「しゃあ!睡眠バッチリ絶好調!待ってろジェネシス!俺がぶっ飛ばしてやっからよぉ!」
「……。」
「あ〜ん?どったのライト?もしかして風邪でも引いたか?」
旧稲魂邸での問答により絶望を乗り越えた筈のライトだが今朝から顔がどこか暗い。
かと言ってこの前のように今にも消えそうなほどの深い絶望でもなく、どちらかと言うと何か思い悩んでいる感じだ。
「…もしかしてジェネシスと戦うのが怖いn…うがっ!?」
ライトは突然雷牙に抱きしめ力強く両手を固定する。
「あー…、悪ぃが俺ちゃんはオメーにそんな感情は持ってねぇぞ?」
「…雷牙。たとえ世界中がキミの敵になってもボクだけは絶対にキミの味方だからね…!」
「? …うん。何か状況が理解できねーけど期待しとくわ一応。」
突然の状況に理解が追いついていない雷牙は困惑した表情で頭に『?』マークを浮かべている。
ライトの目尻にはほのかに涙が浮かんでいた。
♢♢♢
「おっ、やっと稲魂兄弟の到着か。今日はお前がドベだったな。」
「いやー悪い悪い。ライトが中々離してくれなくてよー。時間食っちまった。」
「…は?」
故意か無自覚か誤解されそうな説明によってこれから旅立つ雷門イレブンになんとも言えない空気が流れる。
「…まあ趣味は人それぞれだから否定はしない。」
「? なんか分かんねーけどあんがと。」
「…皆揃ったようだしこれからエイリアの本拠地に向かう…と言いたいところだけど最後にやらなくちゃいけない事があるわ。」
「なんですか?瞳子監督?」
「今からジェネシスに挑むスターティングメンバーを発表します。」
「! 遂にこの時が来たか…!」
元々のこの旅の目的はエイリア討伐と同時に日本各地から最強の選手を集め最強のイレブン…“地上最強イレブン”を結成する事にあった。
瞳子がジェネシスに挑むスタメンを発表するという事はその全てのピースが遂にこの場に揃ったのだ。
「まずはFW!豪炎寺修也!吹雪熱也!」
「はい!」
「へーい。」
「次にMF、一ノ瀬一哉!稲魂雷牙!亜風炉照美!鬼道有人!」
「はい!」
「ハッ!当然!」
「これで僕達が犯した罪が消えるとは思っていないけど平和なサッカーを取り戻す為に全力を尽くさせてもらうよ。」
「俺達の…そして春奈の為に…、この決戦、必ず勝つ!」
「DF!風丸一郎太!吹雪士郎!壁山塀五郎!そして…キャプテン・円堂守!」
「見せてやる…!エイリア石なんかに頼る奴らに人間の本当の強さを…!」
「フフ、頑張ろうね風丸君。」
「お、俺もスタメンっスか…!な、なんかお腹が痛くなってきたっス…。」
「心配すんなよ壁山!お前の防御力は日本一なんだ!俺が保証するさ!」
各々臆する事なくジェネシス戦に対するやる気を見せる雷門イレブンだがここで染岡がある事に気づく。
「…待てよ。円堂がDFで立向居は怪我で離脱…、てことはGKは…。」
「…最後にGK。…稲魂雷斗!」
「…! は、はい!」
まさか円堂がGKではなくライトがGKに選抜された事に残りのメンバーは驚きを隠せない。
何せライトは元エイリア学園の一員なのだ。これまでの話から彼がこちら側である事は知っているが万が一の事もある。動揺が起こるのも当然だろう。
「…皆が100%ライトを信用できない気持ちは分かるわ。でも私は彼の事を信じている…。だからお願い、ライトを受け入れてちょうだい…!」
瞳子は動揺を鎮める為に頭を下げるが言葉だけで信用できないのが人間だ。でなければ染岡は入部したての豪炎寺に嫉妬を抱かないし、熱也と喧嘩もしない。
「…俺はライトさんを信じます!」
「…! 立向居君…!」
「…本当は俺が守るはずだった役目を奪われたのは悔しいですけど…。ライトさんのシュートを受けて思ったんです!ライトさんのシュートには今までのエイリアに感じた悪意は一切籠もってなかった!ライトさんはただ純粋にサッカーがしたかっただけだって俺のハートに響いたんです!だから…」
立向居はライトに近づくと彼が愛用しているキーパーグローブを彼に手渡す。
「俺の夢と使命をあなたに託します!このグローブで俺を決戦に連れて行ってください!」
ライトは手渡されたグローブを手に装着する。年はライトの方が1歳上だが元々少女と見間違われるほど小柄なライトの手は違和感がないほどに立向居のグローブにフィットした。
「本当にありがとう立向居君。キミの想いはボクが引き継がせてもらうよ。」
「これで本当の意味で“地上最強イレブン”が完成したな。」
雷牙は完成した“地上最強イレブン”のメンバーを見回す。日本各地から集めた精鋭達で構成されたこのチームはまさしく“最強”。
胸を張って世界にも挑める最高のチームだ。
「よし!行くぞみんな!俺たちが“サッカー”を取り戻すんだ!」
『おおッ!!!』
心を1つにした雷門イレブンはキャラバンに乗り込みエイリア学園が本拠地を構える静岡へと向かう。
≪2日後≫
「ここが…エイリア学園の本拠地…!」
2日掛けて東京から静岡まで移動し富士の樹海に突入した雷門イレブンの目の前に現れたのはまるで数百年後の未来にタイムスリップしたと錯覚させるデザインの要塞だった。
「スッゲー…!流石は日本トップクラスの財閥、コレ作んのに一体何億…いや何兆掛かるんだろーなー?」
「ここにジェネシスが…ヒロトがいるんだな…!」
すると目の前の大きな鉄の扉は鈍い音を立てながら開き雷門イレブンを出迎える。
『進みなさい雷門イレブンよ。この奥にジェネシスがいます。』
突如スピーカーを通してジェネシスではない謎の人物の声が響く。その声を聞いた瞳子は僅かに表情を歪める。
「父さん…!」
「なんか怪しーなー…、もしかして罠じゃねーのか?」
「…それでも私達は進むしかないわ。この愚かな戦いを終わらせる為に…!」
罠を警戒して躊躇する雷門を守るように瞳子は先陣を切って本拠地に乗り込み雷門イレブンも彼女に続く。
「旦那様。雷門イレブンが基地に侵入したようです。」
場面は変わり吉良星二郎の右腕である科学者・研崎が雷門の動向を報告する。
星二郎は満足したような笑みを浮かべながら温和そうな顔からは想像もつかない低い声で指示を出す。
「そうですか。ならば後は手筈通りになさい。」
「…はっ。」
上司から命令を受けた研崎は部屋を退出すると先ほどの礼儀正しい態度が嘘のように顔を歪める。
「チッ!何が手筈通りに進めろだあのボンクラめ…!何故わざわざ雷門イレブンを基地に呼び寄せる…!ここまで来たら手段を選ばずに奴らを抹殺するべきだろう…!」
あくまでサッカーで雷門を倒す事に拘る上司に研崎は我慢の限界に達していた。
そもそも彼は吉良星二郎に忠誠を誓っていない。彼にとって星二郎は自身の研究を進める為の資金源でしかなく程の良いビジネスパートナーでしかないのだ。
研崎にとって心の底から忠誠を誓うのは自身をこの道に進ませた偉大なる賢人である“雷帝”のみ。それ以外の人間などどうでもいいのだ。
「…そうだ…!
何かを思いついた研崎は急いでコントロール室へと向かう。星二郎の指示に指定されていないにも関わらず…。
「…なあライト。何かこの部屋怪しくねーか?」
最深部に向かう途中、雷牙の目に止まったのは他の部屋と比べるとやけに頑丈な作りとなっている扉だった。
「…!見て瞳子姉さん!アレって…!」
「…ええ間違いないわ。あの部屋はエイリア石が保管してある部屋…!しかもロックが掛かっていない…?」
雷門イレブンは指定の部屋に入るとそこにあったのは怪しい紫に彩られた巨大な鉱石が厳重に保管されていた。
「これがエイリア石…!確かにレーゼやデザームが付けていた宝石とおんなじ色だ…!」
「アレそうゆうデザインじゃなかったんだな。」
各々エイリア石に様々な感想を抱く雷門イレブンだったが突如謎のブザーが鳴り響く。
『侵入者発見!繰り返す!侵入者発見!防衛モード起動!』
「防衛モードぉ?」
すると地面から鉄の壁が雷門イレブンを閉じ込めスタメン11人だけが内部に閉じ込められる。
「わーお!これはびっくらポンだぜ。」
11人の前に現れたのはエイリア学園の紋章が入った巨大な人形ロボットだった。
その体長は軽く3mは超えており明らかに作業用ロボットの類ではない事が見ただけで分かる。
「やっぱり罠だったのね…!やられた…!」
守るべき生徒が閉じ込められ事で冷静さを欠いた瞳子は力技で壁をこじ開けようとするが壁はびくともしない。それどころか外部からの破壊を拒む為に鉄壁は熱を帯び始め瞳子の手を焼く。
それでも瞳子は手を離さなかった。
「やめてよ姉さん!そんなんじゃ壁を解除できない!ボクがハッキングしてなんとかするから落ち着いて!」
「クッ…!そうねライト…。ごめんなさい冷静さを欠いていたわ。」
冷静さを取り戻した瞳子は部屋内を散策してハッキング出来そうな場所を見つける。
だがその間も壁内ではドカバキと雷門中イレブンが何かと戦う音が鳴り響く。
「踏ん張れみんな!すぐに監督たちが助けてくれる!だから死ぬんじゃねーぞ!」
染岡は必死に外から仲間達を励まし彼らの無事を祈る。すると突如壁が先ほどと逆の手順で変形しだし鋼鉄の牢獄が消失する。
その中から現れたのは…
無傷の雷門イレブン達と残骸と化したロボット兵の姿だった。
「なあ豪炎寺、コレ1台いくらぐらいなんだろうな?」
「さあ?あまり詳しくはないが一台10億くらいじゃないか?」
「マジ!?じゃあ俺3台ぶっ壊したから30億の男じゃーん!自己肯定感バク上げだわ〜!」
あれだけの事があったにも関わらず、あっけらかんとした会話を交わす雷牙に外部にいた仲間達はドン引きしている。
「こ、これ全部お前らがやったのか…!?」
「3台は俺、残りは守たちがぶっ壊した。いやーい〜いウォーミングアップになったぜ〜!」
「む、無茶苦茶だ…。」
取り敢えず仲間達の無事を喜び改めて雷門イレブンはエイリア石を見つめる。
「とりまぶっ壊すか。そうすりゃジェネシスも弱体化するだろーし。」
「いや、壊すのには賛成だけど壊してもジェネシスは弱体化しないよ雷牙。だってジェネシス…厳密にはマスターランクチームはエイリア石を
ライトによるとマスターランクチームのメンバー達はエイリア石によって強化されたセカンド/ファーストランクチームを練習台にする事でエイリア石に頼る事なく人間の限界を超えた力を得た者の集まりとの事だ。
故にここでエイリア石を壊しても直接的な弱体化は望めないとの事だ。
「まっ、ドーピング手段を潰すだけでも意味はあるさ、そんじゃいっちょいきますか!“カイザーレ「その役目は俺達に任せてもらうか!雷坊!」この声は…!」
振り向いた先にいたのは大勢の武装警官を引き連れた鬼瓦刑事だった。
「鬼瓦刑事!?なんでここに!?」
「瞳子の姉ちゃんから連絡を受けてな。こっそりお前さん達の跡を付けていたんだ。既にこの基地は財前総理の許可を得て自衛隊が包囲している。何かあった時すぐお前さん達を助け出せるようにな。だから思う存分試合に集中してくれ。」
「ほー、流石は支持率歴代最高の総理さんだ。…でもまさか鬼瓦のおっさんエイリアが化けた偽モンじゃねーだろーなー?…雷雷軒の隠しメニューは?」
「特盛盛りチャーシュー麺渦巻きナルト付き。」
「よし本物だ。ここはおっさんたちに任せて先行こーぜみんな!」
目の前の鬼瓦刑事が本物だと確信した雷牙達は後始末を警察に任せ先を急ぐ。
♢♢♢
「な、なんてガキどもだ…!訓練用とはいえリミッターを解除した個体を無傷で破壊するとは…!」
コントロール室で一連の出来事を監視していた研崎は雷門イレブンの強さに驚きを隠せないでいた。
お分かりの通りロボット達を仕向けたのは彼の仕業だ。
「クッ…!だがこれで
研崎は狂気の笑みを浮かべながら高笑いをし決戦の場へと赴く。全ては彼が思い描く“DE計画”を完成させる為に…。
♢♢♢
永遠にも感じた暗い廊下を抜けた先にあったのはこれまで見たエイリアの基地とは似ても似つかない水色を主体とした近未来的なスタジアムだった。
そしてそこに1人。赤髪の少年が静かに立ち尽くしていた。
「待ちくたびれたよ雷門イレブン…そしてライト。」
「ヒロト…!」
少年は指を軽く鳴らすと彼の背後に10人の配下が出現する。
「さあ…、“サッカー”をやろうか?円堂君?」
「ああ…!俺たちが証明してやる…!お前たちの“サッカー”は間違ってるってことを…!」
雷門イレブンはジャージを脱ぎ捨て
これより後世まで語り継がれる
なんかアレだね。ここ最近ずっとオリジナルストーリーばっか書いてたから急に原作沿いになった途端に書きづらくなっちゃった。あと数話でエイリア編も終わるので最後までお付き合いください。
〜ボツになったネタ〜
雷牙「そういやエイリア学園の本拠地ってどんなとこなんだ?」
ライト「こう言うのも何だけど立地と設備はいいとこではあるよ。外から見える富士山も綺麗だし。」
雷牙「ほ〜ん…、だったら山梨か…。」
風丸「富士山だったら静岡じゃないのか?」
雷牙「ハッ?富士山と言ったら山梨だろーが。」
風丸「なんでそんな喧嘩腰なんだよ…。」
瞳子「…静岡よ。」
雷牙「んだよセンスねーなー。吉良星二郎は本当に日本人か?もしかして隕石と一緒に飛来したエイリアンに身体乗っ取られてんじゃねーか?」
風丸「お前のその富士山に対するこだわりは何なんだよ…。」
以上