現政奉還記 武将達との会合編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 アニメタウンに帰還して隊を再編成すると共に、本格的にアジアへの進行を開始するべく準備を着々と進める聖龍隊。そんな明晩、月光の下にアニメタウンに馳せ参じたのはモンゴル軍が忍 猿飛佐助であった。佐助は己の忍務を果たすべく、アニメタウンへと潜入し、同時に聖龍隊総長バーンズからの試練を突破しに参った。仕向けられる聖龍隊の屈強の隊士、そしてメタルバードの策にも怯まず佐助はどうにか聖龍隊の本部が設けられている総本山へと辿り着く。が、其処に待ち受けていたのは佐助の侵入を知らされて駆け付けた聖龍HEADの面々だった。混戦の中、佐助は接戦を展開するが一瞬の隙を衝かれてメタルバードに強烈な一撃を喰らい絶命してしまう。誰もが佐助の死に疑いを向けなかった矢先、佐助の死体が一瞬で消滅。なんと猿飛佐助は最初の地点から一歩も動いておらず、アニメタウン領内に自らの分身を暴れさせ、それに乗じて聖龍隊が所持している機密情報を配下の忍たちに入手させる魂胆だったのだ。こうして見事に猿飛佐助の策に嵌まった聖龍隊が一晩明かした、その翌朝から今回は始まる。



現政奉還記 アジア紀行編 国連軍本部 大激突!

[緊急召集と緊急事態]

 

 猿飛佐助との接戦を展開した晩が過ぎた明朝。

 聖龍HEADは愕然としていた。自分たちが保持している機密情報が丸ごと猿飛佐助が率いた忍隊によって持ち出されていたのだから。

 まんまと佐助の策に溺れた聖龍隊だったが、そんな聖龍隊の中でも際立って落ち込む者が一人。

「どうせオレなんて、オレなんてオレなんてオレなんて…………」

 猿飛佐助に一杯食わせられ、機密情報をまんまと盗られてしまった経緯にバーンズは「どうせオレなんか」と自分を責め続け、やや欝っぽくなっていた。

 以前よりバーンズは腹心の友、小田原修司より聖龍隊の総長の座を引き継いだばかり。だが、そんな総長としての経験も浅く、更に修司より楽天家な為にバーンズの総長としての経歴は未だ余り評価されていないのであった。

 そんな中で他国の忍を敢えて領地に呼び込んだにも関わらず、それが囮で本当の狙いである機密情報を入手させてしまった事情から、バーンズは自分の経験の浅はかさに苦悩していた。

「オレがもっとしっかりしていれば……」

 落ち込むバーンズにHEADの誰もが慰めの言葉を掛けようとしていた。

 が、その時である。

「総長! 緊急事態であります!」

 一人の聖龍隊士がその場に駆け込み、落ち込んでいたバーンズも他の聖龍HEADも隊士の方に顔を向ける。

 隊士は焦った様子で総長バーンズに言伝しようと話し始めた。

「こ、国連軍本部より緊急連絡! 実は……」

「国連から? もう大将たちは本部に向かったと伝えとけ。今はそれどころじゃない……」

 今より早い早朝から、セブンズ・ガードである赤塚組に国連軍より緊急招集が掛けられ、それに応えた赤塚大作たちは既にアニメタウンを発ったと返答しておけとバーンズが隊士に言い返そうとすると、隊士は強く反論した。

「ち、違います! 国連軍より、セブンズ・ガード召集の件とは別に緊急連絡が……」

「なに、別件だと……?」

 国連軍より別件での連絡だと聞いて表情をがらりと変えるバーンズ。それと同じくHEADも顔色を一変させた。

 そして隊士がバーンズを始めとする聖龍HEADに国連軍からの連絡を伝言した。

「なに! 昨日オレ達が韓国を発った直後に、国連軍が新世代型の連中を連行しただと!?」

「!!?」

「は、はい。国連軍側の申し出によると、現政奉還での秩序の混乱から連絡が遅れたとの事で……」

 昨日バーンズたち聖龍隊が韓国を発った直後に、続けて船でアニメタウンに帰港しようとしていた新世代型二次元人達が国連軍に連行された事実を隊士から聞かされ、バーンズたち聖龍HEADは驚愕する。

「なんてこった、よりにもよって国連軍に補導されちゃうとは……」

「運が悪すぎだぜ、あの子ら」

 事態を聞かされ、ジュピターキッドとキング・エンディミオンは唖然としてしまう。

「バーンズ、大変よ! 急いであの子達を連れ戻さないと、国連軍に何されるか……!」

「わ、分かってる。まあ、いくら何でも国連軍の兵士が手荒な真似するとは思わないが……」

 ミラーガールの焦りにバーンズが悠長な事を述べると、セーラームーンが焦燥の面差しで語った。

「で、でも……! あの子達が新世代型だけでも危険な目に遭わせられるかもしれないわ! なんせ、国連軍も初期の新世代型の反乱を周知しているんですもの」

 これにバーンズも頭を抱えて答えた。

「そうだな……国連軍からだから、もう大将たちの方にもこの事は伝わっているから、大将たちが身元を引き受けてくれるかもしれないが……善は急げともいうし。オレ達も急いで向かうしかねえな」

「よし、急ぎましょう! 赤犬が危険な可能性もある新世代型たちに危害を加える前に……!」

 ミラーガールも強い面魂でバーンズの意見に賛同した。

 

 こうして聖龍隊は事を急いだ。

 ウッズはアニメタウンの治安を維持するため本国に残り、バーンズは本来自分たちが護らなければならない領地や母国がある聖龍隊メンバーを一旦解散させ、隊を再編成して赤塚組に続き国連軍本部に進行する事となった。

 

 

 

 一方その頃、新世代型を含む一般の二次元人たちはまだ海上を護送されていた。

 国連軍に一方的に拘束され、囚人運搬用の護送船で太平洋を一晩掛けて横断していた。

「こ、これからぼく達、どうなるんだろう……」

「くそっ、何もしてないのに一方的に捕まえやがって……!」

 韓国の港で山中鹿之助に通報されてしまったが為に、強引に拘束されてしまい護送船に詰め込まれてしまった新世代型達は不安に駆り立てられていた。

「ああ、不安なのもあるけど……一晩掛けて海の上、運ばれているから眠いのなんだって。こんな狭い所に押し込まれているからオチオチ眠れねぇ……」

 不安な想いとは別に、一晩掛けて狭い船内に押し込まれたまま護送されたために眠る事ができず、新世代型の真鍋義久があくび混じりの台詞を呟く。

「って、のんきすぎるよ真鍋くん……」

 真鍋のそんなのん気な発想に呆れてしまう同じ新世代型の琴浦春香。だが、真鍋同様に睡魔に襲われている者が他にも。

「ふぁあぁあ……っ。真鍋の言うとおり、眠くて眠くてしょうがないぜ。兵士のおっちゃん達に文句を言っても、聞いてくれやしねえ」

「あっちは完全に僕達を危険な参考人として連行しているつもりだからね。あまりこっちの話は聞いてくれんないよ」

 真鍋に続いてあくびを掻く燃堂力の愚痴に、親友で超能力者の斉木楠雄はあくまで自分達は危険な重要参考人として連行されているから兵士達に余り相手にされないのだと説く。

「あぁ、ギュービッド様、どうにかなんないんですか。この手錠……」

「コッチだってどうにかしたいさ! だけどこの手錠、対能力装甲されているから、魔法はもちろん特殊能力でも簡単には壊せそうに無い」

「あ~~あ、せっかくアニメタウンに帰れると思ったのに……」

 一方、親友である琴浦春香たちの危機を知ってアニメタウンを旅立ったプロト世代のチョコのあだ名を持つ黒鳥千代子、ギュービッド、桃花の三人は目の前で自分の手首を拘束している手錠を何とかしたいと願っていたが、そうにもいかなかった。

 護送船はそれからも海の上をひた走る。船内の小部屋に押し込められた新世代型達とプロト世代達を押し込んで、強引に海の上を突き進み続ける。

 やがて護送船は速度を緩め、寄港する雰囲気が船内にも伝わった。

「! どこかに着いたようだ」

 チョコたちと同じくプロト世代の海道ジンは何処かの港に寄港した様子を察した。

 そして新世代型達とプロト世代を押し込めている小部屋の扉が開錠された。

「出ろ」

 無愛想な兵士の一言が耳に突き刺さる中、一同が小部屋から各々鎖で繋がれた手錠を嵌めたまま外に出て行く。

 外に出てみた一同が見渡すと、そこに広がる絶景に誰もが衝撃を受けた。

「う、うわぁ……これは」

 護送船が帰港した港と陸続きで繋がっているのは、灰色の鋼鉄の建物が並ぶ巨大な軍の基地であった。その基地の建物の中でも、最も秀でて巨大な建造物には一際目立つ【正義】の二文字が。それこそ赤道を南に、ちょうど南アメリカ沖側の太平洋に設けられた人工島に聳え立つ世界中の凶悪犯罪者が恐れる「徹底的正義」と「非情の正義」を掲げる国連軍本部。

 そんな国連軍本部の圧倒的スケールに立ち止まって目を見入ってしまう一同に、国連軍の兵士が彼らを拘束する手錠と繋がっている鎖を引っ張り「さあ、来い!」とまたしても無愛想な物言いで強引に移動させていく。

 皆がほぼ一列で並び、先頭を行く兵士が鎖の先を携えて連行しようと揃って歩き出す。

 すると歩き出した矢先、またしても一同の目を独占する光景が瞳に映った。

「ま、マジかよ……!」「そんな、始めて見た……」

 生まれて初めて初見する、その巨大な影に誰もが絶句する。

「巨人だ!」一同が始めて見た、その巨大な人影の正体は巨人であった。彼らの目の前を巨人の国連軍兵士が、それも三人も同時に通り過ぎようとしていたのだ。

 すると三人のうち一人の巨人が立ち止まり、徐に腰を曲げて連行されている一同に巨大な顔を近付けた。

「ッ!」

 圧倒的巨大な人面に、新世代型達は一驚してしまう。が、腰を曲げて見下ろす巨人が、一行の先頭に立つ兵士に向かって檄を飛ばしながら訊ねてきた。

「ウオオオ……ッ! どうした、また新しい囚人か?」

「これは、ジョン・ジャイアント中将殿!」

 訊ねられた先頭の兵士はすぐさま敬礼のポーズを構えて返答する。

 まるで大航海時代の海軍提督を彷彿とさせるような装飾が施された服装をした巨人族の男性兵士、ジョン・ジャイアント中将は勇ましい檄を連行する兵士にぶつけながら会話を続ける。

「まったく、現政奉還だが何だか知らんが余計に悪人共が湧いてきて急がしいったらありゃしないわ。その囚人共も聴取が終わり次第、インペルダウンに連行するのか?」

「いいえ中将殿! 彼らはこの後、聴取される予定の重要参考人であります! 通報により一時的に身柄を拘束したまでなのであります!」

「ははっ、そうかそうか! ではたっぷり聴取してやるまで、誰一人であろうと決して逃がしてはならんぞ!」

「はッ!」

 檄を飛ばされた兵士は敬礼のポーズのまま受け答えし、檄を飛ばしたジョン・ジャイアント中将は聞きたい事を訊くと何事も無かったかのように立ち去っていってしまった。

「…………………………」

 生まれて始めて見た巨人族に加わり、威勢よく檄を飛ばしてきたジョン・ジャイアント中将の圧倒的迫力に連行される誰もが言葉を呑み込んでしまう。

 が、すぐに兵士に「こら、立ち止まるな! 歩けッ」と叱り付けられ、再び強引に歩かされてしまう。

 補導されながら前進していく一行が辺りを見渡してみると、そこら中で国連軍の兵士が慌しく走り回っているのが目に止まった。

「何だか忙しそうですね……」

「多分、現政奉還の影響で忙しくなったんだろうね」

 連行されていくチョコの疑問に、ギュービッドが国連軍総長 足正義輝が発起した現政奉還の影響で秩序が激しく乱れた世界情勢の中、国連軍も多忙化しているのだろうと釘を刺す。

 一方で、テレパシー能力を持つ琴浦春香と斉木楠雄の影響で、共有感知で互いの思考を共有してしまう新世代型二次元人たちの脳裏には、そんな兵士達の思考が勝手に入り込んでいってしまう。

(チクショーー、彼女とデートの約束していたってのに急に仕事が増えて……新世代型め、恨むぞ!)

 突然の現政奉還に仕事が多忙となってしまったが為にプライベートを満喫できずにいる兵士は、現政奉還を発起した将軍と同じ新世代型二次元人を恨む思想を抱いていた。

(南米、中央アジア、アラブ……テロ事件が一層増えてきてる! 仕事がダルい)

 世界各地でテロが発起されている現状に、仕事に対してやや欝気味になる兵士もいた。

(聞いたか、スター・コマンドーが聖龍隊を離反したんだってよ)

(前々から村田順一は排除法に懸念を抱いていたからな……あのお人好しのバーンズじゃ、聖龍隊を仕切れるとは到底思えないしな)

 更に兵士同士の会話で、彼らの耳にも聖龍隊屈指の総合部隊スター・コマンドーが離反したい事実に加え、新総長になったバーンズの器量では聖龍隊を仕切るのは無理だなと言う意見までも感じ入った。

 

 国連軍本部に連行されるという緊急事態の中、新世代型二次元人は始めてみる国連軍本部の巨大さとそれに劣らない巨人族との遭遇に圧倒されるばかり

 

 そして一行は基地領内でも一際巨大な建物、国連軍本部内へと連れて行かれた。

 

 

[昔語り]

 

「ここに入れ」

 無粋な兵士の一言で、一行が押し込められたのはまたしても狭い小部屋。それも今度は鉄格子が嵌められた牢屋の中であった。

 狭い護送船に続いて今度は牢屋に押し込められ、一同は堪りかねなかった。

「おい! また閉じ込めるのかよ! おーーい……っ」

 新世代型の真鍋義久が兵士を何とか呼び出そうとするものの、その声は空しく響くばかりで誰も牢屋には来てくれなかった。

「おい、真鍋とやら。少しは落ち着け、ここで焦っていると余計怪しく見られてしまう。早く自由になりたければ、それ相応の態度を示さなければならん」

「そうは言ってもよ! おれたち韓国からずっと片身を寄せて理不尽な扱いを受けているだぜ。何もしてないのに……」

 牢屋の外に呼び掛ける真鍋に、本能字学園を実質支配している生徒会長にして峻厳苛烈で威風堂々な性格の鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が説き伏せるが、真鍋は自分達が置かれた理不尽な現状に堪らない心境であった。

 すると皆が押し込められている牢屋に二人分の足音と何か固いものが床を蹴り付ける音の、三つの音が近付いてきた。

 三つの異なる足音は牢屋の前で立ち止まった。

「あ! 君はあの時の……」

 プロト世代のチョコが近付いてきた二人のうちの一人である少年の顔を見てあっと驚く。

「す、すいません……先日は色々と」

 やって来た少年は韓国で皆と奮戦を起こした挙句、事前に国連軍に通報して皆が連行される切っ掛けを作ったあの山中鹿之助であった。そして床に当たる固い物音の正体は、鹿之助のお目付け役である鹿のおやっさんの蹄が当たる音だった。

 更に鹿之助と共に牢屋にやって来たのはおやっさんだけでなく、一人と一頭の傍らには以前にも皆が見かけたヨレヨレのトレンチコートを着込んだ中年の男性も付き添っていた。

「いやはや皆さん、今回は見習いの鹿之助の所為で大変な目に遭わせてしまって誠に申し訳ありません」

「け、警部さん!?」

 鹿之助と共に訪ねに来てくれたのは、ICPOの銭形警部であった。自分の下に研修しに来た山中鹿之助の早とちりな行動で国連軍に連行される破目になってしまった経緯に頭を下げる警部を見て、イオリ・リン子ら新世代型達も一驚する。

「お、お前はあん時の! テメェ、よくも国連軍に通報してくれたな! お陰でおれ達、見たとおり閉じ込められっ放しだよ」

「ご、ごめんなさい!」

 自分達が連行された経緯を引き起こした鹿之助の姿を目視した新世代型の真鍋義久の怒号に、鹿之助本人は思いっきり謝罪の一言を言い放った。

 そんな立腹する真鍋や新世代型たちを前にし、鹿之助同様に銭形警部も申し訳なさそうに再び頭を下げる。

「いや、この度は本当に申し訳ありませんでした。し、しかし、鹿之助も何も悪気があって通報した訳ではありません。わしがもっと早く、鹿之助に国連軍は容赦のない軍隊だと伝えておけば、皆さんがこうして不自由な思いをしなかったのかもしれません」

「まあ、過ぎた事はもう止しましょう。それより山中鹿之助よ、私達が何も危険な二次元人とは違うと解ってくれたか?」

「は、はい! もう警部にお説教された上、おやっさんにもこってり絞られたんで理解しました。本当にごめんなさいっ」

 謝罪する警部に過ぎた事と述べた直後、鹿之助に自分たち新世代型が危険な二次元人ではないと解ってくれたか訊ねる鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の言葉に、鹿之助は思わず涙目になりながらも再び頭を深々と下げる。

「それにしても警部さん、なんで貴方と鹿之助君が此処に来られたんですか」

 プロト世代でLBXプレイヤー兼講師の海道ジンが銭形警部になぜ二人が国連軍本部にいるのか訊ねた。

「い、いやぁ、皆さんが国連軍に連行されていってしまわれたので、心配で駆けつけた次第であるのです。いや、本当にこの度は申し訳ありません!」

「本当に、ごめんなさい!」

 頭を下げる銭形警部の横で深々と平謝りする鹿之助の姿を見て、二人とも本当に悪意があった訳ではなかったと理解する牢屋の中の二次元人たち。

 そして多くが未だ俄然としないものの、鹿之助と銭形警部の心からの謝罪を受けて半ば仕方ない事態だったのだと呆れ果てた。

 すると此処で韓国の港では国連軍の介入により、まともに話ができなかった銭形警部に話の矛先が移った。

「それにしても、まさかルパン捜査の第一線で活躍する銭形警部とお会いできるとは思いも寄りませんでした」

「い、いや……わはははっ」

 本来は怪盗ルパンⅢ世を捕縛するべく多忙な日常を送っている警部と知り合えた事に賞賛の意を示す新世代型で教師の猿田学の言葉を受けて、銭形警部は嬉しそうに笑う。

「いや、ほんとにまさかルパンⅢ世で有名な銭形警部と会っちまうとは驚きだぜ。小説でもかなり聖龍隊同様、活躍していたからな」

「んっ? 小説じゃと?」

 新世代型で大衆料理が得意の幸平創真が発した小説の単語に反応する警部。すると警部の反応を見て、新世代型達が訳を話した。

「例の小説ですよ。ほら、小田原修司が書いた<聖龍伝説>のことっすよ。今、荷物はほとんど国連軍に没収されているから手元にありませんけど、おれ達全員偶然にもそれ携帯しているんすよ」

「こんなに大勢が同じ本を持っているって、何だか可笑しな話だけどあの小説は有名だから結構手元に置いている人が多いのかもしれないしね」

 真鍋義久と琴浦春香が語る<聖龍伝説>の自伝本の事を聞いて、銭形警部も思い出した。

「おおっ、そういやそんな本、出版されていましたな! いや、わしは仕事柄忙しくて本もまともに買ってはいないが、聞いた話によるとあの修司君の自伝本で、聖龍隊の昔話なんかも載っているみたいじゃのう」

 昔、自伝本を記した張本人 小田原修司と彼が結成した聖龍隊と共にルパン絡みの事件を幾度となく解決してきた銭形警部は、まさかルパン一味との奮闘を最初に共同で解決した話も載っているとは露知らず、<聖龍伝説>の事を思い出す。

 すると同じく小田原修司の自伝本について思い出した山中鹿之助は、小田原修司について耳にしたある噂を今にも倒れそうなほど恐怖で真っ青な顔で語り出した。

「お、小田原修司って……確か敵の人肉を喰らうほどの鬼だって聞いた事があるんですけど」

 しかし鹿之助が顔面蒼白で語る噂を聞いた銭形警部は慌てて話し返す。

「こ、こら鹿之助! また性懲りもなく耳にしただけの噂を言うんじゃない。それに修司君は人を食べるなんて末恐ろしい真似は絶対にしない子だ。昔何度か修司くん達と合同でルパン絡みの事件で捜査したりして顔を合わせたが、あの子はそんな事をする少年では決してなかった! ま、まあ、確かにちょっと変わった子ではあったが……少なくとも! 人を喰らう様な子では無かった」

「え~~、でも小田原修司って自分の利害に反する[[rb:異常者 > ヒール]を根絶やしにするほど残虐な武人だったって聞いていますよ。人一人ぐらい喰っていても、可笑しくないんじゃ……」

「ば、ばっかも~~ん! 修司くんがあくまで[[rb:異常者 > ヒール]を討伐していたのは、我々二次元人の尊い未来のためだったのだ! その為に残忍な行為も数知れず行ってきたが、人喰いなんて常軌を逸した行動をするほど落ちぶれてはおらん!」

「ひっ……」警部に叱り付けられる鹿之助は思わず縮こまってしまった。

 と、そんな小田原修司を良く知っているかのような言動を続けて話す銭形警部に、牢屋の中の二次元人たちは注目した。

「銭形さんって、昔ルパンⅢ世やパンサー・クローの事件意外にも、聖龍隊と一緒に事件を解決してきた事がお有りなんですか?」

 プロト世代のチョコが訊ねると、銭形は懐かしそうに昔の事件を思い返しながら語ってくれた。

「おお、懐かしいのう。あの事件が最初に聖龍隊と合同でルパンを追っていた事件じゃったわ。あん時は途中でパンサー・クローが割り込んできて、それから最終的に修司くんが聖龍使いじゃと判明して……いやぁ、色々あった」

 聖龍隊との最初の事件を思い出して、銭形警部は少しばかり懐かしそうに顔を微笑ませる。

「しかし何じゃ、君達は修司くんとは会った事も無いのにそこまで関心を抱いているとは……いや、わしらが活躍していた時代が昔話みたいで面白いんじゃろ」

「い、いえ、そんな事はないデーース。銭形警部と聖龍隊の活躍、ほんとにスゴイ話ばかりでした」

 自分らが活躍していた時代が今では昔話みたいに語り継がれていて興味が湧いているのだろうと述べる銭形警部に、新世代型のアリス・カータレットがそんな事はないと訂正する。

「それにしても、今の若者がこぞって修司くんの自伝本を携帯しているとは……いやはや、まあ彼自身も発達障害で苦しんでいた経緯を告発してる本じゃし、流行なのかもしれんな」

 <聖龍伝説>の自伝本を多くの若者が携帯している事情について一種の流行なのかと思う銭形警部。

 

 と、その時であった。

 銭形警部と牢屋の中の二次元人たちが和気藹々と談笑している所に、国連軍の兵士がやって来た。

「面会の時間は終わった。これより参考人たちの聴取ゆえ、お二人、と一頭は早々に帰ってください」

「なぬっ、聴取と言うと取調べか!? し、しかしこの子達は鹿之助の手違いで通報してしまっただけで、犯罪者では無いんですぞ!」

「いいや、聴取と言っても本人確認など簡単な質問をいくつかするだけで、普通の事情聴取なだけだから安心しろ。それ以前に国連軍の決定事項、反論は許しかねませんぞ」

 やって来た兵士が聴取と言い出して取り乱す銭形警部に対し、兵士はいくつかの質問をするだけどそれ以上の反論を許さない言動を強く述べる。

 そして牢屋の中の二次元人たちは容れられた時と同じ様に、兵士に鎖で繋がれた状態で外に出される。

「なあ、せめてこの手錠ぐらい外してくれてもいいだろ。これじゃ歩きにくくて仕方ないよっ」

「うるさい! 貴様らが逃亡しない為に嵌めているんだ、事情聴取が終わるまで我慢しろ!」

 両手首に嵌められている手錠を何とかして外して欲しいと訴える黒魔女のギュービッドだが、国連軍の兵士は事情聴取が終わるまで耐えろとまともに話を聞いてはくれない。

 そして取調べが行われる部屋まで連行されていく一同を見守る視線で送り出すしかなかった銭形警部と鹿之助とおやっさん。

 最後に鹿之助は「本当に……ごめんなさい」と呟きながら再度皆に頭を下げるのだった。

 

 

[取調べ]

 

 国連軍本部の最重要取調室にて、連行された二次元人たちの聴取が開始された。

「聴取はそれぞれ五つの部屋で行われる。各部屋から兵士が呼び出すから、順番どおりに部屋に入室するように」

 兵士の説明を聞いて、取調べが五つの部屋で同時に行われ、すなわち一度に五人もの二次元人を取り調べる魂胆だと言う事がはっきり解った一同。

 

 そして取調べが行われ、最初に呼び出されたチョコとギュービッドがそれぞれ別の部屋に呼ばれる。この時になって、ようやく全員の手錠と鎖が外された。

「やあ、お嬢ちゃん、わざわざありがとね。早速だが君の名前とか聞かせてもらえるかな。これ仕事でね」

「は、はい……黒鳥千代子です」

「そうか。いや、そこまで緊張しなくても良いよ。私たちは何も君らを取って食おうとしている気じゃないんだから」

「は、はい……!」

 縦縞スーツに口ひげと丁髷という非常にインパクトのある姿の将官に緊張するチョコ。しかし相手将官の紳士的な対応に、チョコの緊張は少しほぐれた。

 

「君は……ギュービッド、黒魔女インストラクターで間違いないんだよね」

「ああ、そうだよ」

 一方のギュービッドは、自分たちを犯罪者扱いの様に聴取に取り掛かる国連軍のやり方に不満を抱きつつも、頭と髭が同じくらい長く、丈の長い帽子を被っている兵士の質問に受け答えしていた。

「なるほどなるほど……ふむふむ、男子にしては黒魔女のインストラクターというのは変わっているね」

「ってコラッ! アタイはか弱い女の子だっての!」

「え!? 男の子じゃないの?」

「違うって!!」

 一見美男子に見間違えてしまうギュービッドの性別を間違えてしまう丈の長い帽子を被った兵士に、ギュービッドは思わず怒鳴り返してしまう。

 

「直枝理樹、だね」

「は、はい」

「うむ、設定誕生日が1月17日。ナルコレプシーという、日中に急激な睡魔に襲われて眠ってしまう睡眠障害に罹患(りかん)しているのか」

「はい……」

「うむ。それで、女装が趣味……」

「ち、違います! 女装は趣味じゃありません!」

「ッ! 趣味じゃないのか!?」

「違います! 誤解しないでくださいっ」

 自身の障害について理解を示してくれる相手の将官に返答する直枝理樹であったが、趣味が女装である事は頑なに否定した。

 

「君の名は……」

「はい、斉木楠雄です。あ、はい、漢字はそれであっています」

 割と見慣れない名前に相手の将官が戸惑いそうになるのを見越して、斉木は名前の漢字があっている事を伝える。

「此方の情報によれば、身長は167、体重は52キロだがどちらとも可変が可能らしいな。誕生日は8月16日で、生まれ付き多くの超能力を備えているのだな。素晴らしい、ぜひ国連軍に加盟してほしいものだ」

「……やけに僕の、いいえ、僕たちの事を知っていますね」

「はは、我々国連軍の元には三次元政府から多くの二次元人についての情報が日々入ってくるからな。基本的な二次元人の設定や詳細など把握しているのだよ」

「ふぅん……」

 自分たち二次元人の詳細情報を把握し切っている国連軍の体制に、斉木楠雄は若干のプライバシーの侵害を感じた。

 

「キャサリン・ルースだな」

「は、はい……っ」

「………………………………」

「………………………………」

「……どうしたんだ」

「っ!?」

「どうしたと訊いているんだ。なぜ黙っている?」

「はっ、はい……(だって怖いんだもの!)」

 視力を失った左目の白目と右目からの睨み、それに加えて顔中に傷があるという何ともインパクト満載の国連軍将校を前に縮み込むキャサリン・ルースに相手の将校は言い放つ。

 

「幸平創真、名門料理学校の遠月茶寮料理學園の編入生……得意なのは大衆料理……ううん、最近書類の仕事やってないから慣れてないわい」

「おい、いつまでかかってんだ。俺達は早く帰りたいんだけど……」

「まあ、そうイライラしないで。私らも人手がいなくて、一般の兵士に任せている尋問を担当する事に成っちゃってね。慣れてない作業だから、どうしても遅くなっちゃうんだよ。ごめんね」

「ふぅ……(そうかよ。それにしてもやけにニコニコ顔で、逆に不気味だな、この将校)」

 尋問を受ける幸平創真は、相手のタラコ唇でニコニコ顔の中年男性にある意味威圧感にも似た不気味さを感じ取っていた。

 

「私、宮内れんげ! 小学一年生の女の子なのん!」

「はは、元気のいいお嬢ちゃんだ。解ったよ、他にも色々と聞かせてね」

「わかったのん!」

 強面の軍人が相手だと言うのに、いつもと変わらない元気一杯の態度で対応する新世代型の宮内れんげに相手将校の顔もほころぶ。

 

 

 基本的、間違いで連行されてしまった二次元人を相手に国連軍は丁寧な対応でほのぼのとした雰囲気の中、行われた。

 

 

 だが、やはり非情の正義を掲げる国連軍。一部の二次元人だけには、過去の経歴から容赦の無い尋問で責め立てていた。

 

「森谷ヒヨリ……だな」

「は、はい……」

 唯一視力を持つ右目で睨み付けられながら尋問される森谷ヒヨリは恐縮しながら問答に堪えていた。

「貴様は過去に陰湿な虐めをという大罪を犯し、さらに両親が経営している森谷道場の門下生に一般人を襲撃させ、その後は殺人容疑で誤認逮捕された経緯もあるらしいな」

 今となっては森谷ヒヨリにとって忘れがたい罪科だった。かつて想いを寄せていた真鍋義久を振り向かす為に、彼と好意にあった琴浦春香を虐め、更に両親が経営している道場の門下生に真鍋を襲わせたものの手違いで危うく真鍋を殺めかけてしまった過去。さらにその後、自分達が住んでいる町で起こった殺人事件の容疑をかけられ誤認逮捕された経緯まで指摘され、森谷は切羽詰まった様子で弁論しようとしたが「わ、私はただ……」

「口を慎め! 貴様の様な陰湿な異常者(ヒール)の存在が一人いるだけで、世界の秩序がどれほど乱れるのか……解っているのか!!」

「っ……!」と、反論しようとしただけで怒鳴り返されてしまう事態に、森谷ヒヨリはすっかり脅え切り涙目になってしまった。

 

 更に国連軍の容赦の無い尋問は続いた。

 

「大門ジョセフィーヌ。神威大門統合学園の学園長か…………本来は玩具として作られたLBXで疑似戦争を起こしていたとは。見た目に反して恐ろしい男、いやオカマだな! 最終的に生徒達の命を危険に晒す羽目に至らせるとは……!」

「仕方なかったのよ! 世界中から大半の戦争を失くすには、それしか……それに、今は亡き東郷総理だけじゃない。アナタ達が従っている国連だって、命じていたのよっ」

 過去に学園で行われた調停システム、ウォータイムについて大門ジョセフィーヌは運営側で今は亡き東郷総理だけでなく国際連合も加担していた事実を突きつけて、思わず論争に発展しそうになってしまう。

 

「……私は貴様の様な存在には反吐が出る」

「ッ……!」

「平然と弱者を虐げ、己の身勝手な思想だけで生き続ける貴様など、存在そのものが言語道断だ!」

「な、なんだと……ぐはっ」

 思わず反論しようとする四宮小次郎だったが、取調室の室内には尋問を受ける人間が暴れた際に待機している国連軍の兵士が複数待機しており、その兵士たちに四宮小次郎は取り押さえられ、顔を机に押し当てられ、強引に黙らせられてしまった。

「ッ……」

 顔を強引に机に押さえ付けられる四宮が自分を取り押さえる兵士たちを睨み付けるが、兵士たちは涼しい顔で頑なに四宮を力で押さえ付け続ける。

「いいか、貴様の様なブラック・リストに載せられた二次元人など、もはや過去の罪状で存在そのものが許されざるモノに成り果てたのだ! 貴様らブラック・リストの連中を世界が生かしてやっているだけでも有難く思えッ」

「ッ!」

 存在そのものが罪と激しく説き伏せる顔中傷だらけの将校の言い分に、四宮は顔を歪ませる。

 

「……盗作か。他人が作ったものを平然と己の物と偽り続ける、まさに許しがたき悪だな」

「………………」

「よいか。貴様は今後、過去の罪科からは決して逃れられぬ。死ぬ時まで罪人としての十字架を背負い続けながら、苦しみ続けろ。それが貴様というゲス野郎の末路だ」

 過去に親友の曲を訳があってとはいえ盗作して使用してきた事を指摘された速水ヒロは何も言い返さなかった。

 

 取り調べという容赦の無い尋問は、その後も時おり過激に続けられた。

 

 

[国連軍の兵士たち]

 

 時にはほのぼのと、時には苛烈に責め立てられ、連行されてきた二次元人達の取調べは続けられた。

 部屋の外の廊下端の横長椅子には、尋問を終えた二次元人が草臥れた様子で各々休んでいた。

「ふう、酷い目に遭った。あんな強面で言い詰められたんじゃ、答えたくても答えられないぜ」

「ほんと。でも、流石は国連軍。私や斉木さんの様な能力者が相手でも毅然とした態度で普通に接してくれたわ」

「それもそうですよ。国連軍には多くの能力者も在席していると聞いています。そして実力のある順にそれぞれの位も高くなっていくみたいですよ」

 強面の将校相手に尋問を受けた真鍋義久が愚痴を零すと、それに反して琴浦春香は自分の様な能力者相手にも平然と対応してくれた事を嬉しく思う。すると二人の横で休息していた室戸大智が、それは国連軍にも多くの能力者が在籍しているからだと事実を指摘する。

 だが穏やかに会話する三人とは反対に、存在そのものが罪とまで言われてしまった森谷ヒヨリは暗鬱とした物持ちで酷く落ち込んでいた。

 すると此処で真鍋がある事に気付いた。

「……そういえば。ここに連れて来られてから、おれ達の共有感知って奴が鳴りを潜めているよな」

「そういえば。私がテレパシーで感じ取っているみんなの想いも、真鍋くんたちには伝わってないね」

 新世代型二次元人同士にしか発生してない、互いの思考を共有してしまう【共有感知】の影響が治まっている現状に真鍋と琴浦が最初に気付いた。

 

 それからしばらくして、廊下で休息する二次元人達の前に衝撃的な人物達が歩いてきた。

「いやあ、今日の戦いは疲れた疲れた」

「まったくだ。こんな日は早々に汗を流した方が気分が良いぜ」

「それで、そのあとは冷えたビールで一杯やるのが一日の疲れをとる秘訣だな! ガハハッ」

 廊下の奥から歩いてきたのは、全身を国連軍の紋章が施された甲冑を身に着けた多種多様な半人半獣の二次元人達であった。虎であったり獅子であったり、どちらにしろ現実では大型の動物である獣人が多量の返り血を鎧に付着した状態で廊下を通り過ぎていったのだ。

「う、うわぁ……獣人の戦闘部隊だ」

「ほんとに国連軍は凄いですね。実力があれば種族問わず、入隊させているんですから」

 通常の人間よりも肉体能力が突出している獣人すらも軍人として入隊させ、戦闘に参加させる国連軍の方式に改めて凄みを感じる真鍋に室戸たち。

 

 更にそれから数十分後。何の動きもない二次元人達であったが

「……うぅん……」

「……トイレだろ燃堂。そこの兵士にわけ話せば行かせてくれると思うよ」

「う、うん。そうだな斉木……すいません、トイレ行かせてください」

 挙動不審な燃堂力に横で座っていた斉木楠雄がテレパシーで彼のトイレに行きたい欲求を察し、燃堂に廊下で起立して自分達を見張っている兵士に言って便所に行かせてもらえばと提案する。これに燃堂は即決で兵士に訳を話す。

 本来は参考人の逃走防止として兵士がトイレ内まで同行する決まりであったが、まさか強面だけで極普通の高校生男子が世界的にも大勢力である国連軍の本部から逃走する訳がないと判断された燃堂力は、一人でトイレに行かしてもらう事が叶った。

「あ~~あ、いつになったらアタイたち解放されるんだろう」

「全員の取調べが終わるまでは済みそうにありませんよ」

「それにしても……やけに恐い顔付きの軍人さんばっかりでしたね、取調べ。何だかヤクザ映画に出てくる様な顔ばっかみたいですね」

 いつまで拘束されているのか不満が募るギュービッドにチョコは兵士達の態度から連行されてきた全員の聴取が済むまでではないかと言い、皆の話を小耳に入れた桃花・ブロッサムはその聴取を行っていた相手将校のほとんどが強面の厳つい顔付きで、まるでヤクザの様な面構えであった事に多大な違和感を覚える。

 すると此処で、今までの疲労が堪っただけでなく持病のナルコレプシーによって、取調べを既に終えていた直枝理樹がふと睡魔に襲われて眠ってしまった。

「あ、理樹、また症状が……」

 理樹と同居している井ノ原真人(いのはらまさと)が持病のナルコレプシーで睡魔に襲われ、眠ってしまう直枝理樹が倒れないように壁へ立てかけ直した所に、事情を知らない兵士が歩み寄り檄を飛ばしてきた。

「おいっ、何を寝ている! まだ貴様らの聴取は、全員終わってないんだぞ!」

「ま、待ってください。彼は……」

 檄を飛ばす兵士に真人が訳を話そうとした、その時。

「どうしました?」

 廊下の奥から歩いてきた一人のスーツを着た男性が立ち止まり、声をかける。

 兵士は男性の顔を見るや否や態度を180度変えて即座に敬礼した。

「こ、これはっ、ペトロフ補佐官殿!」

 緩いウェーブがかかった長い銀髪に、左側にピン止めを三本つけた色白の男性を見て兵士は慌てて敬礼のポーズを示す。

 すると男性は睡魔に襲われて今にも着席している長椅子から姿勢を崩して落ちそうになる直枝理樹を見て言った。

「おやおや、ナルコレプシーですか。このままでは椅子から落ちてしまいますよ。よいしょっと」

 男性は理樹がナルコレプシーの疾患者である事を知っており、椅子から崩れ落ちそうになる理樹の姿勢を直して、椅子から落ちないようにしてあげる。

 そして男性は兵士に「良いですか、彼は睡眠障害の一種を患っているんです。その事を考慮して今後は職務を行いなさい」と言い聞かせた。兵士も男性からの説明に「ハッ」と敬礼のポーズで承諾する。

 すると此処で、聴取を終えていた一人のプロト世代、海道ジンが男性に向かって話し掛ける。

「あの」「なんですか」

 男性は穏やかな表情をジンに向けると、ジンは男性に訊ね始めた。

「貴方も国連の方なのですか?」

「如何にも、自己紹介がまだでしたね。私は国連軍元帥補佐官を務めておりますユーリ・ペトロフと申します」

「国連軍元帥補佐官……! つまり、あの高名な赤犬元帥の補佐を務めているのですか」

「はい。マグマード・岩田元帥には前々より色々と評価してもらっておりますので……」

「なるほど……それで理樹くんの持病を既に知っているのも、やはり既に三次元政府から入ってきた情報を貴方も周知しているからですか」

「そうです。全ての二次元人の情報を把握しておかなければならないのも、我々国連の義務なのです。ご気分を害されているのは重々承知ですが、これもまた世界の平穏を安定させる為の得策なのです。ご承知を……」

「………………………………」

「では、私はこれで。皆様方、新世代型も色々と大変でしょうが、いま大変なのは私たち国連側も同じ。現政奉還の影響で世界各地の治安が乱れてしまい、その後始末に奔走しているので私自身も忙しいので」

 海道ジンと一通り会話した国連軍元帥補佐官ユーリ・ペトロフは話し終わると、そそくさとその場から立ち去ってしまった。

 国連にはいま二つの正義が掲げられている。かつて鬼神と畏れ崇められていた小田原修司が掲げた『非情の正義』そして現在の元帥赤犬が掲げる『徹底的正義』。その徹底的正義を掲げる赤犬に見初められた何処となく常軌とは一戦をしいた雰囲気のユーリ・ペトロフに、彼と会話した海道ジンもその他の二次元人達も只ならぬ感情を抱いていた。

 

 一方その頃、一人トイレに小便をしに向かった燃堂力は用を済ませてトイレから出てきた所であった。

「ふぅ~~、間に合った。船に乗せられてから、一回もトイレに行けなかったから溜まってだぜ」

 心身ともにすっきりとした燃堂が、手をハンカチで拭うと皆の所に戻ろうと足を進ませようとした。

 すると燃堂が皆の所に戻ろうと歩き始めた矢先、トイレの近場に設けられている休息所そこの自動販売機の手前で何やら自販機の真下を探っている人物が目に入った。

「ん、あの人……」

 燃堂が思わず立ち止まり顔を向けて確認してみると、その人物は仕込み刀が納められた鞘を使って必死に自販機の下を探っていた。

 根は心優しい燃堂は気になってしまい、その人物に声をかけた。

「あ、あの~~」するとその人物は燃堂の声に気付いたのか、顔を燃堂に向けた。

 燃堂は自販機前で戸惑っていた人物の顔を見て一瞬驚いた。何故ならその人物は短く刈り上げた黒髪と顎鬚、更に両目が大きな傷跡で塞がれた盲目で強面の大柄な男性であったのだ。

「あ、あの……どうしました?」

 一瞬怖気付いた燃堂であったが、勇気を出してその逞しい男性に声をかけてみると男性は燃堂に返答した。

「い、いや……あいにく手を滑らせてしまいやして、小銭を自販機の下に落っことしてしまったんで」

「ああ、おじさん小銭を探していたんだ! それなら俺が取ってやるよ」

「えっ、良いんですか」

「もちろんだよ。困った人は見逃せないよ」

 普段は強面ゆえに善行が余り報われない燃堂であるが、小銭を自販機の下に落としてしまった男性を放っておく事は良心的にできなかった。

 そして燃堂は男性から仕込み刀が納められた鞘を借りて、目の見えない男性に代わって自分の視覚で自販機の下を覗きながら手探りで小銭を探し出す。

「えっとえっと……おっ、あったコレかな」

 何度も自販機の下を鞘で探り続けた燃堂の目に、一枚の硬貨が飛び込んだ。燃堂は鞘を器用に使って硬貨を自販機の下から自分の許へと寄せる。

「おじさん、このコインで良いの?」

 硬貨を自販機の真下から探り寄せた燃堂は硬貨を拾うと、それを男性に向けて手渡そうとする。男性は燃堂が差し出した硬貨を彼の手の平の上に乗せたまま指の触覚で自分の物かどうか確かめる。

「……おお、これですわい。いや、ありがとな坊主」

「いや、何でもないっスよ。アレ、それにしても俺が坊主っていうか子供だってよく解ったな」

「なに、声の感じや雰囲気から精々十代半ばだってのは解りやす。目が見えなくっても、はっきりと見えるものも世の中にはたくさんあるんでやんすよ」

「そっか。俺、目が見えるからそんな風に思ったこと一度も無いぜ。おじさん、これからは気をつけてな」

「ああ、ありがとよ少年」

 男性は燃堂から硬貨を受け取ると礼を言い、燃堂の方も恩着せがましくせず硬貨を手渡すとそそくさとその場から立ち去り男性と別れた。

 だが燃堂は男性と別れて皆の元に戻る道中、先ほどの男性について珍しく考え出した。

(あれ、でもあの男の人なんで軍服なんか着物の上に着ていたんだろう。見た感じ、なんだか仁侠映画の主人公みたいな顔だったのに……)

 燃堂は先ほどの男性が着物の上に国連軍の軍服を羽織っており、任侠的な性格も相まって軍人とは思えなかった。

 

 

[中将]

 

 トイレから出た燃堂が皆の所に戻ってきたちょうどその時、一人の兵士が尋問を受けた二次元人たちに呼び掛ける。

「よし! これから全員、移動してもらう。付いてきなさい」

 皆に呼びかけた兵士を先頭に、意見交換していた二次元人たちは詳しい訳も聞かされず付いて行かされる。

 兵士を筆頭に、しばらく廊下を進んでいると、とある扉の前で兵士が立ち止まり、その扉を開いて二次元人たちに言い放った。

「さあ、各自この部屋に入るんだ。並べられた椅子にそれぞれ着席する様に」

 半ば強引に部屋の中に導かれる二次元人たちが入室すると、部屋の中には多くの椅子が並べられており、前の方には長いテーブルとその前に先ほど彼らの聴取を担当した将官達が既に着席していた。

 物々しい雰囲気の中、二次元人たちは逆らわず言われた通りに室内に並べられた椅子に各々着席する。すると椅子はちょうど人数分、並べられていた。

 全員が着席したのを確認すると、前方のテーブルに着席している将官の一人が口を開いた。

「取調べ、ご苦労様。君達は一応、全員が危険性の無い二次元人であると判った。これから迎えが来るだろうが、それまで今度は集団で二,三、質問させてもらいたい」

 縦縞スーツの将官の発言に、二次元人達は一応自分達の危険性の無さと迎えが来ると言う発言に多少の安堵感を覚える。

 すると此処で二次元人たちの中から一人、鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が立ち上がり、微塵の恐れや動揺を感じさせない立ち振る舞いで発言した。

「済まぬ、此方からも訊きたい事が」「っ」

「ちょ、ちょっと鬼龍院! なに言い出してんだっ」

「皐月様、ちょっと此処は一旦落ち着いて冷静になりましょう」

 突然、国連軍の将官相手に質問したいと言い出す皐月の発言に、ライバルの纏流子と幼馴染の蛇崩乃音が慌てて皐月を宥めようとする。が、皐月は微動だにせず威風堂々と毅然とした態度で将官たちに物申した。

「あなた方は我々の詳細について既に知っていたようであるが……三次元政府から既に私達の個人情報を入手しているのは本当か!?」

 自分たち二次元人を生み出した三次元政府より、自分達の詳細設定つまり個人情報を入手している事実について皐月は改めて国連軍に問いたかったのだ。

 これに縦縞スーツの将官は重い口を開いて語った。

「……そうだ。我々、国連軍の下には世界中の三次元政府によって収集された二次元人の情報がいつも山の様に入ってくる。当然、君らプロト世代や新世代型二次元人の詳細だって筒抜けなのだ。プライバシーの侵害にも思えるが、世界の安定を図るためにはどうしても必要な事なのだ! テロが頻繁な現代、人々は自由よりも安全を優先しているのが現状なのだ」

 将官の言葉に二次元人達は納得できない心情に浸っていると、皐月の質問に受け答えした将官が厳つい表情で申した。

「……まあ、確かに。君達の情報ばかり周知しているのも何かしら不服なのは理解できる。お詫びと言ってはなんだが、私達の名前を教えておくよ。私の名はモモンガ、中将だ」

「ちゅ、中将!?」「まさか……国連軍でもトップクラスの位の将官だったとは!」

 名乗り挙げる縦縞スーツに口ひげと丁髷(ちょんまげ)という非常にインパクトのある姿をした紳士的な中将モモンガの中将という単語に、相手将官がまさか国連軍でも随一の戦力を誇る中将だったと初めて知った二次元人達は驚愕してしまう。

 すると自身の名を名乗ったモモンガに続いて、他の四人の将官たちも名乗り始める。

「わしはヤマカジ、同じく中将」「ストロベリー、以後よろしく」

 立派な顎鬚を生やしている唇が厚いニコニコ顔の中年男性のヤマカジ、帽子と髭が異様に長いストロベリー。

「ドーベルマン」「オニグモじゃ……」

 只ならぬ威圧感を発しながら名乗る視力を失った左目に顔中傷だらけのドーベルマンと、兜を被った長髪のタバコを銜えているオニグモ。

 二次元人達は此処で初めて、自分たちを聴取し、今目の前に勢揃いしている将官たちが国連軍でも秀でた位である中将の、モモンガ/ヤマカジ/ストロベリー/ドーベルマン/オニグモである事を知った。

 相手将官が国連軍でもトップクラスの中将であった事を知り、ざわめき立つ場内にてプロト世代の海道ジンが挙手して中将たちに問うた。

「な、何故あなた方国連軍でもトップの方々が、私たち一般人の事情聴取を行っているんです! 本来は、もっと大規模な有事にしか動かないはず……!」

 国連軍でも指折りの実力を持つ中将が、何ゆえ一般人の事情聴取を自ら率先して行っているのか常識的に考えても疑問に残る事実をジンが訊くと、中将たちは各々顔を見合わせてその内の一人であるモモンガが訳を答えた。

「いや、何……此処に来て皆さんも知ってのとおり国連軍も現政奉還の影響で治安の悪くなった世界各地に出兵しなければならなくなり多忙となってしまった。故に、聴取を行うべき人材も少なくなってしまい、本部に残っている我々中将が聴取を行うしかならなくなっただけで深い意味は無い」

「意味は無い、ですか……」

 まるで取って付けた様な意味深な言葉に、中将たちへの疑心が一層募る二次元人たち。

 すると此処で取り調べの最中に皆が将官たちに言われた、全ての二次元人の情報を把握しているという言葉がずっと胸の奥に引っかかってしまっていた真鍋義久が中将たちに問うた。

「それじゃあよ……おれや琴浦の事もあんたらは知っているんだよな」

 全てを知っていると言う事は、つまり自分個人の情報だけでなく琴浦春香の能力についても周知していると重い口を開いて問う真鍋の言葉に、琴浦自身も他の二次元人達も固まった。

 これに対してモモンガが毅然とした表情で答え返す。

「知っているとも。君は相当、その琴浦春香という少女に気があるようだね」

「い、いやっ、そんなつもりは……!」

 思わず頬を赤らめる真鍋義久に、モモンガは冷静な素振りで語り掛ける。

「いや、何も私たちは能力者という存在を戒めている訳ではない。何より、私たち国連軍にとっても、能力者なんて最早珍しくも何ともないからね」

 穏やかな笑みで能力者に対する差別的言動を示さないと断言するモモンガは、次に表情を厳つくさせて物申した。

「……それよりも恐ろしいのは人間の本質だ。能力者であろうと無かろうと、普通の人間ほど恐ろしい生き物はいない。そんな禍々しい狂気に満ちた悪を完全排除するのが我々国連軍の本職なのだ!」

 何よりも恐ろしいのは普通の人間であると豪語するモモンガの言葉に、二次元人達は思わず硬直してしまった。

 だが率直に自分達の質問に答えてくれるモモンガの紳士的な対応に、二次元人達は今までの境遇で感じ入った『新世代型二次元人』についての疑問も率直に中将たちに問い質した。

「あのさ! いったいワテら新世代型って何なんや!」

「初期型の新世代型は、いったいなんで異常者(ヒール)になってしまったの?」

「そもそも! アタイらプロト世代の二次元人と新世代型って、ほとんど変わりないよな!? なんで琴浦たち新世代型だけに世間は冷たくしているんだよ! 答えろッ」

 新世代型の鳴子章吉、彩瀬なるに続いてプロト世代のギュービッドも、何ゆえ新世代型二次元人が今の世で冷遇されているのか激しく問い詰める。

 すると皆の前方に座している中将たちは明らかに何かを知っている顔色を浮かべるが、それを一喝するかのようにモモンガが一言言った。

「……世の中、知らなくても良い事もある。と、言う事だ」

「なんだよソレ!」

 モモンガの一言に真鍋義久だけでなく場内の皆が騒然と騒ぎ始めた。と、その時

「黙れッ! 貴様ら、今自分が置かれている状況を忘れたかッ!!」

 中将ドーベルマンの一喝に、その場の全員が口を閉ざし黙り込んでしまった。

 するとドーベルマンの一喝を皮切りに、中将たちは二次元人たちの疑問を払拭する様に語り始めた。

「先ほども述べたが、世界は今やプライバシーの侵害よりも確固たる安全を欲している」

「それ故に、多少の情報開示は仕方のない事なのだ」

「かつて、2001年の9・11世界同時テロを発端に、世界はテロに対して非常なまでに恐怖を抱くようになってしまった」

「そのテロを未然に防ぐ為にも……世界は我々、非常の正義と徹底的正義を掲げる国連を頼る様になった次第なのだ」

 9・11を発端に人々が抱いてしまったテロへの恐怖に対抗するため、自由よりも安全を優先するようになった国連軍。

「だからこそ! 我々国連軍はテロに対抗できる様にと、迅速かつ容赦なく敵を殲滅できる二次元人を……『ONEPIECE』の海軍キャラを国連軍の軍人に抜擢した訳なのだ!」

「それ言っちゃっていい訳!!?」

「世界は求めているのだ。徹底した正義と、如何なる悪に対しても躊躇しない非情の正義を……だから我らはこうして世界観が違うとはいえ、三次元政府に存在を認可されているのだ」

 中将たちは如何に自分たち版権キャラが抜擢されたのかを説き、それを聞かされた真鍋義久はその事実を公言しても良いのかと目が飛び出るほどの勢いでツッこんだ。しかし此処でモモンガ中将の台詞に出雲ハルキが疑問を生じた。

「……存在が認められなければ、生きていてはいけないと言う事ですか」

 この一言に場に衝撃が走った。異常者(ヒール)と認定されれば処分の名目で生存を許されないのと同様に、全ては創造主に近い三次元政府から認可されていなければならないのかという疑問に、国連軍中将達も口を閉ざしてしまう。

 

 と、此処で皆が思い思いの質問を投げ掛けているのを目の当たりにした新世代型の燃堂力が空気を読まずに挙手してしまった。

「あ、はいはーーい、オレからも一つ質問」「ね、燃堂!」

 いくらミステリアスバカとはいえ相手中将が重い空気の中を何ゆえ自分達が世間から認可されているのか説いている最中に質問する燃堂の行動に、隣の斉木楠雄もその他の皆も凍て付いた。

「……なんだ?」

 煙草を吹かしながら無愛想にオニグモ中将が訊き返すと、燃堂はそんな強面で無愛想のオニグモに躊躇う事無く質問した。

「あのさっ、オレあんまり頭が良くないからよく解んないんだけど、セブンズガードって結局はどんななの? オレ、赤塚組の大将さんたちスッゴクかっこいいなって思っているんで気になっちゃって」

「ほほぉ、あの赤塚組にそこまで心酔しているとは……」

 オニグモ中将の瞳がギラリと光り、場の空気も一瞬で凍り付いた。

 しかし敢えて重い空気の中で紳士的に振舞うモモンガ中将は穏やかな表情で口を開いた。

「はは、確かに余り知られてないな。特に君たちは最近になって生み出された二次元人だから詳しい世情などはまだ学んでいないだろう。良かろう、教えて差し上げよう」

 そういうとモモンガは立ち上がり、背筋を伸ばしてセブンズガードについて語り明かした。

「セブンズガードとは……! 全世界でたった七人!! 国際連合によって選ばれた、略奪などの一部の犯罪行為を許された無法者たち!! 引き換えに必要とされるものは、圧倒的な強さと知名度。彼等が政府側に与する事により世の異常者(ヒール)達への脅威とならなければならない!!」

「無法者かぁ……それにしても、赤塚組の人たちはみんな良い人たちばかりだったけどな。聖龍隊とも仲が良いし」

 モモンガの力強い説明を聞いて、燃堂は無法者であると言う赤塚組の面々が善人に思えた事と、聖龍隊と仲が良い事実に危険なイメージのある無法者とは思えずにいた。すると強面のドーベルマンが不機嫌そうに語った。

「ふんっ、聖龍隊など……あいつらはあいつらで厄介な連中だ。時おり我々の正義を邪魔して、赤塚組同様油断のならない気に障る奴らだよ」

「あ、そっか、いわゆる商売敵って訳なんだね。聖龍隊と国連軍って」

「燃堂! それ以上は口を控えろっ」

 いつもはミステリアスバカな筈の念堂が意外にも頭が回ってしまう現状に、斉木は慌てて燃堂の口を封じる。

 

 新世代型/プロト世代が混合する二次元人たちからの質問攻めを全て受けきったモモンガたち中将らは、今度は自分達から新世代型達に問い質し始めた。

「ごっほん、それで今度は此方から尋ねたい……君たち新世代型には共有感知と呼ばれる能力が開花したみたいだが、今はどうかね?」

「い、今は少し落ち着いています」

「ええ、余り相手の考えに干渉しなくなりましたわ」

 唇の厚いヤマカジ中将からの質問に、琴浦春香と薙切えりなが答えた。

「それでは……その共有感知が激しかった時からで良いのだが。なにか身に覚えの無い記憶が頭の中を過ぎった記憶は無いかい?」

「身の覚えの無い記憶……?」「つまりボクたち全員の記憶にはない、なにか別の記憶ですか?」

「そうだ」「いえ、そんな記憶なんて身に覚えはありませんが……」「そうか」

 頭が異様に長いストロベリー中将からの質問に、瀬名アラタと細野サクヤと出雲ハルキが答え返す。

 すると幾つかの質問をした中将たちは互いに耳打ちしながらヒソヒソと密談し始めた。

 二次元人、特に新世代型二次元人たちは自分達に掛けられた質問に対して密かな不安を抱き始めていた。

「な、なあ琴浦。お前のテレパシーで中将のおっさん達が何を話しているのか分からねえか?」

「ダメだよ真鍋くん、あの人たちの思考も聖龍隊の人たち同様、読み取れないよ」

 耳打ちで隣の琴浦にテレパシーで中将たちの会話を聞き取ってほしいとお願いする真鍋義久に、琴浦春香は中将達の思考が読み取れない事実を真鍋に返す。

 能力者が頻繁に現れる現状に対して、他人に志向を読み取れない特殊な習得術、精神心意密閉(ハートロック)を訓練で会得している聖龍隊同様、国連軍の上層部も同じ訓練を受けているのだ。

 

 

[導]

 

 と、連行されてきた二次元人たちへの集団聴取を国連軍中将たちが行っていたその時。

 トントンと部屋の戸を叩く音が室内に響き渡った。

「どうぞ」

 中将の一人、モモンガが入室を許す言葉を発すると、室外から一人の壮年の男が部屋に入ってきた。

「どうだ、聴取の様子は?」「これは、ゼンギ大目付殿!」

 入ってきた男にモモンガを始め他の四人の中将たちも全員起立して即座に敬礼した。

 壮年の男性は何故か傍らに動物のヤギを引き連れて、真っ白なアフロへアーと丸渕メガネが特徴的であった。

「メェ~~~~」

 男性と共に入ってきた場違いなヤギに、二次元人達は騒然となった。

「や、ヤギ?」「メェ~~」

 目を丸くする新世代型のイオリ・タケシに反して、ヤギは呑気そうに鳴いていた。

「ゼンギ殿、どうなされました?」

 起立したモモンガ中将は部屋に入ってきた男性に歩み寄り、丁寧に尋ねるとゼンギという男性は穏やかな笑みで言った。

「いや、なに。今この二次元人たちを迎えに来た連中がやってきてな。身柄を返してやるために連れて行こうと思った次第じゃよ」

「迎えが来たって!?」「やったわ!」

 男性の言葉に二次元人達は大いに喜んだ。

「それじゃ、そろそろ聴取も終わっているじゃろうし、ワシが連れて行っても構わんじゃろ」

「ええ、まあ、大目付殿が身元引受人の元まで連れて行ってくれるなら安心できますが……」

 モモンガの承諾も得て、二次元人たちはようやく集団聴取から解放され、自分達の身元引受人がいる所まで男に連れて行かれる事となった。

 

「あ、あの、貴方は……」

 身元引受人の元まで連れて行かれる道中、新世代型の室戸大智が自分たちを先導してくれる壮年の男性に問い掛けると、男性は初見の間柄である彼らに笑顔で名乗った。

「おお、そうじゃった、まだ自己紹介がなかったな。ワシはゼンギ、ここで大目付として職務についている。ま、職務と言っても後進の指導が専らじゃがな」

「大目付というと……それじゃ、あなたが前元帥のゼンギ智将だったんですね」

「はは、昔の話じゃよ、昔の」

 読書などで知識を得ている室戸大智は大目付と聞いただけでゼンギが以前の国連軍元帥だとすぐさま解った。

「それにしても……中将もそうでしたが、まさか大目付自ら出向いてくれるとは」

「いや、はははっ。ワシはもう老兵、やる事が無くなってきたから率先してお前さん達の引渡しを行っているに過ぎん」

 先ほどの中将たちとは違い、朗らかに接してくれる大目付ゼンギの先導の元、皆は国連軍本部の建物より外へと出た。

 すると渡り廊下を渡ろうとした矢先、スグ近くから何かの歌らしき合唱が聞こえて来た。

「っ、これは……」

 何とも物々しく、何処と無く悲しい音程の歌声に琴浦春香を始めとする二次元人たちが足を止める。すると渡り廊下のすぐ横の広場で、国連軍の兵士達が石碑の前で整列して合唱していたのだ。

 合唱に反応し立ち止る二次元人たちを見て、ゼンギ大目付は思い詰めた面差しで語った。

「これは戦闘で死んでいった兵士を称える為の歌じゃよ」これを聞いて二次元人達は驚愕した。

 石碑は戦闘で戦死した兵士を弔う為に造られたものであり、その石碑の前で生還した兵士達が戦死した同胞の兵士達に向けて彼らを称える為の歌だという。

 

 世界は常に人の始まりも終わりも終始見ている。どんな痛みや苦痛も、丸ごと包み込んでくれる大きく優しい世界。そんな世界を、例え自分が消えたとしても今までの導きが消える事はない。大切な人がいて、大切な仲間が待つ尊い未来へ理念を持って突き進まなければならないという国連軍の軍歌に、二次元人達は歌からほとばしる哀愁が心に沁みた。

 と、そこに二次元人達にとって顔馴染みの一派が歩いてきて声を掛けてきた。

「ヨッ、お前ら! 無事だったか」「た、大将さ~~んっ!」

 二次元人達の目の前にやって来たのは赤塚大作こと大将が率いる赤塚組であった。彼らは二次元人達が国連軍に連行された事を、招集されて本部に向かう道中に耳に入れた事から、率先して二次元人達の身柄引受人になってくれたのだった。

 すると赤塚組の頭領と幹部たちを目にしたゼンギ大目付は携帯しているおかき袋を手に、おかきをボリボリ貪りながら皮肉たっぷりに赤塚組に言った。

「これはこれは、よく国連軍本部まで来てくれたな、世界のクズども」

「おうおう、豪ェ言いようじゃないか。かつての智将としての名が、仏の名が泣くぜ……ゼンギ大目付殿」

 セブンズ・ガードという肩書に付きながらも、ならず者には変わらない赤塚組をゼンギは皮肉を込めてクズと呼び捨てる。これに赤塚大作も負けず劣らず、かつての智将と仏の肩書が泣くと不敵に笑みながら突っ撥ね返す。

「それにしても随分と見ない間に老けたもんだな、ゼンギの爺さん。しかも昔みたいな堅物キャラじゃなく、おっとりマイペースで気楽そうで……フッ、今の方が俺は好きだぜ」

「ふんっ、アジアの海域だけでなく世界中の海で好き勝手している貴様ら無法者に好かれたくはないわい」

 昔と比べて随分老けた容姿に変貌した呑気そうなゼンギを割と気に入っている赤塚大作に反し、あくまでも無法者である彼ら赤塚組に好かれたくはないとおかきを頬張りながら言い返すゼンギ大目付。

「それじゃ、この二次元人達の身柄はお前達に託す。お前さん達も、もう通報されるような真似はせん事じゃぞ」

「だから! おれ達は何もしてないっての!」

 ゼンギ大目付は二次元人達の身柄を赤塚大作ら赤塚組に渡し、二次元人達にも二度と通報される様な行為はするなと釘を刺す。が、新世代型の真鍋義久は最初から最後まで自分達を罪人扱いするゼンギ大目付ら国連軍側の人間の対応にうんざりしていた。

「そんじゃ、みんなの引き取りは終わった事だし、コイツ等を船に乗せるとするか」

 国連軍にはセブンズ・ガードとして招集された赤塚組であったが、まずは身柄を受け取った二次元人達を船まで連れて行って安息の時を与えるべしと考えたのだ。

 

 そして赤塚組は引き取った二次元人達を船まで連れて行こうとした、その時である。

 

 

[大異常者同盟]

 

「うわあっ」

 突然の砲撃が二次元人達のすぐ近くに着弾したのだ。

「ど、どうしたんだ!」

 突然の砲撃に赤塚大作も戸惑いを隠せない。

「何事だ!」

 ゼンギ大目付も砲撃を目の当たりにして何事かと声を荒げる。するとそこに一人の兵士が駆け付けて大目付に現況を報告した。

「報告します! たった今、国連軍本部に向けて海域より砲撃が」

「敵襲か!?」

「はい! 敵はごく最近に異常者(ヒール)同士が結束して結成された、大異常者(ヒール)同盟であります!」

 ゼンギに報告する兵士が口にした大異常者(ヒール)同盟の名を聞いて、赤塚大作が問い質した。

「おい、なんだ? その大異常者(ヒール)同盟ってのは?」

 すると赤塚大作らの疑問にゼンギ大目付が答える。

「大異常者(ヒール)同盟……足正義輝が起こした現政奉還に乗じて結束した異常者(ヒール)共の集まりじゃ。なんて事じゃ、まさか国連軍本部の海域まで侵入を許してしまうとは……」

 事の重大さまで進展してしまっている現状に酷く遺憾の意を示すゼンギ大目付。

 足正義輝が起こした現政奉還に乗じて、異常者(ヒール)認定を受けた二次元人や三次元人が結束したテロリスト集団、大異常者(ヒール)同盟。

 その大異常者(ヒール)同盟が、国連軍本部が慌ただしい時を狙い、総攻撃を仕掛けてきたのだ。

「ちょ、ちょっとどうするんですか! この砲撃じゃ船に行けないんじゃ……」

 新世代型の真鍋義久が心配そうに騒ぎ出したその矢先、なんと大異常者(ヒール)同盟が国連軍本部その本土に上陸してきた。

「なんて事じゃ、まさか上陸まで果たしてしまうとは……世界中に兵士を出兵させて、本部が手薄なのを狙ってきおったな」

 国連軍本部の人員が少なく、手薄な時を狙って奇襲してきたのだと戦況を把握するゼンギ大目付。

「ど、どうしよう。そこらじゅうに武器を持った人が国連軍に向けて攻撃している……」

 銃や剣などで国連軍に総攻撃を仕掛けていく大異常者(ヒール)同盟の無法者たちを目の当たりにして、恐怖で顔が強張る琴浦春香。

 すると赤塚組の幹部でも冷静沈着な、参謀にも近い女性のミズキが言葉を発した。

「私達だけでこれほどの数を相手にするのは不可能だわ。聖龍隊も既に近くまで来ている筈なんだけど……」

 

 その頃、聖龍隊は国連軍本部が見える海域まで到着していた。だが、本部に攻撃を仕掛ける大異常者(ヒール)同盟の猛攻を前に愕然としていた。

「何てこと! 国連軍本部が攻撃されてるわ!」

「もうそこらじゅう敵だらけ……これじゃ迂闊に本部に近付くのさえ難しいわね」

 砲撃を受けて硝煙を上げる国連軍を見て眼の色を変えるミラーガールの傍らで、同じHEADのキューティーハニーが戦況を見据えて海上にすら夥しく蔓延る異常者(ヒール)の軍勢に接近する事さえ難しい状況を悟る。

「大将と新世代型の連中を迎えに来ただけのつもりだったが……こりゃあ、そうもいかなくなったな」

 眼前に広がる戦況を見据えて、バーンズは早速メタルバードに変身して現場の聖龍隊総員に号令を言い放った。

「聖龍隊、戦闘開始だァ!!」

 こうして聖龍隊は大異常者(ヒール)同盟を撃破し、急ぎ新世代型二次元人達を護るべく彼らと合流を果たすべく動き出した。

 

 早速、聖龍隊も国連軍本部が建造されている人工島に上陸し、国連軍に加勢しようとする。

「国連軍! 協力して敵を殲滅するぞ!」

 メタルバードはいくら結束してまだ日も浅い大異常者(ヒール)同盟が相手だろうと、大軍には違いない。そこで襲撃されている国連軍に共闘戦前を張ろうかと呼びかけるが、

「な、何を言っている!? 敵は単なる弱小な小悪党の集まりにすぎん、我々だけで対処できる!」と、国連軍の上官に拒否されてしまった。

「仕方がねえな。オレ達はオレ達だけで好きに戦わせてもらうとするか」

 国連軍側の返答に呆れるメタルバードは、自分達で勝手に判断して戦闘に参戦する意志を決める。

 そこでメタルバードは、まず戦場に取り残された赤塚組と新世代型二次元人達の身を優先させるべく、赤塚組と無線で連絡を取る。

「大将、聞こえてるか! オレ達は海上側の敵から殲滅している! 悪いがそっちはそっちで上陸した連中から片付けて合流しよう! いいか、絶対にみんな死ぬんじゃないぞ!」

「おうッ! 分かったぜ、バーンズ! みんな俺達についてこい! とにかく安全な場所まで逃げるのが先だ」

 メタルバードに無線で言伝された赤塚組が大将 赤塚大作は先ほどゼンギから身柄を引き取った新世代型二次元人達を安全な場所まで誘導しながら戦場を突き進む覚悟を決めた。

 赤塚組に報告した直後、聖龍隊は一先ず海を操るマーメイドメロディーズと水を操るウォーターフェアリーの能力で大波を起こし、海岸沿いの一角に蔓延る敵を殲滅し安全な場所を確保した。

「こっちの場所は確保した。大将、お前達は戦場を突破して此処まで来い!」

「了解だ、こっちはこっちで敵中を突破しながら安全地帯を目指すぞ!」

 聖龍隊が確保してくれた本拠地まで、敵を突破しながら進攻する赤塚組。彼らの勇姿を見放さぬよう、一般の二次元人達は赤塚組を追走する。

「ぐぬぬ……聖龍隊め、まさかアイツらまで現れるなんて! 先にどっちの邪魔者を始末するか……」

 赤塚組が一般二次元人達を誘導している最中、国連軍本部に駆け付けた聖龍隊の存在に気付いた大異常者(ヒール)同盟の指揮官は、先に国連軍側の戦力と聖龍隊の戦力どちらを先に減らすか検討していた。

 

「赤塚組が新世代型たちを連れて此処までやって来る! 今のうちに、この辺り一帯の敵をできるだけ片付けておけ!」

「各個撃破に拘らないで! 敵の指揮官を片付ければ、あとは烏合の衆よ!」

 赤塚組が新世代型たちを護衛しつつ引き連れてくる間に周辺の敵を片付けろと命ずるメタルバードの指示に従いつつ、ミラールはルーキーズの隊士達に敵の各個撃破よりも戦場で直接指揮を執っている指揮官を優先するよう指示を飛ばす。

「オレ達も参戦するぞ!」

 聖龍隊士の一人である黒崎一護と共に、【BLEACH】の主要キャラクターも戦場に参戦する。

「観念しろッ」「うぎゃああっ」

 朽木ルキアの鋭い太刀筋が異常者(ヒール)の命を奪う。

 しかし、国連軍に赤塚組と聖龍隊の戦力が加算されても、戦況には続々と敵である異常者(ヒール)が出陣してくる。

「こりゃあ、敵の指揮官を倒さない限り敵がドンドン沸いてきちまうな」

 続々と敵の増援を指揮している指揮官を倒さない限り、突破は難しいと判断した大将は大異常者(ヒール)同盟の指揮官撃破に移る。

 かくして新世代型とプロト世代による一般の二次元人達を護衛しつつ聖龍隊が確保した本拠地まで辿り着く為、赤塚組は現在自分達がいる広場を制圧するため現場の指揮官を打破し、敵増援を阻止する動きを開始した。

 悪魔の力で敵を倒す【デビルマン】、戦鬼と呼ばれながらも戦い続ける【サイボーグ009】らサイボーグ戦士達の共闘が相次ぐ中も、異常者(ヒール)は抵抗をする気配すら感じさせず

「これじゃあキリがねぇぜ! 早いとこ敵の指揮官を押さえろ!」

 倒しても倒しても湧いてくる敵の増援に、大将は早々に敵の指揮官を倒すよう仲間達に言い渡す。

 破槍と呼ばれる船の碇に近い形状の武器を、大将は軽々と振り回して周囲の敵を蹴散らしていく。敵方も、大将の背丈より若干大きいサイズの破槍には苦戦を強いられる。

「大将! 今は応戦するよりも、彼らを護衛する事の方が最優先よ!」

「解ってらぁ! だが、このまま防戦一方じゃコイツらを安全地帯まで連れて行けねぇだろうが! 少しでも敵を片付けねえと進めねぇぜ」

 ミズキは赤塚大作に異常者(ヒール)に応戦するよりも一般二次元人達を護る事が優先するべきだと通告するが、赤塚大作は防戦ばかりではなく敵を排除しない限り前進できないと反論。

「ウェポンズ・レフト!」

「うぎゃあ~~!!」

「ん~~! スーパー~~!!」

 自身の肉体を改造してサイボーグとなった聖龍隊ニュー・スターズ総部隊長フロートは、武器に改造している左手から迫撃砲を展開して周囲の敵を蹴散らしていく。

 フロート率いるニュー・スターズの傍らでは、強力な電撃砲を敵陣に向けれ発射して迎撃していく【とある魔術の禁書目録】の御坂美琴の姿も遠目から確認できる。

「悪いですが、ここで死になさい」「ぎゃあ~~っ!」

 【BLEACH】の涅マユリも戦闘に参戦しており、異常者(ヒール)相手に慈悲の無い攻撃で討伐していた。

「シャナ! 相手は異常者(ヒール)だ、躊躇う必要はないぜ!」

 同じ二次元人相手に戦い合うのを躊躇する【灼眼のシャナ】のシャナにフロートが檄を飛ばす。

「進軍せよ! 勝機は我ら、聖龍隊にあり!」

 聖龍隊の指揮官が隊士達に異常者(ヒール)討伐を指示する中、永遠冴香ら【ドラゴンドライブ】の面子も一般隊士に混じって進軍する。

 

 と、その時。大異常者(ヒール)同盟は戦場を駆け抜けて突破する赤塚組と、彼らに護衛されて前進する一般二次元人に気付いて、非力な二次元人相手に攻撃してきた。

「こっちを狙って来やがったか! 守りを固めろ!」

 急きょ狙いを此方に向けてきた大異常者(ヒール)同盟に、大将は一般の二次元人達を護衛する為に守りを固めるよう指示。

 すると此処で護衛されている一般二次元人の中で、若干の戦闘力を持ち合わせる新世代型の纏流子や鬼龍院皐月、そして本能字生徒会四天王や栗山未来もやむを得ず異常者(ヒール)に対して応戦を開始する。

「我々も護らえれてばかりでは不甲斐ない! 少しでも凶悪な異常者(ヒール)と応戦するぞ!」

「だ、だけどよ……普通の、それも同じ二次元人を斬り捨てるってのはどうも後味悪いぜ」

「何を言う纏流子! このまま手をこまねいては我々が全滅させられるのがオチだ! 何より相手は人権を失った異常者(ヒール)、斬り捨てても何の問題もない」

 誰よりも戦意に満ち溢れた闘志で戦いに挑む鬼龍院皐月に反し、同じ二次元人でかつ非能力者の異常者(ヒール)相手に戦いを躊躇してしまう纏流子。だが皐月は流子に抵抗しなければ此方が殺されてしまう事実と、相手が人権を失っている存在である事を告げる。

 

「東側の敵は大方片付けたわ!」「よし! このまま制圧を続けましょう」

 ミスティーハニー率いるマン・ヒールズが東側の敵陣を制圧を続ける中、敵陣の一つを落とした事をマン・ヒールズメンバーの本郷唯がミスティーハニーに報告する。

 

「戦闘は一時中断! 赤塚組のいる所まで進軍すっぞ!

「ええ! 一般の二次元人達を一刻も早く非難させないと」

 ニュー・スターズの総部隊長フロートの判断に同じ八神はやても力強く承諾し、ニュー・スターズは赤塚組と一般二次元人の許へと進行するのであった。

 

 多種多様、種族を問わず奮戦する聖龍隊と国連軍そして大異常者(ヒール)同盟。三つ巴の混戦による乱闘は続いた。

 

 

[国連軍大活躍]

 

 混戦の一途を続ける戦場で、赤塚組は聖龍隊が確保した安全地帯まで二次元人たちを護衛しながら前進していた。

 だが彼らに目を付けた大異常者(ヒール)同盟の快進撃に赤塚組は押され始めていた。

「くっ、数が多すぎる……!」「このままじゃ、みんなやられちゃう」

 赤塚組幹部のテツと海野なるは周囲に蔓延る無数の異常者(ヒール)を前に奮闘を続けるが、数多の敵に圧倒されかけてきた。

「ッ……上空からの支援はできそうにないわ。爆煙で視界が遮られる……!」

 最終兵器の試作機であった赤塚組幹部ミズキは、上空に飛来して仲間と二次元人たちの進行を支援しようとするが、上空には一帯が爆発などの硝煙で覆われてしまい、上空からの視界が遮られてしまう現況であった為、頭上からの支援砲撃を諦めるしかなかった。

 と、その時、戦場を飛び交う流れ弾が二次元人たちの方へ直射してきた。大将は破槍で飛んでくる流れ弾を防いでいくが、並の人間である彼には全ての弾丸を防ぎ切る事は至難の業であった。

 そして恐れていた事態が。一発の凶弾が大将の真横を通ったのを、防ぎ切れなかった大将は敏感に察した。そして凶弾はそのまま直射し、大将の真後ろで戦場の恐さ故に縮み込んでいる新世代型の烏丸さくらへと真っ直ぐに向かっていた。

(ヤバイ!!)

 心の中で大将は激しく焦燥した。自分が防ぎ切れなかった凶弾が一般の二次元人に向かって直射していくのを目の当たりにする事しかできずにいたのだから。

 そして正しく凶弾が烏丸さくらに直撃する、その直前であった。何かの見えない壁に跳ね返されて凶弾は烏丸さくらの目前で止まり、地面に落下した。

「!?」

 この現象に大将は酷く困惑した。そして彼が凶弾に直撃しかかった烏丸さくらから目を逸らして別所に視点を変えてみると其処には

「お、お前ら!?」視点の先には何かしらの術を発動させている名瀬博臣と美月の兄妹がいた。

 大将は二人を見て驚いた様子で訊ねる。「お、お前ら! 能力者……いや、術者なのか!?」大将は何らかの特殊な術を使える術者ではないかと名瀬兄妹に訊ねると、二人は切羽詰った面差しで返答した。

「詳しい事はまた後! 今は兎にも角にも、この戦場を突っ切るのが先でしょ!」

「その通り! 僕らは余り好戦的じゃないけど、この際だ。この場を乗り切る為に一時的に参戦させてもらうよッ」

 美月と博臣の力強い返答に、今まで参戦しなかった二人の協力に栗山未来も大将たち赤塚組も口元を揺るませる。

 が、敵方である異常者(ヒール)の猛攻は終わっておらず、周囲から次々と硝煙の中から敵が飛び出して斬りかかって来る。

「このヤロウッ、誰だか知らねえが、死んでもらうぜ!」

「赤塚組! 特にテメェらはタダじゃ死なせねェぞ!」

 もはや相手が誰であろうと殺傷の標的に定める異常者(ヒール)の凶行に大将たちは迎え撃つ。その中で先ほど参戦し出してくれた博臣兄妹を始めとする栗山未来/纏流子/鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)/蛇崩乃音(じゃくずれののん)/蟇郡苛(がまごおりいら)/猿投山渦(さなげやまうず)/犬牟田宝火(いぬむたほうか)らの協力には赤塚組も助かっていた。

 しかし戦いに参加してくれた名瀬三月に向かって一発の砲弾が硝煙の中を突き抜けて飛んできた。皆は砲弾に気付くものの、スグに反応できず砲弾は名瀬三月目掛けてまっしぐらに飛んできた。

「美月!」兄 博臣の呼びかけでようやく美月も砲弾に気付いた、その時。「え……! な、なに?」砲弾は何と美月の目の前で、何らかの衝撃波を受けて空中で爆発したのだ。

 直撃を免れた美月が唖然としていると、やや上方から声がした。

「良かった、間に合ったわい」

 美月も博臣も、そのほか全員が声の方に目を向けてみると其処には黄金に輝く巨大な人影が聳えていた。

「うぎゃあああぁあああああ……!!」

 突如として戦場に現れた黄金の巨大な人影に二次元人達は絶叫してしまう。良く見てみれば、その巨人は大仏様の様な髪型と服装をしていた。

「ゼンギか! 助かったぜ」「へっ? ゼンギって、さっきの大目付?」

 黄金に輝く巨大な大仏を見て大将が発した名前に真鍋義久たち二次元人たちが不意を衝かれる。言われてみれば、確かに黄金に輝く大仏の顔は先ほど目撃したゼンギ大目付のものと一致していた。

「何をしている!? 早く、その子らを安全な場所まで移動させろッ」

 ゼンギ、かつて「仏のゼンギ」の異名を持つ彼は何も「仏のように優しい」の意味ではなく、自分自身が本物の仏に変身できる能力者だったのだ。巨人並みの大きさの大仏に変身できる「大仏人間」のゼンギ大目付は礼を述べる大将に向かって早々に二次元人たちを移動させるよう通告すると、その直後に二次元人たちを襲撃しようとする異常者(ヒール)たちに向かって攻撃。

「ふんっ」「うぎゃあ~~ッ!」

 大仏に変身したゼンギ大目付は掌から強力な衝撃を発して、猛進してくる異常者(ヒール)たちを吹き飛ばしてしまう。大仏へと変身したゼンギ大目付は、その巨体を生かした肉弾戦や、掌から発する衝撃波を主な戦術に用いているのだ

 と、そんな大仏に変身して周辺の敵を一掃していくゼンギ大目付の戦いに二次元人たちが目を奪われていると、再びゼンギ大目付は言った。

「何をしている!」ゼンギの一言に反応し、赤塚組幹部の水原花林と秋夏子が反応する。

「さあ、今のうちに!」「早く!」

 二人の女性の呼び掛けに二次元人達は応え、その場をゼンギ大目付に任せて撤退していくのだった。

 戦場の敵を倒しながら必死に前進していく赤塚組と、彼らに護衛されながら走り続ける二次元人たち。だがスグに周りを敵に囲まれてしまい、身動きが取れなくなってしまった。

「くそっ、囲まれちまった!」周囲の逃げ道を全て防がれてしまった状況に顔を歪ませる大将。

 そして 異常者(ヒール)たちは一斉に赤塚組と二次元人たちに襲い掛かろうとした。

「やっちまえ!」

 禍々しい面構えで斬りかかって来る敵である異常者(ヒール)の凶刃に大将たち赤塚組と戦闘に参戦している新世代型二次元人達が迎え撃とうとした、その時。

「うぎゃあああ!!」

 戦場の爆音に木霊する絶大な悲鳴、飛び散る血飛沫。目の前で斬り捨てられていく、非力な異常者(ヒール)と世間から見捨てられた者たちを容赦なく斬り付けたのは、肩まで伸びた長髪をまるで蜘蛛の足の様に操り、8刀流の剣を操るオニグモ中将。

「………………」

 何処からともなく駆け付けては一瞬で異常者(ヒール)を斬り捨てたオニグモ中将は銜えタバコから煙をふかすと、蜘蛛の足の様に操る6本の髪の束とは別で、直接両腕に携える剣を勇ましく構えながら言い放つ。

「貴様らが異常者(ヒール)だろうが何だろうが……貴重な未来を踏み躙る可能性のある悪ならば、斬り捨てるのみ!」

 オニグモ中将にとって、敵が異常者(ヒール)でろうが別の問題として、「一瞬の気の迷いゆえに取り逃がした凶悪犯から、未来を護れるか」という強い信念の下、敵を斬り捨てているのだ。

 そんな己の信念に従い、敵である異常者(ヒール)を斬り捨てたオニグモ中将の許に、爆煙の中から複数の人影が。

 硝煙の中から現れたるは、先ほど新世代型二次元人たちを聴取した中将たち。モモンガ、ヤマカジ、ストロベリー、ドーベルマンらが新世代型達と異常者(ヒール)達の前に姿を見せた。

「あ、あなた達……!」

 先に自分達を聴取しただけでなく、色々と論弁を垂れ流していた中将たちが勢揃いして、新世代型の薙切えりなは言葉を失くす。

 すると五人の中将達より前に出たモモンガ中将が剣を己の眼前に構えると同時に強く言い放った。

「我ら国連軍中将、横暴な異常者(ヒール)の好き勝手にはさせん! いや、それ以前にか弱き市民を傷付けようとする悪態は見過ごせぬ!!」

 モモンガたち中将らは、新世代型二次元人たちを非力な一般市民として死守するために戦前に出てきた事を現場にて公言した。

 その中将たちの勇姿に新世代型達は言葉を失くしていると、モモンガが声を発した。

「懸かれッ」

 すると次の瞬間、中将達の指示を待っていた国連軍兵士達が一斉に周囲から飛び出してきて、異常者(ヒール)の軍勢に斬りかかる。

「う、うわっ、許してくれ……ぐはっ」

「ま、待て! 降参するから……ぎゃあ!」

 集団に取り囲まれた異常者(ヒール)達はただただ怖気付き、降参の意を示すが時既に遅く、活気盛んになった国連軍兵士の猛攻に次々と倒されていくほか道は無かった。

「こ、この野郎!」

 と、兵士に命令を下す中将たちに異常者(ヒール)が斬りかかりに飛び込んでいった。だがモモンガたち中将らは巧みな剣術で次々と自分達を斬りかかりに来る異常者(ヒール)を一刀両断にして斬り返して行く。

「ぎゃああっ」「ぐはっ」

 次々と中将たちに斬り捨てられていく異常者(ヒール)達。彼らの断末魔が戦場に響く中、壮絶な光景に思わず足が止まってしまっている二次元人たちにモモンガが言う。

「何をしている! 早く此処から離れろッ、まだ異常者(ヒール)共が襲ってくる前に!」

「は、はい!」モモンガの必死の呼び掛けに、思わず新世代型の燃堂力が返答する。

 しかし国連軍兵士の追撃を掻い潜り、一人の凶悪な異常者(ヒール)が新世代型二次元人に迫っていく。「ウーー、ケケケッ」狂ったように殺戮を楽しむ異常者(ヒール)は、新世代型の神北小毬と能美クドリャフカの二人に凶刃の矛先が向けられてしまう。

「きゃあぁっ!」

 戦場には似つかわしくない少女の悲鳴が発せられたその時「大佐!」「お任せを!」と、モモンガの指示で一人の兵士が俊足に動いた。

直角飛鳥(ボーン)大鳥(オオドリー)!!」

 兵士は自身の背丈近い両刃剣から直角に折れる軌道を描く斬撃を放ち、直線上の異常者(ヒール)を一直線に貫いた。「ぎゃあっ」放たれた斬撃に貫かれ、異常者(ヒール)はその場に倒れてしまう。

 二次元人たちが直角に折れる斬撃を放った兵士に目を向けてみると、その人物は骨ばった痩躯と相まった異様な風貌から醸し出される陰鬱な雰囲気を醸し出す、一見不気味な容姿の兵士であった。だがこの人物こそ外見とは裏腹に、上下の分別無く他者の幸福を第一に行動する『自己犠牲の正義』の実践者。その名もTボーン大佐である。普段より「力を持たない人々に安心の日々をもたらしたい」とする熱い胸の内を秘めている彼に深い尊敬の念を寄せている兵士も少なくないと言う。国連軍所属の高官としては無益な殺生を好まない穏健派に位置し、平時には部下に対しても敬語を使って優しく諭す紳士的な一面を覗かせるが、いざ事に当たれば武人としての矜持を貫いて敢然と悪に立ち向かう心の持ち主。また、生来の性格からかどうあっても曲がったことが我慢ならず、太刀筋はおろか自身の背丈近い愛用の両刃剣にすら色濃く反映されている。

 Tボーン大佐に救われた二次元人達は、再び安全地帯へと移動を開始する。

 するとしばらくしてニュー・スターズのフローとより通信が赤塚組に入った。

「こちらフロート! ダメだ、敵との交戦で思うように進めねェ! 赤塚組、どうにか持ち堪えてくれ」

「できる限り堪えてみるよ」

 敵との交戦が相次いだ為に合流が遅れてしまっている現状を報告するフロートに、赤塚組幹部のアツシは不服ながらも返答する。

 

 それからフロート率いるニュー・スターズが硝煙で視界の悪い戦場を駆け抜けていると、その硝煙の中から「そりゃそりゃそりゃッ」と掛け声が聞こえて来た。フロートたちニュー・スターズが前進していくと、戦場で一般兵士に球状の砲弾を陳列させた棚を運ばせ、自身はその砲弾を直接素手で掴んで勢い良く投げ続ける軍服姿の老兵がいた。

「ガッツのじいさん!」「おっ、なんじゃ聖龍隊の小僧たちじゃないか」

 フロートが声をかけた兵士は通称「喧嘩屋」ガッツと呼ばれるフランス出身の軍人である国連軍本部中将。ガッツはフランスマフィアで育ったと言う異例の経歴を持ち、中将というかなり高い地位に居ながら堅苦しさの無い明るい性格に惹かれる部下は多く、無茶苦茶な振舞いにツッコミを入れられたり一緒に雑務をこなしたりと非常に慕われているガッツは現在、後進の指導にあたっているのだが、世界の正義の礎である国連軍本部に総攻撃を仕掛けられ、いてもたってもいられず部下の兵士に砲弾を運ばせ、自身はその砲弾を素手で直接掴んでは敵に投げ付ける荒業で大異常者(ヒール)同盟に砲撃していたのだった。ガッツ中将が投げ付ける砲弾は、普通に大砲で撃つよりも弾速が早く、威力も高い無茶苦茶な技であるが、若い頃は今以上のパワーだったらしく、近年は歳のせいで威力が下がっているらしい。

「ガッツの爺さん、こんなところで戦っていたのか」

「ぶわっはっはっは、お前さんたちこそ……フンッ、いったいどうしたと言うんじゃ? 天下の聖龍隊がわざわざ国連軍を助けに駆け付けたとは思えんが……」

 戦場のど真ん中で、砲弾だけで敵と交戦しているガッツ中将の疑問にニュー・スターズの一員でフロートとの出会いですっかりアメリカン・ガールに変貌してしまった恋人のエレオノールが訳を話す。

「私たち、国連軍に連行された二次元人たちを迎えに来たんデス! それが、来てみたら戦争が始まっていたので……」

 エレオノールが話してくれた事情を聞いて、ガッツ中将は顔色を険しく変えて話し返した。

「むっ、あの新世代型二次元人どもか! うちの若いもんが連行したっちゅうあの……そうか、それならわしが言う事は何もない。この場はわし一人で事足りるから、きさまらはとっとと先に進め!」

「おうッ、サンキューな爺さん!」

 フロートはガッツ中将に礼を返すと、ニュー・スターズの仲間と共に赤塚組と一般二次元人たちの許へと急ぐのであった。

 

 

[二人の大将と謎の記憶]

 

 一方その頃。赤塚組と二次元人たちは、もうニュー・スターズでなくとも聖龍隊なら誰でも良いから合流して安全地帯まで退避したい気持ちで一杯だった。

 すると彼らの目の前には大異常者(ヒール)同盟の大軍が今まで以上の数で攻めてきたのだ。

「げっ! 今までより多い」

「み、ミズキ! レーザーで一掃しちまえ……」

「無理よ。もうエネルギー切れだわ」

 目の前に広がる大異常者(ヒール)同盟の大軍に驚愕する真鍋義久ら二次元人たちを護るべく、大将がミズキにレーザーで目前の敵の大軍を一掃するよう指示。しかしミズキは既に長い戦闘でエネルギーを消耗してしまっていた。

 すると爆音に紛れて、其処に下駄の音が近付いてきた。

「こえはこれは……皆さん、まだお逃げになれてないようで」「! テメェは……!」目の前に現れたその下駄の持ち主を見て大将は愕然とする。

 と、目の前に現れた人物を見て新世代型の燃堂力が声を上げた。

「あ! おじさん」「燃堂、知っているのか?」

 目の前に現れた下駄を履いた人物を見て声を発する燃堂力に対して親友の斉木楠雄が訊ねた。燃堂は他人に自分の思考が読み取れないようになっているのだ。

「ああ、さっき取調べが終わったとき、トイレに出たところの自動販売機の前で会ったおじさんだよ」

 そう、先ほど中将たちによる取調べが終わってトイレに駆け込んだ燃堂が、そのトイレ近くの休憩所その自販機前で自販機下に硬貨を落としてしまった盲目の国連軍兵士であった。

 盲目の国連軍兵士は着物の上から羽織っている、背中に『正義』の文字を背負っている軍服を靡かせながら対峙する大異常者(ヒール)同盟の大軍と向き合っていた。

「おじさん危ないよ! 早く逃げてッ」

 突然、異常者(ヒール)の大軍の前に現れた大柄な男性に、燃堂力が逃げるよう声をかけると盲目の男性は声に気付いて後ろへと両目を塞ぐ大きな傷跡が特徴的な強面を向ける。

「おお、その声は先ほどの心優しい少年でありやすね。そうか、あんたも連行されてきた二次元人たちの一人だったとは、驚きですわい」

「そんな事はどうでも良いって! それよりも、目が見えないのになんで戦場にいるんだよ! 危ないから一緒に逃げよう」

「ふふ、大丈夫でござんすよ。坊主、さっき言ったじゃありやせんか。目が見えなくても、見えるべきものはハッきりと見える、と」

 盲目の兵士は燃堂と一通り会話すると、再び目の見えない顔を正面の異常者(ヒール)たちの方へと向けて身構える。

「ど、どうする気だ、あのおっさん」「アイツは……」「?」

 目が見えないのに戦場に登場してきた兵士に動揺が隠せない真鍋義久に反し、大将たち赤塚組は盲目の兵士を見て表情を強張らせていた。そんな赤塚組を見て、琴浦春香は何ゆえ表情を強張らせているのか疑問に思った。

「こいつでどうござんす……地獄旅!」

 すると次の瞬間、盲目の兵士が携帯している日本刀の鞘に手を掛けて一瞬で敵陣の中を突っ切った瞬間に敵陣の広大な地面が陥没し、敵である異常者(ヒール)たちは一瞬で地面に陥没してできた穴の中に消えてしまった。

「ええぇッ! どういうこと!?」

 一体全体なにが起きたのか皆目見当が付かない新世代型の男子達が思わず目玉が飛び出るほど絶叫してしまう盲目の剣士の技。

 すると多くの異常者(ヒール)が消えていった穴と、その穴を一瞬で作り出した盲目の兵士を前にし、愕然とする赤塚組の赤塚大作が口を開いた。

「あんたは、確か……大将、藤虎」「え!?」「藤虎?」

 赤塚大作の発言した大将 藤虎の言葉にプロト世代の海道ジンと新世代型のラルが反応すると、赤塚大作は険しい顔付きで語った。

「大将、藤虎。本名をイッショウ……国連軍元帥に出世した赤犬と軍を抜けたあの青雉の後任として、赤犬が発令した徴兵制度で抜擢された国連軍本部大将の一人! 聞いた話じゃ、アイツは重力を操れる能力者だっていうらしいぜ」

「じゅ、重力を操る!? それって確か、二次元人の中でも扱えるのは数える程度しかいないっていう重力操作系の能力者って事ですよね」

 赤塚大作の語りを聞いて新世代型の室戸大智が声を荒げる。彼の言うとおり、重力を操作できる二次元人は極めて稀少なのである。

 先ほど新世代型の燃堂力が硬貨を拾ってあげた盲目の兵士、それこそが国連軍の大将イッショウこと藤虎であったのだ。

 イッショウ 藤虎。重力を自在に操る能力者。彼は自分の指定したものに非常に強力な重力を掛け、地面に押し付けて拘束したり、そのまま地面ごと奈落の底へ圧し沈めたりする事ができる。

 そんな盲目の兵士藤虎に、他の異常者(ヒール)たちが地面に開いた奈落の底を避けて進軍してきた。

「お、おじさん!」「大丈夫でごわす」

 燃堂力の呼び掛けに藤虎は小さく返事をすると、真横から向かってくる敵をまるで見えているかのようにバッサバッサと日本刀で斬り捨てていく。

 更に藤虎から向かって2時の方角から敵の増援が迫ってきていた。これを見て慌て始める赤塚組と二次元人たちであったが、藤虎は焦る様子もなく静かに佇む。

 すると上空から巨大な物体が落下してきて、地面に着弾して広範囲の異常者(ヒール)を絶命させると同時に凄まじい衝撃波と爆風が藤虎や二次元人たちに襲い掛かる。

「うわっ」

 空から落下してきたのは巨大な隕石であり、その隕石が地面に落下した際の衝撃波と爆風に顔を伏せてしまう二次元人たち。

 これも藤虎の重力操作の能力であり、驚くべき事に能力の影響範囲は宇宙空間にまで届き、適当な小惑星などを重力で引き込み、隕石として落下させて攻撃の手段にしたのだった。

 隕石で粗方の進軍してくる敵を殲滅した藤虎は振り返り、赤塚組と二次元人たちに問い掛ける。

「皆さん、お怪我はありやせんか? 何分あっしは目が不自由なもんで、攻撃も加減するのが不下手なもんで」

「危ねえよ!! 下手したら直撃しなくても爆風や衝撃波で、コッチまで死人が出そうだったわ!」

 怒り心頭で藤虎に怒る赤塚大作の問い掛けに藤虎は反応せず、そのまま彼は赤塚大作を無視して一般の二次元人たちに気配を向ける。

「……よし、全員生きてやすね。これは何より」「って! 無視すんなッ」

 自分達を無視して一般の二次元人たちだけを気遣う藤虎の言動に赤塚大作が怒鳴り続けていると、藤虎は彼の方を急に向いて言い放った。

「市民を傷つける異常者(ヒール)の存在、許すわけにはいかねェでしょう」

 そう藤虎にとって無法者である赤塚組も異常者(ヒール)と同等と見出しており、彼らよりも一般の二次元人の命を優先していたのであった。

「お、おじさんありがとう、助けてくれて……」

 新世代型の燃堂力が窮地を救ってくれた藤虎に礼を言うと、藤虎は燃堂の声と気配で彼だと認識する。

「おお坊主、あんさんも助かったようでようござんした。ほな、早々に逃げておくんなしい。敵はまだウヨウヨしていますから」

「そ、それが……もうオレたち何処を進んで良いのか解らなくなっちまって」

「ほほう、それでしたら……」

 立ち昇る硝煙に群がる敵兵で視界が埋め尽くされ、進むべき道すら見失っている現状を赤裸々に告白する燃堂力。すると大将藤虎は刀を抜いて身構えた。

重力刀(ぐらびとう) 猛虎」と、刀を振るった瞬間、藤虎の目前に一筋の重力の帯が発生、その帯に敵は吹き飛ばされ、建物の障壁は地面に陥没して一本の道ができてしまう。

 この強力な技に二次元人たちは言葉を失くすほど驚愕していると、藤虎は彼らに言った。

「さあ、この道を真っ直ぐ進めば安全地帯でやんす。急いで逃げなすって」

 これを聞いた赤塚大作は、思い出したかのように急いで二次元人たちを誘導し始める。

「ッ、そうだった! みんな、この道を進んでいくぞ! ありがとよ、藤虎のおっさん!」

 赤塚大作が礼を言った矢先、その礼の言葉を受け取った藤虎は自身が操る反重力で、足元の地盤を持ち上げてその岩に乗って移動。硝煙の中に姿を消していった。

「さあ! 藤虎が作ってくれた道を進むのよ」

 二次元人たちを藤虎が拵えてくれた道に誘導していく赤塚組の市川レイコ。

 

 しかし全員が陥没した建物の障壁を突き抜けていった先でも、同然の如く激しい戦闘が続けられていた。

 激しい爆音、そして立ち昇る硝煙に混じり、国連軍の兵士と凶悪な異常者(ヒール)たちが結束した大異常者(ヒール)同盟の戦いが繰り広げられている戦場で再び道筋を求めて奔走する一行にまたしても魔の手が迫ろうとしていた。

 と、その時。「こうも手薄じゃあねェ~~、見逃すわけにもいかんでしょう」と、間延びした物言いで戦場に降り立った一人の兵士が。

 オレンジ色のサングラスをかけた、細身長身の将官であった。

「き、黄猿!」「黄猿?」「彼も国連軍大将の一人! モンキーノ・ピカノリッチよ」

 間延びした喋り方で現れた兵士を見て名を叫ぶ赤塚大作にまたしても反応する新世代型。彼らに対してミズキが目の前に現れた黄猿もまた藤虎と同じ大将であると語り明かす。

 すると黄猿を目の当たりにした大異常者(ヒール)同盟は、一目散に黄猿に背を向けて逃げ出してしまう。

「き、黄猿だ! 叶う訳ねェ、逃げちまえ!」

 と、慌てて退陣してしまう大異常者(ヒール)同盟であったが、黄猿は容赦なく彼らを捉える。

「おォ~~、お逃げになさるな。どっちみち、君たちはここで死ぬんだからねェ~~」

 そういうと黄猿は長い足から繰り出す跳躍力で跳び上がり、両手の親指と人差し指で円を作り、その円の中心に黄色い光を凝縮させ始めた。

八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)

 次の瞬間、指で作った円に凝縮された光から、無数の光の弾が発射され、地上の異常者(ヒール)たちを的確に狙い撃つ。

「うぎゃあッ!」「ぐああ!」

 体を貫通する光の弾を受けた異常者(ヒール)は絶叫し、次々と傷口から血を噴き出して倒れていく。その余りにも苛烈で一見美しくも惨たらしい現状に、二次元人達は絶句してしまう。

 大将 黄猿。本名をモンキーノ・ピカノリッチという男は、元々は科学者であり、光子力エネルギーの研究中、爆発に巻き込まれて光子力エネルギーと肉体が同化。以降、全身を光エネルギーに変化できる「光人間」になった兵士である。

 光の能力で弾丸を広範囲に射出して敵の多くを死滅させた黄猿は、地面に降り立つとフッと真後ろの赤塚組と二次元人たちに顔を振り向かせる。

「ひっ!」「!!」

 今まさに大量虐殺を行ったばかりの黄猿に顔を向けられ、その飄々と掴み所の無い不気味な印象から赤塚大作ら赤塚組も二次元人たちも一驚してしまうのだが、当の黄猿は

「おやおや~~、誰かと思えば赤塚組の皆様じゃないですか。そして、その後ろですっかり縮み込んじゃっているのは確かうちの若い連中が連行してきた新世代型の二次元人……そうか、そういやあんたらが身元引受人になっていたんだっけねェ。ここはわっしが戦っているから、あんたらは早く去ってくれないかなァ」

「あ、ああ……了解したぜ」

 間延びした喋り方で早々の退避を訴える黄猿の台詞に赤塚大作は承諾し、二次元人たちを引き連れて急いで現場から立ち去っていった。

 そしてただ一人、現場に残った黄猿は再び前に首を振り向くと、戦場に残っている異常者(ヒール)の軍勢を畳みかけ始める。

「速度は……”重さ” ”光”の速度で蹴られた事はあるかい」

 そういうと黄猿は片足を発光させて、その足で凄まじい光速の蹴りを繰り出して、長射程のレーザー砲撃で前方の軍勢を全滅させていった。

 

 一方、赤塚組の誘導を目印に二次元人達は硝煙で視界が埋まる戦場を只すら駆け抜けていた。

 すると走り続ける二次元人たちの傍らで、激しい砲撃による爆撃が次々と着弾していき、その爆発の衝撃と爆風に二次元人達の足は竦んでしまう。

「うわっ!」「わっ!」

 激しい爆撃が連続ですぐ傍らに落とされていく現況で、周囲の悲痛な人々の声をテレパシーで感じ取ってしまったが為に悲痛な想いに駆り立てられてしまったがゆえ立ち止まってしまった琴浦春香に駆け寄るプロト世代の黒鳥千代子。そんな物々しい現状で、新世代型二次元人にある切っ掛けが起こってしまった。

 それは激しい爆撃が原因なのか、新世代型二次元人全員がキツイ耳鳴りを発症してしまい思わず目と耳を両方塞いで立ち止まってしまったのだ。

「うあ……っ!」「み、耳が……!」

 キーーンと耳鳴りが生じる現状に苦しみ出す室戸大智や猿田学ら新世代型達。しかし爆撃が原因なら、他の二次元人にも影響が見られるはずなのに、耳鳴りで苦しんでいたのは新世代型二次元人のみであった。

「どうした! しっかりするんだッ」

「琴浦さん! 琴浦さん、しっかり!」

「真鍋、それに室戸や御舟まで……いったいどうしちまったんだよぉ」

 激しい耳鳴りに苦しみ、地に伏せてしまう新世代型を酷く気にかけ、症状が現れていないプロト世代の海道ジンやチョコ、ギュービッドらが焦る気持ちを堪えて看病してあげる。

 するとこの時、新世代型二次元人の脳裏にある変化が。それは一人の人物の主観で流れる映像と音声であった。何者かの視点から捉えられる映像は、大地が砂漠という戦場の真っ只中、その人物は「はっ、はっ、はっ」と荒い呼吸をしながら小銃を抱えて戦場を駆け抜けていた。そして前方に敵らしき兵士を見つけるや否や小銃を構えて応戦、前方の兵士を射殺したのであった。

「はっ!」

 ここで謎の人物からの視点で流れた映像は途切れ、新世代型達も全員が我に返る。

「ど、どうした? 大丈夫か……」

「え、ええ……もう大丈夫です、先に行きましょう」

 心配そうに声をかける赤塚大作の言葉を受け止めながらも、新世代型の直枝理樹は立ち上がる。

 そして他の新世代型二次元人たちも、何事も無かったかのように振舞いながらも呆然としながら立ち上がり、再び進行を再開した。

「こいつら、大丈夫かね? 爆発の衝撃でどこか頭打ったんじゃないだろうな」

 赤塚大作はいきなり耳鳴りがしたと思いきや、ふっと立ち上がって何事も無かったかのように振舞う新世代型達を見て、先ほどの爆撃で頭でも打ったんだろうかと気にかけてしまう。

 

 

[増援! セブンズ・ガード]

 

 突如として襲撃された国連軍本部。抵抗戦力は国連軍本部に滞在していた兵士のみと駆けつけて来てくれた聖龍隊がメインとなっていた。

 そして国連軍と聖龍隊、二つの大軍団に挟まれ、大異常者(ヒール)同盟は徐々に抵抗するための戦力も士気も低迷してしまっていった。

 国連軍と聖龍隊の戦況が格段に有利な所へ、大異常者(ヒール)同盟にとっては更なる追い討ちをかける事態が起きてしまったのだ。

 それは「……セブンズ・ガードが来たぞッ!」有事の際には国連軍本部に緊急招集されるセブンズ・ガード。これで実際、赤塚組も前もって駆けつけた訳なのだが、何分召集を受け取るのは気ままに行動するならず者の集団ばかりなので、召集に応答してくれるのは極僅か。そのうちの一角が赤塚組なだけであったのだ。

 ここで大異常者(ヒール)同盟の凶悪犯たちは、駆けつけた船の船頭に威風堂々と立ち上がり、現場である戦場を静観しているセブンズ・ガードの顔にド肝を抜いた。

「前任者、リュウオウの後をついでセブンズ・ガードに伸し上がった恐竜族のアマゾネス……リュウナ!」

 セブンズ・ガードの座を祖父リュウオウから受け継いだ孫娘にして恐竜族では専らの派手なアマゾネスを率いる女族長リュウナ。

「海賊女帝、ボア・ハンコック!」

 絶世のプロポーションを持つ黒い綺麗な長髪の女性は、傲慢で我儘だと言われる海賊女帝ボア・ハンコック。

「イタリアンマフィア・ボンゴレファミリー10代目……沢田綱吉!」

 聖龍隊の一員でもあるイタリアンマフィア系のボンゴレファミリーを従えて参上した沢田綱吉。

「日本妖怪三代目総元締、奴良リクオ!」

 同じく聖龍隊の一員にして妖怪と人間の混血児である奴良リクオが配下の妖怪達を引き連れ、沢田綱吉と共に国連軍本部に駆け付けてきた。

 異常者(ヒール)たちは戦場に駆け付けたセブンズ・ガードの錚々たる顔ぶれに肝を潰しながらも抗戦を開始する。

「ひ、怯むな! 攻撃しろッ」

 指揮官がその他大勢の異常者(ヒール)にセブンズ・ガードに攻撃せよと命じた矢先、セブンズ・ガードの面々は船頭から飛び降りて戦場に降りると有無を言わさず初手の一撃をお見舞いしていく。

「そりゃッ」「うぎゃっ!」「ぐふっ」

 ブロントサウルスの恐竜人リュウナは巨大な斧状の武器を振り回して辺りにいる異常者(ヒール)を手当たり次第に蹴散らしていく。

「メロメロ甘風(メロウ)

 魅惑の能力を持つボア・ハンコックは両手をハートマークのような形に合わせ、そこからハート形の波動を放出して周辺の異常者(ヒール)たちを魅惑、たちどころに石化させてしまう。

 男を問わず無機物までもカチカチの石に変えてしまうボア・ハンコックは、周辺の異常者(ヒール)たちを見下して言い放つ。

「わらわは何をしようと許される。なぜなら……そうよ、わらわが美しいから」

 目の前の異常者(ヒール)達を自身の能力で蹴散らしたボア・ハンコックは、相手を見下すつもりか見下し過ぎて逆に見上げてしまう。

 増援に加わってくれたセブンズ・ガードを見て、国連軍と聖龍隊の士気も向上する。

「よくやった! 上出来だぜ」

 これには聖龍隊総長のメタルバードも士気が高まる。

「ツナとリクオがやって来たのは好都合だぜ。それにリュウナにハンコックも……聖龍隊、セブンズ・ガードの仲間達と協力して、一気に敵を畳みかけろッ!」

 聖龍隊の正式なメンバーであるツナとリクオの登場に付け加えて、リュウナにハンコックという付き合いのあるセブンズ・ガードの加勢にメタルバードは敵方との決着を一気につけ様とかと味方側に総攻撃の合図を吼えた。

「総長、僕らもやって来たよ」「手ェ貸すぜ!」

「お前たち二人がオレらに手ェ貸すとは……昔と比べて、二人とも成長したな。わははっ」

 セブンズ・ガードとして駆け付けたツナとリクオは、速急に聖龍隊に加勢しに向かう。そんな二人を見てメタルバードは昔の貧弱だった頃の二人を思い返して笑い飛ばす。

 

 一方、戦況がセブンズ・ガードの来襲で国連軍と聖龍隊側に有利に動いている最中、赤塚組と二次元人たちの許に聖龍隊のニュー・スターズが駆け付けた。

「済まねェ! すっかり遅れちまったッ」「遅いですよ、もうっ」

 遅れて合流してきた事を頭を下げて詫びるニュー・スターズ総部隊長のフロートに、二次元人達は待望していた。

 合流を果たしたニュー・スターズと赤塚組は、一般の二次元人たちを護衛しながら戦場を突き進む。

「敵の数も減ってきている! 前進するなら今です!」

「よしッ! 今のうちに突破するぞ!」

 縛斬で周囲の敵を斬り捨てる新世代型の鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)の言うとおり増援の影響もあってか戦場で戦う異常者(ヒール)の数が減少していた。これを好機と捉えたフロートは一気に戦場を突破しようと皆に駆け抜けるよう指示を飛ばす。

 しかしいくら敵の数が減少したとはいえ、人の命が一瞬で消え果てしまう戦場にいる事が今でも信じられない二次元人達の心は重いものがあった。

 銃撃、爆撃、凶刃、暴力、殺戮……

 次第に眼前に広がる惨状に、新世代型達は愕然としながらも自身の身にも戦禍が及ぶのを恐れて、その場の戦場を静観しつつ退避するしかできなかった。

 

 と、戦場を突き抜けていた一行のすぐ傍らで爆撃が落とされた。

 またしてもキーーンという耳鳴りが二次元人たちの聴覚を襲う中、新世代型二次元人の脳裏に再びフラッシュバックの様な残像が。

 地を這うように中腰で駆け抜ける小銃を構えた男の主観から始まるその残像は、敵であろうかターバン姿の兵士の死角に迫った瞬間、背後からその兵士の頭部を掴んでサバイバルナイフで首元を突き刺して殺めるといった残酷な描写。

 さらに立て続けにフラッシュバックは起こり、今度は手に手りゅう弾を持った視点から開始され、その手りゅう弾を敵陣に放り込んで敵兵を一網打尽に葬ってから小銃を連射しながら前進する男の主観が展開される。

 なぜ自分たちの脳裏に、この様な見たこともない、記憶にない映像が突然流れるのか理解に苦しむ新世代型たち。

 そんな苦悶に悩まされかけていた彼らの意識を目覚めさせてくれたのは「……おい、おい! 大丈夫か、しっかりしろ!」と、フラッシュバックで意識が此処に非ず状態の新世代型たちに声をかけ続けてくれた赤塚大作の呼びかけであった。

 赤塚大作に声をかけられ、ようやく意識を取り戻した新世代型たちは赤塚大作たちに手を引っ張られ、戦場を再び駆け抜けようと足を運ぶ。

 この時の彼らのフラッシュバックによる映像がある人物の記憶とは夢にも思わず。

 

 

[執行 徹底的正義]

 

 聖龍隊の隊士を含むセブンズ・ガードの増援を機に、戦況は国連軍と聖龍隊側に大きく傾いた状況下の中で。無事に赤塚組と合流を果たしたニュー・スターズは彼らと共に一般の二次元人の護衛を努めながら荒れ狂う戦場を突き進むのであった。

「はあ、はあ……あと、どれだけ走れば良いんですか」

 体力には自信がある新世代型の小野田坂道ですら、戦火が絶えない戦場を走り続けるのはもう限界であった。

「も、もうすぐで聖龍隊が確保している安全地帯に辿り着けるはずだ! 諦めずに走り続けるんだ」

 もはや体力も底を吐き掛けている二次元人たちに、赤塚大作は直に聖龍隊が確保した安全地帯に着くはずだと走り続けさせた。

 

 すると大異常者(ヒール)同盟の戦力が大分削れた戦況の中、戦場を走り続けていた一行の前に大異常者(ヒール)同盟の残党が群がってきた。

「チッ、まだこんなにいやがるのか!」

 目の前の行く手を塞ぐ大異常者(ヒール)同盟を前に臨戦態勢に入ろうとする赤塚組とニュー・スターズ。だが「ま、待って!」と新世代型の琴浦春香が突如として声を発した。

「こ、琴浦、どうしたんだよ……」

 突然の静止を訴える琴浦の発言に真鍋義久が問い掛けると、その瞬間、再び新世代型たちの共有感知が発動した。

 共有感知によって新世代型の脳裏に流れたのは、琴浦春香の記憶だった。かつて彼女は今の真鍋義久たち親友がいる学校に転校する前の学校で、自身の能力によって陰湿なイジメを受けていた。そして教師ですら、それを見てみぬ振りをしていたのであった。

 琴浦春香の記憶を共有感知で共感した新世代型二次元人達は、今目の前にいる大異常者(ヒール)同盟の残党の先頭に立つ女子たちと一人の男が、昔、琴浦春香を苛めていた女子生徒とそれを見てみぬ振りをしていた教師である事に気付いた。

「え! なんで……!」

 新世代型の多くが言葉を呑み込んだ。なぜ一般の二次元人であった彼女らが大異常者(ヒール)同盟などというテロリスト集団にいるのか疑問視してしまう。

 すると言葉を失くす琴浦春香を見つけた、かつてのいじめっ子たちは彼女を名指しして突然語り始めた。

「まさか、こんなところにいたとはね、琴浦春香!」

「あんたの所為で私たち、あれからどんな酷い目に遭わされてきたか」

「え……?」突然の発言に琴浦春香は身に覚えがなく、唖然としてしまう。

 そして衝撃の事実がかつて琴浦を蔑ろにしていた女子生徒の口から出てきた。

「あんたが転校してスグ! 政府の役人が私たちをイジメの罪状で異常者(ヒール)認定してきたのよ!」

「お陰で学校にはいられなくなるわ、家族からも見放されるわ……挙句の果てに世間からはみ出された私たちは政府を見返すために大異常者(ヒール)同盟に入るしか生きる道が残ってなかったのよ!」

 そして教師であった男も語り出す。

「俺だって! 普通の高校教師だっただけなんだぞ! それなのに琴浦、お前のせいで……お前への対応が異常であったと認定されただけで……」

「私たちは、正気ではなくなった二次元人……つまり異常者(ヒール)に認定されて行き場を完全に奪われたのよ! あんたの所為で……!!」

 かつて琴浦春香を蔑ろにした言動により、政府から目を付けられ精神が異常と判断される異常者(ヒール)に認定された経緯を逆上状態で語り続ける元教師に女子生徒たち。

「私達は異常者(ヒール)なんかじゃない! 普通の高校生よ!」

異常者(ヒール)だって認定されただけで、学校からは退学、パパやママも私達を見放して家には一歩も入れてもらえず完全に赤の他人扱い……」

「何処に行っても異常者(ヒール)異常者(ヒール)と指を刺されて……どんな目に遭ったか分かる!?」

「全部、全部あんたのせいよッ!!」

 もはや彼女達も教師も、全てを琴浦春香の責任として押し付ける身勝手な言い分で責め立て続ける。これには琴浦春香本人の心は締め付けられ、彼女の痛心も共有感知を伝わって新世代型二次元人達に共感された。

 すると話を聞いていた赤塚大作は、啖呵を切ったかのような感じで女子生徒や元教師たちに反論し始める。

「やいやいやいッ。テメエら、イジメとはふてぇことしやがる。俺も確かに昔はガキ大将で名を馳せていたが、決して弱いものイジメだけはするなと親から、大人から教わってきた! それがなんだい、まさか教師までもグルになってイジメッ子側に立つとは……教育者が聖職者だってのは、もう遠い昔話なのかねぇ」

「うるさい! お前達には関係ないだろッ」

 昔、琴浦春香を蔑視していた元教師の男からの言葉に赤塚大作は即行で反論した。

「関係なくはねェ! もう琴浦春香たちは俺らとは無縁なんかじゃねェ……列記とした俺たち赤塚組の仲間でぃ! 仲間を悪く言う奴は、例え女子供だろうと容赦はしないぞ!!」

「なに言っているの! そいつは人の心が解るバケモノなのよ! そんな奴を仲間と呼ぶなんて可笑しいわ!」

「うるせェ!! 例え相手が能力者だろうが獣人だろうが、俺っちらと縁を結べばそれでもう十分と仲間なんだよ!! まあ、人の道を踏み外したテメェらゲス共には解りっこないだろうがな」

 琴浦春香の様な能力者を蔑視する発言をする女子生徒の言葉に、赤塚大作は自分の意志でハッきりと琴浦春香を擁護する。

 と、赤塚大作と大異常者(ヒール)同盟に加盟した女子生徒や教師達が言い争っている時であった。二組の中間地点である大地から赤い液状の物体が染み出し、同時に辺りには凄まじい熱気が伝わった。

「こ、これは……」「溶岩! なんでこんな所に……?」

 粘り気のある液状の物体が高熱を発する溶岩だと認識した瞬間、何ゆえ人工島である国連軍本部の本土から溶岩が湧き上がってくるのか酷く困惑するプロト世代の海道ジンたち。

 すると地面から染み出していた溶岩が一気に噴出し、立ち昇る激しい熱気に皆が顔を背けてしまっていると、その噴出する溶岩の中から大柄な人影らしき影が目視できた。

 その人影は噴き上がる溶岩が治まるとハッきりと人間である事が識別できた。

 国連軍将校の軍服を着たその人物は角刈り頭に口髭を蓄え、葉巻を吹かして首元には花の刺青が服の隙間から覗かせていた。左胸にはバラのコサージュを着けているその男性は広島弁口調で眼前の異常者(ヒール) たちに激昂してきた。

異常者(ヒール)の未来など……わしが許さんわっ!!」

 余りにも厳つい形相と刺青に体格と、その男の全てが威圧的に感じる中、その男を見て赤塚大作が重い口を開いた。

「あ、赤犬……!」「え!」「赤犬って確か、国連軍元帥の……!」

 赤塚大作が発した一言に、新世代型の三枝葉留佳(さいぐさはるか)と宮沢謙吾たちが一驚する。

 徹底的正義を掲げ、如何なる悪をも断固として処罰していく国連軍。その徹底的正義を信条とする国連軍元帥赤犬、全身を溶岩に変える能力を持つ日系アメリカ人のマグマード・岩田が地中を溶岩で溶かしながら出没したのだ。

 この現状を前に、明らかに自分達に限りない敵意を向ける国連軍元帥赤犬の登場に、かつて琴浦春香を蔑ろにしていた女子生徒の一人が赤犬に訴える。

「ま、待って……私たちは異常者(ヒール)じゃないの! ……正気なのよ!!」

 通常の異常者(ヒール)の様に気がふれてない事実を述べる女子生徒の訴えに、赤犬は仁王立ちで答える。

「確かにお前さん達は狂人でも無けりゃ気が狂っちゃっとる訳じゃないのは見て判る」

「ホッ……」かつて琴浦春香を蔑ろにしていた女子生徒たちと元教師は、赤犬が自分達を狂人と見定めていない事にホッと胸を撫で下ろす。

 しかし赤犬はハッきりとした物言いで言い切った。

「……貴様らは普通の悪じゃ! 悪は排除せにゃあいかん!!」

 そういうと赤犬は溶岩で燃え滾る片腕を前へと突き出して、一気に溶岩化した腕を膨張させ始めた。

「い、イケねぇ! みんな、急いで離れるんだ!!」

 赤犬の構えを見た途端、赤塚大作は一般の二次元人達を現場から一刻も早く遠ざけようと焦り出す。

 そして次の瞬間、「大噴火!」と、元帥 赤犬が突き出した溶岩の腕が膨張し一気に前方へ無数の小さな火山弾が放射されたのだった。

「ぎゃあ~~!」

 二名ほどの女子の悲鳴が聞こえただろうか。皆が声のした方に目を向けてみると、そこにはまだ赤々とした溶岩の弾が直撃した事で体がジワジワと焼かれながら既に絶命している女子生徒二名が火山弾の下敷きになっていた。

「っ!! これ……」

 肉の塊が焼かれる鼻に付く異臭と、目の前に広がる惨状に琴浦春香は思わず吐き気に襲われそうになる。

「うっ……」「琴浦、見るな……コイツは、余りにも残酷すぎる」

 いつもは調子の良いことばかりしか考えてない真鍋義久も、目の前で自分たちと変わらない歳相応の少女を溶岩で焼き尽くす惨状に目を覆いたくなる一心であった。

 悪と見定めた者には容赦のない鉄槌を下す赤犬の行為に、攻撃を免れた他の大異常者(ヒール)同盟は一気に蒼褪めた。

「も、もうダメだ……せっかく戦力が分散していた国連軍を叩こうにも、聖龍隊だけじゃなくセブンズ・ガードまでも来やがって……その上、無敵に近い赤犬元帥まで戦場に現れるなんて! 勝ち目なんて残っちゃいねぇ!」

 すると次の瞬間、大異常者(ヒール)同盟は一斉に武器を捨ててその場から逃げ去っていってしまう。

 だが、赤犬の正義論は彼らの逃亡を許さなかった。

「わしに睨まれたら……もう逃げる事はあきらめんしゃい!!」

 そういうと赤犬は片腕を溶岩に変化させると、その溶岩の腕を伸ばして逃げようとする異常者(ヒール)の群集に手を突っ込んで鷲づかみにしてしまう。

「ぎゃあああぁぁ……」

 当然の事ながら、灼熱の溶岩である腕に掴まれた並大抵の人間は容赦なく肉体が蒸発し、絶命してしまう。

 更に赤犬は、既に戦意を失っている大異常者(ヒール)同盟を前に立て続けに攻撃しようと身構えるが「ま、待てよ赤犬! 相手はもう戦意を失っているんだ、それ以上は……」と赤塚大作が赤犬を制止しようとするが「邪魔すんじゃなかあ! 悪は根こそぎ潰した方が世の為なんじゃ、ボケェ」と逆に制止を振り払われてしまった。

 

 だが赤塚大作の作った数秒で大異常者(ヒール)同盟はだいぶ赤犬から離れられる事が叶った。

 しかし彼らには、もう二度と安息の時は訪れない。

 大異常者(ヒール)同盟の頭上から、両手から緑色の炎を吹き出して浮遊する人影が舞い降りてきたのだ。

 体型の解り難いスーツに身を包み、その顔にはグローブの様なデザインが施されている何とも不気味な容姿の男であった。

「タナトスの声を聞くがいい、罪人ども」

 そういうと男は腰に携えていたクロスボウを構えると、先端に自身の両手から吹き出していた炎と同色の火を着火させて矢を発射。発射された矢は地面に着弾すると一気に広範囲を高温の緑色の炎が広まり、地上の異常者(ヒール)たちは炎に包まれる。

「ぎゃあああ!」「あ、熱い! 熱い~~ッ!」

 地獄の様な光景に、二次元人達は絶句してしまうが、その光景を炎から免れた異常者(ヒール)たちがぽつりと呟いた。

「じ、地獄からの執行人……ユーリ・ペトロフ」「またの名を……煉獄の処刑人、ルナティック!」

 このユーリ・ペトロフの名を耳にし、二次元人たちは一驚した。なぜなら先ほど、そのユーリ・ペトロフに彼らは会っているからだ。

 国連軍元帥補佐官、すなわちあの赤犬の補佐を務めているユーリ・ペトロフのもう一つの一面であるルナティックを目の当たりにして二次元人たちは愕然とした。

 このルナティックの攻撃からも逃れようと、再び進路を変えて逃げ去ろうとする異常者(ヒール)達だったが、逃げ道を断とうと硝煙の中から人影が。

「ひゃ~~はっは! ボクちゃんもう楽しくてウキウキしちゃうよっ」

「デッドプール、真面目に働け」

「コイツが真面目に働いてた事なんかあったか、パニッシャー」

 硝煙の中から三人の男が現れ、それぞれが強力な銃火器を連射して目前の逃げ惑う大異常者(ヒール)同盟を問答無用で撃ち抜き始めた。

「ぎゃあああ!」「ぐはあっ」「うあぁ!」

 異常者(ヒール)たちの体が穴だらけになり、彼らは血まみれの死体に成り果てて地面へと転がり落ちる。

 この時、老若男女と関わらず異常者(ヒール)たちを撃ち抜いたのは、元アメリカ海兵のパニッシャー、全身スーツで背中に二本の日本刀を背負っているお気楽なお調子者デッドプール、元バットマンの相棒である二代目ロビンだったレッドフード。

 パニッシャー/デッドプール/レッドフードの三人は、いづれも国連軍補佐官ユーリ・ペトロフにより集められたアンチ・ヒーローで、通称【アンチ・ジャスティス】と呼ばれているチームを結成している。

 アンチ・ジャスティスの銃撃戦は留まる事を知らず、容赦なく銃弾の雨が逃げ惑う異常者(ヒール)に浴びせられる。その上、頭上からはルナティックの深緑の劫火が襲い掛かり逃げ場すら奪われる始末。

「た、助けて! もういや、!」

 銃撃と劫火の二重攻撃に逃げ惑う、かつて琴浦春香を蔑ろにしていた女子生徒は既に戦意を失い泣きながら降伏を訴えるが、彼女の背後から銃弾が頭部に直撃し、即死してしまう。

 ルナティックと彼によって結成されたアンチ・ジャスティスによって大異常者(ヒール)同盟の残党は残りわずかとなっていた。しかし元帥 赤犬の正義という信念が尽きる事はない。

「まとめて葬っちゃるわい!!」

 もはや一人一人排除していくのも鬱陶しく感じ始めていた赤犬は、溶岩に変えた両腕を前に突き出して最大火力の必殺技をぶち込んだ。

「流星火山!!」両腕から大量の巨大な拳状の形をした火山弾が連続発射され、広範囲の戦場に放たれる。

 必殺・流星火山の猛攻は、大異常者(ヒール)同盟の残党だけでなく多くの国連軍兵士をも呑み込んで、戦場を焼き尽くした。

 

 だが、これによって泥沼化しかかっていた戦況は国連軍側の圧倒的有利のまま勝利へと運ばれたのであった。

 

 

[戦い終わり]

 

 悪には容赦ない徹底的正義を信条とする国連軍元帥赤犬と、その信条に賛同するユーリ・ペトロフ従えるアンチ・ジャスティスの苛烈な攻撃は戦場を一気に終戦へと運んでみせた。

 しかし戦いが終わった戦場には、数多くの見るも無残な死体の山が築かれていた。

 元帥赤犬は、未だ自分らの本拠地である国連軍本部がいかに手薄だったとはいえ襲撃された現状に業を煮やしていたのか、全身を灼熱の溶岩に変化させたまま黒煙を噴き上げながら戦場を静観していた。

 一方で、赤犬とともに大異常者(ヒール)同盟の残党を手当たり次第殲滅していった元帥補佐官のルナティックは、自らが結成したアンチ・ジャスティスの三人と共に築かれた死体の山の中に生存している異常者(ヒール)がいないかどうか確認していた。

 一人の生き残りも許さない国連軍の徹底的正義が成せる執念の深さに、どうにか戦場を生き残ることができた二次元人たちは行き場のない憤りを感じていた。

 

 そして一行の許にスター・ルーキーズのミラールが様子を見にやってきた。

「みんな無事?」「おうッ、ミラール!」「ああ、何とかな」

 ミラールの呼びかけに赤塚大作もフロートもどうにか無事である事を伝える。

 全員の無事を確認したミラールは、聖龍隊のHEADたちも心配している事を伝え、聖龍隊が確保している陣地までの移動を勧める。

 この勧めもあって一行は聖龍隊本体と合流しようと、まだ灼熱の火山弾で炎上する戦地を歩き出す。

 すると国連軍兵士が、戦争で自分達が撃ち抜いた敵や、撃ち抜かれて戦死した仲間の兵士の死体など、戦場に打ち捨てられた死体を運んで一か所に集めているのが見られた。その中には、かつて琴浦春香を蔑ろにし、白眼視していた女子生徒や教師の死体も鉄の棒に引っかけられ、直接手で触れられずに地面を引き摺られながら運ばれていた。そんな一瞬でかつてのいじめっ子や悪徳教師であった死体を平然と、まるで粗大ゴミを扱う様に移動させる国連軍兵士の行動にも二次元人たちは愕然としてしまう。

 しかしその戦争後の戦地を進む二次元人たちを、まるで異質なものを見るかの様な懸念に満ちた目で静観する国連軍の将校たちの視線も感じられた。

 

 ミラールの案内の元、一行はようやく聖龍隊が滞在している国連軍本部その本土東側地区に辿り着けた。

「総長! 赤塚組はもちろん、迎えに行ったニュー・スターズも一般の二次元人たちも全員無事よ!」

 東地区に着いたミラールは活気盛んな女の子らしく声を発すると、バーンズたち聖龍HEADが駆け寄ってきた。

「お前たち無事だったか! さすがは大将、よく護り抜いてくれたもんだぜ」

「いや、なあに。途中で新世代型の連中も戦闘に参戦してくれたから助かったのよ」

 バーンズは二次元人たちを護り抜きながら進行してこられた赤塚組に賞賛の言葉をかけるものの、赤塚大作は道中で戦闘タイプの新世代型も参戦してくれたからこそ皆が無事でいられた事を述べ返した。だが新世代型が参戦した事実を聞いて、バーンズやエンディミオンなど一部のHEADは顔色を濁らせた。

 顔色の一瞬の変化を察して、気まずくなる新世代型たち。すると此処で戦況報告を他の隊士から念入りに聞いていたミラーガールが、旧友の赤塚組や仲間のニュー・スターズに加わり一般の二次元人たちも無事に帰参した事を耳にして速急に駆け付けてきた。

「み、みんな無事なの!?」

「あ、アッコさん」「は、はい、どうにか……うわっ?」

 慌てて駆け付けてきたミラーガールに琴浦春香と真鍋義久が反応した次の瞬間、ミラーガールは何の躊躇いもなく琴浦と真鍋に抱き着いて二人を力強く抱擁した。

「良かった、無事で……っ」「アッコさん……!」

 思わず感極まり、抱擁すると目から大粒の涙を流して安堵してくれるミラーガールの心優しさに、琴浦春香たち二次元人たちは感動した。

 

 しかし聖龍隊と二次元人たちの再会が果たされ、場が和んだのも束の間。

 そこに戦争の鎮圧を確認し終わった国連軍元帥マグマード・岩田こと赤犬が自身の補佐官を務めるユーリ・ペトロフことルナティックを携えてやってきた。

「よお、聖龍隊。未だに仲良しごっこしちょるようやないか」

「赤犬……!」(ユーリ……)

 聖龍隊と新世代型たちの慣れ合いを否定的に言う赤犬に対し、聖龍隊の隊士らは赤犬に険しい顔を向ける。それと同時に赤犬の傍らに付き従うユーリ・ペトロフことルナティックを目撃し、聖龍隊士の群衆の中からNEXTヒーロー達が静かに視線を彼に向けていた。

「まあ、一応は礼を言っておくわい。じゃが所詮、連中は何の強力な戦力を持っていない異常者(ヒール)の集まり、烏合の衆じゃ……! 貴様ら聖龍隊の手助けがなくとも、わしら国連軍だけで十分じゃったちゅう事を忘れるんじゃなかあ……!!」

「ああ、それは十分わかってるつもりさ」

 聖龍隊の手助けなどいらなかったと力強く述べる赤犬の言動に、キング・エンディミオンは素っ気なく返事する。

 すると先ほどの赤犬の行動に疑念を抱いていた赤塚大作が、赤犬に物申した。

「おい、赤犬! テメぇが俺らの様なならず者を……異常者(ヒール)を毛嫌いしているのは昔っから知ってる! けどよ、武器を捨てて戦意喪失した敵にも攻撃するってのはどうなんだ!?」

 先ほど赤犬を前にした異常者(ヒール)が武器を捨てて戦前離脱したにも拘らず、容赦なく彼らに追撃した赤犬の行動に文句をつける赤塚大作。

 しかしこれに対し赤犬は檄を飛ばし返した。

「黙れッ! そもそも異常者(ヒール)っちゅうんは存在そのものが悪! そんな輩を逃がしてしまえば、後々奴らはそこにつけ込み悪行の数々を繰り返し続ける! そんな悪を、いいやッ、異常者(ヒール)を排除するのがわしら国連軍の本職じゃ! わしがなんか間違ったことしちょるか? 言うてみいッ」

「もうやめて言い争うのは! 悲しいけど、どっちも間違ってはいないわ。今は戦争が終わった、それだけで良いじゃない、ねぇ?」

 檄を飛ばし返してくる赤犬と喧嘩腰になりそうだった赤塚大作のと間に割り込んだミラーガールの訴えで、双方ともに鎮まった。

 だが此処で、赤犬の行いに堪ってた鬱憤を爆発させて一人の少女が大口を開いた。

「でも! なんであそこまで戦ったのん! いくら悪い人たちでもかわいそうだのん!」

「れ、れんげ! 世の中にはいろいろとあるのよ……」

 悪人ばかりとはいえ非道な正義を執行した赤犬の言動に新世代型の宮内れんげは頬を膨らませて怒りをあらわにするが、そんな彼女に姉であり教師である宮内一穂が慌てて制止する。

 すると小学一年生のれんげの言い分を聞いて、赤犬は彼女の許に歩み寄ると即座にその場にしゃがみ込んでれんげと同じ視線に立つと、れんげの頭を撫でながら温厚に話し掛ける。

「お嬢ちゃん、確かにわしらの……いいや、わしの正義は容赦ないのかもしれん。じゃがな、悪に対して、少しでも気ィ抜いて対処しちょったら豪ェ目に遭わされるんがオチなんじゃ」

 そうれんげに温厚な口振りで話した赤犬は、再び立ち上がると熱く自分の理念を皆に説き明かす。

「わしは人間という生き物は崇高であると信じとる。ゆえに、そんな崇高な人間には相応しくない言動をとる人間は人間であるべきではないとおもっちょる。正しくない者に人間を生きる資格はないんじゃ!」

 人間とは本来、崇高な生き物であると信じている赤犬は、そんな人間には相応しくない言動をする人間を許す事ができなかったのだ。

「わしゃァ何一つ許した事はないし、これからもたった一つだって許しゃあせん」

 今後とも悪の、異常者(ヒール)の悪行を一片すら許さず妥協しない考えを述べる赤犬は、衝撃的な言葉を発した。

「故に、修司のように昔の悪行を許す事も無かあとね! わしはいつか、ブラック・リストに記載されている人間も通常の異常者(ヒール)同様に独房にぶち込むべきじゃと考えとる次第じゃ」

「!!」

 なんと小田原修司は多少の罪を許しているのに反し微塵の贖罪も認めない赤犬は、ブラック・リストに記載されている人間すらも通常の異常者(ヒール)と同等に独房へと放り込もうと言い出した。これに新世代型でブラック・リストに名前が記載されている森谷ヒヨリ/四宮小次郎/速水ヒロの三名は衝撃を受ける。

 そして元帥赤犬は、側近のルナティックと周辺の中将らを引き連れてその場を離れようとする。が、襲撃された国連軍本部の後始末に乗り出す直前、赤犬は最後に聖龍隊や赤塚組そして一般の二次元人たちに背を向けてこう言い放った。

「人間は正しくなけりゃあ、生きる価値などありゃあせん!!」

 燦然と背中に『正義』の二文字を背負って立つ赤犬の力強い言葉と周辺に集まってきた中将たちも同じく背負う二文字の重い意味を察し、誰もが言葉を呑み込んだ。

 

 そして赤犬と周辺に元帥を呼びに集まってきた中将たちと共にその場から離れようとする一人の異様なスーツに身を纏う男に、聖龍隊の方から声がかけられた。

「ペトロフ!」

 その声にユーリ・ペトロフこと国連軍元帥補佐官のルナティックが一瞬だけ立ち止まり、声のした方へと顔を向ける。

 ルナティックが顔を向けた視線の先には、ワイルドタイガーたちNEXTヒーロー達の姿があった。

 かつて同じシュテンルンビルトのヒーロー支部で働いていた同僚。特にタイガーは、自分の窮地をルナティックに救われた事もあった。だが、それらは全てルナティックとユーリ・ペトロフが同一人物だと判明する前の話。ユーリは自身がルナティックである事を国連軍により暴かれ、軍により逮捕・連行されてしまう。この時、ワイルドタイガーたちはユーリがルナティックな筈はないと信じ、彼を擁護するが、その数週間後、国連軍元帥の赤犬と互いの正義論が一致した事でユーリの逮捕・起訴は免除、代わりに徴兵制度によりユーリは国連軍補佐官としてタイガーたち聖龍隊とは理念が一致しない国連軍側に身を寄せる。結果、ユーリの無罪を信じていたタイガーたちは、ユーリが正真正銘ルナティックであった事を含め、国連軍側に寝返った理由も含め、完全に関係が離反してしまったのである。

 そんなかつての職場仲間を見据えていたルナティックであったが、ほんの数秒もしない内に再び顔を正面に向けて前進するのであった。

 もはや国連軍補佐官として自分の正義論を堂々と実行できる立場になったユーリ・ペトロフにとって、過去のシュテルンビルトでの日々はただの昔話に過ぎないのであろうか。

 

 

[赤犬という正義と国連軍の重役]

 

 国連軍元帥赤犬の容赦のない自らが掲げる正義の信条を語り聞いた一同は、それから本土より少し移動して赤塚組が乗ってきた義賊要塞・百鬼命義に場所を移して聖龍隊や赤塚組の面々から怪我の処置などを施してもらっていた。

 

 だが、聖龍隊によって戦場を駆け抜けている間に受けた傷を治療してもらっている最中、成人している新世代型二次元人達は先ほどの赤犬の尋常ならざぬ正義の行いに愕然とし、談話していた。

 何ゆえ赤犬はあそこまで徹底した正義を掲げているのか、何故あそこまで信念を貫いているのかと。まだ幼い子供も自分達の中には含まれているにも拘らず、血の気の多い残酷で過激な行動を移せるのか疑問視していた。

 すると其処にバーンズが話しに入ってきて、二次元人たちに語り出した。

「赤犬、奴は昔っからそうだ。自分の信じた正義を貫き、邁進し続けているんだ」と。

 良くも悪くも赤犬は「己の正義を信じ、邁進し続ける男」とバーンズの評する言葉に耳が傾いてしまう二次元人たち。彼らにバーンズは更に語り続けた、赤犬の正義を。

「あいつは誰も憎んじゃいない、何も憎んじゃいない――――あいつはただ赤いんだ。赤くて紅くて緋くて朱くて赫い奴なんだ」

 赤犬の正義、それは個人も集団も、何も憎んでいない。ただただ赤く紅い理念を持っているのだと。そう語るバーンズは赤犬の真情も語り明かす。

「あいつは、ただ赦せないだけなんだ。不正義を、絶対悪を、その全てをな」

「そんなの」「その通りだ。絶対悪なんて、この世には無い。でも赤犬はそれでも赦さない」

 ただ赦せないだけだと告げるバーンズに、二次元人たちはそんなの可笑しいと訴えようとするがバーンズは既に解っていた。この世に絶対悪なんて存在しないと。だが赤犬は止まらないと言う。

「あいつは修司の様に何かを嫌ったり憎んだりするような男じゃない。赤犬にあるのは、赦すか赦さないか………………それだけだよ」

 憎悪や嫌悪感で動く事のない赤犬の真情は、赦すか赦さないかの二択だけ。余りにも行き過ぎた正義の理念に二次元人たちが絶句している最中、ジュニアが赤犬に対して一つ付け加えた。

「それともう一つ、赤犬は………………自分自身でさえも、赦していない」

 あまりにも行きすぎた正義、あまりにも間違った正義。それでも彼は、赤犬は変わらない。ただ己の信念に付き従い戦い続ける赤犬の容赦なき正義を、二次元人たちは痛感するばかり。

 

 赤犬の行きすぎた正義と掲げる信条について、未だ黒煙が舞い上がる戦場跡地から漂う異臭を嗅覚で感じながら愕然と佇む二次元人達。

 すると百鬼命義に、一人の国連軍兵士が岩に乗ってやって来た。

「皆さん、無事なようで何よりです」「あんたは、新しく国連軍の大将に抜擢された藤虎……!」

 自らが操作する岩に飛び乗って、戦後間もない荒れ果てた戦地を飛び越えて百鬼命義に乗り込んできた藤虎に赤塚大作ら一同は目を向けた。

「なんでぃ、テメェも赤犬同様、俺らや聖龍隊のやり口に文句があるっていうのか!」

「いえいえ、滅相もございやせん。ただあっしは本心より、皆さんの様な気高き方々が御無事なのか気になった次第で。つい言葉をかけに来ちまったんでござんす」

 先ほど聖龍隊や赤塚組の異常者(ヒール)への対応に関して文句や不満をぶつけてきた赤犬同様に、己の不満や信条を吐き捨てるのかと問う赤塚大作の言葉に、大将藤虎はただただ本心より聖龍隊や赤塚組そして彼らが擁護する新世代型二次元人の現状が心配になっただけだと説き返す。

 さらに藤虎は最近になって入隊した自身の真情を一同に語り明かしてもくれた。

「あっしはつい最近、国連軍に入隊しましたんで元帥殿の正義は余り理解しておりやせん。ですが、あっしにはあっしの正義があるのも道理。元帥殿のやり方に口を挟む事はできやぁせん」

 自分には自分の信条がある故、他人の信条には口を挟まないのも信条にしていると語る藤虎は、見えない目を新世代型たちに向けると彼らの現状についても語り出した。

「多くの将校さん達が、未だにあんたら新世代型の事を危惧しておる様ですが……あっしは違いやす」

「……!」

「あっしには、どうしてもあんさんらが悪い様な……いいや、従来の異常者(ヒール)の様に気が狂ってしまった連中には到底思えません。特に先ほどの少年、あん時、コインを拾ってくれた新世代型の少年の優しい心持はあっしにもよぉく伝わり申したでござんす。詳しい事情や経緯は知らねェですが、あっしは全ての新世代型が危険とは思えねえでございやす」

 先ほど目の見えない自分を気遣い、自販機下に転がった硬貨を代わりに拾ってくれた新世代型の燃堂力の優しさを知っている藤虎は、新世代型二次元人が全て脅威とは思えないと真情を語ってくれた。

「先代の聖龍隊総長にして、国連でもかなりの権力と影響力を持っていた小田原修司が掲げていた『非情の正義』に付け加え、今では元帥になられた赤犬殿が推される『徹底的正義』の二つが相重なって、より厳重な武力へと成長しちょりましたのが今の国連軍。あっしが言うのもなんですが、小田原修司が掲げた正義と赤犬はんが掲げる正義は紙一重で同じような正義だったと思えやす」

「……………………」

「ゆえに今の御時勢……障害や能力、種族といったもんで差別してきたもんが悪と見なされ容赦なく正義の鉄槌で人生を終えてしまいやす。差別してきたもんを悪と差別して鉄槌を下す正義、差別を差別で返すこの矛盾……これもまた、小田原修司の強硬な正義のやり口がしわ寄せしたからこそじゃねェかとあっしは思いやす」

「…………………………………………」

 国連が所有する人間兵器であった特権を生かし、国連や世界の重鎮たちに多大な影響を齎していた先代の聖龍隊総長小田原修司。そんな修司が掲げた『非情の正義』と元帥赤犬が掲げる『徹底的正義』が紙一重で最も近い正義の価値観では無かったのかと説く藤虎は、さらに差別を差別で返す矛盾を生み出したのも小田原修司の強硬な正義の執行からによるしわ寄せではなかったのではないかと説かれ、かつてその強硬な正義を共に推し進めていた聖龍隊は何も言い返すことが出来なかった。

「まあ、あっしも人の事は言えた義理じゃないですがね。小田原修司がそんな強硬な正義を推し進めたのは、自身が発達障害者という身の上から差別とかそういったもんに敏感になっちまったからだって話も薄々聞いておりやす」

 すると藤虎は自身で潰した盲目の目を指して語った。

「あっしも見てのとおり目が不自由なもんでね、周りの人の気配は察しても目や鼻と言った顔まで把握することができやせん。そんな理由で、障害という意味で差別されてきた小田原修司の気持ちは少しばかり理解できやす」

 障がい者という立場から感じられる人の差別を痛感した小田原修司の心意に藤虎も少しばかり共感できると説き明かす。

 そして多くの人間から疎まれ、危険視される新世代型二次元人を含む一同の無事を確認し終えた藤虎は去り際に再度あのとき硬貨を拾ってくれた新世代型の燃堂力に言葉をかけた。

「少年よ、あん時の優しい気持ち、これからも忘れるんじゃねェでござんすよ」

「お、おう、解りました……藤虎の大将さん……」相手への気遣いを忘れるべからずと言い残す藤虎の言葉に、新世代型の燃堂力は唖然としながらも頷いて返答する。

 そして藤虎は、いまだ硝煙が舞い上がる国連軍本土の戦場跡地へと消えていった。

 

 藤虎が自分の窮地に助けに入ってくれた燃堂力を含む二次元人たちの安否を確認し終え、百鬼命義から降りて行ったその数分後。今度は更なる妙客が訪ねてきた。

「おやおや、実際に見てみると、こんなに多くの新世代型を匿っているんだねアッコちゃん」

「あ! お鶴さん!」

 藤虎に続いてやって来た国連軍の人間、それは一人の老婆であった。老婆は新世代型を視認してミラーガールたちに声を掛けると、ミラーガールは笑顔で老婆に声を返す。

 老婆は国連軍中将でも大参謀に位置付けられている人物で、お鶴という女性であった。お鶴は相手を布切れの様に水で濯ぎ洗う事ができる『洗濯』の能力者である。

 本来、お互いの正義の価値観やそれによる活動の範囲の食い違いで犬猿の仲になってしまっている聖龍隊と国連軍であるが、このお鶴は女性には分け隔てなく友好的であり、国連軍内でも多くの女性兵士に慕われており、聖龍隊の女性陣とも親しい間柄を築いているのだ。

 そのお鶴が国連軍本部襲撃後にわざわざ聖龍隊の様子を、正確には新世代型二次元人の様子を見にやって来たのだ。

「元気かい、アッコちゃん。それに他の子たちも……」

「はい、お鶴さん!」「元気元気~~!」

 今までの国連軍側の人間とは打って変わり、お鶴相手には元気で気さくな人柄で接するミラーガールにセーラームーンらHEADの女性たち。

 すると聖龍隊の女性たちはお鶴を手厚く歓迎し、ゆっくり話し合える様に座れる場を設け、お茶まで差し出し始めたのだ。

 出されたお茶を断る事無く、快く受け取るお鶴はお茶をゆっくりと啜ると一息入れてミラーガールを隣りに交えて会話し出した。

「ふぅ、ホントに今は昔と違って色んなタイプの二次元人が共生しているわね。スポーツものにヒーローものはもちろん、少女漫画やほのぼの系のキャラクターともこうして同じ場所にいられるとは……時代は変わりつつあるよ」

「フフ、そうですね。でもお鶴さんだってゼンギさんと違って全然変わってないじゃない」

「当たり前だよ。あんなおかきジジィと一緒にしないでおくれよ、アッコちゃん」

 古今東西、多種多様な二次元人が共生する世界観に時代の移り変わりを痛感するお鶴に、ミラーガールは笑顔でお鶴は一気に老けたゼンギ大目付と違って変わらない元気な女性だと話す。するとお鶴は逆にゼンギ大目付と一緒にしないでくれと笑顔で返した。

 そしてお鶴は聖龍隊の女性から受け取ったお茶を満足そうに一口飲むと、実直な面差しでミラーガールたちに問うた。

「……率直に言うよ。新世代型二次元人になんか変化は無いだろうね」

「ええ、それはもちろん」「みんな極々普通の二次元人です」

「普通ね……」

 セーラーマーズとマーキュリーの言葉に、お鶴は何処か疑念の表情で再びお茶を啜った。

「今の二次元界はホントに色んな事が立て続けに起こるから大変だよ。オマケに人気が博した一部のキャラクターは世界観が違うって言うのに出没してきて……その混乱を三次元政府はアタイら『ONEPIECE』の海軍キャラを国連軍に据え置く事で片付けさせようって言うんだから、やんなっちゃうわよ」

 話が弾んでいるのか、お鶴は自分たち世界観の違う版権キャラを国連軍に据え置く事で、多くのキャラクターが跋扈する今の現状に立ち向かわせようとする政権への愚痴までも零す。

 そんな中、話題に出されている新世代型二次元人たちがお鶴との談話を見守る中、それを知ってお鶴は平然と新世代型たちについて淡々と語り続ける。

「正直言うとね、アッコちゃん。私はもちろん多くの将校だけに留まらず、新世代型二次元人を危惧しているのは並の兵士達だっておんなじなのよ。赤犬が聖龍隊や赤塚組を懸念しているのも、多くはその理由からなのさ」

 何かと危険視される新世代型二次元人を擁護する聖龍隊や赤塚組を、赤犬は元より多くの将校たちが懸念を示している事を伝えるお鶴。これに対してミラーガールは

「……確かに、今でも初期の新世代型の過ちで多くの人が偏見を向けてしまっているわ。だけど安心してお鶴さん、彼らは正真正銘、何の危険もない極普通の二次元人だから! まあ、何にでも変身できる私が普通だなんて言えた義理じゃないんだけどね、はは」と、最後には苦笑を浮かべてお鶴に返答する。

 さらにミラーガールは真に訴えかける眼差しでお鶴に申し開いた。

「それにさ、お鶴さん! 彼らには無限の可能性が、明日があるのよ! そんな二次元人を危険な可能性があるってだけで束縛するだなんて決して許されない事だと私は思っているわ。だからお願い、約定通りに私たち聖龍隊が新世代型を見守っているからお鶴さんたち国連軍はもう少しだけ色々と待ってて」

 無限の可能性を秘めた新世代型を束縛する事が許せないと明かすミラーガールは、国連と交わした約定の通りに今後も新世代型二次元人を見張っているから軍事的な動きはしないでほしいと訴える。

「見守っているから、か……ふ、仕方がないね。聖龍隊にはいくつか借りもあるし、その一つを返してもらおうじゃないか。解ったよ、新世代型達の監視はあんた達に一任し続けるよ。だけど、今後もっと大きな問題を起こされた時には容赦なく動くから、そん時は覚悟しておくんだよ」

「う、うん! ありがとう、お鶴さん!」

 やや呆れながらもミラーガールの熱意に打たれたお鶴は、以前からの約定である新世代型二次元人の監視を聖龍隊に一任させ、自分たち国連軍はもっと大事にならない限り動かない事を言い聞かせる。これにミラーガールは少女の様に喜び、感謝の言葉を述べた。

「まあ、あんた達が目を配らせていれば何の問題もないとは思うけど……けど忘れるんじゃないよ。こいつらに秘められた真実を」

「……忘れないわ、お鶴さん、絶対に」

 鋭い眼光でミラーガールに釘を刺すお鶴に、ミラーガールは真剣な表情で返答した。

 

 そして一杯のお茶を飲み干したお鶴は、まだ戦闘が終わって間もない国連軍本部に戻ろうとする。

「それじゃ、あたいはこれで失礼するよ。現政奉還だけでも忙しいのに、今度は本部を襲撃されちゃ老体に響いちまう」

「お気をつけて、お鶴さん」

 老体に鞭打って動かなければならない多忙な状況を愚痴るお鶴に、七海るちあが優しく言葉をかける。

 と、その矢先。本部に戻ろうとしたお鶴の目にある物が飛び込んできた。

「っ! 一体どうしたんだい?」

 彼女の目の先には、酷くうなされている新世代型の直枝理樹の姿が飛び込んできた。

「どうしたの一体!?」

 お鶴と話し込んでいて気付かなかったとはいえ、ミラーガールは事の急変を理樹を看病していたナースエンジェルに訳を訊ねる。するとナースエンジェルが語るには、どうやら理樹は持病のナルコレプシーで突然睡魔に襲われ静かに倒れてしまったという。しかしナルコレプシーだけなら、いつもの直枝理樹の症状と合致している為に特に心配する事はないが、普段は見られない異常なまでのうなされ具合にナースエンジェルも理樹の友達も困惑してしまったという。

 この事態にお鶴も直枝理樹の事を気に掛けるが、その時、他の新世代型達にも異変が。

「うっ……」「? どうした?」

 急に真鍋義久たち新世代型が頭を押さえる異変に気付くバーンズが訊ねると、真鍋は頭を押さえたまま返答してくれた。

「それが……また……」

「また……ハッ、ひょっとして、また共有感知が発動しているのか!?」

 新世代型二次元人にしか表れていない互いの思考を共有してしまう『共有感知』の能力が発動したのかとバーンズが解くと、同じく共有感知を感じている薙切えりなも答え返した。

「それが……少しおかしいんですの」

「おかしいって?」

 えりなの返しにバーンズが首を傾げると、他の新世代型二次元人が話してくれた。

「その、何と言うか……」

「今まで誰も見た事もない記憶って言うか映像が頭の中に流れるんですよ」

「そうそう! 始めて見る記憶というか映像なんです!」

「戦争中も、この記憶がまるでフラッシュバックみたいに頭の中に流れてきました」

「戦争中にもだって!?」「!」

 国連軍と大異常者(ヒール)同盟が戦闘中にも、同様の現象が起こっていた事を知ってバーンズもお鶴も一驚する。

「そ、その映像ってどんなのなんだ? いったい誰の記憶なのか検証したいから、ちょっくら頭ン中覗かせてもらぞ」

 そういうとバーンズは新世代型の頭に自身の手を置いて脳内に流れる映像を自分の頭の中にも流し始めた。彼はテレパシー系能力者だが、琴浦春香や斉木楠雄の様に制御が困難なテレパシーではなく自制できる能力であり、普段からも離れた人物の心意を自在に読み解くほか、潜在意識すらも頭に直接手を置く事で容易に読める事ができるのである。

 そしてバーンズが新世代型の脳内に流れていると言う、誰のものでもない記憶映像を直視してみると、それは意外な映像であった。先ほどの国連軍と大異常者(ヒール)同盟の戦闘にも引けを取らない爆撃が降り注がれる戦場の中をひたすら突き進み、次々と敵兵を確固撃破していく屈強な兵士の記憶が流れていたのだ。

「これは……!」

 驚いたバーンズが、その記憶が流れている根本は何処か確かめようと出所を逆探知してみた。すると一人の新世代型の青年に辿り付いた。

「まさか……理樹の奴が?」

「なにっ? おいバーンズの小僧、ひょっとして新世代型の子たちが垣間見ている戦場の記憶は、あの少年から流出しているのかい?」

 うなされている直枝理樹が記憶の出所である事を知って戸惑うバーンズに対し、近くのお鶴はバーンズ達の様子から逸早く新世代型が戦場の見知らぬ記憶を頭の中で再生している事実を察し問い詰める。

 すると全ての点をバーンズは線で結んだ。「まさか……理樹がいま見ている夢だとでも言うのか?」「ゆ、夢だって!?」バーンズが出した結論は、新世代型達が共有感知で見ている記憶は、今まさに夢にうなされている直枝理樹の白昼夢ではないかと結論付け、これには一同愕然とした。

「うぅ……」一方で、一人ナルコレプシーで睡眠に入ってしまった直枝理樹が白昼に垣間見る悪夢にうなされ続けていた。

 一人、ただ一人で戦場を駆け抜け、淡々と敵兵を殲滅していく謎の記憶。

 この異様なまでの記憶による悪夢を見続け、ようやく直枝理樹本人も瞳孔を開き切って大量の汗を流しながら目覚めた。

 

 この事態を受けて、聖龍隊は言い様のない不安をしみじみと感じ入っていた。が、その反面、大参謀お鶴は新世代型達が垣間見た戦争の記憶について何か知っているかのように懸念していた。

 

 

[真実を知る将校達]

 

 正式に国連軍より二次元人たちの身柄を引き取った赤塚組は、船団で駆け付けた聖龍隊と合流を果たして大異常者(ヒール)同盟との戦闘を後に国連軍本部より出港しようとしていた。

「……彼らを手伝わないんですか?」

 破損や死体の回収など、戦争後の後片付けをする国連軍には補助しないのかと赤塚組が運航する義賊要塞 百鬼命義に搭乗させられた瀬名アラタたち新世代型が訊ねると、船上で急がしく動き回っている赤塚組が答えた。

「ここは国連軍の敷地だ。部外者のおれ達がいつまでも動き回られるだけでも嫌がるってもんさ」

「あとの事は国連軍に任せて、俺らはとっとと出港した方が良いって事よ」

 これには同乗している聖龍HEADも同意見であった。

「その通り。いつまでも国連軍に身を置いていたんじゃ、お互いに気を使っちまうしな。後は国連の奴らに任せて、オレ達は早々に出港しないとな。……急いでアジアの各武将と会わないといけねェし」

 バーンズの言うとおり、国連軍と互いの正義の価値観の不一致で犬猿の仲だというのに、その彼らから仕事を奪うのも申し訳ないと察しての判断であった。

 その頃、ナルコレプシーから悪夢で目覚めた直枝理樹が未だにぐったりと草臥れている時。同じ新世代型の薙切えりなが理樹に文句を言ってきていた。

「あなた、テレビゲームのし過ぎじゃないですの!? あんな戦争の悪夢なんか見ちゃって」

「い、いいえ……僕はあんなゲームしませんし、した事もありませんよ」

 薙切えりなは共有感知で頭の中に流れてきた理樹の悪夢を、彼がプレイしたテレビゲームの映像だと決め付けるが、当の理樹は自分は戦争物のゲームをプレイした経験は一度もないと訴える。

 

 そうこうしているうちに赤塚組が運転する義賊要塞 百鬼命義は無事に出港し、戦火が鎮まったばかりの国連軍本部を後にする。

 そんな聖龍隊と赤塚組が同乗する百鬼命義を見て対岸沿いの兵士達は、「厄介な奴らが帰っていくぜ」という心境で見送りもせず、ただ沖合いに船出していく百鬼命義の出港に無言であった。

 しかし、その沖合いへと出向していく百鬼命義を国連軍本部から遠視する者たちの存在があった。

「行ってしまうな」「ああ、だがこれ以上、拘束しておく訳にもいかないからな」

 それは二次元人たちの取調べを自ら進んで行った国連軍本部中将のオニグモとモモンガが遠くから船出する百鬼命義を厳つい眼差しで遠視していた。更に二人の側にはドーベルマン、ストロベリー、ヤマカジの姿もあった。

「……しかし未だに信じられん。あの新世代型二次元人が、まさかあの男の……面影なぞ全く感じられなかったぞ」

「うむ。三次元政府も異常者(ヒール)化しない精神と肉体を作り出す為に遺伝子配列をコピーしたみたいだからな」

 強張った面差しでドーベルマンとヤマカジが語り合う。

「どちらにしろ、今の我々にできる事は……もし、新世代型に何かしらの影響が出れば真っ先に討伐できる体制を布かねばならない事だ」

「そうだな。あの真実を知っていようが知られまいが、異常者(ヒール)などの凶悪な二次元人に変貌してしまえば元も子もないからな」

 これからの体制をどうするかで議論するストロベリーとオニグモ。

「彼らに罪がないのは重々わかっている……だが、それでも我々は成し遂げねばならない。世界の、そう正義の為に……」

 そしてモモンガ中将は誰よりも懸念した面構えで静かに物申すのであった。

 

 

 

 一方、聖龍隊に訪問しに行ったお鶴中将は戦場をただ静観する一人の壮齢の男の許に報告していた。

「……見てきたよ」

「おう、お鶴ちゃん。どうだ? 奴らの様子は……」

「今のところは一応大丈夫ってとこかな。例の新世代型は記憶をまだ完全に思い出していない様子だけど……ちょっと貰うよ」

「ああ! お鶴ちゃん、わしのおかき取らんでくれよ!」

「うるさいわね! 足正義輝の現政奉還なんかで悪党どもが好き勝手しているんだ! 少しぐらいおかき食べてなきゃ気が紛れないよっ」

「おお、怖。それで、まだ新世代型が例の記憶を思い出してない、けど?」

「ああ、確かにあの子たちは自分の出生に例の男が関与している事は記憶にはまだないみたいだけど……厄介な事に、ここの戦況を目の当たりにして少しずつではあるが記憶がフラッシュバックの形で思い出されちまっているみたいだねぇ」

「それはマズイな……今の精神が不安定な状態で、あの男の記憶を思い出されてみろ。発狂して危険な異常者(ヒール)に変化する可能性もある」

「共有感知ってのは厄介なもんだよ。一人思い出しただけで他の連中まで思い出しちまう」

「新世代型にしか症状が見られない、互いの思考を共有する能力か……それもまた、異常な二次元人に変貌する所以になりかねんな」

「ああ、今後はさらに新世代型への警戒を張る必要があるね」

「うむ……しかし三次元政府も実に厄介な事をしてくれたもんだ。まさか新世代型のDNAにあいつを使うとは……」

「文句言っても仕方ないけどね。あの子たち自身に罪はないんだから……ところで話は変わるけど、捕縛できた異常者(ヒール)達から何か掴んだかい? 何ゆえ国連軍本部なんかに攻め込んできたんだ? 確かに世界中に兵力を拡散させていたから手薄だったとはいえ、そこを奇襲されちまうほど警備に不備があった訳でも無かろうに……」

「うむ、それなんじゃが……どうも連中を手引きした輩がおるようじゃ」

「なんだって!? いったい誰が……」

「尋問で得られた話によれば、黒いサムライに導かれたと瀕死寸前の悪党が言っておったそうな」

「黒い、サムライ……? おいゼンギ、そのサムライってまさか……!」

「ああ………………黒武士とわしは見ているよ」

 敢えて和やかな訪問に見せかけて新世代型の様子を確信しに行ったお鶴。そのお鶴からの報告を受けて、ゼンギ大目付はおかきを頬張りながら大異常者(ヒール)同盟を手引きし、国連軍本部の兵力が手薄な所を襲わせたのは黒い武士であったと伝える。

 

 

 果たして新世代型に秘められたDNAと記憶とは?

 そして国連軍本部を襲わせたのは、本当にあの黒武士なのか?

 話はまだまだ続く……!

 

 

 

[今回登場の国連軍側キャラクター一覧]

 

 国際連合の軍隊として『絶対的正義』と『非情の正義』を掲げて世界中の治安維持を行っている。 主な職務はテロリスト等の犯罪者の取締だが、時には度を越えた非情な行為をする時もある。太平洋南アメリカ沖に本部としての人工島を構えており、そこから世界中に発進する。少尉以上の兵士は将校と呼ばれ、背中に『正義』の文字を刻んだコートを着用する事が許される。

(主にONEPIECEの海軍キャラのパロ、またはIFの存在と認識される)

 

元帥

「赤犬」マグマ―ド・岩田

 日系アメリカ人であり、ハワイ出身の軍人。能力は「溶岩」であり、流動体質系であるため物理系の攻撃は全く効果がない。また「火を焼き尽くし、喰らう能力」と称えているほど、火炎系の攻撃にも強い。

 

大目付

「仏」ゼンギ

 通称「仏のゼンギ」。(その前に「智将」と冠する場合もある)帽子に隠れたアフロヘア―と丸渕メガネが特徴的な壮年の男。世界の均衡を司るという三大勢力の一つ、国連軍本部。その海軍で後進の指導を行う大目付という立場に属している。以前は、軍のトップである「元帥」に属していた。

能力

 巨人並みの大きさの大仏に変身できる「大仏人間」。「仏のゼンギ」という異名は何も「仏のように優しい」とかそういう意味ではなく、本人が本物の「仏」になるのである。その巨体を活かした肉弾戦や、掌から発する強力な衝撃波を主たる武器とする。

 

 

三大将

「黄猿」モンキーノ・ピカノリッチ

 一人称は「わっし」で、光の能力に似合わぬ間延びした喋り方と、どこか抜けたような振る舞いは飄々としてつかみ所がないが、逆にそれが腹の底を読ませず、他の大将よりも不気味な印象を受ける。かつて冷苦・マグマーノと共に三大将と呼ばれたが、冷苦が「だらけきった正義」へたどりついたこと、一方でマグマーノは悪は根絶やしにするという「徹底的な正義」を貫き続けていること、対照的な二人を俯瞰して眺めたピカノリッチは「どっちつかずの正義」を掲げている。そのため職務に関しては、情に流される事も、マグマーノのようにやり過ぎる事も無く、かつては国連軍兵士であった者でも敵となれば容赦なく打ち倒す非情さ・確かな実行力を持つ。ある意味でバランスの取れた人物と言える。元は科学者と言う異例の経歴を持ち、スパロボで有名な光子力エネルギーを研究中、そのエネルギーの爆発に巻き込まれ、光子力エネルギーと体が同化した事で今の能力を手に入れた。

 

「藤虎」イッショウ

 盲目の剣士で、歩行時は鞘に収めた状態の刀を白杖代わりにして、障害物などの周囲の状況を把握する。なお、その両目は「見たくないもの」を散々見てきたことに絶望し、自ら潰したものであるという。 重力を操る能力で、隕石をも落下させられる。

 

 

中将

「大参謀」つる

 常に冷静沈着な頭脳派。

モモンガ

 縦縞スーツに口ひげと丁髷という非常にインパクトのある姿をしている。典型的な将官という感じで、実直に職務をこなす。

 

ヤマカジ

 立派な顎髭を生やしている、ニコニコ顔の中年男性。唇が厚い。覇気を体得し、日本刀を武器としており、中将として相応の実力を兼ね備えている。

 

ストロベリー

 頭が長いので丈の長い帽子を被ており、髭もそれと同じくらい長い。覇気を体得し、2本の洋刀を使い戦う。

 

ドーベルマン

 左目は視力を失った白目、更に顔中に傷があるという、歴戦を潜り抜けてきたことを思わせる非常にインパクトのある姿をしている。覇気を体得し、剣術を扱える。

 

オニグモ

 兜を被った長髪で、基本的に煙草を吹かしている。本部中将以上共通の特徴である覇気を体得している。背中まで大きく伸びた髪の毛の一部を6本の腕状に変化させ、戦闘時には最大で8刀流で戦う。戦闘時・非常時であれば、友軍のまきぞえを承知で敵に攻撃することも厭わない。これは「一瞬の気の迷いゆえに取り逃がした凶悪犯から、未来を護れるか」という思いから来ている様子。

 

ジョン・ジャイアント

 巨人族の男性で、大航海時代の海軍提督を彷彿とさせるような装飾が施された服装をしている。覇気を体得し、巨人族特有の巨体を生かして巨大な日本刀を振るい敵を薙ぎ払う。典型的な軍人という感じで、大声を張って檄(げき)を飛ばし、実直に職務をこなしている。

 

 

「拳骨」ガッツ

 フランス出身の軍人で、育ちはフランスマフィアという異例の経歴を持つ。中将というかなり高い地位に居ながら堅苦しさの無い明るい性格に惹かれる部下は多く、無茶苦茶な振舞いにツッコミを入れられたり一緒に雑務をこなしたりと非常に慕われている。そのため、他のクールな雰囲気を持った幹部とは一線を画す存在感を放っている。笑い方は「ぶわっはっはっは」。現在は現場を退いて、後進の指導にあたっている。

 

将校・大佐

「船斬り」Tボーン

 骨ばった痩躯と相まった異様な風貌から醸し出される陰鬱な雰囲気とは裏腹に、上下の別無く他者の幸福を第一に行動する『自己犠牲の正義』の実践者。虫に刺されてわずかの出血をした部下があると見ると、軍から支給された大切なマントであっても平気で引きちぎって止血の包帯代わりに用いるなど、一日百善を信念として掲げる度外視の善人。部下として付き従う一般兵は例に漏れずその外見に薄気味悪さを覚える一方、「力を持たない人々に安心の日々をもたらしたい」とする熱い胸の内を知るがために深い尊敬の念を寄せている。国連軍所属の高官としては無益な殺生を好まない穏健派に位置し、平時には部下に対しても敬語を使って優しく諭す紳士的な一面を覗かせるが、いざ事に当たれば武人としての矜持を貫いて敢然と悪に立ち向かう心の持ち主。また、生来の性格からかどうあっても曲がったことが我慢ならず、太刀筋はおろか自身の背丈近い愛用の両刃剣にすら色濃く反映されている。

 

国連軍元帥補佐官

ユーリ・ペトロフ/ルナティック

 独自の正義論を持ち、犯罪者たちに死をもって償わせる元シュテルンビルト司法局ヒーロー管理官兼、裁判官。体型のわかりにくいスーツ(おそらく自作)に身を包み、その顔にはグローブのようなデザインが施されている。 正体が国連軍によって明らかにされた直後、国連軍によって連行されるが元帥である赤犬とそれぞれの正義感が一致した事で徴兵制度にて元帥補佐官に抜擢される。現在はシュテルンビルトのヒーロー達とは正体が判明した事もあり、険悪になっている。

 

アンチ・ジャスティス

 元帥補佐官ユーリ・ペトロフを先導に結成されたアンチ・ヒーロー(犯罪者なら容赦なく殺める英雄)の集団。メンバーにはアメコミで有名なパニッシャー/デッドプール/レッドフードの三人が加盟させられている。

 

 

[リュウナ]

 

 セブンズ・ガードの一角を占める恐竜人ブロントザウルスの女性。先代のセブンズ・ガードである祖父リュウオウより後任を受け継いだ恐竜族のアマゾネスである。

 足元から首下までだけでも3m、首と頭の長さだけでも2mもある長身の女性で体付きもガッシりしている。何よりDカップもあるグラマラスな肉付きの全身。

 衣装は戦闘時に邪魔にならない程度に胸部と腰周りにしか付けておらず、あとはアマゾネス特有のアクセサリーや戦闘時に体に塗るボディペイントを施している。

 武器は様々な巨大鈍器で、豪快なパワーで武器を振り回したり殴り下ろしたりと豪傑な戦いを得意とする。

 

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