イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

109 / 183
『永』遠に続く『世』界の平和を願う者達

「そっちボール行ったぞー!」

 

「おい飛ばしすぎだって!」

 

 ふと子供の声に反応して目をやると近くの広場で俺より幼い子達が楽しそうにサッカーをしてる。

 あの時はこれっぽっちも思わなかったけど今の俺にとって彼らのサッカーは何よりも羨ましく思える。

 

「…羨ましいな。最後に心の底から笑ってサッカーをしたのはいつだったっけ…。」

 

 記憶力の良さには自信があるけど何度唸っても思い出せそうにない。それほど昔だっていう証明なんだろうなきっと。

 

「すいませーん!ボールこっちにやってくれませんかー?」

 

 なんて事を考えていると子供達から声を掛けられた。俺の足元には彼らが使っていたサッカーボールが転がっている。

 どうやら力加減を間違えてあらぬ方向にボールを飛ばしちゃったんだろうな。

 

「いいよ。それ!」

 

「ありがとうごさいまーす!」

 

 …横腹が痛い。それもそうかまだ傷は完治していないしそもそも俺は病室を脱走しているんだ。今頃看護師さん達は大慌てで俺を探しているんだろうな。

 別に病院が嫌になったわけじゃないんだよ。俺達の境遇を知ってか知らずかは分からないけど看護師さん達は優しいし、ご飯も美味しいし。

 少なくともエイリア学園(あそこ)での生活に比べたら入院生活は天国としか言いようがない。

 

 ただ…なんとなく1人で歩きたかった。俺達が残した爪痕がどうなっているかを自分の目で確かめたかったんだ。

 

 結果は…可もなく不可もなくってところかな。びっくりするほど世界は変わってない。まだエイリア学園の騒動が終わって1週間しか経っていないにも関わらず俺の目に映っている光景は前と変わらない。

 この現状をあれだけの事があっても変わらない人の無関心さと捉えるか簡単には動じない人の強さと捉えるかその人の性格が分かるんだろうな。

 

 …正直言って今の俺はどっちなんだろうな?1週間前の俺だったら変われない人の無関心さに失望して街一つ破壊しようとしていただろう。

 でも今の俺は人の強さを知っている。人と人との“繋がり”が作り出す強さをこの身で実感したんだ。

 だからこそだろう、2つの気持ちが相殺し合って何も感じなくなってしまった。

 

 …正直言って今でも世界を変えたいという想いは変わっていない。俺の使命はこの世界を変える事、その想いは今でも俺の胸に染み付いている。恐らく俺が死ぬまで…ずっと。

 

「やっぱりここにいた。そんなに病院が嫌いなのかい?ヒロト。」

 

「…やあライト。」

 

 ライトは頬を小さく膨らませながら俺を睨みつけた…つもりなんだろうけど元々女性的な顔立ちも相まって全然怖くないや。

 

「看護師さんに言われて俺を探しに来たのか?それとも瞳子姉さんの命令?」

 

「そのどっちも。…ちょっと隣いい?」

 

「…いいよ。」

 

 てっきり何か話したい事があって隣に座ったのかと思ったけどライトは本当に俺の隣に座っただけだ。

 

 …もしかしてあの時の仕返しのつもりか?

 

 今の俺は彼の目を見る事が出来ない。あの時言ってしまった言葉が頭から離れないからだ。

 

『俺はお前の事が昔から嫌いだった。』

 

 今だから言える、あの言葉は本心じゃない。でも嘘でもない。確かに俺は昔からライトと会う度に形容し難い異物感を心に抱いていた。でもその感情は“嫌悪”じゃないんだ。

 嫌悪感に限りなく近いけど全く別の感情…それがライトに抱いていたものだった。

 

「…なんで君はお日さま園に残ったんだ。弟と一緒に暮らす道もあっただろ。」

 

 気づけば俺はライトに質問していた。もっと他に言うべき事があるにも関わらず何故お日さま園に残ったのかを聞いていた。

 

 チラッとライトの顔を確認するとライト少し考え込んでいた。彼の事だ、理由自体はちゃんとあるんだろうけどそれを俺に話していいか悩んでいるんだろう。

 

「…確かに本音を言うと雷牙と暮らしたかったさ。雷牙と一緒の家に住んで、雷牙と一緒の学校に通って、雷牙と同じユニフォームを着てサッカーをする。…それがボクの夢だった。」

 

「だったら…!」

 

「でも…それは『今』じゃないんだ。その夢を叶えるにはボクの手は汚れすぎちゃった。」

 

 …本当に真面目で優しい奴だよ君は。エイリア学園の被害の殆どはセカンド・ファーストランクチームによるものだから法律的にはマスターランクチームの罪は無いに等しいってのに仲間の罪も自分の罪のように語れるなんてね…。俺には無理だ。

 

「例え長い時間を掛けてもボクは君たちと一緒に罪を償っていくよ。それがいつになるかは分からないけど、世間…そしてボク自身が罪を償えたって心の底から思えた時。初めてボクはボク自身の夢を追えるんだ。」

 

 …やっと分かった気がする。

 

 なんで俺があの時君にあんな事を言ったのか。

 

 なんで俺の心の奥底にずっと異物感があったのか。

 

 俺は君に嫉妬していたんだな。どんな時でも自分の信念を貫き通せるその心の強さに。

 

「…怒っていないのかい?あの日の事。」

 

「ぜーんぜん?アレがヒロトの本心じゃないことくらいボクでも分かるよ。だって“友達”でしょ?ボクたち。」

 

「…友達か。…まだ君は俺の事をそう呼んでくれるのか?」

 

「呼ぶよ。雷牙が世界で一番の弟なら、キミは世界で一番のボクの親友だからね。」

 

「…本当にごめん…ライト…。」

 

 さっき俺は大きな間違いをしていたみたいだ。俺はずっと父さんの言葉に従って世界は汚い物で満ちていると思い込んでいた。

 でも違った。確かに世界は汚い部分もある。だけどそれ以上に綺麗な物も存在しているんだ。そしてそれは俺のすぐ側にあった。

 

「…なあライト。」

 

「何?ヒロト?」

 

「俺さ、夢があるんだ。」

 

「へぇ〜?どんな夢?」

 

「サッカーがしたい、心の底から笑い合えるサッカーがしたい。…お日さま園の皆で。」

 

 …やばいなライトが言葉を失っている、ちょっと大袈裟すぎたかも。ここはいっその事キミとサッカーがしたいから始めるべきだったか…?

 

「…! あっ!ゴメンゴメン!別にキミの夢を笑ってるんじゃないよ!ただ…ちょっと意外だったから…。」

 

「意外?」

 

「少し前のキミは尖りすぎてボク以外を寄せ付けなかったからさ。ここまでドストレートにみんなとサッカーをしたいって言うなんて思わなかったんだ。」

 

「…やっぱり難しいかな?」

 

「いや出来るさ。キミのその夢、ボクも手伝うよ。だから…もう一度一緒にサッカーをしよう!」

 

「ああ…!」

 

 父さん。俺さ、新しい夢が出来たよ。

 

 俺はサッカーで世界を変える。世界の皆と一緒にサッカーする事で弱者と強者が分かり合える世界を作ってみせるよ。

 

 だから今はゆっくり休んでいてくれ。貴方の願いは俺のやり方で必ず叶えてみせるから。

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

「『“怪物”・稲魂ステラの長男、稲魂雷斗君の生存発覚!怪物の血筋は途絶えていなかった!』か〜。」

 

 イナズマキャラバン内に雷牙の独り言が響き渡る。現在は雷門イレブン達はキャラバンである場所に向かっていたが雷牙を除いた雷門イレブンはぐったりしている。

 

 エイリア学園の騒動が終わってから早1週間。雷門イレブンは多忙な時期を過ごしていた。

 まず初めに財前総理からこの騒動を収めた立役者として雷門イレブン達に勲章が贈られその式典に参加。

 次に元の学校に帰る助っ人組のメンバー達を見送り終わったと思うとすぐさま様々なメディアからの取材が殺到しその対応に追われ、先日ようやく落ち着いたところなのだ。

 

 そんな中現在のネットニュースの一面は稲魂雷斗の生存報告に関する記事で埋め尽くされていた。

 …厳密にはライトの容姿が女性サッカーファンを中心に様々な反響を呼んでいるといった方が正しいが。

 

「全く俺たちが世界を救ってからちょっとしか経ってねぇってのに世間はライトにお熱とはなぁ。やっぱ人生は顔か?ルッキズムこそが正義(ジャスティス)なのか?」

 

「お前だって顔自体は悪くないだろ。やはり悪いのはその性格じゃないか?」

 

「やかましいわシスコン寺修也。」

 

 まあ事実、雷門イレブンの話題が落ち着いた理由の1つに記者会見中に悪意のある記者に対して雷牙が放送禁止用語を連発しまくり会見を中断させたのもある為豪炎寺の意見は正しい。

 

「それより今どこに向かってんだ?もう3時間くらいは高速道路を走ってるぜ?」

 

「でもいくら聞いても響木監督は答えてくれないしなぁ…。」

 

「着けば分かると言ってるだろう。もう少しの辛抱だ。」

 

 結局響木は何1つ答えてくれないままある学校の駐車場にキャラバンは停車した。

 

「う〜〜ん!やっっっと着いた〜!」

 

「それにしてもここどこだ?ん…『永世学園』?なぁ鬼道、こんな学校聞いた事あっか?」

 

「いや初耳だ。そもそも周囲を見渡す限りどの設備も小綺麗だ。もしかして最近出来たばかりの学園なんじゃないか?」

 

「ふ〜ん…。それにしても永世学園ねぇ…なんか言葉の響きがエイリア学園に似てんなぁ。」

 

「縁起でもない事言うなよ稲魂…。」

 

 そんなこんなで雷門イレブンは響木に連れられ緑が生い茂った綺麗なサッカーグラウンドにまで案内される。

 

 そこで待っていたのは…

 

「久しぶりね雷門の皆。元気にしてたかしら?」

 

『ひ…!瞳子監督ぅ〜〜!!!?』

 

 まさかの吉良瞳子その人だった。

 

「ど、どうして瞳子監督がここにいるんですか!?」

 

「何故って私が永世学園の理事長兼サッカー部の監督だからよ。」

 

「…え?今なんて…?」

 

 するとグラウンドから眩い光が放たれ雷門イレブンの目が眩む。皆はこの光をよく知っている。

 “彼ら”はいつもこの光と共に雷門イレブンの前に現れたから。

 

「やっ、円堂君。久しぶりだね。」

 

「ひ…ヒロト…!?」

 

「ヤッホー雷牙!元気にしてた?」

 

「ハッ!誰にものを言ってやがる。俺は永遠の健康優良児だぜ?」

 

 光が晴れた先に現れたのは緑色のキャプテンマークを付けた基山ヒロトとその横に立つ稲魂雷斗だった。

 …いや彼らだけじゃない。これまで雷門イレブンと激戦を繰り広げた元エイリア学園の生徒達が白を基調に紺色の袖のユニフォーム姿で雷門と相対していた。

 

「サッカーやろうよ円堂君。でも今度は大切な物を賭ける必要のない…、ただ楽しむ為のサッカーで!」

 

「ヒロト…!グスッ ヘヘッ!望むところだ!今回も俺たちが勝つ!」

 

 両チームはポジションに着き試合に挑む。皆の顔はこれから起こるであろう名勝負への期待に満ちていた。

 

『さあ!始まりました!我らが英雄・雷門イレブン対どこかで見た気がする選手が数多く在籍する新学校・永世学園!実況はお馴染み角馬圭太が担当させていただきます!!!』

 

「さあ!みんな!サッカーやろうぜ!!!」

 

『おうっ!!!』

 

 お馴染みの言葉がグラウンドに鳴り響き試合が始まる。

 

 今度は憎しみをぶつけ合う為のサッカーではなく、サッカーを通して繋がり合う為に。




 これにてエイリア編完結!次回から世界編に入りまーす!…と言いたいところなんですけど以前アンケートで取った劇場版編+短編数本書いてから世界編に突入する予定です。もしかしたらイナモンも一本書くかも。
 まあ首を長くしてお待ちください。ではでは〜!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。