Beyond Dust 復興文明、幻想異界との衝突――「世界」が異なれば、やり方の違いで過ちは繰り返す 作:えぴっくにごつ
決着の大攻勢開始です。
――翌朝。
まだ太陽が昇り切る前の、薄暗い夜空に背景が地上の光景を覆う中。
大きな、巨大な動きが始まっていた。
広く乾いた地上に響き聞こえるは、数多多数の足音。
さらには鈍く唸るような数々の音に、鉄が擦れるようなまた数々の音。すなわち、エンジンやキャタピラの音。
それらは全て、VAC AFの大部隊のものだ。
微かに吹いて巻く砂煙中から続々と現れたのは。三個大隊に届く数の、大勢のVAC AFの隊員等。
それを成す詳細は、小火器手、支援火器員、重火器員、装甲工作員、ETS――。
さらにはコマンドーから、ストロングコマンドーまで様々。
人種はヒトからユーダイド、スーパーヒューマンまで。
「――今度こそ押し貫くぞッ」
「周りへの警戒を目を疎かにするなよ」
響き聞こえるはその彼ら脚音に、上げる声の数々。
さらに、いくつもの鈍く唸るような音が聞こえ始め。そして大勢の隊員等に混じり、あるいは続くように、いくつもの大きなシルエットが現れる。
それは隊員等を支援するための、いくつもの車輛、装甲車。そして戦車だ。
その数多が地上に広く大きく散会展開し。
これより始まる大規模攻勢突撃のため、その開始位置のラインへとへと順次着いて行き。その準備を整えていく姿を見せている。
「――指揮本部へ完了報告」
間もなくその全ての準備の動きは完了。
開始ラインに着いた各隊各員の内、そのおおよそ中心に立ち構えて居たジョンソンが。本部班付随の通信員に指示の声を向ける。
「了解です。指揮本部、全ての隊は配置に付いた」
それを受けた通信員が、後方指揮所へ向けた通信報告を上げ。準備完了の旨が後方指揮所へと上がる。
「――」
その正面ラインの少し後方、戦場広くを見渡せる崖上の各所には。ストロングコマンドーを筆頭とする狙撃班が配置し構え。
これより苛烈な戦場となる広域を、配置していく各隊を見下ろし見守っている。
そしてさらに後方、仮設駐屯地の野戦指揮所。
その内では、これよりの作戦の全体の指揮を担う、メリスア准将とラエ中佐が。
作戦卓を前にして、その卓上の地図を。そこに並べられた部隊配置を示す無数の駒を、尖るまでの眼で見下ろしていた。
「作戦はシンプルです、念入りな威力偵察で敵の防御の厚さ掴めた――それを無力化するに足るだけの戦力をぶつけ、突き崩します」
すでに決定から周知されている作戦概要を、しかし最終確認の意味でメリスアに伝えるラエ。
言われた通りシンプルな作戦だが。それは用意された多数の戦力があるからこそ成せるもの。
巨大国家、VAC AFの十八番にして専売特許に近い物であった。
「――各隊、開始地点に配置完了との知らせ」
そこへ、背後に無線通信卓に着く通信員が、前線主力各隊の配置が完了したことを知らせる通信を受け取り。
その旨をメリスアのラエに報告する。
「准将」
それを受けたラエは、次には最終確認のためのそれで、SH特有の低い一声でメリスアに伺う一声を向ける。
「終わりにしましょう――」
対するメリスアは、それに答える代わりに静かにそんな一言を零しながら。
その手先で、作戦卓上の最初の駒を進めた。
「――ふゥー」
ToBの側、古代の遺跡の一室。
夜明けが近づき、近づく戦いの時を前に。緊張で硬くなる体を感じ、それを少しでも緩和すべく息を吐き零すオルスレーの姿がある。
「……ッ!」
そんなオルスレーは、しかし次にはその行いを遮るかのような、遺跡中に鳴り響き始めた警報音を聞いた。
襲撃の知らせに他ならないそれ。それに険しい顔色で、顔を上げるオルスレー。
そして時間、タイミングから。
それがここまでの小規模な探りの攻撃とは違うものであることを、オルスレーは気配、直感から察し。
次には脱ぎ置いていたPAヘルメットを掴み取り、立ち上がり駆け向かった。
「シニア!」
部屋を飛び出して廊下を駆けるオルスレーの元へ、向こうから慌て駆け向かって来たPA兵が合流する。
「状況は!?」
「非常事態……大攻勢ですっ!VACが大挙して迫っています!」
尋ねたオルスレーに、キャプテンのPA兵は急き張り詰めた声色でそう伝えた。
――ゥォァァァアアアアオオオッッッ!!!
ToBを押し潰すために、三個大隊を主力とするVAC AFによる。それによる総攻撃、総突撃が火蓋を切った。
ウウォオォォォォォォッッッ!!!
ワァアァァァアァァァァッッッ!!!
数多多数のAF各隊、隊員等が周辺地形に広大なまでに散会展開。
大きく、巨大なまでの攻勢の光景を描き。
各員が張り上げた声を、響き轟かせている。
「ボット機動!」
「打ち方始めー!」
「撃て、とにかく撃てェ!」
ToB防御陣地からは、なけなしの火力弾薬も惜しまず。いや惜しむことすらできず、激しい防御火力が唸り始めた。
正面に配置した四機のファイヤサポートボットの、そのガトリング砲や機関砲が過激に唸りを上げ。
防御陣地の各機関銃銃座から、各兵の所有火器まで、ToBの火力のほぼ全てが火を吹き上げた。
「――ア゛ッ」
無数の、豪雨の如きで襲い来たToB側からの数多の防御火力に。攻勢隊形の内のAF隊員等が撃ち抜かれ始めた。
一人、二人、三人、四人、さらに。
浚える如きの敵の銃砲火に、隊員等が立て続けに打ち吹っ飛び、崩れ沈む。
ォォオォォアァアアアッッッ!!!
しかし、前進攻勢が止まる事は無い
崩れ沈んだ味方の身体を抜け、飛び越え。
そして自身の身を銃弾が掠め削ぎ、多少傷つきようとも。
AF各隊各員はその身が、脚が動く限り押し進む。
AF側が被害にも構わずに押し進み、最初の遮蔽物が点在する位置まで至った頃。
ToBの防御陣地側では、丁度オルスレーが駆け出て来て合流した。
「キャプテン・ラフェル、状況をッ」
「大攻勢です!まだ視界が確保できない夜明け前を狙ってきた、今は砂煙も巻いていますッ。それに各弾薬も残りわずか、我々の側に非常に不利です!」
敵味方のものが混じる数々の戦いの音、銃声が響く中で。
オルスレーは場の指揮を執っていたキャプテンに報告を求め、ラフェルと呼ばれたそのキャプテンはToB側の現状を捲し立てて返す。
言ってしまえば、ToBは窮地にあった。
一方。
正面より行われるAF主力の大攻勢の光景を側面に見つつ。側方から「迂回」にための動きを取る一隊の姿があった。
地上を縦隊を組み、地面を鳴らし揺らし、速度を出して突っ切り進んでいくシルエットの数々。
それはオートバイ及び大型バキーを主とし、また重火器を搭載した少数の四輪駆動車を組み込み構成される、車輛機動隊。
彼等はその速度機動力をもって、ToB側の火力を掻い潜り通過。遺跡施設、ToB防御陣地の背後側方に回り込む算段だ。
「――散会ッ」
間もなく、その先頭でオートバイに跨り操るストロングコマンドー――他ならぬサミュエルが指示の声を発し。
それを受け、機動車輛隊の各員各車はそれぞれの割り振りの元、遺跡の両側に回り込むべく二手に分散して行く。
「側面より敵車輛群!回り込む気です!」
ToBの陣地側。
遺跡の高所で監視に当たっていた兵が、知らせの声を降ろして来る。
「ラフェル、部隊を連れて側面の防御へ!」
「はッ。聞いたな、行くぞ!」
それを受けたオルスレーは、今にやり取りをしていたキャプテン・ラフェルに指示を向け。
ラフェルすぐにそれに呼応、動きに移った。
ラフェル率いる一部隊は手早く陣地の側面に移動から配置展開し。重火器から小火器までの各火器を据えて構え。
近づく敵の迂回部隊を待ち構える。
「視認した、射撃開始!」
そしてまず真っ先に、ラフェルが向こうの地上に敵のシルエット見止め。
そのラフェルの合図によって、ToB兵たちは射撃を開始した。
「――ヅッ!」
散会後、右方よりの接近を試みていたサミュエル率いる車輛機動隊に、敵からの銃火が襲い始めた。
直後には内のオートバイを操る一名が食われ、その隊員は銃弾を受けて放り出されて落伍。
さらに、数々の射撃が容赦なく車輛機動隊を襲い掠める。
「怯むなァッ!」
しかし戦闘を行き、率いるサミュエルは訴える声を発し上げ。隊はその指示の通り、
怯み臆する様子など見せずに、速度を上げて前進を続ける。
一方、主戦場より後方の小高い崖の上。
そこで岩陰に身を隠して配置しているのは、ヒト系とスーパーヒューマンの二名からなる二人一組の、ストロングコマンドーのチーム。
そのチームは巨大な得物を、航空機関砲改造の30mm狙撃砲を展開して据え構え。
敵陣に接近を試みる車輛機動隊の動向を見守っている。
《ロス28よりホヴ-バーナー。車輛機動隊が敵陣に接近、しかし砂煙や重迫撃砲の影響でこちらの精密狙撃支援も困難ッ》
そのストロングコマンドー二名の耳に、通信してそんな知らせの声が届く。
それは離れた別方高所に配置している狙撃班の、内のエドアンズからの知らせ伝える言葉。
その通り、今の視界不良の環境はVAC側が狙ったもので、承知の上ではあったが。
その影響で、味方への狙撃支援の類には影響が発生していた。
「敵のマズルフラッシュが見える、それを目安に狙え。少しでも援護が期待できる」
しかしそれにストロングコマンドーの片割れ、ヒト系のコマンドーが返したのはそんな促す一声。
そしてその旨に回答にまず手本を示すように、相方のスーパーヒューマンの隊員が。据え構えて居た30mm機関砲のトリガーを引き、凄まじい砲声を響かせた。
「!――ゴォ゛ぅ!?」
ToBの防御陣地側面にて、ガトリング砲を構え撃ちばら撒いていた一体のPA兵が――瞬間、そのどてっ腹に大穴を空け、背後へ思いっきり打ち飛んで地面に叩きつけられた。
「クソ!!」
「重狙撃だ!」
昨日の経験から、その正体を嫌でも察して叫ぶToB兵たち。
しかしさらに今の一撃に続くように、次には無数の狙撃射撃が襲い来てToB兵たちを掠め始める。
その正体は、エドアンズら狙撃班からの各個狙撃射撃。
それに晒され、兵たちは防御陣地の遮蔽へ隠れることを余儀なくされる。
「ズぁっ!?」
「がァっ!?」
しかしそんな兵たちの動きも虚しく。VAC AFの狙撃はその威力と数に物を言わせて、ToBの頭上を脅かし。
時に遮蔽防御すらをも貫通して兵たちを傷つけ、屠り沈める。
「ッ……シニア!両側からの敵攻勢苛烈、敵の強力な狙撃の妨害でこちらは応戦困難!ボットを回してください、至急火力支援が必要ですッ!」
頭も碌に上げられなくなったその状況下で。ラフェルは陣地正面で指揮を執るオルスレーに向けて、そう支援の通信要請を送る。
《無理だ!正面の敵攻勢を抑えるので手一杯、こちらも押し切られる寸前だ!ボットはとてもじゃないが動かせない!》
しかしそれに返ってきたのは、オルスレーの声での悲鳴にも近い怒号であった。