ポケモンZAにて久しぶりのアブソルの供給に狂っていました。オヤブン個体デッカくて可愛いね……。
マリンフォードはここ数年慌ただしかった。
聖地マリージョア? が襲撃されたり、護送中の船が海賊に襲われて悪魔の実が奪われたりしたらしい。あっちこっちてんやわんや。
それでも海賊はお構い無しに暴れ回るし、事件は起きる。
センゴクや三鳥トリオも頭や胃を痛めながら奔走していた。
俺にできるのは、せいぜい街の平和を守ることやモフられ屋になってアニマルセラピーをすることだ。死んだ目の海兵が100ベリーどころか5万ベリーくらい捩じ込んでくるのをなんとか止めながら食堂で待機していたりする。
亀裂に呼ばれていないのは、単純にそれら大事件が人と人の戦いだからだ。
いくら世間を揺るがす大事件でも、人同士の争いなら俺が干渉するわけにもいかない。人とポケモンは違う。この世界では特に。
だから、人の問題は人で解決してもらわねば。伝説ポケモンが関わってたら警告くらいはしてやったが、そんな気配もない。
この世界に伝説ポケモンがちらほらと来始めているのはカイオーガやソルガレオの件でわかっているが、では誰が来ているのかという情報は俺にもわからない。
長い生、災いを感知する力の都合上神話のポケモンとは顔見知りだが、わざわざ居場所を探しにいくほど懇意でもない。
しかしアイツらは何かと力が強く自由なので、この前のソルガレオの様に問題を起こされると困る。流石に伝説とサシでやり合って勝てるとは思えない。
ここ十数年でポケモン関連の事件がソルガレオ一件のみと考えると、まだ少ない方なのか? 感覚が麻痺している気がしてならない。
俺としては、大人しくしていてほしい。マジで。
俺は暇だが周りは忙しいという生活が暫く続き、俺の仕事も災いを知らせるものではなくセラピー要員になりつつあった時、久しぶりに亀裂が走った。
この亀裂を発生させている主も、何処にいるのやら。性質上、表の世界に居ないのだろうが、そろそろ挨拶に来ても良いんじゃないか?
引き篭もりはこれだから……と思いつつ、俺は亀裂を潜る。一面の青は、マリンフォードの近海より穏やかに見えた。
「……」
俺は上空にマジックコートを展開し、着地した。
地面は無い。海のど真ん中だ。
しかし、眼下には大きな船が二隻、横並びになっている。悲鳴や怒号から、平穏な状況とは言い難い。
どうやら海賊が客船を襲っているらしい。略奪の様子が繰り広げられるが、俺のツノはそれに反応しているわけじゃない。
その気配が近くなってきたので、俺は最大限手加減した《サイコカッター》を船近くの海に放った。水柱が上がる。
「っ!? なんだ! 攻撃か!?」
「能力者の仕業か!?」
「み……見て! 獣が空に立ってる……」
両者が混乱するが、すぐに乗員のひとりが俺に気付いた。
俺にしては、少し荒っぽかったが……あの暴力の中で俺の存在に気づかせるには、一声鳴くくらいじゃ足りなかっただろう。
突然現れた獣に困惑している人間たちに構わず、俺は船をここから離すように、ついて来いとジェスチャーする。
サイコパワーが強いエスパーポケモンなら、船くらい浮かせて移動できたんだろうが、あいにく俺はあくタイプなのだ。
しかし、流石にまだ状況を把握できてないのか、どちらの船の人間にも意図が伝わらない。このくらいは想定内だ。
「獣系の能力者か?」
「とっ捕まえるか、攻撃してきただろ」
「グランドラインでもあんな生き物見なかったぞ!」
海賊側が騒ぐので、一度船上に降り立ち、適当な宝物一つを咥えて空に戻った。これに反応して追ってきてくれれば良いんだが。
咥えた宝物は黄金の光を放っていて、明らかに高価なものとわかる。十中八九、盗品だろうが。
海賊たちは怒って銃を撃ってくるものの、なかなか船を出そうとはしない。ふむ。
ではアプローチを変えよう。
俺は宝物を適当に返し、客船の船長らしき男の帽子を取った。船長はびびっていたが、本人に傷はつけていない。
そして、もう一度空に上がり、こっちに来いとジェスチャー。
「おっ、お客様は中へ!」
「獣! なんのつもりだぁ!?」
船長は察してくれたのか、客たちを船内に誘導し、船を動かし始めた。海賊は逃げる客船に怒鳴っていたが、追っては来ないらしい。もう十分強奪したと判断したのか。
客船は1キロ程移動する。
ここまで来れば大丈夫だろうと言うところで、俺は止まった。
すると数秒後、海賊がいる船で悲鳴が上がる。突発的な渦潮が、海賊船を襲ったのだ。
客船では、あのまま移動しなかったらと考えた人間たちの生唾を飲む音が聞こえる。海賊船はあっという間に海の藻屑だ。
これで俺の任務は終了。船長に帽子を返す。
客船の人間は助けられたしいいか、と帰ろうとした時、甲板にコック帽の男が走ってきた。嫌な予感がする。
「船長ッ! チビを知りませんか!? 船に何処にもおらず、海賊の船にまだいるのかも──!!」
「……」
残業が確定した海兵の気分はこんなものなのだろうか。
なにやら客船のコック見習いの子どもが行方不明らしい。客船の中に隠れているわけじゃないなら、確実に海賊船にいてあの渦潮に巻き込まれたのだろう。
別に、不幸な事故と片付ければそれまでだが、子ども一人が……と考えると後味が悪い。
俺はその金髪の子どもを探すことにした。
船はもう木片を残すのみとなっている。生存を考えると絶望的だが、子どもの命は途絶えていない気がした。
災いを感知するツノは、命の気配にも敏感だ。そして長年アブソルをやっている勘が、見習いは死んでいないと予測している。こう言うものは割と当たるものだ。
希望がありそうなら、探すのも無駄ではない。遭難救助はあまり専門分野ではないが、このまま仕事として受けることにしよう。
レンジャーの仕事は、影から見ていた時もある。人もポケモンも助ける姿は、立派だと思うし。
あまり使いたくないが、《みらいよち》でざっくりとした居場所を探ることにした。
みらいよちは、攻撃に使う場合は別に良いが、こうして予知や未来視として使うのは好きではない。
俺は災いを感知する獣。見える未来は大抵が最悪な惨状か、自分が迫害される光景だ。
アブソル差別は近年は少なくなってきているとはいえ、まだ田舎の方や年寄りには偏見が根強く残る。
ツノを切り取られかけたことや、災いを知らせようとして石を投げられたことなど少なくない。縁起が悪いと、親しくしていた人間の葬式に入れさせてもらえない事もあった。
別にそんな人間たちを恨んでいるわけじゃない。相互理解は難しく、差別の心は自覚ある無しに誰でも持っている。
アブソルってのは不器用な性格のやつが多いから、そう言う態度が誤解の種になってしまう事も多かっただろう。
恨んではいないが、当時何も思わなかったかと言われるとそんなわけがない。
自分が助けられなかった未来も、自分が除け者にされる未来も、なるべく見たくないものだ。
だから、みらいよちを使うのはあまり好きではない。
キラリと眼を紫に光らせると、視えたのはげっそりと痩せた子どもが岩島に横たわっている光景だ。愉快なものではない。
しかし島に漂流することはわかった。あとは勘とツノの力で、気配を追っていけば良い。
青い海は、楽しそうなポケモンの姿はひとつもなく、少しだけ寂しかった。
*
何日か時間はかかったが、子どもを見つけた。
何もない岩島に、海賊の男と二人流れ着いたらしい。俺とは違い人間は数日何も食べないだけで死んでしまうから、生きていて良かった。
俺が現れても、もうリアクションする気力すら残っていないのか、ぐったりとしたままの子ども。
痛々しいそれに、取り敢えず海から魚を一匹獲ってきた。捌き方はわからないので、生のそれを子どもの目の前に置く。食べられると良いのだが。
海賊の男の方は、なんと自分の脚を食っていた。ヤドンやミガルーサの様に再生しないと言うのに。飢えとは恐ろしい。
俺は男の方にも魚を置き、二人を救助してくれそうな船を探すことにした。
男の首にあったタイを拝借し、人間の存在を仄めかせれば早くに察してくれるかもしれない。
そうして、また数日海をあちこち走り回り、ようやくあの岩島に船を来させることに成功した。
苦労するものだ。海軍はなんとなく、頼るのはやめておいた。あの男は海賊だし、俺がここに居るのは本来おかしいことだからだ。
俺は海賊や海軍構わず人間を災いから守るが、わざわざその二つを引き合わせようとも考えない。戦いの火種は避けるに限る。
遭難した二人は、あの魚を食べたようだった。骨が捨てられていたから。
なんとなくホッとしつつ、そういえば自分も腹が減っている。数日、まともに飯を食べていなかったのだ。魚は食べていたが、うーんポケモンにとってはちとヘルシー。栄養が足りない。
きのみなんかも、ポケモンの世界と比べると栄養価が低いので、きちんと調理されて栄養が考えられたものじゃないと痩せていってしまう。
人間ほど飢えに弱くはないが、また痩せたとセンゴクに心配されそうだ。
今度こそ仕事を終え、俺はマリンフォードに帰った。
食堂では、がっつり肉が食いたい。
◇アブソル
長く生きているのでアブソル迫害全盛期も体験している。滅茶苦茶命を狙われていた。
人間とは近すぎず遠すぎない関係を築いていきたい。
アブソルに対する偏見はあるが知識もあるポケモン世界と、アブソルに対する差別も知識も無いワンピ世界どっちがマシかはわからない。
◇遭難した二人
あの魚をくれた獣はなんだったのだろう?