糾弾されることをヨウは恐れていました。悪魔が柏木ヨウのフリをしているだけではないかと、そう言って憚らない人間も居るのです。なので、ヨウはヨウなのだと、どうやって事件に巻き込まれたのか、どんな人間なのか、より多くの人間に知って貰いたいと息子は願っています。おちゃらけた動画もヨウの人となりを、友達との関係を如実に物語っている」

 

物語って無いっての。

AV風動画が俺の内面みたいになってるじゃねーか!

 

いや、でも、狙いは解った。

 

毎日動画を見ていれば、親近感を覚えるだろう。あれは悪魔ではないと思って貰えれば、聖堂会派とか言うヤツらの牽制にはなるかも知れない。

 

「ソレにしても、かなり過激な動画もありますが?」

「私もどうかと思った動画もあるのですが、学生の彼らがヨウの為に頑張ってくれたと思うと中々没には出来ず……」

 

嘘つけ。

絶対にノリノリで許可をしただろう。

親父は大仰に咳払いをひとつ。

 

「ですが、他の被害者家族の気持ちをないがしろにする気はありません。私は被害者団体を立ち上げ、ドリームスカイ社や事件を隠蔽する米軍に情報開示を求めていきます。そして、動画の収益の一部をそれらの活動資金に充てるつもりです」

「被害者団体の立ち上げですか」

「規模はまだ百人程度で、既にアメリカには別の被害者団体がありますが、そちらと違い日本側でも動く必要を強く感じたのです」

 

……マジで嘘つけ。

日本の被害者なんて俺一人だ。

百人ってのも、日本でドリームフレームを持っているだけのガジェットオタクや、俺の友達とかもカウントしてるんじゃないか?

 

そんなの親父のやりたい放題に決まっている。

 

動画の収益は息子を助けるため、事件の真相解明に使ったと言えば深くは突っ込めないだろうと言う腹だ。

 

なにしろ怪しすぎて、突っ込み所が分散する。

 

……不謹慎なAV風動画もソレが狙いか?

 

学生の悪ノリだから仕方ないって雰囲気を作り。殺したゴブリンの中に家族がいるかも知れないって疑念から目を反らす。

 

上手く行くとは思えないが、全体的にソッチの方向で行くようだ。

 

人質を解放する正義の味方が、本当は殺人鬼だったとセンセーショナルな落差を生むよりも、初めからグレーで勢い任せな雰囲気を纏わせていく。

 

つまり、親父はソレだけ俺の周囲がある事無いこと掘り返されると思っているワケだ。クリーンなイメージを貫くのは最初から無理だと判断している。その辺りはプロだからその通りなのだろう。

 

……だとすると、一つだけ疑念があった。

 

実は、俺が一番足を引っ張ってないか?

なんかノリノリで悪魔染みた派手なメイクをしてしまった。

 

今からでも入れる保険は?

ある。保険はある。

 

あんな派手なギャルが普段は素朴で優しい女の子ってギャップを今から狙いに行くのはどうだ?

今からでも純粋に学生生活を送る動画を作れば良い。

tiktalkには俺の普段の学生生活のショート動画も無断でアップロードされている。あれらを繋ぎ合わせればスグだ。

 

と、自分のチャンネルを確認すると、既に新しい動画が上がっていた。

 

よりによって、俺がメディ研を乗っ取る一部始終だった。

 

「なんだ? 時間停止モノのAVか? 女の子だけが動けるの斬新過ぎるだろ」

「と、言うワケで、メディ研は今日で解散! 解散です! 全てのPCを献上し、我が軍門に下りなさい!」

 

客観的に見てるとヤベェなコイツ。

 

誰だよ! こんなの撮ったヤツは!

俺だ! 鈴木に頼んだ。

クソッ! さっき思いついた計画が台無しだ!

 

何だよ今どきゲーム対決で部活を乗っ取るって。

コイツ悪魔だろ!

 

動画を見ると、なんか青春を思い出したおっさんの高評価がいっぱい付いていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。