現政奉還記 武将達との会合編 作:セイントドラゴン・レジェンド
[ギリス大貿易商の孫]
バーンズやミラール達より聞いた二年前のアジア大戦での出来事、破邪王と
そんな中、バーンズたち聖龍HEADは次なる行き先をアジア中央に見定め、進行する。
バーンズ達が向かっているのは、かつてミャンチィが自らの手で焼き払ったと言われる彼女の故郷に突如として建設された巨大テーマパークとの事。
何ゆえ、テーマパークなどに立ち寄るのか気になった二次元人たちは徐にバーンズに問い掛けた。
「な、なあ、バーンズ……」「どうした、真鍋?」
新世代型の真鍋義久がバーンズに声をかける。バーンズは真鍋の方に顔を向けると、真鍋はバーンズに問い質す。
「なんでまた、テーマパークなんかに……? と、いうか、つい最近になって出来上がったテーマパークなんて行ってどうする?」
最もな意見を述べる真鍋の問いに他の二次元人たちも同意見であった。するとその質問にバーンズは真顔で答えた。
「ああ、ちぃっと会っておかなきゃならない相手がいるんでね。その相手の会合先が、そのテーマパークなんだよ」
「誰と会うんですか?」
同じく新世代型の直枝理樹が問い掛けると、バーンズは率直に答えた。
「イギリスの貿易商だ。でっけぇ貿易商で、オレたち聖龍隊に幾度と融資をしてくれている会社でね。今後のために、また融資してくれるよう会合しておきたいんだ」
「これから私たちが行くテーマパークって、その貿易商が造ったの?」
新世代型の棗鈴が訊ねると、これまたバーンズが答えた。
「いいや、正確にはその貿易商の孫が造ったテーマパークなんだが……これまた無茶苦茶なランドでね」
「無茶苦茶?」
新世代型の斉木楠雄が不思議がると、バーンズは意を決したかのように話し出した。
「……お前ら、修司教って聞いたことがあるか……」
「し、修司教……」「確か、小田原修司を正式に崇め奉っている宗教団体……」
修司教なる単語を聞いて、新世代型の纏流子と栗山未来が呟くとバーンズは話を続ける。
「そう、言っておくけど修司だけでなく一応はオレたち他の聖龍HEADも修司のオマケみたいな扱いだけど奉ってくれている……はぁ、その宗教団体の設立者がまた困った奴でよ」
「困った奴?」
プロト世代のギュービッドが首を傾げると、バーンズはその困った奴について語り始めた。
「ああ、そうだ。大友宗助って小僧なんだが、そいつがやけに修司を推し進める、いわば酔狂者みたいな子供なんだ。修司や、その修司が設立したオレたち聖龍隊を支援してはくれているんだが、当の本人は修司教なんて困った宗教なんか作って……しかも修司教を利用してボロ儲けしている始末。修司は若気の至りだって敢えて自由奔放にさせていたんだが、それが遂にアジアの荒地に修司教のテーマパークなんか造っちまって……今じゃ、修司教の最高責任者だしよ」
「なるほど。その修司教の最高責任者の祖父である貿易商と会合するために、その修司教のテーマパークに訪れるんですね」
バーンズの話を聞いて新世代型の出雲ハルキが納得すると、バーンズはそれに返答する。
「そう言うこった。ちょうど貿易商の祖父さんは孫が造ったって言うテーマパークに足を訪れているみたいで、会合先もそこを指名された訳だ」
「困ったほど宗教活動してるなら、注意すればいいのに……」
話を聞いてプロト世代のチョコが愚痴を零すが、彼女の愚痴にバーンズが困り顔で答える。
「そうは行かないんだ。相手は例え子供と言えど、イギリスのトップクラスに君臨する大貿易商の孫だ。下手な事はできないし…………あ、そうだ!」
と、ここでバーンズは何かを閃いた。
「お前たち、その宗助と仲良くなったらどうだ?」「はっ!? なんで俺たちが……!」
バーンズの突然の申し出に新世代型の幸平創真たち二次元人たちは激しく困惑する。
するとバーンズはその理由を詳細に述べた。
「仲良くなって置いた方が得だぜ。宗助の家は、政財界に多大な影響を持っているから、お前たち新世代型の力になってくれるかもしれない。それに宗助って、あまり交友関係が少ないからな。自分が設立した修司教の信者や幹部とは交友が深いが、それ以外の交友関係は余り聞いてはいない。そこでお前たち新世代型と仲良くなれば、今後なにか不祥事が起こった際の力になってくれるかもしれない」
「要するに……あんた達HEADはその宗助の祖父さんと呑気に外交して、その間に俺たちが宗助って子供の面倒を見ろって話だろ」
「ま、まあ……別に待遇が悪いとは思わないぞ。宗助は修司同様、二次元人に対しての信仰心が厚いからよ」
バーンズの話を聞いて新世代型の宮沢謙吾の文句に近い言論を受けて、バーンズ本人は実直に二次元人たちに宗助が二次元人を贔屓にしていると平謝りで申し開く。
だがバーンズたち聖龍隊の懐事情に通じている事情も相まって、二次元人たちは渋々バーンズの嘆願を聞き入れる。
「本当にありがとよ、お前ら! なにかあるといけないし、スター・ルーキーズも護衛として連れていけ。あ、それからカァチェン、お前も一緒に修司教で楽しんでこいや」
「は、はぁ……私もですか……?」
薄暗い面差しで自分も赴くのか問い返すカァチェンに、バーンズは笑顔で言った。
「おうっ、たまには楽しむのも悪くはない! 時には息抜きも必要なんだぜ、カァチェン」
「は、はぁ……息抜き、ですか……」
カァチェンは息抜きといわれても難しい顔を浮かべてしまう。
そんなカァチェンを差し置いて、一行はもうすぐ修司教の新しい拠点であるテーマパークに到着しようとしていた。
「よし、オレたち聖龍隊は宗助の祖父さんと会合している! その間、お前らは修司教の…………ふぅ、修司ランドで楽しんで来い!」
「修司ランド!?」
バーンズの口から飛び出た修司ランドの単語に、一般の二次元人たちはもちろんルーキーズの新人達も驚愕した。
[修司ランド 開園]
「さぁ、皆さん! 修司教の時間ですよ!!」「オ~~修司~~~~」
一人の金髪の少年の言葉に、多くの信者が反応する。
「……………………………………………………」
その少年と信者達の背景を見て、会合に向かった聖龍隊と赤塚組以外の面子は皆揃って唖然と口を開けてしまう。
何故なら少年達が賛美歌にも近い、修司や聖龍隊を奉る歌を歌っている辺り一帯が、修司や聖龍HEADを施した乗り物や彫像などが点在している巨大テーマパークだったからだ。
「ついに修司教の為の修司ランドが完成しました! ギャロップ宗茂! 開園セレモニーの用意ですよ!」
「か、かしこまりました!(ここでもどうせ、民衆からお金を巻き上げるんだろうな……まっ、いつものように頑張ろう!)」
金髪の少年が傍らに付き従っている強面の髭面の男性に命ずると、男は潔きよく頷く。が、その心中では複雑な心境を抱えていた。
修司ランドのグランドオープンに和気藹々と喜びの舞を舞っている少年に、聖龍隊ルーキーズのキリトとアスナが駆け寄り声をかける。
「おい、お前……」
多少、横暴な言動で声をかけてきたキリトを目の当たりにした少年は、目の色を変えて嬉々とした。
「あ、あなたは! 漆黒の剣士、ブラックソードマスターの桐ヶ谷和人ことミスターキリト! そしてその恋人にして麗しい肉食系美少女のミス・アスナ! まさかこんなところで御会いできるなんて……!」
「き、君、私たちのこと知っているの……?」
自分達のことを知っている素振りを見せる少年を前に、アスナが訊ねると少年は笑顔で答え返した。
「はい! もちろんですとも! ソードアート・オンライン、僕も拝見しています」
すると此処で少年は二人の背後で待機しているAW組とマギカ組の新人達にも気付いた。
「おおっ、これはなんと……! アクセル・ワールドに魔法少女マギカの面々まで……ああ! いま僕は夢を見ているのでしょうか? こんなにも有名なキャラクター達が目の前に勢揃いしているなんて……!」
今にも嬉しさの余り気絶しそうな勢いの少年にただただ困惑してしまう三組。
更に少年は他の二次元人たちにも気付いた。
「おおっ、これはミラール嬢、貴女もいると言う事は彼らは聖龍隊の新人達で宜しいのですね?」
「ええ、その通りよ」少年の質問にミラールは厳つい表情で答え返す。
「それでは彼らは何なんですか……? はっ、ひょっとして……!」
事実を察した少年にミラールが言った。
「お察しの通り。彼らが今話題をさらっている新世代型の二次元人よ」
「ど、どうも……」
二次元人を見た途端、目の色を変えてきた少年に対して新世代型の真鍋義久は思わず頭を下げた。
すると少年は二次元人たちに駆け寄ると、徐に両手で強引に握手を真鍋と交わした。
「これはこれは! いま話題沸騰中の新世代型の皆様方! よくぞ修司ランドにやって来てくれました!」
思いっきり少年に手を掴まれ激しく揺さぶられる真鍋は目を回してしまう。
そして少年は徐に態度を改まって初対面の二次元人たちに遅れながら挨拶をする。
「申し送れました。僕はこの修司教の最高責任者にして、修司様をこの世で最も尊敬・崇拝する大友宗助と申します! 以後、お見知りおきを」
「は、はぁ……」
丁寧な挨拶を述べる大友宗助の頭を垂れる様子を前に、二次元人たちも同じく頭を下げる。
すると此処で宗助は何処からともなく数枚の書類を取り出すと、最初に話し掛けて来たキリトとアスナの二人に詰め寄った。
「いま話題のホープであるあなた達にぴったりのイベントを式典しようと思っているんですが、どうですか? 修司教で結婚式を挙げれば、修司教信者による豪華な演奏や披露宴がもれなく格安で提供できます! 新人とはいえ、聖龍隊の方々なら更にお安くしておきますよ」
「え!」「け、結婚なんて、まだ早い……」
結婚と言われて思わず頬を赤く染めてしまうキリトとアスナの両者。すると照れる両者をせがむ様に宗助は二人の顔に書類を押し当てる。
「さあさあ! 今のうちに予約しておいた方が得策ですよ! 今なら特典中の特典がもらえる大サービス付き!」
「そ、そうなのか………………あ? おい、ちょっと待てよコラ!」
突然キリトの顔色が一変した。キリトは宗助が押し付けてきた書類の最後の方に目を向けてみると、そこにはトンでもない特典の正体が小さく記載されていた。
「おい、こりゃ何なんだよ! この書類、一度サインすれば同時に修司教の信者に仕立て上げられちまうじゃねえか!!」
「ええっ!」「おいおい、問答無用で信者入り?」
キリトが見付けた事実を聞いて、アスナも有田春雪も愕然とする。
しかし事実を突き付けられた大友宗助は顔色一つ変えず、堂々と言い切った。
「そうです、その通りです! よくぞ気付きましたね。これ以上にない特典はまず無いでしょう。素晴らしい結婚を修司教で祝えると同時に、夫婦揃って修司教の一員に! こんな素晴らしい発想、他にはありません!」
「別にオレ達はアンタの所の宗教には一片の興味もないんだからよ!」
「き、キリトくん落ち着いて!」
悪びれる様子もなく平然と最もな言い訳を語る大友宗助に思わず飛び付こうとするキリトをアスナたち仲間たちが必死に押さえ込む。
すると宗助は、そんな怒り心頭状態のキリトを尻目にその場の皆々に。
「そうだ! これから修司ランドの開園セレモニーを考えるのですが、皆さんの意見も取り入れたいと思います。修司教の教え一つ、身分や種族関係なく共に問題を解決しよう」
「なんで俺たちがそこまで相手しなきゃならないんだ、モグッ……!」
一緒に開園セレモニーを考えようと提案してきた宗助の傍若無人な態度に文句を言おうとするクラインに総部隊長のミラールが背後から口を押さえてクラインに言い聞かせる。
「堪えて堪えて。あの子の我侭な態度はいつも愛想付かされているのよ。でも大事な聖龍隊の融資先のお孫さん、蔑ろにはできないのよ」
このミラールの言葉を聞いて、他の二次元人たちもまたまた渋々賛同するしかなかった。
開園セレモニーの準備を整えている間、二次元人たちは交代交代で一応は修司ランドの中に設備された観覧車やジェットコースターに登場して満喫はしていた。
「さぁ、演目を創造しますよ! どんなミュージックで攻めましょうか……」
「求めるのは、客の金払いがよくなる音楽ですね」
演目を想像する宗助の傍らには、洗礼名を承った兵士と側近である強面の髭面の大男が立っていた。
と、ここで宗助の傍らに付き従い続ける大男に新世代型の宮内れんげが歩み寄る。
男は厳つい顔立ちながらも温厚な人柄で、自分の足元に歩み寄ってきた宮内れんげの頭を優しく撫でた。
すると「子供をあやしてどうするんですか! こちとら商売なのですよ宗茂!」と宗助が一銭にもならない行為だと、男を咎める。これに対し男は「申し訳ございません……!(この程度の理不尽は当たり前……)」口では謝罪するものの、心中ではいつもの理不尽な扱いには慣れっこと言う心情を呟く。
実はこの時、新世代型二次元人達はテレパシー系の能力、共有感知で男の愚痴が全て赤裸々に伝わってきていた。本来は三次元人の思考のみは読めない筈の二次元人のテレパシーだが、この男の実直な性分から思った事が全て呟きの様に新世代型にも伝わってしまうらしい。
と、ここで宗助はまたしても園内で遊んでいる二次元人たちにも伝わるよう拡声器で園内中に自分の声を響かせた。
「皆さん、良く遊んでよく考えてください! 素晴らしい案を出した方には特別に修司教の幹部クラスにもと考えています」
「修司様のご加護は手前らに……!(だって我が君がこう言えって……!)」
宗助に続いて拡声器で園内の皆に言う男だが、内心では宗助に無理やり言わせられているみたいだ。
「次は修司様を描く物語! 今回はどんなストーリーで行きましょうか……」
(どの話でも、修司殿が最後には
すると此処で宗助は案が思いつかず、遂に壁に立てかけられている小田原修司の写真を前に祈祷し始めた。
「おーー修司様! どうか迷える私の想いに御答ください……!」
しかし一分もしない内に、宗助は祈祷をやめて側近の男に怒鳴り散らした。
「宗茂! 雷切の音がうるさくて、祈りに集中できません!」
「申し訳ございません……!(この程度の理不尽は朝飯前……)」
理不尽ともいえる宗助の注意に、男は平謝りするものの心中では嘆いていた。
そんな男を見て見れぬ振りできない纏流子と栗山未来が優しく声をかけた。
「な、なあ、あんた……」「はい、なんでしょう……」「少し外の様子を案内してくれませんか? 私たち、ここは初めてなので」
これは流子と未来による、男を外へと連れ出し心労を労ってあげようかと言うささやかな気遣いであった。二人の申し出に、男は厳つい顔に笑みを浮かべつつも答えた。
「ありがとうございます。しかし私には宗助様をお守りするという役目がありまして……」
だが、この忠節溢れる男の言葉に宗助は「別にあなたは外で修司くん人形のマスコットでもやっていなさい。その方がお似合いですよ」と、なんとマスコット役を命じられてしまう。
男はこの命令に何の文句も言わず「畏まりました」の一言で、その場から立ち去ってしまう。
「あ、ああ、ちょっとオッサン」
纏流子や栗山未来たち【キルラキル】と【境界の彼方】の面々は男を追って外へ。
外に出てみると、男は言われたとおり、小田原修司の姿を模した修司くん人形のマスコットの着ぐるみを着用し始めていた。
「お、おいアンタ! あんなワガママ言い放題のガキの戯言に付き合う必要はないんだぞ!」
流子は男に、宗助の言い分に無理に従う必要はないと説くが、男は毅然たる面構えで流子たちに言った。
「いえ、手前は宗助様を支える土台……いわば、花を立たせる土、それが手前の武士道なのです」
「武士道、いや正確には忠節といった方が適切だが……貴殿は一体、何ゆえ其処まであんな子供に仕えている?」
新世代型の
「主に仕える、それが私の武士道なだけでございます。深い意味などありませぬ」
「き、貴殿は一体……!」
余りにも毅然とした態度で己の忠節を貫き通す姿勢を維持する男を前に、
名を尋ねられた男は厳つい顔立ちとは裏腹の、かわいい修司くんマスコットぬいぐるみを着衣した様子で毅然と答えた。
「手前、立花宗茂と申し候……!」
「た、立花宗茂……! 戦国時代に名を馳せた、あの武将の……」
「はい、私はその立花宗茂の子孫に当たる武人。今では先祖の教えに従い、主に忠義を尽くさんとしております」
「………………」
「では、私はこれで。主より下された命がありますので」
そう言って立花は修司くんぬいぐるみを着衣して、修司ランドを徘徊し始めた。
残された【キルラキル】に【境界の彼方】の面々は忠義に厚い立花宗茂の言動に圧倒されてしまった。
[修司教の真実]
修司教が最高責任者、大友宗助の計らいで修司ランドを満喫する事となった二次元人たち。
最初は胡散臭い感じが漂う、小田原修司や聖龍HEADの顔や石造が建てられているだけかと思いきや、意外にも皆で楽しめる絶叫マシンが多数存在していた。
「うわあッ!」「きゃあ~~!」
絶叫マシンに乗って悲鳴を上げる男子や女子達。
そんな修司ランドを満喫している二次元人たちにも、兵士達は修司教への勧誘行為に手を緩めなかった。
「修司教に入ってから、家族と過ごす時間が増えました」
家族との時間が増えたと唱える修司教信者の言葉に耳を貸しつつも、勧誘をきっぱり断る二次元人たち。
その頃、修司教の象徴でもある小田原修司の物語の構想を練っていた大友宗助が、ようやく一つの案を捻り出した。その案は拡声器を通じて園内中に流れた。
「修司様の半生、それは戦いの中で日々、祈りを続ける物語……! 果てなき平和への道と、理不尽な弾圧との……」
(それはワシも賛同はするけども……悪人を容赦なく断罪するってのが抵抗の兆しになっちゃうんじゃないのかな?)
ここで新世代型二次元人は、ランド内で修司くん人形を被って活動している立花の心境を察してしまう。
構想が練られている最中も、修司教の信者達は二次元人とくに新世代型には積極的に勧誘していた。
「修司様の畏怖は永久に不滅です」
小田原修司の畏怖について熱弁しようとする信者からの勧誘に、イオリ・タケシとイオリ・リン子の夫婦は急いで信者と距離を置く。
一方で大友宗助は、最初は皆の意見を取り入れると言いながらも結局は最後まで自由奔放なまでの我侭で次々に構想を決めていってた。
「最後は、ショウを彩る背景を決めましょう!」
「夢溢れる非現実的空間では、定価が上がっても文句は言わせません!」
そう、修司ランド内では聖龍隊のグッズを、聖龍隊はもちろん原作者にも許可無く製造しては大量販売していた。
「宴で喉はカラカラ、体力減少……そこでちょっと高めのマーメイド印の聖水で一儲け!」
「花火と言えば、セーラーマーズの特大花火。一個たったの五千円です!」
聖龍HEADのキャラクターグッズをここぞとばかしに売り付けようとする信者達。だが二次元人である彼らは一向に買う気など湧かなかった。
と、皆が思い思いにランド内を楽しんでいたその時。
「た、助けてくれぇ……」と何処からとも無く助けを呼ぶ弱々しい老人の声が聞こえて来た。
「! 何処からか声が聞こえる……?」
新世代型の瀬名アラタが辺りを探索してみると、建物の影に一人の痩せ細った老人が倒れていた。その老人は両足に鉄球付きの足枷を嵌められており、かなり衰弱し切っていた。
「こ、これは……!」
老人を見て一驚するアラタ。するとアラタの姿を探していた出雲ハルキと星原ヒカルの二人が駆け寄ってきた。
「アラタ!」「どうしたんだい?」
二人が声をかけると、アラタは指を差して建物の影に身を潜めている老人を指した。
「あ、アラタ! このお爺さんは……」
「いや、分からない。だけど見た感じ、かなり衰弱し切っているみたいなんだ」
「早速、宗助さんに伝えないと……」
ハルキ、アラタ、ヒカルは衰弱している老人を抱えて大友宗助の許へと急いだ。しかしこれが波乱の展開になるとは露知らず。
三人は衰弱し切っている老人を、構想が練り上がったために外へと出ていた大友宗助の元へ差し出した。
「宗助さん、このお爺さん、かなり衰弱し切っていますよ」
「なんで修司ランドに、この様な御老体がいるのか教えてもらいたいですね」
「正直に言ってください」
アラタ/ハルキ/ヒカルの三名に問われた大友宗助は、衰弱し切った老人を見て何かを思い出したかのように語った。
「ああ、思い出しましたよ! 安心してください、その方は……いいえ、汚物は人権を既に剥奪された
「か、飼うだなんて……! それじゃ動物じゃないですか!」
宗助の言い分に文句を言う瀬名アラタの台詞を聞いて、宗助は顔色を一変させて言い返した。
「なんと罰当たりな! 清らかな動物と穢れ切った
「人間だって動物だ!」
宗助の発言の数々に、周囲の二次元人たちも文句を言い始める。
すると衰弱し切っていた老人が最後の力を振り絞るかのように、宗助に説き始めた。
「お、お前さんこそ罰当たりな事を……! 焼け野原に成り下がった我が村を強引に開拓して、こんなフザけたテーマパークにしおって……! 何より、我らの宗教を勝手に抹消してしまうとは恐ろしい……!」
「ど、どう言うことなんだ? おい、じいさん、何があったんだ?」
老人の戯言にギュービッドが気になり訊ねると、老人の代わりに大友宗助がこの地で過去に何が起きたのか語ってくれた。
「説明してあげますよ、皆さん。その老人はかつて、今は悪名高きカースト制度を掲げる村の村長だった男。皆さんは知ってか知らぬか知りませんが、あの破邪王の側近中の側近、ミャンチィの生まれ故郷だったのが今僕達がいるこの地なのです」
「え! ここが……!」宗助の話を聞いて新世代型の美都玲奈が一驚する。
その後も大友宗助の話は続いた。
カースト制度によりアイドルになる夢を絶たれたミャンチィは、革命軍士の力を借りて自分の夢を絶った故郷の村を焼き討ち、自分を殺めようとした家族を始めとする多くの村民を虐殺。
その後、ミャンチィからはもちろんアジア大戦の戦火にも堪えて残った村民の数は数えるほどしか居なかった。
其処を大友宗助率いる修司教が口八丁手八丁で、カースト制度を支援していた多くの村民や周辺住民をも信者に勧誘して、完全に土地を掌握してしまった。
これに意を反する村長ら村や町の重役達が反旗を起こそうとしたが、数多くの信者や武芸に秀でた立花宗茂の戦力には遠く及ばず、結局は重役達は全ての悲劇の元凶として罰則を与えられ、今なお扱き使われている。
大友宗助はそんな下らない宗教の決まりで夢を絶たれてしまったミャンチィの思いに少しでも応えるべく、彼女が焼き討ちした村々を復興の理由で修司ランドを建設して村長ら重役達を扱いていたのだ。
その証拠にと、宗助はまだ白い布が被せられた大型の石像の布を引っ張って、石像の全貌を皆に見せた。
それは故郷のしきたりによって夢を絶たれ、現実に絶望してしまったが為に運命に翻弄された一人の少女ミャンチィの石像であった。
「こ、こいつは……!」石像を見て一驚する二次元人たち。
すると白い幕を自ら下ろした大友宗助は自慢げに語り始めた。
「どうです、この石像。悪習であるカースト制度が過去にあったと戒めるために造った代物です。過去の苦境を忘れず、後世に遺せよ……そう修司様も仰ってました」
すると宗助の話を聞いていた元村長は、怒りを露にして大声で怒鳴り始めた。
「黙れ! いいか、カースト制度は女の自由を制限すると言いながら、十分女達にも自由はあった! そもそも女が淫らな服装を着ていること事態が間違っているのだ! 男が偉大だというのに女が出しゃばるという悪癖を失くすべく、そしてそんな自由を与えないようにするための制度だったのだ!」
女性の権限をガン無視する発言を淡々と述べる老人の言葉に、最初は老人に同情していた二次元人たちも不快感を抱き始めていた。
「女は黙って男の言う事を聞く! これの何処が間違っているというのだ! 狂っているのは貴様らだ、残虐非道な小田原修司を神として崇め奉るなど実に不愉快極まりない! そんな貴様らにこそ天罰が……」
と、老人が語り続けようとしたその時「愛の~~ヒップスタンプ!」「ぐへっ」なんと巨漢の大友軍兵士が老人の真上からヒップドロップを喰らわせ、老人は血反吐を吐いて押し潰される。
いくら何でも老人を押し潰した行為に俄然がいかない周囲の二次元人たちに、ヒップドロップを喰らわした巨漢兵は満足げな表情で言った。
「これぞ、愛の鞭なので~~ス」
自分の行為を愛の鞭と捉える巨漢兵の言葉に唖然とする二次元人たち。
一方で、巨漢兵の体重をもろに受けた老人は、血反吐を吐いたまま担架に乗せられて運ばれていった。
「彼にはまだまだやるべき贖罪が多数残っていますからね。それに本当の悪人にこそ、生き地獄を味合わせるべきだと皆様は思いませんか?」
大友宗助の問い掛けに、二次元人たちは何も言い返せなかった。
皆が修司教での、元カースト制度信者に対する扱いを目の当たりにしたその時。
「うわーーっ」「きゃーーっ」
と女性の叫び声が聞こえて来た。
「な、なんだ今度は?」
すると目の前に現れたのは、修司教信者でもある三人の少女だった。
「お、お願いします! サインくださいっ」「へっ?」
突然、少女達はプロト世代のギュービッドに色紙を差し出し、サインを要求する。
「どうなっているんだよ、ホント」
突然の事態に困惑する真鍋たち二次元人たちに、マスコット姿の立花宗茂が訳を語ってくれた。
「我が大友軍、いや修司教は……多くの二次元人愛好家集いでもあるのです。誰もが二次元人に対して差別などせず、好きな漫画やアニメなどの語りに夢中になるのです」
「……要するに、単なる二次元マニアやオタクの集いでもある訳ってか。修司教って……」
立花の話を聞いて呆然としてしまう真鍋義久。
一方でサインを求められたギュービッドは、差し出された色紙を受け取ろうと手を伸ばしたが
「「「是非サインを! エドワード・エルリック様!」」」
「って! 違うわ!」
キャラクターを間違えられて、思わず差し出された色紙を地面に叩きつけてしまうギュービッド。
「アタイはエルリックじゃないっての! 確かに似ているし、共通点は多いけど、錬金術は使えないから!!」
ギュービッドの話を聞いた女子達は改めてギュービッドを凝視してみると、確かに狙ってたキャラクターとは違っていた。
「なんだぁ、エドじゃないのか。紛らわしい」
「良く見たら髪の色も金じゃなく銀だし……格好も全然違う」
「パチモンかぁ、それなら興味ない」
「おいコラまてぇ! 間違えられたのはコッチなんだぞ! それにアタイはパチモンじゃねえ!!」
「ぎゅ、ギュービッド様落ち着いて!」
間違えておいて勝手なことを言い出す女子達にキレるギュービッドを弟子のチョコが必死に押さえる。すると其処に立花も加勢し、チョコと一緒にギュービッドを押さえ付けながら彼女に言った。
「も、申し訳有りません、ギュービッド殿。まだ、この国では【黒魔女さんが通る!!】は放映されてないのであなた方の事は余り知られてないのです……」
この一連の流れを目の当たりにして二次元人たちが想った事、それは。
修司教は案外、見た目に反して恐ろしい事を平然とやってのけてしまう宗教。
そして修司教はアニメオタクや漫画オタクの集まりでもある事実。
[忠義の為の戦い]
聖龍隊の新人養成部隊スター・ルーキーズと共に修司ランドの娯楽施設を遊んでいく二次元人たち。
そんな彼らの脳裏にある一つの不安がよぎった。
「……なあ、ところでこの聖龍隊の各キャラクターを象った乗り物とか、安全基準を満たしているんだろうな」
新世代型の真鍋義久が大友宗助に訊ねると、宗助は尤もらしく言った。
「もちろんですとも! 最新の技術と最高のデザイナー、プログラマーに手掛けてもらった史上最高のエンターテイメントなアトラクションの数々……修司教に入信すれば、こんな楽しいアトラクションが毎日乗り放題! 今だけですよ」「断っとく」
宗助の自然な流れからの勧誘に、真鍋はきっぱりと入信を断る。
更に、そんな宗助に新世代型の
「それから、ここの乗り物とか顔出し看板の聖龍隊のキャラクター……ちゃんと著作権法に乗っ取っているんでしょうね?」
この質問に宗助は嬉々とした笑顔で答える。
「もちろんですとも! 私たち修司教は、漫画家先生達に限りない援助を施しているので、多少自分達のキャラクターを使われてもニッコリと笑顔で許してくれる事でしょう」
(なんだか、中国のディズニーランドもどきみたい……)
明らかに正式な許可を取っていない宗助の言論に対し、新世代型二次元人達は一括して中国のパクリランドもどきみたいだなと薄々感じ取る。
と、ここで宗助は部下の信者から何か言伝を聞いたのか、急にそそくさとし始めた。
皆が何事かと宗助の方を見ていると、宗助は二次元人達を急に誘導し始めた。
「皆さーーん! ようやくショウの準備が整いました! ささ、今日は特別、信者以外のあなた方を特別に式典会場まで行けるジェットコースターに乗せて差し上げましょう」
そう言って大友宗助が案内したのは、なんと木製のジェットコースターだった。
「も、木製! しかも、なんか造りが簡単すぎやしないか!?」
木製の、しかも造りが簡単そうなジェットコースターに慌ただしくなる幸平創真たち。
だが木製のジェットコースターを前に怖気づく二次元人達に宗助は自信満々に語る。
「大丈夫です! 最新の木工技術で造っている、このジェットコースターはそう易々と壊れたりしません! 何よりこれは会場へ皆様方をご案内する為だけの代物で、大したスピードも出しませんので平気ですよ」
そう大友宗助は語り終わると「ささっ、早く乗って下さいなっ」と皆を半ば強引にジェットコースターに搭乗させる。
「な、なんだか怖い……」
「ホントに大丈夫だろうな、このジェットコースター……」
有田春雪と黛拓夢は木製のジェットコースターに若干の恐怖を感じる。
そんな中、全員が搭乗したのを確認した大友宗助はジェットコースターのスイッチを押した。
「さぁ! レッツ! 修司ショウターーイム!」
ジェットコースターは進みだし、徐々に速度を上げていく中、宗助が自分だけで構想を練り上げた演目のテーマを述べていく。
「戦火の中をワルツの如く舞うその勇姿……人々の果てなき未来を祈る想いが……! ファンタスティックな花火を打ち上げる! たまーーや~~!」
小田原修司が戦場を舞うかのごとく戦う勇姿と共に、人々の果てなき未来を祈り続ける想いを背景に、空には晴天というのに盛大な花火が次々と打ち上げられていく。
その大友宗助の説明が終わった途端、ジェットコースターは速度を一気に上げ、猛スピードで突っ走る。
「うわあッ!」「きゃああっ!」
突然の猛スピードに心臓が口から飛び出るほど吃驚する一同。だがジェットコースターはすぐに速度を落として、終着点で止まってくれた。
「ふ、ふぅ~~……心臓が飛び出るかと思った……」
「何が大したスピードは出さないだ……! あの小僧……」
最初に言っていた大友宗助の言葉とは反し、速度が一時だけとはいえ上昇した展開に呆れ果てながらも途方に暮れる新世代型たち。
そんな皆の反感を買っているとも露知らず、大友宗助はジェットコースターの終着点からすぐ歩いた所の会場で信者たちと楽しく音楽の中、踊っていた。
「素晴らしい愛のセレモニーで、あなた達の信仰心はもうマックスでしょう? 今すぐ入信なさい!」
未だに入信を勧める大友宗助の変わらぬ素振りに、ルーキーズの面々も反感を覚えるもののグッと堪えた。
「……ふぅ、あの様子じゃ立花も未だに苦労してると見たわ」
ジェットコースターから降りていく二次元人達の中で、ミラールは宗助が側近、立花宗茂の気苦労を察する。
すると此処で、今まで二次元人たちと行動を共にしていたシバ・カァチェンもジェットコースターから降りようとするものの、慣れない絶叫マシンに乗ったために足がふらついて思う様に降りる事ができなかった。
「うっ……」「か、カァチェンさん! 大丈夫ですか?」
降りようとした瞬間に、両膝を地面に付けてしまうほど朦朧としているカァチェンを心配する新世代型の野々原ゆずこ。彼女の優しい気遣いに、カァチェンは朦朧とする意識で答えた。
「も、申し訳ありません……私、雷獣の如く凄まじい速度で走る乗り物には、まったく慣れていない上……うぅ…………」
速い乗り物には全く抵抗力がないカァチェンは、心配してくれる二次元人達に申し訳ないと述べながら辛うじて立ち上がる。
こうして皆は歩いて大友宗助の元へと赴き、彼と再び対面しようと考え得る。
その間も宗助は喜々と楽しげに踊りながら二次元人たちの到着を待ち侘びていた。
そして大友宗助が呑気そうに踊りながら待っていると、式典会場にようやく千鳥足の二次元人達がやって来た。
「もうもうっ、遅いですよ! 式典はまだまだこれからだというのに! 宴は、パーティーはもう目の前……!」
何事も自分勝手に進める大友宗助の態度に、ルーキーズは怒りを堪えようとした。
だがその前に……「もう我慢ならん! 貴様のような悪童、この
「ちょ、ちょっと待ちな! 相手は聖龍隊にとっても二次元人にとっても重要な人物、手荒な真似はしたらアカン……」
「なるほど、確かに耳にした通り……戦闘型の新世代型だけあって殺気立っていますね。それではこうしましょう、あなた達が僕の側近、宗茂と戦って勝てれば僕は何でもあなた方の願いを一つ叶えて差し上げましょう。その代り、もしあなた達が負ければ其処で即座に修司教に入信してもらいますからね」
「ま、また勝手なこと言いやがって……!」
性懲りもなく自分勝手な言動を述べる大友宗助に纏流子も怒りを覚えながら呆れ果ててしまう。
そんな大友宗助に反感を抱く二次元人達を前に、宗助本人はいつもの如く側近の立花宗茂に命ずる。
「ギャロップ宗茂、彼らと一戦やりなさい。上手くいけば、また信者が増えますよ」
「は、はい。承知しました……(また力尽くで入信させる気だな、我が主……これじゃビンラディンやオウム真理教と変わらないよ)」
命令に忠実に実行する立花宗茂は、前へと歩んでいく中、心中では強引に入信させる主君宗助のやり方に違和感を覚えている事を新世代型たちは共有感知で読み取っていた。
マスコットキャラクターの着ぐるみを着込んだまま前へと歩む立花の両手には、電気を帯びたチェーンソー状の武器が握り締められていた。
「相手が立花というなら、新世代型たちにだけ戦わせるのはマズイわ! 立花はあの雷切で大軍を一気に壊滅させられるほどの力量……ルーキーズ、私たちも戦闘に加わるわよ!」
「待ってました!」
チェーンソー状の武器、雷切で一騎無双の戦いを繰り広げる豪傑、立花宗茂が相手なら新世代型たちにだけ任すのは危険と判断したミラールは即座に自分が指揮するルーキーズに指示。これに今まで大友宗助の我儘な態度に苛立ちを覚えていたキリト達は大いに活気付いた。
そして立花は得物である雷切を両手に構えて戦闘タイプの新世代型とルーキーズの面々と対峙した。
「武人であること! 忠節であること! この立ち合いにて、それらが示されることを……祈りましょう!」
慣れない着ぐるみ着用のままで決め台詞を言い終わった立花は、心の中で安堵する。
(き、決まったぁ……!)
青天白日 立花宗茂 忠節
戦闘タイプの新世代型、纏流子/
「大人しく修司教に入れば、みんなみんな救われると言うのに……」
立花の後ろで、これから繰り広げられる戦いを優雅に観戦しようと座り込む大友宗助の言葉に、立花本人も続けて言わざるを得なかった。
「信じる者は、救われます。(足元をすくわれるよ! だから逃げて!)」
だが心の中では主の命令通りに戦うのを避けてほしいと嘆願していた。
雷を纏った雷切の一撃一撃は非常に重く、それこそ一撃浴びれば身体は引き裂かれてしまう強靭な駆動刃に誰もが迂闊に近寄れなかった。
「お、お前! あんな主の元で働いていて不満なんだろ。だったら何故、そこまでして奴に尽くす……!?」
共有感知で内情を知った
「手前が父から譲り受けたのは、この雷切と君主に尽くす武士の魂のみ!」
実父から受け継いだのは雷切と君主に尽くす武士の魂のみと力強く返答する立花宗茂の言葉に、新世代型とルーキーズの新人達は立花宗茂の非常に強い忠義心に心を打たれた。
右下から、そして左下から繰り出される雷切の一撃一撃を回避しながら懸命に反撃の糸口を探す戦前の皆々。そんな面々に立花宗茂は徐に訊ねてきた。
「あなた達は……修司様を、いいえ、修司殿を信じますか……?(多少は布教しないと怒られるからな)」
半ば小田原修司の強い意志に共感を覚えつつも、抵抗のある布教活動を少しは主君の前で行わないとと心中に秘める立花。
戦いの最中でも、なぜか三次元人である立花宗茂の心中を新世代型たちは読み取れてしまってた。
(何か辛いかって……雷切握りっぱなしで戦う事だよな)
(そういえば書斎の電灯きれていたっけ。帰りに買い置きも揃えて買っとこう)
(奥の仕打ちに比べたら、この程度の戦いは朝飯前……)
と、全てが私情に満ち溢れた立花宗茂の心中に何処か哀愁すら感じ取れてしまう始末。
そんな中、立花宗茂は戦前に飛び出てきた二次元人達を的確に確固撃破し、一人ずつ地面に転倒させていく。それもこれも、全ては敢えて手を抜いて相手が死なない程度にしている為だ。
しかし戦前の者たちも、いくら倒れてもスグに起き上がり一向に勝負が付かない顛末を前にして、立花宗茂は毅然とした態度で申し開いた。
「一時休戦としましょう。互いの為に」
そういうと宗茂は雷切を止めて宗助の方へ跪いた。
「宗助様、彼らの力量は確かなものです。ですが……」
「もう良いです、宗茂。もう結構、お前はホントに役に立たない!」
宗助は本気で戦おうとはしない宗茂の戦意に腹を立て、癇癪を立ててしまう。
そんな宗助に新世代型達が文句を言い始める。
「おい! 立花さんは相手を思って手を抜いているんだ! そこまで言う事ないじゃないか……!」
と、新世代型の棗恭介が大友宗助に物申そうと歩みかかったその時、当の宗茂が恭介を止める。
「ま、まあまあ! 手前は全然気にしてませんので、どうか穏便に……」
何故か恭介を宥める宗茂の行為に釈然としない一同を前に、立花宗茂は棗恭介に強面の真顔を近付かせてこう言った。
「手前は主の為ならいくらでも耐え忍べます。なのであなた方もどうか気を立てず、宗助様の気を障られぬように……!」
あれほどの理不尽を衝き付けられても未だに頑なな忠誠心を立てる宗茂の言動に茫然としてしまう新世代型達。
さらに宗茂は二次元人たちに囁くように言った。
「手前は、主の為なら……素足で釘をも踏む覚悟。何より宗助様はお友達が少ない上に、修司教にのめり込んでしまっているのです。どうか此処は一つ、穏便にしてもらいたい」
主君の為なら素足で釘すら踏む覚悟を決める宗茂の力強い一言一句に、新世代型達は共有感知を通して愕然とした。
その宗茂の言葉を聞いて、新世代型の一条蛍が前へと駆け出して宗助に言った。
「あ、あの! 修司教ってのも大事なのかもしれないけど、私たちと友達になってみてもどうですか?」
身勝手で我侭な宗助に友達になろうという一条蛍の考えに他の二次元人たちも動揺するが、当の宗助本人は事もあろうにこれを別の解釈で捉えてしまった。
「なるほど! ようやく決心してくれたのですね! 我が修司教に入信する決意が……!」
「え……ええっ!?」
なんと事もあろうに宗助は蛍の友達になりたいという発言を、修司教に入信するという意味で受け止めてしまったのだ。
「ち、違います! 私たちは……」
必死に誤解を解こうとする蛍の話も聞かず、宗助は次の瞬間トンでもない事を口走った。
「まあ、あなたたち新世代型のお力添えがあれば修司教は今より勢力が拡大するのは目に見えていますし、大助かりです!」
「! それってどういう事だ?」
宗助の発言を受けて、新世代型の真鍋義久が問い詰めると大友宗助は優雅に自己的な言動で語り始めた。
[修司教の企み]
「僕はですね、この現政奉還は一種のチャンスだと思っています! この機会に修司教を世界中に布教させる事も夢ではありません! まあ、既にインターネット内では信者の数は激増してはいますが」
「………………」
二次元人達は黙って宗助の話に耳を傾ける。
「今! 人々の心は荒み切っています! 人々は平穏を求めながらも、心のどこかで日常とは違う展開を望んでいる。その欲求が非現実的なあなた方、二次元人を生み出していると僕は思えて成らない。誰もが日常に退屈し、既に非日常を求める傾向へと前々から世界は何かしらの変化を求めてきました。そんな時に、あなたたち二次元人が世界に出現してくれた! 魔法に超能力に霊能力、更に更に変身能力まで……! 我々修司教は、そんな二次元人たちを是非わが修司教に招いて共に世界を修司教一色で染め上げましょう! あなた達ならきっと修司教のいい宣伝になってくれる筈!」
「宣伝だと!?」
新世代型の
「そうです! あなた方、新世代型の知名度を利用すれば我が修司教は更に勢力を拡大できます! 【琴浦さん】に【リトルバスターズ!】、【キルラキル】に【境界の彼方】などなど、今でも名を馳せているキャラクター達のあなた方と力を合わせれば、きっと修司教は今まで以上に強大な団体へと成長できる事でしょう」
「要するに、俺たちの人気にあやかって信者を増やそうって魂胆だな」
大友宗助の話を聞いて、新世代型の真鍋義久が宗助の真意を察すると、宗助は悲しげな表情を浮かべて語った。
「オーーノーー! それは違います! 僕はただ単に行き場が無くなっていく、あなたがた新世代型を忍んで修司教にお誘いしてるだけですよ」
「行き場がなくなるだと……!」
宗助から行き場が無くなると言われた新世代型の巻島祐介が愕然としていると、宗助は思うが侭に語り続けた。
「今あなた達、新世代型は世間から格好の的、白眼視や蔑視の集中砲火に苛まれています。それもこれも、初期型の新世代型が起動エレベーター・ヤコブを占拠したり、かの剣帝足正義輝が起こした現政奉還によって人々の新世代型への不信感や危険視は絶頂の一途を辿っているんですよ。そんなあなた方に帰れる場所があるとでも言うのですか? 例えアニメタウンに帰れたとしても、そこで待っているのは周囲からの冷たい白眼視と軽蔑の眼差しだけです。そんな故郷に帰るぐらいなら、この修司教で思うがままに生きていくのもアリだと僕は思いますが……」
「………………………………!」
「僕とて無理強いはさせたくはないですが、どうせ帰る場所も無ければこの修司教で僕たちと修司教を布教して行こうではないですか! 此処には二次元人を差別するものなぞ一人もいない、それどころか二次元人であるなら、誰もがあなた方を神のように崇め奉るのですよ。こんな好条件、他には無いとは思いますが」
大友宗助から、二次元人たちを修司教に勧誘して彼らの作品の人気にあやかって修司教の勢力を拡大させる計画を知って、怒りを通り越して呆れ果ててしまう二次元人たち。
と、そこへ今度は修司教で正式に洗礼名を受けた武官たちが二次元人たちの周りを取り囲み、修司教が売っている品々を売り捌こうとする。
「ランドのお土産一番人気、聖龍隊グッズ!」
「修司ランドは従業員を募集中! 明るい職場です! どうです、あなた方!」
勝手に作った聖龍隊所属のキャラクターを捩った商品に、隙を衝いて従業員を募集しようとする信者達。
「仕事が無いなら修司ランドのキャストになりなさい!」
そこへ大友宗助も便乗して、仕事が無かったり将来高卒をする予定のキャラクター達にはランドのキャストに勧誘していく始末。
更に、信者の中でも位の高い上官兵が勝手に各キャラクターごとに洗礼名をつけ始めた。
「あなたの洗礼名は……ナルシスコンにしましょう!」
「はっ!? なんで!!」
ナルシスコンという初めて聞いた単語に驚愕する新世代型の名瀬博臣に、上官兵は詳しい訳を話した。
「あなたは大層なシスコン、そして鮮麗なナルシスト……だから、この二つの言葉を合わせてズバリ! ナルシスコンに決めたのです」
「冗談言わないでくれ! なあ、美月、お前ならこんなフザけた洗練名だなんて反対だよな……」
「どうでも良いわ、ナルシスコン」
〔ガァ~~~~ッん〕
妹の美月から否定されなかったのがショックだったのか、愕然と失意に駆られてしまう博臣。
と、そこに今度はアニメキャラである信者達が駆け寄ってきて、二次元人たちに言い迫る。
「わあっ、本物の二次元人だ! サイン、サイン!」「わわわわ……っ!」
二次元人という理由だけでサインを求められる現状に、新世代型のイオリ・セイたちは困惑してしまう。
すると信者の中には老若男女と地元の人間が紛れている事にようやく気付いた二次元人たちは、彼らに訊ねた。
「な、なぁ、あんたら……確か、この辺はカースト制度が布かれていた地区だって聞いてはいるんだけど、その点あんたらはどう思っているんだ!?」
この真鍋の意表をついた質問に、地元の修司教信者達は満面の笑顔で自分たちの実情を語ってくれた。
「はい、私たちは実に愚かな事をしていました。一人の少女の可能性、あのミャンチィだけでなく多くの人々の可能性を摘み取ってしまった業の深い一族です。一度はミャンチィに村を焼かれましたが、今では彼女の苦悩そして絶望を修司教より教えられて改心しております。今は修司教であるなら、誰もが自分の望み通りの夢や仕事に就ける……そんな輝かしい未来を切り開いております」
そして地元の信者達はある一点を見詰めて二次元人たちに語り明かした。
「ミャンチィがあのような暴挙に出てしまったのは、全ては我々がカーストというくだらない制度に縛られていたが故の悲劇……今ではその悲劇を忘れえぬように、そしてミャンチィの魂が天に召せますようにと彼女の銅像を建てて修司教で日々、祈っているのです」
信者達が視線を向けたその一点には、今は亡きミャンチィの銅像が大きく建造されていた。
すると一人の信者が今の自分たちの現状を語り出した。
「あれ以来、我々は容姿や決まり事に縛られず、各々が好きな職業や夢に向かって頑張っているのです!」
この信者の話に続き、他の夢を叶えた信者たちも語り出した。
「この俺は…………お花屋さんになりたかったの」
「私たちはロック・ミュージックを今までずっとしたかった! 前のカースト制度じゃ禁止されてた以上に、親や身内に名誉殺人で殺されるのが当たり前だったし」
筋骨隆々の男が叶えた花屋、そして過去では名誉殺人として当たり前のように殺されていた歴史を持つカースト制度が廃止された事でロック・ミュージックを好きなだけ演奏できる事に喜びを体感せずにはいられない少女たち。
そんな古い宗教のしきたりであるカースト制度がなくなった事で、女性差別も名誉殺人という恐ろしい実態が激減した今となっては、修司教はまさに救いの神であった。
最後に場が少し落ち着いた所で、大友宗助は再び二次元人たちに問うた。
「どうです皆様? 修司教に入ってみたくなったでしょう? 此処では布教のため以外に戦う必要が無く、それ以外はただただ平穏に暮らしていける素晴らしいパラダイスなのです!」
しかし、この大友宗助の語る修司教に付いて一つの疑問が新世代型達の脳裏に過ぎった。
「あなた、修司教の愛だとか何だか抜かしているけど、当の小田原修司はなんて言ってるの? それに愛といっても彼は敵ならば容赦なく残忍に斬り殺す冷徹な人間を神だと崇めるだなんて異常すぎるわ……!」
気の強い薙切えりなの発言を受けて、今まで温厚な表情をしていた宗助の顔は一変し、怒りを露にする。
「な、なんという罰当たりな事を! この下賎の輩が……! 修司様を愚弄するだなんて…………!!」
「そ、宗助様! ここは落ち着いて……」
えりなの発言に怒りを露わにする宗助を、宗茂が辛抱強く落ち着かせる。
宗茂の対応も相まって、少しばかし落ち着きを取り戻した宗助は失言したえりなの言い分に未だ怒りを感じながらも、冷静さを保ちつつ語り続ける。
「ま、まあ……まだ、この世に生を受けて間もない新世代型のあなた方には理解できないでしょうが、修司様の偉大さは目を見張るものです」
そういうと宗助は一冊の本を懐から取出し、皆に見せびらかす。
「そ、それは……」琴浦春香が思わず発した。
それは小田原修司が書き記した自伝本であった。己が発達障害者である事実も含めて、過去の聖龍隊の戦いを記した書物を手にし、宗助は淡々と語り出した。
「あなた方も知っている事でしょう……修司様は生まれながらに人の愛情を感じられない異端な存在、生まれながらに何も感じない闇の心を抱いていたことを。ですが修司様は、それでも聖龍隊の……いいえ! 二次元人の愛や優しさを受けて、強く逞しく己を成長させられた! そして己と同等に異端な存在と蔑視を向けられる二次元人を救済しつつ、己の信念を貫き通し続けたその勇姿……! ……はぁ、いま思い出しただけでもウットリしてしまいます。修司様が己が信念のまま戦場を駆け巡る勇ましい御姿……」
するとこの宗助の語りを聞いた信者たちも、翻訳された聖龍伝説の自伝本を手に泣き出した。
「うぅ……っ! 愛情を感じられないなんて、なんて可愛そう!!」
「愛、それは人を救う尊き想い……その想いを感じられなかった修司様はなんて御労しい!!」
「悲劇デス……悲劇の何物でもアリマセン……!」
しかし一人だけ、宗助の語りを聞いて釈然としない心境の立花宗茂は複雑な心中に至っていた。
(どうせ修司殿の思想に魅了されたのなら、武芸かなんか別の事に熱中してくれれば良かったのに……)
宗茂の複雑な心中を共有感知のテレパシーで周知している新世代型たちを前に、宗助は熱弁を続ける。
「僕はこの自伝本を読む前から修司様の畏怖なる魅力の虜になっていました! そして修司様が守り続けた二次元人達への愛を説いてきました! ……ですが、自伝本を読んだ後は正直ショックでした。まさか修司様が人の愛情を感じられない障害を背負っていたとは…………だけど! 僕は同時に奮い立たせられました! 人の愛情を感じられないながらも、愛を述べてきた二次元人達の想いを後世に残していこうと奮闘してきた小田原修司の苛烈な生き様に今まで以上に、あの御方が遺そうとしてきた愛の尊さを身に沁みたのです!!」
小田原修司の出生の秘密を知っても尚、彼に心酔する大友宗助は更に修司教の愛についても説き始めた。
「あなた達は本当に幸せですか……? ならば! 修司教の愛を教えましょう! 修司教の愛は、それすなわち自らを受け入れ、自らを愛する事から始まります! 自分を愛せない人が他人を愛する事はできっこないでしょ? 修司教ではまず、現実の自分自身を受け入れ、そして自分を受け入れる所から始まります! 自分を受け入れるのも相当苦労する事でしょうが、それが第一の愛の試練。……僕もよく周りから自分勝手とか、我儘とか陰口を言われますが、それもこれも修司様を敬愛する自分を愛しているからこそです!」
そして大友宗助は懲りずに新世代型を含む二次元人達を修司教に勧誘してくる。
「さあ! 一歩勇気を出して修司教にカモン! あなた達のその一歩は、未来を創造する大きな一歩となってくれる事でしょう」
するとこの大友宗助の勧誘文句に対して、新世代型の幸平創真が腕を組んで宗助に反論した。
「……確かに俺たちはまだこの世の中ってのを理解してないのかもしれない。だが…………誰かが敷いたレールの上をただ歩くなんて詰まらない人生を進むほど、俺たち新世代型は落ちぶれちゃいない」
この創真の格言に同朋の新世代型はもちろん、その場の二次元人たちは愕然と言葉を失くす。すると創真の台詞を聞いて大友宗助は創真を睨み付けるよう凝視しながら話し返した。
「……なるほど、確かにあなたの言う事も最もかもしれませんね。他人が決めた道を進むより、己が意志で突き進む道の方が、よっぽど険しいですし価値があるかもしれません。そもそも、今の世の二次元人は三次元界と融合を果たした事で多くが通常の運命すなわち筋書きとは違っています。そんな現生の世を自らの意志で決め、そして歩む二次元人こそ尊い存在なのかもしれませんね。己が意志で全てを決め、突き進む……それこそ修司様が夢見た二次元人の御姿なのかもしれません」
「修司、修司って……そんなに小田原修司が偉いのかね?」
「そ、創真殿! これ以上、我が主を刺激しないでください……!」
淡々と小田原修司の名を口に出す宗助に創真が失笑を浮かべて返すと、宗助が怒りで感情的になっているのかと思い込んでいる立花宗茂が慌てて創真を宥めて主君との衝突を避けようと必死になる。
すると創真を宥める宗茂の姿を視認した宗助は、宗茂に言い切った。
「良いんです、宗茂! 好きに言わせてあげなさい……彼らは修司様の偉大さをまだ理解し切れてないのです! そう、此処にいる全ての二次元人……聖龍隊の新人も含めてね!」
話の矛先が聖龍隊の新人にまで向けられ、当の新人達は表情を強張らせる。
そんな二次元人達を前に、大友宗助は更に語り続ける。
「あなた方は今の世に迷っているのでしょう? 本来の筋書きとは違う展開に結末、そして物語に世界観……でも違っていてもいいのです! 全ては十人十色、誰もが自由に夢や理想に向かって邁進できる世こそ世界の真なる姿! 僕は修司様と出会って、それを悟ったのです! 果たして今の自分で良いのか、自分の夢や目標は正しいのか、そんな悩みこそ修司教が解決してくれます!」
そして最後に大友宗助は決め台詞の如く、白い歯を見せつけながら言い放った。
「人探し、自分探し…………探し物なら修司教が一番!」
[修司教のジョシー]
本当の自分を見付けられる場所、それこそが修司教だと説く大友宗助の話に皆が聴き入っていた時、一人の厳つい体格の男が彼らの元に歩み寄り声をかけてきた。
「そうそう! 修司教に入れば、それなりにいい思いできるもんだぜ!」
「! あ、あんたは……!!」
声をかけてきたむさ苦しい男に新世代型の真鍋義久たちは一驚した。
その人物は、以前にも二次元人達と顔を見合わせた事がある元中国共産党の幹部でもあった黒劉席であった。何ゆえ彼が此処にいるのだろうか。
「りゅ、劉席さん……なんで此処に……?」
新世代型の琴浦春香が思い切って訊ねると、劉席は鉄球に腰を下ろして答え返した。
「奇遇だな、お前さん達と此処で会うとは。いや何、今日ここで修司教の式典が行われるって伝達が入ってな。小生も御相伴に預かろうと思ってやって来たわけさ」
「あ、あんたも修司教なのか!?」
聖龍隊の新人キリトが思わず指差して劉席に問おうとすると、そこに大友宗助が小田原修司の顔そっくりに造った駆動世直しに乗って劉席に駆け寄る。
「おおっ、ジョシー! よくぞ来てくれました、我が友よ!」
「ジョシー?」
二次元人達が首を傾げると、彼らに劉席が答えた。
「ジョシーってのは小生の洗礼名さ。ま、修司教の洗礼名ってのは結構気まぐれで、共通点も何もないがな」
「そんな事はどうでも良いのです! さあ、ジョシーも歌うのです! 今日は修司教の、修司教のための修司ランドが完成したお祝いを三日三晩絶えず行うのです!」
修司教の洗礼名の共通点の皆無を説く劉席に、宗助は祝宴の準備を行うよう勧める。
突然の黒劉席の来訪に驚きを隠せない一般二次元人達は、思い切って劉席を始めとする周囲の人間たちに話を聞いてみる事にした。
「修司様は偉大です。時には過激に、時には穏便、時には……ミステリアスと、変幻自在のスタイルを決めてくれます!」
変幻自在のスタイルを誇る修司に心酔する修司教信者の話を耳にしながら、二次元人達はその小田原修司が結成した聖龍隊の新人達にも話を聞いてみた。
「確かに小田原修司はいくつも戦果をあげた功績があるし、そこそこの人望もあったって聞いているけど……この修司教は、その粋を超えている」
新人キリトに続き、次は変身を解いていた有田春雪にも話を聞いてみた。
「小田原修司には直接会ったことはないけど、本人もこの騒動にはうんざりしてるって話は小耳に挟んだ事があるよ」
当の小田原修司は、自身を祭る修司教をあまり感心していなかった事を有田春雪から聞いた二次元人達は、次にジョシーという洗礼名を受けた黒劉席に話し掛けた。
「お、どうした? この知性溢れる小生になにか聞きたいことがあるのか?」
自らを知性溢れると自画自賛する黒劉席に、二次元人達は修司教をどう思うのか訊ねた。
「修司教か? まあ、あの鬼神と畏れられる小田原修司を祭っているだけで末恐ろしいと小生は思うがな。だが最高責任者の宗助って小僧は、イギリスに拠点を置く大貿易商の祖父さんの金も使って自分が陶酔する小田原修司を祭り上げる修司教をここまで巨大化させちまうほど金遣いが荒いからな。まあ、その分、信者に入ればかなり上手い話が転がり込んでくるけどな」
続いて二次元人達は、その修司教の最高責任者である大友宗助について黒劉席に訊ねた。
「さっきも話した通り、宗助って小僧は大層なお坊ちゃまだ。その分、幼少のころは心を許せる友達が少なくて結構さみしい思いしてたって立花から聞いたことがある。そんな宗助が小さい頃、京都に家族旅行した時に迷子になった折、ちょうど京都に足を運んでいた小田原修司に助けられて、そこから小田原修司と交流が始まったと聞いている。良くある話だが、小田原修司の様に恐れられる存在には、その畏れに魅了されちまう輩がいるんだが宗助もその一人だったと小生は思う。ここだけの話、鬼神も心の底では迷惑してると思うぜ。なんせ鬼神と畏れられて周りと距離を置かれたい自分を、二次元人のHEAD共々神様の様に崇められちまっているんだからな」
更に二次元人達は「結局のところ、修司教ってなんなの?」と黒劉席に明確な答えを求めた。
「まっ、要するに大友宗助が極端に小田原修司やその側近である聖龍HEADを自己的に崇めている怪しい宗教団体ってところだな。しかし聖龍隊の頭角、HEADは宗助の祖父さんから豪い額の支援金を援助してもらっているし、本人の小田原修司も聖龍HEADもなにも宗助に口出しできなかったみたいだぜ。もう自分だけの世界に引きこもって、その世界観を周りに強引に共有させようとする悪癖が宗助にはあるみたいでよ。ま、それでも小生の様な常識人も修司教にはいるから、そこだけは安心しろよ」
二次元人達が修司教や大友宗助について黒劉席から話を聞いていると、その宗助の側近である立花宗茂が劉席を呼びに来た。
「劉席殿、宗助様が呼んでおります。何やら知恵をお借りしたいとのことで……」
「おっ、来たか。やっぱり修司教なんて無粋な宗教を創った割に、小生の頭脳を必要としている所を見ると大友宗助は小生を理解してくれている」
立花宗茂から大友宗助が呼んでいる事を伝え聞いた黒劉席は、喜々とした表情を浮かべて宗助の元に向かった。
そして黒劉席と入れ替わりにやって来た立花宗茂は、心中ではこう思っていた。
(我が主は、もうワシを頼りにしてくれないのかな? ワシってそんなに頼りないのかな……)
主君が自分を必要としてくれないと悩み込む宗茂を前に、
「そんな事はないと思うぞ! 貴殿の先ほどの腕前、確かなものであった! その腕前で認めてもらえてない訳がなかろう」
「はっ! はぁ……」まさか自分の心中を共有感知で読み取られているとは夢に思ってない立花宗茂は、目を丸くして皐月の言葉に反応する。
更に皐月は宗茂に問い質した。
「確かにあの小僧は少し感に触るところがある。しかし貴殿は貴殿の武士道を、己の道を突き進む決意がある筈だ! ならば、その気高き決意を貫き通し、あの主君に忠誠を誓うのが筋というもの! もう少し自信を持っても良いと私は思うぞ」
「じ、自信ですか……! 分かりました、激励の言葉ありがとうございます」
すると其処に、先ほど呼ばれた黒劉席と彼を呼んだ大友宗助が二人そろってやって来た
「皆さ~~ん、今からカーニバルが行われるのでどうか参加していってください! ついでに入信手続きもサインしても構わないんですよ」
「なんでそうなるんだ!」
劉席と共にやってきた宗助に、新世代型の真鍋義久がツッコミ返す。
と、その時。大友宗助の目に一人の青年の姿が飛び込み、宗助は颯爽とその青年に駆け寄り勧誘し出す。
「そこのあなた! 如何にも不幸のどん底に叩き落されたかのような顔をしていますね! その不幸、修司教に入れば消えるかもしれませんよ?」
宗助が勧誘したのは、如何にも幸薄そうな面構えをしているシバ・カァチェンであった。そんなカァチェンを修司教を布教する宗助のやり取りを前にして、側近の立花宗茂は気が引けていた。
(カァチェン殿か。我が主は不幸な人ほど布教しやすいって言うけど、気が引けるな……)
宗茂から見ても、カァチェンは現実に絶望視しており如何にも優れてない顔色である事が一目瞭然だった。
そんな宗助から修司教を勧められるカァチェンは、薄暗い表情で申し返した。
「貴方方の言うとおり、私も鬼神を信じれば…………この淀んだ現実にも救いが生じるのですか……?」
この言葉に宗助はカァチェンの物言い方に一瞬動じながらも勧誘を続ける。
「そ、そうです! 修司様の偉大さ、寛大さを見習い、あなたも精進すればきっと道が自ずと開かれる事でしょう! さ、さあ、我らが修司教に……」
必死に修司教へ勧誘しようとする宗助に対し、カァチェンはフッと薄暗い微笑を吐くと言い退けてしまう。
「信仰、か……そんなもので救われる筈も無い……」
このカァチェンの一言で、その場の空気は一瞬で一気に重くなってしまった。
カァチェンの全てに絶望している心境に重たくなってしまった空気の中を、ただ佇むしかない一同。
そんな所に黒劉席が口を挟んできた。
「まあまあ、双方とも言い合いはそこまでだ。折角なんだし信者問わず、みんな揃って楽しもうじゃないか! こんな機会、小生なんか滅多にない」
「ま、まあ……入信しなくても良いのなら、別に普通に参加しても構わないけど……」
何だか強引に入信させられそうな空気の中で黒劉席に誘われて不安に駆られる蓮城寺べるたち二次元人たちに宗茂も話し出す。
「そ、そうですとも! 我が主、入信はいつでもできます! 今は修司ランドが完成した記念式典として豪華絢爛なカーニバルを展開するのが一番ではないでしょうか」
「ふぅん……まあそうですね、入信させようと思えばいつでも入信させられますし、今はカーニバルの準備を完遂するのが最優先ですね。宗茂、早くカーニバルの準備を済ませなさい!」
「御意!」
宗茂の申し出に宗助も同意し、早速カーニバルの準備を宗茂に命じる。それに宗茂は反論する事無く潔く同意すると素早く行動に移そうとした。
――――その時だった。
[心を照らす流星]
「宗助殿、相変わらず強引な勧誘をしているようだな」「! だ、誰です!?」
突然その場に聞こえて来た声に、声をかけられた大友宗助本人もその他の一同も騒然となった。
誰もが声の主の姿を求めて、周囲に目を配らせた。だが声の主と思える人物は見当たらない。
すると上空から巨大な影が迫ってきている事に新世代型達が最初に気付いた。
「あ、あれ……!」
新世代型の越谷卓が上を見上げて指を差すと、他の一同も上を見上げた。すると上空には大型の零戦が滑空しており、その零戦から二つの影が地上目掛けて飛び降りた。
零戦から飛び降りた二つの影は颯爽と地上に着地すると、大友宗助や二次元人たちの前に直立した。
「あ、あなたは……!!」地上に着地した人物を見て、一同は愕然とした。
その人物は誰であろう、今は聖龍隊と袂を分かち合い、己の信念の元で葛藤している心照輝星と名高いスター・コマンドーの総部隊長、村田順一。そしてその順一と共に大型零戦から滑空したのは順一の婚約者であり、異次元の怪物と融合してしまった故に怪物少女と成り果ててしまった深澤マイの二名だった。
「じゅ、順一さん!」「婚約者のマイさんもいるぞ……!」
突然上空から登場した村田順一と愛澤マイの二人を目の前に、二次元人たちは更に騒然となった。
「ジュン! 何故あなた達がここに!?」
現聖龍隊士のミラールが、聖龍隊を離反した順一達に敵意を向けて言い放つ。
「おおっ、これはこれは。誰かと思えば、今や聖龍隊を離反した我が修司教の神祖、修司様の一番弟子であらせられる村田順一殿ではないですか! それにフィアンセの深澤マイ様まで! どうしたのですか? 修司ランドに遊びに来た訳ではなさそうですが……」
先ほどの声の主が村田順一であった事を悟った大友宗助は、順一が婚約者でもあれば同時に戦友でもある愛澤マイを携えて自らが建造した修司ランドに二人が遊びに来た訳ではないと流石に気付いて訊ねた。すると順一は腕を組んで堂々とかつての仲間であった聖龍隊も前にしながら語り出した。
「ああ、その通りだ宗助殿。まさか聖龍隊や新世代型のみんなも此処にいるとは思ってみなかったが……まあ、いづれは全てに決着をつける為にも今ここで話そうと思う」
上空に大型零戦・流空を滞空させて、順一は皆の前で語り明かした。
「……宗助殿! 是非、僕たちスター・コマンドーと同盟を組んで欲しい!」
「な、なんですって!」「ッ!?」
村田順一からの同盟の嘆願に、大友宗助もその他の一同も驚愕する。
だが、順一の同盟申し出を聞き受け、聖龍隊士のミラールが皆の前線に飛び出て順一達に銃口を向ける。
「まさか敵になった私たちの前で同盟を申し出るなんて大したものね! ジュン、悪いけど退いてもらうわよ!」
今や敵対関係になってしまった順一に銃口を向けるミラールに、順一は慌てて彼女を宥め止める。
「ま、待ってくれミラール! 今の僕に戦う意志はない……!」
「とぼけないで! ……聖龍隊を離反した時点で、私たちは敵同士になったのよ! その敵相手に躊躇う理由は無いわ! ルーキーズ、二人を包囲するのよ!」
と、順一の言伝に対してミラールは聞く意思を示さず、ルーキーズの面々に順一と深澤マイの両名を取り囲むよう命令する。
しかしミラールの命令に、その場に在席しているルーキーズの新人達は人望の厚い順一達を取り囲み、敵意を向けることに躊躇ってしまう。
「! 何やっているのよ? ジュンはもう私たちの味方じゃないのよ! 遠慮する事はないわ!」
「だ、だけど……」
戦意を向き出しにするミラールの意思に反して、ルーキーズの新人であるキリトたちは順一と臨戦態勢に入るのを躊躇ってしまう。
そんなミラールを視認して、順一は仕方なく応戦する構えに入った。
「やれやれ、仕方ないか……マイちゃん、ここは僕一人で相手する。なあに、大丈夫さ」
「……ええ、信じてるわジュン」
順一は自分一人で戦う意志をマイに伝え、それに対してマイも順一を信じて敢えて戦闘には参戦しない覚悟を決める。
そして順一は一歩一歩と前へと歩み出し、己の戦意を前方のルーキーズに指し示す。これに対してルーキーズは静かながらも心の内では滾っている村田順一の気迫に押されてしまう。
その情景を目の当たりにしていた一般の二次元人たちの中から、突然新世代型の
「順一殿! 是非、私にも一手お願いします!」
「
突然の
この突然の申し出に順一は皐月に真剣な表情で問い質した。
「……何故だ? 何ゆえ、この僕と戦いたいと申し出る?」
すると
「今の私たち新世代型の現状は語らずとも貴方方の耳にも入っている筈! 私たちは何故か新世代型という理由だけで白眼視を向けられる日々……この理不尽な現実を乗り越えるためにも! 己を変える必要があると私はHEADの方たちから教えられました。己を変えるために先ず、今の自分を乗り越える必要が有ります! その為にはより強く、より気高くなる必要があります! どうか一手、ご教授くだされ!!」
「……ふぅ、どうも退いてくれと言っても聞いちゃくれなさそうだ。いいだろう、ただし勝負と行くからには此方も本気を出させてもらうとするよ」
「無論! 覚悟の上です!!」
力強い面魂に一変した順一を前に、皐月も同様の表情で順一と向き合う覚悟を示す。
この
「仕方ねえな。アタイも参戦してやるよ。相手が純一さんなら、いい喧嘩相手だ」
「纏流子……」
共闘してくれると申し出てくれた纏流子の言葉に皐月は顔を向ける。
すると皐月に忠誠を誓う本能字学園生徒会の面々も、戦前に名乗りを挙げる。
「私たちも一緒に戦う!」「皐月様だけに戦わせる訳にはいかぬ!」
「お前たち……フッ、まあ良いだろう。相手も本気で挑んでくると言うからには、此方も手を抜かず思う存分戦おうぞ」
乃音や
そんな【キルラキル】の戦意に共感させられたのか、栗山未来に名瀬兄妹の三人も戦前に出て順一と戦おうと決め込む。
彼らの意志を目前にした順一は、五芒星を象った手甲をしっかりと手に嵌めて臨戦態勢に入る。
この突然の新世代型の参戦を確認したミラールは再度、聖龍隊の新人であるルーキーズに指令する。
「ルーキーズ! 村田順一を包囲し、新世代型を援護するのよ!」
ミラールのこの言葉を受けて、村田順一本人も戦いに躊躇するルーキーズ新人達に拳を構えて言い放つ。
「その通りだ! ここまで事が発展してしまったのなら僕も後を退く訳には行かない! 遠慮なくかかって来てくれ!」
この順一の言葉を聞いて、今まで順一と一戦交える事に後ろ髪を引かれる想いをしていた新人達は周りを完全包囲し、順一と一戦交える覚悟をようやく決めた。
そんな戦前の皆を視認していく順一は、気高い面差しで丁寧な物腰で自分の方から相手を願い出る物言いで身構えた。
「某れがし、村田順一! お相手お願い仕る!」
心照輝星 村田順一 登場
まず村田順一から強烈な正拳突きが前方に放たれる。順一が放った拳は衝撃的な突風を起こして、前方の新世代型達を吹き飛ばし、一掃してしまう。
「うわあ!」
派手に吹き飛ばされてしまう新世代型達を尻目に、キリトやシルバー・クロウが順一に斬りかかろうとする。が、順一は武器を持たず拳だけで戦っているため斬りかかり難かった。
そんな新人達を前に、順一は檄を飛ばしてきた。
「遠慮は要らない、迷わず僕に斬りかかって来てくれ!」
順一の言葉にキリトが最初に斬りかかりに行く。しかし順一はキリトの剣を手甲で弾き返しては、キリトの懐に拳を喰らわせてキリトの姿勢を著しく崩す。
体勢が崩れたキリトに、順一は追い討ちと言わんばかしに拳の嵐を連続で打ち込み、キリトを追い詰めていく。
そこに死角から纏流子や
「そうだ! 迷わず僕の拳に斬りかかってくれ!」
「す、スゲェ……拳一つで刃物と渡り合ってる……!」
拳のみで激しい戦いを展開する村田順一の勇姿を目の前に、新世代型達はその圧倒的な拳の威力と順一の武器を持たない戦闘スタイルに絶句するほど驚かされる。
弓矢、銃弾などの飛び道具相手にも順一は拳を前に突き出して弾き返して難なく直撃を免れる。
さらに蛇崩乃音の上空からのミサイル攻撃をも、華麗なステップで回避して跳び上がり、蛇崩に痛烈な一撃を直撃させて撃墜する。
「どうした! 君達の実力はこの程度か!」
順一は拳と拳を交えてしか分かり合えない何かを知る為にも、ルーキーズや新世代型の面々に強く呼び掛ける。
と、ここで一気に纏流子/鬼龍院皐月/栗山未来の三人が刃で順一に上段から同時に斬りかかる。しかし順一は三人の少女の刃を両腕の星手甲で全て防ぎ止め、そのまま四人は硬直する。
「ッ……なかなかやるな。流石我が師の血を引いているだけのことはある……ッ!」
「っ……?」
「いや、何でもない。こちらの事、だ!」
次の瞬間、順一は力を奮い立たせ、三人の刃を全て弾き飛ばした。
刃を弾かれた三人の少女たちは、態勢を維持しつつ順一に姿勢を向ける。
そんな激闘を乗り越えても、今の自分達を少しでも変えていきたいという新世代型たちの熱く強い想いを感じ取った順一は拳を下ろした。
「ふぅ、やはり強いな。下手したら本気で死んでいたよ」
鬼気迫る戦闘タイプの新世代型たちを前に、順一は息を整えながら述べる。
「君たちの決意は理解した。話は聞いている、例の共有感知なる能力に対しての打開策を講じているのだろう? でも、何も強くなって自分を変える必要はない。内なる心、己の内面を変える事もまた、君たちに多大な変化があるんじゃないかな」
実力だけでなく、内面も変えていく事が己の成長に繋がると説く順一の言葉に、新世代型たちは唖然としてしてしまう。
そして順一は、新世代型と共に自分に勝負を挑んできたかつての仲間であるルーキーズの面々にも申し開いた。
「ミラール、そしてルーキーズの新人たち! 僕は戦いを仕掛けにやって来た訳じゃないんだ! 知っての通り、僕たちは
「……法案が矛盾を生み、その矛盾で世界が成り立っているのが真理であるとかつての総長修司から伝え聞かされているのは、あなた達も同じ筈よ」
「…………その通りだ。平和のために争い続ける、己の理想を掲げるが為にかつての友と袂を分かち合う。そんな矛盾の中でいずれは戦い合わなければならない現実が迫ってきているのは、今の僕でも理解できるよ」
排除法案による矛盾点を解消するべく現政奉還の乱世を勝ち続ける為に同盟を組んでくれる相手を探している最中だという事情を明かす順一に、ミラールは法律だけでなく世の流れが全て矛盾で成り立っているからこそ流通しているのだと、かつての総長小田原修司から教え賜った教訓であると順一に言う。それに対して順一も心の内では理解しているものの、それでも世界の現状を変えて多くの人命を救いたいと切願していた。
両者一歩も退かない語り合いの中、順一は戦いを傍観していた大友宗助に言った。
「宗助殿、同盟の件、考えておいてくれないだろうか」
「は、はい。分かりました……なるべく早く答えを出しますね」
宗助からの返事に順一は穏やかな笑みを彼に向ける。
するとそこへ駆け足で向かってくる39の者たちが姿を明白にする。
「ジュン! ジューーン!」
順一の愛称を呼び続けて駆け足で此方へ向かってきたのは、聖龍HEADの面々だった。
HEADの姿を視認した順一は、力強い真顔でHEADを見詰めるとルーキーズの面々に言った。
「ルーキーズ! 君らは君らの道を歩んでくればいい。……いつの日か、想いが叶うその時まで」
「………………………………」
順一の言葉に、ルーキーズの新人達は愕然とし、ミラールだけが複雑な心境の中、順一を見据え続ける。
更に順一は自分と仕合った新世代型にも「君達も今は辛いのかもしれない……だけど、いつかその辛抱が花開くと僕は信じている!」と言い残して颯爽と跳び上がる。
跳躍した順一を、変化したマイが空中で受け取り、そのまま両者は上空に待機させている大型零戦まで上昇し、零戦に搭乗するや否や空の彼方に去っていった。
「……ジュン……」
空の彼方へと消えていく大型零戦を見上げながら、バーンズ達HEADは今や聖龍隊と離反してしまった順一達に想いを募らせる。
そんな旧友でもある聖龍HEADの姿を、後から駆け付けてきた赤塚組は釈然としない想いで見届けていた。
己が理想の為に、邁進する為に聖龍隊を離れたスター・コマンドー。
いづれ敵同士としてあいまみえる順一達を密かに想い続ける聖龍HEAD。
かつてスター・コマンドーにいくつかの技や能力の使い方を伝承した、懐かしき日々は今や遠い過去の話。
HEADは修司が鍛え上げた一番弟子、村田順一を筆頭とした修司の弟子たちスター・コマンドーの行く末を案じ続けた。
[鬼神が残した道の行く末]
スター・コマンドー総部隊長、村田順一との再会を果たすも、順一はひたすらに己の理想を掲げ、かつての自分の師匠小田原修司が残した法案の無い世の中を制定するために奔走し続けていた。
聖龍HEADは、そんな順一達をただただ対立関係の中でしか見据え続けるしかできず、苦悩していた。
かつては修司の元で、同じ思想を抱いていた友同士であった彼らを隔てる壁は、今や分厚く大きな障壁となっていた。
バーンズたち聖龍HEADは順一が去った後、ただただ呆然と順一とマイが搭乗した大型零戦機が去っていった大空を見上げていた。
「ジュン、本当にオレたちと戦ってまで自分の夢を叶えようとしているのか……!」
失然となる空気の中、バーンズは空を見上げながら今は姿を捉えられなくなってしまった順一達を想う。
そんな失然となる聖龍HEADに、後方から大将たち赤塚組の面々が歩み寄り、そっとHEADに声をかける。
「……なあ、バーンズ、アッコ……」
「……………………………………………………」
しかしHEADからの返事は無く、大将は再度HEADに声をかけた。
「なあ、お前ら……大丈夫か?」
するとHEADは一堂に振り向いて、大将たち赤塚組に現状の顔を向けた。
「…………ううぅ…………っ」
HEADは今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「お、お前ら……」
大将たち赤塚組が今にも泣き出しそうな表情を浮かべるHEADに問いかけようとすると、その前にHEADは今の自分たちの心境を思わず涙ながらに吐いた。
「寂しいィ~~……」
「だーーッ! 分かったから、いい歳した大人が泣くんじゃねェ!!」
泣き出しそうになるHEADを前に、大将は困惑しながらも言い放つ。
涙目になって、かつて修司と共に順一達スター・コマンドーを育成した聖龍HEADに大将は話し続けた。
「テメエら、ジュンたちの決意や覚悟を受け入れてたんじゃなかったのか?」
「っ………………」
スター・コマンドーの離別に対する決意や覚悟を受け入れていたのではなかったのかと問う大将の質問にHEADは涙目を浮かべるばかり。そんなHEADを見た大将は思わず衝撃的な発言を口走ってしまった。
「そんなに離れて欲しくなかったんなら……無理やりにでも引き止めてりゃ良かったんじゃねえか」
この傍若無人な大将の発言にHEADは総動員で大将を非難。
「わーー、野蛮人!」「最低!」「海賊!」「モテない野郎」「失恋魔」「童○」
「オイ、最後の三人、ちょいと前でろや」
「大将、他の台詞にはツッコまないのね……」
HEADが吐き散らした罵声台詞に対して怒る大将の言動に、赤塚組幹部のミズキが呆れ果てる。
そんな突然の村田順一再登場で騒然となるHEADや赤塚組を尻目に、スター・ルーキーズ総部隊長ミラールは冷静に物事を捉えていた。
「……たくっ、総長もアッコおねえちゃんも何を呑気にしているのやら。ジュンが早速、修司教に同盟を結ぼうとしているっていう一大事に」
そんなミラールに、新人であるキリトたちが不安そうな面差しでミラールに訊ねる。
「だ、だけどミラール……本当に順一さんたちは俺たちと戦う気なのかな……」
本気で自分達に戦いを挑む気なのかと訊ねるキリトに、ミラールは険しい面立ちで答え返した。
「おそらくね。あのジュンの目は冗談ではなく、本気で聖龍隊と真っ向から勝負する目よ」
「じゅ、順一達はそこまで思い悩んでいたって事なんですか……?」
「……そこまで追い詰められていたのよ、ジュンは」「……………………………………………………」
凶悪な犯罪者や悪役を
そんな現在の状況に苦悩し、格闘する聖龍隊を前にして一般二次元人たちは非常に険悪な空気の中で耐え忍んでいた。
「な、何だか大変な事になってきちゃったみたい……」
「うん、まさか順一さんと聖龍隊が完全に敵対しちゃうなんて……」
己の理想の為に聖龍隊と対立する道を選んだ順一の現状を目撃して、プロト世代の黒鳥千代子と新世代型の琴浦春香たちは、ただただ現状を見据えるしかできずにいた。
そんな状況下で、突然訪問してきた順一に同盟への道を誘われた大友宗助だけは嬉々凛々とした様子で踊りながら口ずさむ。
「ああっ、これは面白くなってきましたよ! 聖龍隊とスター・コマンドー、どちらが修司様の後釜として相応しいのかがこれで決定します!」
「な、何言ってんだ! 聖龍隊とジュン達が争う事になるんだぞ……それの何処が面白いってんだ!」
宗助の言動にプロト世代のギュービッドが反論すると、宗助は駆動世直しの上で踊りながら理由を語る。
「分かっていませんね、これだから何も知らないプロト世代は…………いいですか? 修司様が望んでいたのは率直に申し上げて……皆が平和に、そして愛に満ち溢れた世界で生きていられる世なのです! しかし世界は常に変動しなければ廻っていけないのが常道。すなわち! 誰が世界を変えるかで、世界はより良く発展するのです! 今、聖龍隊とスター・コマンドーが互いの意見の喰い違いで反発してしまってます。ですが! 修司様の意志をお継ぎ、より良い世界へと、歴史へと発展させられるのはどちらなのか見守る事もまた、修司教の役割だと僕は思います!」
「え! それじゃ同盟の件は……!?」
大友宗助の話を聞いて、新世代型の斉木楠雄が問うと宗助は平然と優雅に答え返す。
「同盟の件は後回し! 全ては聖龍隊とスター・コマンドー、どちらが修司様が遺してくれた時代を次の世代に紡いでくれるかで話は決まります! 修司様の教えである排除法を最後まで伝承させるか、はたまたそれとは別の未来を創造するのか。聖龍隊とスター・コマンドーの決着にご期待アレ!」
最後に物語の締め括り風に話を締め括った宗助。
どちらが次代に伝承できるのか見定めるのも修司教の役目だと自負する大友宗助の身勝手にも捉えられる判断に、二次元人たちは呆れてしまう。
と、そこへ村田順一と新世代型&聖龍隊の新人達の戦いを、酒を飲みながら観戦していた黒劉席が顔を赤らめながら話し掛けて来た。
「ウヒッく、まあ、そう慌てる事は無いさ、新世代型の諸君」
「りゅ、劉席のオッサン、そんな呑気そうに……」
呑気そうに酒を片手に酔っ払う黒劉席を見て、新世代型の真鍋義久が呆れて反論しようとすると、劉席は酒を飲み干しながら話した。
「聖龍隊が大軍勢であるのは、お前さんたちも知っているだろ? ジュンはアレでも元聖龍隊の戦前に立っていた男だし、それぐらいは周知している。だからより勢力を拡大して、戦力を整えてから聖龍隊に戦いを挑む可能性が高い! さっきの同盟の一件も、その戦力拡大を目安に動いているんだろう。戦力が不足している間は、聖龍隊と全面対決する事は無いだろうよ」
大軍勢の聖龍隊を相手にするスター・コマンドーは、同盟などの軍事拡大を図る前では聖龍隊と全面対決することは無いだろうと劉席は確信していた。
そんな劉席の話を聞いて、二次元人たちは心なしか少しばかしの安堵を覚える。
そして酒を飲み干した劉席が言い放った。
「そんじゃ、早速パレードの開始だぁ! 小生も今夜はトコトン飲むぞ!!」
黒劉席の声を聞いて、大友宗助も修司ランドの開園式典の開始を奨励する。
「それでは気を取り直して……皆さ~~ん、修司教のための修司ランド、これより開園しますよ~~!」
宗助の言葉に信者たちも気を取り直して掛け声を放つ。
「イエッツ、修司!」
信者達の掛け声と共に盛大な花火が打ちあがり、青空には硝煙が舞い上がる。
一方で改めて順一達スター・コマンドーと対立したのを痛感した聖龍HEADはしょんぼりとしてしまい、それを赤塚組が必死で宥める中、大友宗助率いる修司教は「修司くん」人形の被り物をする立花宗茂やジョシー劉席なる黒劉席と共に音楽が響く中踊り飽かし始める。
そんな奇妙奇天烈な光景を目の当たりにしながら、琴浦春香がポツリと呟く。
「……本当にどうなっちゃうんだろう。この時代……」
彼女たち二次元人たちは、今の時代の移り変わりに多大な一抹の不安を抱え込むのだった。
誰もが鬼神、小田原修司が遺した道、未来への不安を胸中に抱え込んでいた。
[アレンジ武将]
大友宗助
所属:修司教最高責任者
出身:三次元界 日本(イギリスとのクォーター)
武器:駆動世直し
肩書:現世奔放
登場時の書き文字:布教
一人称:僕
属性:光
イギリス人の祖父を持つクォーター。
祖父はイギリスを拠点に持つ巨大貿易商で、その関係で自らが設立した修司教を拡大する事が出来ている。
幼い頃、旅行に赴いていた京都で迷子になっていたところを修司と出会い、そこから修司との交流が始まる。
以降、修司の思想に深い感銘を受けた大友宗助は、自ら修司教という宗教団体を設立して布教している。
修司教の最高責任者でありながら性格は我侭で、修司や聖龍隊の発言を無視して勝手に彼らの銅像を建てるなどやりたい放題。だが彼の祖父から莫大な資金を得ている聖龍隊はあまり宗助に強く出られないのが現状。
立花宗茂
所属:修司教四獣士が一人、大友宗助が側近
出身:三次元界 日本
武器:雷切
肩書:青天白日
登場時の書き文字:忠節
一人称:手前、自分(相手がいる場合)わし(心の中)
属性:雷
大友宗助の側近。シマ・ギンテル、小田原修司と並び称されるほどの豪傑であり、「青天の立花」の異名を持つ。
武勇、人格ともに優れた武将だが、修司教に心酔する主君・宗助に振り回されている。性格は温厚で篤実、非常に強い忠義心を持つ。
「雷切」という二対のチェーンソー状の刀を所持している。
戦闘・逃亡が長引くと心の声で呟きはじめ、「わしの馬鹿馬鹿」などと言い出す厳つい見た目とギャップのあるキャラクター。
因みに心の声の内容は大半が愚痴で、宗助や奥に関することが多い。
物語の中では唯一、実在の武将、立花宗茂の子孫という立ち位置。