Beyond Dust 復興文明、幻想異界との衝突――「世界」が異なれば、やり方の違いで過ちは繰り返す   作:えぴっくにごつ

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チャプター28:「檻籠」

 ――「塔城」。

 この大陸の内陸部に存在する、同盟の拠点である小さくも堅牢な古城城塞。

 魔帝軍に対する同盟の防御拠点の一つ。

 

 深く高い渓谷が広域に広がる地域の、その内の一点に。

 聳え立つ険しい崖の上に建てられた、小ぶりながらも荘厳さを感じさせる城。

 

 周囲の絶景の風景も合わさって、本来ならば見惚れてしまうような幻想的な光景。

 

 しかし……その美しき塔城は今には。絶望と暴虐、屈辱の最中に置かれていた。

 

 今に同盟に成り代わり、塔城を占拠するのは魔帝軍だ。

 塔城上空や、渓谷に挟まれる宙空には警戒監視の飛竜騎が飛び交い。塔城に忍び込むことも、または塔城から逃げ出すことも。その一切を許さぬまでの、厳しい監視の目を光らせている。

 そして塔城城内の各所には。制圧占拠を果たした魔帝軍部隊に兵が、我が物顔で跋扈している。

 

 塔城は、魔帝軍の大部隊の包囲に遭い。

 苛烈で徹底的な防御の戦いも虚しく、魔帝軍その強大さを前に陥落。その手に堕ちたのだ。

 そして……

 

 

「……っ」

「うぅ……」

 

 塔城の敷地内の、小さな庭空間の一角。

 そこに見えるは、一糸纏わぬ裸の体に剥かれ。そして首輪を嵌められ、鎖で繋がれて並び晒されている男女たち

 人間に限らず、エルフに獣人なども見えるが。その姿は一様のそんな恥辱と屈辱のそれとされている。

 

 男女たちは、魔帝国に逆らう国々より集った兵に、志願の冒険者などの、同盟の仲間たち。

 

 他に城内敷地の各所には。

 やはり裸に剥かれ、首輪に鎖で繋がれ連行されていく同盟の仲間たちに。大きな牢屋籠に閉じ込められ、拘束を兼ねてまた晒されている仲間たちも見える

 

 彼ら彼女らは、同盟の防御戦線が魔帝軍に押され後退する際。囮を引き受ける代わりに分断され。

 そして拠点の一つであるこの塔城に籠城し、時間を稼ぐために必死に魔帝軍に逆らい戦った。

 

 そしてしかし、最後まで必死に戦った彼ら彼女らであったが。魔帝軍の強力さに、やがて戦う力に術が底を尽き、塔城は陥落。

 

 生き残った者は捕虜として囚われ。

 そして、元より敵対し逆らった者に対しての扱いに容赦など無く。てこずらせて、出血を強いて来た同盟への腹いせもあってのものだろう。

 魔帝軍の兵たちは、同盟の仲間たちを今のような畜生の如き扱いへと陥れたのだ。

 

「まったく、てこずらせてくやがって……この連中はこれからどうなるんだ?」

「重労働奴隷か……いや女も男も揃って顔が良い。奉仕奴隷にされて慰みものになるのが、多いかもしれないな」

 

 そんな、繋がれ晒される同盟の男女たちを、監視する近くの魔帝兵たちが。

 同時に下卑た会話を交わし、何か嬲る様な視線を向けている。

 

 今の魔帝兵たちの言葉通り。

 捕らえられた男女たちは、女たちが可憐で見目麗しい者であるばかりでなく。男たちにも中性的で見た目がよく、言ってしまえば一種の欲情を誘う容姿の青少年が多い。

 

 魔帝兵たちの視線は。そんな男女たちを見ての、丸出しの下心を向けるそれだ。

 

「く……」

「……」

 

 そんな聞こえ浴びせられた言葉に視線に、ある美麗な青年は悔しそうに、せめて魔帝兵を睨み。

 またある美少女は、少なからず恐怖し。浴びせられる下卑た視線に、悲観に染めた顔を伏せる。

 

「へへ、たまらねえ連中だ。俺たちにも、お楽しみのおこぼれがあるといいんだがなっ?」

「今回の指揮官の大将軍様は、「良い趣味」をおもちだと噂だぜ?「お楽しみ」が期待できるかもなっ」

 

 しかし同盟の男女たちのそんな屈辱の姿に。魔帝兵たちまたは加虐的な愉しみに面白さを覚えているのだろう

 さらに、まるであえて聞かせて虐め脅かすように。そんな言葉を下卑た視線と合わせて浴びせる。

 

「くぅぅ……」

 

 この扱い、辱めに。悔しさと絶望をひしひしと感じさせられながら。

 今の美麗な青年もまた、悲観するしかない己が無力さに。言葉を漏らしながらまた顔を伏せてしまう。

 

 最早、同盟の仲間たちに希望は無く。待つのは奴隷に落ちる絶望しかない――かに思われた。

 

 ――ドグォッ。

 

 直後の瞬間。

 劈くまでの「爆音」が。

 塔城の内部敷地に外部から聞こえ届き。同時にまるで、塔城を土台である断崖を叩いたかと思うような、歪な振動が城内の全員に襲い伝わった。

 

「うわっ!?」

 

 魔帝兵の一人が、驚き声を漏らしたのも束の間。

 

 ボゥッ、と。

 

 直後に立て続けに聞こえたのは、真上からのまた歪だが強烈な、何かが「破裂」するような音声。

 

「な……!?」

「は……!?」

 

 そして真上を見上げた魔帝兵たちが、また驚愕の声を思わず漏らす。

 

 見れば、頭上上空にて。上空警戒のために飛び交っていた飛竜騎の内の一騎が。

 炎――爆炎に包まれ。今の「破裂音」をそうだと証明するように。内より爆ぜるよう、宙空で砕け散っていたのだ。

 

「!……」

「え……!?」

 

 驚愕に囚われたのは、城内でそれらを体感し目撃した魔帝兵たちはもちろん。

 囚われの同盟の仲間たちも同じ。

 

 ――そして、また直後の瞬間。

 

 そんなそれぞれの頭上、塔城の真上を掠めるように。劈くまでにけたたましい音を立てて。

 魔帝兵たちの同盟の皆にとっては、正体不明の。怪異の如き、何らかの飛行物体が勢いよく飛び抜ける。

 

 明かそう。その正体は――戦闘機。

 

 プロペラで推進を得る、ガルウィングの形状の主翼が特徴の。大型機体の単発プロペラ戦闘機。

 それが二機、三機と立て続けに真上を飛び抜け。塔城の向こう上空へと、旋回しながら一旦飛び去り上がっていく。

 

 その最後尾機の翼には。VACの所属機である事を示す、シンボルマークが堂々と見えた――

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