現政奉還記 武将達との会合編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 無事に国連軍より身柄を返還された二次元人達であったが、聖龍隊と赤塚組はアジア諸国を巡行して各地の武将と対談しなければならず、アニメタウンへの帰還は叶わなかった。しかも新世代型の共有感知が私生活でも多大な影響を齎すと考えたバーンズの提案により、一般の二次元人達は聖龍隊と赤塚組の同盟に同行する羽目になってしまう。船内で彼らは前総長小田原修司に関して様々な事を聞き学び、さらに中国では鶴姫なる人の苦心を理解しにくい少女と出会う。オマケに彼女から何やら暗雲感じさせる予見まで言い渡されてしまう始末。そんな中で彼らはようやくアジア諸国を巡行する旅路へと着いたのだった。



現政奉還記 アジア諸国巡行編 導き

[再会]

 

 先見の巫女、鶴姫の元から発った一行は颯爽と大地を行進し、一路モンゴルへと向かおうとしていた。

 その矢先、皆を引っ張って先陣を切るメタルバードと大将の許に四体の影が。それは、それぞれ狐/猿/豚/河童の獣人いや妖怪だった。

「総長! 国連軍尖兵隊の陣営が、スグ先にて敵方に奇襲を受けて翻弄されています!」

「国連の連中が……!?」

 何かとライバル意識を自分達に向けてくる国連軍、その尖兵隊が敵の奇襲に遭い翻弄されていると、九尾の狐の孫娘でもある北麗に言伝されるメタルバードは迷った。

「国連軍か……誰が引き連れているか、分かるか?」

 メタルバードの問いに、北麗に続いて『西遊記』孫悟空の末裔であるエン・リーが答えた。

「ハッ、どうも彼の無名の武人……シバ・カァチェンとの事です」

「シバ・カァチェンだと……!」

 エン・リーからの返答にメタルバードはまたしても一驚する。

 無感情の青年シバ・カァチェンは命令されるがまま、言われるがまま相手を無表情で殺傷すると言う恐ろしさと言うか虚しさを持っている青年だった。

 そんなシバ・カァチェン率いる国連軍の尖兵隊が少数の所を襲われているのだと言う。

 こんな国連の危機的状況に、同行している新世代型二次元人達は思い思いに言い出した。

「あんな人、放っておきましょうよっ」

「そうだ! あんな冷徹で、何を考えているか解らない不気味な奴なんて知ったもんか」

「しかも相手は国連軍……一度ぐらい痛い目見やがれってんだ!」

「いい気味よ」

 森谷ヒヨリ、幸平創真、レイジ・アスナ、薙切えりな達は以前に自分達に不快な想いをさせた上に新世代型という理由だけで目の仇にしてきた国連軍の危機に放置されれば良いと言い出す。

 しかし此処でメタルバード率いる聖龍HEAD、その古参たちは考え込んだ。シバ・カァチェンの虚ろな瞳、それはかつての人物を連想させるものだからだ。

「……おい、お前ら」「……はい」

 木之本桜がメタルバードに返答すると、メタルバードは険しい表情で語り出した。

「解っていると思うが……オレたち二次元人の本懐は……」

「フッ、言われなくても解っているよ、バーンズ」

「それに、あの子を放っておくなんて事、私たちにはできないわ」

 セーラーウラヌスとネプチューンが朗らかな微笑で返答した。彼女たち同様、他の聖龍HEADも決意に満ちた表情をメタルバードに向ける。

 そしてメタルバード自身も決断した。

「これより聖龍隊は……国連軍を全面的に援護する! 全員、気を抜くな!」

 このメタルバードの決断に聖龍HEADと赤塚組幹部の面々以外は一同に愕然とした。

「な、なんで国連軍なんかに助太刀するんですか!?」

「どうせアイツらの事だ、俺たちが助けに入ったって何の礼も返しちゃくれませんって」

 聖龍隊の隊士の言い分を聞いて、メタルバードが檄を飛ばす。

「バカ野郎! 相手に感謝される前に、相手を助ける……それが人の道理だろうがッ!」

 感謝される事を前提に行動するよりも先に相手に救いの手を差し伸べる、それが人の道理であると唱えるメタルバードの檄に聖龍隊の隊士も一般二次元人たちも震え上がる。

 メタルバードは早速、聖龍隊の隊士で先方の様子を探りに行かせてた北麗たち四人の娘たちに命じた。

「そういう事だ。北麗、エン・リー、ピグナ、河奈、お前達も出陣の準備をしておけ」

「了解しました……総長、どれほどの戦力を動かすつもりですか?」

 リーダー格の北麗に問われ、メタルバードは敵勢力と現在の国連軍尖兵隊の人数を考えて決めた。

「そうだな……まずはルーキーズとお前ら、そして最後にオレたち聖龍HEADが戦場を駆け巡る! 後の連中は来るべきその時まで待機させていろ。あのカァチェンとやらと話がしたいしな」

「ハッ……ではそのように」

 

 一方その頃、国連軍尖兵隊は……

「後方の憂いを断つに、失態は許されぬ戦ぞ。カァチェンよ、しくじりおったらどうなるか……解っているだろうな」

「はっ……尻小玉にまでしかと命じております」

「……ふん、相も変わらず薄気味の悪い男よ……」

 突然の敵の奇襲に軍の指揮を任されているシバ・カァチェンを国連軍の武官達は罵り、煙たがった。しかしシバ・カァチェン本人は

「どのような男だとしても、私には関わりない……誰の息吹であろうとも、現実(いま)を戦がせはしないのだから」

 と、周りの意見を余り聞かず、自身の殻に篭っていた。

 

 

[国連軍尖兵隊防衛戦]

 

 既に粗方の戦闘が始まっている戦場に、メタルバードを筆頭とした聖龍隊士が出張る。

「シバ・カァチェン……? 以前にも遇ったが、聞かない名だな」

 メタルバードの疑問に参謀総長のジュピターキッドが答えた。

「一軍を任されながらも無名の将……得体が知れない分、重々気を付けないとね」

「無論だ、突然のサプライズと思えば悪くねえ!」

 メタルバードたちは颯爽と戦場を駆け抜け、国連軍を相手に戦う敵を攻撃していった。

「こちら聖龍隊! 助太刀するッ」

 メタルバード達が国連軍の兵士に言葉を投げ掛けるが「な、何をしにきた! お前達に助けられるなど……」と、やはり感謝されなかった。

 しかしそれでも聖龍隊は戦場を駆け巡り、敵を蹴散らしていく。

「悪いな、聖龍隊では歩合制で働いているから、一人でも多く気絶でも倒さないといけないんだ」

「うぎゃあっ」

 聖龍隊の隊士でもありながら死神でもある六道りんねは、貧乏な生活を少しでも楽したい本心を突かれて聖龍隊に加盟された経歴を持つ。

 

 だが聖龍隊の応戦もありながら、敵が増援を仕掛けてきた。

「敵襲ーーッ!」

 国連軍兵士が野営本陣に駆けつけ、上官へ報告した。

「申し上げます! 現在の我が軍には、応戦する戦力も残されてはいません!」

 しかしこの報告にシバ・カァチェンは、下を俯いたまま何の返答もなく茫然と立ち尽くすばかり。これには周りの武官たちも苛立った。

「ぐぅ……! 援軍だ、援軍を呼べぃ!」「はっ」

 カァチェンの態度に苛立ちながらも武官は援軍の要請を指示した。

 そして国連軍尖兵隊は、緊急時に建てられる急ごしらえのアンテナを建てて本隊に無線で呼び掛けた。

 これにより、戦況は国連軍本隊が増援として駆け付けるまで、国連軍のアンテナを一つでも防衛する構えになった。

「聖龍隊! 尖兵隊のアンテナを死守しろ!」

 メタルバードが聖龍隊の仲間達に指示する中、一方の国連軍野営本陣では。

「な、なぜ我らの動きが……! ええいカァチェン、これもお前が愚鈍の所為よッ!」

「一刻も早く奴らを討ち、汚名を雪ぐに尽力するのだ!」

「はっ……皆様方の仰せのままに……」

 と、武官達は全ての責任をカァチェン押し付け、頭ごなしに怒鳴り散らす。が、カァチェンはそれに反論する意志を見せず、言われるがままに返答する。

「どういう事だ……? アイツはここの大将だろう。何故顎で使われている……?」

「どうやら不和が生じているのは間違いないようですね……」

 風の刃と水の刃でアンテナに迫る敵を切り倒していくメタルバードと河童の河奈は、国連軍の尖兵隊内で仲違いが起こっている事を示唆する。

 

 一方で、その本陣にも敵が急襲してきたが、シバ・カァチェンがそれを成敗する。

「い……いやだぁ……げはッ」

「許せとは言わない……全ては命じられたままに」

 平然と敵の命を奪うシバ・カァチェンの生気のない眼を遠視して、メタルバードはカァチェンの言動と瞳に驚いていた。

「! ……あの眼、昔のアイツを思い出す」

「まるで人形……隷属の末路と言えるな」

 昔を思い出すメタルバードに対して、エンディミオンはカァチェンを隷属の末路と言い表す。

 

 更に此処で国連軍の中から、不利な戦況に恐怖し、逃げ出す兵の姿も確認された。

「き、貴様ら! 戻ってこ~~いッ!」

 武官達が必死に呼び止める中、カァチェンだけは無力な眼差しで敵前逃亡する兵士を見詰めて一言。

「私に尽くす必要などない……逃げるつもりならば、私はただ目を瞑ろう」

 上官である自分を見捨てて逃げる兵士にも気を止めないカァチェンの言動に、聖龍隊士も困惑するばかり。

「なんで総長は、あんな奴を助けたがるんだろう」

「総長だけじゃないよ。なんだか古参のHEADも……ううん、赤塚組の幹部の人たちまでもあのカァチェンって人のことを気にかけているみたい」

 迫り来る敵を小銃と魔法の弓矢で撃退していく暁美ほむらと鹿目まどかの二人は、古参のHEADだけでなく赤塚組の幹部衆までもカァチェンを気に留めているみたいだと語り合う。

「功を焦って突出するな! 相手方の思う壺ぞ!」

 国連軍武官は味方兵に命令を飛ばす中、聖龍隊で猪八戒の子孫である豚娘ピグナが地面に手を突いて大地を裂いてその裂け目に大勢の敵を巻き込んで一網打尽にする。

「負傷者を連れて後退せよ! 捕虜にだけはなるな……!」

 更に聖龍隊は負傷者を後退せよとの命令を下す国連軍上官の指示を聞きつけ、負傷者の撤退を手助けした。

「大丈夫ですか? スグに医療班の許に連れて行きますからね」

「あ、ありがとう……」

 負傷した兵士の肩を担いで運んでくれる聖龍隊の真宮桜の優しい言葉に、重傷を負った兵士は涙ながらに礼を返す。

 

 すると此処でようやく国連軍本隊より援軍が来襲。やって来たのは屈強な肉体を誇る兵士達だった。

「闘技隊到着です! 巌の如き肉体に、恐れるものなど無しッ!」

 闘技隊は戦場に到着するや否や、その巌の如き肉体を生かして急な崖や高所に連なって傾き、人間梯子の役割を担って味方を支援する。

「オレ達も使わせてもらうぜ!」

 闘技隊が組んだ人間梯子にメタルバードたち聖龍隊も活用し、今まで以上に戦場を駆け巡れるようになった。

 

 戦場を駆け巡っていたメタルバードに、シバ・カァチェンの虚無の瞳を気に留めていたセーラーウラヌスが呼び止めた。

「あのカァチェンとやらの無の瞳……バーンズ、君にも解る筈だ! 彼の瞳は、まるで昔の……」

「それ以上は言うなウラヌス。何処のどいつに言ってやがる……アイツの隣に常にいたのは、アッコだけじゃねえ」

 メタルバードはカァチェンの瞳に心当たりがあった。それは他の聖龍HEADの古参たちも同じだった。

 戦場を駆け巡るメタルバードは、無線を通じてHEADに呼びかけた。

「みんな、あの日のアイツもあんな瞳をしていたのを覚えているか?」

「……もちろんよ……」ミラーガールが重い口調で言った。

「そうか……なら、腹は決まった!」

 ミラーガールの返答を聞いて、メタルバードの腹は括った。

 

 と、その時。敵を各個撃破していたその最中、国連軍の上官の口から衝撃の発言が。

「何が何でも耐えるのだッ! ペトロフ補佐官ならきっと、挽回の策を持って来てくれる筈だ……!」

「ペトロフだと!?」「!!」

 ペトロフ補佐官の名を聞いて、メタルバードたち聖龍隊は愕然となった。特にワイルドタイガーたちNEXTヒーロー達の衝撃は計り知れなかった。

「欠かれカァチェンより、俺の方が強い筈なんだ……!」

 国連軍兵士の中には、上官であるシバ・カァチェンよりも自分の方が強いと言い張る兵士の姿も目視された。

 そんな国連軍は俄か俄かと本隊の到着を待ち望んでいた。

「もうすぐだ……きっともうすぐ本隊も……!」

 そんな中、カァチェンはまるで死人の様な面差しで戦場で戦う兵士達に呼びかける。

「敗れはしない筈だ……私への態度が本物ならば」

 しかし加勢してくれる聖龍隊に対しては冷ややかだった。

「有頂天に溺れるといい、その資格はある」

 活気付く聖龍隊を有頂天と説くカァチェンの発言にムッとする聖龍隊士。だがHEADだけは表情を変えず、ただただカァチェンを見守るかのような眼差しを保持するのだった。

 

 

[本隊到着 国連軍元帥補佐官ユーリ・ペトロフ]

 

 と、その時だ。

「本隊が到着したぞーーッ!」

 国連軍兵士の一人が大声を上げた。

 すると戦場の端でルナティックを先頭にした国連軍本隊が到着したのだ。

「ペトロフ元帥だ! これで助かるぞ!」

「欠かれカァチェンの指示なんで、まっぴらごめんだ! ペトロフ補佐官がいれば勝てる」

 現場の兵士達は国連軍元帥補佐官ユーリ・ペトロフの到着を前に、先ほどまでの暗鬱とした状況から一転、活気に満ちた。

「……私の命では不愉快だろうが、宜しく頼む」

 もう誰もシバ・カァチェンの言葉に耳を貸そうとはしない。

 だが本隊が到着した丁度その時、敵方も更に増援を仕掛けてきた。

「て……敵襲、敵襲ーーッ! みんな急いで構えろぉお!」

 もはや本隊の到着も虚しく、戦場には夥しい国連軍兵士の惨敗した姿が目立つようになっていた。

「か、カァチェン……見えぬのか? この惨状が! 貴様には見えないとでもいうのかッ!?」

 国連軍武官がカァチェンに怒号を飛ばすが、カァチェンは冷めた表情で目前に広がる惨状の中でも戦い続ける聖龍隊を見て言った。

「鬼か、天狗か……何れにせよ死神には及ぶまい」

 カァチェンは別名死神と呼ばれるユーリ・ペトロフことルナティックには恐ろしさおぞましさでは到底及ばないと口に出したとおり、ルナティックは緑色の高温の炎を纏ったクロスボウを放ち、戦場を火の海にしていた。

「……さて、ここは片付きましたね。まったくカァチェンときたら、未だに兵士たちからなめ切られているようですね」

 そう言うとルナティックは両手から緑色の炎を射出し、上空を飛行して直接カァチェンの許に行こうとしていた。

「いかん、あのままじゃカァチェンと話する機会が無くなっちまうかも知れねぇ……おい虎徹、お前らちょっとペトロフの奴を止めておいてくれ。オレはどうしても、あのカァチェンと話がしたいんだ」

「わ、解った! あんたの事だ、何か考えがあっての事だろうな」

 メタルバードはワイルドタイガーたちNEXTヒーロー達にルナティックの進行を一時的にでも止めておいてほしいと指示。これにワイルドタイガーは何かしらの考えあっての指示だと認識し、同じヒーローチームの仲間たちと共にルナティックの制止に向かった。

 

「ペトロフ!」「ペトロフさん!」

 ルナティックの制止に向かったワイルドタイガーとバーナビー達は、ルナティックの前に立ちはだかった。

「おや、皆さん。お元気そうで何よりです」

 ルナティックはタイガーたちを見て軽く挨拶を交わしてスグにその場を立ち去ろうとする。

 しかし飛び上がろうとするルナティックにブルーローズが氷の鉄砲を射出して、ルナティックの浮上を妨害する。

「何をするんですか? 今の私の立場では、あなた方を公務執行妨害として検挙する事さえも可能なんですよ」

 問い掛けるルナティックにバーナビーが訴え掛ける。

「ペトロフさん! 今は貴方と戦う気など毛頭有りません……あなたがルナティックだったと知った時から、僕達は正直裏切られた気分で、どうしようもなかったですし」

「……では、何故あなた達は私の邪魔をするのですか? あなた達は聖龍隊、私は国連軍と決して相容れない立場に。もう昔の様に付き合う事はできないんですよ」

 すると此処でワイルドタイガーがルナティックに訴えた。

「ペトロフ! あんたがルナティックだったなんて正直ショックだった! でも今はそれを話し合いに来た訳じゃないんだ!」

「それでは何なんですか?」

「……ちょっとの間だけでもいい、そちらの……あのカァチェンって子とウチの総長達を話し合わせてくれ! あのバーンズの事だ、何かしらの理由があるんだろう、頼む!」

 タイガーはルナティックに平謝りしてまで、カァチェンとメタルバードたちHEADとの対談を申し付けた。

 このタイガーの訴えにルナティック、いやユーリ・ペトロフは……

 

 一方、戦況はというと。

 ルナティック率いる本隊の到着により、少しずつではあったが戦況は国連軍に傾いていた。

「畏れよ……絶対的正義こそが、国連軍の象徴なり」

 そんな国連軍に聖龍隊の北麗とエン・リーの炎系能力コンビが、狐火や格闘技で敵を押していた。

 次第に戦況が有利に動いているのを視認したメタルバードは、先ほど自身が命じた事を思い出して颯爽と上空を飛び立った。

「虎徹たちにああ言ったのはいいが、ペトロフの奴が大人しく言う事を聞いてくれるとは思えねぇ。ちょっとオレもペトロフと話してくるか」

 メタルバードはルナティックと話し合うため、上空を颯爽と飛来していった。

 

 そんなメタルバードの考えは合っており、ルナティックはワイルドタイガーたちと戦いを繰り広げていた。

「うわっ、話を聞けってペトロフ!」

「話など何の意味もない。私は私の正義を執行するのみ!」

 ルナティックは自身が掲げる正義の下、タイガーたちと交戦し、対峙するのだった。

「えいっ」ドラゴンキッドが俊敏な動きでルナティックの懐に入り込み、脇腹に拳を入れようと試みる。

 が、ルナティックはそれをかわして、体勢を素早く立て直すと手の平から直接緑色の高温の炎を放射してドラゴンキッドを牽制する。

「うわっ」

 危うく丸こげにされそうになるドラゴンキッドは慌ててルナティックから離れる。

 同じ炎の使い手のファイヤーエンブレムも、自分が発せられる炎よりも高温の炎を射出できるルナティックには分が悪かった。

 が、そんな状況下でメタルバードが上空より飛来してきた。

「バーンズ!」

 タイガー達は上空から飛来してきたメタルバードを見て一同に声を上げる。

 そしてメタルバードはルナティックが掌から放射する緑の炎に躊躇う事無く突っ込み、炎を浴びながらルナティックに声をかける。

「おい、ペトロフ!」

 声をかけられたルナティックは炎の放射をやめ、メタルバードと直面する。

 攻撃を止めて直面してくれたルナティックにメタルバードは敬意を示しながらも話し掛ける。

「ペトロフ、話だけでもさせてくれ。オレは……いやオレ達はあのカァチェンって奴を放っておきたくないんだ」

「彼と話をして、一体全体なにを企んでいるのです?」

「企むなんて人聞きの悪い……オレはただ、あのカァチェンを変えたいだけなんだよ」

「変える、ですって……?」

 メタルバードの発言を聞いて、ルナティックの様子が変わった。

 そしてメタルバードはルナティックに話し続けた。

「オレたち二次元人の可能性を、お前は気にした事があるか? オレたち二次元人には自分自身だけでなく、他人を……いや、三次元人までも変えれる可能性があると。そう、無限の可能性があるとオレは修司に言われ続けてきた。オレは、あの無気力なカァチェンを少しでも変えたいんだよ!」

「……何故、彼に固執するんです? 何故あのカァチェンにそこまで気にかけるんですか?」

 ルナティックに問われたメタルバードは、真っ直ぐな瞳でルナティックに答えた。

「何故……? いや、そうだな。ああいう澱んだ瞳をしている奴を、放っておけないからかな」

 メタルバードから言われたルナティックは内心驚愕していた。彼自身も、澱んだ瞳をしている無気力なカァチェンをどうにかしたいと心の内で思っていたからだ。

 

 

[澱んだ瞳]

 

「うぎゃあっ」

「聖龍隊の強さ、身に沁みて解っただろ?」

 聖龍隊の切り込み隊長と言っても過言ではない太刀筋で敵を切り倒した盲目の剣士、早見青児が周囲に群がる敵を悉く抜刀して倒した。

 しかしそんな早見青児の目は見えなくとも、シバ・カァチェンの虚無の雰囲気は敏感に察する事ができた。

「まさか………………修司の様な奴がいたとはな」

 早見青児はポツリと呟く。

 

 戦闘は終わり、国連軍側にとっては多大な痛手を被ったものの敵側に勝利する事ができた。

 この戦果に両軍は素直に喜べなかった。何故なら本来、指揮する筈のシバ・カァチェンがまともに指揮する事ができていなかったからだ。

 国連軍野営本陣にHEADと赤塚組を除いた聖龍隊が潜っていくと、卑屈なカァチェンが彼らに言う。

「その門が、貴方にとっての獄門となるだろう」

 この態度に遂に武官の怒りは爆発し、カァチェンの胸倉を掴んだ。

「カァチェンよ、貴様は一体何を考えている……?」

 何を考えているか解らないカァチェンの言動に怒りを露にする武官の怒声にも、カァチェンは何の反応も示さない。

 更にそこへ先ほどの戦闘で死没した兵士の亡骸が運ばれて行ったのだが、それを見たカァチェンは冷めた反応で言った。

「……過去なら、或いは未来の私なら……彼らの死に泪を流せもしたのだろうか……?」

 涙一つ流せないカァチェンの思考にますます不信感を募らせた一般二次元人たちは遂に感情を吹き出した。

「おいアンタ! 命令一つ出せなかった上に、死んだ仲間に対して詫びの一言も言えねえのかよ!」

 新世代型の真鍋義久の発言に、シバ・カァチェンは突然黙り込んでしまい、無口になってしまう。

「てめぇ、だんまり決め込むつもりかよ」「ま、待ってよ真鍋くん」

 突然黙り込むカァチェンに真鍋が突っかかろうとするが、そんな彼を琴浦春香が制止する。

 すると三人の男が皆より前に出て、シバ・カァチェンと対峙した。その三人に一般二次元人たちの目が集まる。

「お前か、シバ・カァチェンって不届きな武将は」

「……貴方達は……」

 三人の中で最年長の男が話し掛けて来たのに対し、カァチェンは物静かな口調で問うた。すると二番目の男がカァチェンに言った。

「おれ達はこう見えてHEADの身内なんだ! 話は聞いているぜ、どうやらウチのうさぎ達がお前の事を気にかけているみたいだな」

「……それが何か……」

 すると最年少の男がカァチェンに言い放った。

「なんで姉さん達がお前の様に不気味な奴を気にしているのか知らねぇが、その前におれ達がHEADと会っても良いのかどうか見極めてやるぜ」

 そう言うと三人の男はシバ・カァチェンに勝負を挑んだ。

 三人の名はそれぞれ木之元桃矢、月野進悟、森谷賞。聖龍HEAD、木之本桜、セーラームーン、ナースエンジェルの身内であり、それ故に聖頭親属と呼ばれる三人組。

 桃矢、進悟、賞の三人はそれぞれ長い槍を真正面に縦に振り回して、カァチェンに迫る。が、カァチェンはこれを俊敏な動きで回避。

「私をどう思おうと勝手だが……攻撃を受けよとの命は出されてないゆえ」

 そう言いながら右に左にへと三人の攻撃を回避していくカァチェン。

 ここで三人は連携攻撃を止めて、個人個人で槍を振るってカァチェンを攻撃していく。だがカァチェンは三人の槍捌きよりも機敏な槍捌きで弾き返して攻撃を防ぐ。

「くっそ、見た目に反して中々やるな……!」

 木之元桃矢たちは弱々しそうに見える容姿から反して、機敏な動きと俊敏な槍捌きを繰り出すシバ・カァチェンに圧倒され掛け始めていた。

 だが諦めるわけにも行かず、三人は一斉にカァチェンに飛び掛ろうとした。

 が、その瞬間「止めろッ!」と声が。その声に三人は動きを止め、シバ・カァチェンや一般二次元人たちが声の方に目を向けると、そこにはメタルバードの姿が。更にその後ろには聖龍HEADが揃っていた。

「バーンズ、止めるなッ!」

 そうメタルバードの意思に反して戦おうとする桃矢たちに身内たちが制止する。

「にっ、兄さんやめて」

「さくら、なんで止める!」

 兄の前に飛び出して、カァチェンとの戦いを制止させる木之元桜。

「進悟、もう止めて!」

「うさぎ、なんであんな奴気にかけるんだよ!」

 姉である月野うさぎことセーラームーンに呼び止められる月野進悟。

「賞、いい加減にしなさい。後の事はバーンズに任せましょう」

「そ、総長に……?」

 姉のナースエンジェルに首元を掴まれ制止される森谷賞は、総長のメタルバードが後を任すと言われ唖然とする。

 

 聖頭親属の三人が身内である聖龍HEADに止められている最中、メタルバードがカァチェンに歩み寄り対峙する。

「貴方がバーンズ氏か……」

 カァチェンの言葉にメタルバードは真っ直ぐ彼を見据えて返事した。

「そうだ。超獣族王家継承者バーンズとはオレの事。ま、今はメタルバードと呼んでも構わないぜ」

 すると王と名乗る二次元人達に対してカァチェンは静かに反論した。

「あなた方HEADの中には王として君臨している者もいるだろうが……所詮は人の想像力から生み出された産物。それでも王と、神と名乗りたがるは……我ら人の子の悪癖だ……」

 そんな無気力で無粋な眼差しを浮かべて淡々と語るカァチェンを見て、メタルバードはカァチェンを睨み付けた。

「……テメェのその眼、気に入らねぇな。まるで昔のアイツを見ているかのようだ。そう、生きるという意味に価値など見出せなかった、あの頃のアイツに……」

「そうするだけの資格など、当に失っている……」

 メタルバードの言葉に、自分には生きると言う意味を見出す資格などないと言い切るカァチェン。彼にメタルバードは言い放った。

「何故お前は諦める……なんでテメェはその眼に光を宿そうとはしない!?」

 メタルバードの言葉に少しばかり顔を上げるカァチェンに、メタルバードは叫んだ。

「未来を夢見ちゃいけねえ奴なんぞ、この世にはいねえ!」

 するとメタルバードは「オレが、いやオレ達が見せてやるぜ」と言うと自身の両腕を鋭い刃に変形させ、カァチェンに切っ先を向ける。「!」これには流石のカァチェンも愕然と恐怖に慄く。

 そしてメタルバードは戦意を向けながらカァチェンに言う。

「澱むよりずっといい、光見える喜びってのをな!」

 そして喝をシバ・カァチェンに入れるかのように、メタルバードは彼に戦いを仕掛けた。

 すると戦意をむき出しになって襲い掛かってきたメタルバードに、シバ・カァチェンの心は少しばかり開き始めた。

「バーンズ氏……貴方が、いやあなた方が王や神であるなどと、断じて認めない……!」

「上等! ……で、その理由は?」

「あれだけの想いをした私を差し置いて……人の想像より生まれ出たあなた方が王や神になるなど、受け入れられるものかッ!」

 人間の想像の産物である二次元人が、神や王を名乗る事を許せないと説きながら逆刃薙(さかばなぎ)を振るうカァチェンの言葉に多くの二次元人が怒りにも近い鬱憤を腹の中に宿した。まるで二次元人である事を差別されている様に聞こえたからだ。

 しかしメタルバードは、そんな言動を示すカァチェンに怒りの一片も見せず、余裕感じさせる笑みを口元に浮かべながらカァチェンに斬り込んでいく。

「なるほど、それがテメェの本心か……もっと直接、自分の口から吐き曝せ! 自分の想いをよ……!」

 メタルバードの剣戟は更に激しさを増し、それに対してシバ・カァチェンの逆刃薙(さかばなぎ)も疾風を起こすほど勢いを増す。

「もっと、もっと聞かせろ! テメェが抱える痛みや苦しみを……全部、吐いて楽になっちまえ!」

 そう叫びながらメタルバードは熱い刀剣での闘いを繰り広げる。その闘いにHEADは熱い眼差しで見守り、カァチェンを先ほど馬鹿にしていた国連軍兵士や一般二次元人たちもメタルバードと闘いを展開する彼に目を奪われていた。そんな彼ら同様、ルナティックも確実にシバ・カァチェンの中で何かが変わるのを察していた。

 すると此処でカァチェンの中で一つの疑問が生じた。

「何故だ……何故、私如きを気に掛ける?」

 何故、自分なんかの為に此処まで闘いながら問い掛け、訴えてくれるのか。そんな経験のないカァチェンが不思議がると、メタルバードの口から衝撃的な言葉が飛び出た。

「テメェがかつてのオレの相棒、修司に見えた……それじゃ不満か?」

「!」「!」「ッ!」

 なんと今のシバ・カァチェンが過去の小田原修司に見えるからだという。これにはカァチェン本人はもちろん、古参のHEADメンバー以外の聖龍隊士や一般二次元人さらに国連軍側も驚愕した。

「あの鬼神が、過去の私だと……? 俄かには信じ難い」

 鬼神と畏れ崇められる小田原修司が、昔は自分の様な人間だったと聞かされ、俄かには信じられないカァチェンは困惑する。

 するとメタルバードは当時の、今のシバ・カァチェンの様な人間だった頃の小田原修司について刃を交えながら語り明かした。

「アイツは、物心ついた頃から、自分は周りの人間とは違うと感じ始めた。そして周囲の人間との蟠りを気にしたアイツは、自分の心を押し殺して……いや、生まれ付き欠けていた心を捨てたまま生きていた」

「…………そう、なのか」シバ・カァチェンが答える。

「絶望してたよ。丁度、今のテメェのようにな」

 メタルバードの語りに、当時の小田原修司の心境を知る聖龍隊結成時の頃からの付き合いである古参のHEADメンバーは全員、切ない表情を浮かべる。

 そんな小田原修司の過去を知り、シバ・カァチェンの心境に変化が現れた。

「……どうやって鬼神は、生きる喜びを得られたのだ?」

「おっ、そうだよ。その意思が大切だ……変わりたい、誰かみたいに変わりたいって想いが大切なのよ」

 心境に変化を見せたシバ・カァチェンにメタルバードは喜びの表情を浮かべた。

 そしてメタルバードは真剣な顔付きでカァチェンの疑問に答えてやった。

「常に修司の傍に控え、欠けた心の代わりとなり、立ち上がらせ続けた一人の女がいた……そこのアッコだ!」

「聖女が……!」

 向き合うメタルバードが発した名にカァチェンの動きが一瞬止まり、彼は自分達の闘いを静観する魔鏡聖女ミラーガールに目を向ける。彼女の顔、そして瞳は何処か切なく悲しく感じ取られた。

 その一瞬の隙を突いてメタルバードが敢えてカァチェンの逆刃薙(さかばなぎ)の刃目掛けて斬り付ける。

 鋭い一撃を自身の得物に直撃させられ、体勢を著しく崩してしまうカァチェン。そんな彼が再び自力で立ち上がるのをメタルバードは黙って見届ける。

 そしてカァチェンが立ち上がり、武器を構えるのを視認すると再び彼と刃を交える。

 懸命に応戦するシバ・カァチェンにメタルバードは再び語り掛ける。

「四方八方を闇に塞がれようと……支えてくれる奴が一人でも傍にいてくれりゃ、案外何とかなるもんだぜ」

 しかしこの言葉を受けたシバ・カァチェンは少しばかし表情を険しくさせて激しい感情をメタルバードにぶつけてきた。

「……それは所詮、出逢えた者だけに許された例外だ。報い無き独法師に、未来を夢見る権利などない……!」

 独りの自分に未来を夢を見る権利などないと、自分を見下す発言をするカァチェンにメタルバードは強く檄を飛ばした。

「だったら……その出逢えた者にオレ達がなってやる! 来いカァチェン! ……お前に未来を見せてやる、生きる喜びを味合わせてやる!」

 かつての友、小田原修司のように自力で未来を見据え、生きる喜びを噛みしめる出逢いを体感させると豪語するメタルバード。

 だがカァチェンの冷たく閉じきっていた心は、まだ完全に開き切ってはいなかった。

「頼む、もう私を放っておいてくれ……過去に屈した私をこれ以上、惨めな男とさせないでくれ……!」

 自分の心の殻を強引に打ち破って侵入して来ようとするメタルバードの言動に、カァチェンは次第に沈み切っていた感情を昂らせる。

「ハッ! なんだ……お前、いい魂を持っているじゃねえか」

 感情が昂り、闘いの勢いに激しさを増していくカァチェンを目の当たりにして、メタルバードは思わず嬉しさの笑みを零す。

「羨んで、妬んで、どうしようもなく欲しがって……テメェ、立ち上がりたくて仕方が無かったんだな」

 他人の幸せや野心を羨み、妬んでいたカァチェンが今の自分の殻を自力で打ち破り、立ち上がりたかった心境を察したメタルバードはカァチェンに問うた。

「お前は……未来を諦めてはいなかった! ただ望みたくても、立ち上がれない自分で止まっていただけだ!」

「私が……未来を、望んでいた……?」

 メタルバードより、自身が未来を望んでいたと説き伏せられたカァチェンは、かつての自分を思い出した。昔、思い描いていた自分を。

「そうだ、私は自分に……弱い自分に打ち勝てる、強い自分になりたかった……!」

「その気持ちを、大切にして」

 淀んだ瞳を潤わせて熱く語るカァチェンの言葉に、セーラーマーズがその気持ちを尊重する。

 かつての自分を思い出したカァチェンにメタルバードは攻撃を仕掛け続ける。

「掛かってこい、カァチェン! この聖龍隊が骨の髄まで相手してやるぜ……!」

「ッ! バーンズ、氏……ッ!!」

 生まれて初めて自分と向き合ってくれたメタルバード、そして聖龍HEADにカァチェンは刃を交えながら感激する。

「……バーンズ、氏……ッ!!」

 こうしてカァチェンは今生で初めて自分と真に向き合ってくれたメタルバードと闘いを展開していった。

 

 

[差し伸べて]

 

 二人の闘いは幕を下ろし、闘いに敗れたものの満足したカァチェンは地面に仰向けに横たわる。

 そんなカァチェンにメタルバードが声をかける。

「おい」その呼び掛けにカァチェンは瞼を開き、顔を向ける。

「さっさと起きろ。お前の眼は、まだ閉じちゃいないだろう」

「なぜ……」「?」

「何故……こんな私を?」

「何故? へっ、決まっているだろう。お前が今を生きているから……それだけだ」

「!!」

 カァチェンの眼からは、いつの間にか一滴の雫が浮かび上がっていた。

 そんな感情に湧き上がるカァチェンを前にして、メタルバードは闘いを傍観してくれたルナティックに話し掛ける。

「……と、いう事だルナティック。こいつはオレら聖龍隊が預かる! あんたら国連軍にこき使われても、あんたらもこいつも変わる事はないだろう」

 メタルバードからそう言われたルナティックは一瞬考え込んだが、すぐにメタルバードに返答した。

「解りました、どうぞ彼を好きなように使ってください」

「! ルナティック、様……?」

 ルナティックの言葉に衝撃を受けるカァチェンに、ルナティックは語り掛けた。

「カァチェン、あなたは私たちの様に……冷徹に職務を全うする責務は向いていないのかもしれません」

「ルナティック、様……」

「今の闘いを見て、私は感じました。あなたはメタルバードと……いいえ、聖龍隊と向き合って何かが少しずつ変わっていくのを。私たち二次元人が、あなたたち三次元人にしてやれる事は限られています。そんな中で、あなたは自分と向き合ってくれる人と私闘という時間を共有できた事で何かが変われた気がしてならないのです」

「………………」

「私たち二次元人には自分を、時には他人を変えられる力があると言われています。かの小田原修司が言い残した言葉なので、私も半信半疑でしたが、今の闘いとあなたが過去の小田原修司に酷似しているというなら話は別です。あなたは聖龍隊で、今の未来に絶望した自分から、未来を夢見る自分に変われるというなら……私は喜んであなたを聖龍隊に送りましょう。なに、赤犬元帥には私から上手く報告しておきます。あなたが今まで通り、台湾の国将軍として務められるよう尽力もしておきましょう」

 一言一句に愕然とするカァチェンから、ルナティックはメタルバードに話の矛先を変えた。

「メタルバードよ、あなた達に彼を……シバ・カァチェンを変えられる可能性があるなら私もそれを確認したい。彼をかつての小田原修司の様に変えて見せてください」

 このルナティックの言葉にメタルバードは力強く頷いた。

「もちろん! オレ達も修司によって自分を、運命を変える事ができた! だからこそ、オレ達は三次元人も正しいと思える姿に変えていかなきゃならない! カァチェンの身柄はこっちが引き取る」

「はい、あなたの仰せのままに……クックック」

 メタルバードの話を聞いたルナティックは確信を得たい一心で、不敵な笑みを浮かべた。

 

 そして

「国連軍、撤退しますよ!」

 ルナティックの指示の下、国連軍尖兵隊と本隊は移動を始めた。

 移動を始める兵士達の中にシバ・カァチェンの姿はなかった。彼はまるで真っ白な世界に放り出された様に、放心状態で地面に座り込んでいた。

 そんなカァチェンを横目に国連軍の兵士は(やれやれ、ようやくカァチェンから解放された)と言わんばかしに冷たい白眼視を向けてきた。

(自分は見捨てられた……)そんな事を思ってか、放心状態のカァチェンに優しく言葉を掛けてくる乙女が彼に歩み寄る。

「大丈夫よ、カァチェン」「……!」

 自分の様な周囲から冷遇されてきた男に対して、慈愛に満ちた声をかけてくれる女性にカァチェンは目をやった。

 カァチェンに声をかけたのは、ミラーガールだった。そしてミラーガールの背後から、他の聖龍HEADもカァチェンの目の前に歩み寄り、それぞれ優しくカァチェンに言葉を掛けていく。

「大変だったね、国連軍の人たちから冷たくされて……でも、もうこれからは大丈夫だよ」

「私たちは今のあなたの様に塞ぎ込んでいた少年を知っているわ。彼もまた変われたんだし、あなただってきっと変われる筈よ」

「ネオ・クイーン・セレニティ……キューティーハニー……」

 セーラームーンとキューティーハニーの優しい言葉に戸惑いを覚えるカァチェンに別の聖龍HEADが問い掛ける。

「これから焦らず、少しずつ自分を変えていけば良いんだから、そんなに塞ぎ込まないっ」

「あの修司さんだって弱い自分を克服して自分を変えていけたんだから、あなただって変われる筈だよ! きっと大丈夫だから元気出して

「ナースエンジェル……木之元殿……」

 ナースエンジェルと木之元桜に続いて古参の聖龍HEADが続々とカァチェンに言葉を掛ける。

「自分を変えるのって凄く大変だけど、変われた後は清々しいほど気持ちいいものなんだよ!」

「あなたならきっと変われます……私たちが保証します」

「そう、彼の……小田原修司の様に敢然と変われる筈よ」

 ユイ/ハルナ/アイ三人のコレクターズから、きっと小田原修司の様に変われると激励されるカァチェン。

「さっきバーンズも言っていたけど、誰かが支えてくれればきっと自分を変えられる筈だよ!」

「その支えに、私たちがなってあげるわ」

「かつて、修司さんが私たちを導いて変えてくれたように」

 獅堂光、龍咲海、鳳凰寺風の三人からも励ましの言葉を承るカァチェン。

「……自分の運命を切り開き、そして何よりも変えていくのは実際とても辛く困難なもの。だけど周りで自分を理解し、支えてくれる人が一人でもいる限り、どこかで躓いても再び立ち上がらせてくれる筈よ。私自身、今のあなたの様だった修司さんに運命を変えられ、さらに多くの仲間に恵まれた様にあなたも運命を変えられる筈よ」

 己自身もまた運命が大きく変化してしまった二次元人ゆえに、かつての小田原修司の様に自分を理解し更には支えてくれる人がいてくれれば変われる筈と説く最終兵器ちせの言葉にカァチェンは衝撃を受ける。

 

 そして傍らのメタルバード/ジュピターキッド/ウォーターフェアリーもカァチェンに激励する。

「さあ行こうぜカァチェン!」

「君の未来は、まさしく無限大! きっと素晴らしい未来が待っててくれている筈だ」

「私にだって素晴らしい未来がやって来たんですもの! あなたにだって素敵な明日が待ってくれている筈よ」

 古参の聖龍HEADから数々の激励を受け取ったシバ・カァチェン。だが未だ彼にはその実感が湧いて来なかった。

 するとカァチェンの眼前のミラーガールがシバ・カァチェンに手を差し伸べる。

「さあ」「……」

 カァチェンを絶望視している今より立ち上がらせる様に手を彼に差し伸べるミラーガール。

 ミラーガールの鏡の様に透き通った瞳を見つめて、カァチェンは吸い込まれる様な不思議な感覚に溺れた。

 

 かつて古参の聖龍HEADは小田原修司に導かれる形で、運命を切り開き、自ら未来を勝ち取った。

 そうやって導く形で人の明日を、未来を夢見させた小田原修司の様に、今度は古参の聖龍HEADが今に絶望しているカァチェンに救いの手を差し伸べたのだ。

 

 自分達とシバ・カァチェンの出逢いに感謝しつつ、HEADはカァチェンを立ち上がらせた。

 

 誰かを導く幸せを、その身に感じながら

 

 

 

[オリジナルキャラクター]

 

 

北麗(ほくれい)

 元 修司の使い魔を担っていた雌の妖狐 九尾の狐の孫娘

 かつては北海道で生まれ育ったキタキツネの母親の元で生活していたが、妖力が目覚めたのを切っ掛けに札幌などの都市に出て妖術で人間を騙して金銭を奪っていた時期があった。その時期に修司と出会い、修司も 他の男同様誑かそうとするが変化や妖術を見破られ、逆に捕まってしまった。

 その後、改心した彼女は修司の使い魔として主に妖力を使う敵と対峙してきた。

 実は父親は日本全土を旅する高格の妖狐、その母親は高名な九尾の狐なのである。

 Dカップはある体付きに妖絶な美貌の持ち主。釣りあがった目が特徴。

 尻尾は最大9本まで増やせ、そのつど自身の妖力も向上させられる。(限度がある)

 性格は比較的穏やかで、お姉さんタイプ。しかし怒ると九尾の力が発揮され、非常に恐ろしい。

 

 

エン・リー

 物語 西遊記の孫悟空の末裔。修司が中国に旅していたとき、山奥で遭遇。

 先祖代々伝わる如意棒を巧みに扱い、棒術と炎系の妖術で敵と戦う。

 背筋と後頭部の毛は金色で、あとは茶色。

 胸囲は本人がとても気にしているがAカップ(Aもあるかどうか解らないほど小さい)

 やや気が短く、荒っぽい性格ではあるが小さい子の面倒を見るなど優しい性分。

 

 

ピグナ

 西遊記 猪八戒の末裔

 エン・リーが中国からアニメタウンにやって来たのを嗅ぎ付けて河奈と共に中国からやって来た。しかしアニメタウンで北麗らと戦ったのを切っ掛けに聖龍隊に寝返る。

 貪欲に勝ち続ける傾向があり、それと同じくらい食べるのが大好き。つり上がった目が特徴。Cカップ

 デブという訳ではなく、どちらかというとムチムチとした肉付きの体をしている。その肉体から繰り出されるパワーは凄まじく、地面を突いただけで大地を裂いてしまうほどの威力。

 

 

河奈

 西遊記 沙悟浄の末裔

 ピグナと共に中国からやって来た河童。水を自在に操る能力を持ち、更に水を操りながら自身の頭の皿を濡らし続ければ強烈な怪力を保持できる。

 時おり自分の戦果に酔いしれるため、その隙を衝かれてしまう事が多い。

 スリムで肌はピチピチ(と言うよりも河童なため肌は常に水で潤っている)Bカップ

 

 

 

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