Beyond Dust 復興文明、幻想異界との衝突――「世界」が異なれば、やり方の違いで過ちは繰り返す   作:えぴっくにごつ

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チャプター34:「移行」

 ――フィアーブロウ。

 

 大元を辿れば、その彼等はカメレオンの一種を原型とする生物。

 

 それが今のその、恐るべきまでの姿に在り方となった所以は。

 大戦争により荒廃した後の世界にて、戦争前の国家政府の正統後継組織――を自称する過激派組織、通称「Party」と呼ばれるそれが。

 生物兵器を生み出すために行った実験からのもの。

 

 しかしその実験の最中での突然変異から、一部のフィアーブロウ個体が知能と理性を宿すに至り。

「彼等」は、その自称政府の過激派組織であるPartyの元より逃れ。逃れた果てにて小さなコミュニティを築き、そしてPartyに反旗を翻した。

 

 それと時を同じくしてPartyは、勢力拡大のために進出して来たVACと衝突。

 戦争の域となったその衝突の最中で。彼等、フィアーブロウのコミュニティはVACに加担。

 Partyの敗走から、VACが衝突に勝利した後に。

 フィアーブロウの彼等はその強靭な身体と、しかし反して併せ持つ知性を。貪欲なまでにあらゆる「力」に「術」を求めるVACに欲され。

 VACの民として迎え入れられた。

 

 

 ティヴィスにあっては、そんな歴史経緯の後に。新たにそして初めて産まれた、フィアーブロウのいわゆる「二世」だ。

 人や、ユーダイドやスーパーヒューマンに混じり。故郷で育ち学び、そしてVAC AFに入隊した経緯を持った。

 

「人々に、酷なことをするね」

 

 そのティヴィスは、独特の声色でそんな言葉を零す。

 それは、今には向こうで他隊員が確保保護に掛かっている、人質であった人々を見てのもの。

 魔帝軍やその傘下にある亜人たちの、捕らえた人々に対する非道な扱いに。ティヴィスはその顔にはあまり出さないが、少なからず憤慨の念を覚えていた。

 

 今に見せた、オーガへの過激なまでの「処分方」にあっても。少なからず、その念が行動に垣間見えてのものであった。

 

「相容れないだろうな。Partyと同じように」

 

 ティヴィスと同じく、確保保護の光景を見守りながらも。サミュエルは自称政府後継の過激派組織、Partyの名称を口に出してそんな事を紡ぐ。

 

 サミュエルとティヴィスは。勢力は減退したが、未だに向こうの世界の各地に残党として潜むPartyと戦って来た身であり。

 過激派組織で選民思想を強烈に有するPartyの残酷非道な面を、その最中で多数目にしてきており。

 今の言葉は。これまでに見て来たPartyのそれと、魔帝国の残忍さに類似性を垣間見て発されたものであった。

 

 それぞれを見て、または思い返して、サミュエルは愉快ではない感覚を覚え。

 次にはそれを振り払うように、軽く上空を見上げ。

 

 丁度そのタイミングを狙ったかのように。

 向こうの上空近くに、機関砲弾を叩き込まれて墜落していく残敵である飛竜騎に。そしてそれを煽るように掠め、飛び上がっていくV-4L戦闘機が視界に映った。

 

 視線を回し見れば、「塔城」の上空広くはすでに。そのほとんどがVAC AFの航空優勢掌握の下となっていた。

 

《――コントロールより、ホヴ2-1》

 

 そこへ立て続けに、今度は通信にて。サミュエル及び彼の指揮下のユニットの呼ぶ、コントロールからの音声が届く。

 

「2-1は降着から、降下個所周辺を確保。継続に支障無し、これより内部に入り降りる」

 

 サミュエルはそれに間髪入れずに返答。

 自分等のユニットによって「塔城」の内側敷地空間は確保完了。これより「塔城」の施設内部へさらに進入する旨を、端的に並べ伝える。

 

「確保の件、了解。だが内部への進入は停止し待機せよ」

 

 それにしかし、周辺確保完了の件には了解を返しつつも。しかし続く内部への進入は止める指示が、コントロールより寄越された。

 

《観測機のFLIR(赤外線装置)が、施設の下層内部に膨大な熱量と、大きな流動的な動きを探知した――巨大な生命体の反応と思われる》

《聞いていた、この魔法世界の軟体生物の可能性が高いな》

 

 コントロールから続け寄越されたのは、そんな説明兼警告の言葉。

 同時にその伝える通信音声の背後に、別のオペレーターが上げた推察の声が混じり聞こえる。

 

 この異世界には、軟体型の群体生物が存在し。それが魔帝軍にて生物兵器のように利用されているという情報が。

 最初に逃れて来た情報協力者(すなわちリーシェのこと)に、初期段階でのわずかな捕虜。そしてこの異世界に来てからの調査で分かっており。

 VAC AFもそれの遭遇を警戒していた。

 

「存在の可能性は聞いていたが、ここに来て遭遇か――待機了解」

 

 その歓迎し難い存在が今の「塔城」の下層、自分等の足元に居ることに心地悪いものを感じつつも。

 サミュエルは、停止待機の指示を了解。

 

《〝ジャッカー〟の投下準備にこれよりかかる、後続進入のために各隊は待機を――》

《――アンカー6-6より各隊各所》

 

 その歓迎し難い生物への対策は、想定から用意されており。その準備行動の開始を促す通信が、コントロールより各所へ伝えられようとしたが。

 しかし次に、それに割り込んで通信に別の音声が上がった。

 名乗られた無線識別は、上空で待機している輸送機からのもの。

 

《所定と異なる事態発生。〝ジャッカー〟がたった今降下、一人降下した》

 

 その輸送機からの割り込み伝える音声は。少し急き、しかし同時に何か呆れの色が含まれる言葉での、そんな内容を伝えるもの。

 

《アンカー6-6、指示はしていないぞ。先にサンプルを投下し、効果を見る所定だったはずだ》

 

 それにコントロールからは、あからさまな苦言と詰問の色での言葉が返る。

 

《止めるための、努力はしました――ですが、「博士」が独断で勝手に、一人降下しました》

 

 しかしそれに、輸送機側からは悪びれない。ふんだんな悪態交じりの声での回答がまた返される。

 

《ッー》

 

 それを聞かされ、コントロール側が通信に上げたのは。同じくの悪態を混ぜた、苦く口を鳴らす音。

 

「あの変人は聞くまい」

 

 通信上に上がり聞こえたその応酬を聞きながら。その起こっている事態のおおよそを把握し、何よりその「当事者」を知るサミュエルは。

 端的に、しかし皮肉の一声を零した。

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