現政奉還記 武将達との会合編 作:セイントドラゴン・レジェンド
[赤塚組の統治]
台湾を後にした一行は、一路夢と理想が叶うというキャッチフレーズで有名な海上人工都市ジャッジ・ザ・シティへと向かう事と相成った。
だが、日本を前に帰国を許してもらえないでいる新世代型たちの中には、少なからずこの事態に不満を抱く者もいた。
「……ふぅ、まさか今度はアジアじゃなくアメリカ領土まで向かう事となるとは」
「真人、正確にはそうじゃない。確かにジャッジ・ザ・シティはアメリカ領海に建造されてはいるが、実際には独立した一つの本土として現存しているんだよ」
新世代型の井ノ原真人の発言に、親友の棗恭介がジャッジ・ザ・シティの現状を語る。
そんな和気藹々としている二次元人を間近に、バーンズと大将は話し合っていた。
「なあ、バーンズ。悪いが、ちょっくら俺たちが統治している島の様子を見に、寄りたいんだが」
「へ? お前さんたち赤塚組が統治している島をか?」
「ああ、現政奉還が起きてから一度も様子を見に行ってないんだが……なに、別に何もない島だし、十分な軍備もあるから大事ないと思うんだけどな」
「ふーーん、まあ、お前さんが様子を見に行きたいってんなら別に良いんじゃないか? ちょうどジャッジ・ザ・シティまでの航路の途中にあるんだし、減るもんじゃねえしオレは構わねえぜ」
「あ、ありがてえ! いや、何……チェイファンの事を思い出したらよ……」
「ははっ、なるほど。チェイファンの時の様に、自分達が留守の間、統治している土地が奇襲されたら堪ったもんじゃないもんな」
大将の考えを納得したうえで、バーンズは微笑み返した。
こうして一行を乗せた百鬼命義は、大将たち赤塚組が治めるとある島へと向かった。
略奪行為など、一部の犯罪行為を許されているセブンズガードの赤塚組には、他のセブンズガード同様に拠点にしている領地が存在していた。
皆が訪れた、その島は穏やかな南の島というべき、かつては無人島だった島。
「よいしょっと、ほれ、お前さん達も降りてこいよ。この島の連中は、みんな気のいい連中だからよ」
一番に島に上陸した大将は、自分が治めている島には気のいい輩しかいないと二次元人たちに笑顔で伝える。
その大将の言葉を聞き入れて、このまま船内にいるのも気が引けた二次元人達は聖龍隊と共に島へと降りた。
上陸してしばらく歩いてみると、島には多様な人種が各々で商店を築いて、商売をしている光景が飛び込んできた。
「よっ、チンジャオ。景気はいいか?」
「オッ、赤塚組の頭領! アア、今日も絶好調だネ!」
意外にもしっかりと舗装された台地に設けられた小さな商店で商いをしている中国系の中年男性に声をかける大将。
見渡してみれば、他にも舗装がしっかりとしされた台地に各々が経営している商店を展開していたり、そんな店で売り買いしている多種多様な人種が目に付いた。
商店も以外にコンクリートで造られたものや、植物の葉っぱで拵えた小屋の様な外装まで多種多様な店が見物できた。
「い、色んな人種がいますね、この島……」
「ああ、みんながみんな、色んな事情でこの島に流れ着いた連中ばかりだ。中には違法に反して国を飛び出した奴もいれば、貧困している国から亡命してきた連中も沢山いる。俺たち赤塚組は、そんな連中の世話をして、この島で問題を起こさない限り移住しても良いと判断した上で住まわせてやっているんだ。此処では人種はもちろん、二次元人三次元人問わず住みたいって連中がいれば大方の問題がない限り居住しても良しと俺たちは判断している。ここでは正真正銘、誰もが平等に暮らせているって訳よ」
新世代型の琴浦春香の言葉に、大将がこの島の現状を語り明かす。
様々な理由で国を飛び出してきた人物が、特別な理由がない限り赤塚組から移住を許され、そのまま居住しながら生活を送っている現状に二次元人達は驚かされた。
そんな仄々とした小さな商店街を見据えている二次元人達に、大将が言った。
「何なら、ここで何か買っても良いんだぜ。便利なアイテムに貴重な道具、より取り見取りな品が意外にも豊富なんだぜ」
見た感じ、貧困そうな場景に反して品ぞろえはいい方だと唱える大将の言葉を聞いて、二次元人達は商店街を見て回った。
確かに見た事も聞いた事もない商品も、店では売買されていた。だが、大将が言うには有害な商品すなわち麻薬などの品は置かせていないという。
麻薬などの有害な物質を売買されていない現状に一安心する二次元人たちは、陳列されている商品を見ながら店主である人々の言葉に耳を傾けた。
「ホントにここはいいところよ。ヤクザとかの暴力団なら、土地代とか言って取り立てするけど彼らはそんな事一切しないわ。何より、自由に商いさせてくれるから、こんな小さな島でも不自由なく生活できるし最高よ!」
「最初は普通の海賊や暴力団の様に、何か見返りを求められると思っていたけど赤塚組は違った。彼らは色んな理由で国に居られなくなった僕たちを庇って、この島で自由に生活させてくれているんだ」
「自由と言っても、ちゃんとした自立した生活を赤塚組はおれ達にさせてくれている。もう産まれた国の圧制に悩まず、気長に商売しながらのんびりと暮らせるから満足だよ」
老若男女と、様々な人種から意外にも慕われている赤塚組の評判に、二次元人たちは驚嘆される。
島の人々も友好的で、新世代型の
そんな二次元人たちは、微かに青空に透けて見えるほどの遠距離に建造されている軌道エレベーター「ヤコブ」の存在にも気付いていた。
自分たち新世代型の初期型が運営・管理を任されていたヤコブ計画は今では全て白紙に戻され、一から見直されている。
それもこれも、全ては初期型の新世代型二次元人が起こしたクーデターによるものであるからだ。
新世代型たちは、遠くに見据える巨大な軌道エレベーターを遠視しながら思いに耽る。
「……なんでルミネっていう、私たちの初期型新世代型は
「俺にもさっぱり……ただ、その一件でヤコブ計画が全部おじゃんになった事と、俺たち今の新世代型にも軽蔑の眼差しが向けられているって事だけだ」
物思いに耽る面差しで軌道エレベーターを見詰める新世代型の琴浦春香の横で、同じく軌道エレベーターを見詰めながら真鍋義久が呟く。
今のまったく新しい新世代型にも向けられる白眼視の根源である初期の新世代型の反旗に憤りを感じ入る新世代型たち。
そんな彼らの複雑な心境を察してか、軌道エレベーターを傍観する琴浦と真鍋に後ろからバーンズが肩を叩いて二人を抱き寄せて言う。
「大丈夫だってお前ら! 今は折角のバカンス並みの南の島でウハウハして、嫌なこと全部忘れておこうぜ! なっ」
バーンズからの力強い激励に、琴浦春香も真鍋義久も、そして二人の思考と共有感知で繋がっている他の新世代型たちも励まされ、再び各々は各店舗を巡り歩いていった。
[突然の奇襲]
皆が島の様子の確認と観光に巡っている間、島の砂浜では赤塚組の子分たちが巡回して何か危険が及ばないか見回りをしていた。
と、子分たちが島と海の境界線を見回っていると海の方から何かが接近してきているのが視認された。
「ん? なんだ、ありゃ?」
海中から静かに浮かび上がりながら接近してくる、その無数の物体は突如として海中より浮上してはその全貌を露にした。
「な、何なんだアレは……うわあっ!」
海中より現れたその巨大な物体は、突如海辺を巡回していた子分たちに向けてレーザーで攻撃。子分たちは爆発に巻き込まれ吹き飛ばされてしまう。
その海中より現れた物体、それは水陸両用型の大型戦闘兵器であった。しかも兵器と共に海中から現れた運搬型の潜水艇からは謎の戦闘アーマーを着用した兵士の軍勢と、これまた大型で同時に狼型の戦闘マシーンが島に上陸してきた。
一方、突然の爆発の衝撃と巨大な硝煙に気付いた赤塚組は、何事かと焦燥の顔色を浮かべる。
「ど、どうした! 何が起きていやがる?」
赤塚組が頭領、赤塚大作こと大将が突然の事態に焦っていると、森を掻き分けて島民達の生活エリアに軍隊が進撃してきた。
「な、なんだアレ!?」
大将が突如として現れた軍隊に驚き慄いていると、上陸した軍隊の最新鋭の戦車がいきなり砲撃。建物の一角を破壊した。
「うわあっ!」「に、逃げろーーッ!」
突然の砲撃と軍隊の進撃に島民たちは大混乱し、逃げ惑い始める。
これと同時に、島を観光気分で歩いていた二次元人たちも突然の攻撃に驚き慌てふためく。
「な、何なんだ一体!」
「皆の者、落ち着け! 冷静に動くのだ……!」
突然の襲撃に焦ってしまう纏流子らに、
しかしその間も、軍隊は島民の居住区にまで侵攻し、目に付くものを片っ端から破壊し焼きし尽くしていった。
「こいつ等……俺様の島で好き勝手しやがって! テメェら! 片っ端から片付けちまえ!」
赤塚組頭領、大将の号令を聞いて、子分たちと共に赤塚組の幹部衆も武器を手に応戦を開始する。
非戦闘タイプの二次元人でありながら、武器を手に取り戦う海野なるや秋夏子の姿を視認して、聖龍HEADも意気込んだ。
「赤塚組に続けッ! どこの軍隊だが分からねえが、このまま島を荒らされているのを黙ってみている訳にもいかん……総員、戦闘開始!」
バーンズは聖龍隊に応戦の命を出すと、自身の体を輝かせて銀色の疾風メタルバードへと変身。自らも右腕をレーザー砲に変形させて、相手方の戦車に反撃を仕掛けていく。
メタルバードの参戦に続き、他の聖龍隊士もここぞとばかしに戦車と共に進撃してくる謎の兵士と応戦を開始する。
するとその時、アニメタウン本土にある聖龍隊本部から通信が入った。
「皆さん、聞こえていますか!?」
「その声はウッズか! どうした、今オレ達は取り込み中なんだが……!」
通信してきたのは、現アニメタウンの市長にして聖龍隊のオペレーションサポーターズ通称OS支部を指揮しているウッズ・J・プラントだった。
突然通信してきたウッズに、現場の戦闘に集中したいメタルバードが焦燥していると、ウッズも慌てた様子でメタルバードに事情を説明した。
「今、皆さんが戦っているのは、所属不明の
「なに、
「はい、それもかなり最新鋭の武装を整えています……気をつけてください!」
ウッズより現在自分たちと応戦しているのは、所属不明の
こんな何もない平穏な島に、なぜ異常化した二次元人たちが襲撃してきたのか。赤塚組が統治しているからだろうか。
どちらにしろ、早々に片付けない限り、敵の進撃は抑えられないのは明白だった。
「ひ、怯むな! 相手が
メタルバードの必死の号令を聞き受け、隊士たちも懸命に敵方の軍勢と攻防を展開していく。
その間、一般の二次元人たちは聖龍隊が総合部隊スター・ルーキーズの誘導の元、安全な地区まで走行していた。
「急いで! モタモタしてたら、それこそ
総部隊長ミラールの指示の元、走り続ける一般の二次元人たち。
そんな彼らにも獣型戦闘兵器が咆哮の如き砲撃を放とうとする。しかし、その砲撃が放たれる直前、聖龍隊の新人たちが総力を挙げて獣型戦闘兵器を破壊、事なきを得た。
島民たちと二次元人たちを避難させている間、聖龍隊と赤塚組は謎の軍隊と接戦を極めていた。
しかし海より出没してくる数多の兵力を相手に、聖龍隊も赤塚組も労力を低減させられていく一方。
海よりの奇襲はやむ事をなく、続々と兵士や戦闘兵器が投下されていく戦況に聖龍隊も赤塚組も次第に押され始めていた。
[変身!]
無数の銃弾が島民や二次元人たちに向けて放たれる、その瞬間! 聖龍隊に一時的に属している台湾が国将軍シバ・カァチェンが
しかしそれでも
「ッ、このままでは……」
シバ・カァチェンはいずれこのままでは戦況が押されて、自分達が全滅させられてしまう事に恐れを抱いていた。
そんなカァチェンにメタルバードが大声で呼びかけた。
「カァチェン! 今は自分のやるべき事に専念しろ! お前は二次元人や島民たちを安全なところまで逃がす……オレ達は侵攻する敵を一掃する! その役割を忘れるな!」
「! 御意……!」
メタルバードの提言にカァチェンも心より同意し、自らに与えられた責務を果たそうと躍起になる。
進撃する軍隊に対して逃げ続ける島民や二次元人たちとは反対に、戦前で戦う聖龍HEADは意外にも苦戦を強いられていた。
何故かというと、敵の使う武器や武装が全て対能力者にも対抗できる特別な装甲だったからだ。
「な、なんで
「オレに分かるかよ! 今はとにかく、奴らの進撃を阻止するのが最優先だ!」
何ゆえ軍勢が最新鋭の軍備を整えられているのか疑問視する大将に対し、メタルバードは兎に角少しでも敵方の進軍を阻止するのが優先事項だと告げる。
と、聖龍隊や赤塚組が苦戦を強いられていくのを目の当たりにした為に、周囲に不注意してしまったミラーガールに大型の獣型の戦闘兵器が襲い掛かる。
「う、うわっ!」
なんという事か、大型の戦闘兵器はミラーガールを押さえ付けて身動きを封じてしまう。
「ミラーガール!」
ミラーガールの危機に助けに向かおうとするメタルバードだったが、彼の目前にも多数の大型戦闘兵器が立ち塞がり、行く手を阻む。
「アッコ! ……畜生、邪魔だ!」
旧友であり初恋の女性でもあるミラーガールの危機に大将は行く手を阻む戦闘兵器に破槍を振り回してどうにか突破を図ろうとする。
しかしミラーガールが大型の戦闘兵器に取り押さえられ、あばら骨が軋んでいた最中、その大型の獣型戦闘兵器が首を回して避難しようとしている島民や二次元人たちへと顔を向けた。その顔の口には強力な砲口が設けられていた。
大型戦闘兵器はレーザー砲口を避難している人々に向けて、エネルギーを充填し始めた。それを前にしたミラーガールは非常に焦った。
(こ、このままじゃ、みんなが……!)
このままではレーザー砲撃が避難している皆に放たれ、全員が消滅・一掃されてしまうのは明白だった。
しかしどうにかしたミラーガールの気持ちとは裏腹に、自身を押さえ付ける大型戦闘兵器の手は力を緩める事無く、彼女を押さえ続ける。
そんなミラーガールの焦りも虚しく、獣型大型戦闘兵器は砲撃の標準を避難する人々に定めようとする。
すると大型戦闘兵器が自分たちを狙っているのを瞬時に悟ったカァチェンは、己が身を盾にして島民や二次元人たちの防壁となった。すると大型戦闘兵器は標準をカァチェンに設定して溜まったエネルギーを砲撃しようとした。
(みんなを、みんなを守らなきゃ……!)
カァチェンや島民さらには二次元人たちを狙撃しようとせん大型戦闘兵器に押さえ付けられながらも、ミラーガールは足掻き続けた。
(みんなを、みんなを守れる……力を……!)
皆を、大切なものを守れる力を心の底から切願するミラーガール。
すると、どうだろうか。彼女の胸の宝石が一瞬輝き、同時にミラーガールの全身にも変化が生じ始めた。
ミラーガールを蒼い光が包み込んだ、その時、皆も挙ってミラーガールに視線を向ける。
「み、ミラーガール……!」「アッコ……!?」
「こいつは……ハッ、まさか!」
蒼い光に包まれるミラーガールを視界に捉えて驚異するカァチェンや大将に反し、メタルバードは光に包まれるミラーガールを見て目を丸くする。
そしてミラーガールを包み込む蒼い光が治まった次の瞬間、彼女を押さえ付けると同時に避難する人々にレーザー砲撃の標準を定めていた大型戦闘兵器が軽々と吹き飛ばされた。
「っ!!」
十数トンもあろうかと言う大型戦闘兵器を軽々と吹き飛ばして破壊される様を目の当たりにして、カァチェンも島民も二次元人たちも、そして大将たち赤塚組の誰もが一驚された。
そして大型戦闘兵器を弾き飛ばしたミラーガールの姿に、これまた皆は驚かされた。彼女の姿が今までの容姿とは一変し、武器も短刀の様なミラー・ソードではなくチェーン状の刃物へと変わっていたのだ。
「あ……アッコか……!?」
姿が一変したミラーガールに茫然となる大将が呟くが、その言葉にミラーガール本人は気付かず、チェーン状の刃で次々と迫り来る大型戦闘兵器に損傷を与え、破壊していった。
すると
「アッコ!」
銃弾の雨にさらされ、大量の硝煙に包まれるミラーガールを見て、大将は絶叫する。
しかし硝煙の中から現れたミラーガールは、なんと無傷のままその場に立ち続けていた。この驚きの光景に大将はもちろん多くの者が驚愕してしまう。
そしてミラーガールは、本来は自分たちと同じ二次元人でもある
このミラーガールの戦ぶりに、今まで修羅場を潜り抜けてきた多くの二次元人たちやシバ・カァチェンは恐怖にも似た感情を抱いた。
次々と敵を切り倒すその姿、迷い躊躇いも失くして戦い続ける魔鏡聖女の姿は…………まさしく鬼の如き戦ぶりだった。
と、此処で敵方の動きにも変化が起き始めていた。
なんと軍隊が撤退を始め、進撃を中断したのだ。
「ど、どういう事だ……!?」
赤塚組幹部衆の一人テツが異様な面持ちで突然の撤退に動揺を隠し切れない。
しかし撤退を始める敵に対してもミラーガールの猛攻は静まる事無く、彼女は撤退する軍に追撃とばかしに容赦なく斬り捨てていった。
「アッコ! もういいんだ、もう終わったんだ……!」
暴走気味になるミラーガールを押さえ付けて抑制させるメタルバードの言葉に、ようやくミラーガールも我を取り戻した。
「ば、バーン、ズ……」
メタルバードの言葉に気付いたミラーガールはそのまま気を失ってしまい、メタルバードの腕の中で気絶してしまう。
「あ、アッコ……!」
気絶してしまったミラーガールにメタルバードが声をかけるが彼女は目を覚まさず、更に彼女の変身も解いてしまい元の加賀美あつこの姿へと戻ってしまった。
すると其処にミラーガールを心配して大将たち赤塚組と聖龍HEADが駆けつけて来た。
「アッコ!」「アッコちゃん、大丈夫!?」
駆け付けてきた仲間たちに、メタルバードはミラーガールを抱き受けて容態を述べた。
「大丈夫、ただ気絶しているだけだ」
ミラーガールの容態が気絶だと聞いて、駆け付けてきた仲間達は少しばかり安堵した。
すると其処に島民や二次元人達の避難誘導をしていたスター・ルーキーズも駆け付け、総長たちに声をかける。
「総長! アッコおねえちゃん……いえ、ミラーガールは?」
「ああ、ミラール。大丈夫だ、少し安静にしてればまた目を覚ますだろう」
駆け付けてきたミラール率いるスター・ルーキーズに、メタルバードはミラーガールを抱いて移送しながら答えた。
その様子を遠視で確認していた二次元人達と島民は、何やら不穏な面差しを浮かべていた。
迷いも躊躇いもなく、敵を一刀両断していったミラーガールの変化に困惑してしまっていたのだ。
聖龍隊と赤塚組はその後、焼け野原となった市街地を踏み締めながら、ミラーガールを搬送した。
しかしこの時、誰もが突然の急襲とミラーガールの異変に気を取られてしまい、島の上空を飛来するカメラ付きドローンの存在に気付く事はなかった。
飛行ドローンは戦闘の一部始終を捉えると、その後どこかへと飛び去って行った。
[Transformation]
謎の軍勢による奇襲を受けて、島の被害は甚大であった。居住区や商店街のほとんどが瓦礫の山となってしまったが、幸運にも島民にも二次元人達にも負傷はなかった。
そして窮地に立たされた聖龍隊と赤塚組に対して、一人俄然と謎の変身を遂げて軍勢と応戦したミラーガールこと加賀美あつこは赤塚組が所有する船体、百鬼命義の一室で眠りに就いていた。
「……どうだ、アッコの様子は」
「落ち着いているよ。損傷は一切見られず、ただ精神的に消耗してるだけだ。……島の方はどうなった?」
「あいにく折角おれ達が建造した居住区も商店街も破壊されちまって……まあ、島民に被害がなかったのが勿怪の幸いだ」
「それは良かった。二次元人達にも被害を被った輩は出ていないしな」
大将とメタルバードは、ミラーガールの容態と島の現状を聞いて少しばかり安心する。
と、そこにアッコの様子を気にして多くの二次元人達がメタルバードと大将の二人に声をかけに来た。
「た、大将、バーンズさん……」
「っ、真鍋、それにお前ら……」
「アッコさんの容態は……」
「アッコの事は気にするな。今は眠っているだけだ」
声をかけてきた真鍋義久と琴浦春香の二人にメタルバードは安心するよう言い付ける。
しかし先ほどのミラーガールとしての戦ぶりを拝見した面々は、普段の穏やかで心優しい彼女とは正反対の豹変振りに動揺を隠し切れなかった。
「だ、だけどさっきのアッコさんって、いったい……」
「ああ、まるで何かに取り付かれた様に暴れ回っていたよな」
新世代型の瀬名アラタに出雲ハルキの言葉を聞いて、メタルバードも彼ら新世代型の動揺を察する。
戦神の如く、敵を切り裂くミラーガールの戦ぶりを目撃して、動揺しない筈はなかった。
そして案の定、新世代型と同様に大将も先ほどのミラーガールとしての幼馴染、加賀美あつこの豹変ぶりに目を疑う様子でメタルバードに問うた。
「おい、バーンズ。さっきのアッコの変わり様、あれは何だったんだ……!?」
ミラーガールの変化に驚きを抑えられない大将がメタルバードに問うと、彼は静かに答えた。
「さっきのアッコの豹変ぶり、あれはトランスフォーメーション能力が爆発的に変化したものだろう」
「? トランスフォーメーション能力?」
メタルバードの返答に大将は頭の中が絡まる様子で首を傾げると、メタルバードは自らの変身を解いて通常のバーンズとして話を続けた。
「トランスフォーメーション、すなわち変身能力の事だよ。アッコは言わずと知れた変身能力者の始祖にあたる二次元人だ。どんなものにも、どんな存在にも成り得るアッコの変身能力は多大な可能性を秘めている訳だが……」
「だが……?」
「だが、その可能性には多大な危険性も及んでいる。非常に強力かつ危険な能力の過程にまで、アッコの変身能力は高まっているんだ……!」
「しかしアッコの……ミラーガールの変身能力は、それだけ便利な代物って事には違いないだろ? そこまで危険なもんなのかね……」
首を傾げる大将に、バーンズは例の小説に綴られているとある文章を話題に出して大将に話し出した。
「過去に、あの手塚治虫先生とMr.ウォルト氏からオレ達に託された言葉があった……」
それは「如何なる姿や存在、そして更なる力を得ては己の姿形を変化させる事の出来る能力の根源は、全ての二次元人の可能性を高め、そして飛躍的に向上させる根本。同時にその力は二次元人を危機的状況に追い詰めてしまう事も見込まれる。無限の可能性、それは同時に……無限の危険性をも、示してしまっている」という二人の二次元界の神々から携えられた言葉を、バーンズは大将は元より傍らで自分達の話を聞いている二次元人達に語り継いだ。
二次元人達も、小説を読んでいたために粗方の事情は知っていた。ミラーガールこと加賀美あつこが変身能力を持つ二次元人の始祖であり、それ故に彼女自身に無限の可能性と共に無限の危険性も孕んでいる事実に。
バーンズは更に、自らが語った話にこう付け加えた。
「他者であろうが無かろうが、無機物・有機物ともに肉体を変化させられるアッコの変身能力の賜物は、オレ達の想像以上に危険を孕んでいる。何にでもなれるという事は、つまり神や悪魔にもなれちまうって事なんだ」
「神にも、悪魔にも……!」
加賀美あつこの変身能力は有機物や無機物に問わない稀にみる高度の能力値であるが為に、神にも悪魔にも成れるという話を聞かされ、大将も二次元人達も愕然としてしまう。
すると今までの話を聞きながらも、成りを潜めていた男が唐突に話し出した。
「……つまり、加賀美あつこの存在は
「うわッ! カァチェン、そこにいたのかよっ?」
突然口を開いたカァチェンに、今まで影が薄かったために存在を忘れかけていた真鍋義久たち二次元人は一驚してしまう。
そんな皆の驚きを前に、今の今まで自分の存在を忘れていた二次元人達の動向に若干の悲痛を感じつつもカァチェンはバーンズに質問をぶつけた。
「バーンズ、今は友として貴方に質問を投げ掛けたい……ミラーガールは、加賀美あつこの変身能力は如何な程まで向上しているのですか? 多くの二次元人、その能力の根源とも言える加賀美あつこの可能性は、どこまで向上してるのか……私は知りたい……!」
時には
そんなカァチェン同様に、一般の二次元人達もバーンズに問い質した。
「そ、そうよ! ミラーガールが本当に危険な可能性もあるなんて、信じられない!」
「アッコさんは、本当に私たちを今まで気遣ってくれた優しい女性なのに……そんな、無限の危険性まで孕んでいるだなんて!」
新世代型の鹿島ユノとキャサリン・ルースの言葉を受けて、バーンズは大将やカァチェンそれに一般の二次元人達に語り明かす決意を固めた。
「……そうだな、お前たち自身の為にも、後学の為にも伝えておかなきゃならないかもな。アッコの変身能力、そしてオレたち二次元人の始祖たる彼女の秘めたる実力って奴を、な……」
バーンズは皆に語り始めた。
かつてミラーガールの変身能力が強大化した事件の全貌を。
そしてその時、自分達に何が起きたのかを……。
[イレブンズ・プロジェクト]
その事件とは2011年、11月11日11時11分11秒に起こった世界同時多発テロ「イレブンズ・プロジェクト」であった。
これはかの革命軍士が考案したテロであり、聖龍隊管轄の異世界に多数建造された「平等の女神像」が標的とされた。
この女神像が爆破されると同時に、多くの二次元人を
これにより大規模な
しかし同時に国連が手掛けていた、隕石にも耐えうる国際宇宙ステーション「希望」が革命軍士が雇ったニトロ・グリセリーノに乗っ取られてしまう。
ステーションの軌道の先は地球、まさしく地球消滅の惨劇が起きようとしていた。
聖龍隊はこの緊急事態に、まずは宇宙ステーションを破壊する策を見出すべく各地の
そして最終的には聖龍隊副長バーンズが、地球の存亡を背負い、単身スペースシャトルに搭乗し荒れ狂う宇宙ステーションに真っ向から激突した。
結果、宇宙ステーションの破壊に成功。地球消滅は免れたものの、爆発した宇宙ステーションの破片が世界中に降り注いだ被害は大きく、地上は焼け野原へと一変。
だが、革命軍士の本当の狙いは地球消滅ではなかった。
革命軍士総司令官である修司の
S-ウイルスが地球に散布されると同時に、小田原修司自身の精神に変化が生じた。
それは小田原修司が軍に在籍していた頃に、
殺戮陽動プログラムが起動した小田原修司は、かつて自身が在籍していたエリア88の一角、0エリアに邁進し、そこの兵を駆逐した後に最深部にまで進攻してしまう。
この事態に聖龍HEADは総長である小田原修司の暴走を止めるべく、そして0エリアの最深部で待ち受けているであろうメカルスと決着を付けるべく、進撃した。
道中、過去にHEADが戦った絶夢鳥の姿に変化するスライム状の兵器を突破しながらも、HEADは遂に小田原修司が潜んでいる区域まで到達した。そこには無数の死体が血塗れの状態で転がっていた。
そんな無数の死体が転がる惨状の中、暗闇の中から現れる人影が。
「………………」「来たか――――みんな」
HEADが黙然と立ち尽くす中、暗闇から現れた人影は不気味な口調でHEADに語り掛ける。
「修司……」
HEADが一人、ミラーガールが暗闇から現れた小田原修司の名を呼ぶ。が、修司は怪しい雰囲気を漂わせながら、ただただ刀を向けて邁進するばかり。
そんな修司は何かを悟ったかのような、物静かながらも怪しい眼光を光らせて語り出した。
「アッコ……俺は全てを思い出したんだ。とってもキモチがいい……こんなキモチ、初めてだ」
「………………………………」
「もう、どうでも良くなった。この世界の未来も、
「……修司、本当に貴方は修司なのよね……」
漆黒のオーラを纏う修司の話を聞き入れるHEAD、するとミラーガールが忽然と変わり果てた修司に問うた。すると修司はミラーガールにこう答えた。
「……俺は俺だよ、アッコ。その証拠に
更に修司は衝撃的な言葉をミラーガール達HEADに投げかけた。
「俺がするべき事はただ一つ……お前達を消し去る事だ」
突如として敵意を向けてきた修司に対して、ミラーガール達は平然を装いながらも修司に言った。
「……ええ、そうね。前の修司とデータでは何の変りもない。だけど修司、貴方は言ってくれたわね。目や耳、データでは捉えられないものも世の中には沢山あるって……今の修司からは、とてつもない悪意を感じるわ……! そう、メカルスや他の多くの
悪意を感じられるとミラーガールに説かれた修司は、平然とした物言いでミラーガール達HEADに話した。
「……なら話は早い……俺と戦え! HEADよ、二次元人よ! これは抗う事ができない宿命なんだ! 三次元人である創造主たる俺と、創造されし二次元人……光と影、これは俺たちが出会った時から決まっていた運命かもしれん……!!」
しかし、この力強い修司の言動にHEADは一向に動こうとはしなかった。
「どうした? 何を黙っている、みんな。やはり俺とは戦えないのか?」
しかし次の瞬間、ミラーガールは自身が武装するミラー・シールドから蒼い閃光を発射し、修司に向かって攻撃した。修司はこの閃光を斬撃で防ぎ、再びミラーガール達と対峙する。
(……修司は今まで、私たちの為に頑張ってくれた。だから私たち二次元人を滅ぼす為に作られた殺戮陽動プログラムにも知らず知らず暗示を組み込まれてしまった。全ては、非力な私たち二次元人の為に……)
ミラーガールは此処まで到達する間、0エリアで入手した情報から知り得た殺戮陽動プログラムが、全ては偽りの種族と見られている危険な可能性も秘めている二次元人を根絶する為に作られた一種の催眠暗示である事。そして二次元人を守るべく、力を欲し続けた修司が知らず知らずにその催眠暗示の実験体にされてしまった経緯を胸中のみで思い返していた。
そしてミラーガールはミラー・シールドを構えながら、仲間と共に臨戦態勢に入って力強く言い放つ。
「貴方を倒して……本当の修司を取り戻す!」
このミラーガールの言葉を聞いた修司は、喜々とした表情で叫んだ。
「いいぞ、みんな!! それでこそ俺が認めた二次元人達だ!!」
次の瞬間、怪しく微笑む修司は、躊躇う事無くHEADへと斬撃を放つ。それをHEADは瞬時に回避して反撃に転ずる。
しかし彼女たちの反撃は意味をなさず、全ての希望の如き美しき閃光は駆け巡りながらも漆黒の刃で断ち切られてしまう。
接近戦を挑むものの、修司の卓越した格闘術の前そして暴走した彼の戦意を食い止める事はできなかった。
様々な想いが彩る二次元界。その世界に夢を馳せた少年が、今では全ての存在を奪おうとする殺戮兵器に成り果ててしまった。
HEADと修司の加速は留まる事を知らず、決して止まる事がなかった。
自分達の如何なる能力や技を一切も受けず、全てを受け流し、または一刀にて断裁する修司の技に焦燥し、戸惑うミラーガール。
そんなミラーガールに、修司は彼女が武装するミラー・シールドを一刀両断すると、そのまま怯んだ彼女に回し蹴りを入れて吹き飛ばす。
壁にまで弾き飛ばされたミラーガールは辺りを見回して愕然となった。仲間であるセーラー戦士もキューティーハニーも、そして新たにHEADに加わっているマーメイドメロディーズや東京ミュウミュウズ、ローゼンメイデン達も傷だらけで力尽きていたのだ。
傷付きながらも愛する修司を止めるべく立ち上がろうとするミイラ―ガール。しかし壁への激突で思う様に体が動かない。
その間にも彼女の思考の中では、大切な友であり、秘かに愛し合う修司との思い出が走馬灯のように駆け巡っていた。
「無限の可能性を持つお前たち二次元人と……想像したものを無に帰す俺たち三次元人……俺達はもともと誕生の瞬間から、決して相容れることのない――対になる存在なんだよ」
全てのHEADを撃破した小田原修司は、地べたに這いつくばるセーラームーンへと歩み寄ると彼女の頭を踏み付ける。
「うっ……」「う、うさぎ……!」
頭を力いっぱい踏み付けられて悶絶するセーラームーンを前に、同じく地べたに這いつくばるキング・エンディミオンが悲愴な面持ちでセーラームーンを見詰める。
そんな仲間達の悲愴な視線を一身に浴びながらも、修司は更にセーラームーンを踏み付ける足に力を入れる。
「ククク、そうだな、お前達にも解りやすいよう実践してやるのも悪くない……何も守れない非力な存在だからこそ、目の前で大切な仲間が、友が奪われる……その情景を、な!」
修司は更に踏み付ける力を込めて、セーラームーンの頭蓋を踏み砕こうとし始めた。
「や、やめろッ!」
キング・エンディミオンが呼び止めようと叫ぶが、それも虚しくセーラームーンの頭蓋は軋み始めた。
誰もが傷付き、どうする事もできないまま仲間の一人であるセーラームーンの、ネオ・クイーン・セレニティの苦しむ様を目視し続けるしかできなかった。
その時。
「ッ!」
セーラームーンを踏み付けていた修司の目に、眩いばかりの蒼き光が。その光を視認して踏み付けていた修司の動きが止んだ。
その眩い蒼き光は、薄暗い闇に包みこまれていた現状を照らした。と、同時に強烈な旋風が修司を、そして現場に倒れていた皆を呑み込んだ。
そして蒼き光の中から現れた人影。それは漆黒のパワードスーツを着衣したミラーガールの姿だった。
「アッコ……!」
蒼き衣が特徴的なミラーガールの一変した姿に、焦燥の顔色を浮かべる修司。
この時のミラーガールは、倒れ行く仲間たち、そして暴走する修司を止めたい一心から、心より≪力≫を欲したために、この様な変身を遂げたのだった。
そして激しく荒ぶる魂を抱えたミラーガールは、一新したミラー・シールドから今までよりも強力な砲撃を放ち、修司に攻撃。
「ッ!」
これに修司も敏感に反応して、華麗に回避すると空かさずミラーガールへと反撃とばかしに刃を振り下ろした。
しかし変異したミラーガールの右手に携えられたミラー・ソードは、日本刀の様に巨大化・強化された状態で修司の刃を受け止める。
互いの魂を削りながら双方ともに激しく刃を組ませる修司とミラーガール。
だがミラーガールは修司の斬撃を受け止めた瞬間、背中に巨大な蒼き光を放つ天使の羽を生やし、一気に威力を加速させる。
火力が急上昇したミラーガールの斬撃に、修司は堪らず弾き飛ばされ、後方の壁へと激突してしまう。
すると壁に激突した瞬間、催眠暗示に取り付かれていた修司は正気を取り戻し、同時に仲間達の声を、想いを思い起こせた。
激しい戦闘を展開した聖龍HEADと小田原修司。
互いに本気で戦ったため、双方の消耗も激しいものとなった。
その為、最後まで抗い続けた修司もミラーガールも、他の仲間たち同様に倒れてしまう。
すると皆が倒れて気を失っている処に、暗闇から二つの眼光と大きな閃光が現れ、ミラーガールを仕留めようとする。
と、そこに「させるかッ!」と修司がミラーガールと暗闇から現れた自身のコピー、メカルスの間に入って、ミラーガールをメカルスの攻撃から身を挺して守る。
だが、これにより先ほどのミラーガールとの戦闘で負った消耗も付け加えて、修司は満身創痍となってしまった。
「……修司……修司……!」
満身創痍の修司がその声に気付き、そっと瞼を開いてみると視界には修司を気にして彼の元に駆け寄ってきたミラーガールやHEADの仲間達の姿が入った。
「お、お前たち……無事、なのか……」
片言で、今まで殺意を向けてしまった仲間達の安否を気にする修司にナースエンジェルが申し開いた。
「大丈夫です。みんな、私やセーラームーンの治癒能力で回復しましたから」
「……そうか、良かった……」
仲間達の安否を気にしていた修司は、ナースエンジェルの言葉を聞いて安心する。
すると修司は最後まで希望を捨てず、暴走した自分を止めるべく新たな変身を開花させたミラーガールに視線を移して言った。
「まったく、お前は……最後の最後まで、面倒を掛けやがって……俺が庇わなかったら、お前もみんなもメカルスに、やられていたんだぞ……」
「修司! もう喋らないで! 早く治療するから……」
修司の闇の能力によって治癒能力も彼には無力化される現状に、ミラーガールは急いで地上に修司を搬送して怪我の治療に当たらせようとする。
だが、修司は――「その必要はない」と突っ返した。
動揺するHEADを前に、修司は壁に寄りかかりながら語り出す。
「俺に構っている暇はないぞ、HEAD……この奥に、メカルスが……!」
修司は0エリアの最深部に潜んでいる自身のコピーであるメカルスの存在に逸早く気付いて、皆にそれを知らせた。
「修司……!」
悲観するミラーガールを前に、修司は語り続ける。
「アッコ、みんな……俺はこの手で、多くの二次元人達を……お前達と同じ二次元人達を多く葬ってきた。時には、こんな俺を愛してくれた二次元人でさえも斬り捨てた……だけど、俺は泣けなかった……」
「修司! それ以上は……!」
「親友も躊躇いもなく殺し、その恋人すら手にかけた……」
「修司、もういい加減に……」
「だが泣けなかった!!」
「!!」
「最高の力を、武力を、地位を得た俺が……どんな
修司の意識が遠のく事を恐れるミラーガール達HEADに反し、修司は自らの実情を赤裸々に語り続けた。
「だから俺は……お前達が羨ましかった……」
「……!」
修司の一言に険しい面差しを向けるミラーガール。そんな彼女らに修司は語り続ける。
「例え己が倒した敵であっても……誰かの為を想い、涙を流せるお前達が心底羨ましく、そして妬ましかった……そして何よりも……誇りだった……」
「………………」
自分の意識が薄命になろうとしている最中すら、己が実情を語り続ける修司の想いを知って胸が締め付けられるHEADたち。
そんなHEADに、修司は説いた。
「……さあ、早くメカルスの処に行け。俺の事はもう良い……所詮、俺の能力でみんなの治癒能力は使えないのは目に見えている。早く……早く、この戦いを終わらせるんだ……」
修司の切願を聞き入れ、HEADは総員立ち上がった。
イレブンズ・プロジェクトという世界中を巻き込ませたテロを起こした革命軍士メカルスの暴動を止めるべく、HEADは再び足を前へと歩ませた。
傷付き、満身創痍で意識を失った小田原修司を置いて――――。
[殺戮陽動プログラム]
バーンズより2011年の11月11日に起こった世界同時多発テロ、イレブンズ・プロジェクトの粗方と、それによって引き起こされ覚醒した小田原修司の殺戮陽動プログラムを聞いて、大将もシバ・カァチェンも、そして一般の二次元人達も蒼然となった。
「そ、そんな事が0エリアで起こっていたのか……!」
「話には聞いていましたが、0エリアで修司さんの催眠暗示も、アッコさんの変身能力の開花も起きていたんですね……!」
バーンズの話を聞いて、大将も新世代型の星原ヒカルも蒼然とした面差しでバーンズに問い返した。
「ああ、そうだな。オレ達も前々から殺戮陽動プログラムを仕掛けられた、対二次元人殲滅用兵器の捜索に当たっていたんだが、まさかそれが修司だったとは驚いたぜ」
「! せ、聖龍隊は前々から、その対二次元人用の殺戮兵器を追っていたんですか!?」
バーンズの話に、新世代型の薙切えりなが物申すと、バーンズは静かに語り明かした。
「そうだ。オレたち聖龍隊は前々から、二次元人殲滅用の兵器を追っていた。まっ、まさかその兵器が催眠暗示を仕込まれた生きた人間……それも修司自身だって知ったのは0エリアに踏み入った時だけどな」
「確か、その0エリアっていうのはアメリカの極秘区域エリア88の一角にある放棄された施設だったんですよね?」
話を聞いて新世代型の出雲ハルキがバーンズに問い質すと、バーンズは素直に答えた。
「そうだ。その0エリアでは過去に人の潜在意識を操作して、精神的に屈強な兵士を作ろうと取り組んでいた施設……催眠暗示はもちろん、自己暗示による強化もあったらしい。其処に力を渇望する修司が入隊したために、政府は修司の潜在意識に肉体の強化および精神の強化を組み込んだって訳さ」
「その割には、小田原修司はその後、ウツに発症したり精神的に不安定な面が目立っていましたが」
バーンズの話に再び薙切えりなが発言すると、バーンズは表情を歪ませてえりなの疑問に答える。
「それはだな、えりな……修司に刷り込まれていた殺戮陽動プログラムを政府のお偉いさんたちが、とある理由で潜在意識の奥深くに封印するよう提示したから催眠暗示が効果を持たなかったと考えられる」
「とある理由?」
えりなの質問に答え返すバーンズの話に、えりなの従姉妹にあたる薙切アリスが催眠暗示を封印した理由について問い述べた。
するとバーンズは一変して、強面の表情で皆に語り明かした。
「それはだ…………殺戮陽動プログラムを仕込まれた修司がある日突然暴走したんだ。暴走した修司は当時の0エリアの職員を片っ端から惨殺して、軍隊の半数を一掃するまで暴れ回ったという。その惨状は目を見張るものだったと言われている……これを機に、政府は修司の意識に植え付けた殺戮陽動プログラムを封印して、廃墟と化した0エリアも放置したんだ」
バーンズが語ってくれた過去の実情を聞いて、大将もカァチェンも二次元人達も真っ青になる。
力を渇望する小田原修司が軍隊に入隊し、そこでD-ワクチン投与の他にも精神的な強さも渇望した修司は0エリアに編入。そこで様々な催眠暗示や自己暗示の方法を教わると共に、己の意志とは反対に当初は二次元人だけを滅ぼす為の殺戮陽動プログラムをいつの間にか植え付けられてしまう。だが、皮肉にもこの催眠暗示が暴走して0エリアにいた多くの所員を修司が殺めて基地を壊滅させてしまった経緯だというのだ。
この一連の話を聞いて、顔を蒼然とさせる大将がバーンズに問い質した。
「な、なあ、バーンズ……修司は知らなかったんだよな? 自分の頭ん中に植え付けられた催眠暗示が、俺たち二次元人を滅ぼす為の殺戮なんとかっていう暗示って知らなかったんだよな?」
「無論そうだ。そんな暗示を仕込まれていると知った修司なら、拒絶していただろう。だが、当時の修司は力に対して余りにも渇望し過ぎた。それで周りが見えなくなってしまってたんだろうよ」
力に固執し過ぎた為に、周りが見えなくなってしまった小田原修司が人知れず愛する二次元人を滅ぼす為の殺戮陽動プログラムを刷り込まれていた現実に、シバ・カァチェンや多くの二次元人達は愕然となった。
「そ、それで……さっきの話に戻るんですけど、聖龍隊は……HEADは革命軍士の総司令官メカルスを倒せたんですよね?」
唐突に話を切り替える新世代型の瀬名アラタの質問にも、バーンズは包み隠さず打ち明けた。
「ああ、メカルスとの一戦も無事に済んだ。だがその過程の中で、思わぬ事態が次々と起こった。しかも最終的には修司やオレ達も……」
「な、何があったんですか?」
陰気な面持ちで語るバーンズに、プロト世代のチョコが訊ねるとバーンズは公表した。
教科書にすら載っていない、0エリアでのメカルスとの死闘を――。
[VSメカルス]
革命軍士総司令官メカルス。
元は政府が小田原修司の
闇の力が暴走した事で、研究所で爆発を起こしたメカルスのコアは、何故かその場に居合わせた革命軍総元帥ブラッディ・ドラゴンの手元に渡る。
その後、革命軍士の元で自らの体を得たメカルスは己が小田原修司のコピーである事を率直に受け止め、本物と偽物という区別を強いている世界に対して革命軍士の下で反逆行為を行うまでに至った。
「俺が偽物である事は認めよう……だが、偽物が本物を超えてはならないという決まりは誰が作った?」
このメカルスの言葉は、後々偽りの種族と蔑まれる二次元人達に多大な影響を齎した。
そしてメカルスは幾度となく聖龍隊に戦いを挑み、彼らを苦境へと追い込み続けた。
何度敗北しようとも、完全なコンピューターウィルスに変化したメカルスを倒し尽くすのは至難の業であり、聖龍隊はメカルスといたちごっこの如く幾重にも戦闘を繰り返した。
そして2011年11月11日のイレブンズ・プロジェクトでメカルスはウィルスである自身を聖龍隊に敢えて倒させる事で、人間の精神心理にも影響を齎すウィルスを拡散させ、同時に占拠した宇宙ステーションにも同様のウィルスを詰め込んだ事で小田原修司を覚醒させたのだった。
聖龍HEADは正気を取り戻した小田原修司の切願を聞き入れ、最高の精鋭でメカルスへと挑んでいった。
そのメカルスが待ち受けていた0エリアの最深部。
そこは何故かドーム状の広間の中央に一つの椅子がポツンと置かれた、何とも異様な光景が広がっていた。
そして待ち受けていたメカルスは強力な戦闘アーマーを装備したボディで出現した。
「……………………クククッ、流石は最強の二次元人ともいえるなぁ、HEADよ……予想以上に来るのが早かったな」
「……なんのために! こんな事をしたの!?」
メカルスの立てた作戦に怒りを露わにするミラーガール達が問い質すと、メカルスは平然とした物持ちでミラーガール達に話した。
「……修司だ……修司の目を覚まさせる為にした事だ……」
「……何ですって!」
「お前達と幾度の戦闘を重ね続けた修司……だが、奴は俺のオリジナルだというのに真の目的を忘れたままだった。そこで俺は地上にウィルスをばら撒く事で修司の体を清めた訳なのだが……ウィルスの量が足りなかった。其処で俺は造りかけの宇宙ステーションをウィルス爆弾に造り直して、地球に激突させた訳だ。結果は知っての通りだ」
「そんな事の為に! 地球が滅びるかもしれなかったのよ!」
「幸い、聖龍隊という……ヒマな奴らがいて、地球滅亡はないと……しかし、その聖龍隊も殆どが、
「……そ、そんなっ! あなたのせいで、どれだけの仲間が犠牲になったか…………許さない! 許さないわよっ! メカルス!」
全てはオリジナルの修司に眠る殺戮陽動プログラムを覚醒する為だけだと述べた上に、高笑いを上げるメカルスにミラーガール達は怒りを露にして戦闘を開始する。
「決着をつけるぞ!」
メカルスの方も、この場で聖龍HEADを葬る勢いでミラーガール達に戦いを挑む。
――――そして迎えた革命軍士メカルスとの死闘。HEADは辛うじてメカルスを追い込む事ができたが、寸での処でメカルスはHEADに一矢報いようとミラーガールの油断をついて彼女に最大火力の攻撃を放った。
ミラーガールの危機、そこに駆け付けて来たのは、先ほどHEADとの戦闘に加えてミラーガールを身を挺して庇った為に満身創痍になってしまっていた小田原修司であった。彼は全身ボロボロになりながらも最後の力を振り絞ってメカルス討伐の為に駆け付けて来たのだ。
「し、修司……!」「はぁ、お前は油断が多すぎる……」
一度ならず二度までも自分を守ってくれた修司の到着に驚くミラーガールに対し、修司は彼女の戦闘での油断の多さを懸念する。
そんなオリジナルである修司の到着を待ち侘びたのか、メカルスは高笑いしながら爆発消滅した。
「ワーーハッハッ! よくぞここまで来たな、修司よ……」
「め、メカルス! 印籠は俺が直接渡してやらぁ!」
高笑いしながら消滅したメカルス相手に、修司は未だメカルスが近くで成りを潜めている現状を察して怒号を叫ぶ。
すると暗闇の中から巨大な影がゆっくりとその全貌を現した。それは巨大な戦闘用ロボットに乗り移ったメカルスだった。
「ここだよ、逃げも隠れもせん……実はな、今回良きパートナーがいてな……色々とサポートしてくれていたのだよ。過去に数えきれないほどの人間の精神を改造し……技術面でも秀でていてな、今から見せる最強のボディも与えてくれたのだ。頼もしいパートナー、いや、同士だった……誰よりも、お前達に対する異常な……執着心……実に頼もしかった……俺自身も懐かしんだものよ……何故なら、俺達に……小田原修司という人間に無限の破壊性を与えてくれた張本人なのだから!」
「な、何ですって……!」
「俺以外にも居たのだよ……お前達を憎む存在が……憎しみを喰らうが良い! 死ね! 聖龍HEAD!」
メカルスの話を聞いてミラーガール達は一人の人物を思い起こした。かつて、この0エリアで多くの兵士の精神を催眠術で改造していた上に、自分たち二次元人に多大な敵意を向けていた一人の心理学者を……!
同じく、メカルスの話を聞いた修司は自身の記憶にはないその人物に……封印されて消えかけていた記憶が呼び起されそうになっていた。
「だ、誰なんだ……! その人物って一体、誰なんだ……!?」
「修司、落ち着いて! メカルスの口車に乗せられちゃダメ!」
何度も夢で見る、顔の分からない人物の存在にいつも悩まされていた修司は記憶を辿ろうとするが、ミラーガールが過去の辛い現況を思い起こさない様に修司を宥める。
すると、そんな修司を宥めるミラーガール、二人に巨大ロボに転移したメカルスが話し掛けてきた。
「ふふっ、落ち着け、我がオリジナルよ……包み隠さず語ってやろう。その人物は言ってたぞ、修司は史上最強の兵器だとな……その人物、いや、老人の事を思い出さないか?」
「……し、知らない! 俺はそんなヤツなど知らない……!」
「修司! ……落ち着いて……!」
「修司よ、お前はよく知っている筈だ。……夢で会うだろ? お前の事を……いいや、俺達の事に深く入れ込んでいたよ。そう、まるで生みの親の様になーーっ!」
メカルスの言葉に、ミラーガールに宥められながらも修司は遂に堪忍袋の緒が切れた。
「うわーー!! 黙れーー!! 最後だ! 許さないぞ、メカルスッ!」
メカルスの挑発に冷静さを失いながらも、修司は仲間である聖龍HEADと共に巨大ロボのメカルスに戦いを挑んだ。
しかし巨大ロボのメカルスに損傷を与える事は難しく、弱点は巨大な頭部の額に見える核のみだった。HEADは総力を挙げて核に向かって攻撃するが、メカルスも攻撃を許さないとばかりに巨大な腕でHEADに大打撃を与えようと画策。時には手の平から謎の閃光を放ちHEADを痺れさせ、更にはその巨大な拳で握り締めようと向かってくる。それらの攻撃を、時には回避し、時には受けてでもHEADは膝を屈する事はなく果敢にメカルスへと挑み続ける。
そして遂にメカルスの核を破壊し、メカルスを戦闘不能にまで追い詰めた。
「……ぐ、ぐわっ。く、くそ……一人では死なんぞ……お前達も道連れだ……!」
「何だと……!」
「みんな揃って、あの世に逝ければ寂しくなかろう?」
「待て! みんなには手は出させん!」
自身だけでなく敵方であるHEADも道連れにすると宣言するメカルスの言葉に反応し、修司は闇の力でHEADの仲間達を球状のベールで包み込んでメカルスの爆発に持ち堪える様にした。……自分以外の友を守るため。
「死ぬのは……終わるのは俺たちだけでいい、メカルス!」
「し、修司っ!!」
自分以外の現場の皆に闇のベールを纏わせて爆発に耐え得る様にする修司の言動に、ミラーガールが叫ぶ。
だがミラーガールの願いも虚しく、修司以外のHEAD全員に闇のベールが纏われた直後、メカルスは自爆した。
「フハハ、共に地獄に落ちようぞ、修司!」
巨大な爆発と共に衝撃波と閃光が現場を包み込み、その衝撃に修司は跡形もなく呑み込まれてしまう。
そして同じく爆発に巻き込まれたHEADは、予め修司が包み込んでくれた闇の力で、大半の爆発の威力を防がれ、辛うじて生存できた。
しかしHEADは生死に別状はなかったものの、全員がメカルスとの戦闘に加えてその自爆による衝撃で満身創痍となってしまってた。
「ッ……み、みんな、無事か……」「な、何とかね……」
メカルス自爆の衝撃で降り注いできた瓦礫の下敷きになりながらも、その瓦礫を退かしてメタルバードがHEADの仲間が無事かどうか確認すると、ジュピターキッドがそれに返答する。
メタルバードとジュピターキッドが見渡してみると、他の聖龍HEADも満身創痍ながら、瓦礫を自力で退かして辛うじて生存できていた。
ウォーターフェアリーはジュピターキッドと共に瓦礫の下から自力で這い出ると、彼女はある重大なことに気付いた。そう、ミラーガールの姿が見えなかった。
皆がミラーガールの姿を目視しようと辺りを見渡していると、コレクターユイが指を差した。彼女が指差す方には、必死に何かを探し出そうとするかの如く、彷徨うミラーガールの姿がぽつんと暗闇の中に見受けられた。
「……し、修司……修司……!」
自分達を護るべく、最後の力を振り絞って闇の能力を発動させて自分達を護ってくれた修司の姿を必死に探し出すミラーガール。
そんな彼女が半ば放心状態で彷徨いながらも修司の姿を探していると、暗闇の中から修司の姿が見つかった。
「し、修司……」
ミラーガールは床に倒れ込む修司の姿を見付けて歩み寄る。 だが、倒れている修司の元に歩み寄った彼女の眼には信じ難い現状が飛び込んだ。
それは下半身を完全に失い、左腕も消滅してしまっている修司の亡骸だった。それを目の当たりにしたミラーガールは絶望した。
「………………修司? ……修司! 修司!」
ミラーガールは既に息を失っている修司を抱き寄せて、何度も何度も呼び掛ける。
「修司ッ! 修司ッ! そんな…………修司ィ!」
完全に正気を失ってしまったミラーガールは、壊れた機械の様に何度も修司の名を呼び続けた。
そんな修司の亡骸を抱き寄せて必死に名前を呼び続けるミラーガールを見て、聖龍HEADは心を締め付けられた。
誰もが修司に守られ、修司を救えなかった現状に絶望していたその時、修司の亡骸を抱き寄せるミラーガールの背後その暗闇から閃光が。
「…………シ、シネェーー……」
「め、メカルス!」
「…………? っ? し、しまっ……」
背後に実体のないウィルスとして、機械の一部に乗り移ったメカルスの最後の攻撃に気付くメタルバードとミラーガール。
だが、メカルス最後の攻撃は、HEADが満身創痍である状態での砲撃だった為、止める隙がなく、不覚にもメカルスの砲撃はミラーガールに直撃してしまった。
「……ぐ、ぐはっ…………」
「あ……アッコーーーーッ!」
機械の一部に乗り移り、首だけの状態で砲撃を放ったメカルスの閃光はミラーガールの背部から腹部を貫通し、彼女の胴体に風穴を空けた。それを目の当たりにしてメタルバードたちHEADは愕然となる。
すると此処で奇跡が。なんと上半身だけに成り果てた小田原修司が一時的に息を吹き返し、ミラーガールに砲撃を放ったメカルスに所持していた拳銃を向けた。
「……し、しぶとい奴だ……死ね……メカルス……」
小田原修司は渾身の力を込めて引き金を引き、銃弾をメカルスの頭部に直撃させて消滅させることに成功。
そして修司とミラーガールの両者は床に転がり、ミラーガールの方は完全に息をしていなかった。
其処にメタルバードたち聖龍HEADの面々が駆け付け、修司とミラーガールの両者に駆け寄った。
「お、おい……修司! 修司!」
一度とはいえ奇跡的に息を吹き返した修司にメタルバードが叫びかけるものの、修司の意識は再び暗黙に包まれようとしていた。
「……み、みんな……聞こえるか? ……どうも、俺は此処までのようだ……」
「修司……!」
「……たくっ、最後の、最後まで……甘さが、出たようだな、アッコ…………お、お前達は……い、き……ろ……」
今まさしく事切れそうになる修司の最後を看取ろうとしたメタルバードの思想に、強烈な思想概念が襲い掛かった。
それは今まさに死にゆく小田原修司の走馬灯であった。
(…………はっ、死ね! メカルス! ……うん? おかしい……メカルスを倒したのに、なんでまたメカルスと……戦っているんだ? ……く、苦しい……そ、そうか。これが噂に聞く走馬灯って奴なんだな……いよいよ俺も、死ぬのか……)
自身の最後を感じ取った修司の思考を強制的に読み取ってしまうメタルバード。すると修司の走馬灯に謎の老人の姿がシルエットで映し出された。
(……誰だ? こいつ……結局、最後まで思い出せなかった。夢でよくうなされた……)
最後まで思い出せなかった謎の老人に対して思い耽る修司だったが、その直後また記憶の断片が切り替わる。
(……今度は俺か……そうか、夢の謎が分かったぞ……)
修司は記憶の断片を思い起こして、今回メカルスと戦った0エリアの最深部で自身が催眠暗示で精神を強化していた事を思い出した。
だが、それは同時に彼にとって絶望的な記憶も呼び起されてしまった。
(……なに? あんた、何を俺に植え付けている……!? ……やめろ! それは殺戮陽動プログラム……! ……ッ! コードネーム、メシア……そういう事だったのか……!)
修司は自分の名札に張り付けてあったコードネームを見て気付いた。メシアとは、対二次元人用の殺戮兵器の総称に使われていた名前だと、修司は既に周知していたからだ。
全てを思い出した小田原修司は、自分を抱き寄せるメタルバードに呟くよう言った。
「……悪いな、バーンズ、みんな…………俺が消えないと……ダメみたいだ…………でも、これで全てが終わる…………じゃあな……みんな……アッコ……」
そういうと小田原修司は両目を静かに閉じたのだった。
「し、修司! 修司ーーッ!」
メタルバードは死にゆく修司を呼び止めるかのように名前を叫びかけた。
だが、そんな小田原修司の想いは虚しく、メカルス消滅の影響で0エリアは連鎖反応を起こして次々に爆発が引き起こされ、その爆発にHEADが続々と巻き込まれていってしまう。
セーラー戦士、キューティーハニー、ナースエンジェル、木之元桜、コレクターズ、魔法騎士、ちせ、ミュウミュウズ、マーメイドメロディーズ、ローゼンメイデン。そしてジュピターキッドにウォーターフェアリーまでも爆炎の中に消えて行ってしまう。
「ちくしょう……チクショーーッ!!」
戦いには勝った。だが失ったものは余りにも大きく、更には生き延びた仲間達も続々と死んでいく情景を目の当たりにしてメタルバードは咆哮を上げた。
メタルバードが咆哮を唸らせた次の瞬間、0エリアの基地そのものが爆発し、メタルバードも爆発による光の中に消えて行ってしまった。
この時の爆発は0エリアの廃墟を完全に消し去るほどの規模にまで至り、HEADは絶命した。
[生かされた理由]
「………………………………………………………………」
バーンズより過去の激戦とその顛末を聞かされた大将とカァチェン、そして二次元人達は言葉を失ってしまう。
「なに、何なの? お前達、一回死んじゃった訳? なあ……」
呆けた面構えで驚きを隠せない大将からの問い掛けに、昔の戦いを語ったバーンズは静かに口を開いた。
「……ああ、そういう事になるな」
するとその時、昔話を語ってくれたバーンズは物陰に隠れていた人物たちに気付いて顔を向けた。
物陰に隠れて、話の一部始終を聞いてしまっていたのは、赤塚組の幹部衆だった。
「お、お前ら……」
「す、済まない。盗み聞きするつもりは無かったんだが……」
故意では無かったにしろ盗み聞きしてしまった事を大将たちに頭を下げて詫びる幹部衆のテツに続いて、他の幹部衆たちも驚いた様子でバーンズに質問攻めした。
「で、でも……本当なの!? 今の話……!」
「修司が私たち二次元人を滅ぼす為に精神を改造された殺戮兵器メシアって……!」
「そ、それに……結ちゃん達が一度は死んだってどういう事なんだ!?」
「さくらちゃんも……それにバーンズ、あなたも死んでしまったって、一体……?」
赤塚組幹部衆の海野なる、ミズキ、市川一太郎に山崎千春の質問に、バーンズは表情を変える事なく険しい面立ちで返した。
「……そうだ、一回はオレ達HEADは死んじまった」「!!」
一度とはいえ死んでしまったというHEADの事実に衝撃が走る一同。
そんな彼らにバーンズは焦る様子もなく、平然と語り続けた。
「確かにオレ達は一度は死んじまった。でも何故、今オレ達が生きているか……実のところ、オレによく分からない。ただ、ぼんやりとだが記憶にある人物の声が残っているのだけは覚えているんだ……」
バーンズは語ってくれた。
壊滅した0エリア跡地の荒廃した大地で、爆発の衝撃で地面の中に半ば埋まってしまっている自分たちHEADの亡骸。
その亡骸の傍らに、赤いベレー帽を被った初老の男性が現れ、絶命してしまったHEADに静かに話し掛けた。
「……まだだ……もう、ゆっくり休ませてあげたいけど……あと少しだけ……あと少しだけ頑張ってくれないか。聖龍HEAD……」
その声が記憶に残った状態でバーンズ達HEADが気付いたのは病室のベッドの上だった。
だが最初にバーンズ達HEADが気付いたのは、大声で泣き叫ぶ一人の女性のとてつもない絶叫で呼び起こされたのだ。
その女性は他でもない、愛する人を失って絶望と悲しみに打ちひしがれるミラーガールこと加賀美あつこだった。
HEADの誰もが彼女に励ましの言葉を掛ける事はできなかった。それは自分達も同じ悲しみを感じていただけではなかった。ミラーガールに、アッコに掛けてやるべき言葉が一片たりとも見付からなかったからである。
こうして聖龍HEADは命からがら革命軍士を倒す事に成功するが……戦いから生還したのは無数の光……小田原修司を除いた聖龍HEADだけだった。
この時、ミラーガールが持ち帰ったのは 誰もが見覚えのある一本の日本刀だけであった。
後にミラーガールは小田原修司帰還まで、この日本刀を携えて鬼神の如く戦い続けていたという。
――――バーンズより0エリアからの生還を聞かされた一同は、またしても驚きを隠せない表情を見せていた。
一度死んだ二次元人の魂を戻し、更には爆発で使い物にならなくなった肉体をも甦らせた初老の人物の記憶を聞いて、一同が愕然とする中、大将がバーンズに問い質した。
「……な、なあ。その初老のベレー帽被った奴って、まさか……!」
「……記憶が曖昧だからハッキリしたことは言えない。ただ、オレ達は何者かに生かされた……そう、修司の様にな」
「! それってどういう事!」
大将の疑問に返答するバーンズの最後の台詞を聞いて、新世代型の美都玲奈が事情を求める。
何故、小田原修司も生きているのか、いや、生かされたのか。その訳を玲奈たち新世代型たちは答えを求めた。
この質問に対し、バーンズは敢えて平穏を保った状態でその場の皆々に詳しい経緯を語った。
小田原修司を生かした人物。それは過去に修司自身に殺戮陽動プログラムという催眠暗示を植え付けた張本人にして、イレブンズ・プロジェクトでメカルスに協力していた一人の科学者。その名を、Dr.ヴァルツ。政府に属していた心理学者である。ヴァルツは人の脳内に催眠暗示を植え付ける事で、その人間を極限まで強化させる事を得意とする科学者であり、政府でもその頭脳を高く評価されていた。しかし小田原修司に殺戮陽動プログラムを植え付けた後に勃発した修司の暴走により、立場を追われたヴァルツはその後政府からも軍からも姿を消してしまう。だがそれでもヴァルツは存在し続け、陰で小田原修司を始めとする人々に奇策を張り巡らせて罠に陥れようと画策していたのだ。
ヴァルツという人物の話をバーンズより聞いて、一同はそのヴァルツに対してバーンズに問い質した。
「ば、ヴァルツはなぜ僕たち二次元人を滅ぼす催眠暗示を小田原修司に……!」
「それはだな、サクヤ。ヴァルツの催眠暗示を植え付けても普通に理性を保てるほど強い意志、すなわち精神力を持った奴でないとヴァルツの催眠暗示は受け付けなかったんだ。そんなヴァルツの催眠暗示の中でも特に秀でていた殺戮陽動プログラムを受け付ける意志を持った人材は、修司以外いなかった訳らしい。オレもヴァルツ本人から何も聞いちゃいないから、なんにも知らないんだが……奴はオレたち二次元人を単なる
「酷い……! 修司さんも、俺たちも只のモルモットだなんて……!」
新世代型の細野サクヤからの質問に自分なりの解釈を立てて説くバーンズの説明を聞いて、瀬名アラタが怒りを露わにする。
すると、このバーンズの話を聞いた新世代型の日暮真尋が問い詰めた。
「待って! 本人からって……貴方、そのヴァルツって人と出会った事があるの!?」
真尋からの問い掛けに、大将たち赤塚組幹部衆もカァチェンもバーンズを見詰める。
これに対してバーンズは全く動じず、むしろ平穏を保持した状態で話した。
「ああ、会った事がある。それもオレら二次元人……特にCLAMPファンにとっては怒りが込み上げる事を仕出かしやがった……!」
「??」
CLAMPファンにとっては怒りが込み上げる行為と聞いて、きょとんとする一同。
そんな彼らにバーンズはつい最近のヴァルツとの境遇を語り始めた。
二次元界の神様と思われる人物に生かされた聖龍HEAD。
それに反して二次元人を滅ぼすべくヴァルツに生かされた小田原修司。
二次元人達は、そんなヴァルツとバーンズの出会いを問い詰めたところ、バーンズは静かに語り始める。
ドクターヴァルツ、彼が行った卑劣な行為と、それに伴った戦闘を。
[二人のリード]
Dr.ヴァルツ。
軍事政権の中枢にまで入り込むことができた、人格を改造する催眠暗示を考案したマッドサイエンティストの心理学者。彼の祖父は、かつて若かりしアドルフ・ヒトラ―の弱輩していた精神に催眠術による強化暗示をかけた事で知られている。ヴァルツも祖父の代から培ってきた催眠暗示を得意とし、戦意のない兵士に強引に戦闘本能を呼び起こさせて戦闘をさせる術を会得。遂には愛情から憎しみへと感情を変換させる事で戦意や殺意を増幅させる「殺戮陽動プログラム」を考案。反二次元人思想を日ごろから抱いていたヴァルツは、この催眠暗示を小田原修司に施行する。しかし小田原修司は二次元人にだけでなく、命そのものを愛する傾向だった事が後に判明、結果小田原修司への殺戮陽動プログラムは人命そのものを中心に攻撃する習性を持ってしまったが為に0エリアは壊滅。この結果に全責任を押し付けられたヴァルツは、己の記憶を全てプログラムデータへと変換され、同時に肉体を改造され、永遠の時という牢獄に封じ込められてしまった。しかしヴァルツはこの環境から、外部へと接触を何度も行い、自らが考案した殺戮陽動プログラムの研究と忌み嫌う二次元人の根絶の為に活動していた。
語られるは、このヴァルツが初めて聖龍隊の前へ堂々と姿を示した混沌の争い。
小田原修司が聖龍隊総長を抜けて四ヶ月、バーンズが総長に就任したばかりの時期。
ヴァルツは己が生み出した殺戮陽動プログラムに見合う人材を見繕う為に、折合を見てCLAMPキャラの世界を混然とさせる。
同じ世界観でヴァルツの策略に嵌り、互いに争い合ってしまうCLAMPキャラたち。だが、そんなキャラたちの闘争を止めるべく混沌とする現状の前に現れたるは、魔術師として名高いクロウ・リード。
クロウ・リードは多くのCLAMPワールドの中心にいる高等な存在であり、まさしく多くのCLAMPワールドの世界観に不可欠な存在だった。
だが、このクロウ・リードの登場にヴァルツは目を付けた。ヴァルツはクロウ・リードを新たな殺戮陽動プログラムの被験者にするべく、彼を、そして多くのCLAMPキャラ達を追い詰める。
その結果、クロウ・リードは同じCLAMPキャラ達を守るべく、自らヴァルツの手中に嵌りその命を自ら散らした。
クロウ・リードを失い、悲しみに暮れるもの、途方に暮れるもの、そして彼を救えなかった絶望感にCLAMPキャラ達は打ちひしがれる。
この戦いに巻き込まれた聖龍隊総長メタルバードは、クロウ・リードの仇を討つべくヴァルツに向けてCLAMPキャラ達を一致団結させて戦いを挑む。
しかしヴァルツの方もただ黙っている訳ではなかった。死亡してしまったクロウ・リードに催眠暗示を植え付けられない代わりに、彼の肉体から新たな生命体を生み出して、その生命体に殺戮陽動プログラムを組み込もうと画策する。
この計画を知ったメタルバードたちはヴァルツの本拠地を逸早く襲撃し、クロウ・リードの残骸から生み出した生命体に殺戮陽動プログラムが組み込まれる寸前でヴァルツの経過を阻止する。
しかし既に生まれてしまった、その生命体はクロウ・リードの強大な魔力とあの小田原修司の遺伝子を複合させた全く新しい生命体であり、ヴァルツが言うには「クロウ・リードの魔力と小田原修司の戦闘力が一つになった新しい殺戮兵器である」とのこと。
こうして生まれた新生命体、その名も小田原修司のコード―ネームであったメシアとクロウ・リードの名から取った「メシア・リード」
本来メシアは「救世主」という意味であるが、殺戮陽動プログラムの暴走により0エリアを壊滅させた小田原修司の惨劇から「破滅の神」を意味する言葉としてヴァルツは受け取っていた。すなわちメシア・リードとは「破滅のリード」という意味を持っているのだ。
破滅のリード、メシア・リードとの戦闘は熾烈を極めた。
究極の魔力を誇るクロウ・リードの魔術と、小田原修司の強烈な武術が組み合わさり、メタルバードもCLAMPキャラ達は苦戦を強いられる。
赤い瞳、漆黒のフード、そして異様なまでに小田原修司と酷似した容姿からは、クロウ・リードと小田原修司二人の脅威が感じられた。
しかし究極の破滅を前に、満身創痍になるCLAMPキャラ達を背に、誰よりも戦前で戦うメタルバードは己とメシア・リードとの戦力の差を噛み締めながらも決意を固める。
「修司の力は……破滅の力だけじゃない! オレたち友の……己が友の信じる未来を護るための力なんだ!」
小田原修司の力を破滅としか捉えていないヴァルツに向かい、メタルバードは力強く吼えた。メシア・リードの背後で操るだけに徹するヴァルツはほくそ笑むばかりだったが、このメタルバードの咆哮に満身創痍で倒れる多くのCLAMPキャラ達を奮い立たせた。
クロウ・リードの仇を討つ為だけではない、小田原修司の力が破滅を誘うだけのものではないと己が信念を貫くためにもCLAMPキャラ達は再起してメシア・リード打倒へと突き進む。
二人のさくらと二人のシャオラン【ツバサクロニクル】と【カードキャプター】というパラレルワールドの両者の攻撃が鋭くメシア・リードを貫く。
更に愛するクロウ・リードの仇を討とうとする壱原侑子と、その侑子に恋する四月一日の容赦のない連撃がメシア・リードを襲う。
そして魔法騎士の三人が強力な合体魔法を繰り出した直後、メタルバードがトドメの連撃をメシア・リードに打ち込んでこれを突破。
労力の末に作り出したメシア・リードを倒され、逆に追い詰められてしまうヴァルツ。
だがヴァルツは最後の秘策として用意していた罠で、メタルバードとCLAMPキャラ達を捕らえてしまう。この罠に捕らえられてしまった事で、メタルバードを含む多くの能力者が力を封じられ、変身も解除されてしまった事からメタルバードもバーンズへと戻ってしまう。
危うく一同がヴァルツによって命を奪われそうになった、その瞬間。一筋の閃光がヴァルツを攻撃し、メタルバードたちへの攻撃を阻止した。
「なに奴!」と、ヴァルツが振り返ると、そこには先ほどメタルバードとCLAMPキャラ達によって倒された筈のメシア・リードが立ち上がってはヴァルツに向けて攻撃を仕掛けたのだ。
なぜ意識を失っていたメシア・リードが立ち上がったのか、メシア・リードを倒したバーンズ達もメシア・リードを創り出したヴァルツも俄然としない中、ヴァルツを止めたメシア・リードの傍らに、薄らとだがヴァルツによって命を奪われたクロウ・リードの姿が見受けられた。クロウ・リードは自我のないまま創られたメシア・リードに心という自我を与えて共にヴァルツを止めたのだった。
この瞬間を狙い、バーンズはヴァルツが用意した罠を自力で打ち破り、仲間と共に再び変身してヴァルツを攻撃しようとしたが、ヴァルツは逸早く何処かへと逃げ去ってしまった。
こうして不思議な縁からメシア・リードとクロウ・リードの魂により窮地を助けられたバーンズ達。
そして彼らが魂だけと化してしまったクロウ・リードと別れを惜しんでいた、その最中、生まれて初めて自我を持ったメシア・リードが言葉を喋った。
「……オレにも、コンナふうニ温カク迎え入れてクレル場所がアルダロウカ……」
自我を持った事で、己の居場所を求めるようになったメシア・リードに木之元桜が目前まで歩み寄ると優しく説き掛けた。
「大丈夫。誰でも、どこか自分の居るべき場所がある筈だよ……私たちの様に」
木之元桜の言葉に、メシア・リードはきょとんとした顔でバーンズ達の方を向いた。すると彼もCLAMPキャラ達も、木之元桜と同じく笑顔を自分に向けていたのだ。
先ほどまで死闘を繰り広げていたにも関わらず、自分を許してくれるだけでなく居場所も何処かにあると優しく説いてくれるキャラたちの言葉にメシア・リードは自然と心が温かくなった。
そしてさくらや多くのCLAMPキャラ達の言葉を聞いて、魂だけとなったクロウ・リードは自分のクローンにも近いメシア・リードの肩にそっと手を置くと皆に語り出した。
「彼の居場所……この私も一緒になって探してあげますよ。同じ魔力を持つ者同士……そして何より、このまま彼を、メシアを一人にはさせられませんもの」
自分の居場所を探す旅路に同行してくれると語ってくれるクロウ・リードの言葉にメシア・リードは再び心に初めての感情を灯す。
すると心と心が共感したのか、メシア・リードとクロウ・リードの魂が共鳴し、強大な魔法が発動。それぞれが居るべき世界へとバーンズやCLAMPキャラ達を帰していく。
そんな中、クロウ・リードの魂はメシア・リードと共に次元の旅へと赴き、メシア・リードの居場所を探す旅路へと着いた。
そして強烈な光に包まれ、各々がそれぞれ自分が本来いるべき世界へと返還された直後、バーンズはそっと瞼を開いた。
瞼を開いてみると、そこは固い岩盤の上に木の根が張り巡らされた森の中だった。辺りを見渡してみると、バーンズの周りには木之元桜と李・小狼、そして魔法騎士の獅堂光/龍咲海/鳳凰寺風の五人の姿が見受けられた。
そう、彼らは元いた世界へと帰ってこられたのだ。
バーンズは木漏れ日が照らす眩しい日差しを見詰めながら(……帰ってこられたか。ありがとう、そして頑張れよ……メシアとクロウ、二人のリード……)と、メシア・リードとクロウ・リード二人の健闘と感謝を想った。
だが、実はこれには後日談が。
「……って、ここはどこーーーー……ッ!!」
バーンズ達が不運にも戻ってきたのは、なんと富士の樹海のど真ん中だったのである。
幸運だったのは、メタルバードに変身すればGPSを起動させて居場所を特定してもらえる事であった。
早速変身してGPSを起動させた一同は、聖龍隊本部から迎えのヘリで無事にアニメタウンへと帰れる事が叶った。
「うわあああんっ、もうダメかと思ったよーー」
涙目で迎えのヘリに搭乗できたバーンズ達を見て、心配して同行してきたウッズから言われた。
「今はGPSがあって良かったですね。下手したら樹海の中で白骨化してましたよ、皆さん」
……実際、富士の樹海には今でも多数の白骨化死体が見付かっているという。
[明日には……]
――――バーンズよりヴァルツとの死闘を聞かされた大将たち赤塚組とシバ・カァチェン、そして二次元人達は蒼然となった。
「お、おいおい……あのクロウ・リードってかなりの魔力の持ち主だよな? そんな奴を平然と殺っちゃって挙句の果てには実験体にしちまうなんて……」
「で、でも。最後には、そのメシア・リードも救われて良かった様な、良くない様な……」
「まあ、クロウ・リードはCLAMPワールドの中心的人物だったからな。そこをヴァルツに目を付けられたんだろうよ」
蒼然とした面持ちで語り合う大将と同じCLAMPキャラの山崎千春の言葉に、バーンズは自分なりの解釈を述べる。
強大な魔力を持っていたクロウ・リードを罠とはいえ絶命させ、その奪った魔力を余す事無く使い切って創り出した生命体メシア・リードとの激戦を聞いて愕然となる一同。
と、その時。
皆が語り合っていた一室の扉が開いて、中から養生していた加賀美あつこが顔を出してきた。
「ううっ……み、みんな……」
「あ、アッコ!」
「アッコ、大丈夫か?」
ちょっと蒼褪めた表情を出してきたアッコにバーンズと大将が気を留める。
するとアッコは頭を片手で押さえながら答えた。
「ええ、何とかね……ちょっと久々に本気になっちゃったから、気疲れで頭が痛い……」
軽い頭痛を訴えるアッコの返答に、赤塚組幹部のミズキが率先して歩み寄って声をかける。
「それはいけないわ。もう少し横になってなさい。明日にはジャッジ・ザ・シティに着ける筈だから……」
「あ、ありがとうございます。ミズキさん……」
ミズキの気遣いにミラーガールことアッコも素直に礼を述べて、彼女共々部屋へと戻っていった。
このアッコの様子を見て、バーンズも締め括ろうとした。
「さて、アッコもまだまだ戦闘での疲れが残っているみたいだし……オレ達も明日に備えて寝るとしようぜ、すっかり日も暮れた。まだ何か今日オレが話した事について知りたい事があったら遠慮なく聞いてくれよな」
「………………………………………………………………」
「……そんじゃ、オレ様もジャッジ・ザ・シティ寄港に向けて準備しなきゃならない事が多々あるからこれで。大将、後の事は任せた。カァチェンもゆっくり養生しておけよ」
「ああ、分かったぜバーンズ」
「承知しました、バーンズ……」
二次元人達が未だバーンズが語ってくれた昔話を聞いて愕然とする中、彼は二次元人達の世話を大将に願い出て、カァチェンには養生するよう言伝すると、そそくさと立ち去ってしまった。
残された二次元人たちは未だに心中に溜まる愕然さが消え失せる事はなかった。
――――場所は変わり、ここはどこかの基地。
巨大モニターに映し出される上空から撮影した赤塚組領地での戦闘の様子を眺める三人の影が。
その映像の中には、縦横無尽に暴れ回る軍勢の中で的確に敵を排除していくミラーガールの勇姿もしっかりと撮影されていた。
「……やはり凄いですね、彼女の能力は……」
蒼い髪の赤い瞳の少年が呟くと、同席している熟年女性が煌びやかなドレスを纏ったまま語り出す。
「なるほどな、加賀美あつこ……まさしく我ら二次元人の始祖と言われるだけの事はある」
するとそんな二人よりも大きな体格をしている男も語り出した。
「加賀美あつこ……いいや、ミラーガールの変身能力こそ、我ら新世代型の未来を切り開く最強の手段なのだ! 何としてでも彼女の、聖女のコンパクトを手に入れねば……!」
「そのために、わざわざ僕を……いいや、僕たちを脱獄させた訳ですか? ……まったく、何処まで抜かりのない方だ」
「ふふふ、お世辞かね? ……セレディ閣下殿?」
少年と男が語り合っているのを、傍らで傍観していた女性に少年がふと話し掛ける。
「……それにしても。まさか貴女のように僕ら
「ふふ、あんなもの……最早どうでも良い。我らの……我々、新世代型二次元人の未来の方が今の地位より何倍もの興味がある」
そういう少年と語り合う淑女の真後ろには、二人の人影の姿が確認された。
そして颯爽と男が立ち上がると、その場の皆々に向けて言い放った。
「諸君、計画はもうスグだ! 我々、二次元人の不毛の時代に終焉が訪れようぞ! 今こそ……今こそ! 決起の時!」
男が立ち上がると、映像が照射されてた大部屋が一転し、電灯が灯った。
すると其処には多くの二次元人達の姿が。
そして男は三メートル級の、全身に血を浴びたかのような真紅の軍服を纏っているのが伺える。
真紅の軍服を着衣する異様な大男の号令の下、多数の二次元人達も活気づく。
「イエス! ハイル、キャップ・ド・レッド!」
数多の二次元人達は男に向かって合唱する。
彼らは何を目論んでいるのか?
それはまた別のお話で…………
[今回のアレンジキャラ]
メカルス
革命軍士総司令官。
元は政府が小田原修司の
「俺が偽物である事は認めよう……だが、偽物が本物を超えてはならないという決まりは誰が作った?」
[元ネタ:ロックマンⅩのシグマ]
Dr.ヴァルツ。
軍事政権の中枢にまで入り込むことができた、人格を改造する催眠暗示を考案したマッドサイエンティストの心理学者。彼の祖父は、かつて若かりしアドルフ・ヒトラ―の弱輩していた精神に催眠術による強化暗示をかけた事で知られている。ヴァルツも祖父の代から培ってきた催眠暗示を得意とし、戦意のない兵士に強引に戦闘本能を呼び起こさせて戦闘をさせる術を会得。 遂には愛情から憎しみへと感情を変換させる事で戦意や殺意を増幅させる「殺戮陽動プログラム」を考案。反二次元人思想を日ごろから抱いていたヴァルツは、この催眠暗示を小田原修司に施行する。しかし小田原修司は二次元人にだけでなく、命そのものを愛する傾向だった事が後に判明、結果小田原修司への殺戮陽動プログラムは人命そのものを中心に攻撃する習性を持ってしまったが為に0エリアは壊滅。この結果に全責任を押し付けられたヴァルツは、己の記憶を全てプログラムデータへと変換され、同時に肉体を改造され、永遠の時という牢獄に封じ込められてしまった。しかしヴァルツはこの環境から、外部へと接触を何度も行い、自らが考案した殺戮陽動プログラムの研究と忌み嫌う二次元人の根絶の為に活動していた。
[元ネタ:ロックマンシリーズのドクターワイリー&ドクターバイル]
メシア・リード
小田原修司の遺伝子とクロウ・リードの魔力を複合させて創り出された人工生命体。激戦の末、最後は自らの居場所を求めて魂だけとなったクロウ・リードと共に次元の旅へと赴く。