Beyond Dust 復興文明、幻想異界との衝突――「世界」が異なれば、やり方の違いで過ちは繰り返す   作:えぴっくにごつ

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チャプター21:「進出」

 火蓋を切った、艦艇戦闘群各艦からの苛烈の最たる砲撃投射。

 それらは沿岸近海に逗留していた魔帝軍の艦隊を、一隻残らず破撃にて塵屑へと変え。海の藻屑と成れ果てさせて沈めた。

 

 さらにはその砲撃の雨あられは。魔帝軍のやはり駐留する、海岸陸地の広範囲にまんべんなく叩き込まれ。

 執拗なまでに。まるで全てを撫でて浚え、綺麗に掃除でもするかのような様相で。

 爆裂で魔帝軍のありとあらゆる消し飛ばし、沈黙させた。

 

 唯一、「この世界」へVAC AF 艦隊を導く指標となった、古代の遺跡だけは。

 先行潜入したコマンドーからの位置誘導によって、射撃目標から外され被害を逃れていた。

 

 その災厄の如きそれがようやく収まり、浜に一旦の静けさが戻った所へ。

 しかし霧に、波を掻き分け。発動の音を唸らせて現れたのが、小型の舟の群れ――舟艇部隊。

 

 それは、VAC AF 艦艇隊の内でも、沿岸近海の防衛任務を担当する「地域隊」。

 その内に編成される「舟艇戦闘隊」に所属する、戦闘警備艇や魚雷・誘導弾艇によって編成される隊形だ。

 

 海岸への接近行動の先鋒を務め。

 沿岸の偵察行動。艦艇戦闘群主力からの火力投射の効果確認。さらに簡易的であるが、敵の敷設火力を想定しての掃海行動まで。

 すなわち各種の露払いのために、先行して現れた舟艇戦闘隊の各艇は。

 数隻のグループごとに海岸のギリギリまで接近し、海面を撫でるように「露払い」のための行動を見せる。

 

 その動きは、これよりの「上陸作戦行動」のためのもの。

 

 今に行われた、周囲に散発的に確認される敵生存者に向けての避難勧告は。そのついでの物に過ぎない。

 

 そして間もなく、舟艇戦闘隊による沿岸の「無力安全化」がおおよそ完了されるに伴い。

 作戦行動は次のフェーズへ。大規模な上陸作戦行動へと移行、開始された。

 

 

 ――沿岸近海から、さらには浜の周辺一帯は間もなく。大挙して現れた無数の舟艇に、そして車輛群に覆われた。

 

 正面主力を務め砲撃投射を行った艦艇戦闘群の、その後方海域には。

 それを上回る規模、数の揚陸・輸送任務を担う大中の艦船からなる船団が多数待機している。

 

 ここで明かし、補足すれば。

 主力たる艦艇戦闘群から、多数の揚陸・輸送艦艇に支援船に至るまでの全ては。

 「向こう」の、VACの存在する元の世界のその海より。「インデュスティリア」が生み出し、それからの接収に至った転移技術によって。

 VACにおいては暫定的に、「ジャンプ行動」と呼ばれ始めているそれによって。

 世界の隔たりを越え、渡って来たものだ。

 

 その世界を渡り降り立った艦隊の、内の揚陸・輸送船団等の各艦船。「母船」であるそれらから発進した、無数の舟艇に「車輛」が。

 小型・中型揚陸艇から、水陸両用装甲車に水陸両用トラックなどが。海を割り進み、そして続々と浜に着岸。

 

 そしてそれ等に分乗していた、VAC AFの「上陸戦大隊」が。

 今回の上陸作戦任務の先鋒、第一陣を担う彼等が。ついに浜にその脚を着いた。

 

 これが、過去に「あちら」の世界であった大戦争の際に行われた、大規模上陸作戦のように。

 堅牢に構築された沿岸陣地を相手取るものであったのならば。戦闘は非常に苛烈なものとなり、VACも大きな出血を強いられたであろう。

 

 しかし前にも述べた通り。魔帝軍の主力前線はすでに別地方に移動し、この地はすでに後方となっていたため。

 

 此度の上陸戦において。海岸の周囲広域に置かれていたのは、いくらかの魔帝軍の簡易的な逗留陣地のみ。

 大規模な「敵性勢力」を警戒しての態勢、構築はほとんど無く。さらにわずかにあった警戒のための兵力に施設も、今しがたの砲撃投射でほとんど全滅の域で失われていた。

 

 状況はVAC側に利となり。

 浜に上陸を果たした上陸戦大隊は、数少ない散発的な戦闘の後。海岸の周辺広くを、おおよそ確保掌握するに至った。

 

 それよりさらに、周辺の海上を徹底して安全化すべく。機雷類の罠を全て無力化するため、待機していた専門の掃海処分隊も入ったが。

 そういった敷設火力類はまるで存在せず、これにあっては杞憂に終わり。

 

 揚陸・輸送船団の内より、より大規模な第二陣として待機していた戦車揚陸艦や支援艇からなるグループが順次ビーチングを開始。

 複数の主力大隊を始め。他に火力隊や支援隊等の多くの隊が上陸を果たし。

 

 海岸での拠点構築、及び進出地点の確保から。内陸への進出展開を開始した。

 

 

 

 此度の異世界への進出のために。VAC AF は方面隊に準ずる規模の遠征隊である「遠地展開隊」を組織。

 その元に、AF各隊より招集され組み込まれた各隊は。主として海岸よりの上陸を果たしたが。

 

 ――それと同時進行で、しかし少し先行する形で。「空」より内陸に降り立つ一個隊があった。

 

 それらは数十機にも及ぶ回転翼機、ヘリコプターによって構成されて隊形を成し。牧歌的な異世界の空を、しかし騒々しく荒らしながら飛行している。

 

「――間もなく予定地点」

 

 その編隊の内の一機。

 ずんぐりぼってりのシルエットが特徴の中型ヘリコプター、グレート・ホエール(GW)機の。詳細には指揮官登場機であるその機内、乗員・貨物室空間にて。

 

 その人、ジョンソンは。

 無線通信にて、自身が指揮を預かる「大隊戦闘群」の。その各隊各員に向けて端的に、しかし確かな声で指示を告げた。

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