死霊騎士として蘇生したけどいつの間にか後輩の目が死んでた   作:塩焼きそば啜郎

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再会の剣

彼女の得物は変わっていなかった。あの日から数年が経った今でも、その手には細身の刺突剣(レイピア)が握られている。それにあのオーラ。間違いなく守護の魔法がかけられている。

 

人間は魔族と違い、その体に魔法を行使する事が出来ない。その為、数百年前に生み出されたのが「武器に魔法を付与する」という発想だ。守護の魔法は武器の強度を大幅に増幅させる効果の魔法。ましてや彼女の一撃、喰らえば命は無い。

 

「そこッ……!」

 

肩を掠める容赦無い刺突。あの頃よりも更に速くなっているそれを、俺は紙一重で避ける。バックステップで距離を取り、俺も自らの片手剣(ショートソード)を抜刀して構える。……いつぶりだろうか?こうして剣を交えるのは。

 

「……どうやらこれまでの奴とは違うらしい」

 

彼女がそう言って少し屈んだ瞬間。視界から彼女が()()()

 

「……!?」

 

そして次の瞬間には、脇腹を切り裂かれていた。鋭い痛みと共に血の代わりとして青白い炎が噴き出した。

 

同時に背後から迫りくる凄まじい殺気。俺は片手剣を縦に構え、反転する。

 

「……チッ」

 

甲高い金属音と火花が宙に舞う。彼女が横薙ぎに払った刺突剣と俺が構えた片手剣が擦れ合い、キリキリと音を立てる。片手剣に守護の魔法をかけていなければとっくに刃を折られていただろう。

 

「守護の魔法まで……」

 

彼女は心底不思議そうな表情で言った。確かにそうだ。この世のどこに魔法を操る死霊騎士がいるものか。

 

彼女は一旦後ろに下がる。まずい……もう一度あれをされたら、今度こそ鎧を真っ二つにされるかもしれない。

 

「……どうやら生前はかなりの強者だったらしいな……だが魔物に堕ちたのなら、それまでだ」

 

片手剣を構える。……厄介な状況だ。俺は彼女を傷つけるつもりは無い。しかし今の彼女は殺意の塊。何とかして離脱する方法は無いのか?

 

「死ねッ!」

 

彼女の選択は、真正面からの突撃。かつて彼女が最も得意とした戦法だ。その小柄な体からは想像も出来ない速度で連撃を繰り出す。シンプルながら強力無比な斬撃が俺に襲いかかった。

 

なんとか防御は出来ているが……既に全身に小さな切り傷が出来ている。これでは時間の問題だ。

 

「殺す……殺してやる!」

「……」

 

彼女はドス黒い目で俺を睨みつけ、殺意をぶつけてくる。

 

「貴様らが、貴様らが!!……団長を……!」

「!?」

 

団長。彼女がそう言った時、一瞬だけ頭が真っ白になったような気がした。それを見逃す彼女ではない。

 

「はぁッ!!」

「……!」

 

胴体に蹴りを入れられ、俺は地面に転がった。蹴られた部分は深くへこみ、次は無い事を示している。

 

俺が何とか立ち上がると、追撃をかけようとした彼女は突然地面にうずくまった。

 

「くッ……ガハッ!?」

 

そして次に上げた顔には、吐血した跡がベッタリと着いていた。表情にも余裕が無く、いつの間にか呼吸も荒くなっている。

 

……確かに、()()()()()()。人間である彼女の動きを見れないなんて事は()()()()()のだ。彼女が劇的な成長を遂げていれば別だが……それなら俺はとっくに死んでいる。スタミナが切れるにしても早すぎる……俺は一つの結論に辿り着いた。

 

「必ず、必ず……!」

「……もう、止めろ」

「!」

 

俺は初めて彼女の前で喋った。声は違うし、どうせ聞き入れて貰えないと黙っていたが、今しか機会は無い。

 

「お前の身体能力……()()()()()()()()()()

「……だからなんだ」

「そのままではいずれ死ぬ。現に、お前の体はもう限界に達している」

「魔物風情が知った風な口を聞くな!!」

「……お前が言う『団長』という人物は……俺は知らん。だが、そいつがお前の苦しむ姿を望むと思うか?」

「うるさい……うるさいうるさいうるさい!!」

 

彼女が再び構えた。……やるしか、無いか。

 

「死ねぇぇぇええッ!!!」

 

その刺突をかわし、彼女に峰打ちを当てる。その一撃で、彼女はストンと静かになった。もう彼女が動かなくなったのを確認して、俺は片手剣を鞘に収めて彼女を抱きかかえる。

 

「……久しぶりだな。ナーシャ」

 

あぁ……やっと言えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……私が魔族を狩るようになってから、どのくらいが経つだろうか。団長が……リニウス様が亡くなられてからの記憶はあまり覚えていない。気付けば私は逃げるように王国を後にしていた。何故魔族を狩るのか、私自身にも分からない。ただ、鬱憤をぶつけているようで。心底自分に失望した。

 

 

 

 

「死ねッ!」

 

そして、奴と出会った。これまで何度も始末して来た死霊騎士。だが奴は違った。

 

「殺す……殺してやる!」

 

全力で繰り出した連撃も、難なく防御される。まるで壁か何かを相手取ってるようだった。……思えばこの時、既に限界だったのかも知れない。

 

「くッ……ガハッ!?」

 

その後も全力で動き続けた。しかし、奴を殺す前に限界が来たのは私の方だった。人間が自らの体に魔法を行使する代償。それは苦痛と死。だが私はそれでも戦おうとした。ここで止めてはいけない。そう言い聞かせて。

 

「……もう、止めろ」

 

そう言われた時、私は驚くと同時にかつて無い程の怒りを覚えた。私の事なんか何も分からないくせに。

 

「……お前が言う『団長』という人物は……俺は知らん。だが、そいつがお前の苦しむ姿を望むと思うか?」

 

もう、何も考えられなくなった。自分の事を見透かされてる気がして。醜い現実を突き付けられてる気がして。体が上げる悲鳴を無視して、奴への憎悪を口から吐き出す。

 

「死ねぇぇぇええッ!!!」

 

奴へ刺突剣を突き出した瞬間。突然、全身の力が抜けた。あぁ、ここで私も終わりか。せめて地獄に行く前に団長を見たい。そんな叶う筈も無い願いを想いながら、私の意識は闇に消えた。




ここまで書いたのは初めてかもしんねぇ……
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