配信中に悪酔いで女装を仄めかしたらバズって逃げられなくなった 作:誘惑弱者
「初めまして、私の弟君。そして、私の推し。これからはお姉ちゃんが女装について手取り足取り教えてあげるからね」
目の前の幼き少女が、そんな虚言を宣う。
声も出ないとはまさにこれなんだと僕は理解した。それと共にこの一族は情報の濁流で他人の脳を破壊してくるのが得意なんだなとこの短い期間で痛いほど分からされた。
『……』
「〜♪」
《コメント》
・すっげえ複雑そうな顔してて草
・鼻歌歌ってルンルンじゃん。これが社会人の姿か?
・どう見ても小学生にしか見えないんですけど
『あの、』
「ん?何かな、みたらしちゃん。お姉さんに聞きたい事があるなら何でも聞いてご覧?」
『お姉さん?が初恋先輩のお姉さんで合ってますか?後、ちゃんじゃないです』
結論から行こう。僕の家にやって来た見知らぬ配達員少女の正体は先輩のお姉さんだった。何言ってるか分からないって?僕も分からないよ。
『そもそも、何で僕の住所知ってるんですか?』
「ほら、前じ……初恋ちゃんに連絡先を渡した時に無理矢理住所も教えたでしょ?それで」
あー、確かに先輩に教えたけど。まさかこうなるとは思わないじゃん。いや、思わないよね。……確かにお義父さんに服作って貰うならウチの娘に作って貰いなって言われてだけどそんなすぐなの?
「それで、本題だけど。服が欲しいんだよね女の子用の」
『そうですね、不本意ですが電波に乗っかってしまった以上。やらないと一定数の批判は免れないと思うので』
《コメント》
・まぁ、ね
・今更女装しませんは無理な話
・終わりだよ(人生が)
・ヒェッ
・お互いにウェディングドレス着た新郎の居ない結婚式生配信待ってる
・関係者は心労が絶えなさそうだな
・だれうま
『すいません、初対面なのに変なお願いをしてしまって……正直気持ち悪いですよね』
「大丈夫。心配しないで、元から知ってたし作る気満々だったからお姉ちゃんに任せて」
『御姉さん……』
ドンッとお姉さんが胸を叩いた音が部屋に響くのをスルーして次の言葉を待つ。今を思えば、それがいけなかったのかもしれない。元から知ってた?あれ、待ってよ僕。彼女は最初なんて言ってた?
「じゃ、ハァハァ。カメラ切って服脱ごうか」
『は?』
《コメント》
・ん?
・歳のせいかなんか妄言が聞こえた様な
・服を脱ぐ?って聞こえた様な。気のせいだよな
・あれれ?おかしいな。まるで変態みたいだ
『あの、ちょっと待って下さい?え、っと?話をしませんか?何で服を脱ぐんですか?』
理由も無く素肌を見せられる程僕は度胸が無い。だから、服を脱がなきゃいけないその理由を尋ねた。
「見たいから」
『え』
「顔の良い美少年が恥じらいながらも美少女になる姿を見たいから」
そこには真っ直ぐな目で自分の性癖について熱心に語る変態がそこにいた。
「妹が産まれた時に、ちょっと残念に思った。本当は弟が欲しかったから。小さな頃から歪な欲望があって他の子と違った。綺麗な男の子を見ると、その存在を汚して女の子にしたくなる気持ちを必死に抑えてたんだ。でも、ある時それを抑えられなくなって初めてお父さんにだけ話した。そしたら、血は争えないねって言ってお父さんが昔女装していた事を話してくれた」
「それから、私は家に篭ってデザイナーの真似事で妹の服を作る優しい姉のフリをしてこっそり顔が良いおじさんの女装する服も作ってた。それをたまに着て貰ってそれで納得してた。なのに、ある時動画サイトで見つけたんだ。父以上に若くて顔が良くて女装が似合いそうな男の子を」
「あとはお姉ちゃんに任せて、ね?」
逃げようとしたら行く手を阻まれキマった目で腕を掴まれ、そのまま慣れた手付きで服を脱がされ。それから、スリーサイズを測られてその日は帰っていった。
訴えれば勝てるかなと帰るお姉さんの後ろ姿を見ながら思ったけど、コレを説明すると色々面倒臭そうなので辞めた。
これは余談だけど、後日この配信のSound Onlyの切り抜きが出て布の音とかが凄いリアルで興奮すると口コミで広がって再生回数が凄い回ったらしい。もう百万を超えてしまった頃から何も知らないフリをする事にしたので、僕は何も知らない。一つ確かな事は、また黒歴史が増えてしまったと言う事だろうか。