現政奉還記 武将達との会合編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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現政奉還記 アジア諸国巡行編 漢族 清雲城

[支え合い]

 

 ロシア軍国将軍ケンノフスキーと一戦交えた後、かれから自分たちロシア側としては現政奉還を起こした足正義輝の側に付くと宣言を受ける聖龍隊一行。

 その後、聖龍隊はモンゴル軍が国将軍代行シン・ユキジと別れ、中国・漢族が治める領地へと進行していた。

 

 その道中、先ほどのロシア軍の戦闘で感じ取った現政奉還の煽りによる影響を間近で再認識されたバーンズは珍しく気落ちしていた。

「…………もう、平和的に話し合いで解決するのは無理なんだろうか」

「弱音を吐くなんて、らしくないよバーンズ。まだこれからじゃないか」

「ああ、だけどな……いつの世も、オレたち二次元人が争いの火種を世界中に振り撒いちまう。そんな戦火の火種すら消せない二次元人だなんて、どうしようもなく思っちまってな」

「…………………………」

 普段のバーンズからは余り聞かれない彼の弱気な発言に、ジュピターキッドは言葉を失くす。

「………………あ~~あ、何だか自信が無くなって来ちゃった」

「また始まったよ、バーンズの自信喪失」「総長になってから、たまにあるよな」

 聖龍隊総長の座を小田原修司より引き継いでから、時おり見せるバーンズの自信喪失にジュピターキッドもキング・エンディミオンも呆れ果てる。

「だってよぉ、修司の時は上手く行っていたのに、オレの代になってから色々と問題が起きるようになってるし……」

「バーンズ、それはちょっとだけタイミングが悪かっただけよ」

「そうです。修司さんの時は色々と後ろ盾を前もって用意していたから、外交的にも有利に働けていた訳ですし、何も修司さんの力だけで物事が進められた訳じゃないんだから、もっと気をしっかり持って」

 ミラーガールとウォーターフェアリーから言われながらも、バーンズの自信は回復できなかった。

「でもよ、オレが総長になってから、その後ろ盾も徐々に減ってきているし……やっぱ、修司みたいに信頼されてないからかも……」

 修司よりも物事が上手く進まず自身を失い気落ちするバーンズを見て、ミラーガールが彼に渇を入れる。

「もうっ、しっかりしなさい! 昔っから明るくムードメーカーが取り得のバーンズが気落ちしてたんじゃ、私たちだけじゃなく聖龍隊の士気が下がっちゃうわ! バーンズ、何も自分だけで背負い込む事は無いのよ」

「アッコ……」ミラーガールの力説にバーンズは耳を傾ける様になった。

「修司だって全ての物事を自分一人で決めてたから、全部が上手く行っていた訳じゃなかったでしょ。私たち聖龍HEADが相談し合って、より良い街……いいえ、国を造ってきた訳なんだし、これからも聖龍隊の総長は全部を一人で背負い込む事は無いと私は思うわ」

「アッコ、でも……」

「みんなで協力し合ってこそ、より良い社会、より良い世界が築けると私は思っているわ。女王になったセーラームーン、海の女神に昇格したるちあちゃん……二次元界には確かに王や神なんて、とてつもなく凄い人がたくさんいるわ。でも誰だって周りの協力が在ってこそ、自ずと決断できるじゃない。自分一人で問題を抱えないで、もう少し私たち周りを頼って! ……そう、修司以上に」

「アッコ……! ありがとう、少し元気が出たよ。こうなりゃ、できる限りの事はし尽くして見せよう」

「元気になったようね、バーンズ」

 どうにか気持ちを切り替えられたバーンズに、ミラーガールは心から満足した。

 

 するとミラーガールや側近の聖龍HEADに続いて、今度は台湾国将軍のシバ・カァチェンがバーンズに話し掛けて来た。

「……バーンズ氏。貴方様でも、時には悩む事があるのですね……」

 このカァチェンの台詞を聞いてバーンズは当然の如く反論した。

「そりゃ当然だろう。誰だって物事に悩む事の一つや二つはある。どんな人間も、壁にぶつかって自問自答を繰り返さなきゃならない時が少なからずあるってもんよ」

「……もし、その壁に前を阻まれたら……人間はどうすれば良いのでしょうか……」

 カァチェンの薄暗い質問に、バーンズは先ほどミラーガールに励まされたのか多少ながら自信を取り戻した状態で答えた。

「そりゃもちろん……自力で、全力で乗り越える! ……と、言いたいが、時には回り道して壁を避けていくって手もあるぜ」

「! ……敢えて壁を乗り越えず、また壊さず……迂回して壁を避けていくというのですか……?」

 バーンズの答に衝撃を受けるカァチェンに、バーンズは続けて語った。

「ああ、全ての壁を無理に突破する必要は何も無い。時には頭を柔らかくして、ちょっくら壁の向こう側に回ってみるのも一つの手だ。何も全部の壁をバカ正直に突破する必要は無い、言い方は悪いが裏道を用いて問題を解決しなきゃならない事も世の中にはたくさんある」

 世の中には正しい道だけでなく、裏道を用いて問題や壁を突破しなければならない道理を説くバーンズは、更にカァチェンに語り続ける。

「お前さんは今後、台湾の国将軍として国の軍事や治安を統治していかなきゃならない。それはきっと多くの外交や情勢、更には国内の政策と衝突する事も多々あるだろう」

「………………」

「そんな時、お前さんに必要なのは柔軟な考えと、それを支えてくれる人材だ。柔軟な考えは問題を突破できる道を探し当て、人材はその道を均してくれる重要な力になってくれるだろう。あの修司だって、多くの協力者を携えていたからこそ世界的に動ける逸材に成長できたんだ。お前さんにだってきっと、自分を支えてくれる奴が一人はいてくれる筈さ」

「……こんな親も兄弟もいない、独り法師にも……共に未来(さき)へと歩んでくれる人が居てくれるのでしょうか……」

 バーンズはしっかりとした顔立ちでカァチェンに言い放った。

「大丈夫! 必ず居てくれる筈さ。今はオレ達がいるが、オレ達以外にも必ず、お前を支え、理解してくれる友がこの先現れる筈さ。人間、誰しも一人じゃない」

「……! バーンズ氏……」

 バーンズからの激励に、カァチェンは少しばかりであったが元気を与えられた。

 

 と、道中。バーンズは一人で気難しい顔を浮かべる隊士を見兼ねて声をかけてみる。

「………………………………」

「……? どうしたんだ、キリト。まさか新人のお前らだけを残して、先輩達だけを帰還させたりしたのが不安なのか?」

 声をかけられたキリトは少し驚きながらもバーンズに顔を向ける。

「そ、総長……」「どうしたんだ? なにか考え事か、あるいは悩みか……」

 バーンズは例え自制できるテレパシーを持っていたとしても、それを乱用することは無い。あえて本人の口から真実を聞き、己の耳で聞き受ける事こそ平等な立場を築けるからだと自負しているからだ。

 そしてバーンズに問われたキリトは、静かにバーンズに言った。

「い、いえね、ただ……」

「…………?」

「……総長達が、余りにもあの三次元人を気に留めているんで……」

「カァチェンの事か? そりゃお前、あいつは聖龍隊に関しても戦闘に関してまだまだ未熟だから純粋にアドバイスしているだけだ。弱い奴に手を差し伸べる……常識だろ」

「そ、そうかもしれないですけど……それにしては、余りにも世話を焼いている様な……」

「まあ、あいつ自身が未だ立ち直れないからついつい手を出しちまうって言うか、昔の修司みたいで助けてあげたいっていうか……依怙贔屓しているみたいで悪いな」

「い、いや! そんな積りで言ったんじゃなくて、その……」

 動揺するキリトを見て、バーンズはテレパシーで彼のもどかしい心境を再確認した上で語り始めた。

「なあ、キリト。オレたち二次元人は、三次元人を励ますために生み出されているのかもしれない。同時に支えるためにもな」

「支えるため……?」キリトの聴覚がバーンズの話に傾く。

「そうだ。オレたち二次元人は三次元人の理想や夢といった思想概念から生み出された。そんなオレ達だからこそ、三次元人を支え、そして同時に夢を与えつつ生きる気力へと繋げて行けるのかもしれない」

「………………」

「生きる希望を三次元人に与え、そいつに未来を……生きる気力を与えるのがオレたち二次元人なのかもしれない! ……まあ、これは全部、修司からの受け売りだけどな、はは」

「……ただ支えるだけですか」「?」

 二次元人は三次元人に夢や希望を与え、生きる支えになれるかもしれないと説くバーンズの話を聞いて、キリトは表情を険しくさせる。

 顔を険しくさせるキリトに首を傾げるバーンズに、キリトは突然切り出した。

「おれ達はいつだってそうだ! 三次元人から創作として持てはやされて、時には勝手に非業の運命を与えられ……そして人気が無くなれば忘れられ、下手すれば完全にこの世から消えてしまう。それなのに三次元人の身勝手な言論に付き合わされるのは正直ごめんだ! 多くの仲間が死に、そして悲しむ……そんな筋書きを勝手に与えられる日々」

「………………………………」

「……それに異常者(ヒール)排除法だ! 自分達が生み出したくせに、おれたち二次元人が少しでも可笑しくなれば処罰し断罪するやり口が気に入らない! 折角この世に生を受けられたのに、おれ達は何のために生み出されたのか……排除法で、ルールで縛り付けられる不自由な人生を進むのが、おれたち二次元人なんですか!?」

 キリトの疑問にバーンズは答え返す事ができなかった。三次元人によって生み出されながらも、少しでも異常な点が見付かれば処罰される二次元人への対応に不満や疑問を抱く二次元人も少なく無かったからだ。

 そんなキリトだけでなく多くの二次元人が抱える真情を、仲間のキリトから聞かされたバーンズは重い口を開いた。

「……キリト……」

「………………」

「……所詮オレ達は……オレたち二次元人は、三次元人からしてみれば偽りの存在、紛い物なのかもしれない」

「…………!」バーンズの言葉に衝撃を受けるキリト。

「オレ達は所詮、人の思想概念から生まれて来ちまった人外なのかもしれない。そう、魔法使いや獣人問わず、全ての二次元人が三次元人からしてみれば人外の怪物として捉えられているのかもしれない」

「………………」バーンズの話に苦渋の想いを噛み締めるキリト。そんな彼にバーンズは語り続ける。

「……だけどな、キリト。これは前にも話したと思うが……二次元人には何かを変える能力、いや力があるとオレは思っている」

「何かを変える、力……」

「そうだ。例えばお前たちの様に機械の力を使っても変身する事ができるだけじゃなく、魔法で変身したり自身の肉体を一瞬で強化させちまうのも、自らを変えているって事なんだぜ」

「……それと二次元人の現状、何が関係あるんですか」

「キリト、二次元人ってのは上手く行けば世の中全体を変えられる力があるとオレは……あの修司が信じて疑わなかった力なんだぜ」

「あの小田原修司が……!?」

 実際には真正面から対面した事は無い小田原修司が信じ抜いていた二次元人の可能性に対して、キリトはバーンズの話にのめり込むようになった。

「そう、修司が生れ付き勘が鋭いために己の中の異常性……いわゆる発達障害についても苦悩していたのは小説を読んでいるから知っているだろ。それでも修司は少しずつではあったが、周りの協力や理解を得ながら成長する事が……いいや、変われる事ができた。自分の殻を打ち破る事ができたんだ!」

「………………」

「オレはだなキリト、あのカァチェンにも同じ可能性を見出しているんだ。いや、カァチェンだけじゃない、全ての三次元人を……ゆくゆくは世界そのものを変えられる力が二次元人、いや創作の物語にはあると修司もオレも強く信じている! だからこそ、オレはカァチェンが少しでも前に向いて一歩一歩確実に進んでいけるよう支えていきたいんだ! 修司に似ているだけじゃない、カァチェンの様に今の自分に絶望視している三次元人に生きる希望を与える事こそ、オレたち二次元人の使命だと認識している!」

「………………………………」

「キリト、人はな、必ず変われる可能性が……周りを変えていける可能性を秘めているもんなんだよ。そんな可能性に満たされているのが、オレたち二次元人なんだ! それになキリト、オレはいづれ二次元人が三次元人を支えるだけには終わらせない積もりでいる」

「! どういう事ですか?」一驚するキリトに、バーンズは真剣な面差しで語った。

「確かに今は三次元人は二次元人の異常者(ヒール)化に恐れてオレ達を毛嫌いしている傾向がある。だがいづれ、全ての人が種族を問わず平和的に……そう、支えあっていける世の中に変えていければ良いとオレは夢見ている! これは聖龍HEAD、昔からの理想だ」

「………………!」

 衝撃を受けるキリトに、バーンズは最後にこう言って話を締め括った。

「ただ支えるだけじゃねえ……支え合う、そんな関係が大事なんだ」

「支え合う……」

 二次元人は三次元人を支えるだけでなく、共に支え合える関係に変えていける可能性をバーンズに説かれ、キリトは考え込む。

 

 

[清雲城 大レース]

 

 そして聖龍隊一行は、無事に中国漢族が治める領地へと足を踏み入れた。中国特有の古風な家立ちが目立つ中、聖龍隊は山脈へと進んでいった。

 そしてとある渓谷、そこに聳え立つ要塞を見て皆は愕然とした。

「ま~~た改築しやがったな、マァスンの奴……」

 ほぼ一本道の曲がりくねった上下に絡み合った道が設けられた要塞の全体図を少しはなれた所から視認したバーンズは、ここでメタルバードに変身して聖龍隊一行に呼びかける。

「いいか! デイ軍の事だ、また力任せにぶつかってくるだろうがオレ達は全身全霊でそれを受け止めてやるんだ!」

 メタルバードの呼びかけに聖龍隊士も、同行する赤塚組も参戦してくれる新世代型二次元人も反応する。

 そして一行が城の間近まで近づいていくと、何処からか声が聞こえてきた。

「この竜王が占ってやるぜ……アンタ達の現実(いま)と、未来(さき)をな」

 この言葉を聴覚で聞いて、メタルバードは声を上げた。

「間違いない、今の声はデイ・マァスンだ! 近くにいるぞ」

 漢族を引っ張るデイ・マァスンの声にメタルバードが彼が近くにいる事を皆に伝える。

 そして進軍すると、桟橋が上に見える所で人影が確認された。

 進撃する一団が見上げてみると、そこには桟橋の上で馬に跨る三日月の前立てに蒼い甲冑、そして右目に眼帯をした青年の姿があった。

「よく来たな……Go Speed!」

 青年は馬を興奮させ、聖龍隊一行を挑発する。

「Welcome to fortess of Dradon! ……アンタたちは何度這い上がる?」

 龍の要塞にようこそ。この挑発紛いの言動に、聖龍隊士の木之元桃矢は叫んだ。

「相変わらず、ふてぶてしい奴だ! こうなりゃ、デイ軍の馬を頼りに追い詰めよう!」

 聖龍隊は馬に跨り、馬力で要塞内を駆け抜ける作戦に出る。

 しかし此処でメタルバードはカァチェンに言う。

「カァチェン! オレ達は自力でマァスンを追うぞ! なあに、お前さんの速さなら楽勝だろう」

「は、はぁ……」

 なんとメタルバードはカァチェンに、共に自力で一本道、通称竜の道を駆け抜けようと提案する。

 そしてメタルバードは己の翼で飛行してマァスンを追い、カァチェンは逆刃薙(さかばなぎ)を後ろ手に回してプロペラの様に高速回転させて浮上し、メタルバードの傍らに着く。

 メタルバードの銀翼の疾風に付いて行くカァチェンの玉虫色の輝きは、たちどころに乗馬で要塞内を駆け抜けるデイ・マァスンへと追い付いて見せる。

 

 すると一本道である竜の道の門、龍の関が閉まり始めた。

「筆頭! 奴さんたちが追いつく前に、早く城内に!」

「OK、オレに追い付けるか試してやらあ!」

 部下の兵士に言われ、デイ・マァスンは第一門へと馬を走らせる。少しでも遅れればデイ・マァスンに追い付けなくなる。

 そんな状況にスター・ルーキーズのミラールが叫んだ。

「竜の試練なんかに負けていられないわッ! ここは私たちが抑えるから、総長たちは一刻も早く門を通過して……ッ!」

「悪いな、ミラール! カァチェン、オレと一緒に追うぞ!」「承知しました……」

 メタルバードは足の遅い聖龍隊士にその場の陣地奪還を任せ、自分とカァチェンはマァスンを追う事に集中する。

 そんなメタルバードは鋼の体からは想像できないほどの速さで竜の道を駆け抜け、戦場を跋扈する。

「流石はバーンズさんだわ!」「聖龍隊一の速さは伊達じゃない!」

 途轍もない速さで竜の道を滑空して進むメタルバードの速さに、HEADのココと星羅が声を上げる。

 だが、そんなメタルバードの速さに付いて行くのがシバ・カァチェンである。が、カァチェンの速さに合わせてメタルバードが飛んでいるだけだった。

 しかし両者は軍馬で駆けるマァスンよりも早く追い付き、双方は引けを取らない速さで進行する。

「Hey! 久しぶりじゃねえかバーンズ! なんだい、今回は新入りを引き連れてウチの城に乗り込んできたのか?」

「いいや、こいつはいわゆる研修生って奴でな……台湾が国将軍、シバ・カァチェンだ!」

「シバ・カァチェンです……以後、お見知りおきを……」

 メタルバードのカァチェンに対する自己紹介を聞いて、マァスンは驚いた表情を浮かべた。

「ほう、それはまた珍しいな。つまり、あの知将モウ・チェイファンの後釜って事だな」

「そうだ。でもコイツはコイツで自信ってものがない。悪いがレースが終わった後にでも手合せしてくれねえか?」

「Ha! 上等だ! うちも新入りを仰山、入隊させたばかりだからな。お前んところで肩慣らしさせてもらうぜ!」

 シバ・カァチェンと平行しながら駆け抜けるメタルバードとデイ・マァスンは、お互いに肩慣らしとして両軍を戦い合わせる約束を違える。

 するとカァチェンとメタルバードの両名と並んで走行するマァスンは、後ろからデイ軍の兵士を相手に奮闘する聖龍隊と赤塚組に交じって戦闘する見慣れぬ二次元人を見てメタルバードに問うた。

「……? おい、メタルバード。アイツらは一体……」

「ああ、あいつ等が噂に高い新世代型って奴らよ。訳あって今はアジアの巡行に着いて行かせているんだ」

 メタルバードより聖龍隊と赤塚組に交じって戦闘しているのが新世代型二次元人だと聞かされたデイ・マァスンは嬉々と興奮した様子で奮闘する彼らに呼びかけた。

「Ha! テメエらがNew generationの二次元人か! テメェらは一体どんなCreatureにTransformするんだ?」

 デイ・マァスンは聖龍隊に同行する新世代型二次元人達を見て、一体お前らはどんな怪物に変身するのかと無礼な言葉を浴びせる。

「ッ……!」

 この無礼な言葉にキャサリン・ルースら新世代型二次元人の多くが実に不快な思いに至る。

 新世代型たちが不快に思ったであろうマァスンの言動に、メタルバードが言った。

「おい、あまりあの子たちを苛立たせるな。あれで新世代型って事を気にしているんだからよ」

「Oh、sorry sorry 口が尖っちまったぜ」

 英語交じりの口調で一応は謝罪するマァスンだが、彼の破天荒な言動に新世代型だけでなくマァスンを初見した面子は全員腹に苛立ちを抱えた。

 

「聖龍隊! 陣地の占拠、ならびに暴れ回る兵士を押さえつけるのよ!」

 一方、マァスンとのレースに参加していない聖龍隊は漢族要塞の陣地を制圧していた。ミラールも先輩隊士に混ざり、自らが指揮するルーキーズに指示を飛ばす。

 そんな奮闘するルーキーズの新人隊士を遠目から認識したマァスンは、ぽつりと呟く。

「Hey……良い仲間を持ってるな、アンタ」

 マァスンはミラールに向けて言葉を呟き掛けるが、そんな彼にメタルバードとシバ・カァチェンが並行する。

「そうそう挫けはしねえってか? ……だが、そんなヤツほどあっけねえもんさ」

 前方で待ち受けるデイ軍の兵士を蹴散らしながら並行してくるメタルバードとカァチェンを横目で睨み付け、マァスンは余裕溢れる笑みを零す。

 と、此処でメタルバードやデイ・マァスンと並行して疾走していたカァチェンの体力が切れ始め、更に逆刃薙(さかばなぎ)を回す手首にも痛みが生じ始めた。

「頑張れカァチェン! お前ならまだできる!」

 力切れしそうなカァチェンにメタルバードは檄を飛ばす。

 だが、以外にもメタルバードのみに非ず、なんとデイ・マァスンもスタミナ切れを起こしそうなカァチェンに檄を飛ばしてきた。

「One more! 這い上がる強さってヤツを魅せてみろ!」

 両名の激励を受けて、カァチェンは再度逆刃薙(さかばなぎ)を回す手首に力を入れる。

 するとデイ・マァスンの側近が彼に言葉を掛けてきた。

「もう良いでしょう、マァスン様……挫けぬに越した事はない」

「いや、まだだ……アレを用意させろ、モンジュロ」

 もう良いと告げる側近に対し、マァスンは側近に何かを用意させ始める。

 

 そして三つ目の関所を三名が超えた時、マァスンは馬を跳び上がらせた。

「!!」

 突然乗馬する馬を跳躍させるマァスンに一驚するメタルバードとカァチェンの両名の前で、跳躍していくマァスンとの距離が離されてしまう。

 そして三名が三つ目の関門を突破した直後、マァスンは側近に言った。

「後は任せたぜ!」

 主の無鉄砲な馬乗りに冷静な面差しでマァスンを見据える側近の男。

「最後の試練はこの俺か……しかと承りましょう」

「悪いな、モンジュロ……とことんオレに付き合ってくれ」

 側近の男に対しマァスンは、まるで自分の我儘に付き合わせて申し訳なさそうに語る。

「オレ達も距離を縮めるぞ!」「御意……!」

 一方で馬を跳躍させる事で距離を縮めたデイ・マァスンの行動に、メタルバードとシバ・カァチェンもレースに力が入る。何故かこの時、カァチェンはマァスンに対して不快な念を抱いていた。

 

 と、此処で本陣へと進む為の竜本関が閉鎖を開始した。

「無理やり竜の右目と対峙させる寸法か……! オレ達はデイ・マァスンを追うぞ、カァチェン!」

「竜の、右目……?」

「右目を失ったマァスンの片腕を担っている側近中の側近だ! 剣術の達人だから、闘えば必ず消耗しちまう」

 メタルバードはカァチェンに竜の右目について語っている最中、相手方の陣地を奪取した聖龍隊と赤塚組も駆け付けてきた。

「は、速い……!」「へっへ、俺様は破槍で波乗り気分で進められるから楽ちんだぜ」

 メタルバードとシバ・カァチェンとデイ・マァスンの三名が速すぎるため、追い付くのが困難だと感じ入るHEADのミュウイチゴに反して、赤塚組の大将は自身の得物である船の碇に形状が似ている破槍をサーフィンの要領で乗りこなして、要塞を駆け抜けていた。

 すると、そんな鈍足組の聖龍隊と赤塚組の後方から、頬に傷があるオールバックの厳つい男が馬に乗って追い付いてきた。

「! 貴方は……!」

 背中から青白い羽根を発生させ、地面から浮上して走行するミラーガールはオールバックの男を見て驚いた。

「お前らの相手はこの俺だ! 付いて来られるか」

 まるでヤクザの様な物言いと迫力に、聖龍隊の新人たる者たちは一瞬戸惑ってしまうが、相手の厳つい男は馬の速度を落とす事なく要塞内を駆け抜ける。

 

「筆頭! モンジュロ様! 奴らに攻撃が当たりません!」

 中国製の薄い金属から作られた刀をブーメランの様に投げ付けてくるデイ軍兵士に、マァスンの側近が言葉を掛ける。

「案ずるな…‥まだ目論見から外れては居ねえ」「了解ッス!」

 側近からの言葉に兵士も力強く返答する。

 

 そのまま進撃する一団だが、メタルバードとシバ・カァチェンが第四の関門を突破した丁度そのとき、その第四の扉が閉まったのだ。

「……! 扉が……!」

 驚愕するメタルバード。何故なら後方から自分達を追って、追い付こうとしてくれる仲間達が自分達と合流できなくなってしまったからだ。

「てめえらの相手は俺がする……かかってきな!」

 厳つい出立ちの男はそういうと、後方から駆け抜けてくる聖龍隊と赤塚組を呼び指して馬で追い抜いて行ってしまう。

 竜の右目が本陣の防衛に乗り出したのだ。

 すると前方の石橋の左右に陳列されていた石造の龍の口から、烈火の如き炎が放射を開始する。

「ひ、火ぃ!?」

 聖龍隊のクラインが驚愕して思わず立ち止まってしまう中、先を進んでいた厳つい男は馬を跳び上がらせて竜が吐く炎を跳び越えさせて難なく通過してみせる。

「こんなもん、俺達のからくりに比べれば……玩具だぜ」

 そんな石造の龍が吐く炎を、厳つい男に続いて大将も軽々と飛び越えて先へと行ってしまう。

「そんじゃ、俺はひとっ走りバーンズ達の所に行くぜ! お前らはあの右目とやり合ってみな!」

「た、大将! ……ふぅ、仕方ないわね」赤塚組の大将の言伝に、ミラーガールは呆れ果ててしまう。

 しかし石造の竜は絶えず炎を放射し続け、行く手を阻む。だが、聖龍HEADは炎を吐く龍を見て面白がっていた。

「熱烈な歓迎って、この事ね!」

「心頭滅却すれば火もまた涼し……なんせ、炎を扱う能力者なんて二次元界には五万といるし」

「火を吐くだなんて……面白い趣向だね」

 烈火を放射する石造の竜を目の当たりにしても、平然とした態度でセーラーヴィーナスに堂本海人、そしてジュピターキッドは各々の感想を述べる。

 そしてジュピターキッドを先頭に、一行は石造の竜が吐く炎の中に突撃した。

「行くぞ! 遅れを取るな!」

「あわわ……お、おれ達は炎が止まった瞬間を見極めて通ろう……」

 ジュピターキッドに続いて続々と炎の中に突っ込む聖龍HEADと赤塚組を前に、キリト達は竜が炎を吐き終えた瞬間を見定めて通過しようと決める。

 

 

[達人]

 

 三つ目の関所を無事に、いや敢えて通過させられたメタルバードとカァチェンはしばし移動を止め、休憩に入っていた。

「ふぅ……マァスンの野郎、相変わらず乗馬レースにのめり込んでいやがると見た」

 絶えず滑空し続け、竜の道を飛行して高速移動していたメタルバードが愚痴を零すと、カァチェンの無表情な様子にメタルバードは声をかける。

「はぁ……どうしたんだ、カァチェン。あの漢族に会って何か芽吹いたか?」

 メタルバードはカァチェンに、マァスンと出会って何かを得たのかと訊ねるが、カァチェンの答えはそれとは真逆だった。

「私は彼に……竜王に逢えば何が変わるというのだ……?」

 このカァチェンの言葉を聞いて、メタルバードは真剣な面差しで言った。

「その答えも……お前自身の中で眠っている筈だ」

 気高いカリスマを誇る漢族筆頭に逢えば、必ず何かを得られるか変われるとカァチェンに言い聞かせるメタルバード。

 そして二人は肩を担ぎ合いながら、歩いてデイ・マァスンが待ち受ける本陣へと向かった。

 

 一方その頃、何とか炎を吐く竜の罠を突破した聖龍隊と赤塚組と戦闘タイプの新世代型達は、本陣前の空き地へと足を踏み入れていた。

「走れ! 大分バーンズ達から遠ざかっちゃった!」

 先を行ったメタルバードとカァチェンに追いつく為に、駆け足で石段を上るジュピターキッドたち。

 すると本陣前の空き地には、数名のデイ軍の兵士と共に一人の厳つい男が待ち構えていた。

 その頬に傷のある男は右腰に刀を二本差し携え、その内の一刀を左手で抜刀すると肩に刀身を乗せて言い放った。

「荒ぶ俺を醜いと思えば思えばいい……」

 そして男は刀を身構えると覚悟を決めたかのように言い放つ。

「だが……俺に恥じるところはねえ!」

 

仁吼義侠 タク・モンジュロ 参陣

 

「テメェらは最後に俺に当たり、しくじった……要は此処からどうするかだ」

 竜の右目にして剣の達人であるタク・モンジュロが前に立ちはだかり、聖龍隊も赤塚組も一瞬ばかり戸惑ってしまう。

 だがジュピターキッドは同じ参謀として、タク・モンジュロに話し掛ける。

「竜の右目……漢族を統治できた男を育て上げた貴方が、なぜマァスンを王と名乗らせているんだ?」

「……今の俺にできるのは、マァスン様をお守りする事のみ……そして互いの大将同士を決闘し合わせる事だけだ!」

 ジュピターキッドから問われるモンジュロだったが、彼は質問に答えもせず鋭い太刀筋を聖龍隊の新人達に向けてくる。

「きゃあっ!」

 アスナの悲鳴が響く中、モンジュロが険しい眼光で言い放つ。

「女だろうが、聖龍隊の一員とあれば容赦はしねえ!」

 次の瞬間、タク・モンジュロは強烈な高速の突進突きを放ち、SAO組を吹き飛ばしてしまう。

 するとモンジュロの後ろからシルバー・クロウが襲い掛かるが、モンジュロは即座に背後の殺気に感づき、素早く後方に姿勢を向けると左側から強烈な斬撃を振り払いシルバー・クロウを弾き飛ばす。

 剣術では到底叶わないと踏んだルーキーズ総部隊長のミラールが、持ち前のミラージュ・ガンを連射してモンジュロを遠距離から狙撃する。

 だが、モンジュロは自分に被弾する銃弾を全て刀で弾き返して銃撃を自力で防いでしまう。

「す、凄え……三次元人で、ここまで剣の達人がいるなんて……!」

 モンジュロの剣術の凄まじさに圧巻されてしまうキリト。

 一方でミラールは絶えずモンジュロに狙撃しながら、二人は語り始めた。

「フゥ……新入りの前じゃ、そうそう撓めもしねえのはお互い様だな」

「フッ、そうね。お互い、新人の教育には手が懸かるわね」

 モンジュロとミラールは、お互いに新人の教育には苦労が絶えない心境を打ち明ける。

 二次元人たちと激しく剣を唸らせるモンジュロは、自分と対峙する彼らを見定めて言う。

「テメェらとの関りが、マァスン様の何かを変える。それが何なのか、この眼で確かめさせて貰うぜ」

「私たちに変えられるものなんて、今のマァスンにはあるのかしら? 変えられると言えば……それは貴方じゃない?」

 しかしタク・モンジュロ御得意の高速の突進突きを盾で防いだミラーガールは、マァスンを変えられるのは自分たち二次元人ではなくモンジュロ当人なのではないかと説く。

 複数の標的に囲まれながらも、確実に一対一の攻防で立ち回るタク・モンジュロの武道精神にシアン・パイルが物申した。

「貴方の様な方と真剣勝負を挑めるとは……光栄です」

「ふっ、ほざいてくれるじゃねえか」

 シアン・パイルからの賞賛に、モンジュロは笑みを浮かべながらシアン・パイルの攻撃を受け切る。

 

 激しい剣戟での最中、モンジュロはふとメタルバードと共に主君デイ・マァスンと競争した青年の事を語り出した。

「あの青年、シバ・カァチェンって名だったな。俺はアイツによく似た独眼竜(おとこ)を知っている。俺はソイツを立ち直らせ……そして同時に救われた」

「ウチの総長たちも、その時の貴方の真似事をしてる積りかもね?」

 モンジュロは全ての銃弾を刀で弾き返しながら連射してくるミラールに語り掛ける。

 するとミラールに続いて銃撃でモンジュロに応戦する暁美ほむらが愛想の無い顔で言う。

「王とか何とか名乗っているみたいだけど……! 貴方みたいな側近がいれば道を踏み外さないと信じたいわ」

「当たり前だ。そんなフザけた真似、この俺がさせねェ……!」

 暁美ほむらからの言葉に、モンジュロは啖呵を切って言い返す。

 しかし実は、未だに『王』と名乗るマァスンの真意を理解し切ってないモンジュロは、ふといきなり王や神といった存在に成り上がった聖龍HEADに問うた。

「聖龍HEAD、テメェらは解るのか、マァスン様の思惑が……?」

 モンジュロからの質問に、アクア・レジーナに昇格した七海るちあが答える。

「何となく……という程度かな? もし貴方に解らないというのなら……それは近すぎるから、なのかもしれないわ」

 七海るちあの「近すぎるから」の答えに、モンジュロは右目としての立場からでは視点が近すぎて物事を全て捉えられてないのではないかと自問自答する。

 だが自問自答する暇も無く、縛斬でモンジュロを斬りかかる鬼龍院皐月の斬撃を、モンジュロは刃で受け止める。

「下品で低俗な男共をぞろぞろと……! まるで暴走族みたいだ!」

「むっ、否定はできねえが…………それはそれとして、ソチラさんこそ淫らな格好していやがるじゃねえかッ! 年頃の女が肌を見せるもんじゃねえぞ……!」

 確かに無粋な所があるデイ軍ではあるが、それはそれとしてモンジュロの方も皐月や流子の露出の高い格好を指摘する。

 皐月からは邪見にされがちな風貌のマァスンやモンジュロだが、そんなデイ軍に密かに目を輝かせる青年が聖龍隊側にいた。

「まさしく、アニキって感じの漢ッスね! オッス!」

「ほう、ソチラさんにもウチの若いのと似た様なのがいたもんだ」

 デイ軍に漢のカリスマを感じ取った元暴走族の猿投山渦からアニキと呼ばれたモンジュロは、渦本人もデイ軍の若い兵士にくりそつだと言葉を返す。

 果敢にモンジュロを攻める聖龍隊と赤塚組と新世代型。だが四方を囲まれたモンジュロはそれでも自らに繰り出される攻撃を回避し、刃で受け流しと、達人の極みにまで至る剣術で冷静沈着に状況を分析し、反撃を仕掛けてくる。

 このモンジュロの達人の域にまで達した剣術に最初は三次元人だからと多少ながら舐めていた聖龍隊の新人と新世代型達は圧倒されていく。

「っ……本陣前で主に近付けさせない策か……いま貴方がこの場に居る理由は」

 棘の鞭を左右の手で張って剣戟を防ぎながらジュピターキッドが問うと、モンジュロは確かな眼で言い切った。

「俺がこの場に在る理由……それは、マァスン様の世が為だッ!」

 全ては主たるマァスンが為に、己は死地へと赴いている。そんな覚悟が詰まった台詞を容易く吐き出せるモンジュロの強靭な意志に誰もが圧倒されてしまう。

 そんな剣の達人の領域に達しているモンジュロへの評価を改めた鬼龍院皐月は、徐にモンジュロへと語り掛けた。

「歴史を見返してみれば……時代に名を残した者には必ず、絶対の信頼を置ける腹心が傍らにいるものと聴いている。あのマァスンとかいう男が歴史に名を遺すとすれば、貴方は……!」

「俺はただ……潰れてしまった、あの方の右目を代行している。それだけの話だ」

 歴史を見返せば名を残した偉人の傍らには必ず心強い腹心が居る様に、モンジュロもまたそんな腹心なのではないかと説く皐月に、モンジュロは単に自分は仕える者の潰れてしまった右目の代行を務めているだけにすぎないと突っ返す。

 

 と、此処でジュピターキッドがモンジュロの本心を探ろうと一つの提議を出してきた。

「あのさ、一旦休戦してお互いの利害が一致してないか確認しないかい?」

「全ては竜王、マァスン様に降るかどうかだ! 降らねえなら斬り合うのみ!」

 左下から繰り出される強烈な太刀筋にキッドは後ろへと回避するが、危うく胸元を切り裂かれてしまうところだった。

 本気で斬りかかってきたモンジュロに聖龍隊と赤塚組は覚悟を決めて挑みかかるが、新入りと新世代型の方は完全に実力に決定的な差があるモンジュロとの戦闘を拒絶する思想が心中に芽生えていた。

「あ、あのさ……おれ達は一旦引くから、そちらさんだけで戦ってくれないかな?」

 そう言い残してその場から去ろうとするキリトたち新人と新世代型達の前に、小銃を備えたデイ軍の部隊が退陣の道を阻む。

「それで俺が頷く……とは微塵も思っちゃいねえだろっ? 腹の探り合いは後回しだ、互いの刃で語りゃいい」

 モンジュロはお互いの真意を探り合うよりも、互いの刃でぶつかり合い、刃で語り合えば良いと剣豪らしい台詞を口に出す。

 所詮は好戦的なデイ軍の参謀。いやそれ以上に剣の達人として自然と強者や武人と合間見えたいのかもしれない。

 そんなモンジュロにミラーガールが強烈な突進突きを防御しながら問い掛けた。

「王を自称するなんて、一体マァスンはどうしたの?」

「こんな時代だ……野望の一つや二つ、漢なら抱くさ」

 ミラーガールの問いに、モンジュロは乱世たる時代ゆえに漢なら野望の一つや二つは抱くものと簡単に答えられてしまう。

 その時、一瞬だけミラーガールが隙を見せた拍子にモンジュロは強烈な突進突きを彼女のミラー・シールドに喰らわせる。

「ッ……!」「余計な事を考え過ぎだ…‥オメェも、この俺もな」

 今までの長い戦闘の末、モンジュロは双方共に今の戦闘には関係ない事を考え過ぎていたのではと説き掛ける。

 タク・モンジュロの凄まじい殺気と剣術から既に戦意が消耗しかかっている戦況に、ミラーガールが再びモンジュロの前に対峙する。

 モンジュロはミラーガールの真っ直ぐで鏡の様に美しい瞳を見詰めあい、自ずと今の迷走する自分自身と対峙してしまう。するとモンジュロの手が唐突に震え出した。

「この剣先を鈍らせるもの……迷いか……」

 己の中に現在の主君の真意、そしてそれに従う今の自分に対しての迷いに気付き始めるモンジュロの剣先は確かに動きが鈍っていた。

 そんなタク・モンジュロにミラーガールが特攻。ミラー・ソードでモンジュロの剣を弾き、ミラー・シールドでモンジュロの顔を殴り付けてやった。

「モンジュロ様、しっかり! デイ軍を見捨てねえで下せえ……!」

 戦いを見守っていたデイ軍兵士からの呼びかけに、モンジュロは息を吹き返したかの如く自分に攻撃を仕掛けてきたミラーガールに強烈な斬撃を振り下ろす。

「ッ!」

 真上からの斬撃にどうにか耐えたミラーガールは即座に後ろへと下がり、モンジュロと距離を置く。

「………………………………」

 そんな毅然とした態度で殺意も無く攻め続ける聖龍隊や赤塚組を見て、モンジュロは口を零した。

「テメェらなら、或いは……」「え?」「いや、何でもねえ」何かを言いたがっていたモンジュロはミラーガールの一言で口に出すのを躊躇い、再び刀を構えて目前の二次元人たちに挑みかかる。

 

 全ては幼少の頃より、自ら育て鍛え上げた主君の信念を守り抜くため。

 

 

[漢族の独眼竜]

 

 一方、少し前まで話は逆戻る。三つ目の関所を通過したメタルバードとシバ・カァチェンは休憩を挟みながら、ゆっくりと清雲城の本陣へと足を運ぶ。

 どうにか本陣に辿り着いた二人の前には、蒼き装甲を纏った眼帯の青年が本陣の中央で二人を待ち侘びていた。

「……今、アンタの瞳には何が映っている? ふっ、何も見えてねえってんなら……」

 蒼き武士は六爪ある刀のうち一本を抜刀し、呼び掛けた。

「C'mon! 竜王の天下ってヤツを、見せてやるぜ!」

 

漢族筆頭 デイ・マァスン 推参

 

「ていっ」「やッ」

 まずは小手調べにとメタルバードが鋼の肉体でマァスンに特攻し、マァスンはその突撃を六爪で受け止めると同時に弾き返す。弾かれたメタルバードは上空へと飛ばされるが、即座に体勢を立て直し再びマァスンへと突撃。それを見上げたマァスンは自らも跳び上がり、空中でメタルバードと激突。激しく刃と刃をぶつけ合った。

 そして上空で激突した両名は地上に着地すると、速攻で相手へと突っ込んで再び激突し、刃と刃で押し合った。

「Excellent! 相変わらずの腕前だな……!」

「そりゃ、どうも! ……どうせ話し合いで解決できないんなら、最初っからぶつかってた方が気楽だ」

 相変わらずの腕前に素晴らしいと賞賛するマァスンに対して、メタルバードは軍神の事があって以来、話し合いで解決する事を最初から諦めていた。

「此処に来る前、軍神と会ってきた。奴さん、剣帝に就くらしいぜ」

「Hugh、あの軍神が剣帝に……? 悪い冗談だ」

「オレも信じたくは無い。だが……現政奉還の煽りで熱気盛んなご時勢に何処の国が何するか解ったもんじゃねえよ」

「ほう、それはウチの所も同じだ……この竜王が導く世を、オレは創生する!」

「……お前んとこもか……」

 デイ・マァスンと刃を交わらせながら語り合うメタルバードは、マァスン自身もまた己が世界を創生する野望を抱いている現状に呆れてしまう。

「竜王の世は理解しただろ? 気に入ったならアンタたちも来な!」

 デイ・マァスンは事もあろうに聖龍隊ですら自分の軍門に降るよう言い伏せるが、メタルバードはそんなマァスンの真っ直ぐで固い決意に満ち溢れた左目を直視して彼の真意を悟る。

「人を導く、か……そんな王を目指しているんだな、お前さんは。だが悪酔いだけはすんじゃねえぜ」

「Ha! 解ってるぜ、Metalbird……そもそも、あんな堅物が近くにいるのに無粋な真似はできねえだろ?」

「フッ、そうだったな。お前には今でもしっかりと右目が在るんだったな」

 腹心タク・モンジュロを堅物と言いながらも両名には硬い繋がりがあると疑わないメタルバードは、マァスンの一刀を鋼の腕で受け止める。

 そして両者が互いに距離を置いたその時、メタルバードの方からある提案を出される。

「なあ、マァスン。悪いがオレよりも、このカァチェンと一戦交えてくれねえか?」

「What's? そりゃまたなんで……?」

「こいつは未だに先を……未来を見据える事ができねえんだ。オレは、こんなカァチェンに少しでも生きる活力ってのを取り戻して貰いてぇんだ。悪いけど、協力してもらえない?」

 メタルバードの嘆願にマァスンは一瞬考えたが、カァチェンの死んだ魚の様な眼を見て、まるで右目を失った頃の自分を見ているかのような錯覚に陥った。

 ――――そして、マァスンの決断は。

「……解ったぜ、メタルバード! その台湾の新将軍と一戦交えさせて貰おうじゃないか」

 マァスンの賛同を得て、改めてシバ・カァチェンがデイ・マァスンの前に立つ。

「漢族が武将、デイ・マァスン……退きを知らぬ者、か……」

「Ha! 言ってくれるじゃねえか……ソコまで言うなら、とことんやってやろうじゃねえか!」

 デイ・マァスンは改めて得物の六爪を一気に抜刀した。

「WAR DANCE! 最初からTopGearで行かせてもらうぜ!」

 マァスンは最初から全力を尽くして、カァチェンと決闘する意気込みを示す。

 カァチェンもそれに応えるよう身構えると、マァスンは六爪流の構えで突っ込んできた。

「さあ! 楽しいPartyの始まりだ!!」

 デイ・マァスンが誇る六爪流の最大の特徴は、両手に三本ずつ刀を掴み、六本の刀を同時に振るい扱う戦術。防御や回避には向かない戦術だが、その攻撃力と範囲は一刀流を遥かに凌駕する。

「Here we go! Let's Party!」

 マァスンから放たれる六爪の刀に宿る雷属性の力が地を走り、電撃がカァチェンに襲い掛かろうとする。それをカァチェンは横へと回避して態勢を維持する。

「過去、私は出逢い、そして惨めに喪った。私はここでまた喪うのだろうか? それとも」

 またも自信喪失に成りかけそうになるカァチェンを前に、メタルバードが声を掛ける。

「大丈夫だ、カァチェン! オレが見守っている……!」

「バーンズ氏……!」

 そんな二人の様子を闘いながら拝見したマァスンは、カァチェンに言葉を掛ける。

「アンタ、今はいい上司に巡り合えたな! 昔の智将とは大違いだぜ!」

 かつて台湾の軍事を統治していた冷酷な智将よりも遥かに人情あるメタルバードが側にいてくれる事実を述べるマァスン。

 そんな蒼龍との決闘が行われている最中、遅れて赤塚組の大将がその場に駆け付けてきた。

「よお! 遅れて済まねえッ」

「大将、遅いとは言わないぜ。オレとカァチェンが速いだけなんだけなんだからな」

 遅れてきた大将にメタルバードが当たり前の様に語り返す。

「おお、やってるな」

 そんな大将もデイ・マァスンと一騎打ちに投じているカァチェンを見て嬉々となる。

「よお、久しぶりだなマァスン!」

「Wow、赤塚組の頭領までも来ているとはな……」

「って、今頃気付いたんかッ! あんたはどうやら竜王なんてフザけた事をぬかしていやがるみてえだな」

「フザけてなんざいねえ……DragonKingの名は本当だ!」

「あんたが竜王ってんなら、俺は海の王! 海王様だぜ!」

「じゃあ、あんたに勝ちゃ海が手に入るってわけだな」

 この会話を扉向こう側でタク・モンジュロと戦っていたマーメイドメロディーズが異議を申し出る。

「ちょ、ちょっと! 海は誰の物でもないって!」

 一方、デイ・マァスンと対峙し続けるシバ・カァチェンの両名は刃を交えながら語り合っていた。

「……現実(いま)を討ち破り、新王と名乗るは……貴方か?」

「正解だ……が、ここでは竜王と呼んで貰いてえな」

「私の経験上、悪い事は言わない……兵を引いて借猫(しゃくねこ)の如く大人しくしていた方が無難だと思う。例え、どんなに理想を掲げようと……現実(いま)を思い知らされるだけだ」

「A-hum? 随分と見くびってくれるじゃねえか……!」

「いや、逃れ得ぬ道だ……私がこの手で止めるのだから……!」

(おっ、カァチェンの奴、やけにやる気だな。珍しい、どうしたんだ)

 刃と刃を交え合うカァチェンとマァスンの両名を静観し、メタルバードはカァチェンがいつも以上に奮闘している様子を察する。

「せめて、この戦にでも溺れられたなら……」

 カァチェンの様子が徐々に変わり出してきた。

「貴方の希望を獄卒が喰らいたがっている…………いや、違う……私ではない……」

「何だテメェは……? いけ好かねえ眼をしてやがる」

 デイ・マァスンはカァチェンの言動よりも、彼の失望が宿る瞳に矛先を向ける。

 するとカァチェンは、マァスンへの率直な想いを打ち明けた。

「あれだけの悲痛な想いをした私を差し置いて……他の誰かが、それも私と同じ三次元人が王に成るなど、受け入れられるものかッ!」

 自分と同じ三次元人が王と名乗る事に対し、カァチェンは容易に受け入れられなかったのだ。

「ッ……お願いだ、王に成るなどと申さないでくれ……過去に屈した私をこれ以上、惨めな男にさせないでくれ……!」

「Ha-ha! なるほど……アンタ自身も地の底から這い上がりたいって訳か!」

(その気持ちだ、カァチェン……まずは這い上がりたいと強く思う。そうでなければ、人は立ち直れない)

 自分をこれ以上惨めにさせないでくれと切に訴えるカァチェンに対し、彼が心の底では絶望から這い上がりたいと願っているのだとマァスンは理解。そんな二人を間近で観て、メタルバードはカァチェンの心の成長を切に願う。

 激しく六爪流と逆刃薙(さかばなぎ)をぶつけ合いながら言葉と言葉もぶつけ合う。

「……アンタ、例えば将来どんなヤツに成り上がりたいんだ? 聞かせてみろよ」

「私は……悲しい現実(いま)をも討ち破れる強い自分に……なりたかった……!」

「掛かってきな! この竜王が骨の髄まで相手してやるぜ……!」

「ッ! 竜……王……ッ!!」

 現実(いま)の自分と向き合ってくれる竜王デイ・マァスンの猛攻の優しさに、カァチェンは感銘を受ける。メタルバード、聖龍HEAD以外にも自分を見てくれる人がいてくれた喜びを心から噛み締めながら。

 

「さあ、HotでCoolなPartyにしていこうぜ!」

(竜王、デイ・マァスン……このお方は何を想って王だと自負するのだろうか……)

 闘いの最中も、カァチェンはマァスンが如何なる理由で王だと名乗りを上げているのかを考えながら武器を振るう。

 

 

[乱入者]

 

 そんなシバ・カァチェンとデイ・マァスンの闘いを静かに見守るメタルバードと大将。

 しかし二人はメタルバードを遠くから見据える狂気に囚われた眼差しを向ける存在に気付いていなかった。

 

「見~~~~~~つっけたぁーーっ! 見つけた、見つけた、見つけたぁっ!」

 突如メタルバードに向かって地を這うように高速で接近してきたその男に、メタルバードも決闘をしていたカァチェンとマァスンも気付いた。

「お、お前……! ゴ・マータン!?」

 なんと突如としてその場に乱入してきたのは、聖龍HEADを心底逆恨みしているゴ・マータン本人だった。

「またお前か……! こんな時に……」

 シバ・カァチェンの成長の為に設けた仕合の場にまで乱入してきたマータンに、大将は呆れながら途方に暮れる。

「くっっだらねえ事やってるよなぁ!? 当のオマエがぶっ倒れて、はい終了ってなるのにさぁ!」

 ゴ・マータンはカァチェンとマァスンの仕合をバカにしながらメタルバードに向かって得物を向けてきた。

「Why? 誰だ、コイツ」

 突然のゴ・マータンの乱入に驚くデイ・マァスン、彼にマータン本人が自分を知らないマァスンへの苛立ちを示しながら自ら名乗る。

「オマエ、俺様を知らないの!? ……俺様はマータン……ゴ・マータン様だッ! 覚えておけッ!」

「Ha! 何処のウマの骨だか知らねえが、ウチの敷居を踏み越えてきたんだ! かかってきな!」

 苛立ちを見せるマータンに対し、デイ・マァスンは突然の乱入者のマータンに挑発する。

 一方のシバ・カァチェンは突如として自分達の闘いの場に乱入してきたマータンに対し、自問自答を始めていた。

「侵入者を討てとまでは命じられていないが、さて……」

 デイ・マァスンの要塞に侵入したマータンを討伐するか悩んでいるカァチェンに、マータンが奇刃を遠投して襲い掛かってきた。

「ッ!」咄嗟にカァチェンは逆刃薙(さかばなぎ)で奇刃を防ぎ、奇刃はそのままマータンへとブーメランの様に円を描いて返っていく。

「ケケケッ、何処のどいつかと思ったら、台湾の将軍に任命された出来損ないじゃないですか。どうしたんですぅ? なんでお前がココにいるんですかぁ?」

 狂気に満ちた面差しでカァチェンにも挑発紛いの台詞を浴びせるマータン。するとメタルバートとデイ・マァスンがシバ・カァチェンに声をかける。

「カァチェン! 今は一旦マァスンとは休戦だ! まずはこの狂人を何とかするぞ!」

「Exactly! それにはオレも賛成だ、このカマキリ野郎を先に片付けておかねえと……!」

 メタルバードの意見にマァスンもその通りだと同意を示し、両者は乱入者のゴ・マータンへと突撃していく。

 突撃していく二人を見て、シバ・カァチェンもゴ・マータンへの戦闘に参入する覚悟を決める。

「竜王だぁ? なにを訳の分からない事をぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃと言ってくれちゃってるんですか!? 若造が…………いい気になってんじゃないですよぉ!!」

「Ha、ならやってみな! オレは何度でも目を開くぜ!」

 マータンは奇刃を振るいながら竜王だと名乗り始めたマァスンへと攻撃を仕掛け、それに対してマァスンは六爪で迎え撃つ。

「オマエ、今からぐちゃぐちゃになるけど……いい? いいよね?」

「オレに喧嘩売ろうってのかい? A-ha?」

 完全に喧嘩腰になる漢族筆頭に、マータンは禍々しい虚ろな眼で攻撃を続ける。

 が、その反面マータンはカァチェンの心の奥底で沈下する闇に気付いてなのか、唐突にカァチェンに誘発を掛ける。

「キミさぁ、良い闇持ってるねぇ! 刺客の素質、あるよぉ? やってみない? 刺客?」

「それが私の未来(さき)なのか……或いは、相応か」

 このマータンとカァチェンの問答に、メタルバードが強引に間へと割り込んでいった。

「ウチの新人に変なこと吹き込んでんじゃねえ!!」

 メタルバードは空中からマータンが片手に握り締める奇刃に蹴り付けて、奇刃ごとマータンを吹き飛ばしてしまう。

 

 すると此処で本陣での異変に気付いたタク・モンジュロが竜頭門を開閉させて駆け付けてきた。

「マァスン様、ご無事で!」

「バーンズ、大将! 一体なにが起こっているの!?」

 タク・モンジュロとミラーガールたち聖龍隊と赤塚組が各々の大将の前に駆け付けると、初めて彼らは乱入してきたマータンを識別した。

「テメェは……何者だ?」

 初見の間柄であるタク・モンジュロが何者かとゴ・マータンに問い掛けると、傍らのジュピターキッドたちが揃えて言った。

「ご、ゴ・マータン……!!」

「まさか、こんな所まで私たちを追ってきたって訳……!?」

 ジュピターキッドとウォーターフェアリーの言葉を受けてもなお、情状不安定の状態で聖龍HEADに向かって怒鳴り散らしてきた。

「HEADぉ、てめえら…………!! 今度こそ…………はぁ…………今度こそ、切り刻んでやるゥ!!」

 そう叫ぶとゴ・マータンは聖龍HEADに向かって走ると同時に奇刃を投げ付ける。それに対してミラーガールは自分の得物である盾を投げ付けて、奇刃とマータンの動きを止めようとする。しかし奇刃と盾が直撃し、奇刃の動きは止められたものの、その後方から駆けてくるマータンは跳び上がって上空から聖龍HEADに跳びかかって襲撃を仕掛ける。

「このっ!」

 しかし上空から跳びかかって襲い掛かるマータンにジュピターキッドが回避不可能な荊の鞭を振るい、マータンを弾き返す。

 地上に着地したマータンは先ほどミラーガールが投げ付けた盾によって地面に落下した奇刃の許に素早く移動すると辺りを再確認する。

 改めて自分の周囲を見渡してみると、自分以外は全て敵対するもので、ゴ・マータンは完全に孤立していた。

「くそが…………マータン様だぞ……!? あの、マータン様だ……わかってんのか!?」

 追い詰められたマータンは支離滅裂な言葉を吐き散らし、威嚇し周りをけん制する。

 そして状況的に追い詰められたマータンの精神はなんと崩れ始めた。

「どうしよう……オマエがいなくなると寂しいよぅ、辛いよぅ…………苦しいよぅ……」

「!? なんなんだコイツ……正気じゃないのか」

 初めてゴ・マータンと対峙したタク・モンジュロは彼が正気の沙汰ではない事を察する。

 そして精神が崩れ始めたゴ・マータンは我武者羅に攻撃してきた。

「死ね、死ね、死ねぇ……死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ死ネ…………死ネぇッ!!」

 奇刃を振り回し、奇刃を投げ付け、鉄製の手袋の鋭利な爪で幾度と攻撃してくるマータンに多少ながら憐みの想いが込み上げてくる聖龍隊。

 するとその時、完全に狂気に至ってしまったゴ・マータンの標的にカァチェンが見定められてしまった。

「カァチェン!」「!」

 ミラーガールが呆然と佇むカァチェンに声をかけるものの、カァチェンの反応は遅かった。そしてマータンの奇刃がカァチェンの腹部に突き刺さると思われた瞬間、青白い閃光が一瞬の内に動いた。

「がはぁ…………ッ!」

 なんとマータンとカァチェンの間にミラーガールが入り、マータンの頭部側面をミラー・シールドで強く殴り付けたのだ。

「せ……聖女……」

 自分の窮地を救ってくれたミラーガールを目前に呆然となるカァチェンに、ミラーガールは微笑みを向ける。

 だが彼女は無傷ではなく、腹部に微かながら奇刃の先が突き刺さってしまい軽傷を負ってしまってた。

「アッコ!」

 軽傷を負ったミラーガールを見て、メタルバードと大将がほぼ同時に叫ぶ。

 そして腹部の傷を押さえながら膝を着くミラーガールと時を同じく、彼女に側頭部を強打されたゴ・マータンは情状不安定のままよろめいた。

「おいぃ…………だ……誰かぁ……ひとり……は……嫌…………だ………………」

 そう呟きながら、マータンはその場に倒れた。

「お、おい! アンタ……」

 目の前で倒れたマータンを前にマァスンとモンジュロは戸惑う一方、傷を負ったミラーガールに聖龍隊と赤塚組が慌てて駆け寄る。

「あ、アッコ! 大丈夫か、アッコ!」

 大将が戸惑い焦る中、メタルバードが冷静さを必死に保ちつつナースエンジェルに指示。

「ナースエンジェル、治療!」「はい!」

 指示に対して素早く対応するナースエンジェルは、ミラーガールの治療に取り掛かる。

 ミラーガールの治療が進められたのを視認した一部のHEADは、先ほどミラーガールの一撃で倒れたゴ・マータンの許へと歩み寄り、マータンの様子を把握する。

「……気絶しているみたいだな」「ええ、完全に白目を向いています」

 気絶して白目を向いているゴ・マータンを間近で見下ろすキング・エンディミオンと堂本海斗が語り合う中、彼らの許にデイ・マァスンと側近のタク・モンジュロが近付いてきた。

「なあ、コイツは一体誰だ……?」「随分と禍々しい狂気を発していたが……」

 マァスンとモンジュロの質問に、聖龍隊は自分達が知り得ている詳細を二人に語った。

 

 

[合戦終了後]

 

 そしてミラーガールの治療と、気絶して倒れたゴ・マータンの移送が終わった後に、両軍陣営は互いに話し合いの機会を設けた。

「……なるほど、あのゴ・マータンってのは要するに昔、アンタら聖龍隊に敗北してcrazyになっちまったんだな」

「ああ、そういう事だ」

「だが……あそこまで殺気走った狂気、そうそう無い。よほどアンタたちに負けたのが悔しかったと見える」

 ゴ・マータンの詳細を語った聖龍隊にデイ・マァスンが理解を示しメタルバードが返事すると、そこにモンジュロが余程悔しがった上での狂気に芽生えたのではないかと付け加える。

 マァスンは先ほど、そのマータンの奇刃が突き刺さって負傷したミラーガールに声をかける。

「おい、ミラーガール。お前さんの怪我は大丈夫か? 二次元人は丈夫と聞いているが……」

「ええ、心配は要らないわ。さっき、りりかちゃんに治してもらったし完治してるわ」

「相変わらず、二次元人の治癒能力には毎度驚かされるぜ」

 笑顔で自らの怪我がナースエンジェルの力で完治した事を述べるミラーガールの話を聞いて、モンジュロは改めて二次元人の特殊能力について驚きを語る。

 と、モンジュロが聖龍隊と赤塚組に厳つい真顔で話し出した。

「あのゴ・マータンって野郎……マァスン様の計らいにより、しばらくウチの領家で寝かせておく。当分、目が覚めないだろうしな」

「ありがとう、モンジュロさん」

「ふっ、礼ならマァスン様に言ってくれ。最近のマァスン様は懐が広くなった」

 気絶したゴ・マータンを看病してくれると語ってくれたモンジュロにセーラームーンが礼を述べると、モンジュロは礼なら主君のマァスンに申してくれと述べ返す。

 すると此処でデイ・マァスンは初めて対面した聖龍隊の新人達と、戦闘タイプの新世代型二次元人達の前に歩み寄り話し掛けた。

「お前さん達が聖龍隊の新人、そして噂に名高いNew generationの二次元人か……」

「……………………」

 初めて近場で対面する彼らの周りが、緊張で時が止まったかのような感覚が走り始めた矢先、マァスンが指を差して言った。

「OK! アンタたちは未来(ひかり)を宿し続けた……それでいい、clearだ」

「……不器用なる試しでしたな、マァスン様」

 自軍が設けた数々の試練に諦めず突破した彼らに賞賛の言葉を掛けるマァスンに、モンジュロも彼らの力量を心より認め賞賛する。

 

 それから時は過ぎ、夕刻。

 マァスンは高台に設けられた本陣から、渓谷より眺められる絶景を目視しながら言い放つ。

「視界良好……翳る兆しもありゃしねえ!」

 渓谷の絶景を一時眺めたマァスンは、聖龍隊と赤塚組ら二次元人の面々と絶景を眺め続ける。

「……マァスン、これからお前さんはどうしたい?」

 メタルバードから変身を解いたバーンズに問われ、マァスンは迷い無き瞳で答えた。

「無論、オレは竜王を名乗り挙げる! その前には勢力拡大だ! アンタたちと張り合う以前にも、あの剣帝の勢力にもまだまだウチの軍勢は劣る……!」

「はぁ……王としての名乗りは、まだ続ける気なんだね」

 迷い無き意志で答えるマァスンにジュピターキッドは唖然としながらも毅然とした態度で呟く。

 すると、そんなマァスンの言葉を耳にし、以前より二次元人と三次元人の在り方に疑問を抱くキリトが呟いた。

「王、か……そんなに人を支配したいのかね?」

 不服混じりの言動を呟いたキリトの一言をマァスンは聞き逃さなかった。

 そしてマァスンと同じくキリトの言動を聞き逃さなかったバーンズから言われた。

「キリト、何もマァスンは支配したいが為に王に成りたい訳じゃない」

「ホントですか? 漢族は未だウイグル族との蟠りが埋まってないみたいだし、漢族の長としてウイグルを支配したのかと……」

「おい、小僧! それ以上の失言は、このモンジュロが許さねえぞ!」

 キリトの態度にマァスン側近のタク・モンジュロが一喝する中、そんなモンジュロを宥めるマァスン。

 怒声を上げるモンジュロを宥めたデイ・マァスンは、キリトたち新人らに歩み寄り徐に語り始めた。

「アンタたちはまだ本当の絶望を知らねえようだな……世の中には、生まれた時から理不尽な環境に置かれたlifeってのもあるんだ」

 マァスンの語りに、新人達は耳を傾け始めた。

「見ての通り、オレの右目はずっと昔に使いもんにならなくなった。未来永劫、この右目が開く事は無え……」

 マァスンは更に右目が失われた時より昔の話も新人達に語り出した。

「……それ以前に、オレたち漢族は確かに少数の民族として多数のウイグル族と激しくぶつかって来た、それは言われ様のない事実だ。そんな環境下で育ったオレは、漢族だのウイグルだのと揉め事を起こす連中に嫌気が差して、イギリスに留学した。そこでオレは多くの事を学び、そして身に付けた。……が、その留学中にテロに巻き込まれて右目を失くしちまった。そんなオレが故郷に帰ってきた時は周りから呆れられたもんだ。家中の反対を押し切り留学したってのにテロに巻き込まれて右目を失くしたんじゃ、示しが付かねえって……」

「で、でも……テロで右目を失ったってのは、何もあなたのミスじゃ……」

 留学中のイギリスで爆破テロに巻き込まれて右目を損失したのはマァスン本人の責ではないと訴え掛けるアスナの言葉に、マァスンは残された左目を向けて返事をした。

「なぁに、あの時の家中は破天荒なオレ様に愛想を突かして鬱憤をブチ撒かしていただけよ。そもそも、オレのイギリスへの留学にも反対してた連中だ、文句ぐらい言いたがるだろう」

 テロに巻き込まれて右目を損失したのを皮切りに、破天荒な自分への当て付けや鬱憤を容赦なくぶつけて来た家中を語るマァスンの話に、皆は胸を痛める。

「……だが、それでも昔からオレを支え、守ってくれる頼もしいヤツが居た。ソイツはオレの潰れた右目の代わりとして、見据えるべきもの、捉えるべきものを見定める漢として……今でもオレの傍らに居続けてくれる」

 更にデイ・マァスンは二年前の乱世での出来事も語ってくれた。

「一昔前まで、オレたち漢族とウイグル族は揉め事ばっか起こして喧嘩に明け暮れる日々を過ごしていた。オレも二年前の乱世じゃ、バラバラになっていた漢族を纏めて中国統一なんて馬鹿な夢を見ていたが、聖龍隊を見て気が変わった」

 二年前、聖龍隊を見て考えを改めたマァスンはその時の心境を語り明かす。

「魔法使いや怪獣、怪人……色んなraceが団結して一揆奮闘する姿を目撃して以来、オレの中で何かが変わった」

 様々な種族が混同する中、一致団結して荒ぶる戦の中を戦い続ける聖龍隊の奮闘する姿を目の当たりにして、マァスンの考えは一変させられた。

「……種族がどうのこうのだとか、そんなちっぽけな話は昔の事だ! オレは、種族を問わず誰もが未来(さき)へと進める……そんな世の中を築きたい」

 この一連のデイ・マァスンの話を聞いて愕然となる二次元人たちに対し、側近のタク・モンジュロがマァスンに片膝を着いて申し上げた。

「マァスン様、今の話ですが……」「お前が力尽くで家中を黙らせてくれた話、か?」

 マァスンが右目を失ってイギリスより帰国した際、反対派の渦中を力尽くで黙らせたモンジュロの申し出にマァスンは左目を彼に向け直す。

「はっ……そ、その話を鑑みるに、今のマァスン様のお考えとは……」

 モンジュロは今まで深く理解できていなかった。王だと自称し始めた主君の意向を。そのモンジュロにマァスンは熱弁する。

「……まあ、恐らくモンジュロの読み通りだ。光を失うヤツが居るなら、オレはソイツを救いてえ。あの日、オレがお前に救われたのと同じように……誰もが前に向き直れる、そんな世の中を作りてえんだ」

 光の如き希望を見失い、前へと向けない者が前へと向き直れる。そんな世の中を創生したいと述べるマァスンの一言一句にモンジュロは愕然とした。

「王として、全てを支配するのが目的ではなく……」

「まあ、真逆だな……羽ばたかせてえ、それだけだ」

 全てを支配する王が最終的な目標ではなく、相手を導かせて世の中へ羽ばたかせたいと願うマァスンの意向にモンジュロは失然としてしまう。

「……あなたは決して、心変わりなどしていなかった。なのに俺は……それを察する事すら出来ず……!」

「おっと、ソレはお前の悪い癖だぜモンジュロ。お前が項垂れてちゃ、オレが前を見れねえんだよ」

「……確かに、この目はあなたの目ですからな。マァスン様……このモンジュロ、いつまでも御身と共に……!」

 堅物ながら思わず下を俯いて物思いや苦悩で前が見えなくなってしまうモンジュロをマァスンは激励。これにモンジュロも応え、改めて竜の右目として、側近として仕える決意を抱く。

 

 そしてデイ・マァスンは話の矛先をキリトたち聖龍隊の新人達や一般二次元人たちに向けて訊ねた。

「さて……アンタたちの本音を聴かせな、遠慮はいらねえぜ」

「マァスン様を信じろ……どんな言葉でも笑いはしねえ」

 マァスンは同じ時代を生きる者として、種族を問わず相手の本音を聴く姿勢を示す。それに対してモンジュロは、如何なる台詞であろうと主君マァスンは笑い飛ばさない事を言い付ける。

 するとデイ軍と合戦する前に二次元人と三次元人の在り方について自問自答していたキリトが言葉を発する。

「……本音と言われてもね。おれ達は所詮、三次元人の良い様に働かされる身の上だ。本来の物語とは別の未来を与えられ、今では同種族を狩り漁る日々……こんなおれ達に、今さら目標だなんて」

 このキリトの本音を聴いたマァスンは、指をパチンと鳴らしてキリトに指差して言った。

「It is useless,! どんなヤツにでも夢や目標って光が……希望ってのが無きゃ、世の中は詰まらなくなっちまうもんだぜ」

 マァスンはキリトに歩み寄ると、彼の目前で語り出した。

「オレはお前達の物語……いわゆる筋書きってのは丸っきりしらねえし、興味もねえ。だが、どんなヤツだろうと生きる目標が無いヤツは放って置けねえ」

 するとマァスンはキリト首根っこを掴むと半ば強引に歩かせ、本陣高台の端っこまで連れてきて言う。

「観てみろ、この絶景! こんな景色が世界中に山ほどあるんだ! こんな景色の前じゃ、オレ達の悩みなんてちっぽけなもんじゃねえか!」

 人間すら小さく感じさせる渓谷からの絶景に、マァスンは人間の悩みや考え事が広い世の中では如何に小さいかを説く。

「この絶景は変わらねえ。だけどオレ達が変われる可能性は山ほどある! Boy、お前は……お前さん達の未来はInfiniteなんだ!」

 デイ・マァスンより自分達が変われる可能性を示唆され、自分達の未来には無限の可能性がある事を告げられてキリトたちは唖然としてしまう。

 するとデイ・マァスンは後ろを振り向き、隣のキリトにも聞こえるよう新人達や二次元人たちにハッキリと演説する。

「二年前の乱世以降、オレたち漢族とウイグル族はつまらない揉め事を綺麗さっぱり無くして共存している。……まあ、まだ一部の連中はお互いの事を忌み嫌っているけどよ」

「………………………………」

「オレが言いたいのはだ。テメエら二次元人には確かに何かを変えるpowerってのが秘められているのかも知れねえ。まあ、誰でもそうだが……それを引き出せるかどうかは己自身を如何に成長させられるかって事だ」

 漢族とウイグル族の共存が一部を除いて叶った現状に、二次元人の変えられる可能性を説くマァスンは、こう付け加えた。

「……オレもそう教えられて生き抜いてきた。漢族の名士としてだけじゃねえ、本物の漢としてオレを鍛えぬいてくれたヤツから教わった当て付けさ」

 そして最後にマァスンは覇気とした面構えで話を締め括った。

「オレは、敗れた連中だけじゃねえ……この世の全ての連中にオレと同じchanceを与えてェんだ!」

 人生の敗者だけでなく、この世の全ての人間に平等にチャンスを与えたいと己の野望を打ち明けるマァスン。

 するとタク・モンジュロも主君の話にある事実を付け加えた。

「お前達のかつての総長、小田原修司もマァスン様と同じ野心を抱いていた。……誰が忘れようとも、この瞳だけは覚えている。恐怖と力だけでなく、圧倒的な威圧で多くの者を従えた鬼神の姿をな」

 鬼神 小田原修司も今のデイ・マァスン同様に人々を支配するのではなく、人々を導きたい想いがあった事をモンジュロは伝えた。

 このデイ・マァスンとタク・モンジュロの話を聴いて、聖龍HEADが語り出した。

「そうだ、何も王ってのは支配するだけじゃない。周りを治め、同時にその周りを救う役目も担っているんだ」

 メタルバードに続いてジュピターキッドも王について語った。

「そう、実際に僕達だって王や神という名称はあるものの、全てを一人で決めている訳じゃない。みんなで良く話し合って、何が正しくて何を直さなければいけないのか意見を出し合って決めていく……いわば、他人の力も頼らなきゃならないのが王って存在なんだよ。孤立した王は王じゃない」

 すると最後に赤塚組の大将が話を纏めようとする。

「要するにだな……支配するだけじゃ王様ってのは孤立しちまうし、周りの人たちの事を良く考えてなきゃ王とは名乗れねえって事よ」

 笑いながら語る大将自身、上手く纏めたつもりであろう。

 

 かつてタク・モンジュロがデイ・マァスンに光を与えた事を、今度はマァスンが竜王と名乗って絶望した人々に希望を与える真意を知らされる二次元人たち。

 マァスンのその真意、そして野心、まさしく真の王なりて――――。

 

 

[右目の夕食と朝の旅立ち]

 

 デイ・マァスンとタク・モンジュロは自分たち漢族の現状と二次元人出現以降変われた両民族の蟠りの解消についても色々と語ってくれた後、両者の計らいにより聖龍隊と赤塚組と一般二次元人たちは夕食をご馳走してもらう事になった

「……この俺が直々に用意した食膳だ。残した連中は片っ端から叩きのめす! 良いなッ」

「オッス!」

「では…………食せ!」

「いやっほーーッ!」

 厳つい顔立ちで割烹着を纏ったタク・モンジュロにデイ軍の荒々しい兵士達が一堂に参列。皆で食事をする場に聖龍隊らも御呼ばれされたのだが、彼らの圧倒的な威圧感に若干の戸惑いを抱く新人に二次元人たちの箸は止まってしまっていた。

 すると出された食事に手を伸ばさない二次元人たちを見て、デイ軍の兵士の一人が厳つい顔で声をかける。

「おい、どうしたんだお前ら? まさかモンジュロ様の飯が食えねえって訳じゃねえよな?」

「い、いえ……そんなつもりは……」

 厳つい顔で指摘され、新世代型の琴浦春香は大変戸惑う。すると他の兵士が続けて言った。

「モンジュロ様の飯は絶品なんだ! ウチらの領地を開拓して、最高の野菜を作り上げてくださった御方なんだぜ」

 この兵士の言葉に、二次元人らと共に食膳の場にお呼ばれされて出された食事に齧り付く勢いのバーンズが喋った。

「その通り! モンジュロの作る野菜は格別でな。本来なら犬猿の仲であるウイグル族はもちろん、他国からも仕入れに来る業者が多いんだぜ」

 バーンズや兵士の賞賛の言葉を聞いたモンジュロ本人は、正座して皆の食事を見守りながら熱く語った。

「我が中国は、以前より自然破壊や汚染など、食物を育てるのには余り適してない環境だった。だが、二年前の乱世で共産党が壊滅して以降、俺は自らの意志と力で汚染された土壌を掘り返し、土そのものを新しくする策を講じた。それからは毎日欠かさず、野菜の調子を見ながら根気良く育てて料理したのが今お前さん達の前に出ている食いもんだ!」

 自ら率先して野菜作りに励んだ事を熱く述べるモンジュロの言葉を聞いて、将来一流の料理人を目指す幸平創真たちが目前に出された食膳に興味を示した。

「なるほど、そこまで言うのなら食ってみるとしますか。パクッ………………ん! 美味い!」

 食べてみると確かに歯応えの良い野菜に程よい味付けがなされている食事に新世代型達は絶賛した。

「Ha、美味くて当たり前だろ。なんせモンジュロが手塩にかけて作った野菜なんだからよ」

「ま、まぁ……不味くはないですわ」

 マァスンの二枚目な面構えに、新世代型の薙切えりなは照れながらも返事する。

 しかし食べ続けていると、ある事が二次元人たちの目に止まった。

「……何だか……」「ええ……肉が無いわね」

 出された食膳のおかずには野菜ばかりしかなく、肉っ気がない事実に気付く幸平創真と水戸郁美(みといくみ)。すると二人の文句混じりの台詞にモンジュロの言葉が飛んできた。

「何を申す! 大豆の煮つけがあるであろう!」

「いや、それタダの豆だから! 肉じゃないからっ」

 モンジュロの発言にバーンズがツッコむが、モンジュロは平然と申し返した。

「大豆は畑の肉と申されるであろうが!」「それでも豆は豆だよ!」

 大豆は畑の肉と自身の考えを改めないモンジュロにバーンズが絶えずツッコミ返す。

 そんな賑やかな食事時の最中、ミラーガールは隣でちょっとずつ食事を口に運ぶシバ・カァチェンに優しく話し掛けて来た。

「カァチェン、いま大丈夫?」

「せ、聖女…………はい、大丈夫ですが……」

 カァチェンは少し驚いた様子でミラーガールと語り合い始めた。

「あなたはマァスンと一戦交えたって言うけど、何か変われた?」

 ミラーガールはカァチェンの心境を気にして問い掛けるものの、カァチェンは少し虚ろな眼差しで申し開いた。

「はぁ……デイ氏が竜王を自負する意、選別ながら少し理解できたのかも知れませぬ……」

「……そっか、少し理解し合えただけでも良くやったわ。今日はお疲れ様、カァチェン」

 カァチェンの答えに返事したミラーガールは、近くにあったお茶を手にカァチェンの茶飲みに注ごうとする。それを見たカァチェンは申し訳なさそうな心境ながらも、慌てて茶飲みを手に取り、ミラーガールが注ぎ易いように手に持つ。

 ミラーガールは温かいお茶をカァチェンの茶飲みに注ぎ入れ、カァチェンは熱々のお茶で口を潤した。慈愛深いミラーガールが注いでくれたお茶は、カァチェンの心を底から温めてくれた。

 すると皆が食事を堪能する食堂に、一人の黒髪の女性がやって来て食事をする皆々に声をかける。

「皆様、どうでしょうか? 今宵の御食事は……」

「あっ、奥方様!」

「美味いっすよ! これも奥方様がモンジュロ様と一緒に作ってくれたからっす!」

「口先だけは達者な連中だな」

 食堂にやって来た黒い長髪の女性を前に、デイ軍の兵士達はその美貌に見惚れ多種多様に騒ぎ始める様を見て、主君のデイ・マァスンは兵士達の変わり様に呆れてしまう。

 そして食堂にやって来た女性は、徐に食事の場をタク・モンジュロと仕切り食事をしているデイ・マァスンの横へと正座する。

「? その人は……?」

 出された食事を美味しそうに頬張る真鍋義久が訊ねると、デイ・マァスンが女性を皆に紹介する。

「おっと、紹介が遅れたな。コイツはオレのwife、ウェインだ」

「リ・ウェインです、以後お見知りおきを」

 そういって頭を下げるリ・ウェインの両手の指は全ては失われていた。

 すると彼女の両腕が失われている事実に驚く新人と二次元人達にバーンズが説明した。

「リ・ウェインは生まれながらに両手の指が全て無いんだが、そのハンデを乗り越えて今や中国が誇るトップピアニストとして名を馳せている。両足だけでピアノを弾く姿とその完璧な演奏に多くの観客を沸かせている。今ではデイ・マァスンと結婚して幸せの絶頂さ」

 バーンズの説明にリ・ウェイン自身は顔を赤らめて照れるが、そんな彼女の肩を抱き寄せてデイ・マァスンは自慢げに言った。

「どうだ? 美男美女のBest coupleだとは思わねえか?」

 言われてみれば双方とも、身体にハンデを持ちながらも美形であり、確かに美男美女の夫婦ではあった。

「確かに良い夫婦ではあるな」

「Ha! まあ、鬼神と聖女のcoupleよりは驚く事じゃねえけどな」

「言ってくれるわね」

 バーンズの言葉にマァスンは自慢げに語るが、ミラーガールはそれを笑い飛ばす。

 こうして一晩、聖龍隊と赤塚組の一行はデイ軍の許で過ごしたのだった。

 

 明朝、聖龍隊と赤塚組は漢族の長デイ・マァスンの領地から発とうとしていた。

「いやーー、相変わらず朝飯も美味かったぜ」

「当たり前だ。俺が手塩にかけて育てた野菜を不味く料理するとでも思うか?」

「違えねえ、はは……」

 領地から発とうとしていた聖龍隊は、食材である野菜を丹精に育て、そして調理したタク・モンジュロと和やかに会話する。

 まだ朝日が昇って間もない明朝の中、発とうとする聖龍隊と赤塚組の集団の中から新世代型の幸平創真がタク・モンジュロに話し掛けた。

「なあ! あんたの作った野菜、最高だったぜ! 頼むっ、この先オレ達も満足できる料理がしたいんだ……あんたの野菜を分けてくれねえか?」

 将来、一流の料理人を目指す創真たちの訴えに、モンジュロは毅然とした物言いで答えた。

「今は野菜の売り買いはやっちゃいねえんだがな……まあ、そんなに気に入ってくれたんなら分けてやっても構わねえか。選別だ、持って行け!」

 タク・モンジュロは二言目に野菜を分け与えてくれる事を述べてくれた。これには創真たちは心から感謝した。

 そんな和気藹々とモンジュロと談合する新世代型を横目に、バーンズはデイ・マァスンに強く問いかけた。

「……マァスン、お前さんは本当に竜王を目指すのか? 誰をも頷け、導かせる……そんな王に」

 するとデイ・マァスンは強く己の意志を主張する。

「ああ、オレの考えは変わらねえ! かつて家中から蔑にされ、後ろ指を指されてたオレをモンジュロは常に支えてくれた。お陰でオレは救われたんだ」

「………………………………」

「……オレは、かつてオレ自身を救ってくれたモンジュロの様に……生きる兆しを、希望を見失った連中を救ってやりてえ! その為の王としての名乗りを挙げるんだ!」

「………………王として、人を導く道を選ぶか。だが、人を導くなら王でもなくとも……」

「How、可笑しな事を言うな」

「?」

「……お前さんたちも王として……人の上に立てていたからこそ、人を導けたんじゃねえのか?」

「! そ、それは……」

 デイ・マァスンからの指摘に、バーンズは上手く言葉を返すことができなかった。

 しかしそんなバーンズを微笑するかの如く、デイ・マァスンはハッキリと言い切ってみせた。

「ところで同盟の話だが……確かに情勢を乱した足正派の連中とやり合うにはお互いまだまだ遠い。だが、しばらく考えさせてくれ」

 マァスンの主張に納得がいかないバーンズに、マァスンは迷いなき独眼で言った。

「今この世界には、光を失った連中が五万と居る。ソイツらを導く為にも……オレは、ソイツらに会わなきゃならねえ」

 そしてバーンズに最後にこう述べた。

「まだまだオレの道は終わらねえ。それまで少し待っててくれ、My friends」

「……ああ、どんな答えになろうとも。オレも待ってるぜ!」

 戦友と慕ってくれるデイ・マァスンの言葉に、バーンズも待ち続けると強く返答し、お互い力強く握手する。

 バーンズと握手を交わしたデイ・マァスンは、更に昨日の夕刻に語り合ったキリトたち聖龍隊の新人達の前まで歩み寄ると彼らに話し掛ける。

「お前達はどうだった? オレたちデイ軍と一戦交えてみて……ウチの軍も捨て難いだろ」

「ふっ、そうね。まあまあの腕前だったと賞賛しておくわ」

「フッ、可愛げのねえお嬢ちゃんだ」

 マァスンからの問い掛けに愛想なく返答する暁美ほむらの態度を前に、マァスンは可愛げがないと鼻で笑う。

 そして聖龍隊の新人に、一般の二次元人たち全員に聞こえるようマァスンは言い放った。

「漢ってのは時には拳と拳……刃と刃を交えなきゃ解り合えない時ってのが多いもんだ。これからアンタ達が会う武人も、そんなヤツらばかりだろうから気を抜くな!」

 武人たるもの時には刃と刃を交えて、真剣勝負をしなければ理解し合えない事実を述べるデイ・マァスンの主張にキリトたち聖龍隊の新人に戦闘タイプの新世代型たちが耳を傾ける中、マァスンは最後に竜の雄叫びが如く言い放つ。

「また未来(まえ)が見えなくなったら、いつでも来い! この竜王が直々に導いてやる! この竜の爪でな」

「……はい!」

 六本の鞘に納められた刀の柄を煌めかせながら説くデイ・マァスンからの力強い言葉に、キリトもまた力強く返答した。

 そして聖龍隊は次なる武将と会うため、デイ軍の領地を発って行った。

 ――――が、彼らが発ってから姿が見えなくなった頃合いを見計らい、モンジュロが主君マァスンに申し開いた。

「……マァスン様」

「なんだ、モンジュロ?」

「先日の一件、やはり聖龍隊には話さない御積りですか?」

「ああ、今のところはな。ズル賢いやり方かもしれねえが……足正派の連中を叩くには、どっちの勢力に着くべきか判断しねえとな」

「……そのお考え、私も同感ではありますが……でもまさか、本当に聖龍隊と離反していたとは」

「まったく、驚かされちまったぜ。ジュン達が聖龍隊と袂を分かち合ったとは」

 デイ・マァスンの手元には一通の書状が忍ばされていた。それは聖龍隊から離反したスター・コマンドーからの同盟への誘いが綴られた文章が記された密書だった。

「あの一枚岩であった聖龍隊が、こうも簡単に真っ二つに分かれてしまうとは……」

「あのジュンの事だ。他の武将の所にも、オレと同じ密書を届けている事だろう……聖龍HEADとスター・コマンドー、どちらが主権を握るかの大一番って時にオレが着くべき側もハッキリと見定まる筈だ」

「……それが、竜王たる貴方の出した答え、か……」

「ああ、単に降るって訳じゃねえ。平等な立ち位置でオレと肩を並べられる連中がどっちなのか………………見せてもらうぜ、聖龍隊!」

 なんとデイ軍には既に、村田順一率いるスター・コマンドーから同盟和議の書状が送られていたのだ。

 果たして、デイ軍は最終的にどちらの側に着くのか?

 聖龍隊か? はたまたスター・コマンドーか?

 

 一方その頃。デイ軍の領家からこっそりと抜け出す怪しい人影が……。

「何処、だぁ………………獲物は、何処だぁ………………ケケッ」

 ミラーガールに殴られ気絶していたゴ・マータンが目覚め、再び奇刃を手に目の敵にしている聖龍隊を追って単身駆けるのだった。

 彼の虚ろな眼差しに宿るのは、果たして狂気か、闇か。はたまた――――

 

 

 

[アレンジ(パロディ)武将紹介]

 

デイ・マァスン

 所属:中国 漢族郷士

 出身:三次元界/中国

 武器:刀(一刀流、六爪流)

 肩書:漢族筆頭(かんぞくひっとう)

 登場時の書き文字:推参

一人称:オレ

 属性 雷

 年齢は21歳。

 デイ軍の兵士たちから「筆頭」と呼ばれ、強い主従関係にあるタク・モンジュロを始めとする部下共々不良風の気質を持つ漢族を率いる若きカリスマであり、英語と六本の刀を巧みに操るクールガイでもある。

 18歳のごろ、ウイグル族とは比べ物にならない劣化した教育を受けるのを拒んだマァスンは一人イギリスへと留学。そこで様々な文学を習得するが、留学していた大学が爆破テロに遭い、その爆発の破片が右目にもろに突き刺さり、完全に右目の視力を失って帰国。誰もが右目の視力を失ったマァスンに哀れみと軽蔑を向けられる中、幼い頃より彼を教育していたタク・モンジュロにより自身と武術の腕を磨いていった。

 現政奉還による乱世の幕開けと共に「竜王」の名乗りを上げ、天下統一を目指しアジアを駆け巡る。

 

 

タク・モンジュロ

 所属:中国 漢族・参謀

 出身:三次元界/中国

 武器:刀

 肩書:仁吼義侠(じんこうぎきょう)

 登場時の書き文字:参陣

一人称:俺(マァスンの前のみモンジュロ)

 属性:雷

 デイ・マァスンが全幅の信頼を寄せる武将。

 頬傷・オールバックに日本刀所持という外見のためか、風貌はどことなく893に見える。しかし主であるマァスンも似たようなものなので気にしてはいけない。

 年齢は30〜31歳前後。

 「竜の右目」の異名を持つ、デイ・マァスンの腹心。達人の域にある剣技はもちろん、冷静な判断力を持つ軍師としても軍には欠かせない存在。

 竜王の名乗りを上げた主君を支えつつ、道を外さぬようにと見守る。

 

 

リ・ウェイン

 デイ・マァスンの家内。生まれながらに両手の指がないハンデを乗り越えてプロのピアニストに。

 両腕を失いながらもピアニストとして成功した実在の人物、「リウ・ウェイ」をモデルにしている。

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