イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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 最初に言っときます。これはもはやサッカーじゃない。


人ノ領域ヲ超エシ者

 前半開始から早いもので3分の1程度の時間が経過した現在。世界の命運をかけた戦場(フィールド)には2体の魔人が顕現している。

 

 1つは“覇王”の名を冠した金色の魔人。稲妻を思わせる荒々しい鎧に屈強な右腕に携えた巨大な斧はこの世のありとあらゆる物体を切り裂かせる印象を与える。

 

 それに相対するのは“創世神”の名を冠した純白の魔人。神を思わせる荘厳な肉体に地球人の美的センスから大きく外れた容姿は見る者に神々しさを与えると同時に禍々しささえも与えるまさに“異質”な存在だ。

 

「さあ始めようか。この戦場で最も強い者を決める神聖なる決闘を。」

 

「上等だッ!!!最強はこの俺だ!!!」

 

 雷牙は“覇王”を操り“創世神”を一刀両断にせんと大斧を振り翳す。

 

 だが…

 

「んなっ…!?」

 

 “覇王”の大斧は“創世神”に届く事はなかった。どれだけ力を入れてもこれ以上前に進まない。

 それもその筈だ。“覇王”の大斧は止められているのだから、“創世神”の指一本(・・・)に。

 

「悲しいね。確かに君は強い、人間としては最高峰の位置にいるだろう、…だが()()()()()()。君はまだ人の範疇を超えちゃいない、見せてあげるよ。人間の限界を超えた者にのみ辿り着ける境地を。」

 

 刹那グランの姿が消え雷牙と“覇王”を一撃で吹き飛ばす。雷門最強の稲魂雷牙を赤子の手を捻るかのようにあっさりと。

 

「ガハッ…!!!」

 

「雷牙ーーッ!!!」

 

「雷牙が…、一撃で…?」

 

「クッ…!お前達!必殺タクティクスだ!対グラン用に開発した()()()()()()()()を使うぞ!!」

 

 いち早く放心から抜け出した鬼道はこれ以上グランを先に行かせない為に以前から開発していたタクティクスを指示する。

 MF達がグランを囲むとどこからか鎖のオーラが出現し、グランを縛りつける。

 

「“ブロック・ザ・キーマン”!!!」

 

 新たな必殺タクティクス“ブロック・ザ・キーマン”は1人に対してしか使えないという弱点はあるがこれを使えば相手チームのエースを大幅に弱体化させる事ができる。まさに“エース封じ”だ。

 

「まさかと思うけど本当にこの程度のタクティクスで俺を封じれると思っているのかい?」

 

 だが鬼道の渾身の“エース封じ”はグランには通用しなかった。グランを縛る鎖は人間を超えた者相手にはあまりに脆くそして貧弱すぎた。

 

「「「グァァァァァァァ!!!」」」

 

 “ブロック・ザ・キーマン”から解放されたグランは手始めに自身に立ち塞がったMF達を蹂躙するとまるでサーフボードに乗っているかのようなスライド移動を始める。

 これもまた化身が齎す力なのだろうか。

 

「ウォォォォォォォ!!!“魔神 グレイト”!!!」

 

 リベロである円堂はDFでありながらもブロック技を持っていない。故に純粋なパワーではグランには絶対に勝つ事ができない。

 だが円堂に“諦める”という選択肢はない。せめてもの抵抗として化身を発動しグランに立ち向かう。

 

「おいおい円堂君。グレイト(それ)はキーパー用の化身だろ?フィールドじゃあ本来の力を発揮できないだろ?」

 

「そんなのはやってみなくちゃ分かんないだろ!俺たちはいつも常識(ルール)を超えてきた!今回だって超えてやる!」

 

 “魔神”は黄金の拳で“創世神”に殴りかかる。

 

 だが“魔神”の拳は宙で止められる。今度は指すらも使わずに。

 

「なっ…!」

 

「君は勘違いしているよ。これは常識(ルール)なんかじゃない、常識の外側にある“前提条件”だ。“人”は“人外”には勝てないっていうね。」

 

 “創世神”は人差し指から一筋の光弾を放つと“魔神”の屈強な肉体を貫き円堂を吹き飛ばす。

 

「円堂君!くっそぉぉぉ!!!“雷星拳牙 レグルス”!!!」

 

 円堂すらもグランを止められない事実にライトは憤慨しながら化身を発動し“レグルス”を顕現させる。

 

「来い!ヒロト!!!」

 

「フッ、ビビリな癖によく言うよ。今にも逃げ出したい癖に。」

 

「ボクはこのゴールを立向居君に任されたんだ!だから絶対に逃げるわけにはいかない!!!」

 

 ライトの啖呵を聞いたグランは彼を小馬鹿にするかのように鼻で笑うと必殺シュートの体制に移る。

 

 グランは“創世神”の胸元までボール上げると“創世神”はボールに神秘的なエネルギーを注入する。その姿はボールを中心とした太陽系そのものだった。

 

「“ユニバース・クリエーション”。」

 

 “流星”すらも超えた“小宇宙”が天空(そら)から落ちる。

 

「雷牙…お願い!ボクに力を貸して!」

 

 “レグルス”は天に向かって雄叫びを轟かせるとライトは右脚を天高く上げ力強く踏み込む、本体の動き連動した“レグルス”は惑星すらも砕く黄金の拳を小宇宙に衝突させる。

 

「“スターダストブレイカァァァァァァ”!!!」

 

 “惑星すらも砕く黄金の拳(スターダストブレイカー)”VS“堕ちる小宇宙(ユニバース・クリエーション)”。

 両者の戦いはもはやサッカーの枠組みを超えた一種の神話に1シーンとしか言いようがない。

 

「グギギギ…!負ける…もんか…!」

 

 しかしだ。

 

 所詮は惑星しか砕けない拳。その程度の力しかない拳が無数の惑星の集合体である小宇宙を砕けようか?

 

 答えは当然…

 

「グワァァァァァ!!!」

 

ピッピー!

 

 『否』だ。

 

『強い!強い!強いすぎるぅぅぅぅ!!!化身を解禁したグランを雷門イレブンは誰1人として止める事が出来ません!!!もう前半も残り半分であるにも関わらずあっという間に逆転されたぁぁぁぁぁ!!!』

 

「みんな…!」

 

「なんて強さなのザ・ジェネシス…!今までどのチームとは比較にならないわ…!」

 

「円堂君!稲魂君!豪炎寺君!鬼道君!お願い立って!世界の命運はあなた達が握っているのよー!!!」

 

「分かってらぁ…!」

 

「俺達が負ければ…この世界は終わりなんだ…!」

 

 木野の喝により雷牙達はなんとか立ち上がる。だが既に身体はボロボロでありこのままでは試合終了まで体力が持つか怪しい。

 

「おい豪炎寺…!オメー、()()に入れるか…?」

 

「確率は5割弱ってところだな…。雷牙は…?」

 

「……頑張って入る。」

 

ピーッ!

 

 試合開始と同時に雷牙と豪炎寺は大量の気を放出し始める。一見すると化身を発動する動作と同じだが雷牙には大量の黄金とオーラと蒼の稲妻が、豪炎寺には紅蓮の炎が天に向かって立ち昇る。

 

「“獅風迅雷…!…・超限界突破(オーバー・オーバー・リミテッド)”…!!!」

 

「“バーニングフェーズ3”!!!」

 

 互いに強化形態を発動するも彼らから放たれる威圧感とスゴ味は通常の“獅風迅雷”と“バーニングフェーズ”とは比較にならない。

 

 これこそが雷牙と豪炎寺の切り札にして最高到達点“ゾーン”だ。

 

「凄いな…。まだ僕でさえ自力では入れないという2人はある程度自由に“ゾーン”に入れるのか…!」

 

 本来“ゾーン”とは人間が追い詰められた時のみに到達する事の出来る領域である。

 アフロディも“ゾーン”に入った経験はあるが神童と謳われ才能溢れる彼を持ってしてもここまで自在に入る事は不可能だ。

 それだけで雷牙と豪炎寺の異常性がよくわかる。

 

 豪炎寺は更に気を高め背後に“炎魔”を顕現させると“炎魔”の肉体に紅蓮の炎がまとわりつき荘厳なる鎧を身に包む。

 

「“炎魔帝 ガザード・レクイエム”!!!」

 

 ただの“炎魔”から帝の名を冠した“炎魔帝”へと強化を遂げたガザード。沖縄にて暴走したデザームすらも一撃で沈めてみせたそのパワーは折り紙つきだ。

 

「…いいパワーだね。もしかしたらジェネシスのパワーを超えているかもね。」

 

 “ゾーン”を発動した雷牙と豪炎寺を前にしてもグランの余裕は消えない。その表情は明らかに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 切り札を隠した人間の顔だった。

 

「言っただろ?人の限界を超えた力を見せてやるって。」

 

 グランは再びを化身を発動すると雷牙達の前に現れたのは“創世神”とは対照的に漆黒に染まった禍々しさの権化とも言える“()()()”だった。

 

「“凱亜の破壊神 アポカリプス”。」

 

 フィールドに降臨したのはまさかの2体目の化身。

 『化身は1人につき1体まで。』

 それが今まで雷門イレブンにあった常識(ルール)だった。

 だがグランは超えて見せたのだ。その常識(ルール)を。

 

「馬鹿な…!2体目の化身だと…!」

 

「…研崎博士が言ってたよ。“化身”っていうのは持ち主の心が反映された存在なんだってね。それが本当なら俺には2体の化身がいて当然だ、だって俺には“ヒロト”と“タツヤ”の2つの“心”があるんだから。」

 

「チッ…!ビビんじゃねぇ豪炎寺!別に2体同時に化身を出したわけじゃねえんだ!俺たちが有利なのは変わりねぇ!ズババーンと突破すんぞ!!!」

 

 2体目の化身の出現という異常すぎる事態にも臆せずに雷牙は稲妻を立ち昇せながら“破壊神”へ突撃し、豪炎寺も彼に続き炎を浴びながら“破壊神”の撃破を試みる。

 

「「ウォォォォォォォ!!!」」

 

 雷牙と豪炎寺の魂の叫びがグラウンドに鳴り響く中。グランは静かに呟く。

 

「創造の前に破壊あり。」

 

 そう言い終えたグランは紫の気を纏うと“覇王”の稲妻も“炎魔帝”の炎も灰となって消滅してしまった。

 

「なっ…!」

 

「俺達の力が…通用しない…?」

 

 自分達の“最強”を持ってしてもグランには通用しない。

 雷牙達は灰が舞い散る中でグランとの隔絶した力の差を痛感していた。

 

「稲魂君!豪炎寺君!」

 

「やるしかないぞアフロディ!なんとしても俺達でグランを止めるんだ!!!」

 

 風丸とアフロディは温存していた化身を発動しフィールドに“魔帝”と“絶対神”が顕現する。

 

「“魔帝 ダークエンペラー”!!!」

 

「“絶対神 デウス・エクス・マキナ”!」

 

 “魔帝”は暴風の檻を発生させてグランを閉じ込め、その隙に“絶対神”は“破壊神”を破壊出来るだけのエネルギーをチャージする。

 

「風丸君!あと数秒耐えてくれ!」

 

「分かった!稼いでやるさ…!命懸けでな…!」

 

 風丸はアフロディの要求に応える為に風丸は更に風を強め時間を稼ぐ。

 

「流石のお前でもこの量の暴風を一度に破壊出来ない筈だ!」

 

「…へぇ?だったら試してみるかい?」

 

 風丸の挑発にあえて乗ったグランは不敵な笑みを浮かべながら更に大量の気を放出する。

 そして彼の身体を起点にドーム状の気が放出されると暴風の監獄は崩壊する。

 

「くっ…!時間は稼いだぞーー!アフロディーー!!!」

 

「感謝するよ風丸君!!いけ!“マキナ”!!!」

 

 “絶対神”の身体中に備え付けられたパイプオルガンを模した砲台による一斉射撃が“破壊神”に全弾命中する。

 1発1発が並大抵の化身シュートクラスの威力を誇っているのだ、全弾命中すれば流石のグランもただでは済まない。

 

「確かに凄い威力だ。全弾()()()()()()。」

 

「なんだって…!」

 

 爆風の中から現れたのは無傷…とはいかないまでも予想よりも遥かに軽症の状態のグランだった。

 

「ふぅ…、流石に今のは焦ったよ。“アポカリプス”でも全ての砲弾を破壊しきれなかったからね。でも…勝ったのは俺だ。」

 

「ハハハ…、これは参ったね…。」

 

 グランのあまりの規格外すぎる強さに流石のアフロディは乾いた笑いをするしかなくなる。

 

「さて…、これでエンドマークだ。」

 

 グランはボールを天高く上空に上げると“破壊神”がボールに強力なオーラを注入する。

 すると“創世神”の時と同様にボールを起点とした太陽系が誕生する。

 

「“ユニバース・アポカリプスディ”!!!」

 

 グランがシュートを叩き込んだ瞬間、たちまち太陽系が崩壊しまるでブラックホールを思わせる黒と白の球体が凄まじい引力と共にゴールへ向かう。

 

「避けろ!ライトォォォォォォ!!!」

 

 遥か前方からでも肌で感じる化身シュートの威力に雷牙はライトの身を案じて逃げるように促す。

 

 それでもライトには“逃亡”の選択肢はない。

 

 自身に夢と使命を託してくれた仲間の為にも。

 

 そして愛する弟の未来の為にも。

 

「“スターダスト…!ブレイカァァァァァァ!!!”」

 

 ライトは臆せずに未来を守る希望の拳でブラックホールに立ち向かう。

 

「ウォォォォォォォ!!!」

 

 だが“創世神”と対をなす“破壊神”の一撃は“ユニバース・クリエーション”と同等…いやパワーだけならそれ以上だ。

 これ以上点をやれないという思いからか辛うじて耐えれてはいるがゴールを奪われるのは時間の問題である。

 

「くそ…!このままじゃライトが…!でもどうすれば…!」

 

 雷牙は兄を助けたいが今から行っても間に合わない。だからといって兄を見捨てる事はできない。

 

「…ライトくんを助けたいかい?稲魂くん。」

 

「ああ!…って吹雪!?なんでオメーがここにいんだよ!?」

 

「質問は後だよ、君はライト君を助けたいかい?」

 

「…助けてぇ…、ライトを助けてぇ!アイツを助けられるんなら俺に出来る事ならなんでもする!」

 

 雷牙の覚悟を聞いた吹雪は自身が考えたとっておきの作戦を耳打ちし策を授ける。

 だがそれを聞いた雷牙はものすごく嫌そうな顔をしその作戦を拒否する。

 

「嫌だ!ぜっ〜〜たいに嫌だ!そもそもソレに何の意味があるんだよ!?」

 

「稲魂君。君が嫌がる気持ちも分かるよ、熱也も昔はそうだったからね。でもその一言で救われるもんなのさ、兄っていう生き物はね。」

 

「ムッスー」

 

「稲魂君!僕達が負ければ日本は…いや世界は終わりなんだよ!」

 

「ぐぬっ……!」

 

「今はそんなつまらないプライドに拘ってる場合じゃないんだ!君はいいのか!?罪もない人達がジェネシスに殺されても!?」

 

「ぐぬぬぬっ…!!」

 

「僕達の未来は君の決断にかかっているんだ!」

 

「〜〜!!!あーもう!!!分かった!こうなりゃやけだ!!!やってやらぁーー!!!」

 

 吹雪の説得に遂に折れた雷牙は覚悟を決め、息を大きく吸うと確実に遥か先にいるライトに聞こえるように腹の底から声を出す。

 

「聞けェェェェェ!!!ライトォォォォォォ!!!」

 

「! 雷牙…?」

 

「俺は信じているぞォォォォォォ!!!オマエがファザコン赤髪のシュートを止めてくれるってェェェェェ!!!」

 

「…理解に苦しむね。言葉だけで状況が変わるのなら世界を変えるのに苦労はしないよ。」

 

「だから諦めんなァァァァァァ!!!()()。」

 

 刹那ライトに稲妻走る。

 

 『お兄』

 

 それは弟が兄に対して用いる二人称。

 

 それを用いるという事は最愛の弟が自分を兄として認め、心の底から信頼してくれている証拠。

 

 なんという心地よい響きなのだろう。

 

 この言葉を耳にしただけで身体の底から力がとめどなく溢れ出てくるようだ。

 

 それもそうだろう。だって稲魂雷斗は…

 

「キミの最高のお兄ちゃんなんだから…!」

 

「…何?」

 

「ウォォォォォォォ!!!」

 

 グランの目に映っているのはありえない光景だった。

 先ほどまで今にも潰れそうだったライトの拳が徐々にだが化身シュートを押し返し始めたのだ。

 

「ば、馬鹿な…!無理に決まってる…!」

 

 自身の限界を超えたライトは再び力強く技の名を叫ぶ。

 

「“スターダストブレイカァァァァァ”!!!」

 

 未来を守る正義の拳は小宇宙の大崩壊(ユニバース・アポカリプスディ)による爆発の余波を逆に打ち砕きボールを遥か上空へと吹き飛ばす。

 

「何だと…!一体ライトのどこにこんな力が…!」

 

「…ヒロト。キミには分からないだろうね、弟がボクのことを応援してくれるならその度にボクは自分の限界を超えてみせる…!だってボクは雷牙のお兄ちゃんなんだからね!」

 

「意味の分からない事を…!」

 

「理解できないならそれでもいいさ。でも…戻らなくていいのかい?」

 

「!」

 

 グランは悟る。ライトが理解出来ない理論を語り出したのは単に自身の説得の為ではなく()()()()であった事に。

 

「くそ!」

 

「頼むよ!豪炎寺君!!!」

 

 ライトによって吹き飛ばされたボールは数mの上空でフリーになったが、当然それを見逃すジェネシスではなく圧倒的な脚のバネを駆使して奪取を試みる。

 だが時既に遅く、ボールの軌道を読み先に飛翔していたアフロディによって豪炎寺にボールが回る。

 

「行くぞ!吹雪!」

 

「OK!ズババーンと決めようか!」

 

 豪炎寺は灼熱の炎を、吹雪は絶対零度の氷を纏いながら交差しツインシュートを放つ。

 

「「“クロスファイア”!!!」」

 

 “炎”と“氷”。本来互い相反する存在である2つの物質は奇妙な事にどちらの要素を損なう事なく調和し合い、“炎”と“氷”による1+1の足し算は2の解を超え今では100万へと達していた。

 

 1+1の解が100万へと至るシュート…。もしもだ。これに更に+1が加わってしまったら一体どんな解へ至るのだろうか?

 

「もう1つオマケに…!」

 

 好奇心という名の毒に酔わされた金色の“怪物”はその答えを確かめるべく黄金の右脚に膨大な量の稲妻を纏わせバイシクルシュートを加える。

 

「“イナビカリブレイカァァァァァ”!!!」

 

 “炎”と“氷”の調和に新たに“雷”が加わった事で100万の解は更に限界を超え遂には♾️の領域へと至る。

 

「「「“ザ・トリニティ”!!!」」」

 

 “(豪炎寺)”と“(吹雪)”に“稲妻(雷牙)”が加わった事で三位一体となったシュートは赤、青、黄色の螺旋を描きながらゴールへ向かう。

 

「この程度のシュートがどうしたァァァァ!!!」

 

 ウルビダはシュートブロックに入るが必死の抵抗も虚しく紅蓮の炎にその身体を燃やし尽くされてしまう。彼女に続き次々とDF達もシュートブロックに入るがある者は絶対零度の氷にその身体凍らせられ、またまたある者は黄金の稲妻により感電させられてしまう。

 終にはザ・ジェネシスは三色の螺旋の威力を一切落とす事は叶わずにゴールへ到達してしまう。

 

「“真 時空の壁”!」

 

 ネロは右手を翳し“ザ・トリニティ”を止めようと試みるがまたしても時空の牢獄は一瞬にして崩壊しネロを打ち破る。

 

ピッー!

 

「しゃおらぁぁぁぁ!!!」

 

『ゴーール!!!豪炎寺、吹雪、稲魂の新必殺技“ザ・トリニティ”がジェネシスからゴールを奪い遂に2点目獲得ゥゥゥゥ!!!これで点差は1点差まで縮まりましたッ!!!逆転まで後一歩ですッ!!!』

 

 まだ点差は開いているものの誰か1人でも失敗すれば即終了のまさにギリギリの綱渡りの末に得た点を雷門イレブン達は喜びあう。

 

 それに対してジェネシスは…

 

「…気にする事はないさウルビダ。まだ俺達が勝ってる、すぐに俺が取り返す。」

 

 グランは“クロスファイア”を止めようとしたウルビダの健闘を讃えるが彼女は逆にグランを睨みつけた。

 

「…黙れ!私は貴様に情けをかけられる事がこの世で一番嫌いなのだ…!」

 

 ウルビダはグランの言葉を拒絶すると彼から逃げるようにポジションに戻って行く。

 …いや彼女だけではない。他のジェネシスのメンバーもグランに対してまるで“人ではない何か”を見るかのように一歩引いた視線と態度を取っている。

 

「…何なんだろうな。この気持ちは…。」

 

 そう呟くグランの表情はどこか暗かった。

 

♢♢♢

ピーッ!

 

 試合再開早々グランは“創世神”を顕現させ点を取り返しに行く。

 “破壊神”よりかは幾分突破力に劣るとはいえそれでも“創世神”の力は圧倒的だ。

 

 ならば雷門に残された選択肢は1つしかない。

 

「豪炎寺っ!力貸してくれ!合体だよ!」

 

「またあの呪文を言うのか…。」

 

 げんなりする豪炎寺をなんとか説得し、雷牙と豪炎寺は並列に並び心を1つにする魔法の呪文を唱え始める。

 

「天丼っ!」

 

「カツ丼!」

 

「「親子丼っ!!!」」

 

 恥ずかしげもなく3種類の丼の名を高らかに叫ぶ事で“覇王(レグルス)”と“炎魔(ガザード)”が混ざり合い新たに“神槍(ロンギヌス)”が誕生した。

 

「よっしゃーー!!!」

 

 身体から溢れるそのパワーから合体が成功した事を確信した雷牙と豪炎寺はその名を呼ぶ。

 

「「“神滅の凶戦士 ロンギヌス”!!!」」

 

 “レグルス”すらも破った雷牙と豪炎寺の絆の結晶である“ロンギヌス”は白銀の神槍を“創世神”に向け狙いを定める。

 

「へぇ、それがライトを破った化身か。映像で見るのと実際に見るのとじゃ迫力が段違いだな。」

 

 レグルス戦の際は“ロンギヌス”から放たれた威圧感によってライト以外のメンバーは眉一つ動かせなかったにもかかわらずグランは余裕を崩さない。

 

「強がりはやめたらどーだ?合体化身(コイツ)はただ2つの化身の強さを足しただけじゃねぇ!大幅パワーアップだ!流石のオメーも勝てっこねぇぞ!」

 

「…確かにそうだね。その化身のパワーは“創世神”を超えている…、このままじゃ俺には勝ち目はない。…そう()()()()ならね。」

 

 何か含みのある言い方をしたグランは“創世神”を顕現させたまま更に気を高めるともう1体の“神”がフィールドに顕現した。

 

「“凱亜の破壊神 アポカリプス”。」

 

 “創世神”と“破壊神”。2つの相反する事象を操る神が1人の少年を媒介に顕現し“神殺し(ロンギヌス)”を見下す。

 

「に、2種類の化身を同時併用だと…!?だがそんな事をすればグランの体力は持たない筈だ!!!」

 

 鬼道の言う通り化身は強力な分体力の消耗が非常に激しい。それこそ試合中に数回使えば体力の底をつく程に。

 事実約25年後の未来では消耗の大きさが問題視されて化身使いは大きく数を減らす事になる。

 そんな化身を2種類同時に併用すれば如何に人の限界を超えた存在であるグランでも試合終了まで体力が持つ筈がない。これまで多用している状態なら尚更だ。

 

 自殺行為…。到底エイリア最強チームのキャプテンがする事とは思えない行動に誰もが意図を理解出来ずにいた。

 

 …だが雷門イレブンはその答えをすぐに知る事となる。

 

化身武装(ソウルウェポン)…起動。」

 

 グランが謎の単語を発すると顕現していた“破壊神”はオーラに戻り2つの塊に分裂し“創世神”の両手に収まる。

 オーラはみるみるうちにその形を変え“破壊神”の意匠を残した禍々しい双剣へ変貌した。

 

「ソウルウェポンコンプリート。武装名“アポカリプス・00(ダブルゼロ)”。」

 

「け、化身が…!」

『武器になっただとォォォォ!?』

 

 “破壊神”の名を冠した双剣は“創世神”に更なる力を与える。ただでさえ強かった“創世神”が更なる力を得たその姿はまさに『鬼に金棒』。その諺はグランの為にあるのだろう。

 

「どうだい?中々いい技術(ワザ)だろう?“ソウルウェポン”っていうんだ。」

 

 自慢げに語るグランに雷牙と豪炎寺はまたしても力の差を感じ取っていたが彼らにも“逃亡”の選択肢はない。

 雷牙達は“ロンギヌス”を操り“神殺し”の異名を持つ神槍を“創世神”に向かって突き刺そうとする。

 

 だが…

 

「破壊。」

 

「「グワァァァァァ!?」」

 

 “創世神”は双剣で巧みに操り剣を振るうと、“神殺し”の肉体は一瞬にして切り刻まれ神によって逆に殺されてしまう事となる。

 

「“ロンギヌス”ですら勝てないのかよ…!」

 

「次元が違いすぎる…!」

 

 現時点での雷門最高戦力を持ってしてもグランに敵わない事実に雷門は呆然としてしまう。それが致命的だった。

 

「よそ見をしている暇はあるのかな?」

 

「しまった…!」

 

 グランは化身を操り破壊の双剣に禍々しい紫のオーラを込めると双剣は巨大な2本の大剣と化す。

 

「“アポカリプス・レイ”。」

 

 “創世神”は2本の大剣を振り下ろしその名の通りの破滅の光がライトを襲う。

 

「“スターダス…えっ?」

 

 破滅の光の前には“レグルス”は拳を振る暇も与えずに無惨にも一刀両断される。

 その威力は凄まじく数々のシュートを耐えてきたゴールネットすらも突き破りスタジアム奥の壁に巨大なクレーターを空けた。

 

ピッー!

 

 雷牙達によってようやく得た点も一瞬にして突き放されたと同時に審判のホイッスルが鳴り響く。

 最後の最後に圧倒的な力を見せられ前半戦が終了したのだった。




 …あかん想像以上にグランが強すぎる…。あまりに強すぎてジェネシスのメンバーが空気になっとる…!そもそもこれ雷門勝てんのか!?

〜オリ技紹介〜

【必殺技】
・獅風迅雷・超限界突破(オーバー・オーバー・リミテッド)
 雷牙の“ゾーン”の名称。本来名前をつける予定はなかったがゾーンだけでは締まりが悪かったため急遽追加。名前に“オーバー”が2回付いているがミスではなく意図的。

・ザ・トリニティ
 雷牙、豪炎寺、吹雪が使う連携技。豪炎寺と吹雪が空中で“クロスファイア”を放った後に雷牙が変則“イナビカリブレイカー”を叩き込む事で炎、氷、雷の3種類のエレメントを纏わせる。イメージとしては“レボリューション”が近い。

【化身】
・凱亜の創世神 ジェネシス
 グランが使う化身の1体。アフロディが使う“絶対神”とはまた違った神々しさと地球外生命体のような異質さを兼ね備えた容姿を持つ化身。
化身技:ユニバース・クリエーション

・凱亜の破壊神 アポカリプス
 人間の限界を超えた存在であるグランだけが可能な2体目の化身。化身自体が特殊なオーラを発しており、それを応用する事で擬似的なドリブル技を使う事が出来る。
化身技:ユニバース・アポカリプスディ

・ソウルウェポン
 本作オリジナルの化身形態。もう1つの化身を武器にする事で化身を強化させる技術。
 流石に強化倍率は合体には敵わないかつ2種類の化身を持つ者しか使えないという厳しい条件があるもののその分汎用性が高く応用も効きやすく体力の消耗も少ないというメリットがある。
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