Beyond Dust 復興文明、幻想異界との衝突――「世界」が異なれば、やり方の違いで過ちは繰り返す   作:えぴっくにごつ

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チャプター8:「正体」

 ナイスシーズの街を襲った軍勢の正体。

 それは、この宇宙世界とは別の『異世界』からの者たち。

 

 その異世界に存在する巨大帝国、『グテュスリオ魔帝国』の軍勢であった。

 

 グテュスリオ魔帝国は、その異世界にて禁忌とされてきた『邪法』に手を出し、凶悪で恐るべき力を手に入れ。

 『邪法』と、合わせて元より保有する強大な軍事力を持って。その世界の全ての土地を手中に収めるべく、侵略行為を開始。

 

 その世界の地の数多くを。強大で凶悪な力によって、破竹の勢いで手中に収めていった。

 

 その最中で。ある一つの土地で、魔帝国が発見したのはとある『古代の遺跡』。

 その古代遺跡は神秘の力を備え、それは未知の異なる世界へ「渡る」ことを可能とした。

 

 飢え乾いた獣なまでの野心を抱く魔帝国は、その未知の異なる世界を。次なる侵略の地と定め、手中に収めるべく。

 古代遺跡の力によって、「接続」を開いたのだ――

 

 

 場所は、ナイスシーズの街の内。

 その一区画に存在する銀行施設。

 

 現在はその銀行施設の内部に周りには、魔帝軍が。

 開かれた「接続」により異界に――この世界に送り込まれ、この地を踏んだその一部隊の兵たちが。

 占拠したそこを拠点として居座り。しかし背かしく、慌てるまでの様子で動いていた。

 

「っ……」

 

 その魔帝軍の一部隊、千魔団(おおよそ軽旅団~連隊規模)を率いる指揮官の重騎士は。

 今に在っては焦れて困惑し。堅牢な兜の内で、険しい顔を作っていた。

 

 侵略を仕掛ける立場として。この地に世界を蹂躙し、手中に収めるべく降り立った彼ら。

 だが、そのはずの彼らは。

 現在の実情を言えば、押され、後退を強いられ――実質、追い詰められている状況にあったのだ。

 

 

 「接続」を果たし降り立った先で彼らが見たのは、寂れ枯れた光景が広がるばかりの土地。

 

 早々から落胆したその魔帝軍の千魔団が、少しの探索の後に最初に見つけたのが。

 一見、多くの建物が群立して壮観に見えるが。

 よくよく観察すれば、すぐにほとんど廃墟を取り繕っただけであると判別に至った、妙な市街。

 ――このナイスシーズの街。

 

 周りには他に何も見えず、大分不足の感はあるが。『この街をひとまずの獲物とするか』などと思いつつ、彼らは街へと襲撃を仕掛けた。

 

 しかし、蓋を開けてみればどうだ。

 その廃墟のような街には多くの者が存在して潜み。おまけに襲撃を仕掛けた魔帝軍に、しぶとく苛烈な抵抗を見せて来た。

 

 魔帝軍千魔団の多数備える手勢兵力に。招集したオークやオーガ兵を見ようとも臆さず。

 その我武者羅の抵抗は、逆に魔帝軍の将兵を困惑させた。

 

 その抵抗の影響で。魔帝軍は当初の目的である有用物品資源の奪取、略奪も満足に行えぬまま。それらの無力化に手間取り、損耗を強いられ。

 

 そして、そんな事態を煩わしく思っていた所へ。

トドメに現れたのは――空よりの怪物等。

 さらにその腹より降り立ち姿を見せたのは、不可解の最たる者等。

 

 見せる組織的な行動から、すぐにこの異界の軍か何かと判別できたそれは。

 得体の知れぬ武器を持ち扱い。

 さらにはアンデッドのような存在や。オークやオーガをも捩じ伏せる、亜人と思しき存在までもを内包。

 

 異質な、正体不明な。そして恐るべきまでの域であったそれ等は。

 それを肯定証明するかのように、凶悪な力・武力に手管の数々を繰り出し。魔帝軍の彼らを、まるで容易く捻るかの如きで退け砕いて行った。

 

 そんな得体の知れぬ敵勢力に、こちらの戦力に兵を削られ。

 街の各所から、ほとんど追い立てられ追い詰められる形で。魔帝軍は今のこの建物施設――銀行に後退。

 現在は籠城し、防御を固めさせているが。

 すでに千魔団の兵の半数以上も失ってしまっており、状況は非常に芳しくなく。いや、危機と言っても良かった。

 

 

「……っ!」

 

 そんな状況に焦れ、忌々し気に表情を作っていた指揮官の重騎士だが。

 次にはその重騎士の耳に、大きな音が銀行建物の外より届く。それは彼らからすれば、上級攻撃魔法でも落ちたかと思わせるような音。

 

「敵の攻撃です!」

 

 次には外に立てていた見張りの兵から、知らせの声が届いた。

 

「っ……預かっている、『闇魔獣』は!?」

「これより出させます!」

 

 その知らせに一層顔を苦くし。次にはまた焦る声で、重騎士は近場に居た兵に訪ね。

 それに慌ただしい動きの最中であった兵は、また焦る声でそう返した。

 

 

 

 ジョンソン等は来た道を戻り、一度分かれた一個小隊を拾う形で再合流。

 そして応援要請のあった街の銀行を目指し、さほど時間は掛からずににその現場に辿り着いた。

 

 現場に到着し、見え開けたのは広く敷地を取るロータリー空間。その周辺周囲には集合した各小隊がそれぞれ遮蔽展開、そしてすでに散発的な戦闘が始まっている。

 

「――展開しろッ」

 

 ジョンソンは自分と同行していた小隊の各員に告げ。そして自分も適当な瓦礫を遮蔽物と定め、飛び込みカバー。

 

「ディトロ中尉ッ」

「どうも少佐ッ」

 

 そこに丁度居た、一個小隊の小隊長であるユーダイドの中尉に声を掛け。中尉はジョンソンに簡易な敬礼で返事を寄越す。

 

「敵の数、その他詳細は?」

「およそ大隊規模。ウチの各隊に追い立てられて、この場に引いてきた模様。今は銀行を野戦指揮所にして、防御を固めています」

 

 続け簡潔に尋ねたジョンソンのそれに。中尉からこの場の掌握している範囲の状況詳細が説明される。

 

「一度突いてみましたが、なかなか念入りにしてます。手数が要りそうなので、それを待ってました」

 

 続け、中尉からはそう増援を待っていた旨が伝えられた。

 

「やはり魔帝軍は、異界の地まで手を伸ばしたのか……!」

 

 そんなやり取りが一区切りしたタイミングで。

 向こうの敵勢力を見ながら驚きの混じる声を上げたのは、ジョンソン等に同行していたリーシェだ。

 

「ん?その子は?」

「詳しくは聞けていない。どうにも他所より、連中の手から逃れて来た子らしい」

 

 場に少し似合わぬ格好に雰囲気のリーシェに気づき、中尉はジョンソンに尋ねるが。

 ジョンソンも詳細にあっては聞けていないため、正直な所だけを端的に返す。

 

「少佐、中隊はおおよそ再集合」

 

 しかしそこへまた声が挟まれ掛けられる。

 隊員の一名が、このナイスシーズの街に降下展開した一個中隊の、この場への再集合がおおよそ完了した旨を伝えて来た。

 

「了――連中にはまだ動揺があるな、これを隙と見て抉じ開けたい考えだ」

「異論はありません――踏み込むぞッ、各隊各員準備しろッ」

 

 隊員からのそれを受け。続けジョンソンは向こうに見える銀行に、周りの敵の防御陣地を指し示しながら中尉にそう伝え。

 中尉はそれに同意了承。周囲の各隊各員へ、準備するよう指示を張り上げ伝え。

 それに呼応して各隊各員は準備行動の動きを見せる。

 

「機関銃班と狙撃チームを近くの建物上階へ。エドアンズ、君も行ってくれ」

「了」

 

 ジョンソンも各担当班への詳細の配置指示を発し。合わせて自分に同行していたエドアンズにも指示。

 エドアンズはそれに了解し、移動のため場を離れて行く。

 

「事前航空投射が来ますッ」

 

 そこへまた隊員の知らせの声が上がり寄越される。

 同時にバタバタと響く音が聞こえ届き、直後にそれは大きく激しく明確なものへと変わる。

 

「ッ」

「うわっ!?」

 

 ジョンソンが自身の準備の片手間に、背後上空を見上げ。合わせて傍らに居たリーシェが驚く声を上げる。

 瞬間。ジョンソン等の真上低空に、汎用機流用の攻撃ヘリコプター――ジェイコブズ機が飛来。

 直後、一時的なホバリングに移行すると同時に。機の両側に備えるロケットポッドより噴炎を噴き。

 向こうの銀行周りに構えられていた、敵魔帝軍の陣地にロケット弾を叩き込み。その一角を吹き飛ばして巻き上げた。

 

「……すごっ」

 

 その光景を真上と向こうに見て、目を丸くして思わずの声を上げたのはリーシェ。

 そんな彼をよそに。ジェイコブズ機は機体の向きを変えて再びロケット弾を別方に叩き込み、また敵の防御陣地の一角を吹き飛ばす。

 さらに続ける動きで。その機体を揺らしながら備える四門の汎用機関銃を唸らせ、銃弾の雨で向こうの敵陣地を薙ぎ浚えた。

 

「効力認ム、進入箇所複数確保ッ」

 

 その航空投射の様子、結果を。それを地上より観測していた隊員が発し伝える。

 

「了解――始めろッッ!」

 

 それを受け、ジョンソンは「開始」の指示命令を端的に発し上げ。そして同時に控えていたホイッスルを口にし――

 

 ――ピイィィィィィィィーーッッ――

 

 「攻撃・突撃開始」を指示する笛の音が、周囲に響き渡り。

 

 そしてそれを合図として呼応し。AFの一個中隊の隊員各員が、攻撃突撃行動の火蓋を切った――

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