現政奉還記 武将達との会合編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 異常者の暴徒達によって奪われてしまったモンゴル軍の戦前主力基地。その基地を留守とし、敵に隙を見せてしまったモンゴル軍国将軍代理シン・ユキジに猿飛佐助は叱咤の一打を頬に直撃させる。
 そして基地内に蔓延る暴徒達の殲滅が開始されたのだが、その際の佐助の殺戮は目を覆いたくなるほどの血の海が広がっていた。しかも基地を占拠する暴徒達を扇動するのは、なんと今では地に堕ちた名士の一族で新世代型の三枝葉留佳と二木佳奈多の異父姉妹にとって因縁深い三枝一族であった。
 この三枝一族の暴挙に猿飛佐助も実力の真価を発揮し、全ての暴徒を鎮圧・全滅させてみせた。
 その後、シン・ユキジは占拠されてしまった事態に至ってしまった事を心から謝罪してみせ、更に佐助からは現情勢が如何に動いているのかを説明される。
 その晩、眠りに着けない新世代型たちは一人で淡々と修練に明け暮れるユキジと遭遇。そこに赤塚組や聖龍隊も登場し、ユキジは、心中の夢を皆に語り明かす。水底の焔たる己が、無我夢中で這い上がり続けようとも、水中から逃れられないという白昼夢を。
 このユキジの迷走を聞いたバーンズは、彼の迷いを少しでも断つために、そして新世代型との共生を願って纏流子と鬼龍院皐月と栗山未来の三人とシン・ユキジの三対一での修練を申し開く。最初は戸惑う四人であったが、一度戦いが始まると誰もが息をのむ熱い戦いへと発展。ユキジもこの戦いで心中の迷いを少しばかし打ち消す事が出来た。
 その明日、一行はアニメタウンに帰省する為、まずは北朝鮮を経由して韓国へと出立した。
 果たして、北朝鮮や韓国で彼らが出会う次なる騒動とは?


現政奉還記 アジア紀行編 朝鮮半島を越えて

[開放された国]

 

 モンゴルを発って数日、聖龍隊は軍用車だけでなくモンゴル軍から借りた軍馬も用いて荷物を運んだり乗馬して移動したりなどして北の国を目指していた。

「……それにしても、なんで軍馬なんか借りたんすか?」

 新世代型の真鍋義久が訊ねると、先頭を行く軍馬に乗馬するバーンズが真鍋の質問に答える。

「二年前の乱世で世界情勢が悪化しちまった為に原油が高騰しちまってな。そんな中で軍用車の燃料、ガソリン切れが相次いで聖龍隊だけでなく各国の軍用車に発生してエンストする事態が発生してしまったんだ。そこで各国は、ガソリンを必要としない軍用馬を急きょ戦場に駆り立てて戦闘や移動に活用したって訳よ。おれ達のところも今、ガソリンが給油しきれてないからモンゴル軍から軍馬を借りている訳なのよ。あそこの軍馬はスタミナが凄まじいからな」

 バーンズの返答に真鍋たち新世代型たちは納得する。確かに世界情勢が混沌の一途を辿る現状では原油の高騰は避けられない事態。そこで乱世の混乱ではガソリンを必要としない軍馬が活用される事態に至った訳なのである。

 一行はそれからも軍馬と軍用車を活用して、中国を経由して北の国の国境を目指す。

「そういえば、さくらさん。婚約者の小狼さんとはどうしているんですか?」

 ふと新世代型の月影ちありが聖龍HEADの木之元桜に、婚約者で中国人の李・小狼とはどうしているのか訊ねると、さくらは笑顔で返答した。

「っ! 小狼くんなら今、香港で地元の治安維持に駆り出されている筈だよ? まあ、アニメタウンで軍備を整えてから、またアジア大陸に返ってきた所で合流するって話は聞いているけど」

 婚約者の小狼は現在、出身地である香港の治安維持に活動しており、聖龍隊本隊がアニメタウンで軍備を整えた後に再びアジア大陸に返ってきた際に合流する事をちあり達に伝える。

 

 そして一行は北朝鮮の国境へと差し掛かった。

 

 かつて北朝鮮からの脅威がアニメタウンつまりは二次元界に迫り来ている事を小田原修司は国連を初めとする機関に呼びかけた。しかし国連も、どの国家機関も動こうとはしなった。

 どの国も、幾度と無く核実験を繰り返し行い、着々と核武装を準備している北朝鮮を挑発したくなかったのだ。これによりアニメタウンは孤立してしまう。

 しかし小田原修司は、この状況を逆に好機と捉えた。日本を始め、どの国も手を焼いている独裁国家をアニメタウンが、聖龍隊が独自に侵攻してはその国を解放へと導けば国際的に組織の権限を認められる筈であると確信したのだ。

 そしてその目論見通り、当時のスター・コマンドーの活躍によって北朝鮮の独裁体制を壊滅させ、政権を崩壊させた聖龍隊は国際的にも高く評価され、アニメタウンも独立国家として認知された訳なのである。

 かつては固く閉ざされた国境のゲートだったが、そこに配属されている係員にバーンズが軽く挨拶をかけると。

「よっ、元気でやってるか」

「こっ、これはバーンズ殿! 如何なさいましたか!?」

 係員はバーンズに敬礼の構えをとると、バーンズに問い返す。これにバーンズは飄々と言った。

「なあに、ちょいとお宅らの国を通って韓国まで向かいたい訳なのよ。同時に国がどうなっているか見てみたいと思ってな。ゲートを開けてくれないか、なんせ大勢が通過するからよ」

「しょっ、承知しました!」

 北朝鮮を経由して韓国まで多勢で向かいたいと伝えるバーンズの言葉に、係員は慌てながらも同意してゲートを開いた。

 左右のプラスチック板が上に開閉し、行く手を阻むゲートが開平されたのを目視したバーンズは後方の皆々に告げる。

「よしっ、出発」

 バーンズが後方に声をかけると、止まってた行進が再び進み出し、バーンズを先頭とする行列が再発進。その傍らを先ほど国境警備員が敬礼のポージングで温かく出迎える。

 朝鮮半島の北側から入国した一行は、そのまま北朝鮮国内へと進行。

 かつて独裁体制による軍事政権によって、圧制を布かれてた北の国であったが魔鳥の軍旗を掲げて進行する聖龍隊の行進に村々の人々はただただ頭を深々と下げ、畏まって謝儀を示し挙げ奉る。

 道行く人々の一礼の数々に、聖龍隊は本当に今では北朝鮮の村民から苦しい生活を救済された事実を心の底から感謝している現状を新世代型二次元人達は目の当たりにした。

 その時、道行く田園を指して聖龍隊のサポート支部を統括しているアニメタウンの市長たるウッズが新世代型たちに教えた。

「ここら辺は一帯、昔は全部大麻畑だったんですよ。国が収益を得る為に、村民に大麻の栽培を強要していたんですから驚きですよね」

 この発言に新世代型たちは一驚した。かつて北朝鮮は国益での収入を見越して、国絡みで大麻の栽培を事業として起こしており、聖龍隊の解放政権に至るまで村民は大麻の栽培を強要されていたのだった。もちろん大麻から精製された麻薬は高価な代物として売買され、国内では一部の人間にしか入手できず、その他の多くは国外で多額の値段で取引され続けていたといわれている。

 そんな大麻畑であった田園を通り抜け、聖龍隊の行列は先を進む。

 

 独裁体制から解放された人々のエネルギーは凄まじく、北朝鮮はこの10年で予想だにしない発展を遂げていた。

 すると進行する皆の目の前に大きくて派手な色立ちの建物が目に付いた。その建物には子供が笑顔で遊び回っている絵柄が描かれており、その建物を観続けていた新世代型二次元人達に赤塚組の大将が自慢げに話してやった。

「ここは俺らが建てた孤児院さ! おめえらも教科書で知っている通り、北朝鮮にはかなりの数の孤児がふらついてたんだが、独裁体制が崩壊した後には更にその数が増えちまったんだな。でも二年前、俺達が北朝鮮に孤児院を此処だけでなく山ほど増設したりして、孤児の居場所を造ってやったって訳よ」

 独裁体制の頃から放浪してた孤児達だったが、政権崩壊後に一気にその数を膨張させ、倍増してしまった後。今から二年前に赤塚組によって孤児院などの施設や民家をほぼ無償で建築した事で今では孤児の数は激減したと伝えられ、新世代型二次元人達は「おおっ」と驚くばかりであった。

 大麻栽培に続いて孤児院などの建築物の増設を施行した聖龍隊と赤塚組。彼らの活躍を聞かされる中、新世代型二次元人達は一つの疑問を脳裏に生じた。

「そういえば、例の将軍様が北朝鮮を治めていた頃から、政権の上層部の人々は贅の限りを尽くした生活を送っていたと聞いていますが、今はどうしているんですか?」

 星原ヒカルからの質問にバーンズは思い詰めた表情で語り始めた。

「政権のトップだった連中か………………アイツらは今は何処で何をしているか見当もつかない」

「! それはまた、どうして……」

 独裁体制を維持していた政権の上層部の人間の所在が不明であると聞いて、瀬名アラタが切羽詰まった表情でバーンズに問い詰めるとこれにも彼は語ってくれた。

「俺たち聖龍隊が北朝鮮に侵攻した事によって、それまでの政権を維持してきた役人連中が慌てて国外に逃亡したんだよ。将軍様とその側近たちの罪状を自分達まで背負わされたくないって理由でな。そして放置された奴らの財産は国連が押収して、今の北朝鮮の復興に使われたって訳さ」

 政権の上層部にいた上級階級の人間は、聖龍隊が北朝鮮に侵攻したのと同時に母国を放棄して国外へと逃亡。その際、放棄された財産を国連が押収した事によって、その財産で北朝鮮の復興に使われたのだという。

 それにしても自分達の母国を平然と放棄して、貧困の差が激しかった格差社会の上下が入れ替わった当時の現状に新世代型二次元人達は呆れてしまった。

 どちらにしろ政権崩壊後に裕福だった上層部の人間の蒸発で財産はそのまま国連に押収されて北朝鮮の復興に使われ、その逆に貧しかった農民や国民が豊かな生活を得られる様になった正に貧富の逆転が北の国で展開されていたのだ。

「そ、それにしても……日本のコンビニエンスストアなんかも至る所に増設されてますし、都市としても発展してますなあ」

「それだけ……犠牲が多かったわけよ」「!」

 平壌の都市を突き進んでいる際、日本のコンビニ店舗も目立ってきた現状に新世代型の猿田学が発展途上である実情を告げると、それにメタルバードが影を落とした面差しで衝撃的な発言を口にする。

 

 拉致、麻薬、核実験など全ての問題が解消され、国連の所有地として平穏な国に変貌を遂げた北朝鮮。

 国民も権力にすがっていた者は国を追われ、貧しかった農村の民はそれまでの大麻栽培から手を退き、ごく普通の農民として平凡な生活を送れるように至った訳である。

 だが此処で新世代型二次元人達は一つの事実を思い出した。

「……北朝鮮が此処まで平和になったのも、全部順一さん達が頑張ってくれたから成し遂げられた訳なんだよね」

 この田所恵の言葉に、他の新世代型二次元人達は胸に衝撃を覚えた。

 

 独裁政権から解放された北の国を実際に開放に導いた村田順一率いる聖龍隊総合部隊スター・コマンドーは今や過去の在席であると、新世代型たちは複雑な心境を抱いていた。

 

 

 

[韓国入国と正義の武将]

 

 そうこうしている内に、一行は北朝鮮から入国同様に出国もほとんど顔パスで済ます事ができ、全員が無事に韓国へと入国する事が出来た。

 個々の新世代型二次元人達は長旅に疲れの色が見えていたのが明らかであったが、そんな一般の二次元人とは違い聖龍隊の隊士である新人のSAOとAWとマギカの三組も疲労困憊の状態らしかった。

「お前ら、もう少し体力つけろ。今後どうなるか俺らにも分からないんだから、鍛えるところで鍛えておかねぇと」

「そ、そうは言ってもですね……一本道で北朝鮮を通過して韓国に入国するのも、かなりの距離で大変でしたよ。総長たちは乗馬しているから楽で良いし」

 自分達は自力で一本道の北の国の道を通過して韓国に入国したから疲労困憊であると新人の一人キリトは答え返す。

 

 一方、韓国の様子は治安を維持している韓国軍によって悪化しておらず、現政奉還の前の時と同じ日常が流れていた。

「相変わらず平和だな、韓国は」

「それもこれも、チョウセイさんが頑張っている証拠だよ。新婚なのに仕事もしっかりしているし」

 平和な日常を過ごしている韓国の現状を目の当たりにして、バーンズとジュニアは国将軍のチョウセイがしっかりと仕事を熟していると称賛する。

 慰安婦問題もチョウセイの韓国内でのアイドル的な扱いから、彼の言動と訴えで静まり返った。

 尖閣諸島については、問題になっていた三つの島々は全て国連が押収し、今では三つの島は全て完全武装された連邦刑務所に改造されているため国家間の領土問題は解消されているのだ。

 こうして日本だけでなくアニメタウンや周辺国とも調和を深めた韓国。するとその時、韓国に入国してきた一行の前に突如として軍隊が現れ、目の前に立ちはだかった。

「な、何なの何なの!?」「あの旗……韓国の国旗と同じだ」

 突如として出現した軍隊の登場に驚きを隠せない新世代型の一条蛍や大宮忍。見上げてみると軍隊が掲げる軍旗は白地の中央に置かれた赤と青の2色からなる「陰陽」で「太極」を表し、その周囲四隅に「卦」が配置されたデザインの韓国の国旗と同じであった。

 その軍隊が突如として速急に配列し、配列が終わった途端、最後部から一人の男性が激しく体を回転させながら最前線に登場し格好良くポーズをとる。

「一つ! この世に正義が消えた試し無し!」

「…………………………」

 突然の登場に加え、戦隊モノの様に一人で決め台詞を言い始めた男性に新世代型達は唖然と言葉を失くし、男性と顔見知りの聖龍隊と赤塚組は顔を赤らめていた。

「二つ、この世に悪が栄えた試し無し! 三つ、人の自由が奪われる未来はまさしく悪! 四つ、差別無き世の中こそ正義の世界に他ならず! そして五つ! 結束こそ、最大最強の正義なり!!」

 男性は携えた剣を煌めかせるとまたしても格好良くポージングをとって名乗り挙げる。

「無言即殺! 悪と無駄口、削除なり! このサイ・チョウセイ、悪には容赦せぬ!」

 皆の目の前に威勢よく現れたこの男性は、韓国の治安維持と武力維持に力を注ぐ国将軍。名をサイ・チョウセイと申し渡す。

 サイ・チョウセイの登場に唖然とする新世代型たちを尻目に、颯爽と参上したつもりのサイ・チョウセイは早々にバーンズに駆け寄り話し掛ける。

「おおっ、これはバーンズ殿! お久しぶりでございまする」

「や、やあチョウセイ、久しぶりだなあ。はは……」

 元気よく声をかけるチョウセイに反して、バーンズは先ほどからのチョウセイの登場の仕方に苦笑いしていた。

「これはこれはウッズ殿! アニメタウンを治める貴方までも駆け付けているとは……事態は深刻と見ました」

「いえいえ、もうすぐ解決できる予定なのでご心配なく。彼らを移送すれば全てが万事解決です」

 ウッズは新世代型達をアニメタウンに護送すれば万事解決するとチョウセイに言い伝える。

 こうしてチョウセイは主に聖龍HEADのメンバーと対話するが、最後のミラーガールになった時に大いに喜々としながら話し出した。

「おおっ、これは姉者! 誠にお久しぶりでございまする。まさか寄りにも寄って姉者を最後に挨拶を回してしまうとは……このチョウセイ、恥ずかしい限りです」

「そ、そんなに改まらなくても良いのよチョウセイ……」

 まだ籍を入れてもいないのに婚約しているだけで自身を義姉の意味を持つ姉者と慕うチョウセイが跪いて詫びる展開に、流石のミラーガールも戸惑ってしまう。

 するとチョウセイは見掛けない聖龍隊の新人達を発見して彼らに言葉をかける。

「ッ! 其方たちは見掛けぬ顔だが…………聖龍隊の新人なの、か?」

 チョウセイから質問された面々は答え返した。

「そ、そうです。俺はキリトって言います。他にもアスナにリーファが……」

 するとキリトに続いてスーツ姿のシルバー・クロウもチョウセイに名乗った。

「シルバー・クロウにブラック・ロータスです。宜しく……」

 更に鹿目まどか達も各々チョウセイに挨拶を交わし始める。

「初めまして、チョウセイさん……」

 聖龍隊の新人達から挨拶を受け取ったチョウセイは、先ほどと同じ言動で本人的には格好良く語り返し始めた。

「成程! 貴殿らも兄者が結成した聖龍隊で日夜、悪を滅ぼす為に奮闘する正義の使者なのだな! 私も貴殿らと同様、この世の悪を成敗する為に剣を振るっている……共にこの世の正義の為に精進しようではないか! ははッ」

 気高くこの世の悪を成敗する戦いを執行しようと宣言するチョウセイの台詞に、新人達は少しながら恥ずかしく感じていた。

 チョウセイが聖龍隊の新人達と挨拶を交わすと、次に彼が目を付けたのは例の新世代型二次元人達であった。

「ムッ! 貴様らか、いつか我々三次元人に……いいや! 正義に背き、人々を力で支配しようとしていた新世代型の末裔は!」

 チョウセイは初期の新世代型二次元人達が翻した反旗について語っていると、それに大門ジョセフィーヌが困りながら返答した。

「だ、だから違うって! 私達は、そんな初期型みたいに悪い事なんかしないって」

 しかしオネエ口調で弁論するジョセフィーヌに対し、チョウセイは毅然とした面構えで反論する。

「黙れ! 調べはついているのだぞ、邪悪なる者め。貴公は世界を偽りの平和に落胆させるために、一人の学者の人命を蔑ろにしたではないか! たった一人の人命すら危うくさせるとは、まさしく悪以外の何者でもない!」

「!! …………」

 かつて美都玲奈の父親である学者の人命と引き換えにLBXの学園を開校したのを指摘されたジョセフィーヌは反論する術を失ってしまう。

 更にチョウセイは他の新世代型二次元人達についても『悪』呼ばわりし始める。

「オマケに確か……森谷ヒヨリ、四宮小次郎、そして速水ヒロの三名! 貴様らの過去の悪行も、このサイ・チョウセイの耳には入っているぞ! 森谷ヒヨリ、貴様は腹黒く、知人に其処の真鍋義久を襲わせた凶悪至極の存在! 四宮小次郎、貴殿は弱者なら容易く蹴落としても良かったと思っていた卑劣なる悪! そして速水ヒロ、貴様はいくら脅されていたとはいえ他人の作品を盗み自作したように見せかけ続けていたとは、卑怯極まりない! この場にて成敗してくれる! 無言、即さ……」

「待った待った待った! チョウセイ落ち着けって。コイツらはちゃんと政府がブラック・リストに載せて罪を成敗してくれているから、わざわざお前がこいつ等を成敗する必要はないんだって」

 三人を正義の名の下、成敗しようと剣を振り翳そうとしたチョウセイをバーンズが必死になって宥める。一方、これを目前とした三人は愕然と身を震わせていた。何故ならチョウセイは本気で彼らを断頭しようとしていたからだ。

 するとこの一方的なチョウセイの正義に、神衣ではなく普段着の極制服に着直している鬼龍院皐月が物申した。

「貴殿! 確かにこの者らの過去の所業は目に余るものであるのは、この鬼龍院皐月も同意見である! しかし既に償っている罪科を今さら掘り返してどうする!?」

「むむッ、言われてみれば、確かにそうだが……」

 強くも端正で丁寧な言動の皐月に指摘され、チョウセイも反論しづらい様子であった。まあ、彼女が露出度の高い神衣を着ている状態なら逆に露出という悪と言われてしまうであろうと聖龍隊は密かに思っていた。

 だが此処で問題が発生。鬼龍院皐月に続いて一人の青年もチョウセイに三人を厳しくしないよう言おうとしてしまった。

「そ、そうだぜチョウセイの兄ちゃん。この三人はもう十分、反省している訳だし、これ以上厳しく当て付けしないでくれよ……」

「ムム! 貴様のその面構え、まさしく凶悪極まりない顔立ち! まさしく悪そのものだ!」

 なんと三人を庇おうとした燃堂力の凶悪極まりない面構えを見た途端、チョウセイは顔色を変えて燃堂を凶悪人扱いし出した。

 と、そこにバーンズが再び間に入ってチョウセイを宥めに入る。

「チョウセイ、チョウセイ。前から言っているが、見た目で善悪決め付けるんじゃないっての」

 そんな正義正義と口出しするチョウセイに、新世代型の中にも嫌気が募ってきた者が現れ始めた。

「まったく、ニャにを言うかと思えば……正義正義って。韓国の将軍が此処まで正義バカだったなんて初めて知ったにゃ」

「ば、馬鹿! それこそ言っちゃいけない……!」

 新世代型の森園わかなが思わず発してしまった正義バカという言葉にウェルズが慌てて制止するが、時既に遅かった。

「な、なんと! 正義を愚弄する気か……! やはり新世代型め、逆賊以外の何者でもない!」

 そして有ろう事かサイ・チョウセイは正義を愚弄した発言をした森園わかなに向かってきた。

「無言、即殺! 正義はここにありッ!!」

 紅い閃光を纏った剣を携えて、チョウセイはわかなに刃を突き立てようと突進してきた。それを庇うかのように森園わかなの前にウェルズが飛び出した。

 だが次の瞬間、チョウセイが翳す剣の一突きを受け止めた者が、森園わかなとウェルズの前に一瞬で現れた。それは魔鏡による盾で突撃を防御したミラーガールであった。

「チョウセイ、ここは私の顔に免じて一先ず剣を下ろして。彼女に代わって私が謝るから……お願い」

 ミラーガールは懸命にチョウセイの剣での突撃を抑えながら彼を宥める。この一進一退の攻防の交わりを経て、チョウセイは観念した。

「ッ…………ふぅ、仕方がない。ここは姉者の顔を立てる事にしましょう。おい、そこの少女よ! 真の宝である正義を愚弄する事は、二度とあってはならぬぞ! 良いなッ」

 チョウセイは義姉になる予定のミラーガールの訴えに耳を傾け、正義を愚弄したと認識した森園わかなに対して二度と同じ過ちは繰り返すなと釘を刺して剣を収めた。

 

 一時の混乱があったものの、チョウセイ率いる韓国軍は快く聖龍隊率いる一行を迎え入れた。

「では姉者、そして聖龍隊の方々。アニメタウンへの出立は明日でしたな。それまで私の屋敷にて皆々休んでくださいませ」

「あ、そうさせてもらえば此方としても助かるよ」「ありがと、チョウセイ」

 明日の出港まで自分の屋敷で休んでもらえれば幸いと自負するチョウセイの気遣いに、バーンズとミラーガールは礼を述べ、全員がチョウセイの屋敷に御呼ばれされた。

 

 

[鬼神の妹]

 

 サイ・チョウセイの豪勢な屋敷に御呼ばれされた一行は、大広間の一室を借り切って接待されていた。

 豪勢な食事が各一人一人の前に並べられ、皆が丁重にもてなされていた。

「……まただよ」「ホント、身内には甘いよな、サイ家は」

 しかしサイ・チョウセイのもてなしに若干の不満を抱くジュニアとバーンズはやや呆れていた。

 何故なら誰よりも手厚く待遇されている人物で、変身を解いたミラーガールこと加賀美あつこの前には誰よりも豪勢な食事がフルコースで大盤振る舞いされていたのだ。

「ちょ、チョウセイ、流石に私だけが此処までされるのは気が引けるわ……」

 新世代型とはもちろん、聖龍隊や赤塚組とも一線を引かれた待遇をされて困惑するアッコであるが、チョウセイは毅然とした態度で申し返した。

「何を申されますか! 姉者は近い将来、我が義兄、小田原修司と婚姻する間柄! すなわち後々、サイ家の血筋に当てはまる尊い御方! 大事にせねば兄者に申し訳がありませぬ」

「そ、それはそうなんだけどね……」

 チョウセイの言う通り、アッコとチョウセイの義兄修司は互いに誓い合った間柄。故に近い将来、サイ家とは血縁者になるのは明白なのである。

 だからと言って自分だけ周囲とは別格のもてなしをされたのでは、アッコは動揺を抑えきれずに困惑するばかりである。

 無論アッコだけに非ず、サイ家の血縁者だけを誰よりも待遇するやり方に若干の不満を抱く者が後を絶たなかった。

「タクッ、いっくらアッコさんが血縁者になるとはいえオレ達と差別しやがって……こうなったらヤケ食いしてやるッ」

「な、ナツ。怒ったって仕方ないでしょ……ほら、そんなに食い散らかさない」

「私はこれでもう満足♪ さっすが韓国将軍の銘家なだけあるよ」

 アッコだけを贔屓するサイ家の接待に不満を抱くナツ・ドラニグルはややヤケ食いして鬱憤を晴らそうとするが、これにルーシィ・ハートフィリアがナツを宥める。が、その横では十分すぎる御馳走に葉月いずなが大いに喜びながらスマホで写真を撮っていた。

 するとアッコ以外の聖龍HEADと隣同士で食事していた琴浦春香が、本当にサイ家が将来の血縁者である加賀美あつこにだけ贔屓にしているのか訊ねた。

「前にも、こんな事があったんですか? 韓国将軍がアッコさんだけを贔屓に迎えていたって……」

 HEADに訊ねると、バーンズとジュニアがその時の事を語ってくれた。

「ああ、チョウセイと修司の妹の有沙の結婚式の時も同じだったな」

「そうそう、僕らだけを除け者にして、親族だけの場にアッコさんを出迎えてね」

 二人が語るには、その時の結婚式に招待された聖龍HEADの面々は正装で韓国の式場であるサイ家の敷地に赴いた訳だったが、先にミラーガールだけが招かれた箇所に続けて他のHEADが通ろうとしたらいきなり韓国軍の兵士がそれを制止した。彼らが言うには「この先は新郎新婦の御身内のみが入門を許されているのです!」と。これにメタルバードが「アッコは何で良いんだよ!?」と訊き返すと、兵士達は「加賀美あつこ殿は将来、新婦であらせられる小田原有沙様の義姉にならせられる御方。故に御入場は許可されておりますので」と。それで渋々HEADは韓国大統領や天皇家の親族を招き入れた場所まで迎え入れられ、加賀美あつこことミラーガールのみが新婦の将来の身内として特別な場所に入場を許可されて別々に祝う事となったらしい。

 

 

 そんな不満や困惑も流々する懇談会染みた食事会の最中、一人の女性の声が聞こえて来た。

「ただいま」「お、おうっ、有沙! やっと帰ってきたか」

 女性の声に逸早く反応したチョウセイは、玄関に通じる廊下に目を向ける。

 すると廊下を歩いてやって来たのは、ふくよかな体型で強気そうな顔立ちの女性であった。女性の両手には大量の紙袋が携えられていた。

「お、誰かと思えば有沙嬢じゃねぇか。どうした? また買い物三昧してたのかい?」

「あら有沙ちゃん、お久しぶり」

 帰ってきた女性に対して友好的に声をかける大将同様、笑顔で出迎えるアッコの問い掛けに女性は不機嫌な顔で払い除けた。

「ふんっ、またアンタ達? また問題を起こしたくせに御馳走になっているんじゃないわよ」

 この時の女性の顔色から、女性は二次元人に対して余り友好的ではないと新世代型達も薄々察する。

「あ、有沙……前にも言ったが、現政奉還を起こした将軍と姉者達は全くの無関係なのだ! 同じ二次元人だからといって、そこまで否定的になるな……」

「黙ってよ! 前々から何度も何度も問題ばっかり起こしてきて何が無関係だっていうのよ! まったく、修司もトンデモない連中を生かしたわよね」

「な、何だと……!」

 女性を宥めようとするチョウセイだが、逆に女性から怒鳴り返されてしまい、更に二次元人に対して異常なまでに毛嫌いする言動を示す女性の言い分に真鍋が思わず反論しようとするが、女性の一睨みで思わず竦んでしまう。

 そして言いたい鬱憤を吐き散らしたのも僅かに、女性はそのまま屋敷の奥へと姿を消していった。

「な、何なんだ、あの女……」

 二次元人に対して余り友好的ではない女性を目の当たりにして愕然とする新世代型の名瀬博臣が言葉を発すると、バーンズが重い口を開いて真実を述べた。

「彼女は有沙。チョウセイの新妻にして…………あの修司の妹さ」

「なッ!」「い、妹……鬼の……」

 女性の名が有沙であり、チョウセイの妻にして小田原修司の妹であると知った新世代型達は驚愕し、宮沢謙吾や鬼龍院皐月は目を丸くして口が閉まらずにいた。

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 食事会の後、皆々はチョウセイの屋敷が用意してくれた一室で一晩を過ごす事となった。

 この晩を凌げば、明日には港を出港して故郷であるアニメタウンに帰れる手筈なのである。

 すると就寝の準備をする新世代型二次元人の所に、あのチョウセイが訪ねてきた。

「す、済まぬ! 少し、話す時間を設けてはくれないか」

 ぎこちない口調で話の機会を設けてほしいと嘆願するチョウセイの言葉に、新世代型達はチョウセイを部屋に招き入れて彼の話に耳を傾けた。

「さ、先ほどは済まぬ、私の妻、有沙がとんだ失言を」

「全くだよ! 何だか二次元人ってだけでやけに俺らを毛嫌いしているみたいだけどよ」

 真鍋からの問い掛けにチョウセイは家内である有沙の失言の訳を新世代型達に語り明かした。

「誠に申し訳ない、有沙は昔から兄者の……小田原修司の妹という事で肩身の狭い思いをしてきた所為か、兄者はもちろん二次元人に対しても反発してしまって」

 鬼神と恐れられている小田原修司の妹として、周囲から偏見を持たれている小田原有沙は兄が贔屓にしている二次元人という種を余り快く思っていないのだという。

 するとチョウセイは何ゆえ家内の有沙が二次元人を嫌っているのか訳を語っていると、新世代型達が所持していたある物に気が付いた。

「!? おおっ、そ、それは……!」「え? こ、これですか……?」

 震える人差し指でチョウセイが指す物に三舟百合子たちは戸惑った。それは新世代型の誰もが所有していた【聖龍伝説 気高き二次元人達】の自伝本であった。

 義兄であり尊敬している聖龍隊を結成した小田原修司が執筆した自伝本にチョウセイは酷く興奮していた。

「ひょっとして、サイ将軍もこの自伝本に興味がお有りで?」

 自分達が所持している聖龍伝説の自伝本を見て興奮するチョウセイを目前にして、新世代型の室戸大智が自伝本への関心を訊ねる。

 するとサイ・チョウセイは余りに高鳴った興奮を抑えきれず、己の赴くままに熱く語り明かした。

「もちろんッ! 全部で三部作、我が兄者が二次元界アニメタウンにやってきた所から始まる[始まる伝説]、姉者であらせられるミラー・ガールこと加賀美あつこが聖龍隊に加わり聖龍隊の組織としての基盤が固まってきた[聖龍伝説二章]そして聖龍隊が二次元・三次元など全ての世界の命運を賭けた大戦の最中、戦士達や兄者の心境を記した[聖龍伝説 気高き二次元人達]の三冊だな! 私は観賞用と保存用と携帯用の三つ、合計九冊も購入した」

 このチョウセイの告白に新世代型達が騒ぎ出した。

「九冊!?」「携帯用って何スかッ?」

 新世代型の小野田坂道と鳴子章吉が問い返すと、チョウセイは当たり前のように真顔で返答した。

「む? もちろん自宅とか室内では読まない、外出時に携帯する用の本の事だが」

「マニアっすか!?」

「何を言う! マニア以前に、我が義兄が築き素晴らしき正義の軍隊、聖龍隊の結成秘話を赤裸々に綴ったこの自伝本を見逃せる訳はないだろう!」

 相も変わらない毅然とした態度で受け答えるチョウセイの返答に新世代型の真鍋義久はキレの良いツッコミを返す。が、チョウセイ自身は自らが敬って仕方が無い義兄と、その義兄が築いた聖龍隊のエピソードを綴った自伝本を見逃せないと、これまた毅然とした態度で反論した。

(この光景、前にも見た様な……)

 この光景を目前にしたプロト世代の黒鳥千代子は呆然とした表情であっけらかんと以前にも同じ様な情景を目撃した事実を思い返す。

 すると自分たち同様、小田原修司の自伝本でもある聖龍伝説を所持していると公言したサイ・チョウセイに新世代型の新戸緋沙子(あらとひさこ)が申し付けた。

「それじゃ韓国の将軍様。貴方はその自伝本の中身を御存知なのですか?」

 丁寧な口調で訊ねる新戸緋沙子(あらとひさこ)の質問に他の一般の二次元人たちの視線がチョウセイに集中する中、チョウセイは申し訳なさそうに返答した。

「い、いや、それが……あいにく職務が多忙で殆ど中身を拝見しきれてないのだ。第一章の途中までしか拝読できていなくてな……」

 職務が多忙なために完全に自伝本全てを読み切れてない事実を伝えるチョウセイ。すると、この事実を知ったその場の二次元人たちの顔色がガラリと変わった。

「それじゃ……チョウセイさんは知らないんですね」

「っ? 何をだ?」

「………………………………」

 悲愴な面持ちの琴浦春香の問い掛けに唖然とするチョウセイ、彼を見て他の二次元人たちは黙然とチョウセイの顔を見据えていた。

 

 

 

[妻の恐れ]

 

 その後、舞台は小田原有沙の自室に移る。彼女は一人、黙々と自分が好む音楽を聴いたり小説を拝読したりしていた。

 そんな有沙の自室の戸を叩く音が。

「あ、有沙、私だが…………今、良いか」

 音の次に訊ねる声はチョウセイのもの。有沙は聴いていた音楽を止め、小説の本を閉じ、御丁寧にデスクから座敷に座る場所を移して夫であるチョウセイを出迎えた。

「どうぞ」

 若干、不機嫌そうな声色で入室を許す有沙。その有沙の許しを得て、チョウセイは彼女の自室に入室する。

 実はこの時、チョウセイに訳を話してその後の彼を気にかけた新世代型の真鍋義久と琴浦春香が人知れず小田原有沙の部屋の近くまで身を潜ませていた。しかもチョウセイと有沙の会話は、琴浦春香のテレパシーを通じて隣の真鍋義久に、そして用意された自室で待機している他の新世代型二次元人にも共有感知で伝えられていた。

 何故、新世代型二次元人がこの様な真似をしたかと言うと、彼らがチョウセイに語った小田原修司の自伝本の内容に関係していた。

「あ、有沙よ。遂さっき知ったのだが、その……」

「………………」

「……その、兄者の自伝本には有沙達の、小田原家の事も記されていたのだな。しかも、兄者にとっては余り快くない身内として表されて……」

 チョウセイは黙り込む有沙に、自伝本の中には有沙たち修司以外の小田原家の事も記されていた事実があった事を今さっき知ったと言い伝える。それも余り良くない表現で。新世代型二次元人たちが伝えた事実はこれであったのだ。

 しかしチョウセイの話を聴いても尚、不機嫌そうに黙り込んだままの有沙にチョウセイは最後の謝罪の仕方に移った。

「本当に申し訳ない! まさか兄者があそこまで自分の家族の事を悪く書き記していたとは思いも寄らなかったんだ……! 有沙が不機嫌になるのも理解できる! それなのに全く気付かず本当に済まない……!」

 チョウセイは家内である有沙に対して高いプライドを捨てて土下座で謝罪し、更に謝り続けた。

「兄者が自分の家族と不仲だったのは知っていたが、まさかそれを自伝本に記していたとは全く持って知らなくて……いや、事実を載せなければ悪になる訳だから、事実であれば自伝本に記さなければならない訳だし……」

「………………」

「さ、されど……いくら兄者が人間嫌いでも実の家族までも毛嫌いしていたのは前々から知っていた訳だが、それを二次元人との初の交流を交えた自伝本に記して出版するとは、夢にも思わず……」

「何なのよ二次元人二次元人って! アイツらなんか絵から出てきただけのバケモノじゃない!!」

「! あ、有沙……」

 平謝りし続けていたチョウセイをいきなり怒鳴りつける有沙、その怒声にチョウセイは一驚してしまう。

 すると有沙は目の涙を浮かべ始めてチョウセイに話し始めた。

「前からずっとだった、修司が二次元人の事を庇ってきた為にウチにもたくさんの脅迫や嫌がらせが……」

「あ、有沙……!」

 自身の兄の事を呼び捨てで呼ぶ有沙の告白にチョウセイは衝撃を受ける。昔より人権の弱い二次元人を保守する為に活動してきた小田原修司の波紋は彼自身だけでなく有沙たち実の家族にも被害が被ったのだという。

 更に有沙は涙ながらに実兄、小田原修司が行ってきた政策によって如何に身内である自分が苦境に立たされてきたかを淡々と語り続ける。

「修司が二次元人を護る様に……二次元人ばっか庇うようになったのは! 凄惨な政策で異常者(ヒール)に認定された人達を平然と虐殺する様になったには、全部私たち家族の所為だって言われ続けたの! もう少し修司に対して優しく接してやれば……もう少し理解を示してあげていれば、鬼神と呼ばれるまで残忍になる事はならなかったって言われてるの! もう、修司が護ってきた二次元人の所為で、どれだけ私たち一家が……世界中の人達が引っ掻き回されたか……」

 もう少し長男である修司に理解や優しさを向けていれば、小田原修司は残忍で冷酷な鬼神と呼ばれるまでに至らなかっただろうと周囲から指摘され続けた苦境を語る有沙の実情を知って愕然となる夫のサイ・チョウセイと、テレパシーと共有感知を通して二人の会話を盗み聞きする新世代型達。

 そして有沙はもう一つ、実兄の修司が二次元界で活躍して以降の世界情勢についても語り出した。

「修司が二次元界で活躍して以来、世界中どこでも争いばかり……」

「あ、有沙、それは……」

「解ってるわ! 修司がイケないんじゃない。だけど、ほとんどの争いや戦いは二次元人が起こしたモンじゃない!!」

 涙ながらにチョウセイに想いをぶつける有沙は、更に語り続ける。

「現政奉還……ううん、二年前の乱世だって結局は二次元人が起こしたもの! そんな戦火の中、こんなデブな私を……気が強い私を一途に愛してくれる貴方と出会えて、私は本当に嬉しかった」

「有沙……」

「だけどチョウセイ、私、怖いの…………貴方が戦いの最中、死んでしまうのが……いなくなってしまうのが怖い!」

 二年前の乱世も今回の現政奉還も全て二次元人が引き起こしたものだと語る有沙は、同時に二年前チョウセイに出会えた喜びを包み隠さず素直に吐き出した。だが同時に戦火の中で自分を一途に愛してくれるチョウセイが失われる恐怖も告白した。

 二人の間には結婚に至るまで様々な確執が立ちはだかっていた。日本人と韓国人という違い、更には慰安婦や領土問題などでの反日/反韓感情など。そして二人の婚姻も若干ながら両国の謀略も張り巡らされており、半ば互いの国の平和条約に近い形で結婚を許された、いわゆる政略結婚だった。

 しかし、それでも有沙は決して容姿端麗ではない自分を心から愛してくれるチョウセイと一途に相思相愛の関係に発展し、政略結婚に近い様式とはいえ敢えて結婚に挑んだのである。

 この勝負強さもまた、いうなれば鬼の血筋ならではなのかもしれない。だがそれでも気持ちは乙女の部分が勝っているため、有沙の胸中は不安に押し潰されそうなのであった。

「私は一体どうしたら良いの……? チョウセイと一緒にいたいだけなのに」

 すると座布団に正座していた有沙は思わずチョウセイに身体を委ねる様に預け、チョウセイに訴えかける。

「チョウセイ。私を……私を一人にしないでね。もう二度と……私を置いて……何処へも行かないで……」

 この新妻、有沙の訴えにチョウセイは優しく答え返した。

「……ああ、約束しよう」

 しかし有沙の悲痛な感情は収まる事は無く、寧ろ更に大粒の涙をポロポロと目から流してチョウセイに訴え続ける。

「ホント? ホントなの!? チョウセイはいっつも正義正義って……大義名分を並べて仕事ばっかり。普通の仕事ならまだ許せるけど悪党と死ぬ気で戦うのだけは許せない!」

 そして最終的に有沙はチョウセイに言った。

「時々、夢で見るの。チョウセイが死んじゃう夢……殺されて死んじゃう夢を。私、怖い!」

 時おり夢で愛する夫が死んでしまう夢を見てしまう有沙の涙ながらの訴えに、チョウセイは真剣な顔付きで有沙に申した。

「有沙、人のさきを決めるのは予知や予見ではない。生きる者の意志、願いのみがさきを決めるのだ」

 人の将来を決めるのは予知や予見などではなく、生きる者の強い意志や願いであると説くチョウセイは、最後に真顔で有沙に言った。

「私を信じろ」

 何も言わず自分を信じろ。その意味が詰まった一言に、有沙の感情は一気に膨張し、目から大粒の涙がボロボロと流出した。

 このチョウセイの男気溢れる言葉の数々に、共有感知で二人の会話を聞いていた新世代型達は思わず感動してしまっていた。

 

 だが、そんな感動的な風情が漂う中、チョウセイは真顔で有沙の顔を見詰めると彼女に衝撃的な言葉を発した。

「有沙、前にも申したと思うが……私は陰気な女は好かん」

「!!」

「何故なら悪だからだ」

 この場の空気を一変させる台詞を発したチョウセイの言動に新世代型達は衝撃を受け、愕然と信じ難い心境に至った。まさか自分で穏やかになった空気をぶち壊す男がいるのだろうか。

 すると、このチョウセイの発言に有沙も一時置いて返した。

「…………相変わらずひどい…………」「何が酷いものか」

 相変わらずの一言を聞く限り、陰気を悪と邪見するチョウセイの言い振りは日常茶飯事らしい。そんなチョウセイの言動に酷いと返す有沙だが、チョウセイは真剣な顔立ちで説き始めた。

「花はただそこに在るだけで美しいが、人はそうではない。ただ在るだけでは容易く悪に染まるだろう。今の有沙がそれだ」

 花の様に普段から美しいモノと違い、人はそうではない。存在するだけで容易に悪に身を染め、邪悪な存在に成り果ててしまう。今の状態の有沙がそうだと言うチョウセイは更に照れながら申し開いた。

「だからだ、有沙よ。其方が私の妻であり続け、私の傍らにその身を置くのならば……その…………いつもの様に笑ってくれ」

 存在するだけで悪に染まらないよう、普段のように明るい笑顔を振りまいてくれ。そう妻である有沙に問い掛けるチョウセイの言葉に、有沙は再び感情を昂らせて泣きじゃくり始めてしまった。

 

 

 鬼神、小田原修司と言えば誰もが恐れをなす武人。その妹である有沙は、その修司の影響で家族共々常軌を逸した苦境に立たされる事と相成った。

 そんな中で、容姿端麗ではない自分を純粋に愛してくれるチョウセイの一途な想いはどれだけ心を救われた事か。例えそれが表向きには政略結婚などと呼ばれようが、二人の相思相愛には関係ない事。

 

 

 新世代型二次元人は共有感知で知った小田原有沙の苦心と、その有沙を一途に想い続けるサイ・チョウセイの真意に深い感銘を抱いたのであった。

 

 

 

[会談とチョウセイの苦悩]

 

 泣きじゃくる有沙を宥め終わり、彼女が寝静まったのを確認したサイ・チョウセイ。

 更にこの時、新世代型二次元人達も既に寝静まっていた。

 

 屋敷全体を静寂が包まれているのを身に沁みて痛感するチョウセイは、屋敷の一角に急ぎ馳せ参じた。

 チョウセイが向かった一角、その部屋には既に待機していた聖龍HEADの面々とアニメタウン市長のウッズ、そして聖龍隊では上官にあたるウェルズ達が集結しているのが確認できた。

「お、遅くなってしまい、申し訳ありませぬ」

 チョウセイは言い訳もせず、ただ謝罪の言葉を述べるだけで室内に入室した。

「良いんだよ、チョウセイ。それに此処は君の屋敷だろ、屋敷の主が客人に其処まで腰が低いってのも可笑しいよ」

 自分たちはあくまで客人であって、其処まで丁重に接する必要は無いと説くジュニアに、チョウセイは真顔でHEADに歩み寄ると付け加える。

「いえいえ、あなた方はあくまで二次元界からの重要人物。このサイ・チョウセイ、接待に失礼の無いよう至らなければ……」

「それで先ほど新世代型の方々の所に謝りに行ってたんですね。素晴らしい気遣いです事」

 二次元界からの重要人物との事で接待に失礼の無いよう行う所存を伝えるチョウセイに、先ほど新世代型達の許に謝罪にしに向かっていた事を指摘する鳳凰寺風にお褒めの言葉を貰い受けたチョウセイは恥ずかしそうに申し返す。

「あ、見ておられましたか。いえ、うちの家内が発した失言を謝罪しに行ってたんですが、予想外の事実を彼らから伝えられまして……」

「予想外の事実?」

 チョウセイが申した予想外の事実の一言にウェルズを始めとするその場の皆々がきょとんとする中、チョウセイは新世代型達から義兄小田原修司が出版した自伝本には実の家族との不仲な間柄も包み隠さず赤裸々に綴っている事実、そしてその事実を受けて家内である有沙に謝罪を申した上で彼女の本音を聞き入れて和解した経緯を述べた。

 このチョウセイが語ってくれた経緯を聞いてHEADの女性陣は豪く感激した。

「さっすが、チョウセイ!」「言ってくれるわね、色男♪」

 垂れ目でチョウセイを名指しして煽るセーラームーンとセーラーヴィーナスのお調子者二人組。

「お互い、もう少し素直に自分を打ち明けられたら楽なんだけどね」

「どっちも素直になれにくい性格してるからね………………奥さんの方は兄弟おんなじなんだけれど」

 チョウセイの話を聴いて、チョウセイたち夫婦が互いに自分を打ち明けられる素直な性分であれば双方共に助かると説くウォーターフェアリーに対して、ちせは夫婦揃って素直になりにくい性分な上に婦人の方は兄妹揃って素直になれない性格であると零す。

 そんなチョウセイの惚気話を煽るHEADの女性達に対してバーンズが一喝する。

「おめェら! ようやくチョウセイもやって来た事だし、今後の方針について互いに会談しねえと……夜も更けてきている事だしよ」

 このバーンズの話を聞いて女性達もようやく落ち着き出し、着席していく。

 そして聖龍HEADにウッズとウェルズの両名も着席すると、最後にチョウセイが韓国の国将軍として着席して聖龍隊側との会談が開始された。

 この場に設けられた会談では、聖龍隊と韓国軍との同盟の和議はもちろん、聖龍隊や保護した新世代型達の今後についても議題に出されていた。

 そんな物々しい会談の場ながらの重い空気を肩からしっかり身に感じるサイ・チョウセイは意を決して第一声を発した。

「そ、それではまず私から………………バーンズ殿、あの海賊……あ、いえ。赤塚組の一派はどうしたんですか? てっきり仲が宜しいので、あの連中も会議に参加するのかと私は思っておりました」

 海賊という違法行為を行う赤塚組を悪と見下している傾向のチョウセイの質問に、バーンズが返答した。

「大将たちは大将たちで、既に出港の下見に向かってくれている。何事も無ければ、明日にはオレらも新世代型達もアニメタウンに帰れるって寸法よ」

「うむ! そうですか。義賊義賊と名乗っていますが、所詮は海賊行為は問答無用で悪! あの赤塚組にも、このサイ・チョウセイ、心を完全に許せずに居られますが……姉者やバーンズ殿が信頼しているのであれば此方としても信用しない訳にはいきませぬ」

「もう、またそれなんだからチョウセイは。何事も善悪で分別するのはどうかと、私は思うわよ」

 バーンズから大将たち赤塚組は港への下見に向かい、出港できるかどうか確認しに行ってくれていると伝えられたサイ・チョウセイは、それでも海賊である赤塚組には完全に心を開けない真情を打ち明けながらも聖龍隊が信頼しているなら此方も信用するしかないと本音を零す。そんなチョウセイにミラーガールは何事も善悪で物事を見極めるのはどうかと訴え掛ける。

 将来の義姉であるミラーガールからの指摘を受けた直後も、チョウセイは躊躇わず質問を続けた。

「う、うむ……承知しました。それでは明日の出港に差し支えなければ、前に聞いた通りお互いに別々でアニメタウンに帰路に着く訳なのですか? 聖龍隊と、その新世代型の面子は……」

 明日の出港に問題が無ければ、聖龍隊と新世代型二次元人たちは別々の船で帰路に着くのかと尋ねるチョウセイに再びバーンズが答えた。

「ああ、そのつもりだ。オレたち聖龍隊の方でも、軍事物資を運搬しなきゃならないから余計な乗船者までは面倒見切れなくてな、新世代型達とは別々の船で帰る事になってる。あ、だが送迎はオレ達もそうだが港までで構わないから。韓国軍も今は色々と多忙だろうし、見送りは別に要らない、新世代型達も送迎は港までで大丈夫だからな」

 聖龍隊は軍事物資の運搬のため、一般人である新世代型達の護送は見送られていた。故に互いに別々の船でアニメタウンに帰港する手筈に調整したのだと語るバーンズは、更に多忙である韓国軍にも護衛などは一切してもらわず出港する港に送迎したら、そのまま見送らずに帰って良いとチョウセイに告げる。

 しかし、このバーンズの返答にチョウセイは顔を渋らせた。

「う、うむ、しかし……見送らずに送りつけたまま知らん振りしてるなど、義に反する行為は私としては余り好きませぬ」

 護衛もせずに見送りなしで、送迎だけを容認されたのでは己の義に反すると主張するチョウセイの言い分を聞いて、HEADのセーラージュピターやミュウレタスが謙遜し返してきた。

「良いって良いって、チョウセイ。そこまでしてくれなくてもさ」

「貴方が納める、この韓国は今や日本と並ぶ平和な秩序ある国家。それ故に暴動も今のところ少ないですし、新世代型達に危害が及ぶ事はないと私たちは判断しました。なので新世代型の方々の護送は身などまでで十分ですよ」

 二人の謙遜を聞いて、チョウセイは如何に自分が信頼されているか改めて痛感し感激した。

「そ、そうですか……! 其処まで私の事を信頼してくれているのですね、聖龍隊の方々は……!! ウグッ、尖閣諸島による領土問題に慰安婦問題など、反日感情でデモに荒れていた韓国を私の正義で鎮めてきた苦汁の日々は無駄ではなかったか」

 思わず涙ぐむチョウセイは、即座に目から零れた涙を拭い取る。

 するとチョウセイは感激の余り緩まっていた表情を引き締めると、再度改まった真剣な真顔で聖龍隊に言葉をかけた。

「と、ところで……前々から気になっていた事があるのですが、この際それについても訊ねても宜しいでしょうか?」

 改まって問い掛けてきたチョウセイに、バーンズたち聖龍HEADは笑顔で受け答えた。

「っ? ああ、別に構わないぜ。寧ろオレたちは二年前に一緒に戦った仲だし、この際気になっている事があったら遠慮なく質問しても構わねぇぜ。互いに腹の探り合いはよして、それこそ腹を割って話し合わないと平和的とは言えねぇからな、ははっ」

 気になる事があるのなら互いに腹の探り合いはせずに遠慮なく質問して、双方共に腹を割って話し合おうと述べてくれたバーンズに感謝しつつ、チョウセイは聖龍隊に改まって質問をぶつけた。

「で、では。何ゆえ………………人形如きが正義の軍隊のトップに抜擢されているのだ?」

「に、人形?」

 参謀総長のジュニアを含むその場の全員がチョウセイの質問に呆気に取られるが、即座に質問の矛先が聖龍HEADのローゼンメイデン組であると察して、全員が真紅たちに目を向けた。

「あら、何なの? 私たちがHEADだと不満なの?」

 真紅がそう言うと、彼女を中心にその場のローゼンメイデンが質問を発したチョウセイの眼前に瞬時に集結して、気に障ったのか蒼星石が愛用の庭師の鋏の切っ先をチョウセイに向けていた。

「そっ、蒼星石! それに他のローゼンメイデンもやめろッ!」

 自分達の存在に意義を唱えられ、殺気立つローゼンメイデン達をバーンズたちその場の聖龍HEADが必死に宥める。

 一方のチョウセイは、自身の目先に大きな庭師の鋏を突き立てられて蒼然となっていた。

 しかしローゼンメイデン達は本気で殺意を向けていたわけではなく、すぐに蒼星石が鋏を納めると雛苺と金糸雀と翠星たちが困惑の表情を浮かべる。

「どうしてって言われても……」

「何とも話し難いかしら」

「ハッキリ言って……修司の独断で決められちゃっただけだから、この翠星石も他のみんなも最初は困惑しましたですぅ」

 この疑問に三人が戸惑いの感情を窺わせていると、何故HEADのメンバーに加えられているのか庭師の鋏を納めた蒼星石が説明した。

「元内閣で、僕らを推していた麻生太郎の票を獲得するため、修司が敢えて僕たちローゼンメイデンの5体を聖龍HEADに加えたんだ」

 これに対して真紅は真顔で素気なく質問してきたチョウセイに言い切った。

「要するに……私達は当時の世間体で、たまたまHEADの傘下に加えてもらっただけなの」

 ローゼンメイデン達が加入した時期、今は元内閣の麻生太郎ことローゼン麻生の出馬に乗じて小田原修司がローゼンメイデンの聖龍HEAD加入を認めたらしい。

 この政治的背景で加入を許された経緯を知って、チョウセイはただただ呆然としてしまうばかり。そんなチョウセイに宝生波音らマーメイドメロディーズのメンバーが話しに加わってきた。

「言っておくけどチョウセイ、私たちも真紅たちと似たような理由でHEADに加入されちゃったのよ。貴方の義兄(おにい)さんの決定でね」

「な、なぬっ、そうなのか!? いや、確かにほとんど歌しか歌わぬ人魚もHEADに抜擢されたのか疑問ではあったが……まず愛よりも正義を唱えるのが道理な筈なのに」

「言ってくれるわね」

 波音の言葉に衝撃を受けるチョウセイの台詞に同じマーメイドメロディーズの洞院リナが呆れた様子で零す。

 そして衝撃を受け、愛の歌よりも正義を唱える事を道理と説くチョウセイに七海るちあが訳を話した。

「何だかあの頃は聖龍隊も物入りだったみたいで……少しでも人気のあるキャラクターや作品を聖龍隊の上層部つまりHEADに加える事を修司さんが決めちゃった訳なのよ」

 このるちあの話に、婚約者の堂本海斗が話を付け足した。

「要するに聖龍隊も、結局は政治的背景や世論で物事を決めてしまう……世間にあやかったり便乗したりして人気の票を得ないとやっていけない組織って訳さ」

 政治的背景や世間体、人民の世論にあやかったり便乗したりして物事を決定してしまう極普通の組織と同じ点が聖龍隊にもあると海斗に付け足しで説かれ、愕然とするチョウセイ。

「そ、そうだったのか……いや、私も反日感情を抑えながら、韓国国民の人気を落とさぬよう気を付けていたから解らなくもないが。いや、万民の支持を維持するのは大変でしょう」

 万民の支持無しでは組織として成り立たない現状に理解を示すチョウセイに対して、バーンズが皮肉を込めて言った。

「お前の場合は、単に大好きな戦隊モノで子供の支持を得ていただけだろうが。あと二枚目な面でな」

「ば、バーンズ殿っ」

 指摘を受けて一瞬で困惑するチョウセイを見て、その場の皆はドッと笑い飛ばした。

 

 そして場の雰囲気が落ち着いたとき、チョウセイから再び話は始められた。

「はは、それにしても支持を維持するために様々な作品やキャラクターを聖龍隊に加盟させるのが御忙しいでしょう」

 これに対し、バーンズが聖龍隊上層部より伝言される教えについて語り出した。

「修司からの教え……いや、あいつの悟りから得た教えを後世にまで伝える為さ。その一つに、【正義は悪より強く、悪は愛より強いが、愛は正義よりも強し】というのもあるしな。それで実戦向けではないローゼンメイデンやマーメイドメロディーズもHEADに加えたんだろうが」

 かつて小田原修司が言い残した言葉が聖龍隊に伝承されている。【正義は悪より強く、悪は愛より強いが、愛は正義よりも強し】すなわち人の愛というのは、人が掲げる正義よりも胸中に訴える力が強いが、卑劣な悪意には滅法弱いという格言である。

 こんな格言を言い残した小田原修司に話が移ったその時、チョウセイは義兄である修司の情報で耳にした事を聖龍隊に尋ねた。

「ところで人伝に聞いたのだが……兄者は発達障害を患っていて、他人の愛情を余り感じられなかったとか」

「そうなんだ。だから修司は自分が感じられる正義や悪の概念よりも、愛情の方が勝っているって思った次第なんだよな」

 他人からの愛情を感じ難い発達障害を持って生まれた為に、時代や偏見によって捻じ曲げられてしまう正義の概念やそれに反する悪の概念よりも、愛情の方が尊く感じる様に成長してしまった修司を悲観しながらバーンズはチョウセイに話した。

 と、ここで大きく話が逸れている事に気付いてジュニアが慌ててチョウセイに問うた。

「あっ、みんな質問コーナーも此処までだ、もう夜も大分遅い。チョウセイ、早速なんだけど僕らとの同盟の件……」

 ジュニアが問い質そうとしたその時、チョウセイは慌てた様子で返事する。

「あっ! 申し訳ありませぬが、同盟の件はもう少し待っててもらえないでしょうか。その……少し身内の事で話が煮詰まっていまして。事情は詳しく申せませぬが……」

 このチョウセイの返答に、バーンズは深入りする積もりは無かった。

「そうか、お前も反日感情の中で日本人と結婚したから今でも身内との衝突はあるだろうな。よし、分かった。同盟の件はまた後日にという事で」

 このバーンズの決定事項にウッズとウェルズの双子兄弟も反論しなかった。

「それもそうですね、何よりチョウセイさんは信頼の置ける律儀な方。同盟に対する返答は私達がアニメタウンに帰ってからでも十分、大丈夫ですしね」

「それもそうだな! チョウセイが裏切る訳がないし……今夜、会談できただけでも良し良しだな。そんじゃ、もう俺らも寝るとしますか」

「そっ、そうですね! お休みなさい……」

 チョウセイは最後まで挙動不審な態度で聖龍隊を見送り、その後自室に戻っていった。

 

 

 しかし自室に戻ったチョウセイは一人、悶々と悩み抜いていた。

「ううむ、困った、実に困った。姉上からの書状もあるし、かと言って聖龍隊と対峙しかねない現状こそ義にそぐわぬし……ううむ、困った」

 そんな悩み続けるサイ・チョウセイが向かい合う机上には、口紅でのキスマークが添えられた手紙が一通、密かに置かれていた。

 

 

[アレンジ武将&オリジナルキャラ]

 

武将名:サイ・チョウセイ

属性:光

武器:刀

防具:盾

肩書『信義不倒』(しんぎふとう)

登場時の書き文字

参上

一人称「私」

年齢:24

出身世界:三次元界・韓国

 

 小田原修司の妹、有沙の夫であり、修司の義弟にしてアッコの未来の義弟という血筋である。

 義兄である修司の事は「兄者」と呼び、将来義姉になるアッコの事も早々に「姉者」と呼び、身内として迎え入れている。(それもこれも小田原修司が約束事を破らない性分であるとチョウセイは認識しており、修司と婚約を交わしたアッコに対しても既に身内扱いしているのだ)

 最初は修司の妹とは知らずに有沙に一目惚れし、その後有沙が修司の妹であると知ると日本を始めアニメタウンとも平和協定と同盟を結ぶ切っ掛けに強引に事を運んでしまう。彼自身も修司同様「差別は悪だ」と捉え、反日や反韓の感情に流されず、両国の間柄を取り仕切る事に成功する。

 その後、2013年の3月に小田原有沙と婚姻を結び、晴れて夫婦となったのだ。(この結婚は日韓の平和維持を保持する為の政略結婚ともいわれている)

 性格は非常に真っ直ぐな武将であるが、あまりに真っ直ぐすぎることが災いして極端な思い込みをすることも多く勘違いもしばしば。

 しかし、この真っ直ぐな性格のおかげで聖龍隊や有沙は長政を信頼している。

 この性格ゆえか、「悪は正義によって削除されるべきだ」という極端な正義感を持つ。故に彼は小田原修司や聖龍隊と親交を保つ中で国連軍元帥の赤犬を称賛している。

 しかし、正義感自体はかなり偏っている場合がほとんどで、一人で無意識に暴走していることもある。

 この様な偏った正義感を抱くようになったのは、実は彼の姉に原因がある。

 またかなりの悪筆(字が汚い)らしい。

容姿

 紅白の西洋鎧を身にまとい、白銀色の兜を被る。

 鎧の胸部には韓国の紋章がついている。

 白馬の騎士と某特撮ヒーローを足して二で割った衣装になっている。

 なお、男性長髪キャラの一人で横側の髪が腕のところまで伸びており、二年前までは残りの髪の毛は後ろに一つ結びにしていたが、現在では後ろの一つ結びが無くなっている。

 

バトルスタイル

 一本の刀と盾を使って攻撃をする。

 刀に光を纏わせて斬撃を繰り出したり、投げたらブーメランのように戻ってくる盾を使って戦う。

 他にも3分間のみ効果を発揮する固有装備とどこかで見たキック技、さらに技を出した後の決めポーズなど、全体的に「特撮」がテーマになっている。

 全身強化までいくと通常技の攻撃範囲とヒット数が強化、固有技・固有奥儀に特殊な演出(と爆発)が加わるなどより特撮らしさが強調されている。

 またチョウセイが決めポーズを出した時(剣や盾が光る瞬間)にタイミングよく「理力・装光」を使うとタメ無しで武器をワンランク強化できる。これは「理力・装光」を使う際の2連決めポーズにも同じことが言え、ここで2連押しに成功するとタメ無しで一気に全身強化が可能。

 

 

小田原有沙

肩書『信圧鬼迫』(しんあつきはく)

年齢;23

出身世界:三次元界・日本

 小田原修司の実妹であり、サイ・チョウセイの妻。

 二年前の乱世で家族旅行(修司抜き)で暴徒達に襲撃されてたところをチョウセイに助けられ、そこから親交が始まる。

 その後、有沙が鬼神と恐れられる修司の実妹であると判明しても二人の仲は変わらず、トントン拍子に交際が進む。

 今まで鬼神と周囲から恐れられていた現状の中で、反日感情も潜んでいた韓国将軍でありながらも容姿端麗ではない自分に好意を寄せてくれるチョウセイに中々素直になれずとも一途に想いを寄せている。

 己の自我が強く、気が強い為にあの修司ですら余り逆らいたくないらしい。が、実は看護師であり戦火の際は指示に従って避難者を匿う優しい一面も持ち合わせている。

 容姿端麗ではない自分を心から愛してくれるチョウセイに依存している面も強く、自我を保っているがいつ最愛の人を失うか分からない不安から情状不安定に陥る事も多々ある。

容姿

 血筋がてら足が短く、ふくよかな体型をしている。

 いわゆる、ぽっちゃり美人。

台詞(以下の台詞を呟いた経緯有り)

「死んだ人はね……普通は生き返らないの」

(特殊な力や経緯で生き返った二次元人に対しての、二次元人が普通ではないという皮肉)

「とても寂しくて……仄暗い場所、それが戦場よ」

(愛するチョウセイが駆り出される荒れ狂う戦場を目の当たりにして零した台詞。看護師として命が簡単に消え失せる現状を悲哀している)

「そう、修司に並び立つ夢を見てしまったのね? 修司……やっぱり兄さんは罪深いわ」

(実兄である小田原修司と比較されがちな野心や野望を抱く者と対峙した時に零す台詞。穏やかな人心を野心に導く実兄への贖罪を意味している。

概要

 夫婦揃って双方共かなりのツンデレであり、なかなか相手に自分の気持ちを伝える事が難しい。

 それでも離れ離れず、仲のいい夫婦で居続けている。

 因みにサイ・チョウセイの名前の由来は「長政」読みを音読みにして「チョウセイ」に、浅井を「サイ」にして名称しただけ。

 

 

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