現政奉還記 武将達との会合編 作:セイントドラゴン・レジェンド
しかしそんな矢先、突如として大地が陥没。大方の聖龍隊や赤塚組諸共、新世代型二次元人も地下道へと落下してしまう。
大地を陥没させた地下道を掘り進める兵士と、その大将格の男によって坑道の奥へと連れていかれてしまう新世代型達を追って聖龍隊と赤塚組は進軍する。
途中、穴道車なるガトリング砲が装備されたトロッコを利用して追跡を続行するが、複雑に入り組んだ地下道を進むのは容易な事ではなかった。
そしてどうにか新世代型二次元人達に自分の配下に加わるよう説き伏せている男に聖龍隊の新人達が駆け付ける事に至る。
男の正体、それは2年前のアジア大戦争で当時の中国政権下で勤めていながらも勃発したテロで手枷を嵌められて自由を奪われてた経緯のある黒劉席(コク・リュウセキ)であった。劉席は得意稀なる遺伝子や能力を持っている新世代型二次元人を自分の配下に加えようと企てていたのだ。
既に自由の身となった劉席であるが、2年前より愛用している特大鉄球での豪快な戦法で逸早く自らの許に辿り着いた聖龍隊の新人たちを圧倒していく。
と、そこに2年前より劉席とは顔馴染みである聖龍隊と赤塚組が駆け付け、劉席と激しい攻防を展開。結果、どうにか自らを知将と自称するパワータイプの劉席を討伐する事に成功する。
話を聞いてみると、劉席は前々から抱いていたアジア統一の野望を未だ捨てておらず、国連総長足正義輝が発した現政奉還の真っただ中で広大なアジアの地下に秘密の地下道を掘り進めて進軍していたようである。
この突拍子もない劉席の変わらぬ野心に呆れ果てながらも、地下から安全に戦火に見舞われる地上を避けて進軍できる利点を素直に称賛した聖龍隊は黒劉席と同盟を決意。彼らが掘り進めた地下道を利用させてもらう事となった。
それから何気ない話にも花が咲いた一行が地下道から地上へと出てみると、劉席の不運かはたまた計算か、激しい戦火に見舞われる戦場のど真ん中に出てきてしまったのである。
やむを得ず目前の戦火を鎮める為にも戦いに身を投じる聖龍隊と赤塚組。だがこのとき彼らは気付いていなかった。戦場の末端、そこで突如として地上に現れた聖龍HEADに禍々しいほどの狂気に満ちた眼を向けている男がいる事に………………。
[襲い来る凶刃]
「懸かれーーっ!」「うおおぉ!」
先導する指揮官の一声でテロリスト共は一斉に突如として目の前に現れた聖龍隊に襲い掛かってきた。
「落ち着いて対処するんだ! 各個撃破に拘らず、確実に一人ずつ倒して戦力を消耗させていけ!」
聖龍隊参謀総長ジュピターキッドの冷静沈着で的確な指示の下、聖龍隊の隊士達は視界に映るテロリストを撃退し始める。
「うわーーっ!」「ぎやああぁっ」
聖龍隊の苛烈な攻撃に晒され、屈強で重装備のテロリスト達も太刀打ちできず悉く夕日に染められた大地へと薙ぎ倒されていく。
その激烈な戦況を、少し離れた高台から傍観している新世代型二次元人達は改めて聖龍隊の戦力の凄まじさを思い知らされる。
「さあ行けっ! テロリスト如き、俺たちの力で押し返せ!」
仲間と共にパートナーのデジモン達に工藤タイキがテロリストを押し返せと指示していく。テロリストはデジモン達の迫力に押され、みるみる後退していった。
その他の聖龍隊も、銃器で戦うしか能のないテロリストを相手に余裕感じられる戦いに身を投じていった。
「……お前らもいい機会だからよく見ておけ。テロリストに限らず
そうメタルバードが後方の聖龍隊の新人達と新世代型二次元人達に告げようとした、その矢先。一人のテロリストが凶刃を振り回して向かってきた。皆が刃物を振り回す男に怯える中、メタルバードはすかさず両手を槍状に変形させてそれを交差させる形で向かってきた男の腹部を貫いた。
「ぐはっ」「!!」
腹部に交差された状態で突き刺された二本の槍、その腹部から流れ出る夥しい量の血の海に新人達と新世代型たちは肝を冷やした。
「……これが、テロリストや
メタルバードは険しい目つきを彼らに向けて、敵対したものの末路を脳裏に焼き付けるようにと念を押した。
その後も聖龍隊は躊躇う事無く、テロリストとして無意味な破壊行為を繰り広げている敵を一掃していき、夕日で真っ赤に染まった大地を上辺から真紅の血で染め上げていったのだ。
だが、その傍ら。戦況の発端で戦闘に開け狂う聖龍隊を見据える一人の男が虚ろな眼差しを向けていた。
「さぁて…………処刑執行だ、ねぇ…………」
舌なめずりする男の得物は、まるでブーメランの様に歪んだ巨大な刃で禍々しい光沢を放っていた。
そして聖龍隊の先頭に立つ、HEADがあと一歩のところでテロリストを殲滅できるとしていた、その時であった。
「見~~~~~~つっけたぁーーっ! 見付けた、見付けた、見つけたぁっ!」
戦前で奮闘していたキング・エンディミオンに突如として遠方より謎の男が四つん這いで高速で移動してきては迫ってきた。
エンディミオンは急接近する男の殺気に逸早く気づき、剣で攻撃を防ごうとすると男が仕掛けてきた得物は、実に凶悪そうな半円状の刃物であり、その刃がエンディミオンの首を断とうと投げ付けられてきたのだ。
「こ、この……っ」
エンディミオンは咄嗟に剣で刃物を押し返し、迫ってきた男と再び対峙する。エンディミオンの危機にセーラームーン率いるセーラー戦士たちが集い始めるが、集まり出した彼女たちの後方から先ほどエンディミオンが押し返したはずの刃物が返ってきて、乙女たちの身体を切り刻もうと迫ってきた。
「避けろっ」
後方より戻ってきた半円状の刃物にエンディミオンは皆に離れるよう呼びかけると、刃物はそれを投げ付けた陰気な顔つきの男の手に戻ってきた。
「お、お前は……!?」
初見である男に名を尋ねると、エンディミオンに尋ねられた濁った目つきの男は彼らを始めとする聖龍HEADに、その濁り切った目付きと陰気な顔付を様々と見せつけて言い放った。
「HEADぉ………………てめえ等はなぁ………………死んで俺様の足元に這いつくばって顔面踏み躙られの刑だぁ!」
憎悪と怨念そして殺気に満ちたその言動から、男は確実にHEADへと殺意を向けているのが理解できた。
「アイツは……まさか!?」
すると此処で、遠方で新世代型たちと共に戦況を観戦していた黒劉席が垂れ目の男を見て何かに気付いた。
「! ど、どうしたんです? もしかして、あの人の事知っているんですか?」
新世代型の直枝理樹が訊ねると、劉席は重い口調で語り始めた。
「あ、ああ……アイツはもと小生の一番の部下。二年前の乱世でしくじって以来、姿を消しちまった武人。その名も……」
黒劉席は語った。かつて自分の下で働いていたが、今では所在も音信も不通であった禍々しく変貌してしまった武人。その名も
ゴ・マータン。かつては文武両道に優れていたが、なかなか日の目を見る事が出来ず、ある意味黒劉席とは違った不運の持ち主であった。
それが今から2年前、眼鏡をかけたインテリア系だったマータンは中国に進攻してきた聖龍隊と真っ向から衝突。結果、聖龍隊とは惨敗。この時、聖龍隊を束ねていた小田原修司とHEADに蔑ろにされた事から彼の性格は豹変。当時28歳だった彼は肩まで伸ばしていた髪の毛をバッサリ切り落とし、眼鏡も外して相手を切り刻めるのに長けている通称:
そのゴ・マータンが奇刃を巧みに操って、目の前の聖龍HEADを一人残らず痛め付けようとしているのには誰に目にも理解できた。
「? よくわかんねえが、やれるもんならやってみな、この蟷螂野郎!」
昔の経緯など、綺麗さっぱり忘れてしまっていた聖龍HEADのメタルバードはマータンの恰好から彼を
「総長!」
「アイツは俺達で任せろ! お前らはテロリストの残党と新世代型たちの死守に着手しろ!」
ゴ・マータンと対峙するHEADを見かねたマカ=アルバーンが加勢しようと声をかけるが、メタルバードはマータンは自分達だけで処理をすると告げ、マカたち他の聖龍隊にはテロリストの残滅と新世代型の警護に当たらせる。
先ずは虚ろな眼差しから察しられるように、何をしでかすか解らないゴ・マータンに対抗するために聖龍隊はある秘策を決行した。それはミュウザクロのリボーン ザクロスビュアで地面を鞭で叩き付け灼熱のマグマに変化させると、そこにマーメイドメロディーズや龍咲海にセーラーマーキュリーの水技が放たれ、高温に熱せられた水が凄まじい水蒸気となって辺りに煙幕を張り巡らせた。
「何処だ………………何処だ………………何処だ何処だ何処だ何処だ………………」
煙幕で視界を奪われたマータンが戸惑っている最中に彼の動きを封じようと模索しようとしていた聖龍HEAD。だったが視界が奪われたマータンは誰彼良かれと言わんばかりに奇刃を無造作に投げ付けて、鋭利な奇刃は何処へなりとも飛んで行ってしまった。
「あ、危ない!」
マグマの大地から水蒸気の煙幕を発生させ、その煙幕の中から飛び出していった奇刃の軌道を見計らったジュピターキッドが慌てて大声を上げる。奇刃の飛んでいく方角、それは高台に避難している新世代型たちの方へだった。
「危ない……!」
半円状の奇刃が容赦なく数人の身体を斬りつけると最悪の事態を予想してしまった、まさにその時。
ガキンッという金属音が鳴り響き、飛来してきた筈の奇刃が弾き返されてしまった。弾き返された奇刃はそのままマータンの手に戻り、マータンが自分の得物を弾き返した相手を見据えてみると、それは露出の激しい純白の戦闘服に身を包んだ鬼龍院皐月であった。
「え、何キミ? 露出狂……? そんなに肌を曝け出して、綺麗なおべべを血で真っ赤にされたいのかな」
虚ろな眼で皐月に問い掛けるマータン。すると皐月に続いて、守られてばかりではいけないと悟った新世代型の戦闘タイプ、纏流子/
「え、何? キミたち……オレ様に処刑されたいの?」
明らかな敵意に満ちた眼を向けてくる新世代型たちに対して癪に障ったゴ・マータンは次の瞬間、まるでトカゲの様に俊敏な動きで左右へと自在に駆け出して距離を縮めていった。
「気をつけろ! ソイツは正気じゃない!」
ゴ・マータンを正気ではないと自称するメタルバードの言葉も聞かず、新世代型たちは迫ってくるゴ・マータンに挑んでいった。
一方のマータンも、自分に敵意を向けてくる全く眼中になかった新世代型たちを見て、丁寧語と子供が話すような言葉遣いを合わせたような独特の話し方で話しかけてきた。
「木偶が、さぁ? マータン様に、さぁ? 敵うわけないですよ、ねぇ? ねぇってば、ねぇ?」
狂気をも感じられるマータンの口調に誰もが常軌を逸しているのを諭してる訳だが、同時に全員がある事に内心感銘する。
(メッチャええ声!)流石、三木眞一郎ボイスなだけはある。
しかし鬼気迫るマータン相手に、彼らの身の安全を思うウッズとウェルズの両名は気が気でなかった。
「皆さん危ないです! その人は私から見ても、かなり気が立っている方なのは明白です」
「迂闊に手を出すんじゃねえ! そのへんてこな武器で切り刻まれるぞ!」
するとウッズに続いて発言したウェルズの言葉にマータンが立腹した。
「変な武器じゃねえよ! 奇刃っていう、ちゃんとした名前があるんですよぉ」
そういうとゴ・マータンは殺戮を好むかのように奇刃を舌で舐めながら眼前の新世代型たちを睨み付ける。
そして一気に距離を縮め、殺戮を開始した。
まずは奇刃を前方一直線に投げ飛ばし、敵を切り刻む正還の奇刃を最初に抵抗してきた鬼龍院皐月に仕掛けてきた。
「う、うわッ」
「皐月様!」「皐月ちゃん!」
皐月に奇刃が放たれた瞬間、がら空きとなったマータンに驚く
「うおっ」「ぐあっ」
武器を持たない素手とはいえ、鋭利な鉄製の爪に顔や身体を切り付けられた猿投山と犬牟田は堪らず怯んでしまう。
一方で皐月は放たれた奇刃を縛斬でどうにか防いでいたが、奇刃に纏わりつく電撃で縛斬を扱う手が痺れ始めてしまい持ち堪えるのは時間の問題であった。
「このヤロッ」
特殊な形状の奇刃や鋭利な爪で好き勝手に攻撃してくるマータンに流子が片太刀バサミで跳びかかろうとするが、マータンは素早く皐月に投げ付けていた奇刃を手元に引き戻しながら電撃を伴う軌道で流子の真正面に奇刃を突き刺して、強力な電撃を周囲に発生させる派生技をお見舞いする。
「うわッ!」「流子ちゃん!」「流子! 大丈夫か!?」
突撃する寸前で目の前に電撃を纏った奇刃を突き刺され、周囲に電撃を発生させられ弾き飛ばされた流子に親友の満艦飾マコと、流子が着用している鮮血の両名が彼女を心配する。
「ちっ、盆暗が! 試し斬りにもなりゃしない」
試し斬りにもならないほど劣化した腕前だと過小評価するゴ・マータンの言動に戦前で活躍する新世代型たちは反感を抱くが、確かに電撃を纏ったり自在に手元に引き戻したりと常軌を逸している武器の特性の数々に苦戦を強いられているのは間違いなかった。
「ど、どういう事だよ……!?」
戦闘を観戦していた新世代型のレイジ・アスナは、何ゆえ奇妙な形状をしている武器が電撃を纏い、更には持ち主の手元に引き戻ってくるのか疑問に思っていると、その疑問にウッズ・J・プラントが答えた。
「どういう事も何も、あの武器は異世界で発見された特殊な鉱物と製法で作られた業物だからです」
「作られた?」
ウッズの異世界で作られたという言葉に、誰もが耳を研ぎ澄まして話を聞き入れているとウッズは語り続けた。
「そう、あれは2年前………………アジア大革命を起こし、アジア全土を戦火に飲み込んだ当時の革命軍士の一団が、更なる戦禍を引き起こそうと各地の武に秀でた武人達に属性効果のある武器を提供していったんです。ある武器は雷、ある武器は風邪を……ある武器は火を纏い、ある武器は氷で相手を凍て付かせる効果を持たせた武器をアジア各地に散らばらせたんです!」
更に兄のウッズに続き、弟のウェルズも語り明かした。
「2年前に流行った武器が元手となって、今では多くの武人が属性効果のある武器を愛用して自在に扱う様にまで至っちまった。確かに殺傷能力は普通の武器より強靭だが、誰もが強力な武器を欲しがるのは当然の事だ」
ウッズ/ウェルズ兄弟の話を聞いて、如何に現在では多くの属性武器が広まっているのかを改めて知らされた新世代型たちは驚愕の余り顔から血の気が引いてきた。
すると二人の話を同じく聞いていたある男も群衆の中から前に出てきて言葉を発する。
「その通りだ。現に、この小生の鉄球にも特別な鉱石が使用されているからこそ突風を巻き起こす事が可能となっていやがるんだ」
「り、劉席さん……」
自身が愛用している鉄球も同様に異世界で生成された代物だと自負する黒劉席の言葉に、彩瀬なるら新世代型たちは唖然とする。
そして前に出てきた劉席は、かつての腹心の部下であったゴ・マータンに優しく話しかける。
「おうっ、いつ戻ってきても良いんだぞ」「りゅ…………劉席さぁ~~ん」
黒劉席の優しい一言に心を取り戻したかに見えたマータンは、そのまま満面の笑みで意気揚々と互いに抱きしめ合おうと駆け出した。
だが、その時「ヌッ、なんじゃあ!? どりゃあっ」前もって投げ飛ばしていた奇刃に危うく切り刻まれそうになる劉席は、そのまま奇刃に押し出されて尻餅をついてしまう。
「チッ、運のいい奴……」
もう少しで得物である奇刃で切り刻まれたのを防がれてしまったゴ・マータンは実に残念そうな表情を浮かべる。
更に今昔の付き合いをしていた劉席に対して他人行儀な態度まで取る始末。
「すいません、どちら様でしたっけ?」
「おい!? 劉席軍一の筆頭だったお前さんが、この小生を忘れるわけ無いだろう!?」
涙ながらに訴える黒劉席の言葉にも、マータンは眉一つ動かさず冷淡に対応する。
「何か言った? 今オレ様に何か言った? ねぇ?」
「マータン! いくら小生に会いたいからって、少し強引すぎやしないかね?」
しかし劉席の言葉は既にマータンの耳には入っておらず、マータンは再び奇刃と鋭利な爪で攻撃を仕掛けてきた。
すると此処で新世代型の警護に当たっていた聖龍隊の各隊士がゴ・マータンの凶行を阻止しようと阻み始めた。
「頼むから、さぁ………………誰か、他の奴に殺られてくれる? ねぇ?」
HEAD以外の隊士には目もくれないマータンは、自分以外の誰かさんに殺されてくれと嘆願する。が、このマータンの言動を突っ撥ねるかのように聖龍隊の新人達と一般隊士らが行く手を阻む。
「ウルセェ! 人を面白半分に傷つけやがって……!」
「絶対に許せない……」
キリトにシルバー・クロウらは自由溌溂に他人を殺傷するマータンの凶行に怒りすら覚えていた。
「お前たち! こいつは正真正銘の狂人だ! 油断せず、速攻で片を付けるぞ!」
「ただし相手の動きには一癖も二癖もある。的確に動作を見定めて一気に叩くぞ!」
「協力してやれば必ず勝機はある!」
聖龍隊の一般隊士、木之元桃矢/月野進悟/森谷賞は共闘で眼前のゴ・マータンを片付けようと新人のマギカ組に申していった。
そして狂気の武人ゴ・マータンとの死闘が今、繰り広げられる。
[凶刃と交わるHEAD]
意気揚々とゴ・マータンに挑んでいったのは良いが、動きの読めない奇刃での攻撃と既になった瞬間に放たれる高速回転による引っ搔き攻撃に翻弄され、心労困憊してしまう聖龍隊士。
「おやぁ、動かなくなっちゃったよぉ? もう終わり……ですかぁ?」
全身傷だらけの血塗れの姿へと変貌し動かなくなった隊士を足で軽く蹴飛ばしながら生存を確認していくゴ・マータン。
そして何もできずに痛め付けられた新人の佐倉杏子に歪んだ表情を近づけると、彼女の真意を傷つける言葉を吐き散らす。
「武は駄目、文もどうせ駄目………………何だオマエ? 何だったんだ、オマエ? ねぇ?」
戦いもダメ、文などの学問も駄目だしされていく杏子や周囲のマギカ隊の心境は、既にボロボロであった。
「ケケ、キケケケ……」
「あれは……己の流した血を啜って、笑っている……!?」
不敵な笑みを零すゴ・マータンの笑い方を目の当たりにした者たちは、マータンが相手の血を啜って嘲笑っているかのような言い知れぬ恐怖に駆り出されていた。
「痛いなら痛いって、泣き叫んでよぉ!? 我慢しないで、さぁ!」
痛みを発する事を未だに堪える鹿目まどかだが、彼女のその辛抱強さにマータンは逆に苛立ってしまっていた。
「我慢しなくても良いんですよぉ。どうせ全員、バラしちゃうんだからねぇ」
全員を容赦なく殺すと宣言するマータンの発言に辛抱強いまどかも思わず目から涙が零れそうになる。
「こ、こいつ……っ」
まどかを泣かせたマータンの所業に怒りを露にする暁美ほむらが拳銃を向けようと僅かに残った与力で銃を持ち上げようとするが、それに気づいたマータンは無情にもほむらが持っていた銃を蹴り飛ばして彼女にも暴言を吐いた。
「柔能く剛を制す……だ。上略くらい知っとけ、ぶぁ~~~~~~か」
戦略ぐらいまともに立てられないのに自分に歯向かうなと言わんばかりの暴言を吐き散らしたマータンは、最後に全身痛々しい傷跡に晒された面々を断頭しようと奇刃に手をかけ、首の根元に押し当てようとした。
「こういうの、数じゃないんだよねぇ。質だよ、質………………わかった?」
SAO/AW/マギカ組、そして三人の先輩隊士らによる実力と数での攻めだけでは何も変えられないと告げるゴ・マータンは彼らの首を根こそぎ切断しようと力を入れようとした。
と、その時。首に奇刃を押し当てようとしていたマータンに何処からともなく青色の円盤が飛んできて、マータンの行動を妨害したのだ。
寸前で回避したマータンが自分に向けられて投げ付けられた円盤に目を向けてみると、それはミラーガールが投げ飛ばしたミラー・シールドであった。彼女は盾をフリスビーの要領で投げ付け、マータンの凶行を寸前のところで阻止したのだった。
「キケケケケケ………………何ぉ~~処に隠れてたんですかぁ?」
今の今まで反応すら示さなかったHEADにマータンが訊ねると、ミラーガールは不機嫌そうな表情でマータンに申し開いた。
「あなた……私たちHEADをどうしたい訳だったかしら?」
するとマータンは濁り切った垂れ目でミラーガールたちHEADに自分の真情を洗い浚い吐き散らした。
「だーーーーーーから、言ったじゃないですかぁ? 殺して差し上げますって、さぁ」
そんな禍々しいマータンの垂れた目つきを直視したメタルバードは、マータンの歪んた思想を読み取ろうとした。
「お前に纏わりついているのは……妬み……怒り……そして…………」
メタルバードが語っていたその最中、突如としてマータンが「そして、殺意だぁ!」と言って飛びかかってきた。さらに同時に奇刃をも投げ付けてきて陣営を組んでいたHEADを散開させ、一人一人面白可笑しく切り刻もうと楽しみ出した。
「このこのこのこのこのこのこのこのこのッ」
ブーメランの様に飛来する半円状の奇刃を投げている間、素手状態のマータンは鉄製の爪を用いて目前のHEADを手当たり次第に引っ搔いて攻撃してきた。
そこにマータンの死角から鳳凰寺風が風の弓矢を射ろうと構える。そしてマータンに向かって風の矢を放つが、それより早くマータンは電磁石の要領で引き戻した奇刃で風の矢をはじいてしまい彼女の射撃を防いでしまう。
風がそれに驚いた僅かな隙に、マータンは風の背後に回り彼女を蹴飛ばすと地面に寝転がらせて奇刃を身構える。
「内臓の呻きご拝聴の刑」「きゃあぁ!」
鳳凰寺風を捕らえたマータンは、彼女を地面に倒させると風の腹部に奇刃を押し当ててそのままこすり出したのだ。風の碧の鎧は火花を散らし、マータンは本気で風の腹部を奇刃で真っ二つにしようと企んでいた。
「風ちゃん!」「あなた! 風になんて事を」
今にも風の腹部を切断しようとするマータンに昔馴染の仲間の獅堂光と龍咲海が急いで駆け寄ると、風の腹部を奇刃でこすり付けていたマータンは手を止め、風にこすり付けていた奇刃を向かってくる光と海の二人に向かって投げ付けた。
「うわあっ!」「きゃっ!」
上方向に奇刃を投げ付ける「天巡の奇刃」を受けて絶句する光と風。
すると同じCLAMPキャラの危機に今度は木之元桜がダッシュ「駆」のカードを発動させて俊敏力を発生させてマータンの許に駆け付けようとする。
しかし「天巡の奇刃」で素手状態になったマータンは、鋼鉄製の爪で向かってくるさくらに対して錐もみ回転をしながら飛びかかってきた。
「うわあっ」
爬虫類の様な鋭利な爪で顔を中心とした上半身を引っ搔き回された木之元桜は余りの激痛に思わず動きを止めてしまう。
そしてマータンは風/光/海/桜のCLAMPキャラを徹底的に痛め付けると、奇刃に備わっている特殊性能で正方形の檻を発生させて四人を中へ閉じ込めてしまう。
逃げ場のなくなった四人に対し、マータンは嘲笑うかのように彼女達に挑発してきた。
「必死で抵抗して下さいよぉ~~? こっちが盛り上がらないからさぁ~~」
すると次の瞬間、四人が閉じ込められている檻に電撃が流され、四人は電撃で更に苦しめられてしまう。
「きゃあああぁああ……っ!」
只ならぬ悲鳴を上げて電流での苦痛に喘ぐ四人。そんな四人をマータンは嘲笑いながら見て楽しんでいた。
「た~~のしいね~~」
そしてマータンは電撃で苦しむ四人の内の一人、木之元桜に狙いをつけて奇刃で滅多切りにしようと檻の中に飛び込んだ。
「マズイ! あのままじゃ黒焦げだけじゃ済まないぞ!」
電撃で黒焦げになる処か、奇刃で滅多切りにされて小間切れにされ兼ねないと叫ぶ大将。すると其処にメタルバードが全身を翼の様な形状に変形させて、更に真正面に刃を発生させてマータンが仕掛けようとする「逆上遊下の牢獄」に突っ込んだ。すると電撃が流れてる檻は大破され、木之元桜に奇刃で狙いをつけていたゴ・マータンもメタルバードの突進に吹き飛ばされてしまった。
「キケケケッ」
妖しく不敵な笑い声を発しながら、歪んだ敵意をHEADに向け続けるゴ・マータン。
そんなマータンに遠距離から大水を発生させて津波で飲み込ませようと仕掛けようとしていたウォーターフェアリーとマーメイドメロディーズ。だが彼女たちの企みにも素早く感づいたマータンは奇刃を弧状の様に前方へと投げ付けると、前方にいた彼女達を巻き込んで奇刃は物凄い回転でマータンの許へと強引に引き寄せられてしまう。
そして巻き込まれた彼女達が目の前まで来ると、マータンは彼女達を巻き込んだまま奇刃を真上へと投げ飛ばし、空中で彼女達を残忍なまでに切り刻んでいった。
「るちあ! くそっ」
るちあ達を切り刻まれ、怒りが頂点になった堂本海人は一般隊士である白井渚と浜崎雅弘らと共にマータンに迫ろうとするが、マータンはそのうちの一人渚の背面に素早く回り込み、奇刃で斬り付けてしまう。
「渚くん!」「くそっ、今度は渚が……!」
マーメイドプリンセスに続いて白井渚までも奇刃の餌食になってしまったのを目の当たりにして苦悶の表情を浮かべる雅弘と海斗。するとそこに今度は東京ミュウミュウズの面々が接近してきたのを視認したマータンが彼女達にも奇刃を投げ付け牽制するが、素手状態となった隙をついて堂本海人がマータンの身柄を取り押さえようと捕まえようとした。
だが逆にしがみ付かれて拘束されてしまい、更に追い打ちとばかしに蹴り飛ばされてしまう。
「首切り舌切り泣き叫びの刑!」
近づいた敵の背面に素早く回り込み、奇刃で斬り付ける他、素手状態では相手を拘束して蹴り飛ばす荒業の名を叫んだゴ・マータン。
「これ以上、好きにさせちゃいけないわ!」
キューティーハニーを先頭にセーラー戦士たちや他の聖龍HEADがマータンの許に駆け付けるが、彼女達が駆け付けた途端マータンは奇刃を縦に地面に突き刺して、それを軸にグルグル回り始めた。
「な、何をする気?」
セーラーサターンが何かを仕掛けようとするマータンの行動に注意を取られていると、奇刃を軸にグルグル回り出したマータンの周囲から土煙が発生し、それが煙幕を張ってマータンの姿を隠してしまった。
「き、消えた!?」
コレクターユイが姿を晦ましたマータンの技に驚いていると、土煙の中のマータンが自慢げに今の自分の技名を言い放った。
「閻魔神隠れ!」
自力で煙幕を発生させて姿を晦ます閻魔神隠れを発動させたゴ・マータンの行方に皆が辺りを見渡していると、その混乱をかき消すような悲鳴が聞こえてきた。
「そりゃ、そりゃっ」「きゃあぁっ」
その悲鳴は何とキューティーハニーのものであった。なんとマータンは以外にも柔らかい奇刃の湾曲部分を折り曲げ、そこにキューティーハニーを挟み込んで拘束していたのだ。
そして次の瞬間、マータンは叫びながらキューティーハニーを挟み込む奇刃を打ち上げた。
「残念無念後悔先に断つの刑!」
次の瞬間、キューティーハニーを挟み込んだ奇刃は上空へ打ち上げられ、空中で激しく回転しながら挟み込まれたキューティーハニーを切り刻んでいった。
「ケケ、ケケケッ」
次から次へと敵を痛め付ける事に関しては天才的ともいえる技量を見せ付けるゴ・マータンの凶行に誰もが怯え切り、マータンもまだまだ人を傷つけ足りないといった心境であった。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねッ」
マータンはさらに凶行に及び、奇刃を手当たり次第に振り回し目前のHEADに重傷を負わせたばかりか、まだ足りず奇刃を投げ付けた瞬間には鋭利な鉄製の爪で顔など防御されてない個所を徹底的に中心に引っ掻いて攻めて行ったりと残虐性が垣間見える攻撃を続けてきた。
そして遂にマータンは鋼の肉体を持つメタルバードにすら、その狂気を向けてきた。
「お、おいおい。俺は全身鋼鉄だから切り刻んだりするのは無理だぜ」
するとマータンは殺気立った顔立ちからメタルバードに言った。
「バーンズぅ、テメエは……死んでオレ様の足元に這い蹲って顔面踏み躙られの刑だ!」
するとマータンは無理であろうにも拘らずメタルバードの身体に奇刃を押し当ててガリガリと削り始めた。
「コイツ……もう正気じゃいねえんだ」
既に正気の沙汰ではないゴ・マータンをマジマジと見据えたメタルバードは微弱ながら狂気を感じ取った。
しかしメタルバードにマータンが意味のない攻撃に走っているのを確認したジュピターキッドとミラーガールが、マータンの凶行を止めようと走ってきた。
「はぁ? ジュピターキッド、テメエは! 端正なお顔を恥辱と屈辱に醜く歪ませて驚愕死の刑」
更に「ミラーガール、貴様は! 苦痛激痛鈍痛疼痛心痛悲痛あらゆる痛みと理不尽で悶絶死の刑」と二人にも絶句してしまいそうな刑を執行しようと言い迫ってきた。
[凶刃と海賊]
「このっ」「えいっ」
ジュピターキッドとミラーガールは投げ付けられてくる奇刃を弾き返し、更に素手で引っ搔いてくるマータンの接近攻撃に関しては辛うじて防ぎきる事に至っていた。
だが、軌道が読めにくい奇刃の動きと素手で迫ってくるマータンの俊敏な動作にキッドもミラーガールも苦戦を強いられていた。
「ケケ、ケケケッ」
狂喜に笑いながら奇刃を巧みに操り攻めてくるゴ・マータンの強攻にHEADはもちろん多くの聖龍隊士がボロボロに傷付けられてしまっていた。
「ケケケケ、もう御終いですか? もう終わりにしちゃって良いですかぁ? ケケッ」
此方の血に染まった奇刃から垂れ流れる鮮血を舐めながら息の根を止めてもいいかと訊ねるマータン。
既に全員がマータンの奇刃と爪の餌食によって動くことすら侭ならないほど痛手を負ってしまい、それでもなおマータンは更なる追撃を止めようとはしなかった。
唯一聖龍隊で戦えるのはメタルバードのみであったが、何を仕掛けてくるか分からないマータン相手に1対1では分が悪すぎる。どうにかあと一人、そう戦友なるものが必要であった。
すると皆が痛め付けるのを喜々とするマータン相手に恐怖すら感じ始めていたその時、一人の男が戦前に飛び出した。
「バーンズ! ここは俺も一緒に戦うぜ!」「大将……!」
戦闘から離脱していた赤塚組の頭領 赤塚大作からの申し開きにメタルバードも周辺でマータンに痛め付けられ生傷だらけの身体となった隊士たちも驚いた。
すると戦前に出てきた大将を見て、マータンは又しても挑発混じりの台詞を独特の口調で問い掛けてきた。
「アンタはぁ、確か赤塚組のお山の大将さんでしたよねぇ? 楽しいですかぁ、海賊ごっこはぁーー? いいですよねぇ~~、お気楽極楽でねぇ~~」
この挑発に大将も負けじと言い返した。
「てめえの方こそ、陸をぶらぶらぶらぶら。いい御身分じゃねえかい? はっは!」
大将は担いでいた碇槍を右腕に持ち替えると、メタルバードと共に戦前に飛び出しマータンとの対決に集中した。
「あっ、この! 釣れねえじゃねぇか」
投げ付けられた奇刃を碇槍の碇で捕えようとするが、軌道の読めにくい奇刃を捕らえようとするのは至難の業であった。
と、そんな奇刃を碇槍で捕えようとする大将にマータンが急接近し、素手状態で攻撃してきた。
「!」目前まで迫るマータンに気付くものの、マータンは大将を捉えて鋭利な爪で引っ掻こうとしてきた。
が、そんな大将とマータンの間に鋼鉄の肉体を持つメタルバードが割り入って大将の危機を脱する。
「ば、バーンズ……!」「ケケ……?」
突如として間に入ってきたメタルバードに唖然とする大将とマータン。するとメタルバードはマータンと対峙する大将に説き伏せる。
「大将、お前はマータン本人だけを集中してろ! 奇刃の方はオレが何とかする!」
「おうっ、分かった!」
そう会話が終わるとメタルバードは飛び去って行き、再び大将と素手状態のマータンが一騎打ちを果たそうとする。
一方でマータンが上空のメタルバード相手にも応戦しようと投げ飛ばした奇刃を、メタルバード自身が掴もうとするが奇刃には強力な電撃が纏わり付いていた為に使用者であるマータン以外には触れられないようになっていた。
「ッ、これは困ったな」
奇刃が取り押さえられず困惑するメタルバード。
その頃、地上では素手で迫ってくるマータン相手に大将が碇槍で応戦していた。だが頑丈な金属で構成された手袋の爪から派生する爪攻撃は防ぎ切れず、僅かな隙を衝かれて大将の露出している腹筋などに鋭利な爪跡が痛々しく残されてしまう。
「くそっ」「ケケケケ」
防御不可ともいえる爪攻撃で攻撃を仕掛け続けてくるマータンの凶行に大将もタジタジであった。しかも碇槍による攻撃もマータンの動物の様な四つん這いの俊敏な動きでかわされてしまい当てる事すら困難を極めていた。
更にその頃、放たれた奇刃がマータンの意思に従っているのかメタルバードを追撃し始めてきたのだ。
「おいおいおい、マジかよ。この武器、追尾機能もあるって訳か!?」
メタルバードが後方より追ってくる奇刃に苦戦を強いられていたその頃、地上ではどうにか攻撃を当てようと大将は碇槍に飛び乗りぶら下がって蹴り付ける十飛でマータンに接近。しかしマータンはこれを横へと回避し、大将が自分の横を通り過ぎた瞬間に彼の顔に爪で引っかき傷を負わせたのだ。
「ッ、よくも俺の自慢の面を……!」
「ケケッ、元から原画崩壊してる面だったろうが。今更どんなに傷ついても誰も見向きもしねえよ」
自分の顔を引っ掻かれた怒りが込み上げる大将に反し、マータンはまたしても挑発的な態度を取る。
するとその時、上空からメタルバードが地上の大将目掛けて呼びかけた。
「大将!」「!? 何だ!」
メタルバードは大将にアイサインを繰り出し、それを視認した大将は彼の意図を汲み取った。
そしてメタルバードは奇刃が自分を追跡してくるのを確認しながら、本来の持ち主であるマータンに向かって急降下してきた。
「う、うわっ」
急降下すると同時に寸でのところで方向転換した事で直撃は免れたものの、マータンは驚きの余り腰を砕けてしまった。だがそれで終わりではなかった。メタルバードを追尾していた奇刃が、なんと電磁石の要領で持ち主のマータンへと一直線に落下してきた。「!」これにはマータン本人も驚いたが、使い慣れた奇刃が自分の許へと戻ってくるのに対処は慣れっこであり、容易に急降下してくる奇刃を自らの手で掴んでしまった。
「ケケッ、何かと思えば……オレ様の奇刃をオレ様自身に直撃させようって考えだったみたいだな。でも考えたらず何ですよねぇ」
と、相手の目論見が外れたと思い込んでいたマータンの後方から灼熱の熱気が接近してくるのを、マータン自身は気付いて急いで振り返った。
見るとそこには武器である碇槍を頭上で回転させて激しく炎を纏わりつかせる「撃零」を仕掛けようとする大将の姿があった。本来の二人の狙いはこれで、最初の奇刃での奇襲は囮であったのだ。その間に大将は碇槍を振り翳し、簡単には防御できない撃零を繰り出す準備をしていたのだ。
そして次の瞬間、大火を纏った碇槍の碇部分を前方のマータン目前へと投げ付けて撃墜させ、凄まじい衝撃波を発生させてマータンを巻き込ます事に成功したのだ。
「やったぜバーンズ!」「ああ、そうだな大将」
撃零を打ち込んでやった大将の傍らに着地するメタルバード。まさに二人の阿吽の呼吸が招いた勝利であった。
「うぅ……」
一方で撃零を打ち込まれたマータンは黒焦げになりながらも辛うじて意識がある状態で、未だに恨み辛みの真情で此方へと迫ろうとしていた。
「この野郎、まだ息があるぜ」「今のうちに始末しておくか」
生気のあるマータンの顔を見下ろしながら、大将とメタルバードはマータンにとどめを刺そうかと思案していた。
が、その時「待ってください!」「!!?」マータンにとどめを刺そうとしている二人の許に、慌てて新世代型の琴浦春香と斉木楠雄が駆け付けてきた。
「どうしたんだ、お前たち」
メタルバードが慌てて駆け付けきた理由を訊くと、春香がメタルバードに想定外の事を訴え始めた。
「その……そのマータンって人。本当は悪い人じゃないみたいなんです。だから、その殺さないでください」
「な、何だって!?」
琴浦春香の言葉を聞いて驚愕する大将。すると彼女に続いて斉木楠雄がさらに詳細な事情を二人に説明し出した。
「先ほど他の新世代型の皆々様にも話しておきましたが、彼は、ゴ・マータンは本来とても優秀でそれこそ文武両道に秀でた方だったんですよ。でも昔から不運続きで中々人に認めてもらえずにいる中、2年前の乱世であなた方聖龍HEADに蔑ろにされた事で精神を崩壊。今の様に自分のプライドを傷つけた者、その者を処刑の形で痛め付けようとするのを邪魔する者まで狂ったように襲うようになってしまっただけなんです。彼にはまだ良心の欠片が残っています。どうか殺さず、彼の気持ちを汲み取ってほしいんです」
「……………………………………」
他人から認められないが故に狂気に走った例をたくさん知っているメタルバードや大将は、琴浦春香や斉木楠雄の話を聞いて黙り込んでしまった。
と、その時である。
「あ! あれ!」
と、新世代型のキャサリン・ルースが指をさして叫んだ。皆が彼女の指さす方に目を向けてみると、先ほどの撃零でボロボロになったゴ・マータンが慌てて退散しているのが目に見えた。
「あ、あの野郎!」
逃げ出すマータンに大将が追撃しようとするが、それをメタルバードが制止する。
「ば、バーンズ! どうして……」
大将が何ゆえメタルバードが追撃を制止するのかを訪ねようとすると、遠方まで逃げていったゴ・マータンが振り返り散々に痛め付けた聖龍隊に捨て台詞を残していった。
「ケケケッ、今日はこれぐらいにしといてやりますよ! 次こそは腸ぐちゃぐちゃで激痛悶絶の刑に処しちゃいますからねぇ!」
そう言い残すと、マータンは夕焼けの中へと姿を消していった。
一人逃がしたゴ・マータンに対して大将がメタルバードに何ゆえ逃がしたのか再び問い詰める。
「おい、バーンズ! なんで逃がした? あの様子じゃ、アイツまたお前さん達を狙って……」
すると問い詰められたメタルバードは、大将とその傍らにいる琴浦春香と斉木楠雄の前で己の真情を述べ明かした。
「いやな、人間自分が認められたいがために色々と悪戦苦闘しちまうもんなんだよ。時には、どんなに頑張っても努力が認められず、狂った人生に陥ってしまう輩だってこの世には五萬といる。
「……………………………………」
「……俺もよく知っている。自分を認められたいが為に、国連に自分の人権を売り捌いて自ずと人間兵器に成り下がってまで俺たち二次元人の未来を守っていた、あの男の事をよ」
「バーンズ…………」
「……それに、俺たちは確かに記憶にはないが、アイツがああなっちまったのは俺ら聖龍HEADが原因だろ? だったら最後まで面倒を見るのが筋ってもんさ」
誰かに認められたい。その目的の為だけに人は懸命に努力し続ける事ができる。
だが、時としてその努力が認められず周囲から孤立してしまう事も少なからずある。
この時、あえて逃がしたゴ・マータンがこの現政奉還の乱世を終わらせる重要な人物である事は、まだまだ先の事である。
[アレンジ武将]
ゴ・マータン
出身:三次元界・中国
属性:雷
武器:
肩書
『
登場時の書き文字
執行
一人称
オレ様、マータン様
声優
三木眞一郎
元々は黒劉席軍の武将だったが、今は主君を持たずに浪人として亜細亜をさまよう。
プライドが高く、自分の誇りを傷つけた者に対しては強い恨みを持ち、"マータン閻魔帳"にその相手の名前を記して執念深く付け狙い処刑(と言う名の討ち果たし)を続けている。
足正義輝の現政奉還に目もくれず己の復讐にのみ執着しており、閻魔帳に載っている人物を処刑するためにアジアを駆け巡る。
現在、閻魔帳のトップは聖龍HEADで、最上位はメタルバード。
そんな彼だが意外にも部下達からは慕われており、なんだかんだで彼について来てくれている。 (だが率いているのは正規の軍人ではなく浪人衆である)。
中には配下の中には閻魔帳を真似て持っている者もいたりするようだ。
かつては黒劉席率いる軍の筆頭でもあった戦国武将だが彼を見限り出奔、今は主君を持たずアジアを流離う流浪の浪人となっている
自分の誇りを傷つけた者は「マータン閻魔帳」に名前を書いて執念深く付け狙い、処刑(と言う名の討ち果たし)をしている模様(終えると名前を消している)。
性格
普段はダウナー系だが情緒不安定な所があり、突然イラつきだしたり嫌ってる相手と対峙すると狂気と殺意をむき出しにしてしまう。攻撃も大半が処刑に通ずる物が多い等どことなく猟奇的である。
更にプライドが非常に高いうえに高圧的な所があり、周囲の人間を木偶と呼び蔑む。
「マータン様に、さぁ?敵うわけないですよ、ねぇ?ねぇってば、ねぇ?」などと丁寧語と子供が話すような言葉遣いを合わせたような独特の話し方をする。
粘着質な性格のせいか復讐に執着しており、それ以外のことに興味はない。
ちなみに返り討ちに遭う以前の性格は割と普通(寧ろ良好?)だったらしく2年前のアジア大戦では、頭のキレと実力でそれなりには活躍していた模様(浪人談)。
※彼を知っている知人からは「マータン、お前さん随分人相が変わったぞ」や「お前さん随分性格が変わったな」と言われていたりする。
時に見える本性?
普段はイっちゃってる連中も多いキャラの中でもかなり危うい部類だが、それは閻魔帳に載っている相手に対してのみで、戦う相手によってはかなりまともなことを言ったりする。
この為正気と狂気の間を行ったり来たりしているともとれる。
相手にちゃんと対応されたり、優しくされた時には戸惑ったり自分がまだ何もしていないのに怖がられたときには困っている描写もあったりと、自分の予想外のことが起きると本来の性格や実に常識的な面が垣間見えることもある。
上記のストーキングまがいの行動の原動力は、『人々に認められたい』という思いの裏返しであり、故に情状不安定から「ケーケッケケ」という狂気めいた笑い声。
また敵キャラとして登場した際にプレイヤーが勝つと「おいぃ……だ…誰かぁ……ひとり…は…嫌……だ………」と言って倒れる事や、癇に障った相手の名前をいちいち閻魔帳に書き込んで執拗に追い回したり撃破された際に前述の様な台詞を発する事から見るに、本来は几帳面で繊細かつ構われたがりな人物であったと思われる。
実際に周囲から「歪んだ性格」扱いをされている程だが、新世代型の琴浦春香や斉木楠雄のテレパスから、誰にも認めてもらえない孤独な性分である事が判明する。
閻魔帳について
マータンが自分が気に喰わない人物の名前を書き込み、執拗に付け狙うための帳面。
名前を書かれている人の人数は最低でも40人はいるらしく、この閻魔帳に名前を書き込んでいる人に復讐することを「処刑」と呼んでおり、彼にとってはアジアを統一することよりもこの帳面に名前がある人物を"殺(バラ)す"方を優先している。
……が、名前を書かれた人の大半がマータンの自業自得であったり、被害妄想であったり、逆恨みであるという人がほとんどなので人によってはいい迷惑でもあったりする。
現在はバーンズを閻魔帳のトップに書き記しているらしい。
※因みに2位はジュピターキッド、3位はミラーガールとのこと。
恨みが強いのかこの三人相手には「○○の刑だ!」と早口でまくしたてている。
・バーンズ(聖龍HEAD)→「死んでオレ様の足元に這い蹲って顔面踏み躙られの刑」
・ジュピターキッド→「端正なお顔を恥辱と屈辱に醜く歪ませて驚愕死の刑」
「その指全部斬り落として糸に絡めて……はい首飾りの刑」
・ミラーガール→「苦痛激痛鈍痛疼痛心痛悲痛あらゆる痛みと理不尽で悶絶死の刑」
容姿
「恐竜」などの『爬虫類』をイメージしている装備に身を纏う。(実際その見た目や仕草から「カマキリ野郎」、「蜥蜴」と呼ばれている)。
身に纏っている衣装は暗色系で地味目である。
衣装(陣羽織)の背中側には竜のイラストが描いてあるが多数の切り傷があり、後ろの部分がトカゲや恐竜の尻尾のように尖っている。
垂れ気味で濁った目つきをしている等陰気な顔つきをしており、手が長めで姿勢も猫背で暗い雰囲気。
兜の下の頭髪は丁髷と月代。
過去
2年前、まだ28歳の頃から優秀であったが中々芽を出す事ができない冷遇された日々を過ごしていた。
髪も普通の総髪で、小さめの眼鏡をかけているインテリ系であった。
しかし2年前の大戦時、些細な事で自らの失敗を小田原修司率いる聖龍HEADに指摘された事で性格が豹変。今の禍々しい風貌へと変わってしまった。(故に本来は閻魔帳の第一位は小田原修司であるのだが、既に彼は現役を引退したという事で現HEADのみを執拗に恨む事となった)
劉席の事は「阿呆席」と呼んで小馬鹿にしているが、プライドによって現在は敵対しているだけで根っこの所は嫌いではないらしい(普通に不意打ちをしたりしているが、狙いはわざと外してると思われる)。
戦闘スタイル
武器は「奇刃(きば)」と呼ばれるマータン自身の凶悪さをイメージしたかのような半円状の刃物。
ブーメランの様に投げたり直接切り刻んだりする。
また、奇刃を投げている間は籠手に付いている爪を使って相手を切り刻む。
このひっかき攻撃は威力こそそんなに強くないものの奇刃が戻ってくるまでの隙を補うために使うことが出来たり、技の出の速さから奇刃攻撃とひっかき攻撃を使い分けることで戦いの幅が広がる場合もある。
挑発モーション
彼の挑発モーションは3つある。
通常⇒殺人鬼のごとくこの奇刃をなめる動作をする。
奇刃を投げて手元に無い時⇒閻魔帳を探し出し中々見つからずに慌てふためく。
逆上遊下の牢獄時⇒「た~のしいね~」と言いながら喜んでいる。