現政奉還記 武将達との会合編 作:セイントドラゴン・レジェンド
[ドラゴンの墓前にて]
村田順一からの言伝を受けて、聖龍隊一行はかつて自分達が国連軍と連携して戦闘を勃発させたチェルノブイリ被爆跡地へと活路を向けた。
チェルノブイリ被爆跡地は、かの革命軍士総元帥ブラッディ・ドラゴンが生まれ育った地。
ドラゴンはチェルノブイリの原発事故を隠蔽しようとしたロシア高官の息子であり、チェルノブイリの被爆者でもあった。
そんなドラゴンは放射能の灰で埋め尽くされたチェルノブイリに愕然とし、さらに事故を隠蔽した父親を始めとする政府高官に落胆し、愛国心を踏み躙られてしまう。
だがドラゴンは放射能を浴びても尚、人知れず無人と化したチェルノブイリで隠れ住み、その影響で放射能を操れる能力を得る。また、後世にはその名が示す様に巨大な竜へと変身する能力も得られた。
しかし全てにおいて絶望視していたドラゴンの目には驚くべき光景が広がる。それは放射能に汚染されながらも次第に数を増やしていく鹿やイノシシなどの動物に、廃墟と化した町に蹂躙する青々しい草木であった。この光景にドラゴンは驚異しながらも、その絶景に心を奪われた。
「身勝手な人間がいないだけで、ここまで自然は美しくなれるのか」
ドラゴンは被爆しても尚、生き生きとする自然の美しさを噛み締めながら無人の美を賞賛していった。
後に彼は被爆して無人と化したチェルノブイリで人外の赤子を見付け保護、それからフランスまで放浪した末にとある片田舎のマフィアに人外の赤子共々拾われ育てられる。この人外の赤子こそ、あのガイア・スコーピオンだ。
さらに数年後、ドラゴンは故郷と同じく人間のいない美しさを世界に拡散させるため「革命軍士」を結成。世界中の名立たるテロの後ろ盾として世界中で暗躍するまでに成長。
そして2012年の12月12日から20日の間、聖龍隊と国連軍が革命軍士の一大計画を阻止するため連合軍として激突。
この時の革命軍士の計画とは「世界再出発計画」というもので、世界中に放射能を拡散させてドラゴンが故郷チェルノブイリと同様の環境に激変させようという計画だった。
世界中を放射能の海に曝す訳にはいかないと、聖龍隊は総動員で革命軍士と死闘を展開する。
だが、最高戦力である小田原修司が巨大な漆黒の竜に変身したドラゴンに完膚なきまでに痛め付けられた事で戦況は大きく変動。
身内に母国と、信じていたもの全てに裏切られたドラゴンは死力を尽くして、故郷チェルノブイリと同じ環境を世界にも再現しようと激しい戦闘が展開される。
「人間のいない世界こそ、世界は真に美しく生まれ変われる」
ドラゴンはそう信じて最後まで抵抗し続けた。
しかし最後には義弟であるガイア・スコーピオンと聖龍隊総長小田原修司の共闘により、ドラゴンは撃破され、彼は故郷チェルノブイリで静かに息を引き取った。
この一件以降、世界はチェルノブイリへの見方を一変させ、二次元人の科学力でチェルノブイリの放射能を除去した後、チェルノブイリは誰もが足を運べる自然公園へと変わった。
この自然公園の片隅には、信じていた全てに裏切られながらも最後まで美しい自然を愛し続けたブラッディ・ドラゴンの墓標が静かに設けられた。
そして皮肉にも、この戦闘を皮切りに小田原修司は戦争抑制兵器として自らを身売りした国際連合に兵器としての権限とそれに並ぶ絶対的地位を返上、国連からは小田原修司自身の人権が返還される事態に発展した。
こうして小田原修司は晴れて
そんな死闘が展開されたかつての戦場も、今では観光客が足を運ばせる自然公園へと生まれ変わっていたが、その片隅に設けられたブラッディ・ドラゴンの墓の前に聖龍隊一行は赴いていた。
「……久しぶりだな、ドラゴン。今日もチェルノブイリは穏やかだぜ」
バーンズはドラゴンの墓標に花を供え、静かにドラゴンの冥福を祈る。墓前には他にも多くの花が供えられていた。
そしてバーンズに続いて、ドラゴン率いる革命軍士と死闘を繰り広げた聖龍隊の面々も揃って黙祷する。
かつて世界を放射能の海に沈めようとしたドラゴンに黙とうを捧げる聖龍隊を見て、一般二次元人達は彼らが黙祷を捧げるブラッディ・ドラゴンという人物に興味が湧いた。
「ば、バーンズさん……」
「そんなに黙祷なんか捧げる価値があったのかい? ドラゴンって世界中を放射能に曝そうとした大罪人じゃないか」
プロト世代のチョコにギュービッドからの問い掛けに、黙祷を終えたバーンズは静かに口を開いた。
「……確かに奴は放射能を世界中に浴びせ、世界を滅亡させようとした大罪人かもしれねえ。けどな、奴が仕出かそうとした行いは今でも少数だが賛同する輩が多いんだぜ」
話を聞いて目を丸くする二次元人達に、バーンズ話し続けた。
「自然ってのは、人間がいなくなった方が却って豊かになるもんなんだよ。人が手を加えて自分好みの形にするんじゃなく、ありのままの壮大な自然を彷彿とさせようとした……それがドラゴンの目論見だったんだよ」
「………………………………………………………………」
「ま、もちろん奴のやろうとしていた事には全部賛成はできんがな。人間のいなくなった世界なぞ、空虚すぎてつまらなくなっちまう」
人間という自然を破壊する種がいなくなった方が、自然はよりよく豊かになる。しかし人間のいなくなった世界ほど空虚な世の中もつまらないと断言するバーンズの言葉に、二次元人達は唖然としてしまう。
すると此処でバーンズは、かつて聖龍隊がドラゴンの墓標に誓ったある信条を聖龍隊の新人達にも聞こえるよう静かに語り始めた。
「ドラゴンたち革命軍士との戦いでは多くを学ばせられた。母国や故郷への忠誠心、自然の美しさと尊さ、そしてオレたち聖龍隊もより強く結束を固められた。ドラゴンがやった事に全て賛同する事はできねえが……オレは、奴の力強くも信念のある生き様には修司共々感服させられた」
「力強くも、信念のある……生き様」
「オレたち聖龍隊は改めて、人間の信念の強さと尊さを実感させられ……そしてオレたち自身もまた己の信念を再確認したんだ」
バーンズが語った力強い信念がある生き様を聞いて、磯谷ゲンドウら二次元人達は驚嘆してしまう。
ブラッディ・ドラゴンへの手向けを済ませた聖龍隊一行は、チェルノブイリでも荒野が続く戦地へと向かった。
「過去への情も今だけは心の片隅に置いておけ! これより聖龍隊は、スター・コマンドーと一戦を始める!」
流星の精鋭スター・コマンドー、その総部隊長にして聖龍隊を離反した村田順一からの宣戦布告に、聖龍HEADは懸念を押していた。
「あのジュンが何処の手も借りずにオレ達とやり合おうとは……どういう風の吹き回しだ?」
同盟という助けが無ければ巨大な勢力である聖龍隊と戦うのは分が有りすぎる事を重視できている筈であろうと考えるバーンズは、順一の思考に理解し難かった。
「まあいい、モンゴル軍や中国の武将それに韓国軍との同盟は後回しだ……行くぜ、みんな!」
バーンズは聖龍隊の仲間達に檄を飛ばす。それに皆も賛同する。
「バーンズ氏……?」
一人乗り気でないシバ・カァチェンと戦闘に対して複雑な心境を抱く二次元人達に、メタルバードは言い放った。
「……カァチェン、それに新たな次代を切り拓く二次元人たち、よく見ておけよ、掛け替えのない相手との凌ぎ合い……それが見せる光をな!」
バーンズは掛け替えのない相手との死闘もまた、未来を照らす光だと説きながら全身を銀色に輝かせてメタルバードへと変身する。
[流星との対峙]
その頃、聖龍隊の相手であるスター・コマンドーが総部隊長、村田順一は静かに戦地に選んだチェルノブイリの荒野で聖龍隊を待ち受けていた。
そんな順一に、スター・コマンドー側に鞍替えした隊士が問い掛けた。
「あ……ジュンさん! 何かお手伝い致しましょうか?」
「有難う……しかし大丈夫だ、こちらは特に問題ない」
「そうですか? 何か一瞬、怖い顔してた気がして……何かあったら遠慮なく仰って下さいね!」
隊士は順一の並々ならぬ強面に多少の違和感を覚えながらも、凄然と立ち去った。
そんな只ならぬ顔つきで戦場になる荒野を見据える順一に、同じスター・コマンドーの仲間達が歩み寄り、順一に話し掛けようとした。
が、その前に皆の気配に気づいた順一の方から皆に問い掛ける。
「……なあ、みんな。泰平の世に一番必要なものは……何だと思う?」
この順一の質問に、スター・コマンドーの平賀才人がハキハキとした笑顔で言い切った。
「へっ? ……って、決まってるじゃないかジュン! 俺たちスター・コマンドーの腕っぷしと、全てはジュンが掲げる絆の名の下にッ! ……だろ?」
「……ああ、そうだな、そうだったな……」
才人の笑顔での言葉に背を押され、順一は己の決意を再確認した。
「絆の為に!」
己の意志を掲げるかの如く、順一は右拳を天に向けて突き上げ、共に戦ってくれるスター・コマンドーの仲間達と聖龍隊を離反してもなお付き従ってくれる兵士達の士気を高める。
「この約束の地で、僕と貴方達は向き合う……力任せでは訪れぬ綾……これぞ絆と、僕は思う」
「ジュンの絆……運命の大一番! 全軍、死力を尽くしてジュンを支えるんだッ!」
かつてドラゴンを撃破した地にて、かつての総長小田原修司と共に誓い合った己への信念である絆を掲げる順一の大一番に、スター・コマンドーが一人、墨村良守は全軍に向けて士気を集わせる。
それに応じるかのように、メタルバード率いる聖龍隊本隊も迎え撃つ順一たちに応答する。
「やっと顔を揃えられたな、ジュン! 久々に熱いバトルを凌ぎ合おうじゃないか!」
「はい! 僕自身も、こんな形であなた達と仕合えるのは望んではいませんでしたか……。っ! その傍らの方は、まさか……」
「お久しぶりでございます。今や聖龍隊に属してしまった只の傀儡、シバ・カァチェンと申します……」
メタルバードの呼びかけに答える順一は、その傍らのシバ・カァチェンに気付いた。
「なるほど……バーンズさん、あなた達もまた新しい絆を手に入れたのですね」
新しい戦力、新しい仲間を引き連れて戦場に跋扈する聖龍HEADを見て順一はシバ・カァチェンに想いを寄せる。
ここで聖龍隊はスター・コマンドー側の士気を下げて、相手側の武将を引きずり出す作戦に移った。
次々と陣を奪い、敵を倒していけば相手の士気を下げられる。スター・コマンドーを追い詰め、武人たちを引きずり出し、最終的には村田順一と決着をつけるのだ。
「まずは俺達が行く! 各自、相手の泣き処を見極めろ!」
スター・コマンドーでも専らの活躍を示す【イフリート~断罪の炎人~】のユウがニナミと自分たちに付いてきてくれた元聖龍隊士を引き連れて先陣を切る。
「つ、遂に始まっちゃった……」
「なんで、こんな事になっちゃったんだろう……」
聖龍隊とスター・コマンドーの戦闘が始まってしまったのを目の当たりにした、聖龍隊本陣で待機されている新世代型の小路綾と猪熊陽子ら一般二次元人達は悲観する。
しかし敢然と戦況を見据える村田順一は、そんな二次元人達の心境を悟ってか彼らに対して強く呟いた。
「君達もいづれ、流星の意地を知る事になる……」
二次元人達に自分たち流星の如き若き力の意地を示さんと意気込む村田順一。
更に順一は戦場で陣地を防衛する元聖龍隊士に言い聞かせる。
「耐え忍んで来た皆だからこそ、今この戦にも耐え凌げる!」
「応ッ!」
忍耐に忍耐を重ねてきた逸材こそ、現状にも耐えうるとして順一は元隊士に呼び掛ける。
一方のメタルバードは、戦闘で傷つき倒れていく隊士を見て思った。
「……墓標はもう増やさねえと、誓った筈なんだがな……」
「って、総長! 俺たち、まだ死んじゃいねえって!」
スター・コマンドー側も、相手を死傷させるほどの気迫で挑んでおらず、それでも勝手に死なせられるメタルバードの言動に隊士は反論。
その傍らでは、聖龍隊側とスター・コマンドー側は激しく攻防を仕掛け合い、互いに陣地の攻防に率先していた。
「王が床机にへばり付くものって誰が決めた?」
聖龍隊が武芸に秀でた武人、早見青児が盲目とは思えないほどの剣術で次々と群がってくる元隊士たちを峰打ちで仕留めていく。
そしてようやく、ユウやニナミの猛攻を凌ぎながら聖龍隊は最初の陣を奪取する事に成功する。
「守備は我らにお任せあれ!」
聖龍隊の隊士は奪取した陣地の防衛に集中し、メタルバードを始めとする聖龍隊の武人たちは進撃を続ける。
陣地の防衛を聖龍隊士に一任させ、スター・ルーキーズのナツ・ドラニグルやエルザ・スカーレットたちは絶えず進軍する。
一方で陣地を守れなかった味方に、村田順一は優しく言葉をかける。
「臆すのも無理ないさ……少し退いて、休んでいてくれ」
「面目なし!」
負傷し、思うように戦えなくなった元隊士たちに順一は労いの言葉をかけつつ撤退させる。
しかしスター・コマンドー側も陣を取り戻そうと、戦力を注ぐ。
「行くよ! みんなでかかれば怖くない!」「応ッ!」
おとぎ銃士赤ずきんの、赤ずきんたちの指示で元隊士たちは活気づく。
そんな反撃を仕掛けてくるスター・コマンドーを一瞬ながら視界に捉えたシバ・カァチェンはぽつりと呟いた。
「快進撃と……そう貴方は思っているのだろうな」
互いに激しく凌ぎ合う攻防の中、カァチェンはスター・コマンドーの快進撃を皮肉る。
「斥候は任せてください! 俺が出来るのはそれ位だ……!」
スター・コマンドー側の戦況に探りを入れようとする聖龍隊士。だが彼らの目の前に日向ひまわりら【ひまわりっ!】のくノ一たちが行く手を阻んだ。
「うおッ!?」
突如として現出したひまわり達くノ一らを前に、隊士達は驚いてしまう。
本格的に現状で動き出したスター・コマンドーの武将たちに戦況が搔き乱される中、聖龍隊側についている【マギ】の練白竜が戦意に意気込む
「いざ戦場に立つと、力が漲ってくるものよ……!」
陣を攻撃して奪取していく聖龍隊の勢力を前に、スター・コマンドー側に徹している香坂しぐれが順一に願い出た。
「ジュン! 先んじての出陣をどうかボクに許してもらえないかッ!」
「ああ、分かった。だが決して無理はしないでくれ」
「分かってる……この宿命の戦いに、何かしらの節をつけてくる」
順一より許しが出たしぐれは、戦前へと駆け抜ける。
が……「あ、しぐれさんズルいっすよ! 俺たちも加勢します!」と勝手にスター・コマンドーについた元聖龍隊士もしぐれに加担していく。
さらに「しぐれに続け! オレ達もまた、ジュンの手足となる絆だ!」と、順一の許可なしにスター・コマンドーが一人の平賀才人が仲間達と共に戦場へと飛び出してしまう。
「あ、待つんだ才人! ……ふぅ、まだまだ才人たちは若くて良いな」
「ジュン、何を年寄り臭い事を言ってるの? ……そこも何だか、修司さんに似てきちゃったわね」
年配者の様な口ぶりを示す順一を横目に、傍らの愛澤マイが零す。
[繰り返される攻防]
「面目ない……! あとは……任せた……!」
「こ、これほどまでとは予想外……!」
意気込んで戦場に跋扈したのは良かったものの、圧倒的な強さを誇る聖龍HEADとの戦闘で負かされたユウやニナミそして香坂しぐれは惜しくも撤退するしかなかった。
聖龍HEADが戦場に跋扈するスター・コマンドーの武将達を相手に合戦している最中、シバ・カァチェンの様な他の聖龍隊側の面々はスター・コマンドーについた元聖龍隊士の相手を仕合っていた。
「新手か……! 雑兵とは思えぬあの動き……ご油断めされるな!」
完全に初見であるシバ・カァチェンが繰り出す
「某のような武骨な手でも……何かを護る事は出来るのだ!」
しかしそれでも元隊士たちは、村田順一からの教えを受けて自分たちの総大将を信じて振るい続ける。
「順一さんみたいに、脇役でもきっと輝ける主役になれるよう鍛えなきゃ……!」
かつて物語の脇役だった村田順一が、今では秀でた武人になれたように自ら率先して戦前に踏み込んでいく元隊士。
と、ここで聖龍隊がまた一つ、陣を奪取した。
これで三つめかと思いきや、最初に奪取した陣地がスター・コマンドー側に奪い返されていたため、数では変わりなかった。
この混戦とする戦況を打開しようと、村田順一は更なる戦力を戦場に繰り出そうと指示を出す。
「一先ず僕は手を出さないが……みんな、程々に頼んだよ」
「分かってるって! まっ、HEAD相手に本気でかからなきゃ勝てっこないけどさ」
腹心の友順一からの言伝に、平賀才人たち【ゼロの使い魔】の面々はにこやかに返す。
そして才人たちは進撃を続けるHEADに挑む前に、奪い取られた陣地を奪還して此方の士気を再び上昇させようと試みる。
才人たちの出陣を確認したニュー・スターズの面々が彼らの前に立ちはだかる。
「やあ、久しぶりだなニュー・スターズ! こんな形で再会はしたくなかったけどな」
「私も同じ気持ちです……才人さん、貴方達はジュンの意志に付いて行く覚悟なんですね」
村田順一の意志に付き従う信念を察する才人たちにアンリエッタが説こうとすると、ルイズが複雑な心境を自分の姉妹たちに述べていった。
「ジュンが考えている通り、私たち二次元人の未来を明るいものにするには変革が必要なの! ……何より、私たちはジュンを信じたい!」
「それが血を分けた姉妹の絆を断ち切っても、ですか? ルイズ……!」
「ルイズ、それに才人にみんな……あなた達スター・コマンドーの考えも今の世界同様、矛盾しているのよ」
激しい魔法での攻防を展開しながら、ルイズは実姉であるエレオノールやカトレアに自分たちスター・コマンドーの意志を伝えるが、姉たちは彼らの考えもまた矛盾であると指摘する。
「才人、私たちを倒してでもジュンを……ううん、この世界を変えるつもりなの?」
「変えるんじゃねェ……創り直してみせるのよ! 俺たちとジュンで、この世を一から創ってみせる!」
潤んだ瞳で訴えかける様に話し掛けてくるティファニアに、才人は悩みを振り切るかのごとく剣を振り翳す。
そんなスター・コマンドーの【ゼロの使い魔】組の攻撃に悪戦苦闘を目にした総部隊長フロートは威勢よく他のニュー・スターズ組に加勢するよう指示を出す。
「アウッ、おれ達も加勢するぜ野郎ども!」
「野郎じゃないんだけどね……ま、細かい事はいいっか」
女性が大半のニュー・スターズ相手に野郎と呼びかけるフロートの威勢に、フェイトは呆れてしまうがスグに切り替えて仲間達の助太刀に入る。
しかしニュー・スターズが才人やルイズたちを相手にしている間、他のスター・コマンドーの武将達が取られた陣を取り返してしまった。
「陣を奪い返したぞ!」
スター・コマンドーの一人イクトが陣の奪取を宣言して味方の士気を高める。
そんなイクトたち【デジモンセイバーズ】の面々の活躍を透視して確認した総大将順一は彼らを激励する。
「よくやった! その調子で他の陣地も頼んだぞ!」
「任せろって!」
順一からの要望に、仲間の大門大は威勢良く返答。
さらに戦場には猛獣の如き猛進で群雄割拠するセレブナイトが聖龍隊側の本陣へ攻め込もうとしていた。
「これ以上の戦力投下を許すな! 本陣を畳み掛けるぞ!」
「了解ッス!」
セレブナイトの後方からは、元隊士たちが群れを成して進軍してた。
このスター・コマンドーの武人たちの投入による混戦の中、聖龍隊は最初取った陣とは別の陣地を奪い取った。
が、スター・コマンドー側も奪い取られた陣地を取り返そうと反撃を仕掛ける。
「取られたら取り返せ! そしてスグに防衛に入るんだ!」
「合点承知の助!」
スター・コマンドー側に降ってくれた元隊士たちに【絶対可憐チルドレン】の明石薫ら野上葵と三宮紫穂たち三人のエスパー達が指示。元隊士たちは威勢よく応答し、指示されたとおりに動き回る。
「陣の防衛は俺達に任せてくれ! ……結界!」
戦場で奮闘する仲間達に、スター・コマンドーの墨村良守と雪村時音は奪還した陣を結界で防御する。
そんなスター・コマンドーの快進撃を機に、メタルバードは近くで戦闘を続行していたカァチェンに声をかけた。
「よしカァチェン、オレ達と一緒に来い! お前にもこの光景を見せてやらねえとな……!」
メタルバードはカァチェンにも掛け替えのない相手との戦を示す為に、共闘を持ちかける。
カァチェンは黙ってメタルバードの指示に従い、HEADと行動を共にする。
メタルバードの疾風、大津波などが戦場で駆け巡る相手方の元隊士を吹き飛ばし、道を切り開いていく。
そんなHEADの助力も重なり、カァチェンはどうにか戦前で活躍するスター・コマンドーの前へと姿を見せられた。
「その瞳は、私に何かを示そうというのか……だが、それに耳を傾ける気はない。貴方と言葉を交わせとは、命じられてないが故に……」
破願一望 シバ・カァチェン 絶念
失意に駆られるカァチェンの瞳を目の当たりにし、才人たちは思わず心配してしまう。
「噂には聞いていたけど、ホントに暗い目をしていやがるな、アンタ」
「……私ごとき雑兵の気持ちなど、ご理解するだけでも時間の無駄……」
心配して声をかけてくれる才人の心情に、カァチェンは自らの心境を理解するのは時間の無駄と切り捨ててしまう。
互いの心境が重なる事もなく、才人たちとカァチェンの戦闘は勃発した。
ルイズたちの魔法に才人の剣戟、それに劣ろう事無くカァチェンの
カァチェンが繰り出す強烈な旋風による真空波を、才人は剣で受け止め、ルイズたちは魔法で防ぎ切る。
しかし武人としてはまだ経験の浅いカァチェンの隙を、経験豊富な才人はスグに見抜いて旋風の垣根に突っ込んでカァチェンに斬りかかる。
目前まで迫ってきた才人にカァチェンが思わず怯んだ、その瞬間、メタルバードがカァチェンへの剣戟を身を以て防いでくれた。
「ば、バーンズ氏……」
一瞬の出来事であった。才人が威圧を込めて放った突きを、メタルバードが鋼鉄の肉体で防ぎ、カァチェンを守ってくれた。
そしてメタルバードは突きをしてきた才人の剣を素手で掴むと、それを強引に横へと振り払おうとする。
負けじと才人は剣が離れまいと手に力を込めるが、その際体勢が著しく崩れてしまい、それにより生まれた隙によりメタルバードは才人の顔面を殴り付けた。
「ぶほッ」
顔面を強打された才人は軽く吹き飛ばされてしまい、ルイズたち他の面々もミラーガール達の健闘により撤退を余儀なくされた。
この時カァチェンは、自分の内に僅かながらに生じた自信に酔いしれてしまったが故の隙だと薄々実感しており、何ゆえ自分に自信が生まれてしまったのか内心に疑問が生じた。
すると、そんなカァチェンにメタルバードが声をかける。
「大丈夫だって。誰にでも自信という名の隙が生じるのはよくある事さ。あの修司だってそうだったんだぜ」
鬼神と畏れ名高い小田原修司でさえも隙が生じてしまうと聞かされ、カァチェンは茫然となる。
その間、聖龍隊はHEADを始めとする総力で、戦場を跋扈していたスター・コマンドーの武人たちを撤退させられた。
こんな波乱万丈の戦場を前に、カァチェンはメタルバードに問うた。
「バーンズ氏よ……ここで私に何を見出せと?」
「その答えはお前しか知らねえ……お前自身で気付くんだ、己を変える光にな!」
己を変える光という希望は、己自身で気付き見出すしかないとメタルバードはカァチェンに強く説く。
するとカァチェンの耳に、撤退を余儀なくされたスター・コマンドーの武人たちの声が聞こえてきた。
「あいててて……やっぱジュンみたいにはいかないか」
「退きたくねえが……ジュンから無理すんなって言われてるし、仕方ねえか」
「くっ……あともう少しで本陣まで行けたのに……!」
「ッ、ジュン、ごめん……!」
「済まない、ジュン……守りきれなかった」
平賀才人/大門大/進軍を阻まれたセレブナイト/チルドレンたち/そして陣を結界で守護していた墨村たち結界師の二人の退き際に、カァチェンは身を以て知った。
「誰かの為に駆ける、か……私には未だ得られぬ感情だ」
掛け替えのない人の為に戦場を駆け抜け、戦い続ける。そんな感情を自分はまだ持っていない現状にカァチェンは失意に暮れる。
そんなカァチェンの背後から、二人の男女が戦場を駆け抜けてきた。背後からの気配にカァチェンが振り向くと、そこには……
「……貴方がカァチェンさんですね。あのモウ・チェイファンの後釜に任命された台湾の武人!」
「御労しい……なんで活力のない瞳をしているんでしょう」
男は意気揚々と拳を構えて言い放ち、女の方は生気のないカァチェンの瞳を見て悲観していた。
その二人の男女は、スター・コマンドーの武人、白浜兼一と風林寺美羽の二人だった。
カァチェンは二人のスター・コマンドーの武人を前に、
「前座にも過ぎぬだろうが、暫しお付き合い頂こう……」
カァチェンは意を決して兼一と美羽の二人に
しかし俊敏な動きで攻撃を回避していく兼一と美羽に、簡単に攻撃は当てられなかった。
それでもカァチェンは一撃でも当てようと懸命に薙を振り回し続け、兼一と美羽に迫る。
すると其処にメタルバードが咄嗟に助太刀に入る。
「カァチェン無理すんな! オレも一緒に戦う……二対二なら互角だろ?」
するとカァチェンは空しい瞳でメタルバードに訴えかける。
「私を信じ、任せて欲しい……ただ生き残れと命じてくれれば、それでいい」
このカァチェンの切実な嘆願を聞いて、メタルバードはカァチェンが以下に今まで信頼のない環境で奮闘してきたのか再認識させられた。
そしてメタルバードはカァチェンに力強く言った。
「ああ、信じてるぜカァチェン! そしてオレと、オレたちと一緒に生き残ろう! お前は大切なオレ達の仲間だ」
「仲間……! 今までの私は、そんな言葉など虚しさしか残らなかったというのに……不思議だ、今ではとても、温かい……」
仲間という単語に虚しさしか感じられなかったカァチェンが、ようやくその言葉に温もりを感じられる様になった。
そしてメタルバードとカァチェン、二人の強烈な旋風による斬撃が兼一と美羽の二人に襲い掛かる。
「うわッ」「きゃあっ」
鎌鼬の如き旋風で全身を傷だらけにされながら、兼一と美羽は後方へと吹き飛ばされて撤退を余儀なくされる。
二人の撤退を前に、メタルバードはカァチェンへ再度訊ねた。
「どうだ、何か見えたか? ……足りないってんなら、何度だって連れ回してやるさ」
これに対し、カァチェンは虚ろな目で申し返した。
「何かが……何かが私の目を過ったような……実に不思議な気持ちだというのは明確であります」
激しい攻防戦の中で、何かを見出しかけたカァチェンの心境は、彼にとって生まれて初めて感じられた不思議な感覚だった。
[静まる士気]
相手方の聖龍隊も、自分たち同様殺意無き闘志で迎え撃っている現状を前に、順一は戦場で奮闘する仲間達に呼びかけた。
「死してなお続く尊き絆……だが今はそれを求めやしない! みんな……必ず生きて帰ってきてくれ!」
「必ずや!」
順一からの呼びかけに、陣地を奪い返そうとする元隊士が強く返答する。
その頃、シバ・カァチェンもまたHEAD同行の元、戦場を
そんなカァチェンの勇姿を見て、順一は一人思いに耽る。
「凄まじい威風だ……さて、僕の拳とどちらが上かな?」
カァチェンが繰り出す斬撃の威風に対し、順一は己が繰り出す打撃の威風とどちらが上か想いに浸る。
そんな穏やかな心境で戦場を見据える順一とは裏腹に、戦闘中であるスター・コマンドーに降った元隊士たちも強い信念を掲げていた。
「築くのだ……全てを曲げさせた腐敗せし政治に代わる、新たな拠り所を!」
現政奉還という乱世を引き起こすまでに至った腐敗した政治に成り代わる拠り所を村田順一と共に築こうと信念を掲げる元隊士。
しかしHEADも出陣している戦況に、スター・コマンドーは苦戦を強いられる上に味方の士気も下がる一方だった。
「お……俺たちゃ、順一さん達を信じて踏ん張るしかねえんだよ……!」
戦場で奮闘する元隊士たちは、順一たちスター・コマンドーを信じて戦う以外の道しか残ってなかった。
そんな士気が下がってきたスター・コマンドー側の軍勢に対し、士気が向上してきた聖龍隊側。
そんな戦況の中で、メタルバードは自分たちHEADと同行しているとはいえ一人で奮闘できているカァチェンを横目で視認しながら思った。
「アイツも少し変わって来た気もするが……ま、良い傾向ってヤツか?」
「ホントそうね。人は少しずつでも良い……前へと歩むために少しずつで良いから変わっていければいい」
戦場で活躍するカァチェンを目視して、メタルバードとミラーガールは変化の兆しに喜々とする。
だが此処で村田順一は戦況の打開を見出すため、スター・コマンドーの総力を戦場に投下する決定を告げた。
順一からの指示により戦場に出陣していくハイパー・ブロッサム達に音無小夜、ハンター・スティールらスパイダーライダーズ、そして人口生命体のハルが出撃。
各自、取られた陣の奪還を試みようとするが、それをスター・ルーキーズの面々も各自で阻む。
「久しぶりね、先輩。今日という今日は、私の方が実力が上ってことを見せ付けてやるわ」
「そうはいかないわよ、ミラール!」
ミラールからの射撃を掻い潜り、ハイパー・ブロッサムにローリング・バブルスそしてパワード・バターカップの三名がミラールと交戦を開始する。
「ッ、まさか貴女と応戦するとは思ってみませんでしたよ……」
「文句は言わないの。戦場ではどんな事が待ち受けているか、誰も予測できないものよ」
強烈な剣戟を剣で防ぎ止めつつも、その気迫に押され気味になるキリトは剣戟を仕掛けてきた音無小夜と対峙する。
「さあっ! 君らの実力を見せてくれ!」
「ああ! オレ達の勇気も、あんたらの勇気に負けず劣らないってのを証明してやるぜ!」
巨大な異界のクモ、シャドウに跨るハンター・スティールの呼びかけに、スター・ルーキーズのトリコが両腕を構えて挑みかかる。
そんな両軍からも多大な支持を得ているスター・コマンドーとの戦を目の当たりにし、シバ・カァチェンは圧倒されてしまってた。
「元仲間とは言え、敵方から、これ程までに求められるものなのか……? このような相手も、戦も……私は知らない……」
味方だけでなく敵対している側からも支持を得ている村田順一率いるスター・コマンドーの戦ぶりを目撃し、カァチェンに衝撃が走る。
そして遂に村田順一と愛澤マイを除く全てのスター・コマンドーが戦場で活躍し出した。
この戦況に聖龍隊も総力を挙げてスター・コマンドーと徹底抗戦を開戦した。
メタルバード率いる聖龍HEAD、フロート率いるニュー・スターズ、ミラール率いるスター・ルーキーズに加わり、新たな仲間として奮闘し続けるシバ・カァチェンを遠視して順一は彼らを総称して力強く呟いた。
「皆さんも随分と培ってきたようですね……絆の、力を!」
聖龍隊の快進撃は尚も続き、次々と進軍すればするほどスター・コマンドー側の陣営を崩して奪取してしまう。
そんな聖龍隊の猛攻と、それに応戦するスター・コマンドーの戦ぶりを、聖龍隊側の本陣で黙然と観戦している二次元人達は圧倒されてしまうばかり。
「凄い……!」誰かが、そんな言葉を呟いたのもむなしく、皆はただただ目の前の戦場で繰り広げられる聖龍隊とスター・コマンドーの合戦に目を奪われる。
しかし戦場では奪われた陣地を取り返そうと、元隊士たちが躍起になってた。
「並べ、進めィ! 誇り高き武士達よ!」
新たなる世界を創生するべく士気を高めようとするスター・コマンドー陣営。
その頃、次々と陣地を奪取して相手側の士気を低下させようと目論む聖龍隊とスター・コマンドーの武人たちが激しくぶつかり合っていた。
シバ・カァチェンもまた【スパイダーライダーズ】のマグマと応戦しながらも、明るい振る舞いのマグマから問われていた。
「あーー、所でさあ……あんたはもっと戦わないのかい? じっと見てるだけってのも、もどかしいもんだろ?」
「……私、か?」
「そうそう、君! 歳いくつ? 何が趣味だい?」
明々とした素振りで歳や趣味などを訊ねてくるマグマに、カァチェンは困惑しながらも懸命に応戦する。
カァチェンがマグマと戦とは思えない不思議な雰囲気の中で格闘している最中、聖龍隊総長メタルバードは絶えず健闘してくれている味方の隊士に激励を掛ける。
「怖気付くな! 誰に劣ろうと、お前はお前だ」
「オッス!」
敗北して気落ちする隊士に、メタルバードは激励を飛ばしていく。
その間、聖龍隊の奮闘により四つある陣のうち三つを奪取。これにスター・コマンドー側の陣営は最後に残った陣地へと急ぎ駆け出す。
「おのれ取られたか……全軍、防衛せよ!」
最後の陣まで奪われて堪るかと、スター・コマンドー側の元隊士たちは活気付く。
だがメタルバードを始めるHEADはもちろん、他の聖龍隊士も奪取した陣地に少しばかしの防衛を敷き詰めて進軍する。
しかしこの時、進軍する聖龍隊士の中にはHEADと順一、二人の思想や決意の違いに疑問する者も僅かながらいた。
「HEADと順一殿の決意、どちらも譲り難い……!」
聖龍HEADが掲げる現実的な思想、そして村田順一が掲げる絆の下で育まれる理想、どちらも譲り難いと呟く隊士。
そんな隊士たちの複雑な心中を、新世代型たちは共有感知からなるテレパシーでひしひしと感じていた。
スター・コマンドー最後の陣地を奪取せんとする聖龍隊は、進軍の最中ふとメタルバードがカァチェンに問い掛ける。
「どうだ、見えたか? ……足りねえってんなら、何度だって連れ回してやるさ」
掛け替えのない相手との戦闘、それが齎す光をカァチェンに見出させようとするメタルバードの思惑に、他の聖龍HEADも同意だった。
一方のカァチェンは未だに未来へと光を実感できず、今の戦況に集中する事しかできなかった。
そんな進軍する聖龍隊を見て、スター・コマンドーが総大将順一がメタルバードたちに問い掛けてきた。
「バーンズさん……今日が全ての区切りの日だ。……そしてやはり、貴方も立ちはだかるのですね、カァチェン殿」
「ああ、勿論だ……それが戦の業なのだから」
順一はメタルバードら聖龍HEADに加わり進軍してくるシバ・カァチェンを見て、彼らの決意の表れを視認する。一方でメタルバードも全てを戦の業として受け止める覚悟を決めている様子。
と、進軍する聖龍隊の前に、スター・コマンドー側についた元聖龍隊士が立ちはだかる。
「順一さん達のお力になれるのは、スター・コマンドーだけではない!」
村田順一の役に立てるのは、スター・コマンドーの武人たちだけではないと意気込む元隊士たちに現役の聖龍隊士が行く手を切り開こうと抗戦する。
「うさぎ達だけに恰好つけさせやしねえーーッ!」
「ここで止めてやる……俺も英雄になってやらーーッ!」
名立たる聖龍隊の武人たちの様な主役級の逸材にならんと意気込んで元隊士たちと合戦を始める月野進悟ら現役隊士たち。
一方で聖龍隊の上官兵は、この戦況の流れが自分たち聖龍隊に有利に働いていると察し、メタルバードたち聖龍HEADに進撃の承諾を促した。
「流れは明らかに我が軍にあり……! このまま明星を地へと引き摺り降ろしましょうぞッ!」
「おうッ、もうすぐで決着をつける……!」
上官兵の活気ある言葉に、メタルバード本人も意気揚々とスター・コマンドーへ迫る勢いを示す。
だが、この時のメタルバードは何も本気でスター・コマンドーと戦おうとは思っていなかった。
全ては生きる希望無きカァチェンを育むために、スター・コマンドーの固い信念とカァチェンを対峙させたいのが狙いだった。
メタルバードが一人、そのような思いに耽っているとは夢にも思わないカァチェンは聖龍HEADと行動を共にして思ったことを正直に述べた。
「改めて……強いな、貴方方は。何合仕合おうとも、乗り越えられる気がしない……」
聖龍HEADはこの時、カァチェンが次第に己を変えられている現状を実感していた。
一方、先ほどスター・コマンドー側から奪取した陣地では聖龍隊の各部隊が各々の旗を掲げていた。
「我らの旗を掲げよ! 敵方にしかと示すのだッ!」
「この勝負、意外と早くケリが付くかもな」
隊士たちは各々が配属された【魔法少女リリカルなのはStrikerS】や【ソウルイーター】の旗印を掲げて、合戦に勝利し陣を占領したことを誇示する。そんな続々と御旗が掲げられる戦況を見上げて、隊士の多くが早々とスター・コマンドーとの合戦が終わりを迎えると思っていた。
その頃、聖龍隊はスター・コマンドー最後の陣地に踏み込んで陣の奪取に専念していた。
「正功でも否、奇策も否……ど、どうすれば良いのだ!?」
正面からの攻めも実力不足で難しく、またこの戦況を好転させられる奇策も思いつかず、元隊士たちの困惑は高まる一方。
そんな最後の陣地を奪取する聖龍隊から陣を防衛せんと勇敢にも挑んでいきながらも負傷した元隊士たちの救護を村田順一は命じてた。
「負傷者の救護を頼む! 戦はまだ長い」「はいっ!」
順一からの呼びかけに、元隊士たちは潔く答え、各々負傷した仲間達を担いで移送させる。
すると此処で村田順一はとある事に気付いた。それは名立たる聖龍隊のキャラクターを揃えながらも、HEADは何故か尖兵隊の先頭にシバ・カァチェンがいる事を。
「この尖兵隊は、バーンズさんの考えか……? それともカァチェン殿……貴方の決めた事なのか?」
村田順一は、かつて生気のなく現実に絶望視しているシバ・カァチェンが如何なる理由で先発として起用されているのか疑問に思った。
しかし順一が疑問に思い悩む暇もなく、彼の視界に周囲のスター・コマンドー側の勢力と奮闘しながらHEADが現れる。
「総長……いや、今はバーンズさんと呼ばせてもらおう」
「よっ、ジュン。これで三度目だな……現政奉還、この乱世が起きてからお前達と対峙したのは」
「問題なのは対峙した数ではない。
「それもそうだったな……」
順一からの応答に、メタルバードも息をのんでそうだなとしか言い返せなかった。
その間、シバ・カァチェンを尖兵とした戦力はスター・コマンドーが所有する最後の陣地の奪取に取り掛かろうとする。
が、最後の陣に勢力が殺到すると解っているスター・コマンドー側の元隊士たちが待ち受けているのは必然。
「最後の陣に殺到すると解っていれば、防ぐも容易よ!」
敵の猛攻に悪戦苦闘するカァチェン。しかし彼はHEADの言葉を胸中に抱き、前進していく。
全ては自分を信じて尖兵隊を任せてくれた聖龍HEADへの恩義を果たすため、そして
「この世はなんと思い通りに行かぬことか……」
「某も賽の目に見限られた、ただそれだけよ……」
「何もかもが足りぬ……兵の練度も、某の才も……!」
スター・コマンドー側についている元隊士たちはカァチェンの疾風の猛攻を喰らって歯がゆい思いで撤退を余儀なくされる。
そして粗方の勢力を片付けた後、カァチェンは相手方の陣地奪取に挑む。
「争いは嫌いだと……何度言ったら解るのですか」
「男にはな、拳と拳、刃と刃でしか成長できない面があるのよ」
争いを毛嫌いしている聖龍HEADの女性達にメタルバードが男の心境を述べていく。
そうこうしている内に、カァチェンの功労も相まって最後の陣の奪取に成功する聖龍隊。
「陣の総取り……これぞ、戦の醍醐味でござる……!」
敵方全ての陣の総取りに成功した満足感に浸る聖龍隊士。
その反面、全ての陣地を奪取され、味方の士気を滅法下げられたスター・コマンドー陣営は混乱の一途だった。
「順一殿、我が軍の被害は甚大……! 最早、立て直せませぬ……ッ!」
「よし……解った! みんなは下がっていてくれ、ここは一つ……僕自身の拳で決めてくる!」
聖龍隊から離反する際、敢えて自分達の勢力として一緒に袂を分かち合ってくれた元隊士からの提言に、順一は自らの拳で決着をつけようと出陣の準備に取り掛かる。
[対面! 心を照らす明星]
スター・コマンドーの士気が低減した事で、スター・コマンドー陣営の本陣への門が開いた。
「HEADよ……そう焦らずとも、僕はここで待ち続けてます」
相手方の本陣への門扉が開いたことで、聖龍隊は進軍方向を一気に反転させてスター・コマンドーの本陣へと攻め込む。
「いざ行かん! オレらの意志を奴らに示そうぞ!」「おうッ!」
聖龍隊総長メタルバードの号令に多くの隊士たちが賛同の声を上げる。
全ての陣地を味方に任せ、そして倒した元隊士が本陣に運び込まれるのを後方から付いて行く聖龍隊。
合戦の決着は互いの総大将に委ねられる事と相成った。
「す、すげぇぜ……! どちらさんも、二年前以上に腕を上げていやがる……!」
聖龍隊本陣で一般二次元人の護衛を任せられている大将たち赤塚組は、戦況を傍観して愕然とする。
そんな赤塚組に護衛され、本陣で静かに戦いを見守る二次元人達の想いは相変わらず複雑であった。
しかし彼らの思想も虚しく、遂に聖龍HEADはスター・コマンドー本陣へと辿り着いてしまった。
対峙する二つの勢力はかつて一人の将により築き上げられた勇猛果敢な精鋭ばかり。しかしそれが、かつての将が居なくなった事でそれまで抱いていた不満や疑心が膨張してしまったが為に勃発してしまった今回の合戦。
メタルバード率いるHEADに対し村田順一は傍らにスター・コマンドー第一の絆と象徴されし深澤マイと肩を並べて対峙する。
「答えて、ジュンくん! なんで聖龍隊を離反したの……」
「その理由は、あなた達なら当の昔に気付いている筈だ。我が師、小田原修司の教えでは全ての人々を笑ませられないからだ!」
ミラーガールからの切実な質問に対し、順一は険しい真顔でHEADと向き合って強く返答する。
かつての将、小田原修司が発案した
そんな己の師にあたる小田原修司が世界中に配布させた法案の問題点を少しでも解消するべく村田順一は聖龍隊を離反してまで行動を起こしたのだ。
だが、そんな行動を起こした村田順一に聖龍隊が参謀総長のジュピターキッドが問い質す。
「君ならそれを成せると……本気で思っているのか? 世の理は、全てが美しいだけじゃ駄目なんだ!」
「その理を、少しでも変えられるならば……僕は喜んで、この拳に罪を積み重ねましょう!」
世界の実情、理は全てが美しく完璧なものでは無いからこそ世の中は回っていると説くジュピターキッドに対し、順一はその理を変えるためなら喜んで己の拳を血で染めて自ら罪を背負い続けていく覚悟を決めていた。
そんな固い決意と信念を決め込む村田順一を見て、メタルバードがぽつりと呟いた。
「……ふっ、まるで修司だな。全ての罪を背負い込む意気込み、世界の理を変える決意……全部、修司の真似ばかりだぜ」
「はい、そうかもしれません。しかし……僕の場合は真逆でしたが……」
順一の行動すべてを小田原修司と同じだと評価するメタルバードの言葉に、順一自身も反論せず素直に認めつつ小田原修司とは真逆だと説き返す。
すると村田順一は拳を唸らせ、メタルバードに言い寄る。
「ここで終わる気など更々無い……そうでしょう?」
「おいおい、誰に言ってやがる?」
この場の会談だけで事を済ませないであろうとメタルバードに問う順一に、メタルバード本人は余裕溢れる笑みを浮かべて返す。
と、その時だった。そんな村田順一と向き合い対峙するHEADの傍らで大人しく待機していたシバ・カァチェンが後方より駆け付けてくる人影に気付く。
カァチェンに続き、他の聖龍HEADも後ろの目をやると、後方から先ほど戦場で撤退を余儀なくされたスター・コマンドーの武人達が勢揃いで駆け付けて来てた。
「はぁ、はぁ……ジュン、俺たちまだ死んでいないって!」
「なに俺ら抜きで話を進めている訳?」
「はは、いや、ごめんごめん」
順一はその場に駆け付けてきた平賀才人やハンター・スティールに苦笑いで謝った。
そして順一は現場に仲間達が駆け付けてきた現状に、ようやく拳を構えて臨戦態勢に入った。
遂に村田順一率いるスター・コマンドーのメンバーと戦い合う現状に、表情を険しくさせて身構える聖龍HEAD。
するとその時、HEADの傍らに着いてくるしかできていなかったシバ・カァチェンが得物を構えてHEADに背中を預けた。
「! カァチェン……!」
「貴方達は貴方達の戦いをすればいい……私も私なりに、今の自分を変えるべく参戦させてもらうだけです。
このカァチェンの意気込みを聞いて、メタルバードは嬉々とした表情でカァチェンに言った。
「フッ、よし相分かった! お前はお前だけのバトルをしろ! そして己を変えちまえ、カァチェン……!」
メタルバードはカァチェンに、自分なりで良いから自分自身を、弱く現実に絶望している自分を変える戦いをしろと告げる。
カァチェンはメタルバードの言葉を、許しを得て右手に握り締める
そしてシバ・カァチェンも交えた聖龍HEADとスター・コマンドーの戦闘が今、勃発した。
「バーンズさん、なんでカァチェンを聖龍隊に同行させているのですか……? どうして尖兵隊なんかに……」
「なあに、昔を思い出したのよ。お前らを教育してやった頃の事をな」
「え?」
「いいや……強いて言うなら単なる親心さ」
村田順一の拳を受け流しながら、メタルバードはカァチェンを聖龍隊に同行させたり尖兵隊に加えさせたのは全て親心だと述べる。
縦横無尽にその場を行き交いして激しく戦い合うHEADとスター・コマンドー。両者互いに一歩も退かず、激しい攻防を展開。その熾烈なる戦ぶりには、遠方より戦いを眺めている赤塚組と二次元人達の目にも輝かんばかしの神々しさが伺えた。
そんな神々しい戦いを展開するHEADとスター・コマンドーに交じり、シバ・カァチェンも奮闘するが苦戦を強いられる。
そんなカァチェンとスター・コマンドーが総大将、村田順一が偶然にも衝突し合った。
順一の拳とカァチェンの
すると順一と鬩ぎ合っているシバ・カァチェンが自然と口を零した。
「何故、自ら未来を損なうような真似を……? いや……きっとかつての私の主君と同様の理由なのだろうな」
聖龍隊を離反して自らの未来を傷つける行為を仕出かした順一に、かつての主君の面影を重ねるカァチェン。
するとカァチェンと闘い合う村田順一は拳を振るいながら申し渡す。
「未来を損なう……? 違う、未来を得るために行動したんだ!」
己の行為を未来を損なう真似ではなく、未来を勝ち得る為の行為だと説き返す順一。
そんな順一の猛攻を受け流しながら、カァチェンは順一に疑問をぶつけた。
「今やお前……いや貴方は、錚々たる一勢力の長だ。私のかつての主君と仕出かした事はほぼ同じ……なのに何故こうも異なる……?」
「カァチェン……かつての貴方の主君チェイファンは、独りきりじゃなかったか? 母国の為とはいえ、自分一人の為だけに成せる事など多くはないんだ……」
かつての主君と同等の行為を仕出かしてもなお多くの人から慕われ続ける順一に理解を示せないカァチェンだが、そんなカァチェンに順一は人間は自分一人の為だけに成せる事は多くないと説く。
村田順一と一時の対談をしながらの戦いを受け流したカァチェンは、次に先ほども自分に対して気さくに話し掛けてくれたマグマと対戦を始める。
「よっ、アンタ。もう名前は聞いているけど、せめて名前ぐらい自分から名乗ってほしいな!」
「貴方方がそれを望むなら……カァチェン、独法師のカァチェンだ」
「おいおい、今この場にはお前さんと俺たち、全然独りじゃないじゃないか!」
マグマからの問い掛けに独法師だと答えるカァチェンに、マグマは独りっきりではないと笑顔で説き返した。
超絶なる力と力がぶつかり合う合戦に、もはや並の隊士が近づく事も侭ならなかった。
スター・コマンドーと激しく鬩ぎ合うメタルバードは、そのスター・コマンドーを引き連れる村田順一に言い放つ。
「超えろ……オレ達を超えろッ! そして忌むべき
「はい、そして全てを終えた際には必ず償いましょう! 愛すべき
今の自分たちを超えて忌むべき現実を変えて見せろと親心にも似た感情で言い放つメタルバードの言葉に、順一は全てを終えた後には大切な友の為にも背負ってきた罪の償いを果たそうと言い返す。
HEADの攻撃を全て拳で受け止めて無効化させてしまう順一は、傷だらけの拳で世界に対して叫ぶ。
「全ての戦いの咎は……どうか僕にだけ、ぶつけてくれ!」
戦いの罪、贖罪は全て自分にぶつけて欲しいと切願する順一。さらに……
「僕たちをこの世の敵と見做しますか? ……フフ、そうかもしれません!」
遠くより自分たちの戦いを史観する赤塚組や二次元人達に順一は口元に笑みを浮かべて言葉を投げかける。
さらに全力で挑んでくる聖龍HEADに警鐘ともいえる発言もぶつけた。
「もしそのまま、力に溺れゆくと言うのであれば……!」
HEADですら力に溺れるのであれば、己の手で全てを終わらせる覚悟を抱く順一。
そんなHEAD同様に全力で挑んでくるシバ・カァチェンにも順一は笑みを浮かべて提言する。
「手加減はしません……だから、しっかりと身を護ってください」
次第に戦える仲間の数が減ってきている現状にも関わらず、順一は大地をも割る拳を放てる一撃からしっかりと身を護るようカァチェンに説きかける。
遂にユウやニナミ、セレブナイトに【おとぎ銃士赤ずきん】【ゼロの使い魔】【デジモンセイバーズ】【絶対可憐チルドレン】【結界師】【史上最強の弟子ケンイチ】【パワパフガールズZ】【スパイダーライダーズ】【ひまわりっ!】そして音無小夜やハルが戦闘に敗退する中、村田順一だけが深澤マイと共に聖龍HEADに挑み続ける。
「全生安康……冷たき掟に晒されぬ世を!」
ぜんせいあんこう、全ての生が安泰で安らかに過ごせる世を創生する覚悟を一言に詰める順一。
だが、同盟も無しに聖龍隊に挑んでいった村田順一の健闘も空しく、順一は恋人の深澤マイと共に敗北してしまう。
「んじゃ、勝負も付いたしオレ達も去るとしますか……また準備が整ったら、かかってこいよジュン! オレ達はいつでも待っている……!」
メタルバードは勝利をあまり喜ぶ様子を見せず、それどころか順一達からの挑戦を待ち侘びる発言を強く主張。
これに順一は敗退を素直に受け入れながらも、己の考えを変える意志は表れていなかった。
「このまま敗れ去りはしない……絆が力に劣るものと、人の心に刻ませはしないッ!」
聖龍HEADとの直接対決に敗れた村田順一達は、潔く撤退していくのだった。
[希望という光が灯った心]
村田順一たちスター・コマンドーと熱い合戦を繰り広げた聖龍隊は辛うじて戦いに勝利した。
かつての仲間である順一達との勝利を素直に喜べない聖龍HEADだったが、ここでメタルバードがシバ・カァチェンに戦いの感想を訊ねていた。
「……どうだった、カァチェン?」
「……私ももう一度、貴方様の様に昂れるのだろうか……?」
「それを決めるのはお前だ……好きに選びな、欲しい先をな」
カァチェンのもう一度昂れたいという願望を聞いて、メタルバードはその未来を決めるのはカァチェン自身にあると厳しさがありながらも優しい瞳で述べた。
スター・コマンドーとの合戦を終えて、聖龍隊は赤塚組と二次元人達が待機している本陣へと戻っていく。
「アッコ、無事か!?」「うさぎちゃーーん!」
赤塚組の大将や海野なるが友を心配して声をかけるが、帰還した聖龍HEADは多少なりもボロボロになりながらも無事であった姿を見て一安心する。
しかし聖龍隊の傷心が覗いた一戦に、赤塚組はもちろん二次元人達も安易に察していた。
元は同じ仲間だった二つの勢力。互いの意見・思想の違いから分断されてしまった悲劇に勝負に勝った聖龍隊の誰もが心に傷を負っていたのを全員が察する。
「バーンズさん……!」「バーンズ! ……アンタら」
険しいながらも何処か悲愴感を感じさせる顔色を浮かべるメタルバードを見て、新世代型の琴浦春香やプロト世代のギュービッドたちは己の心に微かな痛みを感じ入る。
すると村田順一たちスター・コマンドーと激しい一戦を終えたばかりのメタルバードは、ふと視線を下げて己の右手に注目し出す。
「総長……?」「一体……」
徐に右手を目前へと上げて見詰めるメタルバードの並々ならぬ様子に、聖龍隊のリーファや新世代型の鹿島ユノが言葉をかけると、メタルバードは徐に語り始めた。
「……嬉しかったんだ。目に
メタルバードは更に、戦いを終えたカァチェンを聖龍HEADの仲間達と共に見詰めて語る。
「誰かを導く喜びを、まさか再び感じられるとはな……」
かつて村田順一たちスター・コマンドーを導いた古参の聖龍HEAD。そんな彼らが再び誰かに教えを説き、そして導いていける幸せを噛み締める現状に感銘を受けていたのだ。
「堕ちて、
静観な面差しで振り返ったメタルバードたち聖龍HEADに、新世代型の瀬名アラタが瞳を輝かせて言った。
「あなた達ならきっと……いえ、絶対にそんな世の中に導いていけますよ!」
アラタに続き、聖龍隊総部隊長のミラールもメタルバードたちに言う。
「そうね、私たちがもっと協力的になれば……そんな世の中も果たせる筈よ。全ての世界で、最も畏れられた鬼神の意志を受け継ぎ、そして後世へと伝える……そんな未来に」
ミラールの言葉にメタルバードは「フッ」と口元に微笑を浮かばせると、再び振り返ってシバ・カァチェンに話し掛けた。
「おい、カァチェン! そろそろ行くぜ」
戦場より離脱して、次なる
「アイツらとはまた、どうせスグにでもやり合う事になる。それまでコッチも色々と準備を整えておかねえと!」
呆然とメタルバードの話に耳を傾けるカァチェンに、メタルバードは更に話す。
「……それに、お前にはまだ会わせたい奴がこの世に山ほどいる! そいつらに会って、もっともっと変わるんだ、カァチェン!」
メタルバードより多くの人との出逢いを積み重ね、己を成長させるよう言われたカァチェンは、その生気のない瞳で戦場を共に後にするスター・コマンドーの背中を遠視していた。
そしてカァチェンは目を閉じて、静かに申し開いた。
「……ああ、期待させて頂こう。HEAD、バーンズ氏……いや、バーンズ」
遂にカァチェンは心を少しばかり開き、目上の者ではなく同じ立ち位置の仲間としてメタルバードたち聖龍HEADを受け入れた。
そのカァチェンの瞳には、薄らとだが明確な光が宿されていた。
過去の過ち、行いにより
カァチェンの心に希望の灯が僅かながらに灯った
2012年12月12日-20日
革命軍士の殲滅と、彼らが行おうとしている全世界の人々を巻き込む一大計画を阻止するため、聖龍隊と国連軍の連合軍と革命軍士が激突した。
革命軍士総元帥ブラッディ・ドラゴンが起こそうとしていた《世界再出発計画》と呼ばれる世界同時テロは、なんと世界中に仕掛けた放射能爆弾を連動で爆発させて、
世界を放射能の海で覆い尽くす最悪の計画であった。
この世界のあらゆる生きとし生けるものが死滅しかねない計画を阻止する為、普段は犬猿の仲の聖龍隊と国連軍が手を組み、ドラゴンの行き過ぎた行為を制止しようと立ちはだかる。
多種多様な能力者に種族の集いでもある革命軍士と死力を尽くして戦い続ける中、元帥赤犬は不本意ながら聖龍隊に革命軍士のドラゴンを含む中心グループの打倒を容認する。
聖龍隊は革命軍士の大軍勢を裂く様にして一気に進軍しては、ドラゴンを中心核に据えた革命軍士の中心グループを一気に目指す。
遂に総長小田原修司と革命軍士総元帥のブラッディ・ドラゴンとの一騎打ちにまで展開が生じる。
一方、他の聖龍隊も革命軍士の中心グループである大幹部達を退けて急ぎ小田原修司の許に駆け付けるが、そこでHEADや他の隊士が目撃したのは血塗れに成り果てた
小田原修司を片手で掴み上げていた雲にまで匹敵する高さと巨大さを誇る黒い竜であった。この小田原修司を痛め付けた竜こそ、
ブラッディ・ドラゴンの今まで隠してきたもう一つの姿なのである。
実はブラッディ・ドラゴンは、かの有名なチェルノブイリでの原発事故の最高責任者である国の政府機関に属していた高官の息子であるロシア人で、
彼もまたチェルノブイリ原発事故で巻き散らされた放射能によって竜に変身したり等の特殊能力を得てしまっ、小田原修司と同じた三次元人であったのだ。
ドラゴンは父や身内、更には母国と信じ切っていた国が自らの失態で引き起こしてしまった原発事故を世界から隠蔽するなどの禍々しい行為に幻滅し、
身内や国への愛情を完全に消失してしまった事故当時青年であった人物だった。
故郷が国の失態で滅び、全ての生きとし生けるものが失われていく現状を目の当たりにしたドラゴンは、自らの失態を力で強引に隠蔽する国家の傲慢さを討ち滅ぼすべく
革命軍士を結成したのだという。
更に、世界中を自身の故郷と同じく放射能の死の灰で覆い尽くすのも、彼が次第に自然の美しさを得ていく故郷を目撃した故である。
人間という自然を破壊するしか殆どの才がない種族が完全に根絶された故郷には、青々しい草木が生い茂り、シカやイノシシといった最初は放射能で死滅していた
動物たちも次第に数を増やしては清々しい自然の美景が故郷に表れる様になった。この事によりドラゴンは「人間の居ない世界こそ、真に美しい世界に生まれ変われる」として、
故郷と同じく世界を放射能で溢れ返そうと目論んでた。
だが、その企ても聖龍隊によって静止。ドラゴンは故郷の地であるチェルノブイリで、その生涯を終えた。
この一件以降、世界はチェルノブイリへの見方を改め、聖龍隊の技術で完全に放射能が除去できたチェルノブイリは特別保護区に認定されて、自然公園として定められた。
聖龍隊は母国に裏切られ、故郷を失ったドラゴンを、皮肉にも母国の失態で一時は命が死滅したため麗しい程に美しい自然が芽生えたチェルノブイリにドラゴンの墓標を立てた。
2012年12月23日
聖龍隊総長小田原修司が国連に「己の戦争抑制兵器としての権限と絶対的地位」を返上し、代わりに国連からは彼の人権が返還された。
同時に小田原修司はアニメタウン市長と聖龍隊総長の座からも退き、市長には側近で秘書であったウッズ氏に、聖龍隊総長には腹心の側近であるバーンズに譲り受けた。