Beyond Dust 復興文明、幻想異界との衝突――「世界」が異なれば、やり方の違いで過ちは繰り返す   作:えぴっくにごつ

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衝突編:「時空を越えた因縁」
チャプター41:「因縁」


 ――幻想的なこの異世界の地へ降り立ち、活動を開始してから数週間が経過しようとしていたその最中。

 VACはここに来て、歓迎し難く、そして深刻ないくつかの事態に遭遇していた。

 

 一つは先日の、元世界にて政府後継を自称する過激派組織――Partyのそれと思しき飛行隊との接触。

 

 それには各調査、対応策が練られはじめているが。

 そしてしかし、もう一つ。

 

 この異世界の大陸にて、初動たる上陸降下作戦から、展開、戦線の構築を成功させ。

 そこから引き続き、未だ「脅威」となりうる魔帝軍への対応を図るため。AFはその一環として、この大陸の各地各方に偵察隊を放ったのだが。

 その内のいくつかが、その行動の最中に音信を絶つ事態が起こっていた。

 

 その発生個所はいずれも近く、隣接しており。同時多発的で類似性が見られた。

 そして同時進行でVACは、「ある施設」を探しており。その施設の推定存在個所が、各偵察隊が消息を絶った個所とまた近かったことから。

 

 VACは元より浮かべていた、一連の事態を関連付けるある「心当たり」を、「確信」へと変えた。

 

 その上で。AFはその歓迎し難い事態を想定しての、より念入りに装備した威力斥候行動のための小隊を発出。

 

 そして間もなく威力斥候小隊は、その「想定」の的中を目撃することとなった――

 

 

 場所は、現在のこの大陸の中央部分に差し掛かろうと言う一地域。

 緑豊かな環境は終わり、乾いた荒れ地が広がるその環境地域の内の一点。

 

 周囲を薄い砂嵐が舞う、小高い丘の上にて。

 差し向けられた件の威力斥候小隊の、その隊員等が。何か大分慎重を期す様子で、その向こうを観測観察する姿様子があった。

 

「――ッ、マジだ……ToBだッ」

 

 その観測行動に着く内の、観測手兼狙撃手を兼ねる隊員が。

 苦い顔に苦い声色で、そんな言葉に呼称を零す。

 

 その隊員が狙撃銃のスコープ越しに見るは、向こう遠くに存在する大きな建造物。

 やはり薄い砂煙のベールを纏うそれは、物々しく何か異様で。しかし何より、半島にてVACが確保した「古代の遺跡」とその造形に類似性が見えた。

 

 その通り、その建造物はまた別の「古代の遺跡」。

 それもその規模に様相から、半島で確保されたものより大掛かりなものであろうことが、容易に推察できた。

 

 VACの探していた「ある施設」とはこれ。

 半島で確保した「古代の遺跡」の研究調査から。類似の、しかもより大規模な転移を可能とし、さらには他機能をも有する別の遺跡の存在が判明しており。

 自前の技術でも転移は可能であるVACであるが。しかしより利便性の向上が望ましく、なにより魔帝軍などにそれを利用される事を防ぐためにも。

 その他に存在する遺跡の確保掌握は、優先度の高い事項としていた。

 

 そしてしかし、現在その新たな「古代の遺跡」は。大変に望ましくない状況下にあった。

 

 その「古代の遺跡」の周囲や上階層には、複数のある存在たちが居る――正確には、警戒監視に着いている様子光景があった。

 それらは多数の近代、いや未来的な火器に装備で身を固めた軽歩兵から。ハイテクの象徴たるPA兵までもがいくつも見える。

 そしていずれもが、その身の各所に共通の紋章を宿し。

 その紋章には、また同一の名称が刻まれていた。

 

 ――ToB。

 

 それこそが彼らを、その組織を。

 そして、VACにとっての「敵」を呼び示す名称であった――

 

 

 

 The armor knights of blood alliance――血盟の装甲騎士団。

 その略称を取って、巷ではToBと呼ばれる彼ら。

 

 歴史を紐解けば、大戦争を生き残った戦前の軍隊の一部隊をその原型とし。

 「力」を蓄え備え、それをもって理不尽や暴力がまかり通る荒廃した世界を、「救済」することを目的と掲げて始まった組織。

 

 しかし救う「力」を重視し求めるがあまり、時に強行な手段をも辞さない面を有し。それは時に人々の反感を招き。

 だがToBが増大するにおいて、一部派閥は一層過激で強硬な拡大政策を唱え始めた。

 

 同時に、大戦争後の荒廃した世を憂い憎み、それに関わる事象の徹底的な廃絶を目指すあまり。

 その対象はユーダイドやスーパーヒューマンの内の、咎無き人々にまでも向けられた。

 

 悪い事に、VACが主として拡大を続ける地方地域において。

 その地のToB派閥は過激派のきらいがあり、半ば拡大政策と選民思想のそれすら見える方針であった。

 

 そのToB派閥と。一方でまた領土的野心を抱くが、反してあらゆる人材存在を受け入れる方針のVACは、ほぼ必然的に衝突。

 遠方の穏健派ToB派閥を介しての和解も図られたが、甲斐なく頓挫に終わり。

 幾度かの行き違いや、幾多の小競り合いが重なった果てに――両者は互いを排除対象とみなし、そして全面的な衝突となった。

 

 

 

 ――その起こりが、現在から数年前。

 結果として衝突はVACが勝利を収め、その過激派ToB派閥から支配地や技術などの多くを接収。

 ToBは遠くの地まで逃げ去る様に後退して行ったのだが。

 

 その最中で、ToBのその過激な姿勢によるものから、友人知人、親族がその犠牲となった者はVACに数多く。

 ToBを憎み忌み嫌う者は少なくなかった。

 

 

 威力斥候小隊が発見したのが。そんな経緯を持つToBが、その発見に至った古代の遺跡を占拠している光景であった。

 

「Md-91パワーアーマー装備、それにあの紋章……最悪だ。ブローク・ヒルズまで後退したはずの、主導師(マスター)エシステン派閥だッ」

 

 そして狙撃手は、そのToBのPA兵が纏うPAの機種から。跋扈するToBの「派閥」に推察を付けて悪態を吐く。

 また大変に悪い事に。

 その派閥こそ他らなぬ、VACとの衝突の果てに逃げ引いて行った過激派派閥であったのだ。

 

「〝道理で〟」

 

 しかしその狙撃手の隣で、同じく双眼鏡にて向こうを観察していた小隊長のAF少尉――アクイアという名の彼は。

 驚くでもなく、皮肉気に一声を零す。

 

「司令部に報告上げろ」

「了」

 

 そしてアクイアは次には振り向き、背後で待機していた通信員に指し示して指示。

 それからまた尖る眼で、向こうの「古代の遺跡」の様子を隅々まで観察する。

 

「攻撃を?」

「それはまだだ。鼻持ちならないが、装備の質では向こうが遥かに有利だ。主力の到着を待つ」

 

 隣の狙撃手からの尋ねる言葉に、アクイアはそう否定の言葉を返すが。

 しかし一番険しくもどかしそうな顔していたのは、当のアクイア。

 

 アクイアは、つい今程に。

 消息を絶った偵察隊を、そしてそれを率いていたユーダイド少尉を――友人たるその彼の、惨たらしく果てた姿を見つけたばかりであった。

 

 ユーダイドの少尉の彼は、その身姿を消し炭になるまで焼かれていた。

 周辺の他隊員の遺体の数と。僅かに残っていた遺留品から、ようやく少尉だと判別できた程であった。

 そこに、大戦争後の穢れや「異形」を徹底的に――病的で差別的なまでに取り除こうとする、ToB過激派の廃絶思想が垣間見えた。

 

「仇討ちは、必ず成し遂げる――」

 

 そのユーダイドの少尉を、友人の彼の姿を思い返し。

 アクイアは、確かな。そして怒気を込めた声色で、誓う言葉を紡いだ――

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