「認め…られる…か…!我々が…敗北する…など…!」
試合終了直後に目を覚ましたウルビダは目に映ったスコアボードの得点と雷門の歓喜の声により
だが理解はしても現実を受け入れる事が出来なかった彼女はボロボロの身体をなんとか動かし雷門イレブンを抹殺せんと歩き出す。
「…もうやめて
ライトは立向居の肩を借りてなんとかウルビダの前に立ち、悲しそうな顔で彼女に現実を突きつける。
「黙れ…!裏切り者が…!我ら…ザ・ジェネシスは…エイリア最強の戦士…!そんな我ら…が…負ける事など…あり得ない…!」
「玲名ちゃん…。」
ライトの言葉すらも“裏切り者”の一言で一喝し現実を見ようとしないウルビダ。
ここまで彼女を突き動かすのは敬愛する父への深い愛情なのだろう。
…だが遂に彼女も現実を受け入れなければならない時が来てしまった。
「もう止まってくれ玲名…。」
「お父…様…?」
彼女を止めたのはこの騒動の元凶である吉良星二郎だった。だがその姿は先ほど見せた邪悪に満ちた“エイリア皇帝”としての面影は見る影もなく、エイリア学園の生徒達がよく知っていた“吉良星二郎”の顔だった。
星二郎は涙を流しながらウルビダにこれ以上傷つかないでくれと懇願する。
「何故止めるのですお父様…!我々の目的をお忘れですか…!世界を侵略し貴方の“大切な人”を奪った世界に復讐を遂げる…私達はそれだけの為に今まで…生きてきたのですよ…!」
「もういい…もういいんだ…!認める…私が間違っていたんだ…!瞳子とライトに気付かされた…“ハイソルジャー計画”は大きな間違いだったと…。」
雷門とジェネシスの決戦を通してようやく自分を取り戻した星二郎は躊躇なく自身の復讐の被害者となってしまったウルビダに土下座して謝罪する。
「本当にすまなかった玲名…!これで私の罪が消えるとは思わない…!でも…もう止まってくれ…!これ以上お前が傷つく姿は見たくない…!」
星二郎はエイリア皇帝ではなく彼女の父親として懇願する。
それが彼女の存在意義を全否定する行為であると知らずに
「ふざけるな…ッ!!!これまで貴方を愛し…!尽くしてきた…私の存在意義を…!全て否定するのかァァァァァァァァッ!!?」
地雷を踏まれたウルビダは激昂し近くにあったボールに怒りによって増幅されたエネルギー全てを注入し星二郎に目掛けシュートを放つ。
大幅に弱体化したウルビダのシュートでもレーゼとは比較にならない威力を持つ。
そんなシュートをただの人間である星二郎がまともに喰らえばどうなるか?恐らく良くて意識不明の重体、最悪の場合だと死亡する可能性もある。
だが星二郎は逃げようとはしない。彼は自身の運命を受け入れているのだ、彼女のシュートを受ける事がせめてもの自身の償いだと信じて。
ドグワッ!
まるで人の皮膚に鉄の塊が激突したかのような鈍い音がスタジアム内に鳴り響く。
だが星二郎は傷一つ負わずに唖然としていた。
当然だ。彼はシュートに当たったわけではないのだから。だがシュートを避けたわけでもない。
では何故星二郎は無傷なのか?それは…
「カハッ…!」
「何故だ…!?何故お前が私を庇う…!?…
星二郎をウルビダの凶弾から護ったのは気絶していた筈のグラン…いやヒロトだった。
彼女のシュートを腹部から受けたヒロトはあまりの衝撃により内臓が損傷したのか吐血し膝から崩れ落ちる。
「ヒロトーーッ!!!」
「愚か者め…!グラン…!この人は…そいつは…!私達の存在を否定したのだぞ…!我々はそいつの手となり足となり命令通りに戦ったのに…!」
ウルビダは涙を流しながらグランに怒鳴り散らす。その涙は自分を否定した父への怒りかそれとも愛する父を殺しかけた罪悪感かは彼女にも分からない。
「私達は全てを賭けて戦ってきた…!その為に多くの物を捨ててきた…!友も…時間も…人間である事さえも…!それなのに…!!!それが今更間違っていただと…!?許せるか…許してたまるかッ…!!!」
「それでも…この人は…俺の…父さんなん…だ。」
「ヒロト…!」
「知ってさ…俺に付けてくれた“ヒロト”って名前…は…死んだ父さんの…本当の息子の名前だって…。でも…嬉しかった…んだ…たとえ…俺が本物の息子の代わりでも…俺に注いで…くれた愛情は…本物だっ…たから…。」
そう言い終わるとヒロトは力付き気を失ってしまう。星二郎は絶叫しボールをウルビダの方に投げ両手を広げ無抵抗の意志を示しながら彼女に促す。
「さあ私を撃て…!これでお前の気が済むならいくらでもこの薄汚れた命を差し出そう…!だからもう…止まってくれ…!玲名…。」
「グッ…!うわぁぁぁぁぁッ!!!」
半狂乱になったウルビダは右脚を大きく振りかぶりシュートの体制に入った。
全ては自分達を否定し裏切った目の前の男を殺す為に。彼女が持つ全ての“殺意”をその右脚に込める。
だが彼女の右脚からシュートが放たれる事はなかった。
「出来ない…っ!出来る筈がない…!私はただ…昔の優しいお父様と一緒にいたかっただけなんだ…!」
ウルビダは地面に崩れ落ち大粒の涙を流しずっと心の奥底に秘めていた本音を吐露する。
「私は…本当に愚かだ…。こんなにも慕ってくれる子供達がいるというのに彼らの愛情を利用し兵器にしてしまうとは…。」
改めて自身が犯した罪の重さを自覚した星二郎は天を仰ぎ涙を流す。
「聞かせてもらえませんかね吉良さん。何故“ハイソルジャー計画”なんて企てたのか。どこで道を誤ったのか。この事件に巻き込まれた子供達の為にも。」
「鬼瓦のおっさん!」
「遅くなっちまってすまねぇな。エイリア石の破壊と職員の制圧に時間が掛かっちまった。」
「分かりました…。全てを話しましょう…。」
鬼瓦に促された自身がエイリア皇帝という名の復讐鬼になるまでの道のりを語り始める。
♢♢♢♢♢
♢♢♢♢
♢♢♢
♢♢
♢
吉良星二郎には瞳子の他にもう1人息子がいた。
息子の名前は吉良ヒロト。
素直で優しくサッカーが大好きな少年だった。
財閥の会長として日々多忙な星二郎は息子との時間を満足に作れないでいたが息子は父に理解を示し慕い続けてくれた。
星二郎は少しでも息子の愛情に応える為に息子のプロサッカー選手になるという夢を応援し続けた。
星二郎は幸せだった。心優しい息子と娘に恵まれ毎日が充実していた。
だがその幸せは突如奪われた。
吉良ヒロトは中学を卒業すると同時に以前からの願いであったサッカー留学で海外に渡った。
星二郎は簡単には息子に会えない事を寂しく思いながらも快く息子を送り出した。
それが最後の別れになるとも知らずに。
数ヶ月後。星二郎の耳に届いたのは息子が現地の少年犯罪に巻き込まれ死亡したとの知らせだった。
だが星二郎に起きた悲劇はこれだけではなかった。
息子が命を奪った少年犯罪に現地の政府要人の子供が関わっていた為、事件が揉み消されたのだ。
少年犯罪は交通事故として処理され政府要人の息子は無罪となってしまった。
星二郎は何度も警察に掛け合ったが権力に逆らえない警察機関は彼の要請を無視。
星二郎は絶望した。
罪を犯した人間を裁く事が出来ない現実に。
最愛の息子を亡くした喪失感に。
星二郎は絶望のあまり立ち直れず自宅に篭りきりになる生活が続いた。
そんな父を見兼ねた瞳子は少しでも父の喪失感を埋めさせようと孤児院の設立を提案した。
それによって出来たのがエイリア学園の前身となった孤児院・“お日さま園”だった。
身寄りを無くした孤児達は自分の事を父と呼び慕ってくれいつしか星二郎の心の傷は癒ていった。
特に“タツヤ”という少年は亡くなった吉良ヒロトと瓜二つであり星二郎は無意識のうちに彼に深い愛情を注ぐようになっていった。
…そんなある日星二郎の前に1人の男が現れた。
『ご子息の命を奪った世界に復讐したくはありませんか?』
その人物こそが自身を狂るわせた元凶・研崎だった。
研崎は星二郎を彼が発見した新種の鉱石…後に“エイリア石”と呼ばれる隕石の元へ連れて行き、自身が発見したその力を説いた。
星二郎はみるみるうちにその力に魅了されてしまい遂に復讐鬼へと変貌した。
全ては息子の命を奪った世界に復讐する為に。
そして息子が大好きだった“サッカー”を
♢♢♢♢♢
♢♢♢♢
♢♢♢
♢♢
♢
「…今思えば私もエイリア石の影響を受けていたのでしょうね…。ですが私は自身の罪から逃げるつもりはありません…。鬼瓦刑事、私を逮捕してください。」
「…言われなくてもそうするつもりですよ。」
過去を語り終わった星二郎は罪を償う為に鬼瓦に手錠を掛けてもらうように両手を差し出す。
その時…
ドカーンッ!!!
「な、なんだぁ!?」
突如スタジアム内に爆発音が響き渡る。その大きさは警察がエイリア石の破壊の際に使った爆弾とは比較にならない…まるでこの基地自体が爆発しているかのような爆音だった。
「まさか自爆スイッチ…!?でも誰が…!?」
「くそ…!坊主共脱出だ!」
鬼瓦は雷門イレブンとジェネシスを連れて逃げようとするが内22人は激闘による疲労でまともに動けない。
「俺たちここで死ぬっスか〜…!?」
「そんなの嫌でやんす〜!!!」
「泣き言を言っている暇があるなら出口に向かって走れ!!!」
染岡が雷牙を背負いながら出口に向かって走るが、その矢先に瓦礫が降り注ぎ出口が塞がれてしまった。
「フッ…親父、お袋。もうそろそろ俺ちゃんもアンタらに
「こんな時にロクでもねぇ事言ってんじゃねぇ稲魂!なんとかして脱出…ん?」
瓦礫で塞がれた出口の奥から爆発音とはまた違う音が聞こえる。その音はまるで車両のような何かが猛スピードでここまで突進して来ているような音だった。
その音の主は…
ガッシャーン!!!
「助けに来たぞいお前さん達!!!」
『古株さんっ!!!?』
なんと基地の外で待機していた古株がイナズマキャラバンを運転してここまで雷門イレブン達を助けに来たのだ。
「いくら通路が広いっつっても無茶苦茶すんなぁ〜…、
「ホッホッホ!こんな無茶が出来なきゃ数十年用務員は務められんよ!ホラ早く乗るんじゃ!!!」
仲間達は急いで雷門イレブンとジェネシスをキャラバンに乗せ間一髪の所でエイリア学園から脱出する。
数分後、ギリギリの所でキャラバンが外に出たと同時にエイリア学園は爆発に包まれ崩壊した。
「…ここで一句。“閉幕や エイリアどもが 夢の跡”。」
「…その心は?」
「俺たちの勝ち。」
「ヘヘッ…!そうだな…!」
エイリア学園の崩壊によってようやく全てが終わり世界の平和と自分達のサッカーを取り戻せた実感が湧いた雷牙と円堂は互いに拳を合わせ喜びを分かち合う。
こうして長き渡って繰り広げられた戦争は終わりを告げたのだ。
♢♢♢
「さあ行きましょう。」
鬼瓦はこの事件の真犯人である星二郎を警察車両に乗せようとする。だが星二郎を静止する声が彼の耳に届く。
「父さん…!」
「瞳子…!」
「…待ってる。私…待ってるから…!父さんが帰ってくるまでお日さま園の皆と一緒に…ずっと待ってるから…!」
罪人である自分をまだ父と呼んでくれる実の娘の言葉に星二郎は涙を流しながら小さく頷き警察車両に乗る。
それと同時にザ・ジェネシスのメンバーも救護車両に乗せられ近くの病院へと連れて行かれる。
日本を騒がせたエイリア騒動。だが不幸中の幸いというべきか奇跡的に死人は1人も出ていない。
情状酌量の余地があるとして未成年の彼らは警察の事情聴取だけで解放されるだろう。
そして今、もう1つの別れの時が迫っていた。
「…本当にいいのか?ヨネさんも言ってただろ、まだ空き部屋があるって。オメーが望むなら稲妻町に戻る事だって出来るんだぞ?」
「…うん。ボクはお日さま園に戻るよ。また雷牙と一緒に住みたいけど…お日さま園はボクのもう1つの家なんだ。」
「…そうかよ。まっ、オメーが決めた事なら俺ちゃんが止める権利はねーさ。」
そう言う雷牙だがどことなく寂しそうな顔をしている。本人は絶対認めないだろうが、また昔みたいに一緒に暮らしたいのだろう。どこまでもめんどくさいツンデレである。
「…。雷牙!」
「あん?なんdグワッ!?」
弟の悲しみを感じ取ったライトは兄としての役目を果たす為に明るい笑顔で力強く弟を抱きしめる。雷牙は恥ずかしがってライトを振り解こうとするがボロボロになった雷牙の
「は〜な〜し〜や〜が〜れ〜!」
「い〜や〜だ〜!」
せっかくの感動の場面にも関わらず兄弟喧嘩を始めた2人に仲間達は呆れ返っている。
その中で豪炎寺と鬼道は何故か涙ぐんでいるが…。
「…もしかして泣いてるのお兄ちゃん、豪炎寺さん?」
「…泣いてない。俺が泣くわけないだろう。…ズビッ」
「これは…ズビッ 目に埃が…ズビッ 入っただけだ…ズビッ。」
「…まっ、今日はそーゆーことにしといてあげる。」
ようやくライトを離れさせた雷牙は兄に背を向けて仲間の元へ戻る。ライトも弟に背を向けてもう1つの家族の元で罪を償う為に歩み出す。
別れ際に“あの日”言えなかった言葉を残して。
「…ライト。…また“明日”な…!」
「…! うん!また“明日”!」
運命の再会を果たした兄弟は再びを背を向けそれぞれの“
旅路の果てでまた再会出来ると信じて…!
♢♢♢
雷門イレブンが東京への帰路についている頃、東京にある古びたビルの駐車場に一台の車が停車した。
その車の中から出て来たのはエイリア石の研究主任であり吉良星二郎の右腕でもあった謎の科学者・研崎とその部下3人だ。
「しかし…本当に良かったのですか研崎様?ある程度の量は回収しているとはいえエイリア石の大部分を警察に破壊させて。」
かつて豪炎寺を脅迫した顔色の悪いスキンヘッドの男は上司に自分達の判断が本当に正しかったかを問う。
これまでのエイリア学園の凶行からエイリア石の存在は日本…いや世界にとって害にしかならないと判断した財前総理の命令により1粒の欠片も残す事なく徹底的に破壊されこの騒動の全ての発端となった元凶は消え去った。
だが事前に研崎はエイリア石の一部を回収していたのだ。全ては自身の手で新たなエイリア石を複製する為に。
「いいのですよ。確かに欲を言えば更に多くのサンプルを回収したかったですが私の研究成果の全てはこのPCに入っています。ククク…!私の研究と“
研崎にとってエイリア学園引いては吉良星二郎の世界への復讐等には端から興味は無い。
彼が星二郎に従っていたのは彼の莫大な財産によってエイリア石の研究を進める為。その為にエイリア石を使って吉良星二郎の復讐心を増幅させ自身にとって都合の良いパトロンになるように彼を狂わせた。
最終決戦の途中でエイリア石の影響下から抜け出しかけた際は流石に焦ったものの既に大方の解明は終わっている。だからこそ星二郎を見限り証拠隠滅の為にエイリア学園の自爆スイッチを押したのだ。
研崎はエレベータの中に入ると『4』を2回押した後『1』、『6』の順でボタンを押す。するとエレベータは下降を始め誰にも知られていない地下室へ向かう。
扉が開いた先にあったのは古びたビルとは似つかわしくない最先端の機械が備え付けられた巨大な
「やぁ〜研崎君。いらっしゃ〜い。」
「お久しぶりです“雷帝”殿。」
中から出て来た男に研崎は深々と頭を下げる。その姿は吉良星二郎に見せていた表面上の敬意とは異なり心の底から目の前に男に心酔している態度だ。
男の名前は“雷帝”。FFにて散々雷門を苦しめたにも関わらずエイリアの騒動では何故か雷門に味方するという支離滅裂な行動に一貫性のない最近40歳になった中年である。
…そして雷牙の実の父でもある。
「いや〜凄かったねぇ。雷門とジェネシスの最終決戦!久々に手に汗握る戦いだったよ〜!」
「…その試合は一般公開されてはいませんが…まあいいでしょう。」
雷門とジェネシスの試合は総理関係者にしか公開されていない為現地にいなかった“雷帝”には見る手段はない筈だが彼の事だからどうせハッキングでもして見ていたのだろうと結論付け研崎は本題に入る。
「今日私が訪れたのは他でもありません。貴方にこのエイリア石を献上する為です。」
「アレェ?エイリア石は警察に粉砕されたんじゃなかったのかい?」
「事前に一部を回収していたのですよ。といってもこのアタッシュケースに入っている分が全てですが。」
「…で?私にエイリア石を渡して今度は何をやらかそうっていうんだい?」
「簡単ですよ。私の研究成果と貴方の頭脳があれば残り少ないエイリア石の複製も不可能ではな…」
アタッシュケースを開いた瞬間、研崎は絶句する。
アタッシュケースの中にはペンダント程度の大きさのエイリア石が11個収められていた筈だ。
だがそこにあったのは輝きを失ったただの石ころだけだった。
「な…何が起こったのだ…!?わ、私は確かにエイリア石を回収した筈だぞ!?それなのになんだこの石ころは…!?」
現実を受け入れられない研崎は混乱しアタッシュケースの中を何度も確認している。だが以前としてエイリア石は見つからず今度は部下の不手際を疑い彼らを悩みつけるが全員確かにそのアタッシュケースにエイリア石を入れたと口を揃えて言う。
では何故…?その思考が研崎の脳裏をよぎった時、目の前の男に視線が移ってしまった。
研崎としても尊敬する賢者を疑いたくはない。だが天才である自分が間違いを犯す筈もなく、そこそこの信頼を寄せている部下も身に覚えがない。ならば研崎に残された選択肢は目の前の男を疑うしかなかった。
そして案の定、賢者は笑っていた。まるで目の前でさぞおかしい喜劇でも繰り広げられたかのように。
「プププ…!ハーハッハッハッ!!!い〜いねぇ!その
“雷帝”の高笑いが研究所内に木霊する。研崎はその姿をただ見ているしか出来なかったが次第に怒りが湧き上がり数秒後に大爆発した。
「ふざけるなァ!!!
「うんそだよー。君から連絡を受けた時にちょちょいとエイリア学園のデータベースをハッキングしたらさぁ、どこかの誰かさんがエイリア石の波長のデータを残していてねぇ、それでエイリア石を無力化する装着をパパッと使ってわけ。」
「なんて事をしてくれたんだ貴様はァ!!!もうエイリア石はあれしか残っていなかったのだぞォ!!!?これを使えば吉良星二郎の計画よりも遥かに優れたハイソルジャーを作れたというのに貴様はそのチャンスを不意にしたのに気づいているのかァァァァ!!!」
自身の計画が一瞬にして水の泡となった研崎は“雷帝”に対し声を荒げる。だが当の本人は相変わらず腹を抱えて笑っており研崎の話を聞いていない。
「あ〜!本っ当にお腹痛い…!もう笑い死にそう!アーハッハッハッ!!!」
「貴様ァ…!私を馬鹿にするのもいい加減にしろォォォォォォ!!!」
己のプライドを傷つけられた研崎は先ほどまであれだけ尊敬していた“雷帝”に殴り掛かる。
しかし彼の拳は“雷帝”に届く事なく逆に地面に叩きつけられた。
「グェ!?だ…誰だ貴様は…!?」
神崎の凶行を止めたのは“雷帝”本人ではなく音もなく現れた
謎の少年は一瞬にして研崎と“雷帝”の前に割り込むと見事な
「アーハッハッハッハッ!!!…アレ?どうしたんだい研崎君?急に倒れちゃって。まるで負け犬みたいじゃないか〜。ハッハッハッ!!!」
「こ…この私が振り解けない…!?これでも私は武術も収めているのだぞ…!」
文武両道を地で行く研崎の強さはエイリア学園の生徒には及ばなくても空手で言えば黒帯クラスの実力はある。
だがそんな彼の力を持ってしても少年の関節技を振り解く事は叶わなかった。
「あ〜ダメダメ。それ以上もがけば君…死ぬよ?」
「ヒッ…!」
「よ〜やく大人しくなったか。さて…紹介しよう、君の背骨を絞めている子の名前は
「…枕詞に“戸籍上”の三文字が入りますけどね。」
“雷帝”に息子と評された余程不満だったのかラボスと呼ばれた少年はあくまで義理の関係だと否定する。
「息子だと…!?貴様の息子は稲魂雷牙ではなかったのか…!?」
「雷牙?ああ、彼はもう私の息子じゃないよ。今の私の子供は
“雷帝”は椅子から立ち上がり研崎を見下す。“雷帝”は屈強な肉体も見る者全てを恐怖させる威圧感を持っているわけでもないにもかかわらず彼に睨まれた研崎は蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまう。
「ハッキリ言ってあげるよ君は別に秀才でもましてや天才でもない。ただ他人よりほんの少しだけ“
「そんな筈はない…!私は天才なんだ…!私の研究は世界の真理だ…ッ!!!」
「では何故ジェミニストームもイプシロンもエイリア石を使っていないマスターランクチームに勝てなかったんだい?」
「く…!」
「答えられないよねぇ、だって君は馬鹿なんだから。その点吉良星二郎は凄いねぇ。彼は“狂人”ではあったが“愚者”ではなかった。だからエイリア石を“結果”ではなく“過程”として使った。彼は分かっていたんだろう、人間の可能性に限界がない事を。」
「黙れ…黙れェェェェェ!!!グェッ!!」
ラボスはやたらとうるさい研崎に嫌気がさしたのか今度は首を絞め彼を強制的に黙らせようとする。
「まっ色々語ったけど私は言いたい事はコレだけさ。…失せろ二度と私の前に現れるな。」
「ガッ…ハッ…!」
“雷帝”の言葉が決定打になったのか、それとも遂に研崎の意識が限界を迎えたのかは定かではないが研崎は意識を失い白目を剥く。
ラボスは技を解き研崎の身体を部下のいる方向へ蹴飛ばす。
「さっさとそのゴミを持って出て行ってくれ。私も暇じゃないんでね。」
「さっきまでサッカー賭博で負けてた癖に…。」
「何か言ったか〜い?ラボスく〜ん?」
「いえ何も。」
“雷帝”とラボスの殺気に屈して研崎の部下達は気絶した上司を抱え一目散に研究所を後にする。
邪魔者がいなくなった事を確認した“雷帝”は研究所最奥のモニタールームに移動し画面を見る。
「…いつ見ても壮絶ですね。
「そりゃあ私の娘だからねぇ。当然だよぉ。」
そこに映っていたのはとある国で行われているサッカーの試合。
だがその試合はもはやサッカーではなくただの蹂躙だった。
蹂躙されているチームの名は“シャドウ・オブ・オリオン”。現在、“雷帝”のスポンサーを務める世界屈指の大富豪と敵対するこれまた世界屈指の大企業・オリオン財団最強のサッカーチームである。
だが彼らの力は目の前の相手には何1つ通用しなかった。
そのスピードは目で追えず。シュートを撃てば必殺技を繰り出す暇もなく点が入り。骨を犠牲にしてようやくシュートを撃っても腕一本で止められる。
気づけばスコアボードには36点もの得点差がついていた。
「オリオン財団の…、崇高な…る使命を…邪魔する…不届者共め…!」
“シャドウ・オブ・オリオン”のキャプテンである少女、ユリカ・ベオルはなんとか立ち上がり目の前の“怪物”に対して恨み言を放つ。
「う〜わ、あんな終わってる計画をマジで崇高だって思ってんの?本当に正しいサッカーをしたことがないんだねー。かわいそー。」
ユリカの言葉を聞いた黄緑髪の少女はケラケラと笑い彼女を小馬鹿にする。
まだ中学生にも達していない年齢であろう少女だが。彼女の右腕にはキャプテンマークが巻かれている。
「黙れ…!貴様にオリオン財団の何が分かる…!?」
「何も?ただ貴方達がやろうとしていることってクソみたいな思想の押し付けでしかないんだよねー。そんな終わってる会長さんの思想なんて理解したくないししようとも思わないなー。」
「貴様ァ!!!」
自身の存在意義を全否定する少女の言葉がユリカの地雷を盛大に踏み潰し一線を超えさせる。
「“オリオン・クロスセイバー”!!!」
ユリカは影を媒介に自身の分身を作り出しツインシュートを少女目掛けて放つ。
これこそ彼女が誇る最強の必殺技“オリオン・クロスセイバー”である。
「もう試合など知った事かァ!!!だがオリオンの使徒を侮辱した貴様だけは必ず殺すッ!!!」
ユリカは少女への殺意とオリオンの使徒としての誇りの全てをボールに込めてシュートを放つ。
放たれたシュートは地面を抉りながら少女に襲い掛かる。
その刹那、ユリカは見てしまった。
少女の肉体に“怪物”が宿る瞬間を…。
「“
少女はその身に“獅子”の魂を宿らせ二連撃を放つ。すると彼女の背後から巨大な獅子が姿を現し一瞬にして星の刃を噛み砕いた。
“王者”の名を冠した獅子は直線上にいたユリカを吹き飛ばし守護神無きゴールを文字通り粉砕する。
「馬鹿な…私の…最高の技だぞ…?」
己の“最強”を持ってしても“怪物”には敵わない事実に遂にユリカの心も折れ膝から崩れ落ちた。
審判のホイッスルにより少女達の勝利が確定すると同時にガルシア財団所属の傭兵達が“シャドウ・オブ・オリオン”達を回収しに現れた。
「…最後に聞かせてくれ。貴様は一体何者なんだ…?」
連れて行かれる直前、ユリカは少女に尋ねる。少女はその質問を待っていたと言わんばかりに自信満々のドヤ顔で答える。
「私の名前は
自己紹介を終えた鬼乃子は傭兵に連れて行かれるユリカ達を見送り天を見上げる。
その瞳には何かに対する期待の光が灯っていた。
「帰るぞ“雷帝”の娘よ。もうこの地での用事は済んだ。」
「ひっどー。グラサンのおじさんには頑張った選手を褒めるっていう常識がないんだー。」
「フン、私の指示を一切聞かずにプレーしていた駒に送る褒め言葉など1つもない。とっとと空港に向かう準備をしろ。」
鬼乃子率いるチームの監督も務めていた影山はMVPである鬼乃狐に賞賛の言葉を1つたりともかけずにスタジアムを後にした。
「ほーい。ぱっぱっと準備しますよーだ。べー!ハァ〜こんなことならラボス連れて来ればよかった…。まあいいや、遂にあの人と戦えるんだからね!楽しみだなぁ!一体どんなサッカーするんだろうなー?どれくらい強いんだろうなー?
待っててね!雷牙
思いの外“雷帝”関係の話が長くなっちゃった。次回エイリア編最終回です。