細かい描写の変更点こそあれど内容の大筋は変わってないんで、フッ!トーシロの作者がこの一年でどれだけ成長したか確かめてやるか!程度のお心持ちで読んでくださると嬉しいです。
Reプロローグ:約束の日
『本当に良いのかい?君の実力ならコッチでも十分に通用すると思うけど?』
イタリアでも最強と名高い少年サッカーチーム“セイバーズ”。チームが保有する専用のグラウンドにて、2人の少年が激しい攻防戦を繰り広げている。
1人は街中を歩いていれば、黄色い声が雨霰の如く浴びせられるであろう非常に整った端正な顔立ちを持つ茶髪の少年。
もう1人は茶髪の少年とは対照的に人工的に染められた派手な金色の髪色を持ち、稲妻を思わせる癖のあるヘアースタイルをしたやや人相の悪い少年だ。
まるで息をするように激しい攻防戦を繰り広げる少年達だが、茶髪の少年が流星の如きスピードで抜き去ろうとしても、金髪の少年は持ち前のフィジカルと瞬発力でピタリと追い付き簡単には抜かせない。
『オレ。約束ノ為ニ。ニホン。帰ル』
茶髪の少年の説得も虚しく、金髪の少年の意思は岩よりも硬いようで、辛うじて会話が成り立つか否かレベルの下手くそなイタリア語で自身の意思を伝える。
『プッ…!アハハ!結局、3年以上イタリアに居たってのに語学力のレベルは全っ然成長しなかったね!!』
茶髪の少年はあれだけ監督が必死になって勉強させても、一向に成長しなかった金髪の少年の語学力を笑う。
本人も自分がイタリア語が下手な事を多少なりとも気にはしているのだろう。自身を馬鹿にする友人に対し、ただでさえ悪い目つきを更に細め言語ではなく、視線で不満を露わにする。
『分かった分かった。笑って悪かったよ。けど、一応事実だろ?』
『ウッサイ。イタリア語。難シイ。オレ、ジュンド100%ノジャパニーズ』
表面上では謝罪しながらも、内心では未だに自分を馬鹿にする友人を罰するように、金髪の少年はやや荒いプレーで仕返しを行うが、茶髪の少年はヒラりと躱し不発に終わる。
『しかし、俺も会ってみたいな。気難しい君がそこまで惚れ込むような“マモル”ってキーパーに』
茶髪の少年が知る友は、私生活こそ陽気かつ軽率な面がありつつも、サッカーに対して誰よりも真摯で気難しい…言ってしまえば色々めんどくさい性格をしている。
そんな彼が事故で亡くなった兄を除いて、背中を任せられるような選手が日本に居るとは到底思えなかった。
『…そもそも、その“マモル”って子は留学前に一度会っただけなんだろ?もう約束から数年経っているんだ、もしかしたら引っ越しているかもしれないし、サッカーも辞めているかもしれないだろ?』
練習中に事あるごとに友から聞かされた“マモル”なる人物との思い出。驚くべき事に彼と“マモル”は幼馴染のような深い関係ではなく、一度だけ出会っただけのほぼ他人としか言えない存在だ。
『関係ナイネ。アイツハ必ズ約束ヲ守ルヤツダ』
『……その根拠は?』
『トウゼン、カン』
『ハァ…。だと思った…』
あまりに薄い根拠だけを頼りに世界強豪達と競い合うチャンスを不意にする友に対し、茶髪の少年は頭を抱える。
だが、その大胆不敵な豪胆さこそが少年が良く知る“怪物”の息子だ。
『それじゃ、君と戦えるのは正真正銘今日が最後って事か…』
『ソーユー事。オレトオマエさんノ戦績ハ、99戦49勝50敗。今日勝ッテ、同点ニ追イツカセテモラウゼ』
杜撰そうな見た目とは裏腹にご丁寧に今日までの友との戦績を記憶していた金髪の少年は、ニヒルな笑みを浮かべるとココからが本番だと言わんばかりにスピードを上げる。
『そう来るかッ!!なら俺もッ!!』
茶髪の少年もまた、“白い流星”の異名に違わないイタリア1のスピードを解放し、友と対峙する。
つい先日、
そのどちらも実に晴れ晴れとした笑みを浮かべており、今この瞬間が楽しくて堪らない様子だ。
願う事ならば永遠に繰り広げていたいとさえ願う、この
だが、物事には必ず終わりが訪れる。それが世界の理だ。
『ソコッ!!!』
『ーーッ!?しまったッ!!』
勝敗を分けたのは僅かな油断。茶髪の少年の中にあった自身のスピードに対する絶対的な自信が、巡り巡って一瞬の隙となって現実世界に現れこの白兵戦において、あまりにも致命的な隙を晒してしまった。
『デェリャァァァァッ!!!』
友からボールを奪った金髪の少年は、雷鳴を思わせる雄叫びと共に渾身のシュートを叩き込むと、ボールは黄金の稲光を放つ弾丸と化し、ゴールネットに激しく叩きつけられた。
『ゴーールッ!!世界最強ノ“
茶髪の少年改め、フィディオ・アルデナに勝利した金髪の少年は、先程の意趣返しと言わんばかりに性格の悪い笑みを浮かべながら、実況風の勝利宣言を高らかに上げる。
『コレで俺の50敗目か…。願うならば君に勝ち越したかったけど、それも水泡に化したって訳か。……
“怪物”に敗北したフィディオは、改めて親友……稲魂雷牙の勝利を認め、爽やかな笑顔で軽く拍手を行う。
それでも、内心に抱えた友との別れによる悲しみは隠し切れておらず、意識していても目尻が熱くなってしまう。
『…ソンナ顔、スンナッテ。別ニ今生ノ別レッテワケジャネェンダ。運ガ良ケリャ、スグニ会エルカモシンネェダロ?』
そう言う彼とて友との別れは寂しい。
それでも、もう決めたのだ。“マモル”との約束を守る為に家族と過ごした故郷へ戻る事を。
『……分かってるさ。だからこう考える事にするよ、君との別れは“終わり”なんかじゃない、コレは“始まり”なんだって。
『“タビジ”…ネ。フィディオラシイ、ロマンチックナ、表現ナンジャネェ〜ノ?少ナクトモ、オレチャンハ気ニ入ッタ』
『そう言ってくれると嬉しいよ。だから、俺は祈る事にする。いつの日か……世界の観衆が見守る大舞台で君と再会出来る事を!!』
そう言い終わったフィディオは、これ以上悲しみを重ねないように精一杯の笑顔を見せると友から背を向け立ち去る。
『……』
遂に1人になってしまった“怪物”。だが彼の表情には友と同様、“悲しみ”の感情はない。
彼は友の後ろ姿に亡き兄の面影を重ねると、軽く微笑み下宿元への帰路に着く。
「……あばよフィディオ。オマエと一緒に居た3年間は、悪ィモンじゃなかったぜ。俺も日本で更に強くなる…だから、オマエさんももっと強くなれよ…!」
素直になれない少年は、誰にも聞こえないような小さな声量で下手くそなイタリア語とは対照的に流暢な母国語で小さく友への感謝の念を呟く。
その胸に、いつか来るであろう“
♢♢♢
「うおぉぉぉぉぉ!!!部活の時間だぁぁぁぁ!!!」
ここは東京都内にある私立中学校・雷門中。所属する生徒の数は1000人を超えるマンモス校ながらも、特段学力が高いという訳でなく、かといって優れた成績を残した部活がある訳でもない、良くも悪くも普通の学校だ。
そんな平凡を絵にしたような学校において、最近ある名物が誕生していた。
「おい見ろよ…。“サッカーバカ”が今日も騒いでるぜ」(ヒソッ)
「ホントによくやるよな〜。部員もマネージャー以外、誰も居ないってのに」(ヒソッ)
大声で叫びながら部室へ向かうオレンジ色のバンダナを巻いた少年。少年を見た生徒はまるで
「待ってよ円堂くーーん!!まだ冬海先生から部室の鍵を貰ってないから、入れないわよーー!!」
「あ〜〜っ!!!そうだった〜〜!!!」
後ろから彼に付いて来た少女の言葉を受けて部室が施錠されている事を忘れていた“円堂”と呼ばれたバンダナの少年は、猛スピードで走る自転車の如く全身に急ブレーキをかけ、大量の砂煙を周囲に撒き散らしながら停止する。
「はぁ…はぁ…!やっと…止まってくれた…!」
「いや〜!悪い悪い!!今日は練習初日だからな!!!嬉しくってつい張り切っちゃってさ〜!!」
ブレーキの壊れた特急列車のように猪突猛進を地で行く少年に、マネージャーを務める少女は息を乱しながら呆れる。
「んもう!張り切るのは良いことだけど、ちゃんと人の話は聞いてよね!人の静止を聞かずに大事になっちゃったら後悔しても遅いのよ!」
「あはは…。肝に銘じておきます…」
流石の熱血少年こと円堂守は、共にサッカー部を立ち上げた木野秋なる少女の圧の前には手も足も出ず、素直に自身の非を認めさっきの態度が嘘のようにトボトボ歩きながら職員室へ向かう。
「楽しみだよなー!まだサッカー部を作ったばっかだけど、どんな生徒が入部してくれるんだろうなー!」
「う〜ん…ウチの近所で有名だった子はみんな帝国に行っちゃったから検討も付かないな…。けど、入学式で見たピンク髪の子とかは強そうだったよ!なんかドラゴンって感じで!」
「ピンク髪…。そんな子居たっけ?」
そんなこんなで雑談を交わしながらも、職員室に辿り着き目的の部室の鍵を手に入れた円堂と木野は部室へ戻る。
すると……
「…ん?おい見ろよ木野、部室の前に誰か立ってるぞ?」
部室の前に立っていたのは、見知らぬ金髪頭の少年。
その少年は、入り口の横に取り付けられた清掃中に偶然見つけた『サッカー部』の文字が彫られたボロボロの看板を物珍しそうにジロジロ見つめている。
「あの子…雷門中の制服を着てるから、ウチの生徒っぽいけど入学式にあんな奴居たか?」
「うーん…私も見覚えないかも…。そもそもあんな派手な髪色をしている子なら忘れようがないし…」
木野の言う通り、謎の少年は髪色もさる事ながら、その稲妻を思わせる癖毛気味のヘアースタイルを一眼見れば、余程記憶力の悪い人間でない限り忘れる方が難しいとさえ思える程にインパクトのある容姿だ。
「ーー!!! もしかして…!入部希望者じゃないか!?ヤケにジロジロとサッカー部の看板を見てるし!」
「そ、そうかな…?言っちゃ悪いけど、パッと見じゃあまりサッカーをするような人には見えないけど…」
「よーーし!!こうしちゃいられないっ!!ちょっと声掛けて来るっ!!」
「ええっ!?ちょ、ちょっと円堂君!!」
どこからどう見ても不良にしか見えない少年に声を掛けに行こうとする円堂を、何か嫌な予感がした木野は止めるが“好奇心”という燃料が投下された事で再び暴走機関車と化した円堂を止める事は叶わなかった。
「ねぇ君!!もしかして入部希望者かい?」
「…だとしたら?」
金髪の少年は、ダイヤモンドのようにキラキラと眼を輝かせる円堂に対し、やや性格の悪い態度で答える。
「ああ…!急に話しかけてゴメン!ヤケに珍しそうにサッカーの部の看板を見てたから入部希望者と思ってさ…!先に自己紹介するよ!俺の名前は…「エンドウ・マモル…だろ?」…え?」
自己紹介よりも先に自身の名を答える謎の少年に、円堂は唖然としてしまう。
少なくとも彼は目の前の少年と会った事はないし、木野の記憶にもない以上、同じクラスである事もありえないだろう。
「おっとォ?何やら意外…って顔してんねェ?けど俺ちゃんとしては、唖然としてェのはコッチの方なんだよなァ」
「…悪いけど、俺と君はどこかで会ったことがあったっけ…?」
「カァ〜…。やっ〜〜ぱり忘れてやがったなァ…俺ちゃん激オチコミ〜…。……
最後の手段として円堂の視界を覆い尽くすような距離で、自身の淡い紺碧の輝きを放つ瞳を見せた少年。
「その眼…!お前はまさか…!」
刹那、その輝きを見た円堂の脳裏に数年前の記憶が蘇る。
その記憶は少年にとっては忘れたくとも忘れられない忌まわしき
「円堂君…。もしかして、その子と知り合いなの?」
「ああ!!こいつの名は…!」
全てを思い出した円堂は、事情を知らない木野に説明する為に少年の名を呼ぼうとするが、ほんの一瞬だけ早く円堂の台詞を遮るように少年が口を開く。
「雷牙…」
「え?」
「稲魂雷牙…。円堂守ッ!オマエとの約束、守りに来たぜッ!!」
遂に再会を果たした“怪物”の魂を受け継ぐ少年と、“伝説”の遺伝子を受け継ぐ少年…。
彼らの再会は、小さな“夢”から始まり、やがて世界すらも揺るがす大いなる“伝説”の第一歩となる…。
彼らの伝説の続きは… これから綴られるだろう。
どうだったでしょうか?リメイク前よりも人称の固定化、フィディオ・円堂の描写の充実を意識して書いてみました。
まぁ、リメイク前じゃサッカー部が出来た日に円堂と再会したのに、本話ではサッカー部開設から数日程度経過しているなどの細かい変更点はありますが、そこらへんは大目に見てください。