Beyond Dust 復興文明、幻想異界との衝突――「世界」が異なれば、やり方の違いで過ちは繰り返す   作:えぴっくにごつ

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チャプター46:「準備」

 ――明朝。

 まだ日が昇らぬ、薄暗い景色が広がる中。

 

 古代の遺跡施設をいくらか離れた向こうに見る地点にて。

 物々しく、しかし淡々とできる限りで静かな様相にて、多数の動きが見受けられた。

 

 それこそ、VAC AF の大隊。

 詳細には第29複合隊 第121大隊を中心として増強された、これより行われる遺跡攻撃のための隊。

 

 正面広くの範囲には、地形の傾斜や点在する遺跡付随施設を遮蔽と利用して。警戒監視を兼ねて、「突撃攻撃」の時を待つ各隊各員がすでに配置に付いている。

 

 そしてその背後地形のまた広くでは、さらに多くの各隊に各員が、またこれよりの戦いに備えた準備を入念に行っている。

 

「――少佐、各隊から順次準備完了報告が上がっています。現在で八割、全隊完了までさほど掛からないでしょう」

「あぁ、了解――だが各隊焦るな、念入りに準備しろ」

 

 その大隊を率いるは、ジョンソン。

 今には大隊本部要員の隊員から、各隊の準備状況の報告を聞き。

 それに了解するがしかし、続けて周りで準備行動に動く各隊各員に、そう促す言葉を張り上げて向ける。

 

 突撃攻撃の時を控え、周囲の空気は張り詰め、少し焦れている。

 それを気休めでも緩和させるための言葉だ。

 

「あァ、チト煩わしいッ。必要ないなら、それに越したこたァ無ぇんだけどよ」

 

 そこへ次には、近くから聞き慣れた悪態の声が聞こえる。

 スーパーヒューマン隊員のコースのもの。

 今に在ってはその巨体に、普段のカーキ色の作戦行動服の上から、さらに防弾用の物々しいアーマーを纏い。

 それを煩わしく思う悪態を吐きながら、その大きな頭に合わせた特注の大きさの「A1ヘルメット」を直している。

 

「しっかり着込んでおけ、それが命運を分けるぞ」

「へィへィ」

 

 そんなコースにジョンソンは忠告を飛ばし、コースからはいつもの遠慮せぬ色での返答が返る。

 

「各狙撃班の配置と、重迫撃砲中隊の準備も滞り無いか?」

「各狙撃班からもすでに配置完了の報が来ています。重迫中隊からも第一次の煙幕、及びそれ以降の砲撃支援にすでに備えていると」

「装甲車中隊の各車は?」

「各基準中隊に合わせて、準備位置に着いて居ます」

 

 それからジョンソンはまた本部要員に各事項を訪ね、隊員からは各要項順調な事を伝える旨が返る。

 

「ストロングコマンドーだけは、遅れているとの事だったな?」

「えぇ。前作戦終了から再編し、完了次第こちらに向かうとのこと」

「別作戦中に無理な応援要請を捻じ込んだからな、これ以上のワガママは言えまい」

 

 そしてまた端的に、質問と回答を交わすジョンソン等。

 今回の作戦にはまたストロングコマンドーにも応援要請を上げたが。承諾こそされたものの他作戦との都合から、到着にあっては遅れる連絡が来ていた。

 それを苦く思いつつも、自身を納得させるようにまた言葉を零すジョンソン。

 

「少佐ッ。第1中隊及び工作小隊は全て配置、準備ヨシッ」

 

 そこへ、向こうの低い丘に配置した各隊各員の内から。大隊の第1中隊の指揮を務める中隊長より、中隊および付随する工作小隊の準備完了している旨が張り上げ届けられる。

 

「大隊長、第2中隊伝令です。第2中隊も完了」

《10取れますか?31、第3中隊本部です。第3中隊は配置完了》

 

 さらに駆け込み到着した伝令や、身に着ける簡易無線からの呼びかけなどで。

 指揮下の各中隊から続々と準備が完了したことを伝える報が上がって来る。

 

「了解した――いよいよだな」

 

 それに声を向け、または無線を取り、同時に返答して了解し。

 そしてジョンソンは、「その時」がいよいよ近づくことを身に感じながら。

 身に着けるホルスターから、愛用の.44口径の大口径リボルバーを引き抜いた――

 

 

 

 その、ジョンソン率いるVAC AF 増強大隊が配置し、準備を整えた向こう反対側。

 そのVACの側を正面に見る形で、「古代の遺跡」の周囲にはまた物々しい光景が広がっていた。

 

 そこで急ぎ慌てるまでの様相で動いているのは、ToBの兵たち。

 周囲には、持ち込んだ防御構築資材による簡易銃座や簡易トーチカなどが組まれ。

 また、周辺に点在する遺跡の付随構築物なども遮蔽物、防御点として利用され。

 そこに通常銃火器から、レーザーやプラズマ等のエネルギー火器まで。様々な火器装備を持つToB兵たちが、急く様相で配置して行く。

 

 さらには背後に荘厳に建つ、古代の遺跡の本施設そのものにも。各所に銃火器類や監視を配置して、銃塔や高所監視ポイントとして利用されるに至っていた。

 

「シニア・キャプテン・オルスレー!キャプテン・パロンドの部隊は右方に配置完了!」

「ヴァイス(副)・キャプテン・シエトの部隊、左方に配置です!」

「各重機、及び各スナイパーバディ、配置完了しております」

 

 その最中の中心で陣頭指揮を執るオルスレーの元に、各部隊より報告が上がって来る。

 

「了解、備えろ」

 

 それにオルスレーは、険しい顔色ながらも落ち着いた色で返す。

 

「……ヴァネッサ嬢、忠告はしたはずだが?」

 

 それから、オルスレーは非常に歓迎しない色で。自身の背後に立つ複数名の人影に向けてそう発し向ける。

 そこに居たのは、周りの物々しい様相のToBとは異なる姿。ヴァネッサ始め、『連盟』の『魔法学園』の。

 魔法使い、魔術師、魔導士。呼び方は様々らしいが、それからなる生徒たちだ。

 

「痛み入ります、しかし無用ですわ。私たち、何も荒事を知らぬ籠の中の鳥ではありませんの」

 

 そのヴァネッサ始め、生徒の男女たちは。それぞれ何かまた準備の動きを見せながら。

 それを代表するヴァネッサは、また少し嘲るような色を混ぜてそんな言葉を寄越す。

 

 ヴァネッサたちは、どうにもこれからの戦闘に己たちも参加するつもりらしいのだ。

 

 オルスレーは、これは遊戯ではない、安全の保障はできないと警告したが。

 ヴァネッサたちは「何を当然のことを」というような様相で返して来た。

 

 今に見える準備の様子の念入りさに。

 何か緊張感無く、時折笑って会話を交わしながらも。その眼には決してふざけた色ではないそれを見せていることから、「籠の中の鳥では無い」というのは嘘ではないのだろう。

 

「泣き着くなよ」

 

 だとしたらそれはそれで。あの人を嘲る食ったような姿勢で、ここまで荒事を経験して抜けて来た、どちらにせよ感心はできない存在だと思い。

 オルスレーは、そう皮肉を混ぜた忠告の言葉を向ける。

 

「あら、騎士長様は冷たい殿方ですのね」

「乙女のナイトには向きませんな」

 

 それに、ヴァネッサが。さらに隣近くで、自身のミニガンの点検を終えて下げたシャスエンが。

 また揶揄うような、怪しい笑みを見せて。それぞれそんなふざけた嫌味の言葉を寄越す。

 

「間もなくだ、気を引き締めろッ!」

 

 しかしそれは無視して。オルスレーは周りのToB兵たちに、命じる声を張り上げた。

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