死霊騎士として蘇生したけどいつの間にか後輩の目が死んでた   作:塩焼きそば啜郎

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文字数を3000前後か2000前後にするかが悩み所さん。
文量は不安定になるかもしれません。


落胆、そして決意

ゴツゴツとした岩にもたれかかる俺の前で、焚き火の炎がパチパチと燃えている。その傍らには、未だ意識を失っているナーシャの姿。

 

「……痛いな」

 

彼女に斬られた脇腹辺りをさすりながら、一人ごちた。自らの魔力によって鎧の傷は段々と修復されつつある。しかし、斬られた跡も蹴られた跡もまだまだ完全に元通りとはいかなかった。

 

「!」

 

と、その時。ナーシャが目を開けた。しばらくじっとしていた後、顔を動かしてこちらと目が合う。

 

「……貴様、何をした?」

「気絶したお前をここまで運んで来た」

「何故そんな事を?」

「……あんな状態の者を放っておく事は出来ん」

「貴様!」

 

ナーシャは立ち上がろうとしたが、その動きはすぐに止まった。彼女の体もまた、万全とはとても言い難い状態なのだ。

 

「動くな。下手に動けば更に悪化する」

「…………」

 

長い沈黙の後、ナーシャは荒い息を吐きながらゆっくりと上半身を起こし、岩壁に寄りかかった。

そして、相変わらず殺意に満ちた目でこちらを睨みつけてくる。

 

さて……聞かなければならない。何故、彼女があんなにも豹変したのか。俺が魔族として彷徨っている内に、彼女に何があったのか。

 

「……名は」

「魔族に教える名は無い」

「そうか。なら、名はいい。何故そんなにも魔族を目の敵にする?」

「教えて何になる?」

「ただ……気になっただけだ」

「そうか。なら教えてやろう。憎いからだ。心の底から、貴様らが憎いからだ。団長を……あの人を私から奪った貴様らがな!」

「よほど憎いようだな」

「魔族など、邪悪の塊のようなものだ。いくら斬り捨てても足りない程にな!」

「……俺は生前の記憶を濃く残しているらしい。俺も生前は魔族を邪悪として強く憎んでいた。だが、実際は違った」

「何を言っている?」

「まぁ、聞け……少し前の事だ」

 

 

 

 

 

 

俺が死霊騎士となってから、間もない頃。当然人がいる場所に行けなかった俺は、人が寄り付かない場所を転々とする生活を送っていた。

 

死霊騎士は不死人(アンデッド)という種族。不死人自体はどこにでも出現しうる為、周囲の魔族にはあまり警戒されなかったのが幸いだった。

 

誰とも話す事も無く、ただただ当てもなく彷徨っていた時。一人の魔族と出会った。

 

巨躯の猛将(ギガンテス)ディンギル」

「ディンギル……」

巨人(ジャイアント)の始祖、ウルカノンの直系の子孫。『ギガンテス』の称号を持つ者だ」

 

その名は、生前に聞いた事があった。百年と少し前、大陸の南部の土地をメルトン王国と巨人が奪い合った戦争。元より数で圧倒的に不利だった巨人を率い、王国軍に壊滅的な被害を与えたが結局巨人は敗北。生死は不明とされている……その逸話に出てくる本人に出会ったのだ。

 

身長は俺の倍はある。その筋骨隆々の肉体には至る所に傷跡がついているが、それでもなお鋼のように硬い。そして右手には巨人に伝わる魔具、「ウルカノンの魔槌」が握られていた。

 

「貴様、生き残ったのか」

「生き残った?」

「とぼけるな。ディンギルは同族以外の見た者全てを攻撃する気性の荒い魔族だろう」

「だな。()()()()そうだ」

 

俺も最初は警戒した。だが、彼に敵対心という物は存在しなかったのだ。彼が怒るのは、自らの友が脅威に晒された時。彼だけではなく巨人自体がそのような性質を持つ種族とも聞いた。

 

「まぁ、巨人と人間が関わり合った記録はメルトン王国の記録のみといっても過言では無い……彼らからすれば巨人は凶暴な怪物なのだからな」

 

俺がそこまで話した時、ナーシャは突然立ち上がった。

 

「!……おい、何をする気だ?」

「何も。ただ、立ち去るだけだ。貴様が長々と話したおかげで少しは回復した。……『全ての魔族が邪悪では無い』だと?そんな話で私の気が変わると思ったか」

 

彼女は刺突剣を持ち、洞穴の出口に向かって歩き出す。

 

「私から団長を奪ったのは、貴様ら魔族なのだ。それだけは……決して変わらない」

 

振り向かずにそう言い放った彼女に、俺は何も言えなかった。

 

「次は無い。……殺す」

 

そう言い残して、彼女は夜の闇に消えて行った。俺は後を追おうと立ち上がりかけた。だが、片膝をついた所で動きは止まる。そして次に、疑問が浮かんだ。

 

 

俺に……何が出来る?ナーシャが魔族を更に恨むようになったのは、()()()()()。俺があの時油断せずに死ななければ。もっと彼女の側にいてやれれば。きっと変わった筈だ。

 

……いや、何を考えてるんだ。俺のせいなら、俺が責任を取るしかないだろ。このままだと、遅かれ早かれ彼女は死ぬ。それだけは絶対に避けなければならない。こんな俺の為に、彼女を死なせる訳にはいかない。

 

「……!」

 

おもむろに立ち上がり、出口に向かって駆ける。しかし飛び出た先には、彼女の姿はもう見えなかった。周りは、月明かりに照らされた地面のみ。

 

「……またか。また、俺は一歩遅れるのか……」

 

死んだあの時も。そして、彼女を引き留めれなかった今も。俺は自分自身に酷く落胆した。

 

だが、いつかは追いついてみせる。俺は夜の大地を歩き始めた。この魔族としての命、彼女の為に使い果たしてみせると、そう決心して。

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

奴の話が、頭から離れない。だが、だからどうしたと言うのだ?団長は魔族のせいで死んだ。その事実は変えようが無い。

 

「……団長」

 

呼びかけても、返って来るのは静寂。孤独に苦しむのも、体を蝕む魔法に苦しむのも、私。そう、それでいい。私が苦しめば。私が苦しみ抜いて死ねば。きっと、あの人は私を()()()()()()

 

「……待っていて下さい。団長」

 

私を見つめる、()()()()()()()()()()()そう呟いた。だが、返って来るのは相変わらずの静寂のみだった。

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