Beyond Dust 復興文明、幻想異界との衝突――「世界」が異なれば、やり方の違いで過ちは繰り返す   作:えぴっくにごつ

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チャプター58:「不砕」

 VAC AFは、戦場には要点に前哨監視を最小限だけ残し。主力大隊は態勢再構築のために一旦後退した。

 

 場所は、後方の仮設駐屯地へ。

 その態勢再構築のために今は駐屯地の内外の広くが、騒がしく慌ただしい動きと空気に包まれていた。

 日がほぼ落ちて周囲が薄暗くなり始めた現在も、その喧騒は止む気配は無く。今も駐屯地のそこかしこを、各員が忙しそうに動き駆けまわっている。

 

「――死傷者の数に状態は掌握完了。重傷者から優先し、順次後送予定です」

「了解」

 

 その最中を。指揮下の中隊長の一名から各報告を受けつつ、歩み進むジョンソンの姿があった。

 

「各中隊小隊は、無事な者を移動調整する形で再編中――支援隊各隊からも、主力への移動志願者が名乗りを上げていますが」

「ありがたくはあるが、それは必要最低限にとどめろ。それで後方に不足が生じれば本末転倒だ」

「了。では自分は戻ります」

「頼む」

 

 いくつかの言葉を交わした後に、現時点での報告調整は終わり。

 中隊長は身を翻して、今も残る各事項作業のために離れ去って行った。

 

 それを見送りつつもジョンソンは歩みを続け。

 間もなく、野戦指揮所のための仮設建物の前へと辿り着き、その出入り口を潜った。

 

 

「――ッ」

 

 野戦指揮所建物の出入口を潜って、中に踏み入った直後。

 ジョンソンは、その元よりの尖るやや険しい造りの顔を。

 だがそれ以上に目に見えて、隠さぬ様子で険しく刺すようなものへと変えた。

 

 その刺し貫くような顔、視線を向けた先は、指揮所内の作戦卓を挟んだ向こう。

 作戦卓の近くや周りにはラエ中佐に。先に戻り、状況を知りたいためい集っていた、リーシェやルーネたち異世界の面々の四人も姿もあったが。

 ジョンソンが視線を向けたのは、そんな彼等彼女等ではなく、そのど真ん中。

 そこには一人、今までは見なかった一人の女の立つ姿があった。

 

 その女が纏うのは他隊員と同じ、VAC AFの作戦行動服。

 しかし目を引くのは、その服装に似合わぬ。ロゼッタ色の美麗な長い髪と、それに飾られる鋭利で端麗な顔。

 そして服装越しにも垣間見える完璧なまでのプロポーション。

 そんな容姿でしかし、毅然とした色に気配を持つかなりの美女。

 

 ――メリスア准将。

 VAC AFの首都、エイジ ワン(Age One)を守備するエイジ ワン方面隊にて、方面隊長の元で参謀を務める女将軍。

 この異世界への遠征展開が始まってからは、その主力を務める「遠地展開隊」の参謀に着任。

 

 その齢は明かせば40代だが。しかしその見た目は二十代後半程の、熟れ始めかと思わせる程の容姿を維持している。

 

 しかしその美麗な容姿に反して。その精神に性格は時に冷酷な域で、いかなる事態にも揺るがぬ確固たるものを携える人物であり。

 鋼の如きと名高いまでのその人柄から、ついたあだ名が「鋼鉄の女」であった。

 

「――早々に、嫌な顔を見せるわね」

 

 その鋼鉄の女であるメリスアは。だがそんな彼女に向けて、顔を併せて早々に刺すまでの険しい顔を見せて向けたジョンソンに。

 冷たいまでの顔色に声色で。背筋が凍りそうなほどのそれを伴って、そんな言葉を返した。

 

「自分の心には、正直でいるようにしているからな」

 

 だがそんな彼女の冷酷なそれを前に、しかしジョンソンが発し――叩きつけ返したのはそんな言葉。

 またお返しの様に冷淡なそれは、上位階級者である将軍のメリスアに向けるものだというのに、傲岸とも取れるそれだ。

 

「ちょ、ジョンソンっ?」

「ジョンソン殿……?」

 

 相対して早々、交わされたそんな応酬を目の当たりにし。そして刺すまでの異様な空気に晒され。

 困惑を見せたのは、リーシェやルーネたち。

 

「ッー」

 

 その傍らで、事情を知る様子のラエ中佐は、渋い顔で小さく溜息を吐いている。

 

 ジョンソンとメリスアは、AFにおいて大変に不仲で有名であった。

 それは犬猿の仲という表現すら生温いもの。

 

 メリスアの性格人柄が「鋼鉄」と比喩されるならば。ジョンソンの揺るがぬ気質もまた、砕けぬ「鉱石結晶(ダイヤモンド)」の如き。

 

 理由経緯を明かせば、そんな両者が不仲となった原因は。

 過去の作戦でのその両者の考え、気質姿勢の相違からの衝突に始まる。

 

 そしてしかし何の因果か、ジョンソンとメリスアは依頼何度も顔を合わせる機会が巡り。

 その度にこの様相であり、周りからすれば頭痛の種であった。

 

「准将、ジョンソン」

 

 次にはラエは、微かに圧を込めた声で。忠告の意図を込めたそれで、そんな両者を呼ぶ。

 

 ラエから見て、ジョンソンより階級も歳も上なのはもちろん。メリスアにあっても階級は上であるが、歳はラエのほうが重ねている身。

 そんな関係から、年長者としての諫め忠告するべく発された言葉だ。

 

「いいわ。ジョンソン、別にあなたと諍いにここに来たわけじゃない」

 

 それを汲み取ったか、メリスアは次には尖る空気気配は変わらぬままも。

 そんな言葉を発して視線での対峙を解く。

 

「なぜ准将がいるんです」

「あぁ――」

 

 一方。ジョンソンはメリスア当人の前で、しかし傲岸無礼構わぬ色で、彼女の居る理由をラエに尋ねる。

 またラエが顔を渋くしつつも、説明してくれたところによると。

 

 此度の作戦において、元より念を重ねて増援増強部隊が手配されてはいたのだが。

 先の事態の急転から、ラエはそれを急ぎ繰り上げる様、該当各隊各所に要請。

 

 それに応じて先程に、その先発第一陣が到着したのだが。メリスアはそれに同行し、自らもここ現地に入ったとのことであった。

 

「被害程度は今に説明した通り――敵戦力の程度を見誤ったのは私の落ち度です」

「中佐、別にあなたの責を問うつもりはないわ。伏兵が想定を越えるものであったことは理解している」

 

 ジョンソンが来るまでも、各調整を行っていたのだろう。

 ラエはそんな説明の言葉を、合わせてそう謝罪の言葉を述べるが。対するメリスアは端的な声色でそう返す。

 

「Mb-3型の大型火力ボット、それが少なくとも4機――遺跡に籠るToB部隊は中隊に毛が生えた程度、それが持つには過剰で贅沢ね」

 

 次にはメリスアは、そんな分析の言葉を皮肉を混ぜつつ零しながら。

 作戦卓上の地図に視線を落とす。

 

「作戦は明日の明朝に再開予定、その動きの大筋は変わらないわね?」

「ええ。しかし各隊を増強し、細部を適当なものへと組み直します。まず第1中隊――」

 

 続けてのメリスアの尋ねる言葉に、ラエは地図上のコマをそのSH特有の太い指先で動かしながら説明。

 

「――いいわ。それで進めてちょうだい」

 

 おおよその説明を受け終え。少なくとも計画上では、目立った不足事項が無い事が確認されると。

 メリスアはラエにそう願い伝えた。

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