現政奉還記 武将達との会合編 作:セイントドラゴン・レジェンド
[極寒の地ロシアへ]
互いの変化を促すための稽古を組み合った翌朝。
早朝より聖龍隊と赤塚組の同盟は、モンゴル軍が総大将シン・ユキジの申し出により出立する事となる。
「いざ出陣!」
聖龍隊の軍師が隊士を引き連れ、号令をかける。
明朝に照らされる一行は、寒さ厳しい乾燥地帯のモンゴル砂漠を、モンゴル軍から借りた軍馬で北上する。
「ハックションっ」「アプリ、大丈夫かい?」
寒さに弱い体質ゆえに思わずくしゃみをしてしまう聖龍HEADのアプリコットことウォーターフェアリーに、婚約者のジュピターキッドが心配する。
「バーンズ殿、そして赤塚殿、佐助が得た情報……いや、既に世間に知られている事ではあるが……かの軍神殿が足正派に加わっているとのこと」
ユキジがいう軍神、それは広大なロシア領土の軍事を一手に掌るロシア将軍ケンノフスキーが現政奉還を促した足正派の傘下に加入している事実。これにバーンズは答えた。
「軍神がどんな考えで足正派にいるか……その意図を知る必要があるな。ロシアの領地は広い、このまま手を拱いていればいづれ必ず隣国との衝突は避けられない」
ロシア周辺の隣国との衝突を恐れるバーンズの言葉に、聖龍隊も赤塚組の誰もが険しい面立ちを浮かべる。
更にケンノフスキーはモンゴル軍総大将代行のシン・ユキジ、彼の師モウ・コダイが好敵手でもあり、二年前の乱世では聖龍隊と共に破邪王ことキム・ジュンス/当時の台湾将軍モウ・チェイファン/そして北の国の残党軍総大将ヤン・ミィチェンを撃破した功績もある。当時、外交的理由と勢力図的な理由でモンゴル軍は聖龍隊と敵対していたが、三人の大将首がそれぞれ落ちた後はモウ・コダイの寛大さとシン・ユキジの直向きな性格から、モンゴル軍は国際的に聖龍隊に加護を受け、現存している。
すると逞しき軍馬に引っ張られる貨物車の中から、一般二次元人たちがバーンズに問い質してきた。
「あのーー……いくらにゃんでも、馬でロシアまで行くのは無理にゃんじゃ……」
「軍用車とか用意できなかったんですか?」
新世代型の森園わかなと福原あんがバーンズ達HEADに問い掛けると、バーンズに代わってジュピターキッドがその疑問に答えた。
「二年前もそうだったけど、乱世の影響で石油とかが運搬できなくなっちゃったんだよ。だから、それを加工して生成するガソリンも入手しにくくなっちゃっているから、車よりも馬の方が移動手段としては最適なんだよ」
アジアの乱世の影響で、ガソリンなどの燃料が入手しにくい現状から、車より体力のある軍馬の方が移動手段には最適だと説くジュピターキッドの説明に、複雑ながらも納得する二次元人達。
すると此処で、再びユキジが聖龍隊に語り掛ける。
「バーンズ殿! 何ゆえ、軍神殿は現政奉還などと平和を乱した将軍の側についているのでしょうか……?」
この質問にバーンズが返答した。
「ッ、おそらくは……ライバルであるモウ・コダイが病身に伏せった事が、ケンノフスキーの心境に変化を与えたのかもしれない」
己の師匠の病身が軍神の心境の変化の根本かもしれないと言われたユキジは酷く嘆いてしまう。
「ぐぅ……ッ、お館様の病が、まさか軍神殿にも変化を催してしまうとは……遺憾なり!」
「そう嘆くな、ユキジ。人間誰しも変わっちまうんだよ。それに、あの屈強なモウ・コダイが病気に伏せったなんて、オレ様すら未だに信じられないしな」
嘆くユキジを労わるバーンズに、ユキジの興奮も徐々に冷めていった。
「バーンズさん、ロシアの軍神とは……」
進軍する道中、新世代型の出雲ハルキがバーンズに問い掛けると彼は詳しく語り出した。
「ロシアの国将軍と州将軍を同時に担う戦の天才、ケンノフスキー……別名、軍神とも呼ばれるほどその戦略は神かがっている。常に冷静で穏やかな雰囲気に反して、実戦になると非常に恐れられるロシア軍の総大将……」
「そ、その軍神が寝返ったってみたいな話を、さっき小耳に入れたんですけど……」
ハルキに続いて新世代型の瀬名アラタが訊ねると、バーンズは険しい面立ちで返答した。
「ああ、それな。ケンノフスキーが、この乱世の根本、現政奉還を発起した国際連合総長 足正義輝の軍門に下ったと広く世間に出回っている」
「え!」「あの足正義輝と……!」
ロシアの軍事を全て任せられている国将軍のケンノフスキーが現政奉還を発起した足正義輝の軍門に下ったという話を聞いて、新世代型のキャサリン・ユースや鹿島ユノたちは驚いた。
そんな彼ら足正義輝と同じ新世代型二次元人を落ち着かせるために、バーンズは彼らに語り掛ける。
「まあ、本当に軍門に下ったのかどうかを確かめるために、これから会いに行くんだけどな。問題を起こした足正義輝と手を組んだロシア軍が、今後どうなるかオレも不安な一面があるからな」
「………………………………」
現政奉還という異世界をも巻き込んだ乱世を始めた足正義輝、その義輝の傘下に加入したロシア軍の行く末を気にするバーンズの重みある言葉を聞き入れて、義輝と同じ新世代型の二次元人たちは今後の自分達の行く末も案じてしまう。
極寒の地ロシアの国境へと向かう一行。
その道中、あのシバ・カァチェンがぽつりと呟いたのを聖龍HEADは聞き逃さなかった。
「軍神ケンノフスキー……常に冷静でありながらも、軍神として恐れられる戦神……果たして、今回私は生き永らえるだろうか……」
軍神として恐れられるケンノフスキーとの対面に、果たして生き延びられるかと不安がるシバ・カァチェンにHEADは優しく言葉を掛ける。
「大丈夫だって! ただ話をしに行くだけで、戦う訳じゃないんだもの」
「月の皇女よ……」
セーラームーンからの楽観的な言葉にカァチェンは反応する。
「平気よ。確かにあの人は軍神と呼ばれるほど恐れられているけど、無暗に戦うような武人じゃないわ」
「ハニー殿……」
キューティーハニーからの言葉にカァチェンは少しばかし顔を上げる。
「何も私たちは戦うために足を運ばせる訳じゃないの。話し合いで平和的に会談できれば、それで十分なのよ」
「ちせ殿……ですが、私は……」
「私たちも相手も好戦的な相手じゃない。話し合いという会談で済めば、大人しく武力を納めるのよ」
「……………………」
あくまで戦い合うのではなく話し合うために向かうのだと言い聞かせるちせに、カァチェンは不安からか黙然と口を閉ざしてしまう。
そんなカァチェンに聖龍隊の隊士でもある黒崎一護が声をかける。
「大丈夫だって! そんなに気を負うなっての」
だが一護の励ましにもカァチェンの不安は完全に消失しない。
すると、そんなカァチェンを見兼ねてか、同行する一般二次元人たちが彼に話し掛ける。
「……そ、そういえば……カァチェンさんが使っている武器って、まるでゲルググのビームサーベルみたいだね」
新世代型のイオリ・セイが話し掛けると、カァチェンは下を俯いたまま答えた。
「下……留愚々……? あなた方の言葉は少し難しい……」
「え、なに? 一見オタッキーに見えて、ガンダムのこと知らないのか?」
「岩駄無……?」
自分達の創作元でもあり、世界的に人気のガンダムに関して無知のカァチェンにレイジ・アスナら【ガンダムビルドファイターズ】の面々は一驚してしまう。
「そ、それなら今度一緒に見ませんか? きっとあなたも気に入る筈です。解らない所は私たちが教えますからっ」
「は、はぁ……」
自分の興味外の話題について来られないカァチェンに、コウサカ・チナは今度丁寧に語り合いながら共に視聴しようと提案してくれる。
実はカァチェン、自分が興味を持ったもの以外は、まったく関心を示さない性質なのだ。そんな自分に優しく、共有の趣味を教え語ってくれると言ってくれる新世代型の言葉にカァチェンは少し元気付けられた。
そんな過程を過ぎて、一行はモンゴルとロシアの国境へと辿り着いた。
国境はちょうど浅い川瀬であり、川の水は温暖化の影響もあってみぞれ状態まで凍り付いていた。
「よし、着いたね」
そういうジュピターキッドに皆が目を向けると、見慣れない光景に一般二次元人たちは驚愕した。
なんとジュピターキッドが跨る軍馬の傍らには、氷漬けになってしまってるウォーターフェアリーが軍馬から落ちないように縛り付けられて運ばれていたのだ。
「ちょっと! それって一体……!」
氷漬けのウォーターフェアリーを軍馬に縛り付けているジュピターキッドに真鍋義久ら二次元人たちが問い詰めると、キッドは平然と答えた。
「ああ、これ? アプリって氷点下の環境に滅法弱くてね。ロシア領地に近づいていくに連れて、体が凍り付き始めてきたから、こうして運んでいる訳」
「マジかよ!?」
寒い環境に弱いウォーターフェアリーが氷漬けになった時点から、自分が乗馬する軍馬で運んでいると語るジュピターキッドの言葉に真鍋義久は愕然としてしまう。
そんな驚愕する二次元人たちにジュピターキッドは言い切った。
「これも愛ってやつさ!」
「氷漬けの彼女を運ぶのも愛!?」「聖龍隊マジパねぇ!」
凍て付いた婚約者を丁重に運ぶのも愛の成せる技であり形であると言い切るジュピターキッドの台詞に二次元人たちは衝撃を受ける。
一方でロシア国境にメタルバードに変身したバーンズと、赤塚組の大将とシン・ユキジが近づいて警備員に声を掛けようとしていたが……
「……どういう事だ? 誰の姿もいない」
「警備員すらいないのは、バーンズこりゃおかしいぜ」
「むむっ、何やら嫌な予感が……」
三人が不吉な予感を脳裏に走らせているその過程を、遠方より二つの鋭い視線が見詰めていた。
[ロシア国境戦]
「きましたね……――」
鋭い眼光を走らせるその人物は、端正な顔立ちと穏やかな雰囲気で国境に群がる聖龍・赤塚・モンゴルの同盟軍を見据える。
「しかし、この地はすでに毘沙門天の手の上に……」
するとその人物は腰に下げている長刀を抜刀し、言い放った。
「ロシア全軍! つつみこみなさい!」
次の瞬間、辺り一帯に白い靄がかかり出し、視界がぼやけてしまった。
「こ、この冷気は……!」「間違いないぜ、こいつは軍神の刀から発せられる冷気だ」
「ケンノフスキー殿、まさか我々を……!」
メタルバードと大将は、突然発生した霧から感じられる冷気にて、この霧が軍神が自ら発している冷気から生じているものだと瞬時に察する。そして同じく状況を理解したシン・ユキジはロシア軍が国将軍ケンノフスキーが自分達を襲撃するのではと挙動不審になってしまう。
だが、そんな三人の予想は悪い形で的中。既に霧の中、一行をロシア軍が完全に包囲してしまっていた。
「かかれーーッ」
ロシア軍の指揮官が号令を発すると、軍隊が一気に襲撃してきた。
「い、いつの間にか囲まれているッ! 軍神め……霧すら戦略として操るか……!」
霧の中、ロシア軍に完全包囲されてしまった戦況に、聖龍隊の木之元桃矢はケンノフスキーの戦略に恐れを成す。
「ふふ……あるいはこのもやこそ、そなたたちのまどい……」
だが冷たい眼光で戦況を史観する軍神ケンノフスキーは、戦場に出た靄こそ惑いではないかと冷静でいる。
「ま、待て! 俺達は話し合いをしに来ただけだ、戦う気は毛頭ない!」
HEADのキング・エンディミオンが訴えるが、ロシア軍人は攻撃の手を緩めない。
「ど、どうなさるのでございますかバーンズ殿! これでは思うように動けませぬ……!」
「だーーかーーら! あんたもモンゴル軍の大将なら自分で考えろっての!」
周囲を完全に包囲された現状にシン・ユキジはメタルバードに策を求めるが、猿飛佐助からは自身も軍の総大将ゆえに自力で考えろと言い付けられてしまう。
完全包囲された戦況に、メタルバードは苦肉の策を出した。
「仕方がない……聖龍隊、応戦しろ!」
メタルバードは隊士たちにロシア軍と応戦するよう指示を出した。
メタルバードはモンゴル兵に戦場の左右に陣地を拵えるよう呼びかけ、ロシア軍の猛攻から左右の陣を守り切りながら軍を指揮するようユキジに言う。
そして一定時間、ロシア軍の猛攻から左右の味方陣を死守すると同時に、ロシア軍の軍人たちが出陣する相手方の左右の陣地を攻め落とす作戦をとる。
しかし時すでに戦況はロシア軍に有利。完全に戦闘態勢に入っていなかった聖龍・赤塚同盟にモンゴル軍の不覚だった。
巡行する一行の中には、非力な一般の二次元人達も見られるというのにロシア軍は猛攻の手を緩めない。
「はんもんを越えたわたくしに、もはや躊躇いなし……! みなのもの、わが宝具となりて鵲を討て!」
煩悶の念を超えて今に辿り着いた心中のケンノフスキーに躊躇いはなく、ロシア全軍に己が宝具の如く目の前の敵を討伐せよと命じる。
そんな煩悶を乗り越えたケンノフスキーの傍らには、一人の金髪の美女が付き従っていた。
「ああ、ケンノフスキー様……ッ! 貴方様と共に在れるだけで、私は……っ!」
美女がケンノフスキーに見惚れている最中も、ロシア軍の猛攻から聖龍・赤塚・モンゴル同盟は左右の陣地を死守しながら進撃を開始する。
「さ、左右の陣を死守しろッ! 落とされでもすれば挟み撃ちにされるぞ……!」
もし左右の陣地が落とされてもすれば、相手方のロシア軍に挟み撃ちにされる現状を述べながら聖龍隊の森谷賞が指揮を執る。
森谷賞だけでなく、多くの聖龍隊士が猛攻を仕掛けてくるロシア軍相手に交戦する。その中で赤塚組も特攻してくるロシア兵士を叩きのめして気絶させてしまう。
そんな聖龍隊や赤塚組に交じり、モンゴル軍も熱血漢ながら戦に熱く燃え滾る。
「戦より普段の鍛錬の方がキツイって……すごいよな」
死者が出るほどの実戦よりも、日常茶飯事の鍛錬の方が辛いモンゴル軍の現状を思い出す聖龍隊士が呟く。
直接、死人を出さずに戦おうとする聖龍隊だが、ロシア兵の猛攻に困惑するばかり。そんな聖龍隊の心境に反し、猿飛佐助率いるモンゴル忍隊は、本気で攻めてくるロシア軍相手に手を抜かず意図も簡単に殺めてしまう。
「だから戦争は嫌なんだよね……血に塗れちゃうから」
自分が殺したロシア軍の軍人を前にして、猿飛佐助は冷たい眼で見下ろすとすぐに実戦へと身を戻す。
そんな死んでいく自軍の軍人達にケンノフスキーは冷静に語り掛ける。
「まどわず、神仏のもとへ」
実戦では敵方に無慈悲なケンノフスキーでも、自分と母国の為に散った兵士相手には慈悲の念を向ける。
一方で猛攻してくるロシア軍を相手に、猿飛佐助率いる忍隊は見事な活躍をしていた。
「まさに一騎当千の働き……見事なり、佐助!」
佐助の戦ぶりにシン・ユキジが称賛するが、佐助はその称賛を聞く暇もなく合戦に集中する。
と、ここでケンノフスキーが軍人達に指示を出す。
「水面の月をくずさぬよう、すすむのです」
「ははーーッ!」
水面に浮かぶ月を崩さぬ進軍をするようにと言伝する軍神に対し、ロシア軍人たちは威勢よく応える。
[無敵登場]
浮かぶ白い靄の中からの猛攻に悪戦苦闘する聖龍隊。
そんな靄の中で奮闘するスター・ルーキーズの新人勢の前に、他のロシア兵士よりも際立った前立を頭につけた武将が現れた。
「誰が呼んだか! いや、呼ばれずともオレは来るゥ! 眠れし無敵! ナオエフ・カネノフ、参上!」
絶対無敵 ナオエフ・カネノフ 無敵出撃
ナオエフ・カネノフと名乗る男は国将軍ケンノフスキーの許可もなく勝手に戦場に出撃し、滅茶苦茶な剣劇でルーキーズに立ち向かってきた。
「わ! な、何なんだコイツ?」
突如霧の中から現れたと思いきや、素人並みの剣術で攻めてきたナオエフにキリト達は困惑してしまう。
「とにかく目立つ! 絶対目立って主人公ッ!」
兎に角滅茶苦茶な太刀筋で斬りかかってくるナオエフの襲撃に、激しく戸惑ってしまうルーキーズ。
「俺の日課は一日五回の腕立て伏せだ! 参ったか!」と、言われても何と返せばいいのか分からず、たちどころに混迷してしまうアスナ達。
と、その時。ルーキーズが突然のナオエフの奇襲に困惑している最中、味方陣地が敵方のロシア軍に攻撃されてしまっていた。
「て、敵が多すぎる! いくら倒してもキリがない!」
倒しても倒しても湧いてくるロシア兵の増援に苦戦を強いられる月野進悟。
「我々も加勢します!」「ああ、でも国際問題にならないよう、間違っても殺すんじゃないぞ」
大軍での襲撃に苦戦を強いられる聖龍隊の戦況を見て、鬼龍院皐月ら戦闘タイプの新世代型が加勢に加わる。彼女達にメタルバードは国際問題に発展しないよう間違っても殺めないよう言い付ける。
しかし新世代型の加勢という峰打ちでの反撃も、数で攻めてくるロシア軍には余り意味を成さなかった。
「俺が脇役? ははは! その冗談は実に無敵!」
一方のナオエフ・カネノフは実力も無い癖に出しゃばり、運の良さだけでルーキーズのSAO組とAW組とマギカ組を足止めしていた。
無論、ルーキーズが決して弱い訳ではなく、実力も素人並み、いやそれ以下のナオエフの攻撃にどう対応して良いのか困惑してしまい、上手く戦えないだけであったのだ。
「三歩歩けば回復する、光り輝かんばかりの無敵!」
己の回復力を自慢するナオエフ、だがそれは単に敵方に相手にされない故に傷を負わないだけ。
「おいおい、ナオエフ相手に何を躊躇っていやがる! 吹き飛ばすなり殴り倒すなり、勝手に対処しろ!」
聖龍隊の先輩隊士から言われてしまうが為に、余計に焦り出してしまう三組。
「作戦名・「俺に任せろ!」 援護が無くとも俺は無敵!」
味方の援護が無くとも戦えると自負するナオエフは、縦横無尽に戦場を駆け巡る。
「次の戦でも俺を頼れ! いいな、絶対だぞ!」
更に味方のロシア兵に声を掛けるが、誰もナオエフには見向きもしない。
「……私同様、いや、私なんかよりも人様から脚光を浴びないとは……この世には、ある意味私以上に不憫な御方も居られたものだ……」
味方の兵士から見向きもされないナオエフを認識した聖龍隊側のシバ・カァチェンは、自分以上に他人からよく見られないナオエフ・カネノフを目撃して戦場に佇む。
すると此処で、ようやくキリトとシルバー・クロウ、そして美樹さやかの剣戟によってナオエフの刃が折られた。これでナオエフも大人しく退散してくれると皆が思った、その瞬間。
なんとナオエフはもう一本、無銘の刀を取り出すと再び迫ってきた。
「折れ易いが替えが利く、それが名刀・無敵剣!」
継ぎ替えが楽な自称・無敵剣を前に、ナオエフの鈍い剣戟をキリトが受け流す。
そんなキリトたち主人公らを目の当たりにしたナオエフは、思わず正直に言い放つ。
「例え忘れ去られようとも、事実として俺は主人公!」
(いやいや、それはまずありえないだろ……)
ナオエフの台詞にキリトたちは呆気に取られてしまう。
すると単身戦いに挑むナオエフは、チームで戦う三組を見て堪らず思いのたけを吐いた。
「いつか無敵を五人揃えて、無敵戦隊を結成する……ッ!」
「いやっ、どんな戦隊だよッ!?」
ナオエフが発した戦隊に、佐倉杏子が思わずツッコむ。
「ケンノフスキー様が軍神ならば、この俺こそが勝利の男神ッ!」
(よく言うよ……)
上官のケンノフスキーが軍神であるように、自分は勝利の神だと自称するナオエフに一同は呆れ果てる。
「無敵と叫んで斬りかかれ! そうすれば敵も怖気付く!」
ナオエフは更に味方兵に、自分の様に無敵と叫びながら戦えば敵は怖気付くと呼び掛けるが、誰も彼に反応しない。
「一番隊の座は俺のものだ! 何故なら俺が無敵だから!」
訳の分からない事までも言い出すナオエフに、次第にルーキーズ新人達の感情は昂ってきた。
「ロシアのみならず、外国でも……俺は無敵と呼ばれたい!」
母国であるロシアだけでなく外国でも自分を無敵と呼んで欲しいと切に願うナオエフ。
「お前の指揮能力、まだまだ無敵の俺には程遠い!」
そして遂には挑発するかの如く、相手方に指揮能力が自分よりも低いとおちょくるナオエフに、近場のルーキーズ隊士が駆け付ける。
「いい加減にしなさいっ! ナオエフって滅茶苦茶弱いんだし、無駄に時間を消費しない!」
総部隊長ミラールに怒鳴られ、新人達はビクッとなってしまう。
「仲間が居る、敵が居る……そんなでっかい無敵が欲しい!」
そして意を決して、まずは新人達の中でも最も攻撃力の低い百江なぎさがナオエフに攻撃を仕掛けようと試みる。
丁度その時、ナオエフは叫び過ぎて体力を消耗してしまい動きを止めていた。
「叫び過ぎて息が切れていても……はぁ、はぁ……俺は無敵……」
勝手に戦場に飛び出して勝手に疲労困憊してしまうナオエフ・カネノフに、なぎさが攻撃。
するとナオエフは見事なまでに吹き飛ばされてしまい、空の彼方に飛んで行ってしまった。
「無敵なのにーーーーッ!」「うっそーーーー!!?」
たったの一撃、しかもルーキーズの中で最も火力の弱い百江なぎさの攻撃一発で吹き飛んでしまうナオエフ・カネノフを目の当たりにして、三組は愕然としてしまう。
「やったあぁ! 俺は目立ったぁあーーーーッ!!」
すると空の向こうでナオエフは戦場で誰よりも目立った、目立ち勝ったと叫びあげるものの、彼の存在に気付いているのは戦った当事者のルーキーズ三組だけであり、味方のロシア兵にすら気付いてもらえてないナオエフ・カネノフだった。
「ん? 今誰か居なかったか?」
ナオエフの叫び声を聞いて、ロシア兵はやっと声にだけ気付いてくれた。
と、空から落下してきたナオエフ・カネノフが近くのロシア兵に声を掛ける。
「今日の俺は無敵度が低い……悪いが後は任せた!」
そういうとナオエフはやっと大人しく戦場から去って行ってくれた。
[恋焦がれし忍]
「どっちが先に手柄を獲れるか、競走だ! 行くぞーーッ!」
ルーキーズの新人達、SAO組にAW組そしてマギカ組の三組がナオエフ・カネノフを相手に一騒動起こしていた最中、戦況は聖龍隊側が押していた。
聖龍隊の同盟相手、赤塚組とモンゴル軍による進撃が功を奏してロシア陣営の左右の陣を急襲する事に成功していた。
だが、あともう少しでロシアとモンゴルの国境包囲陣を突破できる矢先、ロシア側から魔の手が迫ってきた。
「くっ、ロシアの忍隊だ!」
颯爽と現れるロシアの忍者特殊部隊を前にして、モンゴル軍忍頭猿飛佐助は表情を歪ませる。
ロシアの特殊部隊は、どうもケンノフスキーの趣向から敵対するものが少しでも安らかに逝くようにと、歌いながら戦場に飛び出て敵対する者の命を奪う。
「あなたと~出会えたこの
するとロシア国将軍ケンノフスキーも戦場に赴く兵士や特殊部隊の軍人に言葉を送る。
「みなのもの、宝刀となれ! きりに紛れるかげとして、てきをまどわせるのです!」
特殊部隊を含むロシア軍に、ケンノフスキーは宝刀の如き鋭い奇襲を仕掛け、敵を惑わすよう指示を出す。
しかし特殊部隊を相手に、モンゴルの忍猿飛佐助はけたたましい活躍を見せ、一歩たりとも前進させなかった。
「あれ、言ってなかったっけ? 実は俺様、結構強いんだ」
既に堕ちている特殊部隊の兵士に声を掛ける佐助。
と、ここで朗報が。
ロシア軍との戦闘に参戦してくれた戦闘タイプの新世代型二次元人たちがロシア国境包囲陣の第一陣を突破。第二波を解放し、ロシア陣地の更に奥の陣地にも進攻できるようになった。
「へへっ、蹴散らしてやったぜ!」「上出来だ! 奥の陣地も落とせば、国境の橋が渡せる」
喧嘩の要領でロシア兵士を蹴散らした纏流子にメタルバードが称賛する。
だが、そんな快進撃する新世代型たちを前に、先ほどケンノフスキーの傍らにいた美女が悲痛な声質で言った。
「いいか……そんな奴ら相手に、命を投げ売るな……!」「我々も、舐められたものだな」
美女の言葉に対し、鬼龍院皐月は自分たち新世代型を「そんな奴ら」と見下された心境に至り、非常に不快に感じ取っていた。
だが第二波の陣地を攻め落とそうとする此方側に対し、ロシア陣営も忍による特殊部隊を投下して防衛に転ずる。
「きりのなか~びしゃも~んのちからを~か・ん・じ・て~♪」
歌いながら優雅に攻めてくる忍たちの手裏剣やくないを避けながら、聖龍隊は彼らを攻撃。陣地を襲撃する。
「やったぜ! これが聖龍隊精強の攻めって奴よ!」
そして遂に第二波の陣地の一つを攻め落とし、メタルバードは活気づいた戦況に浮足を立つ。
現場の戦場で聖龍隊と共に活躍するモンゴル軍総大将シン・ユキジの傍らで共闘する猿飛佐助も、戦場で見事な戦いぶりを発揮するユキジと上手く連携をとりながら進攻の手を緩めない。
「猿飛……技に一段と磨きをかけたな……」
そんな猿飛佐助の動きを見て、ジュピターキッドは彼の技術が一段と成長している事実を把握する。
防戦一方になるロシア軍側に対し、聖龍隊はすっかり戦いの熱気に感化されていた。
「おまえには軍神のいきが宿っています」「お任せを!」
熱気に感化される聖龍隊を前に、ケンノフスキーは冷静に出撃する兵士に声を掛けていく。
だが熱気に感化されたのは聖龍隊だけでは無かった。
「気合いだ、気合いだ、気合いだァーーッ!!」
熱血漢のモンゴル兵士たちは、当の昔にすっかり戦場の熱気に感化されて興奮していた。
ケンノフスキーと対談する為に国境を渡るべく始まった戦い。
だが既に戦場では多くの死傷者が続出していた。
「まだ助かる! 急ぎ救い出すんだ!」
ケンノフスキーの傍らにいた美女が負傷した兵士を見て、急ぎ救護を向かわせるよう指示する。
しかし戦功を挙げる聖龍隊側の進撃は留まる事を知らず、更にモンゴル忍隊によるロシア兵への被害も甚大なものとなっていた。
溜まり兼ねた美女は、隣で戦況を静かに見据えるケンノフスキーに出撃の許可を求めた。
「ケンノフスキー様……貴方様の振るわれる宝具の中に、私も……?」
「むろんです、うつくしきつるぎ……毘沙門いちの刃として、すべて討ち伏せよ!」
出撃の許可を頂いた美女は、颯爽と戦場に舞い降り、辺り一帯の隊士を全て蹴散らした後に徐に装備しているくないに手を伸ばす。
その美女は、もみあげ部分だけを長く伸ばした不思議な髪形に、衣装は臍部分までばっくりと開けたボディスーツを着用しており、腰部分はメッシュ素材のような網になっていて、早い話がものすごく寒そうな格好のくノ一であった。
そのくノ一は腰に携えていたくないを片手に五つずつ持つと、ケンノフスキーへの想いを
「あの方の御心内が、私などに解るものか……!」
するとくノ一は手に取ったくないを獣の爪に見立てるか如く、雌豹の姿勢で敵方を挑発するかの様な格好で睨みを利かせる。
「だから、だからこそ私は――――冷たく煌めく、剣でありたい……!」
月下為君 かすが 参上
「かすがさん!」「お久しぶりです!」
二年前の乱世では同盟相手であったロシア軍にて、かすがと顔馴染みになっているセーラージュピターやコレクターユイたち聖龍HEADの女性らが彼女に声を掛けるが、当のかすが本人は純粋にケンノフスキーからの命を全うしようと聖龍隊に攻め込んできた。
「私などを最良の宝具と語って下さった……その想いに応えるため……貴様たちを倒すッ!」
本来ならば使い捨ての道具である忍を、美品たる宝具と謳ってくれたケンノフスキーへの想いに応えるべく、かすがは華麗な身のこなしと鉄線付きのくないを用いて聖龍隊の動きを封じた上で徹底的に叩きのめす。
そんなかすがの華麗な動きと戦いぶりを観て、一般二次元人達は言葉を失くす。
「あんな凄えねえちゃんがいるって、誰も信じてくれねよな……」
絶対的に魅力的な風貌と華麗な戦ぶりを披露するかすがを目撃して、新世代型の燃堂力たちは例え他人に語ったとて信じてくれない様な素晴らしい美貌の彼女に虜になっていた。
だがしかし、敵の命を奪う事に多少の躊躇を抱いているかすがの出撃が遅れたのか、ロシア陣営の第二波陣地の一つが聖龍隊側に落とされてしまう。
ロシア側へと赴く為の橋を渡す為に必要な陣の奪取を許してしまい、ロシア軍側は焦り出す。
「おのれ取られたか……全軍、防衛せよ!」
と、ここでケンノフスキーも軍師に続いて全ての戦闘部隊に指令を下す。
「ぜんばんたい、堅牢たるよろいとなれ!」「御意!」
国境を守る四つの陣地が残り一つになった戦況に、ケンノフスキーは完全防衛の命を発した。
「弱気になるな俺……ケンノフスキー様を信じるんだ……!」
攻守が逆転してしまった戦況に弱気になるロシア兵士もいたが、何よりも上官ケンノフスキーを信じて己自身を奮い立たせる。
「あんぺい不動……みだりに動くなかれ」
一方のケンノフスキーも、按兵不動の如く、状況や様子を伺いながら好機が訪れるのを静かに待ち続ける。
聖龍隊・赤塚組・モンゴル軍はそれぞれ最後のロシア陣地に攻め込んでいく。
「道場での熱き修練を思い出せ!」
モンゴル軍総大将シン・ユキジが兵士たちに熱く呼び掛ける。
「いいか、俺達は俺達ができる事をやるんだ」
聖龍HEADがセーラームーンの実弟、月野進悟も聖龍隊の仲間達に自分達が出来得ることを可能な限り行えればいいと伝えていく。
白い靄が未だ晴れぬ戦況の中、味方本陣にもロシア軍の特殊部隊が攻め込んで来ていた。その筆頭には、あのくノ一かすがの姿が。
「かすがは俺様に任せろ!」
そう言い放つと猿飛佐助は単身、かすがの許へと駆け出して行ってしまう。
「佐助だけじゃ、かすがはともかく本陣が危ない……キリト、シルバー・クロウ、まどか、お前達も加勢しに行ってやれ! ついでに、かすががどんな手ごわい相手なのか、その目でしっかり拝んでおくんだな」
「は、はい……っ」
猿飛佐助だけでは心許ないと言うメタルバードからの指示に、キリトたちは唖然としながらも本陣に戻る。
「危なくなったらオレたちHEADも本陣に戻るぞ! その前にカァチェン、お前のいい成長の糧だ。テメェもかすがと得物を交わせてみな」
「了解しました……バーンズ氏……」
更にメタルバードはロシア陣地の攻め込みの最中にも、本陣が危険となればHEADは出戻る事を彼らに伝える。そして劣兵シバ・カァチェンの成長のために、彼にもかすが討伐を命ずる。
「みえたッ! 今だ、突撃ーーッ!」
一方、先にロシア陣地に踏み込んだ聖龍隊士は、視界の悪い霧の中で敵方を発見し、突っ込んでいく。
その頃、本陣では急襲してきたロシア特殊部隊を相手に聖龍隊の少数の隊士達が防衛していた。
「くっ、本隊が攻め込んでいる隙をついたな……!」
本陣にて一般二次元人達と共に待機していたジュピターキッドは、棘の鞭を振るい敵を叩き付けたり地面から植物の蔦を生やして身動きを封じたりして防衛に励んでいた。
と、そこにあのくノ一かすがが颯爽と現れた。
「! かすが……!」
目の前に現れたくノ一かすがにジュピターキッドは表情を強張らせる。
しかし、かすがの視線は何故か対峙するジュピターキッドにではなく、彼の真後ろに存在する荷馬車の中でジッと耐え忍んでいた新世代型二次元人にへと向けられていた。
「……お前達の……」「? ……」
「お前たち……お前たち新世代型の所為で、あのお方の御心は変わってしまった……! くっ」
突然言葉を発するかすがにジュピターキッドも視線を向けられている新世代型達も戸惑うが、次の瞬間かすがは飛び上がり有ろう事かジュピターキッドではなく新世代型へとくないを投げ付けた。
「っ!」「ッ!」突然の奇襲に新世代型もジュピターキッドも一驚する。
が、ジュピターキッドは素早く反応し、鞭でかすがが投げ付けてきたくないを全て空中で打ち払い、新世代型たちを守り抜けた。
だが、この時のジュピターキッドは完全に自分に対しては無防備であり、かすがは其処をついた。
「ハッ」「し、しまった!」
かすがが投げた鉄線付きのくないがジュピターキッドの周囲に突き刺さると同時に、鉄線がジュピターキッドの身体に絡まり、彼の動きを完全に封じ込めてしまった。
現時点で味方本陣での最大の戦力であるジュピターキッドの動きを封じた上での、本陣への攻撃を狙ったかすがの手口に二次元人達は圧倒されつつ、ジュピターキッドは何とか体に絡まる鉄線を解こうと必死になる。
そしてかすがは聖龍隊・赤塚組・モンゴル軍の本陣へ攻撃しようとした、その時。
「……そうは行かない、ぜ!」
かすがの後方から声と共に大型手裏剣が向かってきた。背後の殺気を感じ取り、かすがは颯爽と回避して後ろを振り向くと、そこには猿飛佐助の姿が。
「さ、佐助さん!」「良かった! これで何とか凌げる」
猿飛佐助の登場に、プロト世代の黒鳥千代子や海道ジンたちは大いに喜々となる。
かすがの跳び上がってからの踵落としを避ける猿飛は、そのまま回し蹴りをかすがに当てようとするものの、これまた軽い身のこなしで跳躍されて後ろへと回避されてしまう。
そして着地した両名は駆け合い、互いに強烈な飛び蹴りを相手に喰らわせようとするが、この蹴りが空中で激突。双方ともに痛手は無かった。
互いに一歩も引かない闘いをする猿飛佐助とかすが。すると佐助がかすがに飄々と話し掛ける。
「なあ、俺達って……息ぴったりだと思わない?」
この口説き文句にかすがは照れながら強く突っぱね返す。
「ば、馬鹿! お前のそこが嫌なんだっ」
かすがの参戦に両軍の戦いは更に加速。
「うおおお、燃えてきたああああッ!!」
聖龍・赤塚同盟と共に参戦するモンゴル軍兵士も熱く滾り始める。
一方の忍二人、猿飛佐助とかすがは激しく闘い合いながらも佐助はかすがを口説き出していた。
「一緒に里帰りしようって件……考えてくれた? 返事は?」
「な……!? す、するわけないだろう、この馬鹿猿ッ!」
どうやら二人は同じ故郷の出身らしい。
[激突! 忍対忍]
ロシア国境にて開戦してしまった国境突破戦。
その激しい戦況の最中、モンゴル軍が忍頭猿飛佐助とロシア軍が誇る絶世の美を司る剣かすが。
両名の忍による闘いは加速の一途を辿る一方だが、そんな激しい攻防戦の最中にも佐助はかすがに問う。
「なんで軍神は将軍側に着いたんだ? ……正直、当人たちの目の前で言うのもなんだけど、新世代型ってのは腹の見えない連中だよ」
「あのお方の心境など、私などに理解できる筈も無かろう……! それにお前も解っている筈だ。忍は所詮は道具、主の心意気など解らなくとも良いと……!」
「それを言われちゃ、返す言葉もないけど……」
新世代型二次元人たちの前で、彼らを非難する佐助に対し、かすがは主の真意など気にせず忍務に励むのが忍の常道だと正論を述べ返し、佐助に返す言葉も無くさせる。
そんな両名の激しい攻防戦が戦場に立ち込める白い霧の中で続いている戦況を、荷馬車の中で一般二次元人たちが静かに観戦していた。
「す、凄い……!」「うひゃ~~、噂で聞いていたけど忍の闘いってマジで凄ェな!」
間近で超一流の忍の闘いを観て、プロト世代の桃花・ブロッサムにギュービッドはその凄まじい攻防に目を釘付けにされる。
と、その時。白い靄の中で闘い続けてた猿飛佐助は自分の視界に入ったある存在に気付く。
すると次の瞬間、佐助は無防備な状態で真正面のかすがに突っ込んでいった。
「ッ!」
防御の構えもせず、ただ大型手裏剣を正面に差し向けて突っ込んでくる佐助に一驚するかすがだが、何の雑作もない突撃にかすがは攻撃を受け流し、容易く跳躍して攻撃を回避してみせる。
「な、何の真似だ!? 私にただの特攻が通じると思っているのか?」
「いいや、ただ敢えて言わせてもらえば…………後ろにご注意を」
「!」佐助の一言にかすがは真後ろを向いた。すると彼女の後方からピンクの閃光に輝く矢が飛来してきた。自分に向かって放たれた矢に、かすがは身体を反らして回避するが矢は彼女のボディスーツを掠めてしまう。
自身の服を掠めさせた矢に苦渋の想いを噛みしめるかすが。彼女が改めて後方に目を向けてみると、其処には矢を放った張本人の鹿目まどかの姿が。さらに彼女の後方には先ほどメタルバードに本陣の防衛に向かうよう指示を受けたSAO組とAW組に、まどか達マギカ組の三組が勢揃いしていた。
実はこれこそ猿飛佐助の狙いだった。かすがに狙いを定める鹿目まどかを目視した佐助は、かすがにまどかの存在を悟られないよう敢えて無防備な特攻を仕掛けたのだ。
一瞬の隙を突かれ、自身の衣を掠めた射撃を放った鹿目まどかに、かすがも彼女たちを視認すると表情を険しくさせる。
「調子に乗ったな…………もう容赦はしない…………!」
そう言うとかすがはくないを手に、まどか達に突撃してきた。
「く、来るぞ!」
キリトが声を発する。誰もがかすがの攻撃に備えて身構えた、その瞬間。「ハッ」かすがは彼らの目前で跳躍して三組の周囲にくないを放つ。そして次の瞬間には三組の身体にはくないと繋がった鉄線が食い込み、動きを封じられてしまう。
「う、動けねぇ……!」
身動きを封じられ、激しく戸惑うキリト達に、かすがは鋭い眼光で言った。
「……命を粗末にするな。例え二次元人であろうとな」「!」
淡い殺意までも混じった眼光に、三組は思わず竦んでしまう。
その一方で戦況はどうなっているかと申せば、この場でようやく聖龍・赤塚・モンゴル同盟はロシア軍最後の陣地を落とす事に成功する。
「やった! 最後の陣地も落とせたぞ!」歓喜に沸く聖龍隊士たち。
だがケンノフスキーが待ち構えるロシア本陣への道が見当たらない。
「チッ、やっぱり橋の向こう側で指示しているらしいな。ケンノフスキーは……」
「ああ、だが橋を降ろさない限り向こう側には渡れん。この霧じゃ、飛んでいくのは危険すぎる」
やはり橋の向こう側ロシア領土で指示をしているのだと察する赤塚大作に対し、メタルバードは濃霧ゆえに飛行しての渡来も困難だと判断し、進軍は止まってしまっていた。
「こうなったら残りのロシア兵士も片付けて、ケンノフスキーを戦場に引きずり出すしか手は無え! 全軍、本陣に戻って佐助達に加勢するぞ!」
「うおりゃあああ! 待っていろ、佐助ェッ!!」
メタルバードは味方本陣を攻めているかすがたち残りのロシア兵士を一掃し、ケンノフスキーを戦場に引きずり出す作戦を実行に移す。これにモンゴル軍総大将シン・ユキジは本陣で闘う佐助に助太刀とばかりに先陣を切る。
一方、味方本陣では猿飛佐助とかすがの両名が戦闘を繰り広げている最中も、本陣に待機している聖龍隊士によってロシア兵は倒されていく。
「ケンノフスキー様、どうかあの者に優しき加護を……」
かすがは倒れていく味方兵を見て主ケンノフスキーが加護を与えてくださるよう闘いながら祈る。が、そんな彼女に佐助が言う。
「相変わらず情に流されやすいな、かすがは……忍に情は不必要なのも、忍の常道じゃないのかい?」
「解ってる! ……私が間違っている事ぐらい」
二年前の乱世から感情的になりやすいかすがに忍の常道を説く佐助。彼の言葉に対して、かすが本人も自身の感情的な部分が忍には似つかわしくない事実を受け入れている。
すると霧が立ち込める戦場に、ケンノフスキーの声が響いた。
「このいくさ、みかどにささげたてまつらん!」
戦況を見据えるケンノフスキーは帝たる足正義輝に献上する思いのみで戦を動かしていた。
このケンノフスキーの言葉を聞いたかすがは、ケンノフスキーが絶えず自分たち戦場で戦う者を見続けてくれる事に喜びを抱き、対峙する猿飛佐助に挑みかかる。
「このときめきが、私に更なる力をくれる!」
すると此処でモンゴル騎馬隊に乗馬し、先陣を切って颯爽と本陣にシン・ユキジが戻ってきた。
「佐助ェ! 無事かァッ!!」
「だ、旦那……総大将なんだから、もう少し控えめに行動してほしいもんだ」
「まったくだ。変わってないのは、其方も同じみたいだな佐助」
暑苦しく登場するシン・ユキジを前に、佐助もかすがも呆れ果ててしまう。
すると此処で登場したシン・ユキジに一般二次元人たちが注目してみると、何やらユキジの様子が可笑しかった。
何故かユキジは目の前のかすがの姿を直視できず、事もあろうに目を閉じて対峙していたのだ。
「何故目を閉じている!? 馬鹿にしているのか、貴様ッ!」
「こ、これも修練のひとつなりぃッ!」
かすがは目を閉じるユキジに向かって文句を言うが、当のユキジは目を閉じたまま返答する。
そんなユキジを見て、佐助は人知れず思っていた。
(大将も大人になったな……かすがのおっぱいも直視できないほどウブになっちゃってまあ)
露出的な衣装のかすがの曝け出された胸などを直視できず困惑するユキジを見て、穏やかで温かい目でその情景を微笑ましく眺める猿飛佐助。
だが直視できないシン・ユキジに対して、かすがは戸惑いながらも攻撃を仕掛ける。
そこに先ほどの鉄線付きくないで雁字搦めに縛り付けられて動きを封じられていたルーキーズの三組が、ようやく鉄線を解いてかすがに攻撃を仕掛けようと駆け出す。その際、ユキジに投げられたくないも弾き返し、体勢を立て直す。
「お前たち、見慣れぬ顔ぶれだが……聖龍隊か?」「そうだ!」
かすがの問い掛けにシルバー・クロウが答える。するとかすがは聖龍隊新人三組に迫る。
と、其処に本隊がロシア陣地から戻ってきて、味方本陣の防衛に加勢する。
「慌てるな! つぶさに戦況を報告せよ!」
味方本陣を攻めていたロシア兵は、事細かく戦況を報告し合うよう味方兵に伝え合う。
と、ここで聖龍HEADが本陣に戻ってきた。
「聖龍隊! 本陣を攻撃しているロシア特殊部隊を倒せ! ……ただし殺すなよ」
「あの後ろ姿に付いて行くだけで、何か安心するよな……」
メタルバードの指示を聞いて動く聖龍隊士は、HEADの後姿を眺めてはその圧倒的信頼感に朧ながらも安心感を覚えていた。
HEADの到着に対し、ほとんどのロシア兵士が撤退する中、そんな兵士たちにケンノフスキーが慈悲にも似た眼差しで言葉を掛ける。
「おまえの戦ぶり、見届けましたよ」
慈悲深いケンノフスキーの言葉を受けて、撤退するロシア兵士は絶えずかすがと戦闘を続ける佐助を見て呟いた。
「あれだけの腕前なら、さぞや高給取りなんだろうな……」
だが実際、佐助の給料が低い事はロシア側には知られていなかった。
「おたくら運が悪かったんだよ……あきらめな」
既に始末した特殊部隊の亡骸を見据えて、猿飛は冷たい眼で物言わぬ死体に声をかける。
無情にも敵を始末する猿飛佐助に反し、聖龍隊と赤塚組は国際的な問題にまで発展を恐れ、命まで奪う事は躊躇してしまう。
そんな聖龍隊にロシア兵が発砲しようとしているのを、猿飛佐助は見逃さず、大型手裏剣を振るって狙撃隊を一掃してしまう。
「へへ……見てたかい、HEADの旦那がた」
ロシア軍の狙撃隊が狙っていた聖龍HEADに佐助は自慢げに語ると、メタルバードが呆れた顔で言い返した。
「まったく、お前と来たら……まあ、もう何も言わねえよ」
忍らしく躊躇いなく敵を殺傷できる猿飛佐助の働きを買い、メタルバードはそれ以上何も言わなかった。
[苦悩する忍]
本陣に戻ってきた聖龍HEADは、突如襲撃してきたロシア軍の真意を知るために、かすがに問い掛ける。
「かすがさん! なんでロシア軍は私たちを……?」
「ケンノフスキー様は、今は誰との接触も拒んでいる……ゆえに国境は我が軍が完全封鎖している!」
セーラーマーキュリーの質問に、かすがは正直に答える。
「ケンノフスキーはなんで足正派に下った!?」「そんな事……私の知る故ではない」
国将軍ケンノフスキーが何ゆえに足正派に下ったのか問うキング・エンディミオンの質問に対し、かすがは忍である自分が知る由ではないと質問自体を撥ね返す。
するとミラーガールが投げ付けてくるミラー・シールドを回避しながら、かすがは己の苦悩を自然と打ち明け始めた。
「あの御方は……ケンノフスキー様は変われてしまった。モウ・コダイが病に伏せってから、毎日神仏に祈祷するばかり。そんなある日、突如として起こった現政奉還、そして足正義輝の威光……ケンノフスキー様は足正義輝によって変わられてしまったのだ!」
「…………」
相思相愛の仲であるケンノフスキーとかすがの間に割り込んできた、好敵手モウ・コダイの病身と現政奉還を起こした足正義輝の威光によって愛するケンノフスキーの心境を一転させてしまった現状に苦悩するかすがの想いを知って、HEADの女性たちの胸も締め付けられる。
「私はあの方を想い続ける……ゆえに、忍として戦い続ける。この想い、同じ愛に生きている貴様達にも解る筈だ!」
想い続けるが故に忍という道具のまま戦いに身を投じ続ける自身の心境を、同じく愛の為に戦ってきた聖龍HEADにも説くかすが。
すると、そんなかすがの悲痛な苦悩を聞いたミラーガールが悲しい表情で己の考えを語った。
「……そうね、愛する人の心境が突然変わると動揺するし、戸惑っちゃうわよね……私も同じだった。自分の、いいえ、皆の理想の為に奔走するが為に度々考えや行動を変えていった修司の言動にいつも振り回されていたわ」
「ミラーガール……」
ミラーガールの話に、かすがも耳を傾け始めた。
「……でも私はそれでも修司を信じ続けたわ。いつか思い描いた理想が現実になる事を……人の夢や理想が現実を変えてくれる、その日を……!」
「…………!」
「だから、こんなこと言うのも可笑しな話だけど……かすがさん、貴女は貴女の信じた人に付いて行きなさいよ。なんでケンノフスキーが将軍の軍門に下ったのか私にも理解できないけど、きっと何か特別な理由があるからよ」
「そ、そんなこと……言われなくても、解ってる!」
優しいミラーガールの慈愛に満ちた言葉に対しても、あまり素直にはなれないかすがは強く撥ね返してしまう。
「愛を知っても忍は忍……貴様らを逃がす訳にはいかない……」
ケンノフスキーへの愛を貫き通しながらも、忍として敵方を逃がさないと唱えるかすがはミラーガールやセーラームーンに手裏剣を投げ付け攻撃。かすがからの攻撃をミラーガールは盾で、セーラームーンは咄嗟にバリアーを張って回避する。
此処でかすがはケンノフスキーへの忠誠を果たそうと思わぬ失態を犯す。なんと気づけばロシア特殊部隊は壊滅に追い込まれ撤退した後であり、戦場で戦うロシア軍は自分だけになっていた。
「かすが、いつもの貴女らしくないじゃない? 軍神の想いが将軍に独り占めされて妬いてるの?」
「ち、違う! 私は、いつもの私だ……私なんだ……」
焦り出すかすがに語り掛けるミラールだが、己の真意を突かれたかすがは激しく動揺しつつも彼女の射撃に応戦する。
激しいかすがとの攻防戦に立ち止まってしまう新人三組を見て、メタルバードが彼らに声をかける。
「お前たち、あのかすがに……この戦に恐れを抱いているのか」
「………………」
新人三組の目を見つめて、メタルバードは彼らが戦に対して恐怖心を抱いているのを感じ取ると新人達に言った。
「それでいい……戦いに恐れを抱かない奴は、それこそ異常者だ」
恐怖を感じない者こそ異常な存在だと説くメタルバードは、さらに衝撃的な発言を述べた。
「……あの修司みたいに、戦いに恐怖を感じなくなったら危ないと悟れ」
メタルバードは新人達に恐怖を感じなくなったら自身の精神状態を危惧しろと述べる。
一方、かすがとの戦場に命じられたが故に出撃するシバ・カァチェンが前に出る。
「お前は……確か台湾将軍に任命された……」
「如何にも……許しがたき事実だが、私が台湾将軍のシバ・カァチェン。貴方を退治せよとの命を受けている……悪いが、ここで果ててくれ」
「フンっ、話に聞いていた通り、薄気味の悪い男だな! 何よりも将軍としての威厳すら感じさせないとは……よくも台湾の軍はお前を将軍に任命したもんだ!」
「申し訳ないが、憐みなら不要だ……それはこの現実を毛程も変えはしないのだから……」
憐みを掛けてくるかすがに、カァチェンはその感情は自分には不要だと返しながら両者は刃を交える。
と、ここで再びミラーガールたちHEADの女性たちが、かすがに訴える。
「待って! 私達はただケンノフスキーと話がしたいだけなの!」
「お願いです、かすがさん! 会わせてください」
七海るちあや宝生波音が訴えるが、かすがの想いは変わる事はなかった。
「あのお方の想いに応える……それだけが私が成せる生き様だ!」
この様子のかすがを見て、猿飛佐助がぽつりと呟いた。
「まったくあいつは……ま~~た感情的になって周りが見えなくなっちまってる」
感情的になる余り、周りに目が行き届いていないかすがの状態を見た佐助は呆れ返ってしまう。
そんな感情的になるかすがは、さらに聖龍HEADの女たちに訴え返す。
「愛に生き、愛に死ぬ……この切なる想いは、貴様らにも理解できる筈だ」
「……!」
愛の為に戦い続ける聖龍HEADの隊士たちは、かすがの切なる想いに衝撃を受け、何も返せなくなってしまう。
「早く終えて、あの方の鞘に戻りたい…………」
かすが自身も、一刻も早くケンノフスキーの傍らに戻りたいと切に願う。
一方で、かすがは猿飛佐助やシバ・カァチェン、そして他の聖龍隊士と戦っていたため激しく体力を消耗してしまってた。
「軍神のつるぎは、膝をつかないっ……!」
既に感情に熱がこもっているかすがは痩せ我慢をし、息を切らしながらも周囲を取り囲む敵対する者たちと対峙する。
するとその時、ケンノフスキーからかすがに指示があった。
「もどりなさい、うつくしきわたしの宝具……しとやかに愛でられることもまた、そなたのつとめです」
「……承知致しました、ケンノフスキー様……どうかご武運を! 必ずや無事に戻り、この私を……!」
この指令にかすがはケンノフスキー本人が戦場に出る事を察し、彼に対して武運を祈りながら命令通り撤退する。
かすがが姿を消したその時、ケンノフスキーが待ち受けるロシア国境警備隊本陣への橋が開通し、道が開けた。
「おお……橋だ! 我らは迷いに打ち克ったのだぁッ!」
目の前に掛けられた戦場の橋に、モンゴル兵の士気が一層と高まる。
モンゴル兵に続いて、聖龍隊までも活気づく。
「いいかみんな! 生きて帰りたいなら、前に進め!」
ロシアとモンゴルの国境橋が渡された現状に、メタルバードも一安心する。
「これでようやく軍神と対面できる。だがみんな、気を抜くなよ! 相手はあの軍神だ!」
メタルバードの一喝を胸に刻み、聖龍隊は赤塚組・モンゴル軍と共にロシア本陣へと進軍する。
「時代と世界は聖龍隊を選んだ……みんな、この乱世終わらせて必ず生きて帰るぞ!」
「おおッ!」
聖龍隊士の月野進悟が仲間の隊士たちに呼びかける。進悟の呼びかけに隊士たちも応え出る。
こうして全軍、ロシア将軍ケンノフスキーが待ち構えるロシア国境警備隊本陣へと橋を渡って進軍した。
[冷たき軍神]
「まずは聖龍隊式の挨拶だ! キリト、シルバー・クロウ、まどか! カァチェンと一緒に軍神に挨拶してきな」
メタルバードの発言に、軍神と恐れ多いケンノフスキーと対峙するのを拒む新人ら。それに対してカァチェンは半ば諦め状態で表情を無くす。
「大丈夫だ、いざって時はオレが間に入って代わりに軍神と戦う。知らない相手と刃を交えてこそ、戦士は成長できるってもんよ」
「は、はぁ……」
敢えて新人達を成長させるために出陣させるメタルバードの考えに、シルバー・ロウ達は呆れ返ってしまう。
だがロシア軍本陣に足を踏み入れた、その時。
突然の凍て付いた突風が一行を襲う。
「うっ……!」
肌を凍て付かせる程の冷風に思わず肩を抱き寄せて寒さを凌いでしまうキリト達。
そんな彼らの前に、一人の凛々しい顔立ちに狐の様な吊り目から鋭い眼光を放つ細身の軍神が、腰に長刀を携えて現れた。
「このせかいに、いくとどなくくりかえされる選定の儀……」
混沌の世界に幾度となく繰り返される日々を思い返しながら、軍神は長刀を抜刀して言い放つ。
「いざとわん! そなたは真の主なりや!」
神速聖将 ケンノフスキー 出陣
凍て付いた冷風を身に纏うかの如く、冷たい強風と共に現れたケンノフスキーは自軍の妨害を乗り越えて自身の許まで辿り着いた一行に言う。
「ふふ、のりこえしものたちよ……宝具ならぬこのみで、そなたたちの意志にむくいん!」
自らが与えた試練を乗り越えた一行に、宝具に代わって突破者たちの意思に報いようと唱えるケンノフスキーの言葉に、メタルバードが話し返す。
「おい、ケンノフスキー。なんでこんな真似をした? オレ達が単に進軍してる訳じゃなく、話し合いに来たって事ぐらい、お宅の忍たちなら既に情報を得ているだろ」
するとケンノフスキーの傍らに、先ほど彼の指示で撤退したかすがが姿を現し、それと同時にケンノフスキーはメタルバードの話に返した。
「ふふ、ふうじんよ……いまのじょうせいでは、どの国の軍も殺気だっているのです。現に、われわれロシアぐんに攻撃してきたならずものも多数捕縛しています」
「そうか。それで国境の警備を厳重にしていたのか……それでも、なんでオレ達まで攻撃してきやがった? オレ達は敵同士じゃないんだぞ」
現政奉還の煽りを受けてロシアに攻撃を仕掛けてきたテロリストの存在ゆえ、国境の警備を厳重にした理由を知ったメタルバードは何ゆえ自分達までも攻撃対象に入れたのか軍神に問うた。
「それも今は昔のはなしです……今のわたしは、帝にこの身を捧げたてまつったのです」
「あくまで将軍の側に徹しているって考えか! その帝は、なんでまた現政奉還なんて無粋な真似をしやがったんだ!?」
今生の自分は帝たる足正義輝公にその身を捧げたと自負するケンノフスキーの言葉に、今度はその将軍が如何なる理由で現政奉還を起こしたのか軍神に問うた。すると軍神は不思議な事を発した。
「すべては……まよえる子羊をみちびくため……」
「迷える子羊だぁ? ……悪いが、オレはあんたほど信仰深くないんでね。説教なら、また別の機会に聞かせてくれ」
ケンノフスキーの言葉を聞いて、メタルバードは信仰深いケンノフスキーに説法ならまた別の機会にでも聞かせてくれと言う。するとケンノフスキーは眼を鋭くさせて長刀に手を翳した。
「なら……ためしてみますか? 煩悶をのりこえたわたくしと、変わらぬ信念をつらぬきとおす貴方がたの想い……どちらが重く、気高いか……」
「腕試しって事か……やっぱりそうなっちまうか。修司が築き上げてきた時代ゆえ、猛者たる者に平穏は訪れないって事なのかもな……」
結局、刃を交わらせる事しか進む道は無いと結論付く両名。これもまた、かつての相棒小田原修司が築いた時代ゆえなのかもしれないと気落ちするメタルバード。
「いい機会だ、新人! 軍神に手合せしてもらいな。それからカァチェン、お前も闘ってみろ。何かを掴めるかもしれねえ」
「ふふ、そなたもまた……みちびくものなのですね」
新人達にシバ・カァチェンを成長の為に敢えて戦わせるメタルバードの思考に、ケンノフスキーは自分を導いてくれる将軍と同じくメタルバードもまた導く者だと説く。
「そなた達にわたくしの剣がうけきれますか?」
そしてケンノフスキーはメタルバードに言われるがまま対峙する新人三組に向けて剣を振り払った。
「しん・てん!」
神の天と掛け声を放つと同時に目にも止まらぬ速さで刀を居抜いたケンノフスキーの青白い斬撃が三組を襲う。
「うわッ!」
キリトたち三組は斬撃に吹き飛ばされて後方へと転倒してしまう。
だが、彼らを驚かせたのはケンノスキーの斬撃だけではなかった。「……! 手が……!」武器を手にしていた手が、武器の柄ごと凍て付き始めていたのだ。
(氷の属性を持つ長刀を目にも止まらぬ速さで抜刀し、その勢いで凍て付く斬撃を振るう……相変わらずの手腕だな)
メタルバードはキリト達の手を凍て付かせたケンノフスキーの凍て付く斬撃を目視して、彼の腕前が二年前より変わっていない事を察する。
「どうしたのです? わたしを武神としって、さえぎっていたのでは?」
武器を持つ手を凍らされ、動揺して動けなくなるキリト達に軍神が語り掛けるが、未だ武器を持つ手が凍て付いてしまっているため、いやそれ以上に軍神の力量に新人達は愕然としてしまい完全に戦意を失ってしまってた。
すると、そんな戦意を失ってしまったキリト達の後ろから、一人の青年が前へと踏み入れる。
「か、カァチェン……」その青年は台湾国将軍のシバ・カァチェンだった。
「ほう、あなたは……」「……シバ・カァチェンです。以後、お見知りおきを……」
ケンノフスキーが訊ねると、カァチェンはいつもの如く暗い反応で返事する。
するとケンノフスキーから意外な返答が返ってきた。
「あなたとはかつて、やいばをまじえましたね」
「……憶えていましたか……我が残滓、穢れた過去の魍魎を」
「おっ、カァチェン。お前さん何だ。軍神と過去に戦った事があるのかい?」
ケンノフスキーから過去の対峙した時の出来事を告げられ、カァチェンはそんな自分の過去を穢れた過去の魍魎だと説く。そんな二人の会話を聞いて、メタルバードが二年前の乱世で両者が戦った事があるんだなと自然に察する。
と、ここでカァチェンが
「全てはバーンズ氏の命がゆえ……貴方様と戦わせてもらいます」
「よろしいでしょう。かこの暗きあなたと、いま一寸のひかりに導かれしあなたが如何にちがうか……この軍神が確かめてさしあげましょう」
「こんな私如きがために……実に畏れ多い事です……」
カァチェンの
最初は
するとカァチェンの危機とは別に、決闘を聞きつけて後方で待機していたシン・ユキジとその側近猿飛佐助が本陣に馳せ参じた。
「カァチェン殿! 大丈夫でござるかぁああッ!?」
「大将! ここはあくまでも、もうロシア陣営なんだし、大人しくしてろって!」
二人を見たケンノフスキーはカァチェンと闘いながらも微笑んで二人を迎え入れた。
「モンゴルのわかきとら、そしてモンゴルがしのび……そなたたちもげんきそうですね」
「私と死闘を展開していると言うのに他者にまで気をかける……それは慢心か、いや、貴方様の場合は余裕なのでしょうね」
決闘を続けながらユキジと佐助に気を止める余裕を見せるケンノフスキーを前にして、カァチェンは少し苛立ちにも似た感情を覚えた。
「ケンノフスキー殿! お二人の決闘の邪魔をして、誠に申し訳ないが……このシン・ユキジ、いづれ母国モンゴルを背負って立つ身の……カァチェン殿の次でも構わぬ! 某とも一戦手合わせしてもらい隊でござる!」
「な……何を言っているんだ、貴様は! ケンノフスキー様は多忙なお方、この後もやらねばならぬ職務が……!」
「……べつにかまいませんよ、なんなら聖龍隊の新人もふくめ……全員でわたしに挑みかかりなさい。そのほうが時間もとりませぬゆえ」
「け、ケンノフスキー様!?」
「ふふ、心配いりませんよ。わたくしのうつくしきつるぎ……煩悶をこえたわたしに、もはや死角はありません」
カァチェンの次には自分も手合わせして貰いたいと嘆願するユキジにロシア軍が忍かすがが反論するが、ケンノフスキーは煩悶を乗り越えた自分には死角なしと、何と聖龍隊の新人たちを含めて全員で挑みかかっても良いと真顔で語る。
これ聞いたユキジは一心不乱にケンノフスキーへと突っ込んでいった。
「おぉおお……! ケンノフスキー殿ぉッ! いざァ、勝ォォォ負ッ!!」
「やれやれ、あの軍神なにを考えているんだか……」
熱血に特攻するユキジに反して、佐助は軍神の考えを理解できないままユキジのフォローに付く。
(多くの者と刃を交えながら、この御方は全ての問いに応えている……? まるで万民の声を聞き逃さない御仏だ……)
自分とケンノフスキーの決闘の間にユキジと佐助が乱入してきた事態に、カァチェンはケンノフスキーが闘いを通じて全ての声に応えているかの様に感じ入る。
「そなたがとらのたましいをしかとうけついだそのときは……わたくしはそれをうれしくおもいますよ」
「こ、このユキジ……光栄の到りッ!!」
モンゴルが大虎モウ・コダイの意志をユキジが受け継いだ時は自身も嬉しく思うと語るケンノフスキーに、ユキジ自身も光栄の限りであった。
「若き日のあなたさまも、きっとこのような……ふふ」
一方でケンノフスキーの方も、好敵手であるモウ・コダイの若き日々もまた今のシン・ユキジの様だったのではないかと妄想を膨らませつつ、攻撃を受け止める。
しかし物静かに対決するカァチェンや熱く二槍を振るうユキジ達とは反対に、佐助は冷徹に大型手裏剣を本気でケンノフスキーに直撃させる勢いで言った。
「あんたはかすがに枷を……いや、聞かなかった事にしてよ」
「そなたも優しき忍なのですね……ふふ」
忍にとって、いや人にとっても枷である愛情を同郷の忍に与えたケンノフスキーに反論しようとするが止める佐助に、ケンノフスキーは佐助自身もまたかすが同様に優しい忍なのだなと微笑む。
[軍神の本心]
煩悶を乗り越えた軍神の強さは、もはや二年前の乱世以上の実力で、既に聖龍隊の新人隊士たちはボロボロに打ち負かされて撤退していた。
一方でシバ・カァチェン、シン・ユキジ、猿飛佐助の三名は三対一という圧倒的有利な数で挑むが、ケンノフスキー相手に掠り傷一つも付けられなかった。
「はぁ、はぁ……つ、強い……!」
「悩みも、何もかも吹っ切れた強みってのが此処までとはな……」
予想以上の強さに思わず息を切らしてしまうユキジに対し、佐助はケンノフスキーの強さの根源が煩悶すなわち凄まじい悩みが解けた事だと推測する。
体力が消耗しているユキジや佐助同様に、カァチェンもまた消耗していた。
「あなたはもうひきなさい……いまのあなたでは、わたくしをたおすことはできませぬ」
慈悲の精神からカァチェンを見逃すケンノフスキー。だがカァチェンの方は納得ができなかった。
「私は、貴方のように慈悲深くは慣れない……存在としての器が違い過ぎるのだ……」
膝を着いていたカァチェンは立ち上がると、再び軍神に向かって歩き出した。
せめて一太刀でも。少しでも自分を変えたいカァチェンは、己自身を変えるために敢えて軍神に挑み続ける。
「おろか……武神としってさえぎるか」
次の瞬間、ケンノフスキーは素早い踏み込みでカァチェンの目前まで迫り、刀に手をかけて抜刀の構えに入る。一瞬の出来事にカァチェンも他の誰もが何もできなかった。
そしてケンノフスキーが抜刀した瞬間、青白い閃光が辺りを包み込む。多くの者がカァチェンがケンノフスキーの抜刀で斬られたのかと思い、そっと瞼を開いて確認してみた。
するとカァチェンとケンノフスキーの間にメタルバードが高速移動して割り込み、カァチェンに振り付けられる抜刀を鋼の体で受け止めた。
「バーンズ、氏……!」「カァチェン、良くやった! あとはオレに任せてくれ」
突然のメタルバードの乱入に目を丸くして驚くカァチェンに、メタルバードは事の一任を引き受ける。
そしてカァチェンを後ろに下げさせたメタルバードは、まっすぐな瞳で眼前の軍神に言った。
「久々だな、こうしてアンタとオレで対峙するのは……」
「ええ、あのときは鬼神もあなたさまの傍らにいらっしゃいましたが」
過去にケンノフスキーと初めて対談した時は、メタルバードは鬼神と恐れられる小田原修司の側近として対談した。
そんな過去の話題など毛ほども気にしてない様子で、メタルバードからケンノフスキーに語り掛ける。
「お前さんの意図を知りたい。なんで将軍なんかに……まさかとは思うが、なにか弱みでも?」
するとメタルバードからの質問にケンノフスキーは微笑を浮かべて平然と答えた。
「ふふっ、風神ともあろうおかたが……とんだ考えちがいですね」
「……?」
「……わたくしは、みちびかれたのです。帝であらせられる足正公がわたくしを、いやこの混沌たる世界をみちびいてくれるのです」
「導くって……何をだ?」
メタルバードが再び問うと、軍神は長刀を抜き取りメタルバードに言い放った。
「それをしりたいのですか、ならば……あなたさまの鋼鉄の体に教え込んでさしあげましょう」
次の瞬間、ケンノフスキーは一瞬でメタルバードを斬り付けた。
「ッ!」「バーンズ!」
鋼鉄の体とはいえ、鋭い一太刀に衝撃を覚えるメタルバードに仲間たちが呼びかける。
「ッ……なるほど、お前さんへの疑問は…………刃を交えなきゃ解らねぇって事だな」
「ふふ、いかにも。それ以前にあなたさまとは決着をつけたいとおもっておりました。わたくしの神速、そなたの速さ……どちらがすぐれているか」
「良いだろう、オレも興味を抱いてた。アンタの神速とオレの速さ、どっちが上かってのをな!」
言い合いになった二人は、どちらの速さが上なのか勝負を付ける事に至った。
「ていやっ」「このッ」
目のも止まらぬ速さで抜刀するケンノフスキーの居合切りを後ろへとかわしたメタルバードは、そのまま飛び上がり上空からケンノフスキーを攻撃し始めた。
「っ!」上空からの全身を用いた体当たり戦法に、ケンノフスキーは長刀を構えて防御する。
その後もメタルバードは誰の目にも止まらぬ速さで飛び続け、空中からケンノフスキーへと攻撃を仕掛ける。だがケンノフスキーも誰の目にも見えない筈のメタルバードの動きを鋭い洞察力と気配のみで察知し、彼の攻撃を全て見切って回避するか刀で防ぎ切ってしまう。
そんな凄まじい攻防戦を間近で見せられ、一般の二次元人たちは息を呑んでしまう。
「す、凄い……!」「バーンズさん、全然見えないのにあの人、全部の攻撃を防いじゃってる」
上空からの俊敏な攻撃を全て長刀一本だけで防ぎ切ってしまうケンノフスキーとの攻防を目撃して、新世代型の
そんな中、己の攻撃を全て長刀のみで防ぎ切ってみせるケンノフスキーにメタルバードは突撃を繰り返しながら語り掛けてきた。
「軍神、お前さんが将軍の側に付いたのは……多分モンゴルの戦神の事だろ?」
「…………………………」
「こいつはオレの憶測だが……お前さんはライバルでもあるモウ・コダイの病身に現実を生きる気力ってのが少しばかり無くなっちまったんじゃないのか? そんな時に現政奉還が起きてしまい、やむを得ず自らも武器を取って再び乱世に明け暮れる日々。だがそんな折、どういう接触の仕方かは解らないが足正義輝から何らかの呼びかけがあったんじゃないのか? ……何を言われたかは知らないが、このままじゃいづれオレ達は……」
「……ふふ、あなたさまはいつも勘がするどい。それもテレパシーとやらで、ですか?」
「いやいや、そもそもお前さんたち三次元人がオレら二次元人のテレパシー能力に制限かけて、三次元人の思考だけは読み取れなくしちゃってくれちゃっているじゃない? ……ただな、オレ様は今まで色んな人間と対峙してきた。あんたら三次元人も含めてな……すると自然と、相手が何を考えているのか勘で解っちまうようになっちまっただけだ」
「それもまた……テレパシーのおちからがある二次元人の成せるわざ……」
「いいや、テレパシーとは違う。まあ、テレパシーの様に人の考えが解るからこそ、対峙しただけでも相手の考えが少しながら理解できちまうのかもしれねえ」
「なるほど…………よくわかりました、風神よ」
次の瞬間、激しい攻防を展開していた両名の動きは止まった。
メタルバードは地面に着地して、ケンノフスキーは居抜いていた長刀の動きを止めた。
「諭さずには居られぬ……恐らくそれが、あのお方なのだ」
相手と刃だけでなく言葉も交えなければ理解し合えないのがケンノフスキーだと、闘いを観戦していたロシア兵がポツリと零す。
一方の両者は、メタルバードは全身がボロボロで、ケンノフスキーの長刀は酷く刃こぼれしているのが目視できた。
「あいかわらずお強いですね……剣がざわめくほどに」
「それはこっちの台詞だよ。二年前と変わらず速い太刀筋なもんで」
ケンノフスキーが称える一方、メタルバードはケンノフスキーを皮肉混じりの台詞で返す。
「しょうぶはおあずけということですね」「そういう事だ」
互いに勝負を一時休戦にする事で闘いを止めたケンノフスキーとメタルバード。
そしてケンノフスキーは語り始めた。
「モンゴルのとらが病に臥せって以来……たしかにわたくしの日々はものたりなくなってしまいました。まるで心のなかに、おおきなスキマができたかのごとく」
「………………」ケンノフスキーの話にメタルバード達は黙って耳を傾ける。
「しかし、そんなあるひ……この現政奉還がとつじょとしておきました。風神どののおっしゃるとおり、わたしは無気力のまま戦場をかけめぐりました。だが、そんなある晩、帝からつかいのものがやってきたのです」
「帝からの使い……!?」
剣帝、足正義輝公より使者が夜中にやってきたというケンノフスキーの話に違和感を覚えるメタルバード。
「わたくしは帝の御心にあつく感銘をうけました……しかしみかどは、いまの活気のない今生の世を妬み、きらっておりまする。ゆえに、己のざにたどり着くものを未だ待ち望んでおられるのですよ」
「要するに義輝公は、自分が座する国連総長……全ての世界を統治する座に誰かが上り詰める事を望んでいると言う事だな」
話に耳を傾けるキング・エンディミオンが問うと、ケンノフスキーは自然な面差しで答えた。
「そうです。みかどは、かんだいなおこころをおもちでありながら今の世をなげきかなしみ、みずからのざをてばなしたのです」
「それは問題ね。心無い人間が将軍の座に居座っちゃったら、それこそ世界中が混乱しちゃうわ」
「ふふ、聖女よ。すでに世界はこんとんのよ……あなたがた二次元人があらわれた時から世界は混沌と化しているではないですか」
「っ……」
将軍の座に心無い人間が居座れば、それこそ混乱の一途を辿ると語るミラーガール。そんな彼女にケンノフスキーは既に二次元人が世界に出現して以来、今生の世は混沌と化していると真理を述べる。
「しかし、わたくしは寛大なおこころをもつ足正公が将軍である事こそ、せかいの平穏のために必要なのではないかとおもうのです」
「それであなたは、将軍の側に付いたわけなのね……?」
寛大な御心を持つ将軍こそ、全ての世界を統治する国連総長に相応しいと考えるケンノフスキーに聖龍HEADの真紅が言った。
「……どちらにしろ、わたくしの考えはかわりませぬ。帝をしょうぐんの座からおろさぬため、そしてまもるが……わがロシアのえらんだみち」
自身の考えは変えず、足正義輝を将軍の座から死守するのがロシアの選んだ道なのだと説くケンノフスキー。
するとケンノフスキーが現れたときと同じ様に、極寒の突風が現場に吹き荒ぶ。
凍て付く突風の中、ケンノフスキーは最後に言った。
「聖龍隊よ。こんどあう時、わたくしたちは敵同士……それをお忘れなく」
そう言い残したケンノフスキーは、白い突風に身を隠すようその場を去っていった。
[先の行く末]
極寒の白い突風と共に去っていったケンノフスキーとかすがを前に、一先ずロシアとモンゴルの国境に戻った聖龍隊一行は談話に入る。
「さて、あの様子じゃロシアはオレ達の味方にはなってくれそうもないし……どうしたもんかね?」
「バーンズ殿! 我らモンゴル軍騎馬隊の底力と聖龍隊の軍事力を持ってすれば、如何なる敵とも撃破して見せましょうぞ!」
「馬鹿言うな! オレ達は何も戦いを好んで行動している訳じゃないんだぞ」
メタルバードとシン・ユキジが語り合っている中に、今度はモンゴル軍が忍、猿飛佐助がメタルバードの言い分に物申す。
「だけどよ、バーンズの旦那。もうロシアだけでなく、何処の国も国連総長の座が欲しくって戦争の準備を着々と進めているぜ。なんせ、この世界だけでなく異世界の実権すら握れる可能性があるんだものな。国連総長の座ってのは」
「し、しかしだな……」
「此処はもう、話し合いでの解決の前にお宅らの武力で相手の頭を冷やしてやってから談合した方が良いんじゃないの? ウチらだって、お宅の新入り達が進行して来た時はそうして出迎えたんだから」
「…………………………」猿飛佐助の楽観的にも取れる発言にメタルバードの口は噤んでしまう。
そしてしばし黙り込むメタルバードに新世代型の真鍋義久が声をかける。
「……ば、バーンズ……さん…………?」
真鍋の声にメタルバードは不意に思い出す。自分達は物事を平和的に解決する為だけに進軍している訳ではない。新世代型二次元人の共有感知を抑える術を見出し、更には彼ら同様にシバ・カァチェンにも心の変化を促して欲しいという、メタルバードだけでなく聖龍隊古参のHEADメンバーの切実な願いを。
自分達の旅の目的を改めて思い返したメタルバードは、意を決して言葉を発した。
「……よし、ユキジ! お前さんはこれからどうしたい?」
「そっ、某は…………実を申しますと、某はもう行く行くモンゴルに引き返そうと思い至りまして……な、なにも聖龍隊の方々と同盟を組んで同行するのが嫌になったわけではありませぬ! 以前にも拙者は基地を空けていた為に賊に奇襲されて占領されてしまった経緯がありまする。あの時は佐助にも手酷く叱られたのも堪えましたし、それ以上に己の未熟さに痛感いたした次第。故に、そろそろモンゴルに帰還し、腰を下ろしておかなければなと思いまして……」
「偉いっ! よく其処まで物事を考えられるようになったもんだな、大将!」
メタルバードからの質問に、ユキジは母国モンゴルの基地に帰還して今度こそ失態の無いよう腰を据えて待機していようという真情を包み隠さず打ち明ける。それに猿飛佐助は思わず拍手しながら喝采を送る。
このユキジの考えにメタルバードも同意した。
「その通りだな。オレ達のほうは国の守りがしっかりしているが、そちらさんは前将軍のモウ・コダイが病身ってのもあって未だ国の基盤が緩んだまま。代行とはいえ、国将軍のお前さんがいつまでも国を空けていたんじゃ示しが付かねえだろうし……ここらで別行動とするか」
自らの考えに同意してくれたメタルバードにユキジは礼を申す。
「あ、ありがとうございまする! ……で、バーンズ殿はこれからどちらへ参るのでございまするか?」
シン・ユキジにこの先何処へ向かうか問われたメタルバードは、一瞬ばかし考え込んで即決で行く先を決めた。
「オレ達はこれから中国、漢族の領地に赴くつもりだ」
「か、漢族! それでは、バーンズ殿はマァスン殿に御会いに行かれるのですか!? それでしたら是非、某も……!」
「バカチンがッ! さっきと言っている事違うだろッ。……確かにお前さんとマァスンが宿命の間柄ってのは前々から知っているが、だからと言って自国を空けておくなんて無粋な真似はすんじゃねえ! お前さんは、さっき自分で言ってた通り母国のモンゴル軍を統治してろ。ここは自由に動けるオレ達がマァスンの所に出向いてやる」
「こ、心得た……済まぬ、バーンズ殿。では某はこれにて! マァスン殿に会ったら宜しくと御伝えください」
行く先を聞いた途端に考えを改めるユキジに一喝されるメタルバードの話を受けて、ユキジは大人しく聖龍隊と離別し、母国モンゴルへと帰還していった。
「まっ、ウチの大将らしいけどね。あの竜の事になると周りが余計に見えなくなっちまう悪癖は……」
こう帰り際に語る猿飛佐助は、聖龍隊にある情報を言い残した。
「所でお宅らは聞いているかい? あの片目の竜が自らを王だと名乗り始めたって話を……」
「王、ですって……?」猿飛佐助の言葉にミラールが表情を一変させる。
「ああ、自称“竜王”って名乗り出したみたいだぜ。前々から吹っ飛んだ思考の持主だと思ってはいたが、現政奉還が起きた途端に竜王だなんて名乗っちまうだなんて正気の沙汰じゃない」
「独眼竜はそんな王だとか名乗って万民を威圧するような人柄じゃないの……どういう風の吹き回しかしら?」
ミラールが佐助の話に物思いに耽っていると、同じく佐助の話を聞いたメタルバードが変身を解除してバーンズの姿で言った。
「それは本人に直接会って問い質した方が早いと思うぜ。ついでだ、軍も少し編成し直そう。アリババとかリクオとか、自分の配下や領地に目を向けなきゃならない連中も多い事だし、一旦解散させた方が良いんじゃないか」
「それは私も思っていたところ。成るべく少数精鋭で動いた方が得策だし、みんなにはみんなの護るべきものが存在しているのも理解しているつもりよ」
バーンズの考えにミラールも同意すると、ルーキーズの仲間たちがミラールに言った。
「分かった、ぼく達は元居た世界に戻って混乱を成るべく抑えておくよ」
アラジンの発言を皮切りに、他のルーキーズメンバーも口を揃えて言った。
「それじゃあ、オレ達も一旦シュテルンビルトに戻って治安を抑えて置くわ。もう何週間も帰ってないし、どうなっているか気になってたところだしな」
「私も用事があるから一時アニメタウンに……なあに、また戻ってくるわ」
「オレ達も一旦帰るとするか! この世界の武人と一戦交えたいとは思うが、元居た世界も心配だしな」
「おれらも、また暴走する物語が起きていないか確認するためにアニメタウンに戻っとくわ……」
「ぼ、ボクも……何だかアメリカが大変そうだし、そろそろ帰ってヒーローマンと治安の維持に取り掛からないと」
「アタイもちょっくらアニメタウンに帰って色々揃えておきたいし……ここらで別行動するわ」
「オレ達はデジモンワールドがどうなっているか視察してきます! ……先輩の大さんが聖龍隊にも居ない今、オレ達で少しでも平和を取り戻さないと」
「それじゃ、オレ達も一時的に離れるとするか……また用があったら呼んでくれれば駆けつけるからよ」
「僕達もちょっと聖龍隊を離れておきます。それじゃミラール総長、あとは宜しくお願いします」
ワイルドタイガー/鹿島リン/ナツ・ドラニグル/岩崎月光/ジョーイ/葉月いずな/工藤タイキ/日ノ原革/シンク・イズミたちはそうミラールに伝えると、それぞれ在るべき所へ戻っていった。
「お、オレ達は……?」
一方の新人組であるキリトら【SAO】【AW】【マギカ】の三組に続いて、聖龍隊に一時的に身を預けているシバ・カァチェンが物申した。
「あ、あの……私もまた、厄介払いなのでしょうか……」
新人組にカァチェンの言葉を聞いたバーンズは、真顔で三組と一人に言った。
「ああ、お前達は帰らなくていいぞ。そのまま聖龍隊本隊に残っていろ」「え!?」
てっきり自分達もアニメタウンに帰られると思っていたのと反し、本隊に残っていても良いと言われて動揺するキリトたち三組。
その三組とは反して、動揺する様子を見せないカァチェンに視線を向けながらバーンズはこう語った。
「相手と戦い合ってこそ、戦士として成長できる糧だ。それ以上に、お前達は三次元界の武将について何にも知らない。此処は一つ、相手と刃を交えて自分の力量を改めて再認識するいい機会だとオレは思うぜ」
「は、はぁ……」バーンズの言い分を聞いて、キリト達は唖然としてしまう。
するとキリト達と同様の事を言われたカァチェンは、不安げな口調でバーンズに申した。
「バーンズ氏……貴方は私にも各地の武将と闘わせる事で、私自身を変えるお考えなのですか……?」
「なあに、心配するな。お前にはオレが付きっ切りで共闘してやるから安心しろ! お前は何も心配するな」
「は、はぁ……」「………………」
付きっ切りで共闘してあげる故に何も心配するなと返すバーンズの返答に、カァチェンは不安げな表情で呟く。が、その反面、何だかカァチェンだけが特別な待遇である事実にキリトは若干ながら不満を覚え始めていた。
一方ところ変わって此処はロシア領地。
聖龍隊と一戦を終えたばかりのロシア軍は基地に帰還する道中に、軍馬に乗馬するケンノフスキーに傍らに付き従うかすがが問い掛ける。
「……あ、あの……ケンノフスキー様…………」
「……? どうしましたか、つるぎ」
「あ、あれで良かったのでしょうか。いえ、ケンノフスキー様の御決断に、このかすがは何も申し開く権限が無いのは解っております! ……ですが、世界を平穏に導くべき国連総長たる剣帝が自ら争いの世を創生してしまったのは、かすがは何とも……もどかしいのであります」
「ふふ、そなたは相変わらず心やさしきしのびですね……だからこそ美しい」
「ああ! そんな……ケンノフスキー様……!」ケンノフスキーに褒め称えられ、かすがは絶頂してしまう。
だがケンノフスキーは冷徹な眼差しを放つ顔のまま、かすがに語った。
「……されど、いまは将軍がために自軍を整えなければまいりません。きたるべき、そのときまで……」
「失礼ながら……その時、と申されますと……」
しかしケンノフスキーはかすがの質問に、疑問に答えてはくれなかった。
「……かすがにも申せない事なのですね。解りました、今は兎に角、あなた様のご納得できる忍として、かすが活躍いたします!」
このかすがの力強い返答に、ケンノフスキーは申し訳なさそうに下を俯きながら呟いた。
「ゆるせ……! いまはしゅらのときなれば……」
[アレンジ(パロディ)武将紹介]
ケンノフスキー
所属:ロシア軍国将軍
出身:三次元界/ロシア
武器:長刀・属性:氷
肩書:
登場時の書き文字:出陣
一人称:わたくし
概要
ロシア軍の総大将。常に冷静で穏やかな雰囲気に反し、「軍神」として恐れられる戦いの天才。
しかし好敵手のモウ・コダイが病に臥せって以降、世界を治めるべきは足正義輝であるという立場を取り、他の軍との対決を先延ばしにしている。
かすが
所属:ロシア軍諜報機関くノ一
出身:不明
武器:くない×8
肩書:
登場時の書き文字:参上
一人称:私(わたし)
属性:光
概要
ケンノフスキーに仕える美しいくノ一。
元々はケンノフスキーを暗殺すべく近づいたのだが、彼の美しく気高い姿に一目惚れしてしまう(このことは佐助からもさんざんネタにされている)。
ケンノフスキーもまた、かすがの美しさに魅入られ、双方の合意の下に主従関係を結ぶこととなる。ケンノフスキーからは「わたくしのうつくしきつるぎ」とも呼ばれ、主従を越えた寵愛を受けている。
ケンノフスキーに心酔しており、ケンノフスキーの懐刀としてつねに付き従いその傍らで戦い続ける。
愛し合う二人の様相ははたから見れば、見ているこっちが恥ずかしくなるぐらいのクサイ寸劇を見せつけてくる。
逆にケンノフスキーが自分以外の誰かと親しげにしていると、老若男女を構わず嫉妬の炎を燃やす。
武田軍に所属する猿飛佐助とは同郷であり、よくナンパのようなちょっかいを出されている。
普段はロシア軍将軍に仕える百人以上の秘書の内の一人を務めており、書類業務に徹している。(この間、彼女はくノ一としての姿とはかけ離れた冴えない女性に扮している)しかし忍としての忍務を負えば、自宅にて忍衣装に身を纏い、夜のロシアを駆け巡る。
性格
つねに毅然としており、他人への態度は基本的に素っ気ない。ただし、ケンノフスキーの前ではデレデレ。
使命感・責任感が強い一方、本来は優しく感情的になりやすいため、決して忍に向いた性格ではない。そうした性分が自身をすり減らし、ときに自らに危難を呼びこんでいることに気づけていない節がある。
容姿
もみあげ部分だけを長く伸ばした不思議な髪形をしている。
衣装は臍部分までばっくりと開けたボディスーツを着用しており、腰部分はメッシュ素材のような網になっていて、早い話がものすごく寒そうな格好。
現在
ケンノフスキーにとっての好敵手モウ・コダイが病に伏せって以降、人が変わったかのように足正義輝の傘下にいる事をもどかしく思っている。