デモンズエデン ~死にゲーを生身で、現代社会を美少女エルフで戦うハメになってしまった~   作:ぎむねま

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地下放水路ダンジョン3

「さて、と」

 

最後の試練。

 

ここを越えたら、後はボスを殺して終わり。

それだって大して強くない。……いや、もちろん油断はしないが、最後の試練こそが最大の問題なんだ。

 

俺は奈落に架かった橋を見つめる。

第二の試練と全く同じ構成。

 

1mから1.2mぐらいの隙間が四箇所あるのをジャンプで越えるだけ。

同じ種類のトラップだ。

 

同じ種類っていうか、完全に同じだ。

使い回し。開発者の矢吹さんがそう言っていたから間違いない。寸分変わらないマップ。

 

じゃあ、何が違うかって言うと……

もう慣れたモノ。狭い足場もなんのその、俺は橋を渡る。するとどうだ?

 

「来たか……」

 

視界が暗転する。

真っ黒な世界。星が瞬き銀河が現れる。

視界ジャック。

 

そう、ジャンプしなくちゃいけない橋で視覚が奪われる。

 

第一の試練と第二の試練の融合。

 

しかし、厄介さは比ではない。

先が見えない状態で、不安定な足場でジャンプ。

 

もはや勇気を示せとかそう言う問題じゃないだろコレ。

 

それこそゲームなら、十歩歩いてジャンプ、四歩歩いてジャンプ、と言った具合に完全に記憶してRTAをしている動画まであった。

 

だが、現実化したダンジョンでそんな事出来るハズがない。

 

「クソったれダンジョンだ」

 

より、慎重に鞘を頼りに一歩一歩進む。変にビビったら逆に危ないのは同じ。

 

――カッ、カッ、カッ、スンッ

 

空振り。

橋が途切れている。

 

四個あるキレ目の最初。

俺はゆっくりと目を開ける。

 

「良かった」

 

視界ジャックはナシ。

ゲームでもそうだった。ジャンプするところでは視界は奪われない。

ただし、最初のジャンプ地点だけ。

 

二回目は、ジャンプ地点での視界が奪われる。

着地地点では視力が戻る。

 

三回目は、ジャンプする所では視界があるが、着地地点で急に視界が奪われる。

ここが一番死ぬんだそうだ。

 

四回目の隙間は、跳ぶところも着地地点も両方とも視界ジャックされる。

 

……しかも、この試練の途中にはアイテムが隠されていて、そのアイテムが途轍もなく有用だから、なんとしてでも回収したい。

 

それこそ、命を懸けてもだ。

 

だからまぁ、ここからが試練の本番なのだ。

まぁ、一回目のジャンプはジャンプ地点で視界ジャックされないから、二回目の試練と変わらない。

落ち着いて跳ぶ。

 

「よしっ」

 

まずは大丈夫。

次からが本番だ。

 

もう完全に慣れた。トラップも無い橋はただ平均台を渡っているだけだ。

次のキレ目の前に差し掛かる。

……すると。

 

「来たか」

 

二回目の視界ジャック。

銀河が瞬く。

 

鞘を杖代わりに歩くが……当然、途中で橋は途切れている。

末端までやって来た。目を開けても視界は奪われたまま。

 

勇気をもってジャンプすれば、向こう側では視界ジャックが切れる。

そう解っていても、虚空にジャンプするのは至難の業だ。

 

じゃあ、どうするか。

 

「やるか」

 

ここで、準備していたカードを切る。

腰にぶら下げた五つの袋。

 

入っているのはなんて事ない『ただの砂』だ。その辺で拾ってきたから間違いない。そんなモンをどうするのかって?

 

「オラッ!」

 

ただ、撒く。

それだけだ。

 

すると、どうだ?

 

銀河の海に、砂の橋が現れた。

 

つまりアレだ、この視界ジャック。完全に目が見えなくなるのではなく、銀河の海に自分だけが浮いている様に見える。

 

もちろん裸じゃない。つまり、自分の装備品は見える。

だから、ゲームでもインベントリにある投擲用の石とか、投げナイフとか、弓矢を放って床に刺して、ジャンプの着地地点を確認するテクが使われていた。

 

……だが、現実化したせいで投げたナイフだって判定がある。ヘタすりゃ引っ掛かって危ない。

だから、砂なのだ。

 

ゲームでは砂なんてアイテムは無かった。

フィールドで砂を拾っても、途中で消えてしまう。

 

だが、現実なら持ち込める。好きな様にばら撒ける。

撒かれた砂の形が橋を浮かび上がらせた。

 

こうなれば見えてるのと同じ。

 

「よっと……」

 

砂の橋に向けて、ジャンプして、着地。

着地する前には視界も戻っていた。

 

「なんてこと無いな」

 

砂で滑るのがシンドイが、大した事ではない。

 

「次か……」

 

次は、ジャンプ中に突然視界が奪われる。

ビックリして着地に失敗。プレイヤーが一番死ぬポイントだと言う。

 

だが、ジャンプ前からあらかじめ砂を撒いておけば問題無い。

 

「よっと」

 

気軽にジャンプ。

途中で視界を奪われるのはギョッとするが、解っていればなんて事は無い。

 

ふぅ……

 

こっから先は四度目のジャンプ着地まで、ずっと視界を奪われる。

ただ、クリアだけなら簡単だ。

 

刀を杖代わりに、橋が途切れるギリギリまで歩いて、向こう側に向けて砂を撒いてジャンプ。今までとそう変わらない。

 

だが、その前に……

 

本当の、ガチのマジでヤバい試練が待っている。

三番目と四番目のキレ目の間。

視界ジャックされたままのこの区間。

 

ここの足場がポイントなのだ。

平均台みたいに狭い足場で、視界を奪われた状態。

 

――俺は突如、横を向く。

 

そして、腰の砂袋、残り三つの虎の子の内の一つをぶちまける。

 

何も無い、虚空に向かって。

 

「やっぱあるかよ」

 

パラパラと落下した砂が、銀河の途中でピタリと止まった。

 

嬉しい反面、コレで無視は出来なくなった。

何も無いハズの空間に砂の橋が出来ていた。

 

一見すると、第三の試練は、第二の試練とまったく同じマップに見える。

だが、この部屋には見えない二本目の橋がある。

 

それも視界ジャックされる地点からジャンプしないと届かない場所。

透明の橋が横からせり出しているのだ。

 

この橋は視界ジャックも関係無く、どっからも全く見えない。

 

更には、段差もある。距離もある。

落差2m、幅3.5m。構造的に助走は無理。本気で跳ばないと辿り着けない。

 

 

全く、こんな隠し通路に気が付く方がどうかしている。

視界ジャックされた状態の不安定な足場。そこで左側に捨て身の大ジャンプをするとようやく辿り着けるのだ。

 

こんなモン、誰が見つけたんだって話。

 

一応、コレは攻略サイトで広く共有されている情報なのだが……

 

開発者の矢吹さんも、こんなモンが発見されるとは想定していなかったし、なんなら今でもプレイヤーがちゃんと発見したのか疑っている。

 

データ解析したか、開発スタッフがリークしたのだろうと言っていた。

 

頑張って作ったは良いけど、ゲームが滅茶苦茶になるから没にしようと思ったけど、やっぱり勿体ないから隠しアイテムとして封印した。

 

そんなアイテムがここにはあるのだ。

 

ソレを手に入れない道理はない。

ゲームの攻略がずっと楽になる。地下世界。場所が場所だけに手に入らないと思っていたモノに手が届く。

 

「跳ぶしか、ないよな」

 

距離は3.5m。走り幅跳びの世界記録は9m弱。

 

余裕じゃないかと思うだろうが、立ち幅跳びの世界記録はたったの3m73cmだ。

一流のアスリートが万全の装備、身軽な状態でソレ。

 

それを3.5m。

とてもじゃないが無理だろう。

 

ただ、透明な橋は2m下に架かっている。

その分距離が稼げる。

 

今の俺なら十分に届く。

 

……届くからなんだってんだ。

 

2m落下するって事は着地の衝撃は強い。

それを透明な橋に向けてジャンプして上手く着地しなくてはならない。

 

完全な自殺行為だ。

 

事前の作戦会議でも、無茶と思ったら自分の判断で中止しろと何度も念押しされている。

 

大体にして、ステータスが上がればもっと楽になる可能性がある。

ゲームでは、この手のアスレチックにステータスは影響を与えないが、現実化した世界ではそうでは無い気がしている。

筋力が上がれば、自然にジャンプ力だって上がるだろう。

 

今、無理して手に入れる必要は無い。

 

……いや、でも。

 

コレから俺達が挑むのは砦攻め。

そこでも絶対に役に立つアイテム。

 

アンジェラに助けて貰うつもりで、コレで良いのだろうか?

 

そこで万が一でもアンジェラが死んだら? 俺は全力を尽くさなかった事に後悔しないか?

 

3.5mたって、飛べない距離じゃ無い。

いや、跳べる。

 

今の身体能力でも十分届くと確信している自分が居る。

 

なのに、怖くて跳べないなら、ステータスなど関係無く、どこまで行っても跳べないだろう。

 

「ハァ、ハァ、ハァ」

 

細い足場から下を覗き、銀河の中で砂の橋だけをジッと見つめる。

 

呼吸が乱れる。見えないハズの奈落が見える。

死が迫ってくるようだった。

 

手がガクガクと震え、上手く力が籠められない。

どうする? どうする?

 

悩みに悩み、グラグラと足場が揺れているように錯覚する。

 

……その時だった。

 

――バタンッ!

「ひっ!」

 

突然、音がした。

俺はビクッと体を震わせ、思わず音の方を見る。

 

グールだ。

時間制限のグールが現れた。

 

それだけの事。

なのに俺は視界の効かない銀河の中で身を躍らせてしまった。

 

「マズッ」

 

バランスが、崩れる!

自分で撒いた砂で足が滑る!

 

「あっ」

 

俺は足を踏み外した。

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