現政奉還記 武将達との会合編 作:セイントドラゴン・レジェンド
[明月]
各地の名だたる武将たちが勢力を維持する為に同盟活動に紛争する中、未だモンゴル軍はこれといった秘策を打てずに迷走し、己の脅威が増すばかりであった。
しかしそんな逼迫しきった現状が、ユキジに聖龍隊との同盟への決断を促す。
「佐助、決めたぞ……このユキジ、命を賭して聖龍隊に同盟を求める!」
「あんたにしては上出来だ……だが一つ間違えてる。……使う命はここにあるだろ? 大将は今度こそ腰を据えて待つんだ」
……時は乱世、所は月下のアニメタウン。
これは、一人の忍びによる闇の逸話である。
そんな猿飛佐助は早速、配下の忍たちを引き連れてアニメタウンへと潜入した。
アニメタウンには、軍隊を編成するためと本格的に戦地進行を準備するため帰還している聖龍隊が既に在った。
そして陽が沈んた晩、空に闇夜を照らす月明かりが燦然と輝く明晩。アニメタウンの一角に、潜入した猿飛佐助は配下の忍三人を携え、一人聖龍隊の総本部であるアニメタウン郊外にある大きな野山【聖龍隊総本山】を見据えていた。この聖龍隊総本山は一見ただの草木が全く自生してない茶色い地面に覆われた禿山だが、内部は掘り進められ、聖龍隊の総本部が内蔵されているのだ。その証拠に総本山の山頂は飛行機などが離着陸できるヘリポートが見受けられた。
聖龍隊総本山の麓には、既に聖龍隊と同盟を結んだ赤塚組の幹部衆が夜の見張りに徹する聖龍隊の新人達とボードゲームをして楽しんでいた。
「う~~ん、それっ」「おっ、やるなぁ」
ボードゲーム基盤では赤塚組のアツシとルーキーズのエギルと一戦交えていた。
総長より、いつ猿飛佐助がアニメタウンに進入するか不明なので警戒を怠るなと伝えられていた新人の隊士達が緊張しながらも見張っていた。そんな彼らに赤塚組のミズキが声を掛ける。
「大丈夫よ、もう少し肩の荷を下ろしなさい」
ミズキの気遣いにキリトやアスナ、ブラック・ロータスやシルバー・ロウ達は緊張を少しばかりほぐした。
聖龍隊と赤塚組が駐屯しているアニメタウンの一角、隅っこでは未だ誰にも気づかれていない猿飛佐助が徐に部下の忍の一人に訊ねた。
「潜り込ませてた連中に反応は無し、か……」
「はぁ、おそらくはもう既に……」
以前より各国の軍隊に忍び込ませてた配下の忍たち。猿飛佐助率いるモンゴル軍の忍隊も無論ながら聖龍隊にも同胞の忍を潜入させていたのだが、その忍たちとは連絡が取れなくなっていた事から生死が絶望的だと踏まれた。
聖龍隊に潜入させた同胞の忍たちの生死を絶望視しながらも表情一つ変えない猿飛佐助に、モンゴルから付いてきた配下の忍が佐助に呼びかけた。
「頭!」「?」
自分を呼ぶ部下に佐助が振り返ると、部下の忍は佐助に物申した。
「何故この刻限に忍び込むのです? 光脚を避け、影を落とすは、忍の常道……」
敵に気付かれないよう明光を避けて闇夜に姿を紛らす忍の鉄則を外してると申し付ける部下の忍に、佐助はあっさりと答えた。
「決まってんだろ、奴さんに気付いてもらう為さ」
答え返した佐助は飄々とした冷酷な面差しで部下の忍たちに言い付けた。
「同盟の前に、たっぷり思い知ってもらわなきゃならないからな。モンゴル軍の恐ろしさを、おぞましさって奴を……さ」
冷然に話し終わった佐助は最後に部下の忍たちに告げた。
「話は終わりだ……行け!」「ハッ!」
佐助に命じられた三人のモンゴル軍の忍者は一瞬で散り散りに解散し、佐助は再び目的地の聖龍隊総本山に目を向け、己の忍務を遂行しにかかる。
「並の忍は月を嫌う……だが俺様は別さ。空にお前が居る限り、この影も絶えはしない」
空で燦然と輝き続ける明月に猿飛佐助は感謝にも近い感情で見上げていると、彼の脳裏に直接話し掛ける者が。
「おお佐助ちゃんじゃないか、同盟夜和と興じるか? ……蝕まれた虎を養う余裕など無ぇだろうがな」
「疑いはごもっとも……ま、杞憂だと思うけどね」
「オレは心配性でな……一つ遊んで試させてもらうぜ。難攻不落の聖龍隊総本山に来い、オレが待っている故に」
「良いぜ。忍の実力、見せてやるよ」
話し掛けてきたのは聖龍隊総長バーンズ。彼は持ち前のテレパシーで既に猿飛佐助たちがアニメタウンに潜入している事を察知しており、テレパシーで佐助を疑いつつも彼に試練として聖龍隊の隊士達と対峙させ、彼らの迫撃を搔い潜って聖龍隊の総本山まで辿り着いて見せよと挑発した。
佐助は己の役目を遂行できる好機と睨んで、快く聖龍隊総長バーンズが仕掛ける試練に挑み、それらを突破する決意をする。
「さあ、あんた達には見抜けるか? この青白い月の下、猿がどこで笑うのか」
闇夜に昇る明月の下、進撃しようとしていた佐助の目の前に早速、聖龍隊の忍隊が出現し、佐助を急襲する。
しかし佐助は御得意の影を用いた忍術で巧みに追撃を掻い潜り、反撃を織り交ぜながら進撃していく。
「解るだろ……どっちの影がより深いか」
己の性分が如何にどの忍よりも闇影が深いか追撃してくる聖龍隊の忍たちに零す猿飛佐助。
一方のバーンズは配下の聖龍隊隊士に対猿飛佐助の命令を下していた。
「良いか、他のHEADが目覚める前に退かせろ……知る通り、起き抜けの女ほど手に負えない生き物はいない」
「はっ! 御意にござりまする!」
命令を下された隊士は威勢よく返事し、猿飛佐助への追撃を本格的に実行する。
その追撃部隊の中には、スター・ルーキーズのSAO/AW/マギカの三組の姿も確認された。
「お、オレ達も急ぐぜ! あの忍がなに仕掛けるか分かったもんじゃねェ!」
駆け付ける聖龍隊士の中には、赤塚大作を筆頭とした赤塚組幹部衆も同行していた。
その頃、佐助は自身の前に立ちはだかる聖龍隊の
「ほほぅ、これほどの忍軍を揃えているとは……」
聖龍隊の方でも忍による独自の軍隊を組織している事実を前に、佐助は聖龍隊の方針に感心の意を示す。
群がる忍の部隊を前に佐助は一旦、戦っている民家の屋根から地上へと降り立った。
その佐助に銃撃を仕掛けていく聖龍隊士に、猿飛佐助が抗戦している最中、バーンズは人知れず思い更けていた。
「今は眠れ同志たち。お前らの寝息を遮るには忍びない。客の相手はオレがしよう、茶菓子もある事だしな」
自身とは違い、休眠している同胞の聖龍HEADの面々に代わって時と場合によっては単身で佐助と対峙する覚悟を固めるバーンズ。
そんなバーンズは再びテレパシーで佐助に問い掛ける。
「オレは知っておきたい、同胞が誇るその器を。瓦葺の試練、見事超えて総本山に辿り着いてみせい」
「いいぜ。忍を試した事、後悔するんだな」
同盟前に猿飛佐助なる忍の心中を知り得ておきたい考えのバーンズは、その佐助に試練として聖龍隊をぶつけ続ける。
「ええい、門番は何をしていたッ!」
キリトやシルバー・クロウ、鹿目まどか達が佐助に攻撃を仕掛けている最中、聖龍隊の隊士が叫び上げる。
そんな聖龍隊と抗戦を続ける佐助に、またしてもバーンズがテレパシーで佐助に問い掛ける。
「同志たち、この猿たちは役立ちそうだ。歩の先に置くか、歩歩と哂うか」
「使われても良い……こっちが使い返せばな」
更にバーンズはモンゴルの軍馬に虎と呼ばれし将、そして佐助の様な猿の忍をひっくるめて笑い飛ばして見せた。
「馬に虎に猿と来れば、鳥獣戯画も真っ青だぜ」
「同盟記念に、あんたらの龍も入れとくか?」
これに佐助は聖龍隊の龍も入れておくかと冗談をバーンズに返す。
「廻されるだけの猿に非ず……ひゃはッ、面白い」
「そんな無理せず、前の大将さんと同じ性分を演じなくても良いと思うぜ。それじゃうちの大将と変らないぜ」
猿飛佐助は無理に前総長小田原修司の陰気な性格を演じるバーンズに、無理に師であるモウ・コダイに近付こうとする己が主シン・ユキジと変わらないと呆れた様子で言い返す。
[深淵]
やがて猿飛佐助はマンホールから地下へと潜り、地下から聖龍隊総本山を目指そうと図る。
そんな佐助が足を踏み入れたのは、囚人を一時的に放り込む聖龍隊の地下牢であった。
「座敷牢か……闇の庭へと逃げ込んだか……まあ構わん、愉快の種がある訳でもねえし」
多くの囚人を一度に収容できる座敷牢に出た猿飛佐助を感知して、バーンズは微笑を口元に浮かべる。
一方の佐助は誰一人いない不気味な座敷牢を見渡して、次なる道を探っていた。
と、その時「そこまでよ!」と女性の声が。佐助が声の方へと顔を向けてみると、其処にはニュー・スターズの卑怯番長にルーキーズのゼブラに門脇将人とミヤビを加えて馳せ参じたマン・ヒールズの姿があった。
暗躍贖罪。己の罪を償う為に組織の裏で暗躍し続けるマン・ヒールズは、猿飛佐助の進撃を喰い止める為に待機していたのだ。
「猿飛佐助、そこまでよ!」
佐助が地下を進んで座敷牢に辿り付く事を先読みしていたミスティーハニーの言葉に、佐助は不気味に微笑するとマン・ヒールズと戦い始めた。
「あんた達みたいな人は割かし嫌いじゃないよ?」
「ヘッ、そりゃどうも!」
不気味な微笑とは裏腹に好意の言葉を零す佐助に、マン・ヒールズの門脇将人は強く返答する。
「オレ達はな、躓いてもタダじゃ転ばないんだよ!」
攻撃を軽々とかわし続ける猿飛佐助に将人たちマン・ヒールズは、時に汚れ仕事を請け負う役職ゆえの格言を言い放つ。
どうにか佐助の動きを封じ、捕らえようと躍起になるマン・ヒールズであるが、佐助の俊敏な動きを暗闇で捉えるだけでも必死だった。
薄暗い地下の闇の中で光る閃光、金属と金属がぶつかる火花。一人と一隊の熾烈な攻防は続く。
「そりゃッ」
佐助が大型手裏剣を投げ付けるが、それを弾き返しては瞬時に反撃に転じるマン・ヒールズ。しかし佐助も彼らの反撃を軽い身のこなしで回避すると再び余裕で攻撃を仕掛けていく。
「見て聞いて言って……忍の仕事も楽じゃないわ」
しかし佐助は熾烈な戦いの最中も、自分ら忍の業務が如何に熾烈か愚痴を零す余裕をマン・ヒールズに示して彼らの癇癪を買う。
「どこ見てる! こっちだよ!」
暗闇の中、闇夜の戦いに慣れている佐助の方が有利に事が運んでおり、時おり佐助はマン・ヒールズに挑発しながら彼らに手裏剣を投げ付けて闇夜から攻撃していく。
明かりを付けようとするものの、マン・ヒールズが電灯のスイッチに手を伸ばす前に部屋の電球は佐助の手裏剣によって破壊されており、闇夜に目を慣らす以外、手立てがなかった。
(チッ、今はこいつ等と関わっている暇は無い……一刻も早く、総本山に)
しかし見事な戦いを展開していく佐助の方は、早々にこの場を脱して聖龍隊総本山に駆け付ける事で脳裏を巡らせていた。
そして佐助は空中に影を作り、片手に手裏剣を掲げて相手の攻撃を受けたと思われた瞬間、強力な反撃を喰らわせて両足で相手の首を締め上げて空中に放り投げ、地面に叩き付ける『空蝉の術』でマン・ヒールズの攻撃を回避すると同時に反撃する。
その空蝉の術を仕掛けた瞬間に、佐助の目に一筋の灯りが入った。それは先へと続く通路への灯りであった。
(……あそこか。そんじゃ、進むべき道も分かった事だし、こいつ等とはこの辺でお別れしますか)
次の瞬間、佐助は上手くマン・ヒールズのメンバーを誘導させて一か所に集めさせた隙に大技を仕掛けた。
「臨・兵・闘・者、以下、省略!」
猿飛佐助は三体の影と共に大型手裏剣で強烈な回転攻撃を繰り出した。
「どわあぁあ!!」
強烈な回転攻撃にマン・ヒールズは総じて吹き飛ばされ、堪らず撃破されてしまう。
マン・ヒールズを退かせた猿飛佐助は、通路を突き進んで灯りが照らす先へと向かう。
そして地下から出た佐助が見上げてみると、出られた地上は総本山の間近にあるアニメタウン郊外付近の市街地であった。
佐助は急ぎ駆け足で総本山に向かうが、そんな彼の前に佐助を探し回っていた聖龍隊士がここぞとばかりに続々と集まってきて佐助を取り囲む。
周囲の敵に佐助は大型手裏剣を振り回して、キリトや美樹さやか達を後退させつつ進撃を続けた。
「やいやいッ、モンゴルの忍! なんで寄りによって聖龍隊と戦っていやがるんだい!」
現場に駆け付けた赤塚組筆頭、赤塚大作から何ゆえ聖龍隊と戦っているのか問い詰められた佐助は正直に答えた。
「なあに、お宅の友人……彼のバーンズ殿から招待されてね。これは一種の宴だよ。そう、殺るか殺られるかの宴に聖龍隊総長が御声をかけてくれたんだよッ!」
どう叫んだ瞬間、佐助は大型手裏剣を赤塚大作に向けて投手。
「うわッ!」
大作こと大将は佐助の大型手裏剣を破槍で防いだが、反動で後ろへと弾き飛ばされてしまう。
と、ここで進撃を続け、確実に聖龍隊総本山に近付いていっている佐助の前に、メタルバードに変身したバーンズが遂に立ちはだかる
しかも腕を組んでいるメタルバードの背中から伸びる三本の触手にはそれぞれ忍が捕らわれていた。
「見えるか忍よ、オレの触手に捕らえられてる連中が」
メタルバードは三人の忍を触手で捕えて、盾にしていた。
「お許しを隊長……変姿を、見破られ……」
「………………………………………………」
捕らえられていたのは佐助が放った彼の部下、モンゴル軍の忍であった。しかし彼らを冷たい視線に捉えた佐助は何の反応も示さない。
そんな無口に浸る佐助にメタルバードは率直に言った。
「率直に言おう、騒げばコイツらの命はないぞ」
これには佐助を追撃していたキリト達も騒然となった。
「そ、総長!」「いくら何でも、それは……!」
キリトとアスナが叫ぶ中、メタルバードは冷然とした面差しで追撃してきた三組に言い渡す。
「なあに、平気平気。全ては佐助ちゃんの態度一つよ」
全ては猿飛佐助の意思に懸かっている事を告げるメタルバードの言葉に、三組は愕然とする。
意外にも見せ付けられたメタルバードの冷酷さに新人の三組だけでなく、駆け付けた赤塚組に周囲の聖龍隊士も動揺の色を顔に浮かべる。
だが、配下の忍を盾にされた佐助の判断も意外なものであった。
「……好きにしなよ、俺様には関係ない」「隊長……!!」
何と佐助は配下の忍を見捨てたのだ、これに捕らえられている忍たちは愕然とする。
そんな無情の猿飛佐助の判断に、彼を追撃しているSAO隊含む三組が愕然としているとメタルバードが冷徹な眼差しで佐助に言った。
「情など無縁か、流石は猿よな」
血塗れの猿らしく情には流されないと判断される猿飛佐助、すると彼の口から衝撃的な言葉が出てきた。
「仕方ないだろ? ………………あんたら、俺様の部下じゃないんだからさ」
この言葉に追撃していた周囲が衝撃を受けた瞬間、捕らえられていた忍の一人が口を零した。
「……フッ、見抜かれていたようね……」
メタルバードの触手から解放された三人の忍は、それぞれ姿を変えてスター・ルーキーズのミラール/折紙サイクロン、そして折紙の擬態能力をコピーしていた鏑木楓に。捕まっていたと思われていた忍の三名は、聖龍隊の隊士による変身であった。
「いつに気付いた? どこで察した?」
三人の変身能力が使える隊士達を化かさせていたメタルバードは佐助に何時何処で気付いたのか問い掛けた。すると佐助はあっさりと答えてくれた。
「自害せずに人質となる忍なんて、モンゴル軍には居ないさ……秘密を漏らさない為の死に処ってやつだ」
事実、アニメタウンに潜入してたモンゴル軍の忍は全員捕らえられたのだが、その全員が自らを利用されまいと自害していた。故にメタルバードは自害した忍の代わりにミラール、折紙サイクロンそして彼の能力をコピーした状態の鏑木楓に白羽の矢を立てたのだ。
そしてメタルバードと、先ほどまでモンゴルの忍に変身していた三人の聖龍隊隊士は佐助と一戦交え始めた。
「熱烈なご歓迎に預かりまして、光栄だね」
「夜にオレを訪ねる者も久しくてな、つい……冗談だ、そう嫌そうな顔をするな」
皮肉を込めて語り掛ける佐助の言葉にメタルバードが冗談を返す中、そのメタルバードは真顔で佐助に戦いながら問い掛けた。
「オレらに相反する勢力との牽制、まずはお前にそれを願おう」
「援軍と情報、この二つの保証が確かなら……」
「善巧みはつつがなくよ、さもありな」
聖龍隊に相反する勢力との牽制を願うメタルバードに、佐助は同盟には援軍と情報と言う援助には欠かせない二つを要求。これにメタルバードは怪しく不敵な笑みで返す。
すると戦いの中で、今度は佐助がメタルバードに問い掛けた。
「そろそろ教えてくれてもいいだろ? あの日俺様に声を掛けた、その真意を」
「……お前さんにな、針先ほどの興味が沸いたんだ」
赤塚組の船の上で自分を倒さずに同盟を持ちかけた真意を問い掛ける佐助に、メタルバードは素直に興味が湧いたと答える。
そしてメタルバードはその真意を包み隠さず語り明かした。
「知りたくなっちまったのよ、あの修司の闇にも引けを取らないテメェの闇がな! その身に宿す、漆黒の数々……」
「俺様の闇? 今も苦労してると思うけどね」
人心を読み解けるメタルバードは佐助の心の闇に少なからず関心を抱いてしまっていた。かつて小田原修司の心の闇に惹かれ、今では聖龍隊の総長を継いだメタルバードは、その腹心の友である修司にも劣らない佐助の闇に興味が湧いてしまっていた。
「お前は主に仕えて笑み、冷たく忍んでも笑む。さて、お前さんの恐怖は何処にある?」
そんなメタルバードは佐助への関心を抑え、己の両腕を刃に変形させて佐助と対峙しながらも口を零す。
「思えば、こうして胸騒ぐ夜も久々だな……」
「また化かし合いでもするか? 何度やっても負ける気はしないけどね」
同じ変化を行える者同士、化かし合いの勝負をしてみるかと得意気に言う佐助にメタルバードのやる気も上昇する。
月明かりに照らされる明晩の元、戦い合う猿飛佐助と聖龍隊。
だが佐助の巧みな忍術の数々に聖龍隊は彼に決定的な一打を浴びせる事ができずにいた。
そんな佐助は本当の目的地である総本山に向かうべく、一瞬の隙に乗じて自らを影に変化させて地中を進み、総本山への頂上へと続く道へと単身踏み込んでしまう。
「あんたは五つの車を廻すのが得意だね……が、本当の所は俺様にしか解らない」
人の立ち位置を、人を上手く使いこなし、散々状況を引っ掻き回せるメタルバードの言動をおちょくった猿飛佐助は聖龍隊本部総本山の頂上を目指した。
「くそっ、こうなったら……」
佐助に逃げられたメタルバードは、何処からともなく何かのスイッチを取り出すとそれを躊躇なく押した。
すると別所に設けられている聖龍隊のHEADが休眠する仮眠室の警報が鳴った瞬間、HEAD全員の閉じ切っていた瞼が開いた。
「HEAD、出撃!」
一瞬で目覚めたHEADは総員で民家の屋根に跳び上がると、ジュピターキッドを筆頭に屋根伝いで戦いの場へと向かっていく。
「お前に敬意を表し、最後の試練をくれてやろう」
そういうとメタルバードは大声で呼び掛けた。
「おおい、HEADの仲間たち! モンゴルからの珍客が来てるぞ」
「了解! 現在、全員そちらに向かってる!」
メタルバードの呼びかけに、他の聖龍HEADと共に馳せ参じるジュピターキッドが返答する。
一方、総本山内の聖龍隊本部に進入した猿飛佐助に、聖龍隊の忍軍が阻んでいる最中、メタルバードが基地内の無線で佐助に問い掛けた。
「お前が少しでもオレ等を満足させられれば仲間入り、しくじれば不幸行き。どちらにしろオレらが笑うか? いや、弱った」
敢えて相手を不安にさせる言動を口に出し、動揺を誘う。メタルバードの策に佐助は引っかかる様子は無かった。
その頃、総本山の頂上に先に辿り着いていた聖龍HEADは、夜更けに一騒動起こしていたメタルバードに文句を言っていた。
「既に忍び込んじゃってるみたいね」
「バーンズ、どうせ遊ばせてやるつもりで侵入させたんだろう」
「ひゃははっ、分かっちゃう?」
佐助を蜻蛉に例えて物申すセーラーネプチューンとセーラーウラヌスの両名から指摘を受け、メタルバードは愛想笑いを浮かべる。
[忍の真髄]
自慢の俊足で聖龍隊本部を駆け抜けて、どうにか頂上に辿り着いた猿飛佐助。
もちろん、頂上には彼ら……いや、彼女達が既に佐助を待ち受けていた。
全ての敵を茨で捕え、雷鳴で吹き飛ばし、天地を揺るがす聖龍HEADが遂に佐助の前へと対峙する。
「……ここまで辿り着けるとは。流石と言った方が良いかな」
「ご称賛の御言葉、ありがとうございます。つきましては、この猿の御戯れに一興してくだされ」
聖龍隊士の攻撃を掻い潜り、頂上まで辿り着いた猿飛佐助に驚きにも近い感情を向けるジュピターキッド。そんなキッドを含む聖龍HEADに佐助は一時の戯れを興じた。
「悪いけど、乙女の睡眠の時間を奪った罪……お仕置きしてやるわ!」
「もう乙女だっていう歳かね……ま、二次元人は年取らないって言うしね」
セーラームーンの立腹した様子に佐助は大型手裏剣をシュルシュルと鳴らしながら直立する。
「夜襲してくるなんて、大層な訪問じゃない」
「そうだな……あんたらみたいに真正面から相手を叩き潰す勢力なんてウチにはないから」
ココの問い掛けにも佐助は飄々とした態度で片足一本で器用に胡坐を掻きながら返答する。
「修司のいないアニメタウンで好き勝手に暴れちゃって……冗談やお遊びじゃ済まないわよ」
「そんな思い出にケチ付ける気はないけどさ……」
そしてミラーガールの睨みにも佐助は怯む事無く、毅然としていた。
「一人の男によって導かれた軍の将たち……それがあんたらなんだな」
かつて一人の男によって国を、軍隊を組織され、導かれた存在。それがHEADなのかと佐助は呟いた。
そして佐助は意を決したのか、己の忍務を果たすべく聖龍隊に攻撃を仕掛け、無謀な戦いへと挑む。そう、まるで早死にを望んでいるかの如く。
「何する気! 死にたいの?」
「死にたい訳じゃ無いのよね。ちょっとした時間潰しって奴さ」
ちせの問い掛けにも、佐助は飄々と答え返しつつ苛烈な攻撃をHEADに仕掛け続ける。
ワイヤー付き大型手裏剣を両手から繰り出し、更に影の分身で追撃する戦闘スタイルを誇る猿飛佐助は月光の下で自在に影を操って聖龍隊との攻防を繰り広げる。
そんな猿飛佐助の瞳は、どこか朧気であった。
「どの道もう……時間がない……な」
まるで糸の切れた傀儡の様に生気のない瞳に見据えられ、HEADはどこか言い知れぬ不安に煽られる。
しかし佐助の攻防の一手が止まる事はなく、彼の動きを止めようと現れた茨の草木も容易に手裏剣で切り裂いてしまい、稲妻や火炎の攻撃も俊足な動きで回避しつつ反撃する。
と、聖龍HEADが猿飛佐助と一戦開始したその頃。総本山の
「はぁ、ハァ…………ちょ、頂上までもう少しか……?」
猿飛佐助と聖龍HEADが激戦を繰り広げている最中、大将を始めとする赤塚組は総本山内の正規の通路である階段を駆け上り、汗だくで駆け付けている道中であった。
「た、大将、いま思ったんだけど、エレベーターで行った方が早くなかった?」
「い、いや……侵入者が入り込んだ際は、確か非常時という事でエレベーターの電源は切られてる筈。なんとか自力で向かうしかねェ……」
汗だくで駆け上がるアツシの言葉に、大将も汗だくながら答え返す。
こんな汗まみれの赤塚組であるが、大将こと赤塚大作は自分達よりも先に、総本山外部から背中のジェットエンジンで直接ヘリポートまで仲間のミズキを向かわせていた。
その頃、総本山を飛行して赤塚組のミズキがヘリポートが見れる位置まで浮上していた。ヘリポートではメタルバード以外の聖龍HEADが猿飛佐助と激しく接戦を続けていた。
「みんな!」
その戦闘を視認したミズキは、即急に自らも参戦して猿飛佐助の制止に加わろうとした、その時。
「ミズキ、止めろ! これは佐助とオレ達の問題だ!」
「え……バーンズ?」
ミズキに制止の言葉を掛けたのは、先ほど佐助を取り逃がしてしまったメタルバードであった。
メタルバードは戦意に満ちた眼差しで、月を背にして臨戦態勢に入る。
「赤黒き糸はまた切れぬ! オレ等の縁も断ち切れぬ……!」
次の瞬間、メタルバードは滑空しながら高速でHEADと混戦している佐助に突進していった。が、佐助はこれを咄嗟に回避し、上へと跳躍してメタルバードの突進を回避して見せた。
鋼の肉体での突進をかわされたメタルバードは、ヘリポートに着陸して再度佐助と対峙する。
するとメタルバードと再び対峙した猿飛佐助は周囲のHEADと応戦しながらメタルバードに訊ねた。
「ご大層な試練だとは思うけどさ……あんた、自慢の国と仲間達を見せ付けたかっただけだろ」
「はてさて何のことやら、猿の話は難しい」
佐助の疑問に関して、メタルバードは解り易い演技で話し返す。
「……………………」
メタルバードに制止され、黙って上空から戦いを傍観するしかないミズキ。彼女が見守る中、メタルバードはまたしても猿飛佐助に問い掛ける。
「人の心とは面白い。誰かの為に戦うもの、何かに抗うもの……多種多様過ぎで頭が回る」
「それで俺様の心も知りたいと……悪いけど、あんたに曝け出す心は無いんだよ」
人心を知り得たいと思い描くメタルバードに反し、誰かに示す心情はないと告げる佐助。
「悪いがオレ達も遊んでばっかはいられねぇんだよ……佐助、いい加減、観念したらどうだ?」
「いやいや、俺様はまだまだ余裕ですよ。何より、いい具合だ」
降伏を迫るメタルバードに対し、佐助は未だに体力が衰える様子もなく俄然と立ち向かってきた。
すると懸命に攻め続ける聖龍HEADと混戦しつつ、佐助はぽつりと零した。
「悪いけど、この命の使い処はここじゃない……」
使い処という不可思議な単語に、佐助の呟きが耳に入ったHEADは釈然としないまま、佐助は続けて呟いた。
「もう一度眠りな……別の次元での大将さん達よ」
朧気な眼差しで臨戦状態を維持する佐助に、次第に不気味さが増していくHEAD。
そんな佐助は変わらぬ態度で聖龍HEADの攻撃を受け流そうと、一瞬立ち止まった。
「いらっしゃい~~」
佐助が立ち止まった瞬間、攻撃を仕掛けてしまう蒼の騎士。すると佐助の頭上に発生していた影から分身が出てきて蒼の騎士を捕らえると本体と共に連続で攻撃すると、頭上へと騎士を投げ飛ばしてそのまま地面へと叩き落す空蝉の術を発動させたのだ。
蒼の騎士に手痛い深手を負わせた佐助は、続けて空蝉の術で自分に攻撃してくる聖龍HEADを返り討ちにしようと待ち伏せる。
「当ててみな」
空蝉の術を発動させようと待ち構える佐助だが、彼の挑発に乗るほどHEADは馬鹿ではない。
だが強力な反撃技を仕掛けるべく、佐助は空蝉の術の構えを解いた瞬間、声帯模写である人物の名を呼んだ。
「海斗~~」「って、やめんかッ!」
なんと佐助は声帯模写で七海るちあの声を真似て堂本海斗の名を呼んだ。これには恋人の海斗は気味悪がり、空蝉の術の構えを解いていた事もあり、佐助に一撃浴びせようと踏み込んだ。
が、堂本海斗が踏み込んだ瞬間、佐助は再び空蝉の術を発動させて頭上の影に海斗を巻き込んで、海斗を地面へ減り込ませてしまった。
「やれやれ、兄弟揃って何とやらだね」
以前にも海斗の双子の兄のガイトも同様に足元に減り込ませた経緯を体感していた佐助は、兄弟揃っての不始末に愛想を尽かす。
しかし堂本海斗を地中に静めたのも束の間、安堵の暇なく佐助に今度は大量の水が迫ってきた。マーメイドメロディーズのサポートを受けて大量の水を自在に操るウォーターフェアリーによる戦法だった。
「あらよっと」
だが佐助は足元から迫る大量の水による津波を軽々と跳躍して回避すると、再び得意の体勢に持ち込む。
と、そんな攻防一転が続く混戦の最中。勝負は一瞬で付いた。
「貰った!」「!」
それは一瞬の出来事であった。ほんの一瞬の隙に懐へ入り込んだメタルバードは、躊躇する事無く佐助を刃に変形させた腕で斬り付けた。
「グハッ」
一撃の下で斬り捨てられた佐助は、最後の力を振り絞って言葉を発する。
「許せ、たい、しょう…………」
そして猿飛佐助は事切れた。
戦いが終わり、HEADが佐助の死体を見据えていると、その場に階段を必死に駆け上ってきた赤塚組が到着してきた。
「ば、バーンズ! これは……!!」
駆け付けた大将たち赤塚組が死に絶えた猿飛佐助を前にして愕然と訊くと、メタルバードは静かに口を開いた。
「これが、佐助の望んだ死……少しでもモンゴル軍の底力を見せ付けようとした顛末さ」
「だ、だからと言って……殺す必要は無かっただろう!」
殺害の必要性は無かったのではと問い詰める大将に、今度はジュピターキッドが重い口を開いた。
「生かしておけば、今度は佐助の生存でモンゴル軍が佳境に入る。モンゴルの為にも、佐助をこの場で殺めた方が得策だったんだ」
「だ、だからって……」
忍であるが故に、敵地での捕縛は必死。その常道に従って佐助を殺めたと言われても、俄然納得がいかない海野なるたち赤塚組。
宿命とはいえ、殺められてしまった猿飛佐助の骸を見て、誰もが暗雲とした気持ちに浸っていた。
と、その時だった。
「へへ、俺様が殺られると思って」
なんと口言わぬ佐助の死体が喋ったのだ。これには死体を見詰めてた一同が一驚する。
すると死体は黒い靄、すなわち影となって消滅してしまったのだ。
「こ、コイツは……!!」
メタルバードら聖龍HEADは事実に気付いたが、時既に遅く、本人は別所にて分身を操っていた。
アニメタウンの一角、そう最初の地点から佐助は微動だに動いてはいなかった。アニメタウンを攪乱し、HEADと死闘を演じたのは彼の分身であった。
そして分身がやられたのを悟った佐助は術を解除して、ぽつりと呟いた。
「本気で潜んだ俺様を見付けられる奴なんざ……この世にはいない」
そんな佐助の背後に、佐助とは別に情報収集を密かに行っていた忍たちが集結した。
「情報も十分……土産に頂いておくよ」
そして佐助は最後に、聖龍隊総本山を睨み付けて言った。
「今宵の
全ては得るべき情報を入手する為の策。その策にまんまと引っかかり、己の意のままに踊らされていた聖龍隊を佐助は笑止した。
手に入れるべき情報を手に入れ、一晩の熾烈な戦いを乗り越えた佐助は闇夜に浮かぶ輝く月を見上げて、一仕事の決着に安堵の念を抱く。
この数日後、モンゴルと聖龍隊は正式な同盟を結んだ。
求めてきたのは………………聖龍隊側からだったという。