配信中に悪酔いで女装を仄めかしたらバズって逃げられなくなった 作:誘惑弱者
「これ、どう言うつもり?写っているのはキミだよね」
告白した彼女に見せられたスマホに写っていたのは──。
『"実はですね、僕大学生でサークルに入っているんですけど"』
『"初めて会った先輩が凄いタイプで告白したら振られたんですよ"』
最近見てしまった僕の黒歴史が再生されていた。何で知ってるの?何故???
脳が理解を拒む中、ジッと睨まれるのを認識して僕は彼女の目を見つめた。
「ねぇ」
『それは僕です』
「だよね。で、どうしたいの?悪いけど、私は何を言っても……」
『数ヶ月程待って下さい。その時にもう一度貴方に告白します。それで僕は貴方にうんと言って貰います。絶対に』
「絶対に?」
『はい』
「言っとくけど、私は女装した
『……な、何でそれを』
質問に対してはぁ……と溜息で返事をされた後、それは愚痴の様に彼女の口から飛び出した。
「動画サイトのAIが何度もオススメしてくるから仕方無く見たら、それで味占めて更にお勧めしてくるようになったから仕方無く」
念押しする仕方無くに、僕はそれを咀嚼して確認する様に繰り返した。
『仕方無く』
「そう、仕方無く。そこに私の意思は無いのお分かり?」
『わん』
僕はしゃがんで、彼女の手にそっと触れる。
「それはおかわり!違うわよ」
べしっと叩かれて手が払いのけられる。なんか、面白いね。
『あ、そう言えば』
「どうしたのかしら駄犬君」
『お名前って……。後、先輩ですか?』
今更過ぎるけど今気が付いた。名前も知らずに告白してたから、僕はこの人の事を何にも知らない。ただ、綺麗な黒髪のロングが似合うお姉さんっぽい人だと思っていたら気づいたら体が動いてただけだし。だから名前も生年月日も、趣味も好きな食べ物も知らない。
あ、趣味は女児アニメの視聴かな。知ってた。
「普通におかしいと思わない?」
『はい?』
「仲良くなってから、付き合うモンでしょ普通は」
『そうですねー』
「良い?駄犬君。私達は友達でも何でも無いの。だから、名前も教えないわ」
まるで小さい子に諭すかの様に彼女は優しく言った。だからと言って、僕は、小さな子供のように素直だと思ったら間違いだ。
『じゃあお互いに部長に聞きましょう』
「何で?」
いや、何でって。僕は名前知りたいし、駄犬君は流石に嫌だし。
『名前教えてくれないんだったら僕の初恋の人って事で、
「うわ、それ嫌」
こうして、凄い嫌そうな顔をしながら「此処で初めて自己紹介する相手が変態だなんて」って呟きながら教えてくれた。
僕は変態じゃないので知らんぷりをしておいた。
『これから宜しくお願いします!地味乃先輩』
「チッ、よろしく」
舌打ちとともに言われたその台詞に、これは本人の言う通りコスプレじゃ落ちそうも無いなと思った。だって、脈アリどころの話じゃなくて脈が止まってすらあるから。