Beyond Dust 復興文明、幻想異界との衝突――「世界」が異なれば、やり方の違いで過ちは繰り返す   作:えぴっくにごつ

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チャプター45:「血盟」

 おおよそ同時刻。

 場所に視点は、「古代の遺跡」へ。

 

 古代の遺跡の内部。異質であり、しかしその構造造形にどこか「未来的」なものすら覚えてしまう施設内の一室。

 そこは現在、遺跡を占拠するToB部隊が指揮所として用いている。

 

「――……」

 

 その室内の中心奥に置かれた執務机代わりの長机に、そこについて座すPAを纏うToB兵の姿がある。

 今は頭部ヘルメットアーマーは脱いで露わにして見せる、微かな老練が見え始めながらも、未だ若い面影も残すその素顔に。

 その彼は、難しく険しい顔色を作っていた。

 

 名を、オルスレー。ToBにおいて「シニア・キャプテン」と呼ばれる上位階級を与えられるその人。

 そのオルスレーは、この異世界へと逃れた着いたToB派閥の「本隊」より。一部隊を任されてこの遺跡の確保及び調査のために赴き。

 そしていくらか前よりこの遺跡の占拠を果たし。その守備、及び遺跡施設の「調査解明」の任務に当たっていたのだが。

 

 その彼が今に難しい顔を作るのは、ここに来てのあるいくつかの問題からだ。

 

 それは、仇敵たるVACとの幾度か遭遇接敵が、無論一つの大きなものとしてあったが。それとは別に、オルスレーは「ある事」を問題視していた。

 

「っ」

 

 そのオルスレーが、今のこの一室の出入り口に気配を感じ取ったのは直後。

 視線を上げればそこに、二人分の人影が現れていた。

 

「――何用かで、お呼びでしょうか?シニア・キャプテン・オルスレー」

 

 内の一人は、またPAに身を包み。しかしやはり頭部ヘルメットは脱ぎ、そしてその可憐な素顔を見せる女兵。

 だがその女からは、次には何か隠しもしない不躾な色での、そんな言葉が寄越された。

 

 キャプテン・シャスエン。

 まだ美少女の面影がある、長めの美麗な白髪が映える美女。

 遺跡に派遣されたToB部隊(以降オルスレー隊)の主要幹部の一人だ。

 

 そして人影はそのシャスエンと、もう一人。

 そのシャスエンの後ろ隣りにあるのは、ToB兵たちとは様子をまるで違える。大きなトンガリ帽子を始めとした衣裳が目を引く、お手本のような「魔法使い」といった姿の金髪の美少女。

 明かせばそれは。数奇な流れからこの異世界の地に逃れ着いたToBと邂逅し、そして故合ってToBと協力関係となった『クリフィエン連盟』。

 その中でも大きな影響力を持つ『魔法学園』より同行を申し出て来た、魔法使いの少女だ。

 

 しかし呼んでいないその魔法使いの少女の同伴に、オルスレーは目に見えて歓迎しない色を作りながらも。

 それはひとまず口には出さず。出頭して来たシャスエンを見る、いや睨む。

 

「『お呼びですか』、ではない。心当たりはあるはずだろう」

 

 そして次にはオルスレーは、そう明らかな詰問の色で言葉を向けた。

 

「上がって来た各活動報告を見た。君の部隊はじめいくつかに、少し行き過ぎと思われるきらいが見える」

 

 さらに続け、そう告げるオルスレー。

 先日からオルスレーは、遺跡周辺の遊撃を兼ねた哨戒行動を指揮下の各部隊に指示しているのだが。

 その部隊の内のいくつかに、遭遇戦闘から排除した「敵」。すなわちVACの偵察隊に対する行き過ぎと見える残虐な行いが垣間見えたのだ。

 オルスレーは、普段の素行も相まってその筆頭格と見て疑いようの無いシャスエンを、詰問すべく呼び出したのだ。

 

 しかし呼び出され、今相対するそのシャスエンは。オルスレーのことを目に見えて軽んじる、冷たい嘲りの色すら見せて見返している。

 だがオルスレーもまた構わず、言葉を続ける。

 

「戦闘不可能と陥った者を甚振り、遺体を冒涜する行為まで――過激なやり方が過ぎる。異形の廃絶は確かに我らの使命……だが、残酷な行いを愉しみとする理由にはならないッ」

 

 そして報告から知った、いくつかの行いの例を挙げて紡いだ後。シャスエンに叩きつけるように言葉を言い切った。

 

 シニア・キャプテン・オルスレーは。その身の上を明かせば、複雑な経緯からToBの穏健派支部から今の派閥に移って来た身であった。

 

 これまでのToB兵としての活躍、戦果は華々しく。

 現在のこの派閥においても戦いを始めとする各活躍は目覚ましく、ToBの同胞たちからは一目置かれていたが。

 しかし同時に、元穏健派閥の所属であり、何より本人も乱暴や品の無い行いを良しとしないのその姿勢は。この派閥の一部兵からは「生温い」と軽んじられていた。

 シャスエンはその代表的な一人だ。

 

「お呼びかと思えば、そのような『つまらぬ』事ですか」

 

 そして、突き付けられたオルスレーからのその言葉に。

 しかしシャスエンもまた、彼女のその対立姿勢をまるで隠さぬように。軽蔑しているまでの呆れた色で、オルスレーにそんな言葉を放った。

 

「クススっ。お可愛い事をおっしゃいますわね、鋼の騎士長様」

 

 そしてだ。

 シャスエンのそれに同調する色で、続けて何か嘲る声を向けて来たのは、背後の魔法使いの少女。

 名をヴァネッサと言うらしい、何か美麗ながらも妖しい気配の見える少女。

 前述した『魔法学園』の生徒であり、そして優れた冒険者でもあるらしい事から。連盟より『計らい』の建前で派遣され、同行している彼女。

 シャスエンとは価値観が合うのか、出会い此度の任務に同行するようになって以来、良くも悪くも親密にしている様子が見られた。

 

「!、キャプテン・シャスエン……!シニアに向けてそのようなことを……」

 

 それに次に、オルスレーの背後から異を唱える声が上がった。

 それはオルスレーの背後に控えていた若い、いやまだ少年とも言える兵からのもの。

 『従兵』、『サーヴァント』と呼ばれるToBにおける見習い的な立ち位置の兵であり。彼にあってはオルスレーの付き兵を務める兵だ。

 

「サーヴァント、誰に許可を得て口を訊いている?」

「……!」

 

 だが、その従兵の言葉を生意気と見たか。次にはシャスエンは冷たく脅かすような色で、そんな突き刺すまでの言葉を彼に向けた。

 冷たいその眼に射貫かれ、たじろぐ様子を見せる従兵の少年。

 

「君こそ慎めッ、キャプテン・シャスエンッ!」

 

 またしかし、それにすかさず荒げるまでの声で返したのはオルスレー。

 

「リケッツは私の専属サーヴァントだ、君が高慢を働いて良い訳ではない」

「……失礼を」

 

 オルスレーはシャスエンのその態度をまた傲慢と認め。何より自身の付き従兵であるリケッツという彼を庇うべく、怒りを滲ませて声を荒げたのだ。

 それにシャスエンはしかし食い下がる事でもないと言うように、謝罪をつまらなそうな色で紡ぐ。

 

「――しかし、シニア・オルスレー。それとして貴方のその姿勢は、同じくToBの兵として忠告を唱えさせていただく」

 

 だが続け、シャスエンが発し寄越したのはそんな言葉。

 

「あちらの世界、そしてこの幻想の世界にも蠢き、混乱に惨劇を招く異形ども――これに対する半端な容赦は隙を生み、寝首を掻かれる事態を招きましょうぞ?」

 

 そしてシャスエンはその可憐な顔に、何か妖しい笑みまで作って。まるで揶揄い脅すかのような忠告の言葉を向けて寄越した。

 

「屈辱にも向こうの世界から零れ、落ち延びる身の上となった我ら――しかしここに来て、我らには新たな『力』に巡り合えた」

 

 そして次にシャスエンが紡ぎ始めたのは、そんな言葉。

 

 同時にシャスエンは、そのアーマーに覆われる腕を翳し上げて見せる。

 直後――ボウ、と。

 その手の先にはなんと、揺らめく炎が生み出された。

 アーマーの機能――ではない。それは、『魔法』によるもの。

 

 シャスエン始め何名かのToB兵は。価値観を似通ったものとする『連盟』、『魔法学園』の生徒と距離を近づけ。

 そしてこの異世界の理、『魔法』を学び習得するに至っていた。

 

「これこそ、異形どもを業火をもって殲滅せよという、一種の『啓示』ではありませんかな?」

 

 そしてまた紡ぐシャスエン。彼女始め、魔法の習得に至ったToB兵には魔法を。

 元世界より逃れるに至った己たちに、しかし世界の『救済』を諦めぬことを啓示して授けられた、新たな『力』と考えるものまで現れ始めていた。

 

 彼らのそれは魔法をまるで、憎き異形を滅するために、己たちに授けられた『特別な力』と信じ。魅了されているかのようであった。

 

 そして明かせば、シャスエンが体得に至ったその『炎の魔法』こそ。

 先日に犠牲となったユーダイドの少尉の亡骸を、原形を残さぬまでに焼き尽くした正体であった。

 

「奢るなッ!君のような者の行いが、我々の「高度な無法者」などという蔑称の流布を許す原因だッ。我々は力に溺れる蛮族に成り下がった覚えはないッ」

 

 しかし、シャスエンたちに垣間見えるそれを、危険思想と見止め。

 オルスレーは忠告、叱咤して一蹴する言葉を張り上げて叩きつけた。

 

「……」

「ッ……」

 

 シャスエンはそんなオルスレーを氷の様に冷たい色で見返して挿し。ヴァネッサもそれに同調するように嘲笑を浮かべて寄越す。

 しかしオルスレーも負けず、むしろ押し返すまでの様相で。険しい剣幕形相を作ってシャスエンたちを睨み返す。

 

 一室の内に、一触即発の空気が蔓延する。

 

「――シニア!異常事態です!ウォーリア・ケルンの部隊が……ッ!」

 

 しかしそんな空気を割って壊すように、室内に伝令を担う兵が。焦り慌てる様子で飛び込んで来て声を張り上げたのは瞬間。

 

「何事だッ?」

 

 伝令兵は一瞬、室内の異様な空気を察してたじろいだが。次にはオルスレーが続く報告を要求する声を発し、慌て伝令兵は続ける。

 

「哨戒に出たウォーリア・ケルンの部隊が……全滅しているのが発見されました……!」

「!」

 

 そして続く報告に、オルスレーは目を剥いた。

 

「場所は遺跡を東に発して、施設群が終わる境目程の個所……見回りの兵が微かに銃声を聞き、調べを送ったところ発見されました……!」

 

 続く詳細を伝令兵は発する。

 

「来たか……VACッ」

 

 それ等を聞いたオルスレーは席から立ち上がり、そして一層の険しい剣幕を作り。

 その仕業の正体はその他に考えられぬ、仇敵の名を紡ぎ零した。

 

「全部隊に非常警戒を伝達ッ、戦闘に備えろッ!そう経たずにヤツ等は来るぞッ」

「は!」

 

 次には跳ね起こすまでの様相で、オルスレーは伝令の兵に張り上げ伝え。

 それを受けて伝令兵はまた飛び退く勢いで、指示を各部隊に伝達するべく部屋を駆け出て行く。

 

「シャスエン、貴様の部隊も配置に付け――しかし、くれぐれも慎むことだッ」

「……努力はしましょう」

 

 そしてオルスレーは、シャスエンに詰め寄り。彼女にも戦闘配置に指示と併せて、脅すまでの様相で忠告の言葉を突き付ける。

 しかしそれにシャスエンは、またつまらぬような色でそんな言葉を返すのみ。

 

 そんな彼女を最後に一睨みして、オルスレーはその横を抜け通って己の役割のために向かって行き。従兵のリケッツが慌ててそれを追いかける。

 それをシャスエンたちは、また嘲る色で見送ったのち。慌てもせず、まるで新たな『遊戯』を楽しみとするかの様相で、また己たちの動きに掛かって行った。

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