Beyond Dust 復興文明、幻想異界との衝突――「世界」が異なれば、やり方の違いで過ちは繰り返す   作:えぴっくにごつ

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チャプター55:「反抗」

 ジョンソンの元へ通信が届けられたのと同じタイミング。その場所は、前線より僅か後方の別箇所。

 そこには立ち構える、ストロングコマンドーのサミュエルと。補助コマンドー要員である、フィアーブロウのティヴィスの姿がある。

 

「――ホヴ-アラより各ユニット、準備状態送れ」

 

 サミュエルは装備に内蔵される通信機で、通信上にそう言葉を上げる。

 

《ホヴ-シリアル、スタンバイ》

《サラブル、完了》

《バーナー、ヨシ》

《プロン、位置に》

 

 それに、呼びかけた各「ユニット」からは。その全てより、「準備」は完了している旨が返される。

 

「了解。ホヴ-アラは前線の大隊本部に合流する、各ユニットは各タイミングにて自由に始めろ」

 

 それぞれからの完了を受け、サミュエルはさらにそう指示する言葉を通信にて向ける。

 

《了》

《個別で判断し、始める》

 

 それにまた、各ユニットからは了解の返答が返る。

 

「サミュエル、来たよ」

 

 その通信がちょうど区切れた所で、ティヴィスがサミュエルに促す声を掛ける。

 それを受けてサミュエルが振り向けば、背後の向こうより「大きなシルエット」が、唸りながら近づいてくる姿が見えた。

 

「了――行くぞ」

 

 そしてそれを見止め確認したサミュエルは、しかしその「シルエット」の到着を完全に待つことはなく。

 ティヴィスに発して促し、そして二人は正面前線の方向へと踏み出し駆け始めた。

 

 

 視点はまた、ToBの方へ。

 各部隊ごとに強靭な隊形を組み、随伴するファイアサポートボットの強力な火力支援を受けながら。

 また、勝手について来た連盟の魔法使いたちの魔法の恩恵を、図らずとも受けながら。

 ToBは戦場を押し上げていた。

 

「右、排除」

「左、制圧中!」

 

 PA兵を正面に立て、各部隊ごとの位置関係によって大きくは楔陣形を作り。各方へ強火力を撃ち向けながら、立ちはだかる敵VAC AFを撃ち退けて進み続けるToB各隊形。

 

「アがッ!?」

「チクショウ、野郎めッ!!」

 

 それを相手取るは、前線前方に取り残されているAF小隊。

 撃ち寄越され襲い掠める、無数の火力に釘付けにされながらも。

 各AF隊員は負傷者を守り、後送を試みるべく行動を続け。数名にあっては前に出て、果敢に戦う姿を見せるが。

 しかし現状の火力、戦力の剥離は大きく。前に出たAF隊員等は、儚くも掃き浚えるかのように撃ち退けられて行く。

 

「ーッ!」

 

 その最中の、正面の一点。

 負傷した味方の体を引き摺りながら、必死に後退を試みる一名の隊員の姿があった。

 

「ッ!」

 

 しかしその隊員は、次に起こした視線の先に「それ」を見た。

 すぐ目と鼻の先まで迫るToB隊形を。その正面を務める、こちらからすれば悪魔の体現の如きPA兵のその巨体を。

 

(ここまでかよ……ッ!)

 

 味方負傷者の体を引き摺る事を決して止めずとも、隊員は内心でそんな事を思い浮かべる。

 

「――敵だ、排除する」

 

 その隊員のすぐ前まで歩み接近したToB隊形、その内の一名のPA兵は。PAヘルメット越しの独特の声で、無慈悲なそんな言葉を届ける。

 そしてその武骨な腕に構えるレーザー・アサルトを隊員に降ろして向け。

 そのトリガーを、何の躊躇もなく引こうとした――

 

 ――ガァンッ!

 

 強烈な。

 金属を叩き、「打ち殴る」如きの音声が響いたのは直後。

 

「ッ!!」

 

 レーザーとはまったく異なる音質のそれは、AF隊員が撃たれた音では無い事を明確に伝え。

 そして隊員自身は、その事実を自身の眼ですぐそこに見る。

 

「――ァ゛゜……っ?」

 

 今まさに、自身を撃ち屠ろうとしていたToBのPA兵が。

 しかしその頭部、PAヘルメットに原型を留めぬまでの大穴を開けて。背後へ撃ち飛んで地面に叩かれるように沈んだのだ。

 

「――は……?」

 

 それを目の当たりにして、思わずの呆けた声を上げたのは。そのPA兵と行動を共にしていたToB兵たちであった。

 

 

「――一体、ダウン」

 

 場所は前線正面から後方に離れた、地形が小高い丘になっている一点。

 そこに匍匐姿勢で配置するは、一名のストロングコマンドー。

 

 そして同時にそこに堂々と据え置かれ、そのストロングコマンドー隊員が扱うのは、巨大な得物。

 大口径の専用弾を用いる、大型の対物ライフル。

 そしてコマンドーがその装着されるスコープ越しに向こうに見るのは、今まさに自身が撃ち貫いたToBのPA兵が、打たれ退いて沈んだ様子。

 

 同時にその事実を、フルフェイスゴーグルマスクが影響する掠れた声で、通信に端的に上げるコマンドー。

 

「続ける――」

 

 そしてコマンドーは合わせて通信にて戦闘継続を伝え。

 再びトリガーを引き、対物ライフルから唸る如きの発砲音を響かせた。

 

 

「……は?」

「え、な……!?」

 

 仲間が、それも無敵を誇るはずのPA兵が撃たれ沈んだ事実を、ToB兵たちはすぐには理解できず。

 彼らは思わずの呆けた声を上げてしまい、そして動揺の様子を見せる。

 

しかしその暇すら認めぬように――直後には、それは立て続けに襲来した。

 

  ――ドグッ!ドゴッ!ガゥンッ!

 

 立て続けに襲い、そして上がったのは。空気を切り裂くような音からの、鈍くも響く金属の衝突音の数々。

 

「ガァッ!」

「ゴゥッ!」

「ゴォッ!?」

 

 そして同時に巻き起こったのは、各隊形のPA兵たちが次々に。まるで強烈な打撃を受けたかのように打ち退き吹っ飛び、地面に叩きつけられ沈む光景。

 見れば、沈められた各PA兵のそのPA装甲は、いずれも各所に大穴を開けられ貫かれていた。

 

「は……う、うわぁぁっ!?」

「PAが!キャプテンにウォーリアたちがやられたっ!?」

 

 そして、ほとんど一瞬で隊形の中核を成すPA兵が、一気に数名沈められた事実に。

 ToB隊形は、ToB兵たちは一層の混乱狼狽に陥った。

 

 

「――え!?」

 

 側方の小高い崖の上、AF狙撃班が配置する箇所。そこでエドアンズは驚く声を上げた。

 

 それはスコープ越しに見守っていた状況の、唐突な変化。味方に迫っていたToB隊形のそのPA兵たちが、立て続けに撃たれ沈んだ光景を見た事に他ならない。

 

「!」

 

 そしてそのPA兵たちを屠った射線の延長を辿り。同時にその近く側方に感じた気配に気づき、エドアンズはそちらに視線を向ける。

 

 側方背後、エドアンズたちの位置よりもう一段ほど高い崖の上。

 そこに配置して、巨大な得物を。航空機関砲改造の30mm狙撃砲を展開して扱う、ヒト系とスーパーヒューマンの二人からなる二人一組の、ストロングコマンドーのチームの姿が見えた。

 

《バーナー、PA一体排除》

 

 そのチームからのものか、通信には敵の排除を伝える掠れた音声が上がり聞こえる。

 

「――」

「!」

 

 そして続けての直後。

 今の狙撃砲チームの内。ヒト系のコマンドーが視線をこちらに向け、エドアンズ等狙撃班に促す色を寄越す。

 

「撃ってッ!」

「援護だ、射撃再開ッ!」

 

 エドアンズに、狙撃班の長はすぐにその意図を理解。

 それぞれ端上げると同時に、それぞれの狙撃銃を一斉の様相で突き出し眼下の向こうに向け。

 自分等も、援護支援のための狙撃行動を再開。

 無数の銃声を響かせ始めた。

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