Beyond Dust 復興文明、幻想異界との衝突――「世界」が異なれば、やり方の違いで過ちは繰り返す   作:えぴっくにごつ

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チャプター4:「掌握」

 20mm機関報の唸りが収まり、向こうには動く敵の隊伍は跡形も無くなり。血肉が変わりに散らばり広がるのみとなった。

 

「……ぇ……ぁ……なぁっ!?」

 

 その中で、悲鳴に近い狼狽の声を上げたのは。その隊伍をけしかけた、今となっては周り近くで一人残された竜騎兵。

 配下や仲間たちが、残さず血肉と欠片と変えられ地面に散らばった光景を見せつけられ。その顔は除けば真っ青にまっている。

 そしてそんな竜騎兵は気づけば、敵中――AFの抑えた場で、孤立していた。

 

「っぁ……ぐっ……かくなる上はぁっ!」

 

 しかし次には腹を括ったか、あるいは自棄か。騎手は陸竜の手綱を引き、陸竜を奮い立たせる動きを見せた。

 その陸竜は馬よりも大きな胴体を、鳴き声と共に持ち上げて、顎を掻っ開いて牙をむき出しにする。

 騎手はせめて現れた配下を屠ったSHを隊員を。陸竜に襲わせ、その顎で噛み砕かせて一矢報いる腹積もりであった。

 

「――びぇり゛ゃっ!?」

 

 しかし、それは成されることは無かった。

 その騎手は次には妙な悲鳴上げて。そして側頭部から脳症を噴き散らしながら、真横へ吹っ飛び。

 そのまま落竜し、ぐしゃりと地面に潰れるように崩れて落ちたのだ。

 

「――」

 

 その騎手が吹っ飛んだ反対方向、延長線上を辿り見れば。

 そこに居たのは、他ならぬジョンソンであった。

 

 悠々としたまでの姿で、大口径リボルバーを片手で構え向けている。

 騎手を屠った者がジョンソンである事は、その姿から明らかであった。

 

「グゥ!グゥガァァっ!」

 

 そんな主を屠ったジョンソンを、最優先の敵と認識したのか。もしくは操り主を無くし、半分暴走した状態とも見えるが。

 陸竜は掻っ開いた顎をジョンソンへと向けて、鳴き上げながら牙を剥いた。その獰猛の手本とするような様子姿は、今まさにジョンソンに飛び掛からんとする勢いだ。

 

「――」

 

 しかし、ジョンソンはまるで怯まず臆さず。立ち構え、尖る眼で陸竜を淡々と見つめ返す。

 それは淡々としながらも、有無を言わさぬまでのそれだ。

 

「グゥ……くるるるる……」

 

 それに、なんと次には陸竜は顎を閉じて牙を収め。降参の証か、その大きな体をしかし小さく縮めて、一転した弱々しい鳴き声を上げた。

 

「――いい子だ」

 

 それを見止め確認すると、ジョンソンは大口径リボルバーを降ろし。端的に、しかし微かな皮肉を含めてのそんな一言を零した。

 

「ッ?」

 

 そんな相対に勝利したジョンソンは、しかし続けて周りに気配の増加を感じ。合わせてそれが敵意害意の無いものである事を感じ取る。

 

 その気配の正体は、味方――VAC AFの隊員の面々のもの。

 増援の到着。その彼等が、駆け踏み込んで来る光景が周りにあった。

 別方に着陸した、別のヘリコプター各機からの班が。合流して小隊を成して到着したのだ。

 

 駆け抜け展開していく隊員各位は、人やユーダイドから。内には数名、今程の隊員と同系のSH隊員の巨体もポツポツと見える。

 

 その増援である彼等各員の展開から、衝突点はまた押し上げられ。わずかに点在して残っていた敵が、排除から無力化されて行く。

 さらに直後。上空真上には一機のGW機が上空支援に飛来到着し。ホバリングでの滞空から、向こうの地上を逃げる僅かな残敵に、ドアガンの機関銃を撃ち注ぎ始めた。

 

「ハ――」

 

 各増援の到着から、場が収拾し始めている事を確認すると。ジョンソンは一声を零しつつ、後の行動を彼等に任せ。

 

「コース二等士、見事だ」

 

 そして今の肉薄戦から、さらに機関砲掃射による敵の無力化を成したSH隊員に歩み寄り。彼の名と階級を呼びながら、評する言葉を向けた。

 

「そいつぁどーもッ」

 

 そんなジョンソンのまずの言葉に、一方のSH隊員――改めコース二等士が返したのは。

 SHのその重鈍で朴訥そうな外観に反した、何か皮肉を利かせた投げやりな台詞であった。

 

「エドアンズ、無事か?よくやってくれたが、あまり無茶をするな」

「ッ、すみません」

 

 そんな返事を返したコースを横目に見つつ。ジョンソンは続けて、危機から脱したエドアンズに近づき。

 その安否を尋ね、しかし半分無事を確信しながら。評する言葉と合わせて忠告の言葉を向ける。

 

「チト無謀だったんじゃござぁせんかねェ、伍長ドノぉッ?」

 

 それに続けるように、コースが向けたのはまた皮肉気な言葉。

 言葉だけでなく、そのSH特有の恐ろしい造形の顔にも。しかし皮肉気な色がまた隠さず作られていたる。

 早くも垣間見れるだろうが、コースは上長上官にも皮肉な態度を崩さない。皮肉屋で少し問題児的な側面のある隊員であった。

 

「ゴメン、咄嗟だったから。助かった」

 

 それに、しかしあまり真面目に相手はしていないように。エドアンズは、また端的に返す。

 そして身を払い起きつつ、一度背後の建物を見れば。今先に避難させた、女の子を抱いた若い母親が恐る恐る顔を出し。

 しかしひとまずと言うように、ペコとお礼のお辞儀を返す仕草を見せた。

 

 それに小さく手を振って返すエドアンズを一度見て、それからまた周囲に視線を向けるジョンソン。

 

 その間にも。通りの周辺一帯は抑えられ、AF側の掌握化となり始め。

 街路の向こう奥を見れば。残敵の黒衣の兵たちやオークが戦意喪失からか、SH隊員等の巨体に腕っぷしに、確保拘束される姿までもが見えた。

 

 そして程なく。この場はあっけなく、ジョンソン率いるVAC AFの掌握下となった。

 

 

 

「――助かりました、少佐」

「いや、到着が遅れて申し訳ない」

 

 AFによって街路の周り一帯が確保し、警戒隊形が一度張られ。確保保護した住民の避難移動が開始される一方で。

 それを背後に見つつ。ジョンソンと保安官隊の一隊を率いていた保安官巡査長が、調整のために話している。

 

 巡査長に聞くところによると、ナイスシーズの街の生存者は役所庁舎に避難し、また生き残りが集まった保安官本隊が守っているらしい。

 巡査長の一隊は、そこから遊撃してさらなる生存者を捜索。一部を発見から避難誘導中に、襲撃にあったそうだ。

 

 そしてしかし、避難できた彼等も街の生存者一部に過ぎないとの事であり。被害の全容は未だ不明瞭であった。

 

 ジョンソンは通信員に指示し、その内容情報を通信にて、街の各所に降下したAF各隊に共有。

 合わせて可能な限り急いでの、街の掌握と住民の確保保護を改めて指示した。

 

「未だ、正体は掴めんな――」

 

 各調整を進めながらも。未だに漠然とし、「未知」「不可解」としか言えない敵の正体に、少し険しい顔で零すジョンソン。

 

「少佐!」

 

 しかしそこへ。近くで警戒していたエドアンズから、何かを知らせる声が届いたのはその時。

 一度エドアンズを見て、指示された向こうを見上げれば。「それ」が何を示すかはすぐに判明した。

 

「ッ」

 

 伸びる街路の向こう、数区画先の建物の影より。飛び出し現れていたのは一つの「飛行物体」だ。

 

 遠目にパッと見えた全形は、まず小さな飛行船のそれであったが。

 縦長の風船状の胴の下に下げるは、木製のまた古風な船のようなゴンドラ。

 そしてそのゴンドラの両端からは、まるで羽飾りのような帆らしきものが。オールのように複数突き出ている。

 一瞬だがいくらか見えた詳細なその全形は、ジョンソン等にまるで馴染みのないもの。

 表現すれば近代的な飛行船というよりも、お伽話に出てくる『空飛ぶ船』。そんな印象を抱いた。

 

「あんだありゃッ」

 

 それを見たジョンソンの内心を代弁するように、近くに居て同じものを見たコースが声を上げる。

 

「ッ――襲撃されているッ」

 

 そして最初、その『空飛ぶ船』がまた敵性勢力の新手かと思ったジョンソンだが。

 続いて見えた光景に、その認識を変える事となる。

 

 直後にはその『空飛ぶ船』を追いかける形で、複数体の『ドラゴン』が。街への進入時にも交戦した『飛竜』たちが建物の影から出現。

 次にはそれらが顎から放った火の弾が、『空飛ぶ船』を襲い傷つけたのだ。

 

 明らかに、追う者と追われる者の姿。

 ジョンソンがその形を言葉にした直後、『空飛ぶ船』は飛竜達に追われながら向こうのビル建造物の死角に消え。

 そして間もなく、微かな振動衝撃音がこの場まで届いた。

 

「ッ、向こうに落ちたな」

 

 伝わり来たのは、考えるよりも明らかな『空飛ぶ船』の「墜落」のそれ。それを確信して言葉を零すジョンソン。

 

「どーすんですゥ?」

 

 そして続けるように、コースがジョンソンに寄越したのは、なにか気だるげで皮肉気な色での指示を要求する言葉。

 それは、すでに回答は知っているが一応聞くかというそれだ。

 

「調べた方がよさそうだ」

 

 それにジョンソンが返したのは。その皮肉気なコースの視線に色をまるで気にしない、遠慮の無い方針決定の言葉。

 

「だろうよ」

 

 それにまた、コースは「やぁれやれ」とでも言うように。上官に向けるものだと言うのに皮肉気全開な声で返し。

 しかしそれはそれとして、これよりの行動、さらなる戦闘の可能性に備えて。装備する20mm機関砲の巨大なマガジンを取り換える。

 

「1班と4班、自分と来てくれ。他は保安官隊と一緒に、住民を役所まで援護移送しろ」

 

 コースのその様子を見つつ、しかし皮肉には取り合わず。

 ジョンソンは指揮下の各員に指示。

 

 ジョンソン自身は2個班を率い。今に見えた『空飛ぶ船』の墜落した向こうへ、調査へ向かうために行動を再開した。

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