配信中に悪酔いで女装を仄めかしたらバズって逃げられなくなった 作:誘惑弱者
『はい、ええー。そう言う事で、今現在こうなっております。他人の不幸は蜜の味と言うので、皆さんは今メシウマ状態なんですかね』
取り敢えず、過去の戒めとして例の切り抜き動画にバッドボタンを押しておこう。もう二度とこんな事はしない様に。通報はしないよ、僕が悪いし。許可は欲しかったから、それをコメント欄に書いとこう。
あー、やっぱり切り抜きを見るんじゃなかった。結局状況の整理をね?しなきゃいけないとは言え見たくなかったなぁ。
『夢じゃなかったんですね』
《コメント》
・絶望した顔してて草
・言われてもきっと心の中で何処か嘘だと思ってたんだろうな
・具体的に何処が嘘だと思ってたの?
『もう全部です。振られた事も配信したのも女装するのも、全て嘘だと思ってました。まぁ、取り敢えず女装ですよね?』
嫌な事は嫌だけど、終わってしまった事と言う事にしとこう。いつまでも傷口を突くよりは処置して放置しておいた方が良い筈。
『周知の事実だと思うんですが、僕男なんで女性用の服とか持ってないんですよね。しかも、唯の女性用の服なら、まだ何とかなるかもしれないけど』
要は女装コスプレって言う認識で合ってるのかな?それは難易度が高過ぎる。まず、その服を用意するのも大変だし。よし、やっぱりそれを口実に引き伸ばせば──。
《コメント》
・あ、じゃあ私が作るよ。スリーサイズ測ってくれたら多分、何とかなると思う。コスプレ経験者だから時間さえ貰えれば良い物作れると思う。
・神はここにいた
・神様仏様ですわ
・はい解決
・逃げられるとお思いで?
『ッ!?何の事ですかねー。サッパリ分からないですわーおほほほほ』
《コメント》
・図星過ぎて知らないお嬢様が生えて来ちゃった
・それなのに可愛いのはなんでなんだよ
・もう逃げられないねぇ
・今だに逃げられると思ってるのが凄いな
・同接が平日で五千人って、よっぽどだともう少し理解した方が良いよ
・暇人の変態がいっぱいいるみたいですね。こんな奴らばかりで日本は大丈夫かな?
・と変態が申しております
ま、まだ。まだまだ。僕は負けてない。
『でもですねー。服のデザインが──』
《コメント》
・スレで何個か良い案出てたからそれから決めれば?
『でも!それを描いてくれるイラストレーターさんなんて都合良く……』
《コメント》
・Vの衣装何個か受け持ってるんだけど今暇だから描くよ
・下手で良ければワシも描く
・これがインターネットです
・インターネット怖すぎ
『そ、そんな良いですよ。お金払えないですし』
逃げ道が、嘘だ。そんな。
ほい。つ一万円
『……』
《コメント》
・百万人いるからな。諦めて女装魔法少女コスプレ公開告白配信するんだな
『地獄じゃん』
全ての逃げ道が塞がれ、通行止めになった。近い未来に地獄が訪れる事が確定し、僕は絶望しながら静かに配信画面を閉じた。
次の日、サークルに向かうと。
『……』
「ちょっと話があるんだけど良いよね?」
一番会いたくて、会いたくない人間がそこにいた。
初対面の初恋の人が不敵な笑みで、今僕が入ったばかりのドアに鍵を閉めた。
「残念、そこは通行止めだよ」
その台詞に僕は黙って頷いた。