Beyond Dust 復興文明、幻想異界との衝突――「世界」が異なれば、やり方の違いで過ちは繰り返す 作:えぴっくにごつ
ジョンソンの元へ通信が届けられたのと同じタイミング。その場所は、前線より僅か後方の別箇所。
そこには立ち構える、ストロングコマンドーのサミュエルと。補助コマンドー要員である、フィアーブロウのティヴィスの姿がある。
「――ホヴ-アラより各ユニット、準備状態送れ」
サミュエルは装備に内蔵される通信機で、通信上にそう言葉を上げる。
《ホヴ-シリアル、スタンバイ》
《サラブル、完了》
《バーナー、ヨシ》
《プロン、位置に》
それに、呼びかけた各「ユニット」からは。その全てより、「準備」は完了している旨が返される。
「了解。ホヴ-アラは前線の大隊本部に合流する、各ユニットは各タイミングにて自由に始めろ」
それぞれからの完了を受け、サミュエルはさらにそう指示する言葉を通信にて向ける。
《了》
《個別で判断し、始める》
それにまた、各ユニットからは了解の返答が返る。
「サミュエル、来たよ」
その通信がちょうど区切れた所で、ティヴィスがサミュエルに促す声を掛ける。
それを受けてサミュエルが振り向けば、背後の向こうより「大きなシルエット」が、唸りながら近づいてくる姿が見えた。
「了――行くぞ」
そしてそれを見止め確認したサミュエルは、しかしその「シルエット」の到着を完全に待つことはなく。
ティヴィスに発して促し、そして二人は正面前線の方向へと踏み出し駆け始めた。
視点はまた、ToBの方へ。
各部隊ごとに強靭な隊形を組み、随伴するファイアサポートボットの強力な火力支援を受けながら。
また、勝手について来た連盟の魔法使いたちの魔法の恩恵を、図らずとも受けながら。
ToBは戦場を押し上げていた。
「右、排除」
「左、制圧中!」
PA兵を正面に立て、各部隊ごとの位置関係によって大きくは楔陣形を作り。各方へ強火力を撃ち向けながら、立ちはだかる敵VAC AFを撃ち退けて進み続けるToB各隊形。
「アがッ!?」
「チクショウ、野郎めッ!!」
それを相手取るは、前線前方に取り残されているAF小隊。
撃ち寄越され襲い掠める、無数の火力に釘付けにされながらも。
各AF隊員は負傷者を守り、後送を試みるべく行動を続け。数名にあっては前に出て、果敢に戦う姿を見せるが。
しかし現状の火力、戦力の剥離は大きく。前に出たAF隊員等は、儚くも掃き浚えるかのように撃ち退けられて行く。
「ーッ!」
その最中の、正面の一点。
負傷した味方の体を引き摺りながら、必死に後退を試みる一名の隊員の姿があった。
「ッ!」
しかしその隊員は、次に起こした視線の先に「それ」を見た。
すぐ目と鼻の先まで迫るToB隊形を。その正面を務める、こちらからすれば悪魔の体現の如きPA兵のその巨体を。
(ここまでかよ……ッ!)
味方負傷者の体を引き摺る事を決して止めずとも、隊員は内心でそんな事を思い浮かべる。
「――敵だ、排除する」
その隊員のすぐ前まで歩み接近したToB隊形、その内の一名のPA兵は。PAヘルメット越しの独特の声で、無慈悲なそんな言葉を届ける。
そしてその武骨な腕に構えるレーザー・アサルトを隊員に降ろして向け。
そのトリガーを、何の躊躇もなく引こうとした――
――ガァンッ!
強烈な。
金属を叩き、「打ち殴る」如きの音声が響いたのは直後。
「ッ!!」
レーザーとはまったく異なる音質のそれは、AF隊員が撃たれた音では無い事を明確に伝え。
そして隊員自身は、その事実を自身の眼ですぐそこに見る。
「――ァ゛゜……っ?」
今まさに、自身を撃ち屠ろうとしていたToBのPA兵が。
しかしその頭部、PAヘルメットに原型を留めぬまでの大穴を開けて。背後へ撃ち飛んで地面に叩かれるように沈んだのだ。
「――は……?」
それを目の当たりにして、思わずの呆けた声を上げたのは。そのPA兵と行動を共にしていたToB兵たちであった。
「――一体、ダウン」
場所は前線正面から後方に離れた、地形が小高い丘になっている一点。
そこに匍匐姿勢で配置するは、一名のストロングコマンドー。
そして同時にそこに堂々と据え置かれ、そのストロングコマンドー隊員が扱うのは、巨大な得物。
大口径の専用弾を用いる、大型の対物ライフル。
そしてコマンドーがその装着されるスコープ越しに向こうに見るのは、今まさに自身が撃ち貫いたToBのPA兵が、打たれ退いて沈んだ様子。
同時にその事実を、フルフェイスゴーグルマスクが影響する掠れた声で、通信に端的に上げるコマンドー。
「続ける――」
そしてコマンドーは合わせて通信にて戦闘継続を伝え。
再びトリガーを引き、対物ライフルから唸る如きの発砲音を響かせた。
「……は?」
「え、な……!?」
仲間が、それも無敵を誇るはずのPA兵が撃たれ沈んだ事実を、ToB兵たちはすぐには理解できず。
彼らは思わずの呆けた声を上げてしまい、そして動揺の様子を見せる。
しかしその暇すら認めぬように――直後には、それは立て続けに襲来した。
――ドグッ!ドゴッ!ガゥンッ!
立て続けに襲い、そして上がったのは。空気を切り裂くような音からの、鈍くも響く金属の衝突音の数々。
「ガァッ!」
「ゴゥッ!」
「ゴォッ!?」
そして同時に巻き起こったのは、各隊形のPA兵たちが次々に。まるで強烈な打撃を受けたかのように打ち退き吹っ飛び、地面に叩きつけられ沈む光景。
見れば、沈められた各PA兵のそのPA装甲は、いずれも各所に大穴を開けられ貫かれていた。
「は……う、うわぁぁっ!?」
「PAが!キャプテンにウォーリアたちがやられたっ!?」
そして、ほとんど一瞬で隊形の中核を成すPA兵が、一気に数名沈められた事実に。
ToB隊形は、ToB兵たちは一層の混乱狼狽に陥った。
「――え!?」
側方の小高い崖の上、AF狙撃班が配置する箇所。そこでエドアンズは驚く声を上げた。
それはスコープ越しに見守っていた状況の、唐突な変化。味方に迫っていたToB隊形のそのPA兵たちが、立て続けに撃たれ沈んだ光景を見た事に他ならない。
「!」
そしてそのPA兵たちを屠った射線の延長を辿り。同時にその近く側方に感じた気配に気づき、エドアンズはそちらに視線を向ける。
側方背後、エドアンズたちの位置よりもう一段ほど高い崖の上。
そこに配置して、巨大な得物を。航空機関砲改造の30mm狙撃砲を展開して扱う、ヒト系とスーパーヒューマンの二人からなる二人一組の、ストロングコマンドーのチームの姿が見えた。
《バーナー、PA一体排除》
そのチームからのものか、通信には敵の排除を伝える掠れた音声が上がり聞こえる。
「――」
「!」
そして続けての直後。
今の狙撃砲チームの内。ヒト系のコマンドーが視線をこちらに向け、エドアンズ等狙撃班に促す色を寄越す。
「撃ってッ!」
「援護だ、射撃再開ッ!」
エドアンズに、狙撃班の長はすぐにその意図を理解。
それぞれ端上げると同時に、それぞれの狙撃銃を一斉の様相で突き出し眼下の向こうに向け。
自分等も、援護支援のための狙撃行動を再開。
無数の銃声を響かせ始めた。